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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1254535
審判番号 不服2011-8941  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-26 
確定日 2012-03-29 
事件の表示 特願2006- 39859「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月30日出願公開、特開2007-215772〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年2月16日に出願したものであって、平成23年2月3日付け(発送:2月8日)で拒絶査定され、これに対し、平成23年4月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされ、当審において、同年23年8月3日付け(発送:8月9日)で審査官の前置報告書に基づく審尋がなされ、同年9月22日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成23年4月26日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年4月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、補正前の請求項1?5に記載された
「【請求項1】
外周面に複数種類の図柄が配列されている複数のリールと、
入賞すると遊技媒体の投入を要さずに次回の遊技を行うことができるリプレイ、及び入賞すると遊技媒体が払い出される小役、及び入賞すると通常状態よりも小役の当選確率が上昇するボーナス状態が開始される特別役を含む複数種類の役の当否を決定する抽選を遊技毎に乱数を用いて行う抽選手段と、
遊技毎に前記複数のリールを回転させ、停止操作を契機として、前記抽選の結果に応じた態様で回転中のリールを停止させる制御を行うリール制御手段と、
前記複数のリールの停止状態に基づいて、役が入賞したか否かを判定する入賞判定手段と、
前記通常状態よりもリプレイの当選確率が上昇する特別状態を所定条件下で開始させる状態制御手段と、
前記特別状態における遊技結果に応じて変化する数値をカウントするカウント手段と、
前記ボーナス状態の遊技中におけるボーナス中演出を演出装置に行わせる演出制御手段とを備えた遊技機であって、
前記抽選手段が、
前記通常状態及び前記特別状態において前記特別役の当否を決定する抽選を行い、
前記状態制御手段が、
前記カウント手段のカウント値が第1の値に達したこと、あるいは前記特別状態において前記特別役に当選したことに基づいて、前記特別状態を終了させる制御を行い、
前記演出制御手段が、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達していない場合に、前記ボーナス中演出として特別演出を演出装置に行わせ、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達している場合、及び前記特別状態以外の状態において前記特別役に当選した場合に、前記ボーナス中演出として前記特別演出を演出装置に行わせないことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
外周面に複数種類の図柄が配列されている複数のリールと、
入賞すると遊技媒体が払い出される小役、及び入賞すると通常状態よりも小役の当選確率が上昇するボーナス状態が開始される特別役を含む複数種類の役の当否を決定する抽選を遊技毎に乱数を用いて行う抽選手段と、
遊技毎に前記複数のリールを回転させ、停止操作を契機として、前記抽選の結果に応じた態様で回転中のリールを停止させる制御を行うリール制御手段と、
前記複数のリールの停止状態に基づいて、役が入賞したか否かを判定する入賞判定手段と、
小役の入賞を補助する補助演出が行われる特別状態を所定条件下で開始させる状態制御手段と、
前記特別状態における遊技結果に応じて変化する数値をカウントするカウント手段と、
前記ボーナス状態の遊技中におけるボーナス中演出を演出装置に行わせ、前記特別状態において前記補助演出を演出装置に行わせる演出制御手段とを備えた遊技機であって、
前記抽選手段が、
前記通常状態及び前記特別状態において前記特別役の当否を決定する抽選を行い、
前記状態制御手段が、
前記カウント手段のカウント値が第1の値に達したこと、あるいは前記特別状態において前記特別役に当選したことに基づいて、前記特別状態を終了させる制御を行い、
前記演出制御手段が、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達していない場合に、前記ボーナス中演出として特別演出を演出装置に行わせ、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達している場合、及び前記特別状態以外の状態において前記特別役に当選した場合に、前記ボーナス中演出として前記特別演出を演出装置に行わせないことを特徴とする遊技機。
【請求項3】
外周面に複数種類の図柄が配列されている複数のリールと、
入賞すると遊技媒体の投入を要さずに次回の遊技を行うことができるリプレイ、及び入賞すると遊技媒体が払い出される小役、及び入賞すると通常状態よりも小役の当選確率が上昇するボーナス状態が開始される特別役を含む複数種類の役の当否を決定する抽選を遊技毎に乱数を用いて行う抽選手段と、
遊技毎に前記複数のリールを回転させ、停止操作を契機として、前記抽選の結果に応じた態様で回転中のリールを停止させる制御を行うリール制御手段と、
前記複数のリールの停止状態に基づいて、役が入賞したか否かを判定する入賞判定手段と、
前記通常状態よりもリプレイの当選確率が上昇するとともに、小役の入賞を補助する補助演出が行われる特別状態を所定条件下で開始させる状態制御手段と、
前記特別状態における遊技結果に応じて変化する数値をカウントするカウント手段と、
前記ボーナス状態の遊技中におけるボーナス中演出を演出装置に行わせ、前記特別状態において前記補助演出を演出装置に行わせる演出制御手段とを備えた遊技機であって、
前記抽選手段が、
前記通常状態及び前記特別状態において前記特別役の当否を決定する抽選を行い、
前記状態制御手段が、
前記カウント手段のカウント値が第1の値に達したこと、あるいは前記特別状態において前記特別役に当選したことに基づいて、前記特別状態を終了させる制御を行い、
