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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1254620
審判番号 不服2010-27342  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-03 
確定日 2012-03-28 
事件の表示 特願2004-193196「医療画像システムおよび超音波診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月19日出願公開、特開2006- 14780〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、平成16年6月30日にされた特許出願(2004年特許願第193196号。以下、「本件出願」という。)につき、平成22年7月27日付けで、同年7月5日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定(発送日:同年8月3日)がなされたところ、拒絶査定不服審判が同年12月3日に請求されるとともに同日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 平成22年12月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成22年12月3日付けの手続補正を却下する。

2 補正却下の決定の理由
(1)平成22年12月3日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容

本件補正は、本件出願明細書の特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり補正することを含むものである。

ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成22年7月5日付けの手続補正は、同年7月27日付けの補正の却下の決定により却下されているので、平成22年3月18日付け手続補正書によるものである。)

「被検体の撮像画像を表示する医療画像システムであって、
複数因子からなる前記被検体に関する第1データと複数因子からなる前記被検体の前記撮像画像に関する第2データとを関連付けて記憶する記憶部と、
オペレータからの指示に基づいて、前記記憶部が記憶するそれぞれが複数因子からなる前記第1データと前記第2データとのうち、前記表示部に表示する因子を選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記因子について、前記記憶部により関連付けて記憶された前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示する表示部と
を有する
医療画像システム。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
被検体に送信され反射される超音波に基づいて生成された前記被検体の撮像画像を表示する医療画像システムであって、
複数因子からなる前記被検体に関する第1データと複数因子からなる前記被検体の前記撮像画像に関する第2データとを関連付けて記憶する記憶部と、
オペレータからの指示に基づいて、前記記憶部が記憶するそれぞれが複数因子からなる前記第1データと前記第2データとのうち、前記表示部に表示する因子を選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記因子について、前記記憶部により関連付けて記憶された前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示する表示部とを有しており、
前記第1データは、被検体のIDナンバー、氏名、生年月日及び性別のうちの少なくとも一つを含んでおり、
前記第2データは、超音波撮像モード、超音波撮像時の超音波探触子の種類、撮像画像の印刷枚数及びビデオ録画の有無のうちの少なくとも一つを含んでおり、 前記超音波撮像モードは、BW(Black and White)モード、CFM(Color Flow Mapping)モード、PDI(Power Doppler Imaging)モード、B-Flowモード、CHA(Coded Harmonic Angio)モード及びAD(Agent Detection)モードのうちの少なくとも一つを含んでいる医療画像システム。」

なお、下線部は補正箇所を示す。

(2) 本件補正の目的の適否について
本件補正は、本件補正前の「第1データ」を「前記第1データは、被検体のIDナンバー、氏名、生年月日及び性別のうちの少なくとも一つを含んでおり、」と限定し、特定するとともに、同「第2データ」を「前記第2データは、超音波撮像モード、超音波撮像時の超音波探触子の種類、撮像画像の印刷枚数及びビデオ録画の有無のうちの少なくとも一つを含んでおり、前記超音波撮像モードは、BW(Black and White)モード、CFM(Color Flow Mapping)モード、PDI(Power Doppler Imaging)モード、B-Flowモード、CHA(Coded Harmonic Angio)モード及びAD(Agent Detection)モードのうちの少なくとも一つを含んでいる」と限定し、特定する補正であるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そうすると、本件補正は減縮する補正を含む補正であり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下、「平成18年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3) 独立特許要件について
本件補正後の特許請求の範囲請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(ア) 引用刊行物記載の発明
(3A)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された特開2003-265456号公報(以下、「引用刊行物A」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与したものである。以下、同様である。)

(3A-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医用画像装置及び表示画面の遷移方法並びに画面遷移プログラムに関し、特に、撮影に必要な情報の入力、放射線画像変換媒体に記録された放射線画像データの読み取り、表示を行う医用画像装置及び該装置における表示画面の遷移方法並びに画面遷移プログラムに関する。」

(3A-2)「【0030】また、リーダー2の読み取り制御、患者情報や撮影部位情報、読み取り条件等の入力及び画像データの表示を行うコンソール3は、設定した読み取り条件に基づいてリーダー2を制御する制御部10と、リーダー2で読み取った画像に対して種々の画像処理(補正処理、階調変換処理、トリミング、反転/回転、パラメータ変更、マスキング等)を施す演算処理部11と、受付リスト画面、検索画面、撮影部位選択画面、撮影ルーチン画面等の各種画面を作成する表示画面作成部15と、画面間の遷移ルートを設定する遷移ルート設定手段16と、画面を表示する表示部12と、患者情報や撮影部位情報、読み取り条件等を設定する操作部13と、カセッテ17のプレートIDを読み取る識別ラベル検出部14と撮影履歴情報を記憶するデータベース26とを備え、患者受付端末6a等の外部情報システム25と接続されている。
・・・
【0032】この表示部12に表示される表示画面は、後述するように、遷移ルート設定手段16により、予め定めたワークフローに従って選択された受付リスト画面又は検索画面のいずれからも撮影部位選択画面や撮影ルーチン画面への遷移が可能となるように構成され、各画面に設けられる遷移スイッチは、シーケンスに応じて異なる構成及び名称で明示され、各々のオペレータのワークフローに応じた画面間遷移を可能としている。」

