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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1254580
審判番号 不服2008-26114  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-09 
確定日 2012-04-02 
事件の表示 特願2001-544198「注釈を付ける文書処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月14日国際公開、WO01/42978、平成15年 5月13日国内公表、特表2003-516585〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年12月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成11年12月7日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成20年1月11日付けで拒絶理由が通知され、同年4月18日に手続補正がなされたが、同年7月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月9日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項22に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年4月18日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。
「【請求項22】 ディスプレイデバイス、コンピュータ、入力デバイスおよび記憶デバイスを有する文書処理システムにおいて注釈を付けるためのコンピュータ実施方法であって、前記コンピュータは、
ファイルの中の修正不可の部分の中のユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページの第1の表示部分を前記ディスプレイデバイスの表示画面上に表示するステップと、
ユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページからの選択に関するユーザ入力を前記入力デバイスから受け取るステップと、
選択の前記オブジェクトに関連する注釈を作成するステップと、
前記ファイルの修正不可の部分の中の前記選択のオブジェクトのファイル位置を決定するステップと、
前記位置と前記注釈を前記ファイルの修正不可の部分とは別個に前記記憶デバイスに記憶するステップと、
その後、前記注釈が選択された時に、前記表示画面上の第2の表示部分を前記位置に基づいて前記選択のオブジェクトにナビゲートするステップと
を実行することを特徴とするコンピュータ実施方法。」

なお、上記【請求項22】の第2段落には、「前記表示デバイス」なる記載があったが、「表示デバイス」なる語はそれ以前に使用されていないこと、該「前記表示デバイス」なる記載を「前記ディスプレイデバイス」に読み替えても請求項22の記載は請求項22の他の箇所の記載や発明の詳細な説明の記載と矛盾なく理解できること、等の事情を考慮し、本願発明を上記のとおりに認定した。

3.引用例
(3-1)原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第5146552号明細書(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
あ「The operating principle permits a reader of an electronically published document to create notes, bookmarks, or annotations and relate them to a particular location in the document. The record of such annotations or "place marks" can be stored within or separately from the published material. Annotations stored separately from the originally published document are associated by name with the document and can either be accessed by a particular individual reader and/or shared and exchanged between individuals with access to the same (or copies of the) published electronic document for a variety of purposes.」(第2カラム第20?31行)
(当審による邦訳:その操作原理は、電子出版物の読者が、メモ、ブックマークあるいは注釈を作成して、ドキュメント中の特定箇所にそれらを関連付けることを可能にします。そのような注釈あるいは「プレースマーク」のレコードは出版物の内部または出版物とは別々に格納することができます。もとの出版物とは別々に格納された注釈は、名前によってドキュメントに関連しており、同じ(あるいはコピーされた)出版された電子ドキュメントへ特定の個々の読者によってアクセス及び、または個人間で様々な目的で共有や交換がされます。)

い「The association of annotations with a particular context within the document exploits the fact that the writer in constructing an electronically published document has indicated the structure of the document by "marking up" the material and identifying major document elements such as chapters, sections, sub-sections, paragraphs, figures, etc. It also uses relative position within the "finest" identified document element to fix the precise position of some annotations that the reader wants to pinpoint to a particular line or word position.
Annotations whether stored in a separate data structure or stored within the electronic "book" file are recorded separately from the context of the published material and are positioned by the method described.」(第2カラム、第35?48行)
(当審による邦訳:ドキュメント内の特定のコンテキストと注釈との関連は、著者が電子的に出版されるドキュメントを構築する際に「マーキングアップ」マテリアルによって、章、節、小節、段落、および図などのような主な文書要素を識別するドキュメントの構造を示したという事実を利用します。さらに、それは、読者が特定の行または単語位置へ正確に示したいいくつかの注釈の正確な位置を決定するために「最も細かい」識別された文書要素内の相対的位置を使用します。
別々のデータ構造で格納されたか、電子「ブック」ファイル内に格納されたにかかわらず、注釈は出版物のコンテキストとは別々に記録されます。そして、記述された方法によって位置します。)