前記演出制御手段が、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達していない場合に、前記ボーナス中演出として特別演出を演出装置に行わせ、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達している場合、及び前記特別状態以外の状態において前記特別役に当選した場合に、前記ボーナス中演出として前記特別演出を演出装置に行わせないことを特徴とする遊技機。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかにおいて、
前記演出制御手段が、
前記ボーナス中演出の演出内容を複数種類の演出内容から選択し、選択した演出内容で前記ボーナス中演出を演出装置に行わせ、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達していない場合に、前記ボーナス中演出の演出内容として前記特別演出を選択し、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達している場合、及び前記特別状態以外の状態において前記特別役に当選した場合に、前記ボーナス中演出の演出内容として前記特別演出を選択しないことを特徴とする遊技機。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかにおいて、
前記カウント手段が、
前記特別状態における遊技結果に応じて変化する数値として、遊技回数、役の入賞回数、役の当選回数、又は特定の演出が行われた回数のいずれかをカウントすることを特徴とする遊技機。」
という発明を、
「【請求項1】
外周面に複数種類の図柄が配列されている複数のリールと、
入賞すると遊技媒体が払い出される小役、及び入賞すると通常状態よりも小役の当選確率が上昇するボーナス状態が開始される特別役を含む複数種類の役の当否を決定する抽選を遊技毎に乱数を用いて行う抽選手段と、
遊技毎に前記複数のリールを回転させ、停止操作を契機として、前記抽選の結果に応じた態様で回転中のリールを停止させる制御を行うリール制御手段と、
前記複数のリールの停止状態に基づいて、役が入賞したか否かを判定する入賞判定手段と、
小役の入賞を補助する補助演出が行われる特別状態を所定条件下で開始させる状態制御手段と、
前記特別状態における遊技結果に応じてカウント値を第1の値に近づけるようにカウントするカウント手段と、
前記ボーナス状態の遊技中におけるボーナス中演出を演出装置に行わせ、前記特別状態において前記補助演出を演出装置に行わせる演出制御手段とを備えた遊技機であって、
前記抽選手段が、
前記通常状態及び前記特別状態において前記特別役の当否を決定する抽選を行い、
前記状態制御手段が、
前記カウント手段のカウント値が第1の値に達したこと、あるいは前記特別状態において前記特別役に当選したことに基づいて、前記特別状態を終了させる制御を行い、
前記演出制御手段が、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達していない場合に、前記ボーナス中演出として特別演出を演出装置に行わせ、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達している場合、及び前記特別状態以外の状態において前記特別役に当選した場合に、前記ボーナス中演出として前記特別演出を演出装置に行わせないことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
外周面に複数種類の図柄が配列されている複数のリールと、
入賞すると遊技媒体の投入を要さずに次回の遊技を行うことができるリプレイ、及び入賞すると遊技媒体が払い出される小役、及び入賞すると通常状態よりも小役の当選確率が上昇するボーナス状態が開始される特別役を含む複数種類の役の当否を決定する抽選を遊技毎に乱数を用いて行う抽選手段と、
遊技毎に前記複数のリールを回転させ、停止操作を契機として、前記抽選の結果に応じた態様で回転中のリールを停止させる制御を行うリール制御手段と、
前記複数のリールの停止状態に基づいて、役が入賞したか否かを判定する入賞判定手段と、
前記通常状態よりもリプレイの当選確率が上昇するとともに、小役の入賞を補助する補助演出が行われる特別状態を所定条件下で開始させる状態制御手段と、
前記特別状態における遊技結果に応じてカウント値を第1の値に近づけるようにカウントするカウント手段と、
前記ボーナス状態の遊技中におけるボーナス中演出を演出装置に行わせ、前記特別状態において前記補助演出を演出装置に行わせる演出制御手段とを備えた遊技機であって、
前記抽選手段が、
前記通常状態及び前記特別状態において前記特別役の当否を決定する抽選を行い、
前記状態制御手段が、
前記カウント手段のカウント値が第1の値に達したこと、あるいは前記特別状態において前記特別役に当選したことに基づいて、前記特別状態を終了させる制御を行い、
前記演出制御手段が、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達していない場合に、前記ボーナス中演出として特別演出を演出装置に行わせ、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達している場合、及び前記特別状態以外の状態において前記特別役に当選した場合に、前記ボーナス中演出として前記特別演出を演出装置に行わせないことを特徴とする遊技機。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記演出制御手段が、
前記ボーナス中演出の演出内容を複数種類の演出内容から選択し、選択した演出内容で前記ボーナス中演出を演出装置に行わせ、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達していない場合に、前記ボーナス中演出の演出内容として前記特別演出を選択し、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達している場合、及び前記特別状態以外の状態において前記特別役に当選した場合に、前記ボーナス中演出の演出内容として前記特別演出を選択しないことを特徴とする遊技機。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかにおいて、
前記カウント手段が、
前記特別状態における遊技結果に応じて変化する数値として、遊技回数、役の入賞回数、役の当選回数、又は特定の演出が行われた回数のいずれかをカウントすることを特徴とする遊技機。」
という発明に変更することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。