(3A-3)「【0037】上記構成の放射線画像診断システム1を用いて、検索画面が初期画面として表示される場合の検査手順について、図6乃至図11及び図13の画面構成例及び図12のフローチャート図を参照して説明する。なお、以下の説明では前登録方式で画像データの読み取りを行う場合の手順について記載するが、後登録方式であっても表示画面間の遷移動作は同様である。
【0038】まず、ステップS101において、放射線技師等のオペレータは、患者情報の入力を行う初期画面の選択を行う。ここでは、患者情報の入力に際して検索画面18を主に使用するオペレータを対象とし、初期画面として図6に示す検索画面18が選択される場合について説明する。検索画面18には、検索結果を表示する表示領域18aと、文字入力を行うキーボードが表示される入力領域18bと、検索の実行を指示する検索ボタン18cと、特定の画面への遷移を可能とする遷移スイッチ(受付けリスト画面19への遷移を行う[受付リスト]遷移スイッチ18d及び撮影条件選択画面20への遷移を行う[検査開始]遷移スイッチ18e)とが設けられている。
【0039】そして、ステップS102で、オペレータは入力領域18bのキーボードを操作して所定の検索キーを入力し、検索ボタン18cを選択する(以下、画面をタッチしたりマウスでクリックする動作を「選択」と称する。)と、HIS、RIS等の外部情報システム25やデータベース26等を参照して検索が実行され、患者情報が表示領域18aに表示される。
【0040】上記オペレータの場合、患者情報の入力は通常、検索画面18で完了するが、必要に応じて受付けリスト画面19から入力することもできる(ステップS103)。その場合、検索画面18から受付けリスト画面19への遷移を行うが、本実施例では遷移操作を明確にするために、検索画面18には[受付けリスト]遷移スイッチ18dが設けられており、ステップS104で[受付けリスト]遷移スイッチ18dを選択すると、ステップS105で、図7に示すような受付けリスト画面19が表示される。
【0041】この受付リスト画面19には、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報が一覧表示される表示領域19aと、選択した患者情報を削除する削除ボタン19bと、外部情報システム25やデータベース26に問い合わせてリストの更新を実行するリスト更新ボタン19cと、特定の画面への遷移を可能とする遷移スイッチ(検索画面18に戻る[OK]、[キャンセル]遷移スイッチ19d)とが設けられている。
【0042】そして、ステップS106で一覧表示の中から撮影を行う所定の患者の選択が終了したら、ステップS107で受付リスト画面19の[OK]遷移スイッチ19dを選択すると、受付けリスト画面19から自動的に検索画面18(初期画面)に戻る。なお、検索画面18から受付けリスト画面19への遷移スイッチを[受付リスト]とし、受付けリスト画面19から検索画面18への遷移スイッチを[OK]、[キャンセル]と明示することによって、患者情報の入力の主となる画面が検索画面18であることをオペレータに意識させている。すなわち、本実施例の表示画面間の遷移方法では、検索画面18又は受付けリスト画面19のいずれからも撮影ルーチンモードに遷移可能であるが、オペレータのワークフローに応じて選択された初期画面を主画面とし、主画面から撮影ルーチンモードへの遷移が主となるシーケンスであることを明確にすることにより、シーケンスの混同を未然に防止して迅速な画面間遷移を可能としている。
【0043】そして、オペレータは患者情報の入力を確認した後、ステップS108において、検索画面18に設けた[検査開始]遷移スイッチ18dを選択して撮影ルーチンモードに遷移する。撮影ルーチンモードでは、ステップS109において、
選択した患者に対応する撮影条件が入力されているか否かを判断し、入力されている場合にはステップS112に移行し、入力されていない場合には、ステップS110で図8に示すような撮影条件選択画面20を表示する。
【0044】この撮影条件選択画面20には、予め設定された撮影条件が表示される表示領域20aや放射線技師等のオペレータが設定又は撮影形態毎に分類された撮影条件が表示される分類表示領域20b(当審注:「20」は「20b」の誤記)と、特定の画面への遷移を可能とする遷移スイッチ(撮影ルーチン画面への遷移を行う[OK]、[キャンセル]遷移スイッチ20c及び撮影の予約を行って初期画面(検索画面18)に戻る[予約]遷移スイッチ20d)とが設けられている。
【0045】そして、オペレータは予め設定された撮影条件や分類された撮影条件の中から患者の撮影に適した条件を選択する。また、その際、撮影した画像データの読み取り条件(サンプリングピッチや読み取り感度等)の入力も行う。そして、ステップS111で撮影条件の選択が終了したら、撮影条件選択画面20に設けた[OK]遷移スイッチ20c又は[予約]遷移スイッチ20dを選択する。[予約]遷移スイッチ20dを選択した場合は、選択した撮影条件と患者情報とを関連付けて予約情報として記憶して初期画面(検索画面18)に戻り、[OK]遷移スイッチ20cを選択した場合は、ステップS113でコンソール3の識別ラベル検出部14を用いてカセッテ17から読み取った識別ラベル情報(プレートID)と撮影条件及び読み取り条件との対応付けが行われる。
【0046】次に、ステップS114において、公知の方法により、X線撮影装置等の放射線画像撮影装置を用いて選択した患者を撮影し、患者のX線透過画像をカセッテ17内部の放射線画像変換プレートに潜像として記録する。なお、放射線画像撮影装置としてはX線撮影装置に限らず、磁気や超音波を用いて患者を撮影する装置等の医療現場で使用される任意の撮影装置が含まれる。」

(3A-4)「【0047】次に、放射線技師等のオペレータは放射線画像撮影装置からカセッテ17を取り出し、取り出したカセッテ17をリーダー2の任意のスロットに挿入すると、前登録の場合は、リーダー2は、識別ラベル検出部9cによりプレートIDを読み取り、プレートIDを検索キーとしてデータベースを検索し、プレートIDに対応する読み取り条件を抽出する。また、後登録の場合は、カセッテ投入順キューと予約選択キューとの対応付けからカセッテ17に対応する読み取り条件を抽する。その後、ステップS115において、リーダー2では設定された読み取り条件に従って、放射線画像変換プレートの潜像を読み取る。
【0048】画像データの読み取り手順としては、まず、読み取り感度の値に従って、画像読取部9の感度が設定され、読み取り解像度の値に従って、プレート搬送部機構駆動部7aの搬送速度や画像読取部9に設けたA/D変換器のサンプリングピッチが設定される。そして、カセッテ17から放射線画像変換プレートが引き出され、副走査部機構駆動部9aで放射線画像変換プレートをXの方向に副走査搬送しながら、放射線画像変換プレートに蓄積・保持された画像データを読み出す。
【0049】そして、放射線画像変換プレートに励起光が作用すると、蛍光体内部に蓄積されていたエネルギーが輝尽光として発生し、この輝尽光を集光して画像読取部9によって電気信号に変換し、この電気信号を対数変換器にて対数変換し(これによって、電気信号は輝尽光の光強度にリニアな電気信号から、輝尽光の光強度の対数リニアな電気信号、すなわち濃度にリニアな電気信号に変換される。)、さらにA/D変換器によってデジタル化する。
【0050】画像読取部9から出力される画像データは、演算処理部11で画像読取部9や放射線画像変換プレートに特有の補正処理(画像読取部9のシェーディング補正や、励起光発生部に起因するムラ補正、放射線画像変換プレートの感度ムラ補正など)、階調変換処理等が施される。
【0051】次に、ステップS116において、デフォルトで設定された表示形式に従って読み取った画像データの表示を行う。なお、ここでは、図9に示すように、代表的な画像データが表示される主表示部21aと、関連して撮影された画像データがサムネイル形式で縮小表示される副表示部21bと、入力した患者情報が表示される患者情報表示領域21cと、特定の画面への遷移を可能とする遷移スイッチ(異なる表示形式の撮影ルーチン画面への遷移を行う[一括形式]遷移スイッチ21d、検索画面18に戻る[検査保留]、[検査終了]遷移スイッチ21e、患者情報を修正する場合に検索画面18に遷移する[患者修正]遷移スイッチ21f、撮影条件を修正する場合に撮影条件選択画面19に遷移する[条件修正]遷移スイッチ21g)とからなる一画像形式の撮影ルーチン画面21がデフォルトとして設定されているものとする。」

