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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G03B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B |
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管理番号 | 1254623 |
審判番号 | 不服2011-1391 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-01-20 |
確定日 | 2012-03-28 |
事件の表示 | 特願2006- 91378「雲台機能付きクレードル」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月11日出願公開、特開2007-264435〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願(以下「本願」と記す。)は、平成18年3月29日の出願であって、平成22年5月14日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年7月15日付けで手続補正がなされ、その後同年10月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年1月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。その後当審にて、平成23年9月6日付けで審尋がなされたが、これに対する回答書は提出されなかった。 2.平成23年1月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 平成23年1月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 (2-1)補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって、その内容は、特許請求の範囲の請求項1を以下の 「【請求項1】 装着物を装着して、当該装着物を回転させる雲台機能を有した雲台機能付きクレードルであって、 支持台と、 前記支持台に配設され、前記支持台に対してパン方向へ回転可能に支持された第1台座と、 前記第1台座に配設され、前記装着物を装着可能であり、前記第1台座に対してチルト方向へ回転可能に支持された第2台座と、 前記支持台に配設され、駆動力を発生させる第1駆動手段と、 前記第1駆動手段の駆動力により前記第1台座を前記パン方向へ回転させる第1駆動伝達手段と、 前記支持台に配設され、駆動力を発生させる第2駆動手段と、 前記パン方向の回転軸上で回転し、前記第2駆動手段の駆動力により前記第2台座を前記チルト方向へ回転させる第2駆動伝達手段とを有することを特徴とする雲台機能付きクレードル。」 から、 「【請求項1】 装着物を装着して、当該装着物を回転させる雲台機能を有した雲台機能付きクレードルであって、 円筒部を有する支持台と、 前記支持台に配設され、前記支持台に対してパン方向へ回転可能に支持された第1台座と、 前記第1台座に配設され、前記装着物を装着可能であり、前記第1台座に対してチルト方向へ回転可能に支持された第2台座と、 前記支持台の前記円筒部の内部に配設され、駆動力を発生させる第1駆動手段と、 前記支持台の前記円筒部の内部に配設され、前記第1駆動手段の駆動力により前記第1台座を前記パン方向へ回転させる第1駆動伝達手段と、 前記支持台の前記円筒部の内部に配設され、前記第1駆動伝達手段が前記第1駆動手段の駆動力により前記第1台座を前記パン方向へ回転させる場合に、前記第1駆動手段と同期して駆動力を発生させる第2駆動手段と、 前記支持台の前記円筒部の内部に配設され、前記パン方向の回転軸上で回転し、前記第2駆動手段の駆動力により前記第2台座を前記チルト方向へ回転させる第2駆動伝達手段とを有することを特徴とする雲台機能付きクレードル。」 に補正し(以下「補正事項1」という。)