(2)補正の適否
本件補正は、特許請求の範囲について、以下に挙げる補正事項を含むものである。

(a)補正前の請求項1を削除する補正。

(b)補正前の請求項2を補正後の請求項1とするとともに、
補正前の請求項2における「前記特別状態における遊技結果に応じて変化する数値をカウントするカウント手段と、」という事項を、
補正後の請求項1における「前記特別状態における遊技結果に応じてカウント値を第1の値に近づけるようにカウントするカウント手段と、」とする補正。

(c)補正前の請求項3を補正後の請求項2とするとともに、
補正前の請求項3における「前記特別状態における遊技結果に応じて変化する数値をカウントするカウント手段と、」という事項を、
補正後の請求項2における「前記特別状態における遊技結果に応じてカウント値を第1の値に近づけるようにカウントするカウント手段と、」とする補正。

(d)補正前の請求項4を補正後の請求項3とするとともに、
補正前の請求項4における「請求項1?3のいずれかにおいて、」という事項を、
補正後の請求項3における「請求項1または2において、」とする補正。

(e)補正前の請求項5を補正後の請求項4とするとともに、
補正前の請求項5における「請求項1?4のいずれかにおいて、」という事項を、
補正後の請求項4における「請求項1?3のいずれかにおいて、」とする補正。