う「The workstation of FIG. 1 further includes a display 26 connected to the processor 20, which shows the WYSIWIG displayed image 25' of the formatted text stream 25, along with the displayed image 24' of the annotation string records 24.
The workstation of FIG. 1 further includes a printer 44, disk drive 46 and communications adapter 48, all connected to the processor 20. In addition, a keyboard 50 connected to the processor 20, enables the workstation user to operate the electronic book management system.」(第5カラム第67行?第6カラム第9行)
(当審による邦訳:図1のワークステーションは、プロセッサ20に接続された、フォーマットされたテキストストリーム25の表示イメージ25’を注釈文字列レコード24の表示イメージ24’と共にWYSIWIGで表示するディスプレイ26をさらに含んでいます。
図1のワークステーションはプロセッサ20にすべて接続された、プリンタ44、ディスクドライブ46および通信アダプター48をさらに含んでいます。さらに、プロセッサ20に接続されたキーボード50によってワークステーション・ユーザは電子ブックマネジメントシステムを操作することができます。)

え「FIG. 2 is a more detailed diagram of the memory image for the formatted text stream 25, showing in particular the paragraph coordinates 56 associated with each particular paragraph and heading in the formatted text stream 25. The formatted text stream 25 illustrated in FIG. 2 has structured document tags similar to those referenced above. The structured document tags for the chapter heading is begin tag [h1] and ending tag [/h1]. Under the chapter heading, there are two paragraphs, each denoted by paragraph begin tag [p] and end tag [/p]. The formatted text stream 25 is characterized by a hierarchical organization, in that the first topic heading depicted by its begin tag [h2] and end tag [/h2], is subsidiary to the chapter heading in the hierarchy. Similarly, the second topic heading denoted by its begin tag [h2] and end tag [/h2], has an equal level in the hierarchy with the first topic heading, but is also subsidiary to the chapter heading. Still further, the first subtopic heading denoted by its begin tag [h3] and end tag [/h3], is subsidiary to the second topic heading. Use is made of this hierarchical structure for the formatted text stream 25, to establish a coordinate system 56. The coordinate system is shown in FIG. 2 with four digits representing the hierarchical level of the particular heading or paragraph entry to which the coordinate is associated. For example, the paragraph of 42' has a coordinate of hl=1, h2=1, h3=0 and p=2. This means that the paragraph 42' is part of the first h1 chapter heading, part of the first h2 topic heading, and is not part of any subsidiary topic heading to the first topic heading. The p=2 coordinate represents that paragraph 42' is the second paragraph under the first topic heading.」(第6カラム第10?41行)
(当審による邦訳:図2は、個々の特定の段落および標題に関連した段落コーディネート56を特に示すフォーマットされたテキストストリーム25のメモリイメージのさらに詳細な図です。図2で示された、フォーマットされたテキストストリーム25は、上で参照されたものと同種の構造化されたドキュメント・タグを有しています。章標題のための構造化されたドキュメント・タグはタグ[h1]で始まりタグ[/h1]で終了します。章標題の下には、その各々が開始タグ[p]および終了タグ[/p]で示された、2つの段落があります。このフォーマットされたテキストストリーム25は、開始タグ[h2]と終了タグ[/h2]によって描かれた最初のトピック標題が、この階層中の章標題に従属的であるという階層構造を特徴とします。同様に、開始タグ[h2]および終了タグ[/h2]によって表示された第2のトピック標題は、最初のトピック標題と等しい階層レベルを持っていて、やはり、章標題に従属的です。さらに、開始タグ[h3]および終了タグ[/h3]によって表示された最初のサブトピック標題は、第2のトピック標題に従属的です。この階層的構造はコーディネートシステム56を確立するためにフォーマットされたテキストストリーム25に対して活用されます。このコーディネートシステムは、コーディネートが関連させられる特定の標題または段落エントリーの階層的レベルを表現する4つの数字により図2のように示されます。例えば、段落42’はh1=1、h2=1、h3=0およびp=2のコーディネートを持ちます。これは、段落42’が最初のh1章標題の一部である最初のh2トピック標題の一部であり、最初のトピック標題への任意の従属的なトピック標題の一部ではないことを意味します。コーディネートp=2は、当該段落42’が最初のトピック標題の下の第2段落であることを意味します。)