、明細書の段落【0011】を以下の 「【0011】 上記目的を達成するために本発明の請求項1の雲台機能付きクレードルは、装着物を装着して、当該装着物を回転させる雲台機能を有した雲台機能付きクレードルであって、支持台と、前記支持台に配設され、前記支持台に対してパン方向へ回転可能に支持された第1台座と、前記第1台座に配設され、前記装着物を装着可能であり、前記第1台座に対してチルト方向へ回転可能に支持された第2台座と、前記支持台に配設され、駆動力を発生させる第1駆動手段と、前記第1駆動手段の駆動力により前記第1台座を前記パン方向へ回転させる第1駆動伝達手段と、前記支持台に配設され、駆動力を発生させる第2駆動手段と、前記パン方向の回転軸上で回転し、前記第2駆動手段の駆動力により前記第2台座を前記チルト方向へ回転させる第2駆動伝達手段とを有することを特徴とする。」 から、 「【0011】 上記目的を達成するために本発明の請求項1の雲台機能付きクレードルは、装着物を装着して、当該装着物を回転させる雲台機能を有した雲台機能付きクレードルであって、円筒部を有する支持台と、前記支持台に配設され、前記支持台に対してパン方向へ回転可能に支持された第1台座と、前記第1台座に配設され、前記装着物を装着可能であり、前記第1台座に対してチルト方向へ回転可能に支持された第2台座と、前記支持台の前記円筒部の内部に配設され、駆動力を発生させる第1駆動手段と、前記支持台の前記円筒部の内部に配設され、前記第1駆動手段の駆動力により前記第1台座を前記パン方向へ回転させる第1駆動伝達手段と、前記支持台の前記円筒部の内部に配設され、前記第1駆動伝達手段が前記第1駆動手段の駆動力により前記第1台座を前記パン方向へ回転させる場合に、前記第1駆動手段と同期して駆動力を発生させる第2駆動手段と、前記支持台の前記円筒部の内部に配設され、前記パン方向の回転軸上で回転し、前記第2駆動手段の駆動力により前記第2台座を前記チルト方向へ回転させる第2駆動伝達手段とを有することを特徴とする。」 に補正する(以下「補正事項2」という。)ものである。 (2-2)新規事項を含む補正か否かについて(特許法第17条の2第3項関連) 上記各補正事項には、「前記支持台の前記円筒部の内部に配設され、前記パン方向の回転軸上で回転し、前記第2駆動手段の駆動力により前記第2台座を前記チルト方向へ回転させる第2駆動伝達手段とを有する」という記載があり、「第2駆動伝達手段」が「前記支持台の前記円筒部の内部に配設され」るものであることとなっている。 一方、願書に最初に添付した(以下「出願当初の」という。)明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)には、以下の記載がある。 (a)「【0031】 チルト台座13の下部には、2つの解除ボタン17(図1参照)を結ぶ方向に沿って、チルト台座13の回転中心となるチルト台軸24(第2回転中心軸)が設けられる。チルト台軸24は、チルト台座13に対して固定され、パン台座18の回転中心軸とは直交している。チルト台軸24の両端部は、パン台座18に回動可能に軸受けにより組み付けられている。これにより、チルト台座13は、パン台座18に対して、チルト台軸24と一体にチルト方向に回転可能となっている。チルト台軸24には、チルト台傘歯車25が嵌合して設けられている。チルト台傘歯車25は、チルト台軸24に固定され、チルト台軸24と一体に回転する。 【0032】 チルトモータ21の出力軸21aには、チルト台傘歯車25と噛み合うチルトモータ傘歯車26が設けられる。チルトモータ21の駆動力は、チルトモータ傘歯車26とチルト台傘歯車25との噛み合いにより、チルト台軸24に伝達される。従って、チルトモータ21の正/逆回転でチルト台座13が下/上方向にチルト回転運動することとなる。」 (b)「【0047】 チルト台傘歯車25及びチルトモータ傘歯車26は、チルトモータ21の出力トルクをチルト台座13に伝達するものであるので、これらを「第2伝達手段」と呼称する。第2伝達手段における、チルトモータ21の駆動力の減速比は、説明がわかりやすいように1:1であるとする。」 (c)「【図7】 ![]() 」 以上の記載から、出願当初の明細書等には、 「チルトモータ21の出力トルクをチルト台座13に伝達するものであるチルト台傘歯車25及びチルトモータ傘歯車26(「第2伝達手段」と呼称)のうち、チルト台傘歯車25は、チルト台座13の下部に設けられ、チルト台座13に対して固定されたチルト台軸24に嵌合して設けられ、かつチルト台軸24に固定され、チルト台軸24と一体に回転する。」 ことが開示されていることが分かるが、上記各補正事項記載の「前記第2駆動手段の駆動力により前記第2台座を前記チルト方向へ回転させる第2駆動伝達手段」に相当する「チルト台傘歯車25及びチルトモータ傘歯車26」のうち「チルト台傘歯車25」が「支持台の前記円筒部の内部に配設」されることは記載されておらず、かつ出願当初の明細書等から自明であるともいえない。 