上記補正事項についてそれぞれ検討する。
補正事項(a)、補正事項(d)及び補正事項(e)については、請求項の削除を目的とするものに該当する。

補正事項(b)及び補正事項(c)については、「変化する数値」である「カウント値」のカウント方法を具体的に特定するものであるから、限定的減縮を目的とするものに該当する。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由(平成22年6月3日付け拒絶理由通知)において引用文献1として引用された特開2004-283319号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
【従来の技術】
遊技機の一つであるパチンコ機では、パチンコ球が始動口に入球した場合に、図柄表示装置(例えば、液晶表示装置)に特別図柄を変動表示する。そして、変動表示後に停止表示した特別図柄の態様によって、その入球に対して行われた抽選の結果が大当たりであるか否かを遊技者に報知している。例えば、抽選結果が大当たりである場合には、同じ種類の特別図柄が3つ揃った「777」等の図柄配列を表示して遊技者に大当たりを報知している。大当たりが報知されると、遊技者にはその後に大当たり遊技(大入賞口を一定時間開く等)が付与される。」
(イ)「【0019】
複合役物装置16は、普通図柄の図柄変動,特別図柄の図柄変動等を表示可能な図柄表示装置22(図柄表示手段)を有する。なお、ここでいう「図柄変動」とは、図柄を用いた変動表示のことを意味している。図柄は、例えば文字(英数字や漢字等),記号,符号,図形(キャラクタ等),映像などからなる抽選表示用図柄(特別図柄,普通図柄等)や装飾表示用図柄(装飾図柄,背景図柄等)などが該当する。なお、本実施の形態では、図柄表示装置22は液晶表示器で構成されるが、CRT,プラズマ表示器等のような他の表示器で構成されてもよい。
【0020】
図柄表示装置22の画面には、縦方向に3列の特別図柄が上から下方向に向けて流れるように変動表示される。そして、左、右、中央の順番に停止した3つの特別図柄の態様によって、始動口24にパチンコ球が入賞したことによる抽選の結果を遊技者に報知している。例えば、同じ種類の特別図柄が横一列に3つ揃って停止表示した場合は「大当たり」を報知したことになり(例えば「7,7,7」等)、それ以外の場合は「はずれ」を報知したことになる(例えば、「7,7,8」等)。このとき、最後に停止する図柄以外の2つの図柄が同じである場合が「リーチ」であり(例えば「7,↓,7」等)、抽選結果が「大当たり」である場合には、図柄変動の際にこの「リーチ」の状態を経由することになる。
また、図柄表示装置22の画面には、例えば「○」,「×」等で構成される普通図柄を表示可能な普通図柄表示部が例えば左上隅部に設けられる(図示省略)。」
(ウ)「【0023】
次に、パチンコ機12によるパチンコ遊技を実現するために構成をした基板や装置等の接続例について図2を参照しながら説明する。なお単に「接続する」という場合には、特に断らない限り電気的に接続することを意味する。
CPU(プロセッサ)122を中心に構成したメイン制御基板120は、遊技制御プログラムや一定のデータ等を格納したROM124、乱数,特別保留数,普通保留数等のような一時的データを格納可能なRAM126等を備える。CPU122は、遊技制御プログラムを実行してパチンコ遊技を実現する。当該遊技制御プログラムには、後述する「始動口処理」,「保留処理」,「図柄変動パターン決定処理」等のような各手続きを実現するためのプログラムが含まれる。例えばROM124にはEPROMを用い、RAM126にはDRAMを用いるが、他の記録媒体(例えばEEPROM,SRAM,フラッシュメモリ,磁気カード,ICカード等)を用いてもよい。他の構成要素については周知の技術と同様であるので、図示および説明を省略する。なお、遊技制御プログラムを実行するCPU122が、本発明における「抽選手段」に対応しており、メイン制御基板120が、本発明における「主制御基板」に対応している。」
(エ)「【0028】
図3に示す始動口処理では、まず始動口24にパチンコ球が入賞したか否かを判別する〔ステップS10〕。ここでいう「入賞」とは、パチンコ球の入球により賞球が払い出される場合の「入球」のことを指している。例えば始動口センサ46からの検出信号があれば入賞した(YES)と判別し、当該検出信号がなければ入賞していない(NO)と判別する。もし始動口24にパチンコ球が入賞すると(YES)、当該入賞ごとに対応して各種乱数を取得する〔ステップS12〕。始動口24にパチンコ球が入賞していなければ(NO)、ステップS18に進む。
【0029】
ステップS12で取得する乱数は、カウンタ等を用いて生成されるソフトウェア乱数と、発振器等を用いて生成されるハードウェア乱数とのいずれか一方または双方を用いる。この乱数には、例えば大当たりか否かを決定する「当落判定用乱数RA」や、図柄変動を停止した後に確定して停止表示する大当たり図柄(例えば[3,3,3]や[7,7,7]等のようなゾロ目の図柄パターンなど)を特定する「停止図柄用乱数RB」、特別図柄の図柄変動においてリーチ状態を経由させるか否かを決定する「リーチ判定用乱数RC」などが含まれる。
ステップS12において各種乱数を取得すると、入賞に対応する賞球を払い出すべく払出制御基板112に対して払出コマンドを送信し〔ステップS14〕、次の「保留処理」を実行する〔ステップS16〕。当該保留処理の具体的な手続きについて、図4を参照しながら説明する。」
(オ)「【0033】
図5に示す図柄変動パターン決定処理では、まず、RAM126に記憶されている各種乱数(当落判定用乱数RA,停止図柄用乱数RB,リーチ判定用乱数RC)の読み出しを行い〔ステップS40〕、その読み出した各種乱数に基づいて図柄変動パターンの決定を行う〔ステップS42〕。具体的には、例えば、当落判定用乱数RAに基づいて大当たりか否かを特定し、停止図柄用乱数RBに基づいて変動表示後に確定して停止表示する停止図柄の種類を特定し、リーチ判定用乱数RCに基づいてリーチ状態を経由するか否かを特定し、これらのすべての条件を満たすような図柄変動の態様(図柄変動パターン)をROM124に記憶されたテーブル等から読み出しすることで決定する。図柄変動パターンを決定すると、決定した図柄変動パターンに関する情報を含む表示指示信号を図柄制御基板130に送信し〔ステップS44〕、保留数が0でなければ保留数を1減らす演算処理を実行する〔ステップS46〕。保留数を1減算すると、減算した保留数を遊技者に報知するべく保留数表示コマンドを図柄制御基板130に送信する〔ステップS48〕。図柄制御基板130に保留数表示コマンドを送信すると、図柄変動パターン決定処理を終了する〔リターン〕。
【0034】
図柄変動パターン決定処理を終えて図3のフローチャートに戻ると、今回の抽選結果が大当たりか否か(すなわち当落判定用乱数RA=所定の当選値であるか否か)を判定する〔ステップS20〕。もし大当たりならば(ステップS20でYES)、大当たり遊技が終了した後に実行する「時短遊技」の遊技期間を決定する〔ステップS22〕。具体的には、始動口24への1回の入賞に対応する図柄変動の表示時間を短縮する回数(時短回数)が、例えば50回,100回の中から抽選によって決定される。そして、時短回数が例えば100回に決定された場合には、今回の大当たり遊技が終了したあとの図柄変動の表示時間が100回分だけ短縮されることになる。このような時短遊技を実現するための処理は公知であるので、更に詳細な説明は省略する。
ステップS22において時短遊技期間を決定した後、「付加特典」を付与するか否かを判定するための期間である「付加特典判定期間」を決定する〔ステップS24〕。ここで、「付加特典」とあるのは、付加特典判定期間内に所定の条件が達成されると付与される遊技者に有利な特典であって、「大当たり遊技」とは別のタイミングで付与される付加的な特典である。本実施の形態では、図柄表示装置22の画面に通常の遊技時では見ることのできないプレミア画像(背景画像や動画、静止画等)を表示することによって「付加特典」が実現される。この付加特典を付与するか否かを判定する「付加特典判定期間」は、大当たり遊技が終了した後の図柄変動の回数として抽選によって決定される。例えば、「付加特典判定期間」が105回と決定された場合には、大当たり遊技が終了したあとの105回の図柄変動が終了するまでの間に所定の条件が達成されれば、遊技者に対して付加特典が付与される。
なお、上述した「時短遊技」を実行することが本発明における「第1付加特典状態」に対応しており、上述した「付加特典」を実行することが本発明における「第2付加特典状態」に対応している。
時短遊技期間及び付加特典判定期間を決定した後、次のステップS26に進む。」
(カ)「【0051】
上記実施の形態では、付加特典判定期間中の大当たりが3回連続発生したことを条件に、図柄表示装置22の画面にプレミア画像75を表示する例を示したが、このような態様に限定するものではない。
例えば、大当たり遊技が終了したあとに、より早い時期に「大当たり」が発生したことを条件に、通常の遊技時ではほとんど見ることのできない「レアな」プレミア画像75を表示するようにしてもよい。このようにすれば、付加特典判定期間中のより早い時期に「大当たり」が発生するほど、遊技者にとってより有利な付加特典を獲得できるようになるので、遊技者はより早い時期の大当たりの発生(付加条件の成立)を強く望むようになり、より緊迫感のあるパチンコ遊技を楽しむことができるという効果がある。
一例として、以下のような条件でプレミア画像75を表示すると効果的である。
〔第2付加特典状態を発生させる条件〕
大当たり遊技が終了したあと
●101回目?105回目の図柄変動中 → プレミア画像75
●51回目?100回目の図柄変動中 → レアなプレミア画像75
●1回目?50回目の図柄変動中 → さらにレアなプレミア画像75」
(キ)「【0060】
また、上記実施の形態では、遊技機としての第1種パチンコ機に本発明を適用した例を示したが、第2種パチンコ機や第3種パチンコ機に対しても本発明を適用し得る。また、パチンコ機以外の他の遊技機(例えばスロットマシン,アレンジボール機,雀球遊技機,テレビゲーム機等)に対しても本発明を適用し得る。」