お「User 1 will have a copy of the formatted text stream 25 in his workstation and will control the position of the cursor 54 to be adjacent to the paragraph of text 40 and will enter by means of his keyboard 50 the annotation 28 "spelling ?", questioning the spelling of an item in the paragraph.」(第7カラム第20?25行)
(当審による邦訳:ユーザ1は、フォーマットされたテキストストリーム25のコピーを彼のワークステーションに持っており、テキスト40の示す段落付近の位置にカーソル54を制御し、段落中のアイテムのスペリングを質問して、彼のキーボード50によって注釈28「スペリング?」を入力するでしょう。)

か「In accordance with the invention, the annotation string records 28', 32' and 36' are identified as corresponding with the paragraphs 40, 42 and 43, respectively, of the formatted text stream 25.」(第7カラム第47?51段落)
(当審による邦訳:発明に従って、注釈文字列レコード28’、32’および36’は、それぞれ、フォーマットされたテキストストリーム25の段落40、42および43に対応するものと識別されます。)

き「The invention is capable of associating annotation strings with individual words within a paragraph by providing the coordinates "h1," "h2," "h3" and "p" as described above and, as shown in FIG. 2, further including a "/w" which indicates the number of words from the beginning of the paragraph for the location of the target word. The location of the target word is then associated with the annotation string, as has been described above for association with paragraphs. The word count offset value "/w" is also included in the specification of the coordinates included in the annotation string record of FIG. 3.」(第8カラム第27?38段落)
(当審による邦訳:この発明は、上述したようにコーディネート「h1」、「h2」、「h3」および「p」を規定し、図2に示されるように、ターゲットワードの位置に対する段落の始めからの単語の数を示す「/w」をさらに含めることにより、段落内の個々のワードに注釈文字列を関連させることができます。ターゲットワードの位置は、そのとき、上述したように段落に関連するように注釈文字列に関連づけられます。ワードカウント・オフセット値「/w」も、図3の注釈文字列レコードに含まれたコーディネートの規格に含まれています。)

ここで、上記各記載事項を各種常識に照らせば、以下のことがいえる。
(あ)上記記載事項中の「ワークステーション」は、文書を表示するとともに注釈を付ける方法を提供するための装置だから、「文書処理システム」とも呼び得るものである。
(い)上記記載事項中の「章」「節」「段落」等としてタグにより定義づけられているそれぞれのドキュメント要素、及びそのドキュメント要素の中の各ワードは、ユーザが個別に選択可能なものであり、「オブジェクト」とも呼び得るものである。
(う)上記記載事項中の「ディスプレイ26」は、構造化された複数の上記「オブジェクト」を、WYSIWYG形式でユーザが選択可能に表示する能力を有しているから、「ユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページ」として整形しその表示対象部分を画面上に表示する能力を有している。

したがって、引用例1には
「ディスプレイ26、プロセッサ20、キーボード50およびディスクドライブ46を有する文書処理システムにおいて注釈を付けるためのコンピュータ実施方法であって、前記コンピュータは、
ファイルの中のコンテキスト部分の中のユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページの表示対象部分をディスプレイ26の表示画面上に表示するステップと、
ユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページからの選択に関するユーザ入力を前記キーボード50から受け取るステップと、
選択の前記オブジェクトに関連する注釈を作成するステップと、
前記ファイルのコンテキスト部分の中の前記選択のオブジェクトのコーディネート56を決定するステップと、
前記コーディネートと前記注釈を前記ファイルのコンテキスト部分とは別個に前記ディスクドライブ46に記憶するステップと、
を実行するコンピュータ実施方法」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3-2)原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第5737599号明細書(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

く「Bookmark 45 allows a user to select and display a particular portion of the document that the user (or a different user) has specifically marked and labeled with text (or, alternatively, graphics). For example, different chapter headings can be displayed as labels in bookmark 45 so that when the user selects a chapter, the first page of that chapter is displayed in view window 39.」(第11カラム第52?59行)
(当審による邦訳:ブックマーク45は、ユーザ(あるいは異なるユーザ)がテキスト(またはその代わりにグラフィックス)に特別にマークやラベルを付けたドキュメントの特定の部分を、ユーザが選択し表示することを可能にします。例えば、ユーザが章を選択するとき、その章の最初のページが表示ウィンドウ39に表示されるように、異なる章標題は、ブックマーク45中のラベルとして表示することができます。)

