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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1254687
審判番号 不服2010-28923  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-22 
確定日 2012-03-27 
事件の表示 特願2005-112744「コンピュータゲーム開発ファクトリシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月10日出願公開,特開2005-312958〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成17年3月11日(パリ条約による優先権主張:平成16年3月11日,米国)に特許出願されたものであって,平成22年8月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月22日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同時に提出された手続補正書により特許請求の範囲の補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。
その後,平成23年5月16日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年8月23日付けで回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は,補正前の請求項19に係る発明を請求項1へと繰り上げ,補正前の請求項25に係る発明を請求項19へと繰り上げたうえで,繰り上げ後の請求項1及び19を,以下のように補正しようとするものを含むものである(下線は,【請求項1】については補正前の請求項19から変更された箇所に,【請求項19】については補正前の請求項25から変更された箇所に当審にて付与)。

「【請求項1】
コンピュータゲームを形成する方法において、
ハードウエア媒体に記憶された異なる地図データベースのデータ在庫から、ゲーム開発者コンピュータにより、コンピュータゲームのプレイ筋書きの一部分として描写されるべき実世界地理的地域に位置する道路ネットワークを表わすデータを含む、地図データベースを選択するステップであって、
前記道路ネットワークを表すデータが道路の位置の地理的座標と前記道路の交差点における転回制限を含み、前記データベース製品が前記ゲーム開発者から離れた地図開発者のコンピュータにより提供されている、地図データベースを選択するステップを含み、
前記異なる地図データベースの前記データ在庫が異なる目的の前記実世界地理的地域を表す地図データベースを含んでおり、
前記地図データベースが、
高速道路を表すデータを含む前記道路ネットワークを表す前記データを含む前記選択された地図データベースと、
ハイキングコースを表すデータを含む前記道路ネットワークを表す歩行者通行に対応するデータを含む歩行者地図データベースと、
自転車道路を表すデータを含む自転車通行に対応するデータを含む自転車地図データベースと、
空港滑走路を表すデータを含む飛行機運航に対応するデータを含む航空地図データベースと、を含み、
前記選択された地図データベースが、前記ハイキングコースと、空港滑走路を表すデータを排除しており、
前記歩行者地図データベースが、前記高速道路と空港滑走路を表すデータを排除しており、
前記自転車地図データが前記高速道路と空港滑走路を表すデータを排除しており、
前記航空地図データベースがハイキングコースを表すデータを排除しており、
ハードウエア媒体に記憶されたゲームシェルのデータ在庫から、前記ゲーム開発者コンピュータにより、前記コンピュータゲームのための基本的ロジック、ルール、戦略及びキャラクタを含むゲームシェルデータ構造体を選択するステップと、
前記地図データベース及び前記ゲームシェルデータ構造体をコンピュータゲーム製品において、前記ゲーム開発者コンピュータにより、結合するステップと、
前記コンピュータゲーム製品を、前記ゲーム開発者コンピュータにより、前記ゲーム開発者および前記地図開発者から離れたエンドユーザーに提供するステップと、
を備えた方法。

【請求項19】
コンピュータゲームの開発を促進する方法であって、
実世界地理的現場を指示する現場入力を、地図開発者のコンピュータにより、受信するステップと、
車両、歩行者、自転車、および飛行機からなるグループから選択されたデータ形式を指示する形式入力を、前記地図開発者のコンピュータにより、受信するステップと、
データの詳細レベルを指示する正確性形式レベル入力を、前記地図開発者のコンピュータにより、受信するステップと、
前記現場入力と、前記形式入力と、および前記正確性レベル入力の関数として、ハードウエア媒体に記憶された、マスター地理的データベースであって、前記地図開発者によって生成され、実際世界現場の道路に対応する複数の道路セグメントを表示するデータを含むマスター地理的データベースから、前記地図開発者のコンピュータにより、データ要求するステップを含み、
前記複数の道路セグメントを表示するデータがナビゲーション装置のナビゲーション関係関数に対してコンパイルされるように構成されており、前記複数の道路セグメントを表示するデータがナビゲーション関係属性を含んでおり、該ナビゲーション関係属性が、
(i)地理的座標、
(ii)ストリート名
(iii)アドレス範囲、
(iv)転回制限、および
(v)道路接続を含んでおり、
さらに、
前記データ要求に基づいて前記マスター地理的データベースから地図データを、前記地図開発者によって、検索するステップであって、
前記地図データが前記詳細の選択されたレベルにおける選択された実際世界地理的現場を表示する選択されたデータである前記検索するステップを含み、
そして、
前記地図開発者によって、前記地図データデータベースに基づいてコンピュータゲームを生成するようにゲーム開発者の別個のコンピュータに、前記マップデータをマップデータベースとして提供するステップを含むことを特徴とする方法。」