以上、上記(ア)ないし(キ)の記載及び図面の記載を総合すると、引用例1には、
「縦方向に3列の特別図柄が上から下方向に向けて流れるように変動表示され、左、右、中央の順番に停止した3つの特別図柄の態様によって、抽選の結果を遊技者に報知し、同じ種類の特別図柄が横一列に3つ揃って停止表示した場合は「大当たり」を報知したことになり(例えば「7,7,7」等)、それ以外の場合は「はずれ」を報知したことになる(例えば、「7,7,8」等)図柄表示装置22と、
始動口24にパチンコ球が入賞すると、当該入賞ごとに大当たりか否かを決定する当落判定用乱数RAや、図柄変動を停止した後に確定して停止表示する大当たり図柄(例えば[3,3,3]や[7,7,7]等のようなゾロ目の図柄パターンなど)を特定する停止図柄用乱数RB、特別図柄の図柄変動においてリーチ状態を経由させるか否かを決定するリーチ判定用乱数RCなどを取得し、今回の抽選結果が大当たりか否か(すなわち当落判定用乱数RA=所定の当選値であるか否か)の判定などをする抽選手段であるCPU122と、
始動口24にパチンコ球が入賞したことにより、図柄表示装置22の画面には、縦方向に3列の特別図柄が上から下方向に向けて流れるように変動表示され、当落判定用乱数RAに基づいて大当たりか否かを特定し、停止図柄用乱数RBに基づいて変動表示後に確定して停止表示する停止図柄の種類を特定し、リーチ判定用乱数RCに基づいてリーチ状態を経由するか否かを特定し、これらのすべての条件を満たすような図柄変動の態様(図柄変動パターン)で変動表示後に停止表示し、
もし大当たりならば、大当たり遊技が終了した後に実行する「時短遊技」の遊技期間(時短回数)が、50回,100回の中から抽選によって決定され、時短回数が100回に決定された場合には、今回の大当たり遊技が終了したあとの図柄変動の表示時間が100回分だけ短縮されることになり、
時短遊技期間を決定した後、「付加特典」を付与するか否かを判定するための期間である「付加特典判定期間」が、大当たり遊技が終了した後の図柄変動の回数として抽選によって決定され、「付加特典判定期間」が105回と決定された場合には、大当たり遊技が終了したあとの105回の図柄変動が終了するまでの間に所定の条件が達成されれば、遊技者に対して付加特典が付与されることとし、大当たり遊技が終了したあとに、より早い時期に「大当たり」が発生したことを条件に、通常の遊技時ではほとんど見ることのできない「レアな」プレミア画像75を表示するようにし、大当たり遊技が終了したあと101回目?105回目の図柄変動中に大当たりになるとプレミア画像75を、大当たり遊技が終了したあと51回目?100回目の図柄変動中に大当たりになるとレアなプレミア画像75を、大当たり遊技が終了したあと1回目?50回目の図柄変動中に大当たりになるとさらにレアなプレミア画像75を図柄表示装置22の画面に表示するようにしたパチンコ機12。」の発明が開示されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明」という。)。

(4)対比
引用発明の「大当たり」は本願補正発明の「特別役」に相当する。以下同様に、
「抽選手段であるCPU122」は「抽選手段」に、
「「時短遊技」の遊技期間」は「特別状態」に、
「図柄表示装置22」は「演出装置」に、
「パチンコ機12」は「遊技機」に、
「100」は「第1の値」に、
「大当たり遊技が終了したあと1回目?50回目の図柄変動中」は「カウント値が第2の値に達していない場合」に、
「さらにレアなプレミア画像75」は「特別演出」に、
「大当たり遊技が終了したあと51回目?100回目の図柄変動中」は「カウント値が第2の値に達している場合」に、それぞれ相当する。

さらに、引用例1の記載等からみて、以下のことがいえる。

a.引用発明の遊技機の図柄表示装置22は、縦方向に3列の特別図柄が上から下方向に向けて流れるように変動表示され、左、右、中央の順番に停止した3つの特別図柄の態様によって、抽選の結果を遊技者に報知し、同じ種類の特別図柄が横一列に3つ揃って停止表示した場合は「大当たり」を報知したことになり(例えば「7,7,7」等)、それ以外の場合は「はずれ」を報知したことになる(例えば、「7,7,8」等)ものであり、
本願補正発明の複数のリールは、遊技毎に回転されることにより変動表示を行うものであるから、
引用発明は本願補正発明と「複数種類の図柄が配置された複数列の図柄を変動表示させる図柄表示装置」を備えている点で共通しているといえる。

