ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
---|---|
管理番号 | 1254598 |
審判番号 | 不服2009-11820 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-06-29 |
確定日 | 2012-03-28 |
事件の表示 | 特願2003-522004「データ同期化インターフェイス」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月27日国際公開、WO03/17170、平成17年 9月 2日国内公表、特表2005-526301〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2002年8月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年8月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年11月7日付けで拒絶理由通知がなされ、平成21年2月17日付けで手続補正がなされたが、同年3月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年7月9日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成21年7月9日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年7月9日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の目的の適否について 平成21年7月9日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)の目的が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否かを検討する。 本件手続補正により、特許請求の範囲は、 「 【請求項1】 シンクロナイザーツールによって情報を処理する方法であって、 源システムから共通のフォーマットの情報を受信することと、 情報を待ち行列として記憶することと、 情報を保持する一方で、目標システムへの情報の伝送を開始することと、 目標システムが情報を受信したことを示す目標システムの肯定応答を受信することと、 目標システムの肯定応答を受信したときに、源システムへ肯定応答を送ることとを含む方法。 【請求項2】 共通のフォーマットがXMLフォーマットである請求項1記載の方法。 【請求項3】 目標システムがデータベースであり、情報がデータベースにおける複製のためのデータを含む請求項1記載の方法。 【請求項4】 情報が、目標システムへ方向付けられた命令であって、目標システムの肯定応答を送ることが、命令が処理されたことを示す請求項1記載の方法。 【請求項5】 シンクロナイザーツールをインターフェイスとして情報を処理する方法であって、 源システムから共通のフォーマットのデータを受信することと、 持続性中間メモリにデータを記憶することと、 情報を保持する一方で、目標システムへの情報の伝送を開始することと、 目標システムから肯定応答を受信したときに、源システムへ肯定応答を送ることと、 目標システムへの情報の伝送が不成功であったという指標を受信したときに、目標システムへの情報の伝送を再開することとを含む方法。 【請求項6】 多数の目標システムと関係付けられている多数の源システムから受信したデータを記憶することと、 多数の源システムから、関係付けられている多数の目標システムへのデータの伝送を開始することとをさらに含む請求項5記載の方法。 【請求項7】 肯定応答を受信したことを示す源システムの肯定応答を受信することと、 持続性中間メモリからデータを取り除くこととをさらに含む請求項5記載の方法。 【請求項8】 源システムと目標システムとを接続するシンクロナイザーツールのインターフェイスであって、 源システムからの共通のフォーマットのデータを記憶する持続性中間メモリと、 源システムからデータを受信し、データを持続性中間メモリに記憶し、目標システムへのデータの伝送を開始し、目標システムから目標システムの肯定応答を受信し、肯定応答を源システムへ送るように構成されているプロセッサとを含むインターフェイス。 【請求項9】 プロセッサが、目標システムへのデータの伝送を再開するようにさらに構成されている請求項8記載のインターフェイス。 【請求項10】 シンクロナイザーツールをインターフェイスとして情報を処理するためのシステムであって、 源システムから共通のフォーマットの情報を受信するための手段と、 情報を待ち行列として記憶するための手段と、 情報を保持する一方で、目標システムへの情報の伝送を開始するための手段と、 目標システムが情報を受信したことを示す目標システムの肯定応答を受信するための手段と、 目標システムの肯定応答を受信したときに、源システムへ肯定応答を送るための手段とを含むシステム。 