(3A-5)【0064】上記フローは検索画面18が初期画面に設定されている場合についてであったが、患者情報の入力に際して主に受付けリスト画面19を用いるオペレータの場合は、受付けリスト画面19を初期画面として設定する方が操作性がよくなる。以下、図13、図14の画面構成例及び図15のフローチャート図を参照して、説明する。
【0065】まず、ステップS201において、放射線技師等のオペレータは、患者情報の入力を行う初期画面の選択を行う。ここでは、患者情報の入力に際して受付けリスト画面19を主に使用するオペレータを対象とし、初期画面として図14に示す受付けリスト画面19が選択される場合について説明する。受付けリスト画面19には、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報が一覧表示される表示領域19aと、特定の画面への遷移を可能とする遷移スイッチ(検索画面18への遷移を行う[検索/新規]、[修正]遷移スイッチ19e及び撮影条件選択画面20への遷移を行う[検査開始]遷移スイッチ19f)とが設けられており、ステップS202で、オペレータは表示領域19aの中から撮影を行う所定の患者の選択を行う。
【0066】上記オペレータの場合、患者情報の入力は通常、受付けリスト画面19で完了するが、新規の患者の情報を入力する場合や患者情報を検索する場合、患者情報の修正を行う場合(ステップS203)等、検索画面18に遷移する場合があるため、ステップS204で受付けリスト画面19の[新規/検索]、[修正]遷移スイッチ19eを選択し、ステップS205で検索画面18を表示する。ここでも、遷移スイッチ19eを[新規/検索]、[修正]と称することにより、オペレータにワークフローを意識させている。
【0067】そして、図13に示す検索画面18の表示領域18aや入力領域18b、検索ボタン18cを用いて、新規入力、検索、修正を実行し、ステップS206で処理が終了した後、ステップS207で検索画面18の[OK]遷移スイッチ18dを選択すると自動的に受付リスト画面19に遷移する。なお、図6及び図7の場合と異なり、受付けリスト画面19から検索画面18への遷移スイッチを[新規/検索]、[修正]とし、検索画面18から受付けリスト画面19への遷移スイッチを[OK]、[キャンセル]と明示することによって、患者情報の入力の主となる画面が受付リスト画面19であることをオペレータに意識させている。すなわち、本実施例の表示画面間の遷移方法では、検索画面18又は受付けリスト画面19のいずれからも撮影ルーチンモードに遷移可能であるが、オペレータのワークフローに応じて選択された初期画面を主画面とし、主画面から撮影ルーチンモードへの遷移が主となるシーケンスであることを明確にすることにより、シーケンスの混同を未然に防止して迅速な画面間遷移を可能としている。
【0068】そして、オペレータは患者情報の入力を確認した後、ステップS208において、受付リスト画面19に設けた[検査開始]遷移スイッチ19fを選択して撮影ルーチンモードに遷移する。その後、前記したフローと同様に、撮影条件が入力済みか否かを判断し、未入力の場合は撮影条件選択画面20で撮影条件を選択し、撮影条件とカセッテとの対応付けを行い、X線撮影、画像データの読み取り、撮影ルーチン画面21、22の表示、診断を行い、診断が終了したら[検査終了]遷移スイッチ21e、22dを選択して初期画面の受付リスト画面19に戻る。
【0069】このように、予め定めたワークフローに従って選択した受付リスト画面19又は選択画面18のいずれからでも撮影部位選択画面20や撮影ルーチン画面21?23への遷移を可能とすることにより、オペレータのワークフローに応じた画面間遷移を可能とし、また、シーケンスに応じて、同一画面の遷移スイッチを異なる構成、名称で表示することによってシーケンスの混同を防止することができる。これにより、迅速かつ的確な撮影、診断を行うことができる。
【0070】なお、上記説明では、受付けリスト画面19又は検索画面18のいずれを初期画面として表示するかをオペレータが選択する構成としたが、この選択をコンソール3で自動的に行うこともできる。例えば、初回のシステム起動時に初期画面として選択した画面をデータベース26に記憶しておき、次回以降のシステム立ち上げ時にはデータベース26を参照して遷移ルート設定手段16でシーケンスを設定し、そのシーケンスに従って表示画面作成手段15で初期画面が選択される構成とすることができる。また、システム起動時にオペレータのID、パスワードを入力する構成の場合は、データベース26を参照してオペレータのIDから前回選択された初期画面を特定する構成とすることもできる。」

(3A-6)図14の受付リスト画面19には、撮影条件として、「胸部-A→P」、枚数として「5」が表示され、また、図8の撮影条件選択画面20の予め設定された設定された撮影条件が表示される表示領域20aには、「立位アイイコン、胸部-A→P」が表示され、また、撮影条件選択画面20には、「立位」、「臥位」の選択項目が表示されることが描かれている。