b.引用発明の遊技機の抽選手段であるCPU122は、始動口24にパチンコ球が入賞すると、当該入賞ごとに大当たりか否かを決定する「当落判定用乱数RA」などを取得し、今回の抽選結果が大当たりか否か(すなわち当落判定用乱数RA=所定の当選値であるか否か)の判定などをするから、
引用発明は本願補正発明と「入賞すると特別役を含む役の当否を決定する抽選を遊技毎に乱数を用いて行う抽選手段」を備えている点で共通しているといえる。

c.引用発明の遊技機は、始動口24にパチンコ球が入賞したことにより、図柄表示装置22の画面には、縦方向に3列の特別図柄が上から下方向に向けて流れるように変動表示され、当落判定用乱数RAに基づいて大当たりか否かを特定し、停止図柄用乱数RBに基づいて変動表示後に確定して停止表示する停止図柄の種類を特定し、リーチ判定用乱数RCに基づいてリーチ状態を経由するか否かを特定し、これらのすべての条件を満たすような図柄変動の態様(図柄変動パターン)で変動表示後に停止表示しているから、
引用発明は本願補正発明と「遊技毎に複数列の図柄を変動表示させ、前記抽選の結果に応じた態様で変動中の複数列の図柄を停止させる制御を行う図柄表示制御手段」を備えている点で共通しているといえる。

d.引用発明の遊技機は、もし大当たりならば、大当たり遊技が終了した後に実行する「時短遊技」の遊技期間を、50回,100回の中から抽選によって決定され、時短回数が100回に決定された場合には、今回の大当たり遊技が終了したあとの図柄変動の表示時間が100回分だけ短縮されるという制御を行っており、「時短遊技」の遊技期間が特別状態といえるから、
引用発明は本願補正発明と「特別状態を所定条件下で開始させる状態制御手段」を備えている点で共通しているといえる。

e.引用発明の遊技機は、大当たり遊技が終了した後に実行する「時短遊技」の時短回数が100回に決定された場合に、今回の大当たり遊技が終了したあとの図柄変動の表示時間が100回分だけ短縮されるという制御を行っているから、引用発明は時短遊技回数または残り時短遊技回数をカウントする何らかのカウント手段を有しているといえ、
引用発明は本願補正発明と「前記特別状態における遊技結果に応じてカウント値をカウントするカウント手段」を備えている点で共通しているといえる。

f.引用発明の遊技機は、時短遊技期間を決定した後、「付加特典」を付与するか否かを判定するための期間である「付加特典判定期間」を、大当たり遊技が終了した後の図柄変動の回数として抽選によって決定され、例えば「付加特典判定期間」が105回と決定された場合には、大当たり遊技が終了したあとの105回の図柄変動が終了するまでの間に所定の条件が達成されれば、遊技者に対して付加特典が付与されることとし、例えば、大当たり遊技が終了したあとに、より早い時期に「大当たり」が発生したことを条件に、通常の遊技時ではほとんど見ることのできない「レアな」プレミア画像75を表示するようにし、大当たり遊技が終了したあと101回目?105回目の図柄変動中に大当たりになるとプレミア画像75を、大当たり遊技が終了したあと51回目?100回目の図柄変動中に大当たりになるとレアなプレミア画像75を、大当たり遊技が終了したあと1回目?50回目の図柄変動中に大当たりになるとさらにレアなプレミア画像75を図柄表示装置22の画面に表示するようにしているから、
引用発明は本願補正発明と「演出を演出装置に行わせる演出制御手段とを備えた遊技機」である点で共通しているといえる。

g.引用発明の遊技機の抽選手段であるCPU122は、始動口24にパチンコ球が入賞すると、当該入賞ごとに大当たりか否かを決定する「当落判定用乱数RA」などを取得し、今回の抽選結果が大当たりか否か(すなわち当落判定用乱数RA=所定の当選値であるか否か)の判定などをするものであり、
大当たり遊技が終了したあと変動表示が100回行われるまでである「特別状態」に相当する「時短遊技」の遊技期間、及び、大当たり遊技が終了したあと変動表示が101回以降行われている「通常状態」に相当する期間においても、始動口24にパチンコ球が入賞することにより抽選結果が決定され変動表示が行われるから、
引用発明の遊技機の抽選手段であるCPU122は本願補正発明の「前記抽選手段が、前記通常状態及び前記特別状態において前記特別役の当否を決定する抽選を行」う構成を備えているといえる。

h.引用発明の遊技機は、時短回数が100回に決定され、「付加特典」を付与するか否かを判定するための期間である「付加特典判定期間」が105回と決定された場合には、大当たり遊技が終了したあとの105回の図柄変動が終了するまでの間に所定の条件が達成されれば、遊技者に対して付加特典が付与されることとし、大当たり遊技が終了したあとに、より早い時期に「大当たり」が発生したことを条件に、通常の遊技時ではほとんど見ることのできない「レアな」プレミア画像75を表示するようにし、大当たり遊技が終了したあと101回目?105回目の図柄変動中に大当たりになるとプレミア画像75を、大当たり遊技が終了したあと51回目?100回目の図柄変動中に大当たりになるとレアなプレミア画像75を、大当たり遊技が終了したあと1回目?50回目の図柄変動中に大当たりになるとさらにレアなプレミア画像75を図柄表示装置22の画面に表示するようにしたものであり、「特別演出」に相当するさらにレアなプレミア画像75は、「カウント値が第2の値に達していない場合」に相当する大当たり遊技が終了したあと1回目?50回目の図柄変動中に表示するようにしたものである。 また、大当たり遊技が終了したあとの106回目以降の図柄変動においても、さらにレアなプレミアム画像75が表示されないことはいうまでもないから、
引用発明は本願補正発明と「前記演出制御手段が、前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達していない場合に、前記演出として特別演出を演出装置に行わせ、前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達している場合、及び前記特別状態以外の状態において前記特別役に当選した場合に、前記演出として前記特別演出を演出装置に行わせない遊技機。」である点で共通しているといえる。