なお,ここで,平成22年12月22日付けの手続補正書の請求項19において,「実世界地理的現場を支持する現場入力」と記載されている点は,「実世界地理的現場を指示する現場入力」と記載すべきところの誤記と認められるので,上記のように認定した。

2.補正の適否の判断1(新規事項)
(1)補正後の請求項1について
補正後の請求項1に係る発明は,「選択された地図データベースが、ハイキングコースと、空港滑走路を表すデータを排除して」いるという発明特定事項を有するので,当該事項が,特許法第36条の2第4項の規定により,願書に添付して提出された特許請求の範囲,明細書及び図面とみなされた同条第2項に規定された外国書書面の翻訳文(以下,単に「翻訳文」という。)に記載された事項であるかについて,以下に検討する。

(イ)上記発明特定事項における「選択された地図データベース」が,「ハードウエア媒体に記憶された異なる地図データベースのデータ在庫から」選択される「地図データベース」であると解釈した場合
翻訳文において,「ハードウエア媒体に記憶された異なる地図データベースのデータ在庫」に含まれる「地図データベース製品118」に関する記載は,明細書の段落【0024】にあるが,同段落には「歩行者用のデータベース製品は、各現場を歩行で移動するのに適した地理的データを含む。例えば、歩行者用の地図データベース製品は、歩道、歩行者用小道、ハイキングコース等に関する情報を含むが、高速道路に関する情報は含まなくてもよい。航空機用のデータベース製品は、地勢、空港の滑走路、ビルディングの高さ等に関する情報を含むが、街路の名前や、住所区画等は除外してもよい。自転車用のデータベース製品は、自転車道路等に関する情報を含むが、空港の滑走路は除外してもよい。」と記載され,
・「歩行者用のデータベース製品」は「ハイキングコース等に関する情報を含む」こと
・「航空機用のデータベース製品」は「空港の滑走路…等に関する情報を含む」こと
が記載されるように,「ハードウエア媒体に記憶された異なる地図データベースのデータ在庫」に含まれる「地図データベース製品118」が,「ハイキングコース」と「空港滑走路」に関する情報を含むとしており,当該在庫から選択されることとなる「地図データベース」が,「ハイキングコースと、空港滑走路を表すデータを排除して」いることは記載されていない。

また,翻訳文において,地図データベース製品を形成する工程に関する記載は,明細書の段落【0025】?【0030】及び【図4】にあるが,これらの記載中に,地図データベースから「ハイキングコースと、空港滑走路を表すデータを排除」することについては記載されておらず,技術常識を考慮しても,当該排除が自明であったとは言えない。
さらに,翻訳文において,コンピュータゲームを形成する工程中の,地図データベースを選択してから地図データベースとゲームシェルデータ構造体と結合するまでの工程に関する記載は,明細書の段落【0042】及び【0043】並びに図面【図5】にあるが,これらの記載中にも,選択された地図データベースから「ハイキングコースと、空港滑走路を表すデータを排除」することについては記載されておらず,技術常識を考慮しても,当該排除が自明であったとは言えない。
また,明細書の段落【0065】以降には,ゲーム内容別の実施例が記載されているが,当該実施例においても,選択された地図データベースから「ハイキングコースと、空港滑走路を表すデータを排除」することについては言及されておらず,技術常識を考慮しても,当該排除が自明であったとは言えない。

