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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1254595
審判番号 不服2009-10673  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-05 
確定日 2012-03-28 
事件の表示 特願2003-542190「N6-置換アデニンに基づく複素環状化合物およびその調製方法、ならびに、薬、化粧品、成長調節剤や、上記化合物を含む医薬品、化粧品、成長調節剤の調製のための使用」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月15日国際公開、WO03/40144、平成17年 3月31日国内公表、特表2005-508386〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成14年8月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2001年8月2日,チェコ国)を国際出願日とする出願であって,平成20年9月18日付けで拒絶理由通知書が出され,同年12月26日付けで誤訳訂正書による補正がなされたが,平成21年3月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月5日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成21年6月5日付けの手続補正の補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年6月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成21年6月5日付けの手続補正は特許請求の範囲を補正するものであって,平成20年12月26日付け誤訳訂正書の特許請求の範囲の請求項3に
「薬学担体を含み,請求項1記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む化粧品。」とあったのを,
請求項1として,
「6-(4-ヒドロキシベンジルアミノ)プリンと薬学担体とを含む化粧品。」(以下,「本願補正発明」という。)と補正することを含むものである。
上記補正は,請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である請求項1記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩について,補正前の請求項1に記載されたものの中の一つである「6-(4-ヒドロキシベンジルアミノ)プリン」に限縮するものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項
原査定で引用され,本願優先権主張日前に頒布された刊行物である刊行物1には,以下の事項が記載されている。(以下,下線は当審で付加した。)
刊行物1:特開平7-233037号公報(原査定の引用文献13)

(1)刊行物1に記載された事項
[1a]「【請求項1】 6-ベンジルアミノプリン(6-Benzylaminopurine) 及び/又はその誘導体を有効成分として含有することを特徴とする皮膚化粧料。」(特許請求の範囲)

[1b]「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,6-ベンジルアミノプリン (6-Benzylaminopurine)及び/又はその誘導体(以下,これらを総称して単にBAPと呼ぶことがある。)を含有することを特徴とする皮膚の老化防止効果に優れた皮膚化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術および課題】皮膚老化とは,加齢などの内的因子や紫外線,活性酸素などの外的因子によって,皮膚が本来維持している収縮性,柔軟性,保湿性などが衰える現象をいう。すなわち,老化皮膚とは,乾燥し滑らかさの無い荒れ肌のことで,皮膚表面では角質細胞の剥離現象が認められ,真皮ではコラーゲン/エラスチン比が高くなっており,このため,しわが多い。ミクロ的には,細胞分裂,細胞分化速度の衰えなどの細胞機能の老化に起因したターンオーバー速度の低下が認められるようになる。したがって,皮膚の老化は,皮膚を構成する細胞自身の老化がマクロ的現象として表れたものということができる。」

[1c]「【0005】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者は,上記課題を解決すべく鋭意研究した結果,6-ベンジルアミノプリン (6-Benzylaminopurine)及び/又はその誘導体を配合した皮膚化粧料が,ケラチノサイトや線維芽細胞の細胞増殖を活性化し,細胞自身の老化を防ぐことにより皮膚の張りを保つことを見いだし,本発明を完成した。すなわち,本発明によれば,6-ベンジルアミノプリン (6-Benzylaminopurine)及び/又はその誘導体を含有したことを特徴とする皮膚の老化防止に優れた皮膚化粧料が提供される。
【0006】本発明において用いられるBAPは次の一般式で示される物質であって,常法に従って,天然物から精製した物,或は合成によって得られた物のいずれも使用できる。
【化1】

【0007】前記一般式において,R^(1 )で示される置換基としては,・・・,無置換または置換基を有するベンジルアミノ基(-NH-R,Rで示される置換基としては,例えば,ベンジル基,2-メチルベンジル基,3-メチルベンジル基,4-メチルベンジル基,4-エチルベンジル基,3-クロロベンジル基,4-クロロベンジル基,2,4-ジクロロベンジル基,2-ヒドロキシベンジル基,3-フルオロベンジル基,4-ニトロベンジル基,4-ブロモベンジル基,4-フルオロベンジル基,3-ニトロベンジル基,4-プロピルベンジル基,3,5-ジフルオロベンジル基,2-シアノベンジル基,2-アセトアミノベンジル基,4-アセトアミノベンジル基,4-メトキシカルボニルベンジル基,4-ジメチルアミノベンジル基,4-メトキシベンジル基,3-トリメチルシリルオキシベンジル基,3-トリフルオロメチルベンジル基,4-ブチルジメチルシリルオキシベンジル基,2-メチルチオベンジル基,4-トリメチルシリルオキシベンジル基,4-メチルチオベンジル基など),・・・が挙げられ,
【0008】R^(2) で示される置換基としては,水素原子,・・・などが挙げられ,具体例としては,以下の化合物が挙げられる。
【0009】
【化2】

・・・

(以下略)