以上のことから、両者は、
<一致点>
「複数種類の図柄が配置された複数列の図柄を変動表示させる図柄表示装置と、
入賞すると特別役を含む役の当否を決定する抽選を遊技毎に乱数を用いて行う抽選手段と、
遊技毎に複数列の図柄を変動表示させ、前記抽選の結果に応じた態様で変動中の複数列の図柄を停止させる制御を行う図柄表示制御手段と、
特別状態を所定条件下で開始させる状態制御手段と、
前記特別状態における遊技結果に応じてカウント値をカウントするカウント手段と、
演出を演出装置に行わせる演出制御手段とを備えた遊技機であって、
前記抽選手段が、前記通常状態及び前記特別状態において前記特別役の当否を決定する抽選を行い、
前記演出制御手段が、前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達していない場合に、前記演出として特別演出を演出装置に行わせ、前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達している場合、及び前記特別状態以外の状態において前記特別役に当選した場合に、前記演出として前記特別演出を演出装置に行わせない遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願補正発明は、図柄表示装置が「複数のリール」であり、
「特別役を含む」「役の当否を決定する抽選を遊技毎に乱数を用いて行う抽選手段」が行う役の抽選は、「入賞すると遊技媒体が払い出される小役、及び入賞すると通常状態よりも小役の当選確率が上昇するボーナス状態が開始される特別役を含む複数種類の役」の抽選であり、
図柄表示制御手段が「複数のリールを回転させ、停止操作を契機として、前記抽選の結果に応じた態様で回転中のリールを停止させる制御を行うリール制御手段」であり、
「前記複数のリールの停止状態に基づいて、役が入賞したか否かを判定する入賞判定手段」を備えており、
「状態制御手段」が「所定条件下で開始させる」「特別状態」は、「小役の入賞を補助する補助演出が行われる特別状態」であり、
「前記ボーナス状態の遊技中におけるボーナス中演出を演出装置に行わせ、前記特別状態において前記補助演出を演出装置に行わせる演出制御手段とを備え」、
「前記状態制御手段が、
前記カウント手段のカウント値が第1の値に達したこと、あるいは前記特別状態において前記特別役に当選したことに基づいて、前記特別状態を終了させる制御を行」うのに対して、
引用発明は、パチンコ機であるため、このような構成を有していない点。

<相違点2>
「前記特別状態における遊技結果に応じてカウント値を」「カウントするカウント手段」が、
本願補正発明は、「カウント値を第1の値に近づけるようにカウントする」のに対して、
引用発明は、このようにカウントするか不明である点。

<相違点3>
「前記演出制御手段が、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達していない場合に」「行わせ、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達している場合、及び前記特別状態以外の状態において前記特別役に当選した場合に」「行わせない」「演出装置」が行う「特別演出」は、
本願補正発明は、「ボーナス中演出」であるのに対して、
引用発明は、「ボーナス中演出」ではない点。

(5)判断
<相違点1>について
スロットマシンにおいて、「外周面に複数種類の図柄が配列されている複数のリールと、入賞すると遊技媒体が払い出される小役、及び入賞すると通常状態よりも小役の当選確率が上昇するボーナス状態が開始される特別役を含む複数種類の役の当否を決定する抽選を遊技毎に乱数を用いて行う抽選手段と、遊技毎に前記複数のリールを回転させ、停止操作を契機として、前記抽選の結果に応じた態様で回転中のリールを停止させる制御を行うリール制御手段と、前記複数のリールの停止状態に基づいて、役が入賞したか否かを判定する入賞判定手段と、小役の入賞を補助する補助演出が行われる特別状態を所定条件下で開始させる状態制御手段と、前記特別状態において前記補助演出を演出装置に行わせる演出制御手段とを備え」、「状態制御手段が」、「カウント値が第1の値に達したこと、あるいは特別状態において特別役に当選したことに基づいて、前記特別状態を終了させる制御を行」うことは、前置報告書の内容を添付した審尋において引用文献1として引用された特開2002-301194号公報(段落【0127】?【0128】、【0044】、【0050】、【0065】、【0068】?【0072】、【0102】、【0104】?【0105】、【0108】、【0111】?【0114】、【0117】、【0119】?【0123】、【0139】?【0142】、【0163】?【0169】、【0205】、【0208】、図1?2、4?8、13?14等参照)、特開2003-10395号公報(段落【0030】、【0032】?【0033】、【0011】、【0018】?【0026】、図1?2、5?10等参照)、特開2005-13282号公報(段落【0037】?【0038】、【0019】?【0034】、図3等参照)にも記載されているように周知(以下、「周知技術1」という。)であり、
スロットマシンにおいて、「ボーナス状態の遊技中におけるボーナス中演出を演出装置に行わせ」、「特別状態」(小役の入賞を補助する補助演出が行われる状態)「において補助演出を演出装置に行わせる演出制御手段」を備えることも、特開2002-224269号公報(段落【0026】?【0027】、【0046】、【0056】、【0083】?【0084】、【0086】?【0087】、図1、5等参照)、特開2006-214号公報(段落【0101】?【0104】、【0156】?【0161】、【0169】、図6(A)、16?17等参照)、特開2003-334298号公報(段落【0013】等参照)にも記載されているように周知(以下、「周知技術2」という。)である。
そして、引用例1の段落【0060】には「パチンコ機以外の他の遊技機(例えばスロットマシン,アレンジボール機,雀球遊技機,テレビゲーム機等)に対しても本発明を適用し得る。」と記載されているから、
引用発明のパチンコ機12をスロットマシンに適用し、引用発明が備えていないスロットマシンにおける上記周知技術1及び周知技術2の構成を採用して上記相違点1に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に成し得る事項である。