(ロ)上記発明特定事項における「選択された地図データベース」が,「高速道路を表すデータを含む道路ネットワークを表すデータを含む選択された地図データベース」であると解釈した場合
翻訳文の明細書の段落【0024】には,上記摘記したように,「歩行者用のデータベース製品」,「航空機用のデータベース製品」及び「自転車用のデータベース製品」において,除外してもよい情報についての説明があるが,「道路ネットワークを表すデータを含む選択された地図データベース」が,「ハイキングコースと、空港滑走路を表すデータを排除して」いることについては記載されておらず,技術常識を考慮しても,当該排除が自明であったとは言えない。

(2)補正後の請求項19について
補正後の請求項19に係る発明の発明特定事項のうち,少なくとも,
(a1)「複数の道路セグメントを表示するデータがナビゲーション装置のナビゲーション関係関数に対してコンパイルされるように構成されて」いること
(b1)「地図開発者」が「ゲーム開発者の別個のコンピュータに、マップデータをマップデータベースとして提供する」こと
については,翻訳文には記載されておらず,翻訳文の記載から自明であるとも認められない。

なお,審判請求人は,原審審査官が拒絶査定書の第4頁[その他]欄において,補正前の請求項25について審査の対象としないと言及していることに呼応して,平成23年2月16日付けの審判請求書の手続補正書の3.欄(第8頁)において,「当該請求項は段落番号〔0031〕ないし〔0032〕に明確に支持されている。」と主張している。しかしながら,明細書の段落【0031】?【0032】の記載は,図面の【図3】に記載された「ゲームファクトリシステム150」の「道路モデル在庫178」及び同在庫に含まれる「道路モデルデータベースにおけるデータ」について説明するのみで,上記各発明特定事項に対応する記載は存在しない。

(3)まとめ
よって,本件補正は,翻訳文のすべての記載を総合することによって導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであって,翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものではないので,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「改正前特許法」という。)第17条の2第3項の規定に違反している。

3.補正の適否の判断2(独立特許要件)
本件補正による上記下線を付した補正事項のうち,
(a2)補正前の請求項25に係る発明の発明特定事項として記載された「マスター地理的データベース」について,「ハードウエア媒体に記憶された」ものであると補正後の請求項19に係る発明において限定した点,同様に,
(b2)「マップデータ」の提供について,「マップデータベースとして」提供すると限定した点
は,改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当すると認められる。
よって,補正後の請求項19に係る発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。

(1)第36条第6項第1号の要件について
請求項19の記載は,以下に列挙する点において,特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない。
(イ)「入力の関数」及び「ナビゲーション関係関数」について,発明の詳細な説明に記載されていない。
(ロ)マスター地理的データベースからの地図データの検索について,「地図開発者のコンピュータ」ではなく,人間である「地図開発者」が行うことについて,発明の詳細な説明に記載されていない。
(ハ)「地図開発者」が「ゲーム開発者の別個のコンピュータ」にデータを提供することについて,発明の詳細な説明に記載されていない。

(2)第36条第6項第2号の要件について
請求項19の記載は,以下に列挙する点において,特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。
(イ)「入力の関数」及び「ナビゲーション関係関数」の意味するところが不明である。
(ロ)「データがナビゲーション装置のナビゲーション関係関数に対してコンパイルされるように構成」との記載は意味が不明確であり,結果的に,当該「データ」を特定することができない。
(ハ)「詳細の選択されたレベルにおける選択された実際世界地理的現場を表示する選択されたデータ」との記載の意味するところが不明である。
(ニ)「前記詳細の選択された」,「前記地図データベース」及び「前記マップデータ」との記載における「前記」に対応する記述が,当該記載以前に存在しない。

(3)まとめ
以上のとおり,請求項19の記載は,特許法第36条第6項第1項及び第2項に規定される要件を満たさないので,請求項19に係る発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって,本件補正は,改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反している。

4.むすび
上記のとおり,本件補正は,改正前特許法第17条の2第3項及び第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

なお,審判請求人は,回答書の3.欄において補正案を提示しているが,同補正案の請求項19に係る発明も,依然として,上記2.(2)及び3.欄に記載した違反を解消するものではないことを付記する。

第3.本願発明について
1.本願発明の認定
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?25に係る発明は,平成22年4月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?25に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものと認める。

