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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1254536
審判番号 不服2011-9688  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-09 
確定日 2012-03-29 
事件の表示 特願2006- 35995「鶏卵包装用容器とその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月30日出願公開、特開2007-216967〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成18年2月14日に出願されたもので、平成22年5月24日付け拒絶理由通知書が送付され、平成23年1月31日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として請求されたもので、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面についての平成23年5月9日付け手続補正書が提出され、その後、同年11月1日付け審尋が送付されたものの、回答書の提出は、未だに無いものである。

2.原査定
原査定の拒絶理由の1つは、以下の拒絶理由aであると認める。

拒絶理由a;
この出願の請求項2に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.実願平5-68971号(実開平7-44514号)のCD-ROM
2.特開2004-291981号公報
3.特開平6-211230号公報
4.特開平7-2244号公報

ここにおける「特開2004-291981号公報」、「特開平6-211230号公報」及び「特開平7-2244号公報」を、以下、「引用例2」、「引用例3」及び「引用例4」という。

3.当審の判断

3-1.平成23年5月9日付け手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)について

3-1-1.本件補正の内容
本件補正は、明細書の段落【0005】及び【0006】についての補正事項と以下の補正事項aからなるものと認める。

補正事項a;特許請求の範囲の記載につき、以下の(cl)を(CL)と補正する。

(cl);「【請求項1】
合成樹脂シート素材を膨出成形させた、鶏卵収容用個別凹部(11)を備えた容器本体(1)と、折り曲げ部(3)を介して該容器本体(1)と一連に形成されている収容鶏卵の上部を覆う凹部(21)を備えた蓋体(2)とからなる鶏卵包装用容器であって、容器本体(1)の鶏卵収容用個別凹部(11)の少なくとも底部を除く容器全体の一部又は全部に、彩色部(15)が形成されている鶏卵包装用容器。
【請求項2】
収容された鶏卵の規格や商品情報、外観装飾等を表示する彩色部(15)が、容器本体(1)の鶏卵収容用個別凹部(11)の少なくとも底部を除く容器全体の一部又は全部に形成されている鶏卵包装用容器の製造方法であって、容器成型後に所定の彩色部(15)となるシート上の相当部位に所要印刷を施す印刷工程(D)と、該合成樹脂シート素材(5)に所定形状の容器本体(1)と蓋体(2)とが一組となった鶏卵包装用容器相当部(51)を連続形成するシート成型工程(B)と、シート成型後のシート(5')から前記鶏卵包装用容器相当部(51)を切断分離して鶏卵包装用容器(Pc)を得る外形切断工程(C)とからなる鶏卵包装用容器の製造方法。」
(CL)「【請求項1】
成型後に鶏卵容器本体の鶏卵収容用個別凹部の底部に相当する部位を除く容器全体の一部又は全部に所定の彩色部が形成されている合成樹脂シート素材を膨出成形させた、鶏卵収容用個別凹部(11)を備えた容器本体(1)と、折り曲げ部(3)を介して該容器本体(1)と一連に形成されている収容鶏卵の上部を覆う凹部(21)を備えた蓋体(2)とからなる鶏卵包装用容器であって、容器本体(1)の鶏卵収容用個別凹部(11)の少なくとも底部を除く容器全体の一部又は全部に、彩色部(15)が形成されている鶏卵包装用容器。
【請求項2】
収容された鶏卵の規格や商品情報、外観装飾等を表示する彩色部(15)が、容器本体(1)の鶏卵収容用個別凹部(11)の少なくとも底部に相当する部位を除く容器全体の一部又は全部に形成されている鶏卵包装用容器の製造方法であって、容器成型後に鶏卵容器本体の鶏卵収容用個別凹部の底部に相当する部位を除いた所定の彩色部(15)となるシート上の相当部位に所要印刷を施す印刷工程(D)と、該合成樹脂シート素材(5)に所定形状の容器本体(1)と蓋体(2)とが一組となった鶏卵包装用容器相当部(51)を連続形成するシート成型工程(B)と、シート成型後のシート(5')から前記鶏卵包装用容器相当部(51)を切断分離して鶏卵包装用容器(Pc)を得る外形切断工程(C)とからなる鶏卵包装用容器の製造方法。」