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(1)引用発明の「プロセッサ20」「ディスプレイ26」「ディスクドライブ46」「キーボード50」は、それぞれ、本願発明の「コンピュータ」「ディスプレイデバイス」「記憶デバイス」「入力デバイス」に相当する。
(2)引用発明の「コーディネート56」は、注釈と関連付けられた上記「オブジェクト」が電子ブックファイル内(ドキュメント内)のどこにあるのかを特定するものであるから、本願発明の「ファイル位置」に相当する。
(3)引用発明の「ファイルのコンテキスト部分」と本願発明の「ファイルの中の修正不可の部分」とは、「ファイルの特定部分」である点で共通する。

したがって、本願補正発明と引用発明との間には、以下の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「ディスプレイデバイス、コンピュータ、入力デバイスおよび記憶デバイスを有する文書処理システムにおいて注釈を付けるためのコンピュータ実施方法であって、前記コンピュータは、
ファイルの特定部分の中のユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページの表示部分を前記ディスプレイデバイスの表示画面上に表示するステップと、
ユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページからの選択に関するユーザ入力を前記入力デバイスから受け取るステップと、
選択の前記オブジェクトに関連する注釈を作成するステップと、
前記ファイルの特定部分の中の前記選択のオブジェクトのファイル位置を決定するステップと、
前記位置と前記注釈を前記ファイルの特定の部分とは別個に前記記憶デバイスに記憶するステップと、
を実行するコンピュータ実施方法。」

(相違点1)
本願発明の「ファイルの特定部分」は、「ファイルの中の修正不可の部分」であるのに対し、引用発明の「ファイルの特定部分」(ファイルのコンテキスト部分)は、「ファイルの中の修正不可の部分」の中とは限らない(引用例1には、「修正不可の部分」に関する記載がない。)点。

(相違点2)
本願発明は、「その後、前記注釈が選択された時に、前記表示画面上の第2の表示部分を前記位置に基づいて前記選択のオブジェクトにナビゲートするステップ」を有しているのに対し、引用発明は、それに相当するステップを有しない(引用例1にはそれに相当するステップに関する記載がない。)点。

5.判断
上記相違点について検討する。

(相違点1)について
以下の事情を勘案すると、引用発明の「ファイルの特定部分」(ファイルのコンテキスト部分)を「ファイルの中の修正不可の部分」の中とすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(ア)文書処理システム一般において、扱う文書ファイルを誰もが自由に修正できるよう設定したり、特別な権限等を有しない者に対してはファイルの一部または全部を修正不可として文書を保護したりできることは、周知の技術である。
(イ)引用発明も文書処理システムであり、そこにおいても上記周知の技術を用いてファイルの一部または全部を修正不可とするのが有用な場合があることは、当業者に自明である。
(ウ)引用発明は、もともと注釈等をファイルの特定部分とは別個に記憶するものであり、注釈等を付加しても文書のオリジナル部分は何ら変更されないから、上記周知の技術を用いてファイルの一部または全部を修正不可にできない理由はない。
(エ)上記(ア)?(ウ)のことは、取りも直さず、引用発明の「ファイルの特定部分」(ファイルのコンテキスト部分)を「ファイルの中の修正不可の部分」とすることが当業者にとって容易であったことを意味している。