「コンピュータゲームを形成する方法において、
地図データベース製品の在庫から、ゲーム開発者コンピュータにより、コンピュータゲームのプレイ筋書きの一部分として描写されるべき実世界地理的地域に位置する道路ネットワークを表わすデータを含む、地図データベースを選択するステップであって、
前記道路ネットワークを表すデータが道路の位置の地理的座標と前記道路の交差点における転回制限を含み、前記データベース製品が前記ゲーム開発者から離れた地図開発者のコンピュータにより提供されている、地図データベースを選択するステップを含み、
ゲームシェルの在庫から、前記ゲーム開発者コンピュータにより、前記コンピュータゲームのための基本的ロジック、ルール、戦略及びキャラクタを含むゲームシェルデータ構造体を選択するステップと、
前記地図データベース及び前記ゲームシェルデータ構造体をコンピュータゲーム製品において、前記ゲーム開発者コンピュータにより、結合するステップと、
前記コンピュータゲーム製品を、前記ゲーム開発者コンピュータにより、前記ゲーム開発者および前記地図開発者から離れたエンドユーザーに提供するステップを備えた方法。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された刊行物である
特開2002-282553号公報(以下,「引用例」という。)
には,図面とともに次の事項が記載されている。

(a)「【請求項10】外部から取得した電子地図上にキャラクタ画像を表示させて行う電子ゲーム装置において、外部から電子地図情報を取得する地図取得手段と、ゲームプログラムを外部から取得するゲーム取得手段と、前記地図取得手段により取得された地図情報に対応する地図を表示させるとともに、この表示された地図上を移動制御されるキャラクタ画像を表示させる表示制御手段と、この表示制御手段の制御により表示されたキャラクタ画像を移動制御する際に操作される操作手段と、この操作手段により移動制御されたキャラクタ画像と前記ゲーム取得手段により取得されたゲームプログラムとに従ってゲームを実行するゲーム実行手段と、を備えていることを特徴とする電子ゲーム装置。」

(b)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、携帯電話、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯型電子ゲーム装置などの各種の電子機器または電子情報端末システムに適用して有用な、キャラクタ画像表示制御システム、キャラクタ画像表示制御装置、記録媒体及び電子ゲーム装置に関する。」

(c)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】…
【0004】そこで、本発明は、極めて簡単な構成で、使用者に感動を与え、かつ、意外性のあるキャラクタ画像表示制御を行うことが可能であるばかりでなく、使用者の現在位置周辺の、現実に存在する町並み、風景等に対応する電子地図上にキャラクタ画像を表示させる、またはキャラクタ画像を用いてゲームを実行させることが可能な、キャラクタ画像表示制御システム、キャラクタ画像表示制御装置、記録媒体及び電子ゲーム装置を提供することを目的とする。また、本発明は、電子地図、ゲームプログラムを常時持参していなくとも、いつでもどこにいても、外部から配信してもらった電子地図を用いたキャラクタ画像の表示制御またはキャラクタ画像を用いたゲームが可能な、キャラクタ画像表示制御システム、キャラクタ画像表示制御装置、記録媒体及び電子ゲーム装置を提供することを目的とする。…」

(d)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図1?図19を参照して本発明を配信ゲームシステムに適用した場合における実施の形態について詳細に説明する。図1は本実施の形態にかかる電子ゲームシステムの全体システムを示す。図2は電子ゲームシステムを構成する携帯電話Kおよび配信センターHSの回路ブロックを示す。図3に示す電子ゲームシステム100は、インターネット40等のネットワーク回線を介して通信接続可能なゲーム配信センターHSと、基地局KK等を介して前記インターネット40に通信可能な携帯電話Kとから構成されている。」