【請求項11】 源システムと目標システムとを接続するシンクロナイザーツールに対する動作方法のコンピュータ実行可能指令を記憶する媒体であって、実行されるときに、 源システムから共通のフォーマットの情報を受信することと、 情報を待ち行列として記憶することと、 情報を保持する一方で、目標システムへの情報の伝送を開始することと、 目標システムが情報を受信したことを示す目標システムの肯定応答を受信することと、 目標システムの肯定応答を受信したときに、源システムへ肯定応答を送ることとを含む方法をコンピュータに実行させるコンピュータ読み出し可能媒体。」 との記載から、 「 【請求項1】 インターフェイスとしてシンクロナイザーツールを使用して、1以上の源システムから1以上の目標システムへ情報を伝送する方法であって、 前記1以上の源システムは、前記1以上の目標システムと異なり、 前記シンクロナイザーツールにおいて実行される、 前記1以上の源システムから共通のフォーマットの情報を受信することと、 前記情報を待ち行列として記憶することと、 前記情報を保持する一方で、前記1以上の目標システムへの前記情報の伝送を開始することと、 前記1以上の目標システムが情報を受信したことを示す目標システムの肯定応答を受信したときに、前記1以上の源システムへ肯定応答を送信することと、 前記1以上の目標システムにおいて前記情報が受信されていないと判断されたときに、前記1以上の目標システムへの伝送を再開することと、 前記1以上の目標システムから前記肯定応答を受信したときに、前記待ち行列として記憶している情報を取り除くこととを含む方法。 【請求項2】 前記共通のフォーマットは、XMLフォーマットである請求項1記載の方法。 【請求項3】 前記1以上の目標システムはデータベースであり、前記情報が前記データベースにおける複製のためのデータを含む請求項1記載の方法。 【請求項4】 前記情報は、前記1以上の目標システムへ方向付けられた命令であって、前記目標システムの肯定応答を送信することは、前記命令が処理されたことを示す請求項1記載の方法。 【請求項5】 インターフェイスとしてシンクロナイザーツールを使用して、1以上の源システムから1以上の目標システムへ情報を伝送する方法であって、 前記1以上の源システムは、前記1以上の目標システムと異なり、 前記シンクロナイザーツールにおいて実行される、 前記1以上の源システムから共通のフォーマットの情報を受信することと、 前記情報を持続性中間メモリ中に記憶させることと、 前記情報を保持する一方で、前記1以上の目標システムへの前記情報の伝送を開始することと、 前記1以上の目標システムから肯定応答が受信されたときに、前記1以上の源システムへ肯定応答を送信し、前記持続性中間メモリから前記情報を取り除くことと、 前記1以上の目標システムへの前記情報の伝送が不成功であったという指標を受信したときに、前記1以上の目標システムへの前記情報の伝送を再開することとを含む方法。 【請求項6】 1以上の源システムと、源システムとはシステムが異なる1以上の目標システムとを接続するシンクロナイザーツールのインターフェイスであって、 前記1以上の源システムからの共通のフォーマットのデータを記憶する持続性中間メモリと、 前記1以上の源システムから前記データを受信し、前記データを前記持続性中間メモリ中に記憶させ、前記1以上の目標システムへの前記データの伝送を開始し、前記1以上の目標システムから目標システムの肯定応答を受信し、肯定応答を前記1以上の源システムへ送信し、前記1以上の目標システムへの情報の伝送が不成功であったという指標を受信し、前記1以上の目標システムへの情報の伝送を再開し、前記持続性中間メモリから前記データを取り除くように構成されているプロセッサとを具備するインターフェイス。 【請求項7】 インターフェイスとしてシンクロナイザーツールを使用することによって、1以上の源システムから、前記源システムとはシステムが異なる1以上の目標システムへ情報を伝送するシステムであって、 前記1以上の源システムから共通のフォーマットの情報を受信する手段と、 前記情報を待ち行列として記憶する手段と、 前記情報を保持する一方で、前記1以上の目標システムへの前記情報の伝送を開始する手段と、 前記1以上の目標システムが情報を受信したことを示す目標システムの肯定応答を受信する手段と、 前記目標システムの肯定応答を受信したときに、前記1以上の源システムへ肯定応答を送信する手段と、 前記1以上の目標システムにおいて情報が受信されていないと判断されたときに、前記1以上の目標システムへの伝送を再開する手段と、 前記1以上の目標システムから前記肯定応答を受信したときに、前記待ち行列として記憶されている情報を取り除く手段とを含むシステム。 