上記引用刊行物Aの(3A-1)?(3A-6)の記載を参照すると、上記引用刊行物Aには、
「超音波を用いて患者を撮影する装置の画像データの読み取り、表示を行う医用画像装置であって、
受付けリスト画面19を初期画面として記憶するデータベース26と、
患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報が一覧表示される表示領域19aを有する受付けリスト画面19、撮影部位選択画面、及び撮影条件選択画面20が表示される表示部12とを有し、
撮影条件選択画面20には、予め設定された撮影条件が表示される表示領域20aや放射線技師等のオペレータが設定又は撮影形態毎に分類された撮影条件が表示される分類表示領域20bが表示され、オペレータは予め設定された撮影条件や分類された撮影条件の中から患者の撮影に適した条件を選択し、
撮影条件選択画面20に設けた[予約]遷移スイッチ20dを選択した場合は、選択した撮影条件と患者情報とを関連付けて予約情報として記憶して初期画面の受付けリスト画面19に戻る
医用画像装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

(3B)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された特開2001-143005号公報(以下、「引用刊行物B」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(3B-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,ディジタルデータとして変換され保存された静止画像データおよび動画像データを・・・ディスプレイ表示することができる医用画像表示システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】超音波診断装置やX線CT装置・・・等・・・は,それぞれ画像データ等に関するディジタル化が促進されることにより,前記モダリティで得られる画像やそれに伴うデータ等を,外部コンピュータシステムに保存して,管理する医用システムが種々開発されている。」

(3B-2)「【0034】3. 検索の指示および表示
図3ないし図5は、本発明に係る医用画像表示システムにおける所要の画像情報を検索するためのディスプレイ手段による画面表示例を示すものである。
【0035】すなわち、図3において、検索条件として、基本情報30A、検査項目30B、院内情報30C、所見に含まれる文字列30Dおよび詳細検索条件リスト30Eが、それぞれ上半分の画面領域に設定される。これらの検索条件において、前記基本情報30Aは、被検者ID、被検者名、年齢、性別等の各項目からなる。検査項目30Bは、検査ID、検査日、検査種別、部位等の各項目からなる。院内情報30Cは、診療科、所見記入者、検査者等の各項目からなる。所見に含まれる文字列30Dは、所見、画像コメント等の各項目からなる。これらの所見、画像コメント等については、それぞれキーワード検索することができるように設定される。そして、詳細検索条件リスト30Eは、計測値等の項目からなる。これらの検索条件は、後述するように、順次階層構造(ツリー構造)に分類されると共に、階層表示(ツリービュー)される。なお、下半分の画面領域には、データベース化されている前記検索条件を網羅した被検者の一覧表(全リスト)が表示されるように設定されている。
【0036】なお、前記詳細検索条件リスト30Eにおいて、例えば『条件を追加』ボタン31を操作することにより、図4に示すように、それぞれ計測値等の項目を、下半分の画面領域に表示させて、検索を可能とするように設定されている。なお、図4に示す計測項目は、超音波検査に基づくものを、アルファベット略号によりそれぞれ例示しており、その詳細については省略する。
【0037】また、図3に示す表示画面の上方には、メニューボタン32が設定されている。すなわち、これらのメニューボタン32は、『環境設定』ボタン32A・・・である。
【0038】そこで,前記『環境設定』ボタン32Aを操作すると,図5に示すように,『表示項目選択』に関する画面が表示され,検索結果リストに表示させたい項目を設定することができる。・・・そして,『検索開始』ボタン32Eを操作すると,指定された条件で検索を開始する。」

(3B-3)図5には,選択する表示項目に,検査ID,被検者名,性別,年令,生年月日等の患者に関する項目と,検査種別,部位等の撮影画像に関する項目を適宜選択することが記載されている。

(3C)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された特開2001-95801号公報(以下、「引用刊行物C」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(3C-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,超音波ビームを被検体(生体)内に投射してその反射波を受信し,反射状態を画像化することにより生体組織内の状態を診断する超音波診断装置に関する。」

(3C-2)「【0011】・・・キーボード23およびトラックボール24(あるいはマウスなど)が接続されており,これらを操作することによって,患者の名前や日付などの情報を入力したり,超音波ビームでスキャンすべき部位を入力したり,あるいはどのようなモード(たとえばBモードあるいはBMモードというような)の超音波画像を撮影するかの設定指令を入力したりする。・・・
・・・
【0013】キーボード23やトラックボール24を操作して,まず,患者の名前,ID番号などの患者情報を入力し,つぎに撮像モードの設定を行う。・・・
【0014】この超音波画像を記録装置25に出力して保存しようとするとき、キーボード23やトラックボール24の操作により保存すべき画像を指定し、保存のコマンドを入力する。すると、表示画像生成部18あるいは画像メモリ部15に格納されていた超音波画像情報がCPU21によって取り出され、BMPなどのフォーマットに変換される。同時に、CPUメモリ部29から、その画像データに関する属性データ、つまり患者名、患者ID番号、撮影モード、画像サイズなどの属性データが抽出される。」

(3C-3)「【0018】このようにして画像データのファイルを保存すると,同時に拡張子のみ異なる同一ファイル名の属性データのファイルも保存されるので,画像再生時にもきわめて便利である。・・・
・・・
【0020】以上説明したようにこの発明の超音波診断装置によれば、超音波画像データの保存・再生がきわめて便利になる。すなわち、保存すべき画像を指定してそれを保存せよという操作を行えば、その画像データのファイルが最適な、かつ既存のファイル名とは重ならないファイル名として自動生成されたファイル名で保存され、同時に患者ID情報や撮影モードや画像サイズ等の属性データのファイルも保存される。そのため、操作者がファイル名をあれこれ考えたり、既存のファイルを上書きしてしまわないかをチェックしたりする手間を省くことができ、短時間で簡単に保存を行うことができる。また、指定された画像データのファイルとともに、属性データのファイルが保存されるため、画像データの再生時にこの属性データを参照することができ、その画像データの撮影モードや画像サイズに応じた表示を行うことができる。」

(イ)本願補正発明についての対比・判断
(イ-1)本願補正発明と上記刊行物1記載の発明とを対比する。
(i)引用発明の「超音波を用いて患者を撮影する装置の画像データの読み取り、表示を行う医用画像装置」は、その構成・機能からみて、本願補正発明の「被検体に送信され反射される超音波に基づいて生成された前記被検体の撮像画像を表示する医療画像システム」に相当する。