なお、請求人は審判請求書において、 「「前記支持台の前記円筒部の内部に配設され、前記パン方向の回転軸上で回転し、前記第2駆動手段の駆動力により前記第2台座を前記チルト方向へ回転させる第2駆動伝達手段」については、本願段落[0028]、[0032]、図2、図3等の記載に基づくものである。「第2駆動伝達手段」には、本願実施の形態における主に「チルトモータ傘歯車26」が相当する。」 と主張しているが、「チルトモータ傘歯車26」のみで「前記第2駆動手段の駆動力により前記第2台座を前記チルト方向へ回転させる」ことは出願当初の明細書等には記載も示唆もされておらず、かつ出願当初の明細書から自明のことでもないから、上記請求人の主張は採用することはできない。 したがって、上記記載を含む各補正事項は、出願当初の明細書等に記載した事項ではなく、また、出願当初の明細書に記載した事項から自明な事項であるとはいえず、出願当初の明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでない。ゆえに上記各補正事項は、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内にしたものではない。 よって、上記各補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。 (2-3)本件補正の目的 上記「(2-2)」で述べたように、上記各補正事項は新規事項を追加するものであるが、仮に本願補正発明の「第2駆動伝達手段」が「支持台の前記円筒部の内部に配設」されることが、「第2駆動伝達手段」の一部でも「支持台の前記円筒部の内部に配設」される場合を含むと解釈すると、上記「(2-2)」で述べた各補正事項が新規事項の追加に当たらないこととなり、その場合について、本件補正の目的について検討する。 本件補正のうち、補正事項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の「支持台」を「円筒部を有する」ものに限定し、「第1駆動手段」、「第1駆動伝達手段」、「第2駆動手段」及び「第2駆動伝達手段」が、「支持台の円筒部の内部に配設される」ものに限定し、「第2駆動手段」を「駆動力を発生させる」ものから「前記第1駆動伝達手段が前記第1駆動手段の駆動力により前記第1台座を前記パン方向へ回転させる場合に、前記第1駆動手段と同期して駆動力を発生させる」ものに限定する補正であって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2-4)独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1(「(2-1)」参照。)に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。 (2-4-1)引用例 ア.原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前である平成7年11月21日に頒布された「特開平7-306470号公報」(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。 (a)「【0004】そこで、光学系支持部材を略直交する2軸回りにそれぞれ回動駆動させる駆動制御機構であって、上述の不具合を解決するものとして、図5に示すような駆動源となる2つのアクチュエータが架台上に独立して装着可能な駆動制御機構が考えられる。上記図5の駆動制御機構においては、架台100にはY軸回りに回動可能な第2の回動軸105aを有する支持体105が配設されている。該支持体105にはY軸と略直交する方向のX軸回りに回動可能な第1の回動軸109が回動自在に装着されている。その第1の回動軸109には2つの光学系であるレンズ鏡筒110、111が固着されている。 【0005】また、上記第2の回動軸105aは、架台100に支持されたY軸回り回動用のY駆動モータ101により歯車を介して回転駆動される。一方、上記第1の回動軸109は、傘歯車を介して上記第2の回動軸と同心である第3の回動軸106と連結されている。そして、該第3回動軸106は、架台100に支持されたX軸回り回動用のX駆動モータ102によりギヤを介して回転駆動される。 【0006】上記のように構成された上記駆動機構においては、Y駆動モータ101および/または、X駆動モータ101を回動すると2つのレンズ鏡筒110、111はY軸および/またはX軸回りに回動することになる。