【請求項8】 インターフェイスとしてシンクロナイザーツールを使用することによって、1以上の源システムから、源システムとはシステムが異なる1以上の目標システムへ情報を伝送する方法をコンピュータに実行させるコンピュータ実行可能指令を記憶するコンピュータ読み出し可能媒体において、 前記方法は、 前記1以上の源システムから共通のフォーマットの情報を受信することと、 前記情報を待ち行列として記憶することと、 前記情報を保持する一方で、前記1以上の目標システムへの情報の伝送を開始することと、 前記1以上の目標システムが前記情報を受信したことを示す目標システムの肯定応答を受信することと、 前記目標システムの肯定応答を受信したときに、前記1以上の源システムへ肯定応答を送信することと、 前記1以上の目標システムにおいて前記情報が受信されていないと判断されたときに、前記1以上の目標システムへの伝送を再開することと、 前記1以上の目標システムから前記肯定応答を受信したときに、前記待ち行列として記憶している情報を取り除くこととを含むコンピュータ読み出し可能媒体。」 との記載に補正された。 そこで、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を補正後のものとすることが、補正前のいずれかの請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定して特許請求の範囲の減縮をすることに該当するか否かについて以下に検討する。 まず、補正後の請求項1に記載された発明は「方法」に関するものであり、「インターフェイス」に関する発明であるところの補正前の請求項8または9に記載された発明、「システム」に関する発明であるところの補正前の請求項10に記載された発明、「コンピュータ読み出し可能媒体」に関する発明であるところの補正前の請求項11に記載された発明のいずれかのものを特定するために必要な事項を限定して特許請求の範囲の減縮をしたものでないことは、明らかである。 次に、補正後の請求項1に記載された発明における「前記情報を待ち行列として記憶すること」は、補正前の請求項5あるいは該請求項5を引用する請求項6,7に記載された発明における「持続性中間メモリにデータを記憶すること」の「持続性中間メモリに」との要件を省くものであるとともに、補正後の請求項1に記載された発明における「目標システムにおいて情報が受信されていないと判断されたとき」は、補正前の請求項5あるいは該請求項5を引用する請求項6,7に記載された発明における「目標システムへの情報の伝送が不成功であったという指標を受信したとき」の上位概念にあたるものであるから、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項5乃至7に記載された発明を特定するために必要な事項を限定して特許請求の範囲の減縮をしたものとは認められない。 さらに、補正後の請求項1に記載された発明における「前記1以上の目標システムにおいて前記情報が受信されていないと判断されたときに、前記1以上の目標システムへの伝送を再開すること」、及び「前記1以上の目標システムから前記肯定応答を受信したときに、前記待ち行列として記憶している情報を取り除くこと」は、補正前の請求項1あるいは該請求項1を引用する請求項2乃至4に記載された発明のいずれの発明特定事項を限定したものとも認められない。 以上のとおり、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を補正後のものとすることは、補正前のいずれの請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定して特許請求の範囲の減縮をすることに該当しないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の規定に適合しない。 そして、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を補正後のものとすることが、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、第3号の誤記の訂正、第4号の明りょうでない記載の釈明に該当するものでないことは明らかである。 (2)むすび よって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.補正却下の決定を踏まえた検討 (1)本願発明 平成21年7月9日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成21年2月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「シンクロナイザーツールによって情報を処理する方法であって、 源システムから共通のフォーマットの情報を受信することと、 情報を待ち行列として記憶することと、 情報を保持する一方で、目標システムへの情報の伝送を開始することと、 目標システムが情報を受信したことを示す目標システムの肯定応答を受信することと、 目標システムの肯定応答を受信したときに、源システムへ肯定応答を送ることとを含む方法。」 (2)引用例及び周知例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-216187号公報(以下、「引用例1」という。)、「森嶋 厚行,RDB-XMLミドルウェアSilkRouteにおける実体化XMLビューの構築,情報処理学会研究報告,日本,社団法人情報処理学会,2001年7月17日,Vol.2001 No.70,pp.421?428」(以下、「引用例2」という。)、及び原査定の備考欄において周知例として引用された「梅田 弘之,目指せエキスパート!!グラス片手にSQL Server7.0 第15回,DB Magazine,日本,株式会社翔泳社,2000年12月1日,第10巻 第10号,pp.153?161」(以下、「周知例」という。)には、それぞれ、次の事項が記載されている。 (引用例1) A.「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、装置間でのデータの一致に関する。より詳しくは、複数の装置に保持されているデータベースを一致させるための装置間でのワイヤレスデータ転送に関する。」 B.「【0010】本発明は、種々のコンピューティング装置間で自動的にデータベースを一致させるための方法及び装置を開示する。図1は、中央サーバ102及び離れた場所にある複数のコンピューティング装置104、106、108、110を有する通信システム100を示している。例えば、コンピューティング装置104としてはデスクトップコンピュータ、コンピューティング装置106としてはラップトップコンピュータ、コンピューティング装置108としてはパームトップコンピュータ、コンピューティング装置110としては携帯電話とすることができる。複数の通信リンク112は、中央サーバ102を、離れた位置にあるコンピューティング装置104、106、108、110と接続する。すなわち、システム100は、ハブ・アンド・スポーク型の構成である。 【0011】本発明の一つの好適な実施例では、通信リンク112はワイヤレス通信リンクであり、中央サーバ102はワイヤレスゲートウェイを通してアクセスできるインターネットサーバからなる。この実施例では、離れた位置にあるコンピューティング装置104、106、108、110と中央サーバ102との間の通信は、ワイヤレス・アプリケーション・プロトコール(Wireless Application Protocol("WAP"))に従うが、他の任意のプロトコールを使用することも可能である。」 C.「【0015】図6は、ユーザが共有データベースの一つ、例えばデータベース520に新たな情報を入力したときの、離れた位置にある装置の動作を説明するフローチャート600を示している。まず、データベース520のユーザが新たな情報を入力する(ステップ602)。離れた位置にあるコンピューティング装置106のCPU410はこの新たな情報を特定し(ステップ604)、中央サーバ102への送信が可能な通信ファイルを準備する(ステップ606)。この通信ファイルには、ユーザの各装置に対してユニークに決められている装置識別名、データベース520に対するデータベース識別名、そして新たな情報が含まれている。装置識別名には、ユーザの離れた位置にある異なるコンピューティング装置についてユニークな部分だけでなく、中央サーバ102の各ユーザに対してはユニークであるがそのユーザの装置については共通である部分が含まれている。そしてCPU410は、通信ファイルをワイヤレス送信部430へ送る(ステップ608)。標準的な手続きであるWAP或いはその他の通信プロトコールに従うワイヤレス送信部430は、中央サーバ102との間に通信リンク112を確立し(ステップ610)、中央サーバ102に通信ファイルを転送する(ステップ612)。ファイルが転送されると、ワイヤレス送信部430は通信リンク112を終了させる(ステップ614)。当該分野の通常の知識を有する者であれば認識できるように、ファイル転送の成功又は失敗を示す信号を、離れた位置にあるコンピューティング装置106に中央サーバ102が送信するようにプログラムしておくことも可能である。その場合、離れた位置にあるコンピューティング装置106は、成功を示す信号があったときは通信リンク112を終了させ、失敗を示す信号があったときはそのファイルを再転送する。」 D.「【0016】図7は、中央サーバ102が、離れた位置にあるコンピューティング装置106から通信ファイルを受信する動作を説明するフローチャート700を示している。まず、ワイヤレス受信部240が、通信リンク112を介して転送される通信ファイルを受信する(ステップ702)。ワイヤレス受信部240は、通信ファイルをCPU210に転送する(ステップ704)。