(ii)引用発明の「受付けリスト画面19」に表示される「患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟」、及び「撮影条件、撮影枚数」が、それぞれ本願補正発明の「複数因子からなる前記被検体に関する第1データ」、及び「複数因子からなる前記被検体の前記撮像画像に関する第2データ」に相当する。
また、引用発明の「データベース26」は、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報が一覧表示される表示領域19aを有する受付けリスト画面19を、表示部12の初期画面として記憶しており、さらに、受付けリスト画面19の表示領域19aに一覧表示される、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報は、撮影条件選択画面20に設けた[予約]遷移スイッチ20dを選択した場合に、選択した撮影条件と患者情報とを関連付けて予約情報として記憶された情報であることから、撮影条件選択画面20に設けた[予約]遷移スイッチ20dを選択した場合に、選択した撮影条件と患者情報とを関連付けられた予約情報が、引用発明の「データベース26」に、記憶されることは明らかである。
そうすると、引用発明の「データベース26」が、本願補正発明の「複数因子からなる前記被検体に関する第1データと複数因子からなる前記被検体の前記撮像画像に関する第2データとを関連付けて記憶する記憶部」に相当する。

(iii)受付けリスト画面19の表示領域19aに一覧表示される、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報は、撮影条件選択画面20に設けた[予約]遷移スイッチ20dを選択した場合に、選択した撮影条件と患者情報とを関連付けて予約情報として記憶された情報であるから、引用発明の「表示部12」には、選択した撮影条件と患者情報とを関連付けて予約情報として記憶された情報が、受付けリスト画面19の表示領域19aに一覧表示されることになる。
そうすると、引用発明の「表示部12」と、本願補正発明の「前記選択部により選択された前記因子について、前記記憶部により関連付けて記憶された前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示する表示部」とは、「前記記憶部により関連付けて記憶された前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示する表示部」である点で共通する。

(iv)引用発明の受付けリスト画面19の表示領域19aに一覧表示される情報には、患者情報として、「患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟」を含んでいることから、引用発明の「患者情報」が「患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟」を含んでいることと、本願補正発明の「前記第1データは、被検体のIDナンバー、氏名、生年月日及び性別のうちの少なくとも一つを含んで」いることとは、「前記第1データとは被検体のデータを含んで」いる点で共通する。

(v)引用発明の「医用画像装置」が、本願補正発明の「医療画像システム」に相当する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「被検体に送信され反射される超音波に基づいて生成された前記被検体の撮像画像を表示する医療画像システムであって、
複数因子からなる前記被検体に関する第1データと複数因子からなる前記被検体の前記撮像画像に関する第2データとを関連付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部により関連付けて記憶された前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示する表示部とを有しており、
前記第1データは、被検体のデータを含んでいる
医療画像システム。」である点で一致し、次の相違点(あ)?相違点(え)で相違する。

・相違点(あ)
本願補正発明では、「オペレータからの指示に基づいて、前記記憶部が記憶するそれぞれが複数因子からなる前記第1データと前記第2データとのうち、前記表示部に表示する因子を選択する選択部」を有するのに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

・相違点(い)
前記記憶部により関連付けて記憶された前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示する表示部が、本願補正発明では、「前記選択部により選択された前記因子について、」「前記記憶部により関連付けて記憶された前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示する表示部」であるのに対して、引用発明では、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報が一覧表示される表示領域19aを有する受付けリスト画面19、撮影部位選択画面、及び撮影条件選択画面20が表示される表示部12である点。

・相違点(う)
前記第1データは、被検体のデータを含むことが、本願補正発明では、「前記第1データは、被検体のIDナンバー、氏名、生年月日及び性別のうちの少なくとも一つを含んで」いるのに対して、引用発明では、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟を含んでいる点

・相違点(え)
撮像画像に関する第2データが、本願補正発明では、「前記第2データは、超音波撮像モード、超音波撮像時の超音波探触子の種類、撮像画像の印刷枚数及びビデオ録画の有無のうちの少なくとも一つを含んでおり、前記超音波撮像モードは、BW(Black and White)モード、CFM(Color Flow Mapping)モード、PDI(Power Doppler Imaging)モード、B-Flowモード、CHA(Coded Harmonic Angio)モード及びAD(Agent Detection)モードのうちの少なくとも一つを含んでいる」のに対して、引用発明では、撮影条件、撮影枚数である点。