[1d]「【0013】本発明の皮膚化粧料は,皮膚施用上適する物であれば特に制限はなく,例えばパップ剤,プラスター剤,ペースト剤,クリーム,軟膏,エアゾール剤,乳剤,ローション,乳液,エッセンス,パック,ゲル剤,パウダー,ファンデーション,サンケア,バスソルトなどの医薬品,医薬部外品,化粧料として許容し得る公知の形態で幅広く使用に供されるものである。この場合,BAPの配合量は,使用目的や剤型によって多少異なるが,通常,皮膚化粧料全体の0.0001ないし10重量%,好ましくは0.01ないし5重量%,特に0.1ないし3重量%である。
【0014】また,本発明の化粧料を調製する場合,通常に用いられる種々の公知の有効成分,例えば・・・などをその時々の目的に応じて適宜添加して使用することができる。さらに,前述の医薬品,医薬部外品,化粧料には公知の有効成分に加え,油脂類などの基剤成分の他,必要に応じて・・・など種々の添加剤を併用できる。」

[1e]「【0015】
【実施例】次に実施例に基づき本発明を説明するが,これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0016】<試験例1> ヒトケラチノサイトの増殖促進作用試験
(1) 試験方法
ヒト胸由来ケラチノサイト(クラボウ社)を直径3.5cmプラスチックシャーレ(Falcon3001)に0.7×10^(5) 個播種し,表皮角化細胞増殖培地(K-GM:クラボウ社)で1日間培養した後,表皮角化細胞基礎培地(K-BM:クラボウ社)に置換すると同時にエタノールに溶解した,本発明のBAP,及びその誘導体の代表例として,4-methoxy-6-benzylaminopurine (MBAP)を最終1ないし10μMになるように添加し,さらに3日間培養した。培養終了後は,培養液を除去し,トリプシンで細胞を剥離し,血球カウンターを用いて細胞数を測定し,BAP及びその誘導体無添加のものと比較した。なお,ポジティブコントロールとしてはレチノイン酸を用いた。
【0017】(2) 試験結果
表1及び表2に示すごとく,BAP及びMBAPは濃度依存的にケラチノサイト増殖を促進した。一方,レチノイン酸は毒性が高いため,限られた濃度範囲においてしか効果が認められなかった。
(略)
【0018】

【0019】(3) 考察
細胞数が最初の播き数よりも減少するのは,培地交換時に細胞数が半減するためで,試料添加後はいずれの群も増加している。したがって,BAP及びMBAPにはケラチノサイトの増殖促進作用があると考えられる。
【0020】<試験例2> ヒト線維芽細胞の増殖促進およびコラーゲン生成亢進作用
(1) 試験方法
ヒト由来正常皮膚線維芽細胞(CCD-27SK)を直径3.5cmのプラスチックシャーレ(Falcon 3001) に0.8×10^(5) 個播種し,10%ウシ胎児血清を含むイーグルMEM培地で1日培養後,培地を表皮角化細胞増殖培地(K-GM:クラボウ社)に置換すると同時に,エタノールに溶解した本発明のBAP及びその誘導体の代表例として,試験例1と同じく4-methoxy-6-benzylaminopurine (MBAP)を最終1ないし20μMになるように添加し,さらに3日間培養した。培養終了後,培養液を除去し,トリプシンで細胞を剥離し,血球カウンターを用いて細胞数を測定し,BAP及びその誘導体無添加のものと比較した。なお,プロコラーゲンの測定には,Procollagen Type I C-peptide測定キット(宝酒造株式会社製)を用い,試料無添加区のものをコントロールとし,添加区とのコラーゲン量比で表した。なお,ポジティブコントロールとしてはレチノイン酸を用いた。
【0021】(2) 試験結果
表3及び4に示すごとく,BAP及びMBAPは濃度依存的に線維芽細胞の増殖を促進し,コラーゲン産生量も対照群(コントロール及びレチノイン酸)より多かった。
【0022】
(略)
【0023】

【0024】(3) 考察
細胞数が最初の播き数よりも減少するのは,培地交換時に細胞数が半減するためで,試料添加後はいずれの群も増加している。したがって,BAP及びMBAPには線維芽細胞の増殖促進作用があると考えられる。また,コラーゲン産生量もBAP及びMBAP添加により増加することから,細胞の活性化作用もあると考えられる。」

[1f]「【0033】
【発明の効果】本発明によれば,6-ベンジルアミノプリン (6-Benzylaminopurine)及び/又はその誘導体を含有した安全な皮膚化粧料が提供され,該化粧料は表皮と真皮からなる皮膚全体の老化を根本的に改善することができるため,いつまでもみずみずしく張りのある肌を保つことができる。」

3 対比・判断
(1)刊行物1記載の発明
上記の記載(特に[1a])によれば,刊行物1には,以下の発明(以下,「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「6-ベンジルアミノプリンの誘導体を有効成分として含有する皮膚化粧料。」

(2)本願補正発明と刊行物1発明との対比
ア 刊行物1発明の「6-ベンジルアミノプリンの誘導体」と,本願補正発明の「6-(4-ヒドロキシベンジルアミノ)プリン」とは,「6-ベンジルアミノプリンの誘導体」である点で共通する。