この機構によると上記Y駆動モータ101およびX駆動モータ101自体が架台100に対して固定した位置に支持されていることからアクチュエータであるモータの位置が変化することによる不具合が解消される。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記図5の駆動制御機構においては、Y軸回り回動用のY駆動モータ101のみを駆動して支持体105をY軸回りに回動させた場合、X軸回り回動用のX駆動モータ102が静止しているとすると、第1の軸109が傘歯車を介して噛合関係にあることから、レンズ鏡筒110、111はY軸回りに回動すると同時にX軸回りにも回動してしまう。 【0008】この不具合を解決するためには、X軸モータ102をY駆動モータ101の回動に同期して回動せしめる必要がある。しかし、このような駆動を実行するにはかなり複雑な電気回路を必要とし、コスト的にも不利となってしまう。」 (b)「【図5】 ![]() 」 (c)本願補正発明において、「内部に配設」は、一部を「内部に配設する」場合も含む(上記「2-3」参照。)のであるから、上記図5の記載と段落【0005】の記載から、「Y駆動モータ101とX駆動モータ102と、Y駆動モータ101に接続する歯車と、X駆動モータ102に接続するギヤは、架台100の内部に配設されている」と読み取ることができる。 イ.上記引用例1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「光学系支持部材を略直交する2軸回りにそれぞれ回動駆動させる駆動制御機構において、 架台100と、 架台100に支持されたY軸回り回動用のY駆動モータ101と、 架台100に支持されたX軸回り回動用のX駆動モータ102と、 Y軸回りに回動可能な第2の回動軸105aを有する支持体105と、 を備え、 上記第2の回動軸105aは、架台100に支持されたY軸回り回動用のY駆動モータ101により歯車を介して回転駆動され、 該支持体105にはY軸と略直交する方向のX軸回りに回動可能な第1の回動軸109が回動自在に装着されており、 その第1の回動軸109には2つの光学系であるレンズ鏡筒110、111が固着されており、 上記第1の回動軸109は、傘歯車を介して上記第2の回動軸と同心である第3の回動軸106と連結されており、 該第3の回動軸106は、架台100に支持されたX軸回り回動用のX駆動モータ102によりギヤを介して回転駆動され、 Y駆動モータ101とX駆動モータ102と、Y駆動モータ101に接続する歯車と、X駆動モータ102に接続するギヤは、架台100の内部に配設されており、 Y軸回り回動用のY駆動モータ101のみを駆動して支持体105をY軸回りに回動させた場合、X軸回り回動用のX駆動モータ102が静止しているとすると、第1の回動軸109が傘歯車を介して噛合関係にあることから、レンズ鏡筒110、111はY軸回りに回動すると同時にX軸回りにも回動してしまう不具合を解決するためには、X軸モータ102をY駆動モータ101の回動に同期して回動せしめる必要がある、 駆動制御機構。」 ウ.原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前である平成15年11月28日に頒布された「特開2003-338950号公報」(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。 (a)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、撮像装置受け台装置、特に、静止画や若干の動画を撮影するデジタルカメラを効果的に活用することができる撮像装置受け台装置に関するものである。」 (b)「【0023】図1は本発明の撮像装置受け台装置(クレードル)の第1実施形態における構成を示す斜視図、図2は図1に示すクレードルの移動手段の具体例を示す斜視図、図3は図1に示すクレードルの位置検出手段の具体例を示す斜視図、図4は本実施形態におけるクレードルの制御システムを示すブロック図、図5は図4に示すクレードルの制御システムのフローチャート、図6は図5のフローチャートに継続するステップのフローチャート、図7は図4に示すクレードルの制御システムにおけるモータリセット動作のフローチャートである。 【0024】図1において、デジタルカメラ1を保持するクレードル2は、主に、カメラ受け台3、水平架台4、クレードル台座5で構成されている。