(イ-2)当審の判断
・相違点(あ)?相違点(う)について
(あ?う-1)上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-6)に、「図14の受付リスト画面19には、撮影条件として、『胸部-A→P』、枚数として『5』が表示され、また、図8の撮影条件選択画面20の予め設定された設定された撮影条件が表示される表示領域20aには、『立位アイイコン、胸部-A→P』が表示され、また、撮影条件選択画面20には、『立位』、『臥位』の選択項目が表示される」ことが記載されており、この記載によれば、撮影画像に関する撮影条件としての「胸部-A→P」、及び、枚数としての「5」は、オペレータが、予め設定された撮影条件や分類された撮影条件の中から患者の撮影に適した条件を選択し、選択した撮影条件と患者情報とを関連付けて予約情報として記憶して、受付リスト画面19に表示されるようにしたものである。
しかしながら、撮影条件選択画面20には、「立位アイイコン、胸部-A→P」が表示され、また、「立位」、「臥位」の選択項目が表示されるにもかかわらず、オペレータが、患者の撮影に適した条件を選択し、選択した撮影条件と患者情報とを関連付けて予約情報として記憶して表示した受付リスト画面19には、「胸部-A→P」の撮影条件しか表示されていないことから、撮影時の撮影画像における患者の「立位」、「臥位」の姿勢に関する因子については、オペレータが、患者の撮影に適した条件として選択しなかったと解するのが自然である。
(あ?う-2)ところで、上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-1)?(3B-3)の記載を参照すると、上記引用刊行物Bには、
「超音波診断装置の画像やデータ等を管理する医用システムにおいて、
医用画像表示システムにおける所要の画像情報を検索結果リストとして画面に表示する際に、
表示させたい項目を、検査ID,被検者名,性別,年令,生年月日等の患者に関する項目と,検査種別,部位等の撮影画像に関する項目とから適宜選択する。」発明(以下、「引用刊行物Bに記載された発明」という。)が記載されている。
(あ?う-3)そうすると、引用発明の医用画像装置と、上記引用刊行物Bに記載された発明の医用画像表示システムとは、ともに超音波による撮像画像を表示する装置において、撮像画像に関連した患者の関する項目と撮像画像に関する項目を一覧で同時に表示する点で共通するするものであり、さらに、上記(あ?う-1)で検討したように、表示する項目を選択する点においても共通することから、引用発明の、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報が一覧表示される表示領域19aを有する受付けリスト画面19において、上記引用刊行物Bに記載された発明の、表示させたい項目を、検査ID、被検者名、性別、年令、生年月日等の患者に関する項目と、検査種別、部位等の撮影画像に関する項目とから適宜選択する構成を採用し、受付けリスト画面19の患者に関する患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟を選択して、受付けリスト画面19に表示するとともに、受付けリスト画面19の撮影画像に関する撮影条件と枚数の各項目を選択して、受付けリスト画面19に表示するように構成することにより、本願補正発明のごとく、「オペレータからの指示に基づいて、前記記憶部が記憶するそれぞれが複数因子からなる前記第1データと前記第2データとのうち、前記表示部に表示する因子を選択する選択部」を有する構成を得ることは当業者が容易になし得るものである。(相違点(あ))
(あ?う-4)また、引用発明の医用画像装置は、選択した撮影条件と患者情報とを関連付けて予約情報として記憶し、初期画面の受付けリスト画面19に、選択した撮影条件と患者情報とを関連付けて表示することから、上記(あ?う-3)で検討したように、引用発明の、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報が一覧表示される表示領域19aを有する受付けリスト画面19において、上記引用刊行物Bに記載された発明の、表示させたい項目を、検査ID、被検者名、性別、年令、生年月日等の患者に関する項目と、検査種別、部位等の撮影画像に関する項目とから適宜選択する構成を採用すれば、本願補正発明のごとく、前記記憶部により関連付けて記憶された前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示する表示部が、「前記選択部により選択された前記因子について、」「前記記憶部により関連付けて記憶された前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示する表示部」となることは明らかである。(相違点(い))
(あ?う-5)さらに、上記(あ?う-3)で検討したように、引用発明の、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報が一覧表示される表示領域19aを有する受付けリスト画面19において、上記引用刊行物Bに記載された発明の、表示させたい項目を、検査ID、被検者名、性別、年令、生年月日等の患者に関する項目と、検査種別、部位等の撮影画像に関する項目とから適宜選択する構成を採用すれば、引用発明の患者に関する項目の患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟のうちの少なくとも1つの項目は受付けリスト画面19に表示されることは明らかであり、さらに、年齢の代わりに生年月日とすることも当業者が適宜採用する選択的事項にすぎないことから、引用発明の構成を、本願補正発明のごとく、前記第1データは、被検体のデータを含むことが、「前記第1データは、被検体のIDナンバー、氏名、生年月日及び性別のうちの少なくとも一つを含んで」いるようにすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものである。(相違点(う))