CPU210は、正しいユーザ名簿及びデータベースファイルにアクセスするために、装置識別名及びデータベース識別名を用いる(ステップ706)。そしてCPU210は、通信ファイル内の新たな情報を、特定されたデータベースと互換性のあるフォーマットに変換し、データベースファイル、新たな情報のファイル(図示せず)を更新する。この新たな情報のファイルは、全ての装置が一致するまでは、新たな情報を保持している(ステップ708)。次に、CPU210は、更新されたデータべー340と関連する更新リスト350にアクセスし、更新フラグを得る(ステップ710)。特に、情報を送信した離れた位置にあるコンピューティング装置106と関連している更新フラグは、中央サーバ102のメモリ220内のデータベースととにも現在更新されている最中であることを示すようセットされる。離れた位置にある他のコンピューティング装置(この場合は装置104、108、110である)と関連している更新フラグは、これらの離れた位置にある装置のメモリに格納されているデータベースが更新を必要としていることを示すようセットされる。」 E.「【0017】図8は、離れた位置にあるコンピューティング装置104内に格納されているデータベースを更新する中央サーバ102の動作を説明するフローチャート800を示している。離れた位置にあるコンピューティング装置106、108、110を更新するのに中央サーバ102が用いる手続きは、フローチャート800において説明した手続きと実質的に等しい。まず、CPU210は、更新リスト350に表示を更新する必要性がないかどうかをモニタする(ステップ802)。CPU210はメモリ220にアクセスし、メモリ220に格納されている新たな情報のファイルを検索し(ステップ804)、そして更新を必要としている装置の装置リスト330で装置識別名を検索する(ステップ806)。この例では、離れた位置にあるコンピューティング装置104、108、110が更新を必要としているものとする。CPU210は、離れた位置にあるコンピューティング装置104への転送のための通信ファイルを用意する(ステップ807)。この通信ファイルには、新たな情報及びデータベース識別名が含まれている。その後通信ファイルは、ワイヤレス送信部230へ転送される(ステップ807a)。ワイヤレス送信部230は、そのユーザ及び装置を示すユニークな装置識別名を用いて、離れた位置にあるコンピューティング装置104との通信リンクを確立する(ステップ808)。ワイヤレス送信部230は、その後通信ファイルを離れた位置にあるコンピューティング装置104に送信する(ステップ810)。するとCPU210は、更新リスト350内の装置104のためのフラグを、ファイルが更新されたことを示すように更新する。通信ファイルを送信すると、その後ワイヤレス送信部230は、通信リンク112を終了する(ステップ812)。離れた位置にある別のコンピューティング装置が新たな情報を必要としている場合は、制御はステップ807へ戻って、次の離れた位置にあるコンピューティング装置を更新する。最後に、CPU210は更新リスト350をチェックし、すべての装置が更新されたことが示されている場合には、CPU210は新たな情報のファイルを削除する。当該分野の通常の知識を有する者であれば認識できるように、ファイル転送の成功又は失敗を示す信号を、離れた位置にあるコンピューティング装置104が中央サーバ102に送信するようにプログラムしておくことも可能である。その場合、中央サーバ102は、成功を示す信号があったときは通信リンク112を終了させ、失敗を示す信号があったときはそのファイルを再転送する。」 上記A.?E.の記載及び関連する図面を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。) 「中央サーバ102によって情報を処理する方法であって、 離れた位置にあるコンピューティング装置106から新たな情報を含む通信ファイルを受信することと、 離れた位置にあるコンピューティング装置106へファイル転送の成功を示す信号を送信することと、 新たな情報を保持することと、 新たな情報を保持する一方で、離れた位置にあるコンピューティング装置104への新たな情報を含む通信ファイルの転送を開始することと、 離れた位置にあるコンピューティング装置104に対するファイル転送の成功を示す信号を受信することと、 目標システムの肯定応答を受信したときに、源システムへ肯定応答を送ることとを含む方法。」 (引用例2) F.「XMLはインターネット上でアプリケーション同士がデータ交換を行うための共通フォーマットとなりつつある。一方,データは実際にはXMLリポジトリ以外のデータベースに格納されていることが多い.したがってアプリケーションは,データ交換のためにデータをXMLに変換する必要がある.」(第421頁左欄第2?7行) 上記F.の記載を参照すると、引用例2には、次の技術が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の技術」という。) 