<相違点2>について
引用発明は、「特別状態」である「時短遊技」を「第1の値」である100回までカウントすると共に、「特別演出」に相当するさらにレアなプレミアム画像75を含むプレミアム画像75の中からどのプレミアム画像75を表示するか決定するために105回までカウントする発明であり(さらにレアなプレミアム画像75を表示する上限値の回数である50が「第2の値」に相当する。)、
カウント方法として、
A.「1、2、3・・・」とカウントしていくカウントアップ方式、
B.「100、99、98・・・」とカウントしていくカウントダウン方式、
のいずれかが考えられると共に、
カウント手段として、
a.105回までカウントするカウント手段を1つ設ける場合、
b.100回までカウントするカウント手段と、105回までカウントするカウント手段の2つのカウント手段を設ける場合、
のいずれかが考えられるが、
カウント方法・カウント手段の数をどのようにするかは設計的事項程度のことにすぎないから、
A.のカウント方法、b.のカウント手段の数を採用して、上記相違点2の構成とすることは、当業者が容易に成し得る程度のことにすぎない。

<相違点3>について
スロットマシンにおいて、ボーナス状態の遊技中にボーナス中演出を行わせることは、上記2.(5)「<相違点1>について」において既に検討したように周知(周知技術2)であり、
ボーナスである特別役に早く当選した時の演出をどのタイミングで行う演出にするかは、設計的事項程度のことにすぎないから、
引用発明において、「特別演出」を行う演出を「ボーナス演出」にして、上記相違点3の構成とすることは、当業者が容易に成し得る程度のことにすぎない。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明、周知技術1及び周知技術2から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のように、本願補正発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(6)本件補正についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成23年4月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項2に係る発明は、平成22年8月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。

そして、その請求項2により特定される発明は次のとおりである。
「【請求項2】
外周面に複数種類の図柄が配列されている複数のリールと、
入賞すると遊技媒体が払い出される小役、及び入賞すると通常状態よりも小役の当選確率が上昇するボーナス状態が開始される特別役を含む複数種類の役の当否を決定する抽選を遊技毎に乱数を用いて行う抽選手段と、
遊技毎に前記複数のリールを回転させ、停止操作を契機として、前記抽選の結果に応じた態様で回転中のリールを停止させる制御を行うリール制御手段と、
前記複数のリールの停止状態に基づいて、役が入賞したか否かを判定する入賞判定手段と、
小役の入賞を補助する補助演出が行われる特別状態を所定条件下で開始させる状態制御手段と、
前記特別状態における遊技結果に応じて変化する数値をカウントするカウント手段と、
前記ボーナス状態の遊技中におけるボーナス中演出を演出装置に行わせ、前記特別状態において前記補助演出を演出装置に行わせる演出制御手段とを備えた遊技機であって、
前記抽選手段が、
前記通常状態及び前記特別状態において前記特別役の当否を決定する抽選を行い、
前記状態制御手段が、
前記カウント手段のカウント値が第1の値に達したこと、あるいは前記特別状態において前記特別役に当選したことに基づいて、前記特別状態を終了させる制御を行い、
前記演出制御手段が、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達していない場合に、前記ボーナス中演出として特別演出を演出装置に行わせ、
前記特別状態において前記特別役に当選しかつ前記特別役の当選時における前記カウント手段のカウント値が第2の値に達している場合、及び前記特別状態以外の状態において前記特別役に当選した場合に、前記ボーナス中演出として前記特別演出を演出装置に行わせないことを特徴とする遊技機。」
(以下、この発明を「本願発明」という。)

一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-283319号公報(引用例1)に記載された発明は、前記「2.(3)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.(2)で検討した本願補正発明から、「変化する値」である「カウント値」について、「第1の値に近づけるように」との限定を付加した部分を削除したものである。

そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(5)に記載したとおり、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-30 
結審通知日 2012-01-31 
審決日 2012-02-13 
出願番号 特願2006-39859(P2006-39859)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 保  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 澤田 真治
瀬津 太朗
発明の名称 遊技機  
代理人 原 弘晃  

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