・相違点(え)について
(え-1)超音波の医用画像装置において、撮影画像に関する項目として、超音波撮像モード、超音波撮像時の超音波探触子の種類、撮像画像の印刷枚数及びビデオ録画は、本件の出願前に周知の技術事項である。
例えば、撮影モードについては、上記引用刊行物Cの摘記事項(3C-1)に、
「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は,・・・超音波診断装置に関する。」(下線は当審で付与したものである。以下、同様である。)こと、同(3C-2)に、
「【0014】・・・CPUメモリ部29から、その画像データに関する属性データ・・・撮影モード・・・の属性データが抽出される。」こと、及び(3C-3)に、
「【0020】・・・また、指定された画像データのファイルとともに、属性データのファイルが保存されるため、画像データの再生時にこの属性データを参照することができ、その画像データの撮影モードや画像サイズに応じた表示を行うことができる。」ことがそれぞれ記載されている。
また、超音波撮像時の超音波探触子の種類については、例えば、特開20001-128969号公報に、
「【0010】・・・本発明は、上記構成の超音波診断装置において、前記撮影条件は、撮影に使用した超音波探触子の種類と,超音波パルスの周波数と,受信エコー強度の範囲を規定するダイナミックレンジと,受信エコー強度の増幅度を規定するゲインと,血流速度に応じたスペクトル表示範囲を規定する速度スケールレンジと,受信エコー信号をグレー階調表示するための変換マップとして用いるグレイマップと,カラー表示するための変換マップとして用いるカラーマップと,カラードップラ信号検出のための関心領域カーソルの位置を規定するカラー領域位置と,ドップラ血流信号を取得するための検出位置を規定するサンプルボリューム位置,単位ピクセルあたりの時間幅を規定するタイムスケールレンジのうちの少なくとも1つであることを特徴とする超音波診断装置を提供する。」と記載されている。
さらに、撮像画像の印刷枚数ついては、例えば、特開2001-94714号公報に、
「【0001】・・・本発明は・・・特に、医療用の画像診断装置によって得られる画像をネットワークを介して受信し、所定の画像処理を施してプリンタによるプリント出力処理を実行するネットワーク接続型の画像処理装置および画像処理方法に関するものである。【0002】・・・医療用診断装置として様々な画像診断装置が使用されている。例えば、代表的な装置としては、超音波診断装置・・・等がある。これら画像診断装置はモダリティ機器と呼ばれる。これらの各種モダリティ機器によって撮影された画像データは、フィルム・プリンタによってプリントアウトされたり、または記憶手段に格納されてデータ保管される等、様々な態様で処理がなされる。・・・【0086】さらに、テーブルには(D)背景色濃度?(J)方向まで、画像処理態様、プリント出力態様が設定されている。出力枚数の項目、出力フィルム・サイズ、方向(L:Landscape(横長)、P:Portrait(縦長))等の項目に加え、背景色濃度(B:Bright,D:Dark,M:middle)、極性(N:Normal,R:Reverse)等、様々な処理、出力態様の設定が可能な構成となっている。」と記載されている。
さらに、ビデオ録画については、例えば、特開平9-238942号公報に、
「【0008】・・・この診断用画面は、データ入力モードにおいて作成されたPIDメニューを表示するIDデータ表示領域74と、図4に示すような超音波送受信操作により得られた受信信号に基づく超音波画像75aが表示される画像表示領域75とに分かれている。この超音波画像75aは、順次入力される受信信号に基づいて常に新たな画像に更新することもでき、ある特定の時点の画像に固定して表示することもできる。また、この画像には、カーソル76が表示され、このカーソル76は操作パネル32の操作ないし図示しないキーボードの操作に応じ画面上の任意の位置に移動させることができ、操作パネル32の操作ないし図示しないキーボードの操作により、画面上の、カーソル76の位置に、その画像についての任意のコメント77を書き込むことができる。このようにして得られた診断用画像は、CRTディスプレイ9に表示された状態で診断に供され、あるいは、上述したようにビデオ録画やインスタント写真撮影により、保存される。」と記載されている。
そして、超音波の医用画像装置において、撮影画像に関する項目として、どのような項目を設けるかは当業者が適宜採用する選択的事項にすぎないものであるから、上記(あ?う-3)で検討したように、引用発明の、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報が一覧表示される表示領域19aを有する受付けリスト画面19において、上記引用刊行物Bに記載された発明の、表示させたい項目を、検査ID、被検者名、性別、年令、生年月日等の患者に関する項目と、検査種別、部位等の撮影画像に関する項目とから適宜選択する構成を採用した際に、撮影画像に関する項目として、本願補正発明のごとく、撮像画像に関する第2データが、「前記第2データは、超音波撮像モード、超音波撮像時の超音波探触子の種類、撮像画像の印刷枚数及びビデオ録画の有無のうちの少なくとも一つを含んで」いるようにすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものである。
(え-2)また、超音波の医用画像装置において、各種の超音波撮像モードを備えることは周知である。
例えば、上記引用刊行物Cの摘記事項(3C-2)に、
「【0011】・・・キーボード23およびトラックボール24(あるいはマウスなど)が接続されており,これらを操作することによって,患者の名前や日付などの情報を入力したり,超音波ビームでスキャンすべき部位を入力したり,あるいはどのようなモード(たとえばBモードあるいはBMモードというような)の超音波画像を撮影するかの設定指令を入力したりする。・・・」と記載されている。
また、特開平11-221216号公報に、
「【0007】・・・この超音波診断装置100は、超音波パルスを送信し超音波エコーを受信する超音波探触子1と、走査平面を電子走査して音線信号を取得する送受信制御部2と、前記超音波エコーの強度に基づく画像データを生成するBモード処理部3と、前記超音波エコーのドプラ成分の位相に基づく画像データを生成するCFMモード処理部4と、前記超音波エコーのドプラ成分のパワーに基づく画像データを生成するPDIモード処理部5と、前記画像データにより表示画像を生成する中央処理部6と、前記表示画像を表示するCRT7と、操作者が指示を入力する入力装置8とを具備している。」と記載されている。
さらに、特開2004-613号公報に、
「【0001】【発明の背景】従来の超音波スキャナは組織の二次元Bモード画像を生成し、その画素の輝度が戻ってくるエコーの強度に基づいて定められる。いわゆる「カラーフロー」モードでは、血液の流れ又は組織の動きを撮像することができる。・・・【0007】・・・共に造影剤撮像用に開発されたコード化調波血管撮像(CHA)モード及びコード化血管撮像(CA)モードの場合、信号は、しばしば器官の灌流床に至るまでの非常に小さい血管内の造影剤からの信号である。Bフロー・モードの場合、ユーザは、Bモード撮像に普通使用されている(ドップラーとは異なる)高周波数広帯域撮像パルスを使用して、Bモードに匹敵するフレーム・レートで、血流を撮像することができる。」と記載されている。
そして、超音波の医用画像装置において、撮影画像に関する項目のうちの超音波撮像モードとして、どのような超音波撮像モードを設けるかは当業者が適宜採用する選択的事項にすぎないものであるから、上記(あ?う-3)で検討したように、引用発明の、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報が一覧表示される表示領域19aを有する受付けリスト画面19において、上記引用刊行物Bに記載された発明の、表示させたい項目を、検査ID、被検者名、性別、年令、生年月日等の患者に関する項目と、検査種別、部位等の撮影画像に関する項目とから適宜選択する構成を採用した際に、撮影画像に関する項目うちの超音波撮像モードとして、本願補正発明のごとく、撮像画像に関する第2データの「前記超音波撮像モードは、BW(Black and White)モード、CFM(Color Flow Mapping)モード、PDI(Power Doppler Imaging)モード、B-Flowモード、CHA(Coded Harmonic Angio)モード及びAD(Agent Detection)モードのうちの少なくとも一つを含んでいる」ようにすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用刊行物Bに発明及び周知の技術的事項から予測される範囲内のものであって、格別のものではない。