「インターネット上でデータ交換を行う際に、XMLのような共通フォーマットを用いること。」 (周知例) G.「レプリケーションとは、分散データベース構成で使用する技術で、あるデータベース内のテーブル情報、ストアドプロシージャを定期的に別のデータベースに伝播する機能です。・・・(中略)・・・ レプリケーション方式は、リアルタイムに相手サーバーのテーブルを更新するのではなく、いったんディストリビューションデータベースにコピー(キューイング)され、その後レプリケーションエージェントによって相手サーバーに伝播されます。このため、相手サーバーがメンテナンス中やネットワーク切断中でもキューに蓄積され、復帰後に自動送信されます。」(第153頁中欄第7行?第154頁左欄第12行) 上記G.の記載を参照すると、周知例には、次の技術が記載されているものと認められる。(以下、「周知例記載の技術」という。) 「データベース内のテーブル情報等を相手サーバーのデータベースに伝播するに際し、更新データをいったんキューに蓄積し、相手サーバーがメンテナンス中やネットワーク切断中の場合には、復帰後に前記更新データを自動送信すること。」 (3)対比 本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。 (あ)引用例1記載の発明における「中央サーバ102」は、「離れた位置にあるコンピューティング装置106」と「離れた位置にあるコンピューティング装置104」に保持されているデータベースを一致させようとするものであり、「シンクロナイザーツール」と呼び得るものである。 (い)引用例1記載の発明における「離れた位置にあるコンピューティング装置106」、「離れた位置にあるコンピューティング装置104」は、それぞれ、本願発明における「源システム」、「目標システム」に相当する。 (う)引用例1記載の発明において、通信ファイルに含まれる「新たな情報」は、本願発明における「情報」に相当する。 (え)引用例1記載の発明において、新たな情報を「保持」することは、本願発明において、情報を「記憶」することに相当する。 (お)引用例1記載の発明における「転送」は、本願発明における「伝送」に相当する。 (か)引用例1記載の発明における「離れた位置にあるコンピューティング装置104に対するファイル転送の成功を示す信号」は、本願発明における「目標システムが情報を受信したことを示す目標システムの肯定応答」に相当する。 上記(あ)?(か)の事項を踏まえると、本願発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。 (一致点) 本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、 「シンクロナイザーツールによって情報を処理する方法であって、 源システムから情報を受信することと、 情報を記憶することと、 情報を保持する一方で、目標システムへの情報の伝送を開始することと、 目標システムが情報を受信したことを示す目標システムの肯定応答を受信することとを含む方法。」 である点。 (相違点) 相違点1:本願発明においては、源システムから「共通のフォーマット」の情報を受信するようにしているのに対し、引用例1記載の発明においては、離れた位置にあるコンピューティング装置106から「共通のフォーマット」の情報を受信するようにしているとはされていない点。 相違点2:本願発明においては、情報を「待ち行列として」記憶するようにしているのに対し、引用例1記載の発明においては、新たな情報を「待ち行列として」保持するようにしているとはされていない点。 相違点3:本願発明においては、「目標システムの肯定応答を受信したときに、源システムへ肯定応答を送ること」を行っているのに対し、引用例1記載の発明においては、「離れた位置にあるコンピューティング装置106(源システム)へファイル転送の成功を示す信号(肯定応答)を送信すること」を行っているものの、「離れた位置にあるコンピューティング装置104(目標システム)の肯定応答を受信したとき」に行うとはされていない点。 (4)判断 そこで、上記相違点1?3について検討する。 (相違点1について) 一般に、インターネット上でデータをやりとりする際に、XMLのような共通フォーマットを用いることは、上記引用例2記載の技術に見られるように、公知の技術にすぎない。 そして、引用例1記載の発明における「中央サーバ102」の実施例として、引用例1の上記B.の段落【0011】に「インターネットサーバ」が示されているように、引用例1記載の発明におけるデータのやりとりも、「インターネット上」で行われることがあり得るものである。 