(e)「【0012】前者のゲーム配信センターHSは、データ配信端末であり、このゲーム配信センターHSに設置されているホストサーバー30は、ゲームプログラム、ゲームキャラクタ画像等、ゲームを行うに必要な各種のゲームデータを記憶しているデータROM33と、通信接続された携帯電話Kから要求された各種のゲームデータをその要求元である携帯電話Kに配信するゲーム配信部32と、携帯電話K間で各種のデータを転送する転送部34と、データROM33に記憶されているゲームデータの要求元への送信処理を含むサーバー全体を制御するCPU(Central Processing Unit)31とから構成される。このCPU31は、RAM31Aを備えている。
【0013】データROM33は、ゲームデータ配信・ダウンロード処理等のための各種の制御プログラムを記憶するエリアを備えている。この各種の制御プログラムは、コンピューターであるCPU31が読み取り可能なプログラムコードの形態で格納されている。CPU31はこのプログラムコードに従った動作を逐次実行する。データROM33は、このほかに、図3に示すように、2つの現在位置対応キャラクタエリア33a、33eおよび進入エリア33i?33lを備えている。
【0014】2つの現在位置対応キャラクタエリア33a、33eのうち、一方の現在位置対応キャラクタエリア33aは、都道府県エリア33b(旧地名エリアを含む)、キャラクタ画像エリア33cおよび地図データエリア33dを備えている。各都道府県名(旧地名を含む)別の各エリア33bに記憶されている各都道府県名(旧地名を含む)、キャラクタ画像エリア33cに記憶されている各都道府県名に相応しい人物のキャラクタ画像、および、地図データエリア33dに記憶されている各都道府県名に対応する電子地図データは対応づけて記憶されている。たとえば、「宮城県」(岩手県も含む。旧地名:陸奥)のエリアには、「源義経」「宮城県(岩手県も含む)の地図データ」が、また、「埼玉県」(旧地名:武蔵)のエリアには、「畠山重忠」「埼玉県の地図データ」といったように、各都道府県別にその都道府県に相応しい人物のキャラクタ画像とそれの地図データが記憶されている。
【0015】また、他方の現在位置対応キャラクタエリア33eは、都道府県エリア33f、路線名エリア33g、キャラクタ画像エリア33hおよび地図データ33nを備えている。各都道府県名および路線名の各エリア33f、33gに記憶されている都道府県名および路線名、これらの地域を走行するまたは通過する交通機関のキャラクタ画像、および、都道府県名に対応する地図データが対応づけて記憶されている。なお、路線は、鉄道路線のほかに、各空路(飛行ルート)、各航路、各道路を含む概念である。たとえば、「東京都」のエリアには、「新幹線(のぞみ)」「東京都の地図データ」が、「新潟県」(群馬県、埼玉県も含む)のエリアには、「上越新幹線」、「新潟県(群馬県、埼玉県も含む)の地図データ」が、「長野県」のエリアには、「信州電鉄」「長野県の地図データ」が、といった交通機関である電車または列車(それの外観形状)のキャラクタ画像および車内から見える外の風景を含む背景画像、都道府県名に対応する地図データが記憶されている。
【0016】さらに、進入エリア33i?33lには、交通機関の進入状況に応じて加算される時間データ、進入結果を示す状況データ、その他のデータが記憶されている。たとえば、「一方通行無視進入」のエリア33iには、一方通行の道路において通行を禁止しているにも拘らず進入したことに対する罰則として加算される「+10分」の時間データ、進入結果としての「逮捕」というデータ等、「踏切無視進入」のエリア33jには、踏切において電車が通過する警告表示がありながらそれを無視して、踏切に進入したことに対する罰則として加算される「+20分」の時間データ、進入結果としての「死亡」というデータ等、交通機関のキャラクタ画像等が記憶されている。なお、前述した地図上に存在する建造物(例えば、店、家、レストラン、銀行、学校、郵便局、工場、神社など)、ランドマーク、学校(文)、郵便局(〒)などの地図記号と対応付けて、ゲームに用いられる各種のデータ、アイコンまたは画像(例えば、ショッピングゲームの場合には、そのショッピングゲームに用いられる「商品リスト」「商品名」「価格」「果物等のアイコン、画像」が予め記憶されている。または使用者がゲーム開始前に、地図上に存在する建造物、ランドマーク、地図記号と対応付けて、ゲームに用いられる各種のデータ、アイコンまたは画像をRAMの記憶エリアに記憶するようにしても良い。」