デジタルカメラ1は、これを充電する場合や、移動カメラとして使用する場合、カメラ受け台3にセットし、底面に設けられた図示しないコネクタによりクレードル2の電気系統と接続される。カメラ受け台3は水平架台4上に載置され、A部に設けられた垂直移動手段FaとB部に設けられた水平移動手段Fbにより、前後傾斜方向および水平回動方向に自由に移動できるようになっている。」 (c)「【図1】 ![]() 」 (d)【図1】より、「デジタルカメラ1をカメラ受け台3にセットすることができ、カメラ受け台3は水平架台4上に載置され、水平架台4はクレードル台座5上に載置されており、カメラ受け台3と水平架台4の間にA部があり、水平架台4とクレードル台座5の間にB部がある」と読み取ることができる。 エ.上記引用例2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「デジタルカメラ1を保持するクレードル2において、 クレードル2をカメラ受け台3、水平架台4、クレードル台座5で構成し、 デジタルカメラ1をカメラ受け台3にセットすることができ、 カメラ受け台3は水平架台4上に載置され、水平架台4はクレードル台座5上に載置され、 カメラ受け台3が、カメラ受け台3と水平架台4の間のA部に設けられた垂直移動手段Faと水平架台4とクレードル台座5の間のB部に設けられた水平移動手段Fbにより前後傾斜方向および水平回動方向に自由に移動できるようになっている、 クレードル2。」 (2-4-2)対比 本願補正発明と、引用発明1を対比する。 引用発明1における「架台100」は、本願補正発明における「支持台」に相当する。 引用発明1における「Y軸回り回動」は、本願補正発明における「パン方向」の「回転」に相当する。 引用発明1における「X軸回り回動」は、本願補正発明における「チルト方向」の「回転」に相当する。 引用発明1における「Y軸回り回動用のY駆動モータ101」は、「架台100の内部に配設されて」いるので、本願補正発明における「支持台の」「内部に配設され」た「駆動力を発生させる第1駆動手段」に相当する。 引用発明1における「X軸回り回動用のX駆動モータ102」は、「架台100の内部に配設されて」いるので、本願補正発明における「支持台」の「内部に配設され」た「駆動力を発生させる第2駆動手段」に相当する。 引用発明1では、「Y軸回り回動用のY駆動モータ101により歯車を介して」「第2の回動軸105a」を「回転駆動」しており、「第2の回動軸105a」は「Y軸回りに回動可能」であることから、引用発明1における「架台100の内部に配設され」た「Y駆動モータ101に接続する歯車」は、本願補正発明における「支持台の」「内部に配設され」た「第1駆動手段の駆動力により」「パン方向へ回転させる第1駆動伝達手段」に相当する。 引用発明1では、「X軸回り回動用のX駆動モータ102によりギヤを介して」「第2の回動軸と同心である第3の回動軸106」を「回転駆動」しており、「第3の回動軸106」は「傘歯車を介して」「第1の回動軸109」「と連結されており」、「第1の回動軸109」は「X軸回りに回動可能」であることから、引用発明1における「架台100の内部に配設され」た「X駆動モータ102に接続するギヤ」は、本願補正発明における「支持台の」「内部に配設され」た「パン方向の回転軸上で回転し」、「第2駆動手段の駆動力により」「チルト方向へ回転させる第2駆動伝達手段」に相当する。 引用発明1の「光学系支持部材を略直交する2軸回りにそれぞれ回動駆動させる駆動制御機構」と、本願補正発明の「装着物を回転させる雲台機能付きクレードル」とは、「物を回転させる雲台機能付き機構」である点で共通している。 すると、本願補正発明と、引用発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「支持台と、 前記支持台の内部に配設され、駆動力を発生させる第1駆動手段と、 前記支持台の内部に配設され、前記第1駆動手段の駆動力によりパン方向へ回転させる第1駆動伝達手段と、 前記支持台の内部に配設され、駆動力を発生させる第2駆動手段と、 前記支持台の内部に配設され、前記パン方向の回転軸上で回転し、前記第2駆動手段の駆動力によりチルト方向へ回転させる第2駆動伝達手段とを有する、 物を回転させる雲台機能付き機構。」 一方で、両者は、次の各点で相違する。 <相違点1> 本願補正発明は、「装着物を装着して、当該装着物を回転させる」「雲台機能付きクレードル」であり、「前記支持台に配設され、前記支持台に対してパン方向へ回転可能に支持された第1台座と、前記第1台座に配設され、前記装着物を装着可能であり、前記第1台座に対してチルト方向へ回転可能に支持された第2台座と」を備え、「前記第1台座を前記パン方向へ回転させ」、「前記第2台座を前記チルト方向へ回転させ」るのに対し、引用発明1では、上記発明特定事項を備えていない点。 <相違点2> 本願補正発明では、「支持台」が「円筒部」を有し、「円筒部の内部」に「第1駆動手段」、「第1駆動伝達手段」、「第2駆動手段」及び「第2駆動伝達手段」を配設しているのに対し、引用発明1では本願補正発明の支持台に相当する「架台100」の内部に「Y駆動モータ101」、「Y駆動モータ101に接続する歯車」、「X駆動モータ102」及び「X駆動モータ102に接続するギヤ」を配設しているが架台100の形状が不明な点。 <相違点3> 本願補正発明では、「第2駆動手段」が「前記第1駆動伝達手段が前記第1駆動手段の駆動力により前記第1台座を前記パン方向へ回転させる場合に、前記第1駆動手段と同期して駆動力を発生させる」のに対し、引用発明1では、上記発明特定事項を備えていない点。 (2-4-3)判断 前記各相違点について判断する。 <相違点1について> 光学系を支持して前後傾斜方向および水平回動方向に移動させる装置という点で引用発明1と同一の技術分野に属する引用発明2を、本願補正発明と対比する。 引用発明2における「デジタルカメラ1」は、本願補正発明における「装着物」に相当する。 引用発明2における「デジタルカメラ1を保持するクレードル2」は、本願補正発明における「装着物を装着」する「クレードル」に相当する。 引用発明2における「前後傾斜方向」は、本願補正発明における「チルト方向」に相当する。 引用発明2における「水平回動方向」は、本願補正発明における「パン方向」に相当する。 引用発明2における「クレードル台座5」は、本願補正発明における「支持台」に相当する。 引用発明2における「クレードル台座5上に載置され」る「水平架台4」は、クレードル台座5と水平架台4の間のB部に水平移動手段Fbを備えており、「水平架台4」が「クレードル台座5」に対し水平回動することは明らかであるから、本願補正発明における「支持台に配設され、」「支持台に対してパン方向へ回転可能に支持された第1台座」に相当する。 引用発明2における「水平架台4上に載置され」、「デジタルカメラ1を」「セットすることができ」る「カメラ受け台3」は、水平架台4とカメラ受け台3の間のA部に垂直移動手段Faを備えており、「カメラ受け台3」が「水平架台4」に対し前後傾斜方向に移動することは明らかであるから、本願補正発明における「第1台座に配設され、」「装着物を装着可能であり、」「第1台座に対してチルト方向へ回転可能に支持された第2台座」に相当する。 引用発明2における「カメラ受け台3が」「前後傾斜方向および水平回動方向に自由に移動できるようになっている」ことは、「カメラ受け台3」に「デジタルカメラ1」がセットされると該「デジタルカメラ1」が「前後傾斜方向および水平回動方向に自由に移動」することとなるから、本願補正発明における「装着物を装着して、当該装着物を回転させる」ことに相当する。 以上のことから、引用発明2と本願補正発明とは、 「装着物を装着して、当該装着物を回転させるクレードルであって、支持台に配設され、前記支持台に対してパン方向へ回転可能に支持された第1台座と、前記第1台座に配設され、前記装着物を装着可能であり、前記第1台座に対してチルト方向へ回転可能に支持された第2台座とを備え、前記第1台座を前記パン方向へ回転させ、前記第2台座を前記チルト方向へ回転させるクレードル。」 の点で一致する。 よって、引用発明1における装着物の支持・回転機構において、支持体105を用いたレンズ鏡筒110、111の支持・回転構造に代えて、引用発明2の水平架台4及びカメラ受け台3による上記の装着物の支持・回転構造を採用し、かつ引用発明2のクレードル機能を引用発明1に付加することにより、上記相違点1に係る発明特定事項を得ることは、当業者にとって格別の困難性無く行い得たことである。 <相違点2について> 直交する2軸回りにそれぞれ回動駆動させる駆動制御機構において、支持台の形状を円筒形状にすることは、本願出願前に周知であり(必要ならば特開2006-19978号公報の段落【0064】及び【図2】記載の円筒形状の固定台座21を参照のこと。)、引用発明1における架台100の形状として上記周知の円筒形状を採用して、上記相違点2に係る発明特定事項を得ることは、当業者にとって格別の困難性無く行い得たことである。 <相違点3について> 引用発明1は、「Y軸回り回動用のY駆動モータ101のみを駆動して支持体105をY軸回りに回動させた場合、X軸回り回動用のX駆動モータ102が静止しているとすると、第1の回動軸109が傘歯車を介して噛合関係にあることから、レンズ鏡筒110、111はY軸回りに回動すると同時にX軸回りにも回動してしまう不具合を解決するためには、X軸モータ102をY駆動モータ101の回動に同期して回動せしめる必要がある」という課題を内在する「駆動制御機構」であり、上記課題を解決するには「電気回路」を必要とすることも引用例1に開示されている(上記「(2-4-1)ア.(a)」参照。)。よって、引用発明1に「X軸モータ102をY駆動モータ101の回動に同期して回動せしめる」「電気回路」を採用して、上記相違点3に係る発明特定事項を得ることは、当業者にとって格別の困難性無く行い得たことである。 そして、本願補正発明における作用効果は、引用発明1、引用発明2及び周知技術から当業者が予測しうる程度のものに過ぎない。 したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (2-5)むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 または、本件補正のうち請求項1に係る補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、上記請求項1に係る補正を含む本件補正は同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成23年1月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至4に係る発明は、平成22年7月15日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 装着物を装着して、当該装着物を回転させる雲台機能を有した雲台機能付きクレードルであって、 支持台と、 前記支持台に配設され、前記支持台に対してパン方向へ回転可能に支持された第1台座と、 前記第1台座に配設され、前記装着物を装着可能であり、前記第1台座に対してチルト方向へ回転可能に支持された第2台座と、 前記支持台に配設され、駆動力を発生させる第1駆動手段と、 前記第1駆動手段の駆動力により前記第1台座を前記パン方向へ回転させる第1駆動伝達手段と、 前記支持台に配設され、駆動力を発生させる第2駆動手段と、 前記パン方向の回転軸上で回転し、前記第2駆動手段の駆動力により前記第2台座を前記チルト方向へ回転させる第2駆動伝達手段とを有することを特徴とする雲台機能付きクレードル。」 4.引用刊行物記載の発明 原査定の拒絶の理由で引用された引用刊行物並びにその記載事項は、上記「2.(2-4-1)」に記載したとおりである。 5.対比・判断 本願発明は、上記「(2-4)」で検討した本願補正発明から、「円筒部を有する支持台」を「支持台」へと拡張し、「第1駆動手段」、「第1駆動伝達手段」、「第2駆動手段」及び「第2駆動伝達手段」が、「支持台の円筒部の内部に配設される」ものであるという限定を削除して拡張し、「第2駆動手段」を「前記第1駆動伝達手段が前記第1駆動手段の駆動力により前記第1台座を前記パン方向へ回転させる場合に、前記第1駆動手段と同期して駆動力を発生させる」ものから「駆動力を発生させる」ものに拡張した構成としたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらにほかの構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「(2-4)」に記載したとおり、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-26 |
結審通知日 | 2012-01-31 |
審決日 | 2012-02-13 |
出願番号 | 特願2006-91378(P2006-91378) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G03B)
P 1 8・ 561- Z (G03B) P 1 8・ 121- Z (G03B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 菊岡 智代、齋藤 卓司 |
特許庁審判長 |
北川 清伸 |
特許庁審判官 |
伊藤 幸仙 森林 克郎 |
発明の名称 | 雲台機能付きクレードル |
代理人 | 別役 重尚 |