(相違点2)について
以下の事情を勘案すると、引用発明に、「その後、前記注釈が選択された時に、前記表示画面上の第2の表示部分を前記位置に基づいて前記選択のオブジェクトにナビゲートするステップ」に相当するステップを付加することも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(ア)引用発明において「前記ファイルのコンテキスト部分の中の前記選択のオブジェクトのコーディネート56を決定するステップ」(前記ファイルの特定部分の中の前記選択のオブジェクトのファイル位置を決定するステップ)とその「コーディネート」(ファイル位置)を「記憶するステップ」が設けられている理由が、後に「注釈」と「選択のオブジェクト」とを関連付けて表示することを可能にするためであることは、当業者に自明であり、引用発明に、「後に『注釈』と『選択のオブジェクト』を関連付けて表示するステップ」を付加することは、当業者が容易に推考し得たことである。
(イ)引用発明に「後に『注釈』と『選択のオブジェクト』を関連付けて表示するステップ」を付加する際の画面構成や所望表示情報の選択方法等のユーザインタフェースをどのように構成するかは当業者が適宜決定すべき事項である。
(ウ)「『選択のオブジェクト』に相当するものといえる『ドキュメントの特定の部分』に関連付けられた特定の情報(ブックマーク)が選択された時に、画面の特定の表示部分に当該『ドキュメントの特定の部分』を表示する」ようにしたユーザインタフェース、換言すれば、「『ドキュメントの特定の部分』に関連付けられた特定の情報(ブックマーク)が選択された時に、画面の特定の表示部分を上記『ドキュメントの特定の部分』にナビゲートする」ようにしたユーザインタフェースは、上記引用例2にも示されるように周知であり、引用発明に上記「後に『注釈』と『選択のオブジェクト』を関連付けて表示するステップ」を付加する際にも該周知のユーザインタフェースが有用な場合があることは、当業者に自明である。
(エ)引用発明の「注釈」は、引用例2のブックマークと同様に「ドキュメントの特定の部分」に関連付けられた情報であり、引用発明に上記「後に『注釈』と『選択のオブジェクト』を関連付けて表示するステップ」を付加すると共に上記周知のユーザインタフェースを採用しようとした場合に、該「後に『注釈』と『選択のオブジェクト』を関連付けて表示するステップ」を「その後、前記注釈が選択された時に、前記表示画面上の第2の表示部分を前記位置に基づいて前記選択のオブジェクトにナビゲートするステップ」に相当するステップとすることは、当業者が普通に考えることである。

(効果)
本願発明の奏する効果は、引用発明及び周知の事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別なものということはできない。

(請求人の主張)
なお、平成20年11月10日付け手続補正書により補正された審判請求書において、請求人は「引用文献1はファイルの中の修正不可能な部分に注釈をつけることを目的としていないので、引用文献1は文書の任意部分に対してつけた注釈全てを文書とは別個に記憶します。これに対して本願発明は修正不可能なファイル部分についての注釈を記憶手段に記憶するので記憶手段の注釈に係る記憶容量が引用文献1に係る発明よりも小さいという効果を奏します。」との主張をし、それを根拠に本願発明の進歩性が肯定されるべき旨主張しているが、以下の理由で採用することができない。
(ア)本願請求項22にはファイルの中で修正可能な部分に存在するオブジェクトの場合と修正不可の部分に存在するオブジェクトの場合とで処理を異ならせることに関する記載はなく、該請求項22の文言上、本願発明はファイル全体が修正不可の場合も当然に含んでおり、そのようなものについては、上記請求人の主張は妥当しない。
(イ)仮に、本願発明を「修正不可の部分は別個に記憶し修正可能な部分は直接オリジナル文書を修正するようなもの」に限定解釈できたとしても、以下の事情にかんがみれば、引用発明をそのようなもの(修正不可の部分は別個に記憶し修正可能な部分は直接オリジナル文書を修正するようなもの)とすることも当業者が容易に推考し得たことというべきである。
a.文書処理システムにおいて、直接オリジナル文書を修正するようにすること、及び上述したようにファイルの一部を修正不可として文書を保護すること、はいずれも周知であり、引用発明にそれらの周知技術を共に採用することは当業者が適宜なし得たことである。
b.上記a.のことは、取りも直さず、引用発明を「修正不可の部分は別個に記憶し修正可能な部分は直接オリジナル文書を修正するようなもの」とすることが当業者にとって容易であったことを意味している。

6.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-03 
結審通知日 2010-12-10 
審決日 2010-12-22 
出願番号 特願2001-544198(P2001-544198)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今村 剛  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 加内 慎也
長島 孝志
発明の名称 注釈を付ける文書処理装置  
復代理人 合田 潔  
代理人 谷 義一  
復代理人 濱中 淳宏  
代理人 阿部 和夫  

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