(f)「【0017】後者の携帯電話Kは、移動端末であり、この携帯電話Kは、通話機能のほかに、ゲーム機能を備えており、ゲームプログラム、ゲームに用いられるキャラクタ画像等をダウンロードし、ゲームが実行可能となっている。すなわち、携帯電話Kは、CPU2、入力部3、表示部4、表示駆動部9、ROM6、内部RAM7、外部RAM(メモリカード)8、送受信部9、アンテナ部10、位置取得部11、計時部12、音再生部13、および音声入力部14から構成される。携帯電話KのCPU2は、入力部3から供給されるキー操作信号に基づき、ROM6の所定の記憶領域に格納されている各種の制御プログラムを読み出して、内部RAM7に一時格納し、当該プログラムに基づく各種の処理を実行して携帯電話Kの各部を制御する。また、CPU2は、モードスイッチ3aのモード選択に応じて、電話モード、時計モード、ゲームダウンロードモード、ゲーム実行モード等に対応する処理プログラムをROM6から読みだし、各モードに対応する処理を実行する。
【0018】?【0019】<略>
【0020】図4は内部RAM7のデータ構成を示す。この内部RAM7は、表示部4に各種のデータおよび画像を表示する際に使われる表示レジスタ7a、外部から配信された地図データ、内蔵されている地図データ(地図と併せて用いられる地図記号、土地の名称データ等を含む)を格納する地図エリア7b、ゲームの種類を示すエリア7c、前述したキャラクタ画像を格納するエリア7dを備えている。また、内部RAM7は、各種のゲームを実行する際に必要となるデータおよび画像等、ゲームを実行した結果のデータ等を格納するエリア7e?7qを備えている。例えば、競走ゲームエリア7eは、競走ゲームを行った結果である「所要時間」、「順位」を格納する各エリア7f、7gを、また、ショッピングゲームエリア7hは、ショッピングゲームを行った結果である「所要時間」、「購入商品の名称、個数など」、「順位」を格納する各エリア7i、7j、7kを備えている。宅配ゲームエリア7lは、宅配ゲームを行った結果である「所要時間」、「宅配品の個数」「順位」を格納する各エリア7m、7n、7pを、また、交通機関ゲームエリア7qは、交通機関ゲームを行った結果である「所要時間」、「順位」、このゲームに用いられる「ゲームプログラム」、「位置対応の交通機関画像および背景画像など」を格納する各エリア7r、7s、7t、7uを備えている。」

(g)「【0024】図5はこの発明にかかる電子ゲームシステムの動作についてのゼネラルフローチャートを示す。まず、ステップS50において、ゲーム装置としての機能を備えている携帯電話Kの電源を投入すると、ステップS51において、携帯電話KのCPU2はインターネット接続モードが設定されているのか否かを判別する。ステップS51において、インターネット接続モードが設定されていると判別された場合には、インターネット接続モードに対応するモード処理が実行される。この処理の一環として、ステップS52において、ゲームの種類の画面表示がなされる。例えば、図6(A)に示すように、「ゲームの種類を選んでください」というゲーム選択の催促が表示されるとともに、「内蔵ゲーム」と「配信ゲーム」との2つのゲームの種類が表示される。
【0025】前者の「内蔵ゲーム」は、ROM6内に予め記憶してあるゲームプログラム、キャラクタ画像等を用いたゲームであり、「配信ゲーム」は外部の配信センターHSから配信してもらい、内部RAM7に記憶されたゲームプログラム、キャラクタ画像等を用いたゲームである。次に、ステップS53において、携帯電話KのCPU2は、配信ゲームが選択されたのか否かを判別する。配信ゲームが選択されたと判別された場合には、次のステップS54において、地図等の取得処理(図7参照)が行なわれる。
【0026】その後、ステップS55において、図6(B)に示すように、配信による地図ゲームの種類の画面表示がなされるが、次のステップS56において、ゲームの種類に応じたゲーム実行処理が行なわれる(図8?図19参照)。このようにして、この一連の処理は終了する。なお、ステップS51において、その他のモードが設定されていると判別された場合には、時計モード、電話モード等の他のモードに対応するモード処理が実行される。時計モード処理では、現在時刻等を計時し、この計時された現在時刻等を表示部4に表示する。電話モード処理では、ダイヤル部3dの操作で相手先の電話番号を入力すると、その番号の相手先の電話と通話が可能となり、マイク部1cから入力された音声は音声入力部14を介して送受信部9から相手先の電話に送信される。相手先の音声は、送受信部9から受信されて、スピーカ部1E、イヤホーン部1Fから出力される。」