ここ「3-1」では、本件補正前の請求項2を旧【請求項2】と、また、本件補正後の請求項2を新【請求項2】という。

3-1-2.本件補正の適否
旧【請求項2】と新【請求項2】を対比しても、実質的に、そこに記載された技術的事項に相違はない。
そこで、本件補正が、全体として適法であるかについての検討は、別の機会に譲ることとし、一応、認められるものとし、以下に、新【請求項2】に係る発明(以下、「本件発明2」という。)につき、先に「2.」で述べた拒絶理由aの妥当性について検討することにする。

3-2.拒絶理由aについて

3-2-1.本件発明2
本件発明2は、本件補正後の請求項2に記載の事項により特定されるものであって、同項の記載は、先に「3-1-1.」の補正事項aにおいて、(CL)として認定した【請求項2】にあるとおりのものと認める。

3-2-2.引用例2?4に記載の発明

(1)引用例2について

1)引用例2には、以下の記載2a?2dが認められる。
2a;「【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製シート素材を膨出成形させ、容器本体(1)と蓋体(2)とが折り曲げ部(3)を介して一体的に連結成形されている鶏卵包装用容器であって、鶏卵のサイズごとに鶏卵包装用容器の略幅方向にサイズ識別用色彩表示(4)が施された鶏卵包装用容器。」
2b;「【0011】
該実施例に示した鶏卵包装用容器の製造過程は、1枚の合成樹脂製シート素材をブロー成形させ、容器本体1と蓋体2とが折り曲げ部3を介して一体的に連結成形されている複数の鶏卵包装用容器を一体的に製造した後、個々の鶏卵包装用容器に切断され、重ねられて、鶏卵農家に搬送される。」
2c;「【0013】
その他、前記サイズ識別用色彩表示4は、最初に1枚の合成樹脂製シート素材の段階であらかじめ施しておいてからブロー成形により鶏卵包装用容器を成形していくこともできる。」
2d;「【0014】
図4は本発明の別の実施例の開蓋状態の平面図である。容器本体1の1列目と2列目(あるいは4列目と5列目)の鶏卵収容凹部11を区画する区画壁12と蓋体2の相対する1列目と2列目(あるいは4列目と5列目)の鶏卵収容凹部21を区画する区画壁22とを通過するように、鶏卵包装用容器の幅方向に、インクジェット印刷により、色彩を付したドット状の模様のサイズ識別用色彩表示4を施している。」及び【図4】(5頁)

2)引用例2には、記載2aによれば、鶏卵包装用容器についての発明が記載され、引用例2の記載から「鶏卵包装用容器の製造方法」についての発明も把握できることは明らかである。
そして、記載2dにおける「鶏卵収容凹部11」が、鶏卵を個別に収容する凹部であることは、引用例2の記載全体から明らかであって、記載2a?2dによれば、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が引用例2に記載されていると認められる。

「合成樹脂製シート素材を膨出成形させ、容器本体(1)と蓋体(2)とが折り曲げ部(3)を介して一体的に連結成形されている鶏卵包装用容器であって、鶏卵のサイズごとに、容器本体1の鶏卵収容個別凹部11を区画する区画壁12と蓋体2の相対する鶏卵収容凹部21を区画する区画壁22とを通過するように、鶏卵包装用容器の幅方向にサイズ識別用色彩表示(4)が施された鶏卵包装用容器の製造方法において、
合成樹脂製シート素材の段階でサイズ識別用色彩表示(4)をインクジェット印刷により施す印刷工程と、サイズ識別用色彩表示(4)が施された合成樹脂製シート素材をブロー成形させて上記鶏卵包装用容器を、複数、一体的に製造する成形工程と、一体的に製造されたものを個々の鶏卵包装用容器に切断する切断工程からなる、上記製造方法。」