してみれば、引用例1記載の発明に対して上記引用例2記載の技術を適用し、中央サーバ102(シンクロナイザーツール)が、離れた位置にあるコンピューティング装置106(源システム)から、例えばXMLのような「共通のフォーマット」の情報を受信するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (相違点2について) 一般に、データを伝送する際に、いったんデータをキュー(待ち行列)に蓄積するようにすることは、上記周知例記載の技術に見られるように、ごく普通に行われていることにすぎない。 してみれば、引用例1記載の発明に対して上記周知例記載の技術を適用し、情報を「待ち行列として」記憶するようにすることは、当業者が適宜になし得ることにすぎない。 (相違点3について) 引用例1記載の発明においては、離れた位置にあるコンピューティング装置106(源システム)から中央サーバ102(シンクロナイザーツール)へのファイル転送が成功した段階で、該中央サーバ102(シンクロナイザーツール)が該コンピューティング装置106(源システム)に対してファイル転送の成功を示す信号を送信するようにしているが、中央サーバ102(シンクロナイザーツール)から離れた位置にあるコンピューティング装置104(目標システム)へのファイル転送が成功して該中央サーバ102(シンクロナイザーツール)がファイル転送の成功を示す信号を受信した段階では、該中央サーバ102(シンクロナイザーツール)が前記コンピューティング装置106(源システム)に対してファイル転送の成功を示す信号を送信するようにしていない。 このようなスキームを採用しているのは、離れた位置にあるコンピューティング装置106(源システム)としては、中央サーバ102(シンクロナイザーツール)に対するファイル転送が成功したことさえ確認できれば、後は中央サーバ102(シンクロナイザーツール)にまかせて、離れた位置にあるコンピューティング装置104(目標システム)に対するファイル転送が成功したか否かは、該中央サーバ102(シンクロナイザーツール)に確認してもらうようにし、万一成功しなかった場合には、該中央サーバ102(シンクロナイザーツール)がコンピューティング装置104(目標システム)に対してファイルを再送してくれればよいという考え方を採用しているからであると解される。 しかしながら、離れた位置にあるコンピューティング装置106(源システム)自身が、最終的に離れた位置にあるコンピューティング装置104(目標システム)に対するファイル転送が成功したか否かということを確認したい場合には、中央サーバ102(シンクロナイザーツール)から該コンピューティング装置104(目標システム)へのファイル転送が成功して該中央サーバ102(シンクロナイザーツール)がファイル転送の成功を示す信号を受信した段階で、前記コンピューティング装置106(源システム)に対してファイル転送の成功を示す信号を送信するようにすればよいということは、当業者にとって明らかであり、そのようにすることは、当業者が必要に応じて適宜に設計できる事項にすぎない。 よって、引用例1記載の発明において、「目標システムの肯定応答を受信したときに、源システムへ肯定応答を送ること」を行うようにすることは、当業者が必要に応じて適宜に設計できる事項にすぎない。 (本願発明の作用効果について) そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明、上記引用例2記載の技術、及び上記周知例記載の技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (5)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明、上記引用例2記載の技術、及び上記周知例記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-10-26 |
結審通知日 | 2011-11-01 |
審決日 | 2011-11-14 |
出願番号 | 特願2003-522004(P2003-522004) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 原 秀人 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
本郷 彰 飯田 清司 |
発明の名称 | データ同期化インターフェイス |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 勝村 紘 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 幸長 保次郎 |
代理人 | 風間 鉄也 |
代理人 | 山下 元 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 竹内 将訓 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 河井 将次 |
代理人 | 市原 卓三 |
代理人 | 白根 俊郎 |