なお、請求人は請求の理由において、
(a)「引用文献1には、図7の受付けリスト画面19において、(受付け)時間、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数の情報が一覧表示されることが開示されているが、本願の請求項1,4に係る各発明における『前記第2データは、超音波撮像モード、超音波撮像時の超音波探触子の種類、撮像画像の印刷枚数及びビデオ録画の有無のうちの少なくとも一つを含んでおり、前記超音波撮像モードは、BW(Black and White)モード、CFM(Color Flow Mapping)モード、PDI(Power Doppler Imaging)モード、B-Flowモード、CHA(Coded Harmonic Angio)モード及びAD(Agent Detection)モードのうちの少なくとも一つを含んでいる』点、『オペレータからの指示に基づいて、前記記憶部が記憶するそれぞれが複数因子からなる前記第1データと前記第2データとのうち、前記表示部に表示する因子を選択する選択部』及び『前記記憶部により関連付けて記憶された前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示する表示部』についての開示がない。引用文献1の明細書第45段落には、『?[予約]遷移スイッチ20dを選択した場合は、選択した撮影条件と患者情報とを関連付けて予約情報として記憶して初期画面(検索画面18)に戻り、[OK]遷移スイッチ20cを選択した場合は、ステップS113でコンソール3の識別ラベル検出部14を用いてカセッテ17から読み取った識別ラベル情報(プレートID)と撮影条件及び読み取り条件との対応付けが行われる。』と記載されているだけで、本願の請求項1,4に係る各発明のように、被検体のIDナンバー等のうちの少なくとも一つを含む第1データと超音波撮像モード等のうちの少なくとも一つを含む第2データとの中から表示する因子を選択し、その選択された因子について前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示することについての開示はない。」旨の主張、及び
(b)「公知文献3には、前述の通り、「?「全て選択」ボタン32Cを操作すると、検索結果リストに表示されている全てを選択する。?」と記載されているだけで、本願の請求項1,4に係る各発明のように、被検体のIDナンバー等のうちの少なくとも一つを含む第1データと超音波撮像モード等のうちの少なくとも一つを含む第2データとの中から表示する因子を選択し、その選択された因子について前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示することについての開示はない。」旨の主張をそれぞれしている。
しかしながら、(a)上記「相違点(え)について」において、検討したように、超音波の医用画像装置において、撮影画像に関する項目として、超音波撮像モード、超音波撮像時の超音波探触子の種類、撮像画像の印刷枚数及びビデオ録画や、各種の超音波撮像モードを備えることは周知であり、さらに、超音波の医用画像装置において、撮影画像に関する項目として、どのような項目を設けるかは当業者が適宜採用する選択的事項にすぎないものであるから、引用発明の、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報が一覧表示される表示領域19aを有する受付けリスト画面19において、上記引用刊行物Bに記載された発明の、表示させたい項目を、検査ID、被検者名、性別、年令、生年月日等の患者に関する項目と、検査種別、部位等の撮影画像に関する項目とから適宜選択する構成を採用した際に、撮影画像に関する項目として、本願補正発明のごとく、撮像画像に関する第2データが、「前記第2データは、超音波撮像モード、超音波撮像時の超音波探触子の種類、撮像画像の印刷枚数及びビデオ録画の有無のうちの少なくとも一つを含んでおり、前記超音波撮像モードは、BW(Black and White)モード、CFM(Color Flow Mapping)モード、PDI(Power Doppler Imaging)モード、B-Flowモード、CHA(Coded Harmonic Angio)モード及びAD(Agent Detection)モードのうちの少なくとも一つを含んでいる」ように構成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものである。
また、上記「(イ-1)」の(iii)で検討したように、受付けリスト画面19の表示領域19aに一覧表示される、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報は、撮影条件選択画面20に設けた[予約]遷移スイッチ20dを選択した場合に、選択した撮影条件と患者情報とを関連付けて予約情報として記憶された情報であるから、引用発明の「表示部12」には、選択した撮影条件と患者情報とを関連付けて予約情報として記憶された情報が、受付けリスト画面19の表示領域19aに一覧表示されることになり、引用発明の「表示部12」が、「前記記憶部により関連付けて記憶された前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示する表示部」に相当することは明らかである。
ところで、引用発明は、「オペレータからの指示に基づいて、前記記憶部が記憶するそれぞれが複数因子からなる前記第1データと前記第2データとのうち、前記表示部に表示する因子を選択する選択部」の構成を有しないが、(b)上記「(あ?う-2)」で検討したように、上記引用刊行物Bには、
「超音波診断装置の画像やデータ等を管理する医用システムにおいて、
医用画像表示システムにおける所要の画像情報を検索結果リストとして画面に表示する際に、
表示させたい項目を、検査ID,被検者名,性別,年令,生年月日等の患者に関する項目と,検査種別,部位等の撮影画像に関する項目とから適宜選択する。」発明が記載されており、上記「(あ?う-3)」において検討したように、引用発明の、患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟、撮影条件、撮影枚数等の情報が一覧表示される表示領域19aを有する受付けリスト画面19において、上記引用刊行物Bに記載された発明の、表示させたい項目を、検査ID、被検者名、性別、年令、生年月日等の患者に関する項目と、検査種別、部位等の撮影画像に関する項目とから適宜選択する構成を採用し、受付けリスト画面19の患者に関する患者ID、患者氏名、性別、年齢、依頼科、病棟を選択して、受付けリスト画面19に表示するとともに、受付けリスト画面19の撮影画像に関する撮影条件と枚数の各項目を選択して、受付けリスト画面19に表示するように構成することにより、本願補正発明のごとく、「オペレータからの指示に基づいて、前記記憶部が記憶するそれぞれが複数因子からなる前記第1データと前記第2データとのうち、前記表示部に表示する因子を選択する選択部」を有する構成を得ることは当業者が容易になし得るものであることから、請求人の主張は採用できないものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用刊行物Bに発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)補正却下の決定についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下しなければならないものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成22年12月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成22年3月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「被検体の撮像画像を表示する医療画像システムであって、
複数因子からなる前記被検体に関する第1データと複数因子からなる前記被検体の前記撮像画像に関する第2データとを関連付けて記憶する記憶部と、
オペレータからの指示に基づいて、前記記憶部が記憶するそれぞれが複数因子からなる前記第1データと前記第2データとのうち、前記表示部に表示する因子を選択する選択部と、
前記選択部により選択された前記因子について、前記記憶部により関連付けて記憶された前記第1データと前記第2データとのそれぞれを対応させて表示する表示部と
を有する
医療画像システム。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物およびその記載事項は、前記「第2 2(3)」の(ア)に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比・判断
上記「第2 2 (3)」の(イ)で検討した本願補正発明は、本願発明の「第1データ」を「前記第1データは、被検体のIDナンバー、氏名、生年月日及び性別のうちの少なくとも一つを含んでおり、」と限定し、特定するとともに、同「第2データ」を「前記第2データは、超音波撮像モード、超音波撮像時の超音波探触子の種類、撮像画像の印刷枚数及びビデオ録画の有無のうちの少なくとも一つを含んでおり、前記超音波撮像モードは、BW(Black and White)モード、CFM(Color Flow Mapping)モード、PDI(Power Doppler Imaging)モード、B-Flowモード、CHA(Coded Harmonic Angio)モード及びAD(Agent Detection)モードのうちの少なくとも一つを含んでいる」と限定し、特定する補正であるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 2(3)」の(イ-2)において検討したとおり、引用発明、引用刊行物Bに記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることから、本願発明も同様の理由により、引用発明、引用刊行物Bに記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用刊行物Bに記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願は、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-27 
結審通知日 2011-11-01 
審決日 2011-11-14 
出願番号 特願2004-193196(P2004-193196)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川上 則明  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 信田 昌男
横井 亜矢子
発明の名称 医療画像システムおよび超音波診断装置  
代理人 佐藤 隆久  

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