(2)引用例3及び4について

1)引用例3には、以下の記載3a?3bが、また、引用例4には、以下の記載4a?4bが認められる。
3a;「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、容器の蓋部分と身部分とが折り畳み自在に一連に連なって形成されている容器であって、蓋部分の一部だけが新しい材料を用いて形成された透明度の高い合成樹脂シートを基層とし、該蓋部分のその他の部分と身部分の全体とが、廃材を用いて形成された透明度の低い合成樹脂シートを基層として形成され、これら両部分の食品収納空間形成側の面全体に新材で形成された極めて薄い合成樹脂フイルムがラミネートされていて、蓋部分における前記新材利用の合成樹脂シート部分から容器の内部を透視できる食品包装用合成樹脂容器とその製造方法に関する。」
3b;「【0017】続いて、該複合ウエブ(9)をその延長方向に配置した成形機(10)へ向けて移行させ、前記新材利用合成樹脂シート素材(1)に対応したウエブ部分(9a)が容器の蓋部分(A)における幅方向の中央部分を形成するように位置設定することによって、前記廃材利用合成樹脂シート素材(2)に対応したウエブ部分(9b)が容器の身部分(B)と蓋部分(A)の中央部分を除く両側部分とを形成するように位置合わせして、成形機(10)で所要の凹凸形状を形成し、複合ウエブ(9)の進行方向と横断方向とに連なった容器4列分の未切断容器群(11)を形成する。成形機(10)は真空成形またはブロー成形用の上下1対の成形型(10a),(10b)からなり、両成形型は上下方向の矢印(T)で示した上下方向の接近離反と、横方向の矢印(Y)で示した前進後退とを行う。即ち、成形型(10a),(10b)は、上流側の原位置で型閉めし、この原位置から所定距離だけ下流側へウエブ(9)の進行速度と同速度で進行し、この進行中に成形を行い、下流側で型開きを行い、原位置へ速やかに復帰するという動作を反復する。このようにして、連続して流れて来るウエブ(9)に対して同期的に移動しながら間欠的に成形操作を行うようにしてある。
【0018】最後に、このようにして成形した未切断容器群(11)を下流側に配置した切断機(12)へ移行させ、横断方向と進行方向とに連なった容器群(11)の個々の容器の間を切断(s)して単体の容器(K)に分離する。・・・
【0020】図2?3は、以上の実施例方法で得られた第1発明にいう合成樹脂容器の一例を示したものである。ここに示した実施例の容器は、鶏卵5個×2列=10個を収容する形状としてある。」並びに【図1】及び【図2】
4a;「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、廃材を用いた合成樹脂シートを基材とした複合ウエブで形成され、食品収納空間形成側の表面には新材で形成された合成樹脂フイルムが前記シートへラミネートされていて、衛生的な合成樹脂製食品容器とその製法に関する。」
4b;「【0016】続いて第2工程では、該複合ウエブ(9)をその延長方向に配置した成形機(10)へ向けて移行させる。第3工程では、成形機(10)の対向する一対の成形型(10a),(10b)によって、容器の蓋部分(A)に対応したウエブ部分(9a)と、身部分(B)に対応したウエブ部分(9b)とに対してそれぞれ所要の凹凸形状を付与し、ウエブ(9)の進行方向と横方向に連なった4列の未切断容器群(11)を形成する。該実施例では、成形機(10)は真空成形用の上下一対の金型(10a),(10b)からなり、両金型は矢印(T)で示した上下方向の接近離反と、矢印(Y)で示した前進後退とを行う。即ち、上流側の成形初期位置で型合わせし、該初期位置から所定距離だけ下流側へ向けて複合ウエブ(9)の成形速度に合わせて進行し、この下流側への進行移動間に成形したのち下流側で型開きを行い、成形初期位置へ速やかに復帰するという動作を反復する。このようにして、連続して流れて来る複合ウエブ(9)に対して同期移動しながら成形する。
【0017】最後の第4工程で、成形後の未切断容器群(11)を切断機(12)へ通し、未切断容器群の横断方向の間および進行方向に連なった個々の容器の間を截断して複数の単体容器(K)を得る。・・・
【0019】以上の方法で製造した合成樹脂容器の構造は、図2?5に示したように、該実施例では、鶏卵5個×2列=10個を収容する鶏卵容器として示してある。」並びに【図1】及び【図2】