イ 刊行物1発明の「皮膚化粧料」は,本願補正発明の「化粧品」に相当する。

以上のことを総合すると,両発明は,
「6-ベンジルアミノプリンの誘導体を含む化粧品。」という点で一致し,次の相違点を有する。

(相違点1)
化粧品に含まれる成分として,本願補正発明では「薬学担体」を特定するのに対し,刊行物1発明ではかかる特定がなされていない点。
(相違点2)
6-ベンジルアミノプリンの誘導体が,本願補正発明では「6-(4-ヒドロキシベンジルアミノ)プリン」と特定されているのに対し,刊行物1発明ではかかる特定がなされていない点。

(3)相違点についての検討
ア 相違点1について
上記[1d]には,「前述の医薬品,医薬部外品,化粧料には公知の有効成分に加え,油脂類などの基剤成分の他,必要に応じて・・・など種々の添加剤を併用できる。」と記載されているから,刊行物1発明に対して,医薬品にも添加可能な基剤成分,すなわち薬学担体を配合することは,当業者が容易になし得ることである。

イ 相違点2について
刊行物1発明は,皮膚の老化防止効果に優れた皮膚化粧料の有効成分として「6-ベンジルアミノプリンの誘導体」を含有するもので(上記[1b]),摘記箇所[1e]にて,「4-methoxy-6-benzylaminopurine (MBAP)」,つまり6-(4-メトキシベンジルアミノ)プリンについて,その皮膚老化防止効果が実験によって確認されている。
さらに,摘記箇所[1c]において,6-ベンジルアミノプリンの誘導体として,6-(2-ヒドロキシベンジルアミノ)プリン,6-(4-ブチルジメチルシリルオキシベンジルアミノ)プリン,6-(4-トリメチルシリルオキシベンジルアミノ)プリンが例示されている。
上記の6-(4-ブチルジメチルシリルオキシベンジルアミノ)プリン,6-(4-トリメチルシリルオキシベンジルアミノ)プリンにおいて,ブチルジメチルシリル基及びトリメチルシリル基は,ヒドロキシ基の保護基として周知であるから(例えば,特開平8-53491号公報【0023】【0024】【0031】【0032】,特開平6-157455号公報の請求項1?2,特開平10-59966号公報【0025】を参照),当業者であれば,上記保護基を脱保護した化合物である6-(4-ヒドロキシベンジルアミノ)プリンを用いてみることは極自然なことである。
さらに,6-(4-ヒドロキシベンジルアミノ)プリンの異性体である6-(2-ヒドロキシベンジルアミノ)プリンが例示されていること,及び6-(4-ヒドロキシベンジルアミノ)プリンと類似の構造である6-(4-メトキシベンジルアミノ)プリンにおいて皮膚老化防止効果が確認されていることも参酌すると,刊行物1発明において,6-ベンジルアミノプリンの誘導体の一つとして,6-(4-ヒドロキシベンジルアミノ)プリンを用いることを想到し,実際にその皮膚老化防止効果を確認することは,当業者が容易になし得ることである。

また,本願補正発明の効果について検討するに,本件明細書は,実施例6にて,6-(2-ヒドロキシベンジルアミノ)プリン並びに6-(3-ヒドロキシベンジルアミノ)プリンの老化防止効果は開示するものの,6-(4-ヒドロキシベンジルアミノ)プリンの効果については何ら開示していない。
そこで,平成21年6月5日付けの審判請求書に添付された実験成績証明書を参照するに,6-(4-ヒドロキシベンジルアミノ)プリンの奏する老化防止効果は,異性体である6-(2-ヒドロキシベンジルアミノ)プリン並びに6-(3-ヒドロキシベンジルアミノ)プリンの効果と比較しても,予測し得ない程に顕著に優れているものともいえない。
また,6-(4-ヒドロキシベンジルアミノ)プリンが奏する低毒性についての効果は,摘記箇所[1f]に,6-ベンジルアミノプリンの誘導体を含有した皮膚化粧料は安全である旨が開示されているに加えて,そもそも配合成分が身体に対して安全であることは化粧料に当然に求められる性質であるから,当該効果を確認したものでしかない。

4 むすび
したがって,本願補正発明は,刊行物1に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成21年6月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願請求項1?6に係る発明は,平成20年12月26日付けの誤訳訂正書により補正された明細書の特許請求の範囲請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであり,その請求項3に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,下記の事項により特定される発明である。
「薬学担体を含み,請求項1記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む化粧品。」

2 引用刊行物およびその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物,および,その記載事項は上記「第2 2」に記載のとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記「第2」で検討した本願補正発明から,化合物について,その限定事項である「6-(4-ヒドロキシベンジルアミノ)プリン」を,これを含む複数の化合物から選ばれる化合物とするものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第2 3」に記載したとおり,刊行物1に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物1に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-27 
結審通知日 2011-11-01 
審決日 2011-11-17 
出願番号 特願2003-542190(P2003-542190)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07D)
P 1 8・ 575- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大宅 郁治當麻 博文  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 ▲高▼岡 裕美
関 美祝
発明の名称 N6-置換アデニンに基づく複素環状化合物およびその調製方法、ならびに、薬、化粧品、成長調節剤や、上記化合物を含む医薬品、化粧品、成長調節剤の調製のための使用  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  

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