2)引用例3には、記載3aによれば、容器の蓋部分と身部分とが折り畳み自在に一連に連なって形成されている食品包装用合成樹脂容器の製造方法に関する発明が記載され、記載3bには、上記食品包装用合成樹脂容器の「食品」が鶏卵であり、そして、上記製造方法として、容器の身部分と蓋部分とが一組となった鶏卵包装用合成樹脂容器相当部を真空成形又はブロー成形により連続形成するウエブ成型工程及び該工程後のウエブから前記鶏卵包装用合成樹脂容器相当部を切断分離して鶏卵包装用合成樹脂容器を得る切断工程を有することが記載されている。
また、引用例4には、記載4aによれば、合成樹脂製食品容器の製造方法に関する発明が記載され、記載4bには、上記合成樹脂製食品容器が、容器の蓋部分(A)と身部分(B)とから形成され、その「食品」が鶏卵であり、そして、上記製造方法として、容器の身部分(B)と蓋部分(A)とからなる合成樹脂製鶏卵容器相当部を真空成形により連続形成するウエブ成型工程及び該工程後のウエブから前記合成樹脂製鶏卵容器相当部を切断分離して合成樹脂製鶏卵容器を得る切断工程を有することが記載されている。
そして、引用例3及び4に記載の上記ウエブは、記載3a及び4aによれば、合成樹脂シートともいい得るもので、以上の検討を踏まえると、引用例3及び4には、本件発明2の発明特定事項との関係においては、「合成樹脂シート素材に、真空成形やブロー成形により、所定形状の容器本体と蓋体とが一組となった鶏卵包装用容器相当部を連続形成するシート成型工程と、シート成型後のシートから前記鶏卵包装用容器相当部を切断分離して鶏卵包装用容器を得る外形切断工程を有する、鶏卵包装用合成樹脂容器の製造方法」の発明(以下、「引用発明3及び4」という、)が記載されていると認められる。

3-2-3.対比判断

1)本件発明2と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「サイズ識別用色彩表示(4)」及び「区画壁12と区画壁22」は、本件発明2の「収容された鶏卵の規格や商品情報、外観装飾等を表示する彩色部(15)」及び「鶏卵収容用個別凹部(11)の少なくとも底部に相当する部位を除く容器全体の一部」に相当し、引用発明2の「成形工程」は、本件発明2の「シート成型工程(B)」と対応関係にあり、これら発明は、

「収容された鶏卵の規格や商品情報、外観装飾等を表示する彩色部が、容器本体の鶏卵収容用個別凹部の少なくとも底部に相当する部位を除く容器全体の一部又は全部に形成されている鶏卵包装用容器の製造方法であって、容器成型後に鶏卵容器本体の鶏卵収容用個別凹部の底部に相当する部位を除いた所定の彩色部となるシート上の相当部位に所要印刷を施す印刷工程と、該合成樹脂シート素材に所定形状の容器本体と蓋体とが一組となった鶏卵包装用容器相当部を形成するシート成型工程と、シート成型後のシートから前記鶏卵包装用容器相当部を切断分離して鶏卵包装用容器を得る外形切断工程とからなる鶏卵包装用容器の製造方法。」

で一致し、

以下の相違点aで相違しているものと認められる。

相違点a;引用発明2の「成形工程」と本件発明2の「シート成型工程(B)」とは、共に、「合成樹脂シート素材に所定形状の容器本体と蓋体とが一組となった鶏卵包装用容器相当部を形成する」ものであるものの、本件発明2は、「連続形成する」のに対し、引用発明2は、「複数、一体的に製造する」点。

2)そこで、相違点aについて検討する。
引用発明2と引用発明3及び4は、共に、鶏卵包装用合成樹脂容器の製造方法に係る発明で、しかも、合成樹脂シート素材に、真空成形やブロー成形により、所定形状の容器本体と蓋体とが一組となった鶏卵包装用容器相当部を形成するシート成型工程と、シート成型後のシートから前記鶏卵包装用容器相当部を切断分離して鶏卵包装用容器を得る外形切断工程を有するもので、引用発明2における「合成樹脂製シート素材をブロー成形させて鶏卵包装用容器を、複数、一体的に製造する成形工程」につき、これを「合成樹脂製シート素材をブロー成形させて鶏卵包装用容器を、複数、一体的に連続形成する成形工程」とすることは、引用発明3及び4に基づき、容易になし得るものといえ、相違点aは容易に想到し得るものである。

3)してみると、引用発明2は、引用発明2並びに引用発明3及び4に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、拒絶理由aは、相当である。

4.結び
原査定は、妥当である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-27 
結審通知日 2012-01-31 
審決日 2012-02-14 
出願番号 特願2006-35995(P2006-35995)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 真  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 一ノ瀬 薫
熊倉 強
発明の名称 鶏卵包装用容器とその製造方法  
代理人 鹿島 義雄  

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