(h)「【0027】図7は、前述した図5のゼネラルフローチャートにおけるステップS54における「地図等の取得処理」を示す。まず、ステップS70において、携帯電話KのCPU2は、現在位置キー3Sの操作がなされているのか否かを判別する。現在位置キー3sの操作がなされていると判別された場合には、次のステップS71において、現在位置情報の取得を行い、取得された現在位置情報をRAM7へ格納する。この現在位置情報の取得方法は各種あるが、この例では、携帯電話Kの発信する各基地局への電波の電界強度等に基づいて計測された携帯電話K自身の現在位置に対応した現在位置情報を取得することとしているが、これとは別に、GPS(グローバルポジションシステム)を利用し、または地上に設置されている位置情報提供端末、更には位置情報を放送する設備等から位置取得部11またはアンテナ部10を介して受信される現在位置情報を取得することとしても良い。
【0028】現在位置情報のRAM7への格納が完了したら、自動的に、ステップS72において、携帯電話KのCPU2は、配信センターHSへ現在位置情報に対応した地図データ等の配信要求がインターネット40を介して行われる。配信センターHSは、この配信要求に応答して、地図データ等の必要なデータをROM33から読み出して携帯電話Kに向けて配信を行う。例えば、長野県の所在中の携帯電話Kの所持者が現在位置キー3sの操作を行うと、配信センターHSは、現在位置キー3sの操作に伴う配信要求に応答して、「長野県名」「信濃名」「木曽義仲のキャラクタ画像」「長野県の地図データ」「各種のゲームに用いられる、例えばショッピングゲーム用の店名データ」等の配信を行う。
【0029】次に、ステップS73において、地図データ等の、必要な全データの受信完了がなされているのか否かを判別する。必要な全データの受信完了がなされたと判別された場合には、次のステップS74において、地図データ等の、必要な全データがRAM7に格納されるとともに、ステップS75において、現在位置対応の地図データ、キャラクタ画像(人物・交通機関等)の全データの受信完了がなされたことを目で確認するためにこれらのデータが表示部4に表示される。このようにして、この一連の処理は終了する。なお、現在位置キー3sの操作後は、携帯電話Kが現在位置を移動しても、予め定められている時間(例えば、1分)が経過する都度、位置取得部11またはアンテナ部10により現在位置情報を取得し、これに伴って、その移動後の現在位置に対応する地図データ等の、必要な全データの受信するようにすれば、更に好都合である。」

(i)「【0030】図8は、前述した図5のゼネラルフローチャートにおけるステップS56における「ゲームの種類に応じたゲーム実行処理」の一つである「競走ゲーム」のゲーム実行処理を示す。…
【0031】その後、ステップS82において、図10(B)に示すように、電子地図上のスタート地点(A)にキャラクタ画像KGを表示し、目標位置(B)にその位置を示すマークHMを表示部4に表示する。例えば、長野県内の長野駅近くの店の前において、携帯電話Kを用いて競走ゲームの選択がなされた場合には、前述した現在位置キーの操作により長野駅近くの店の現在位置情報がRAM7へ格納されており、この現在位置情報に対応した長野県または長野県のある地域の地図データ、同じく、現在位置情報に対応した「木曽義仲」なる人物のキャラクタ画像KGがRAM7へ格納されているので、RAM7から長野県または長野県のある地域の地図データと「木曽義仲」なる人物のキャラクタ画像KGが読み出され、この地図データに対応する地図と「木曽義仲」なる人物のキャラクタ画像KGとを長野駅近くの店の現在位置で、表示部4に表示する。…
【0032】…
【0033】ステップS85において、プレーヤが方向キー3bを行いこの方向キー3bに応じたキャラクタ画像KGの移動がなされる。なお、キャラクタ画像KGの移動は、この例では、地図の道路上に限られており、道路以外の建物内には移動不可能となっているが、道路以外の建物内にも移動可能となっていても良い。方向キー3bに応じたキャラクタ画像KGの移動がなされると、ステップS86において、その移動に伴った現在位置座標が検出される。この現在位置座標の検出方法としては、上下左右の各方向キー3bの種類とそれの操作回数とに基づいて行われるが、このほかに、キャラクタ画像KGの地図上における移動距離または移動量を求めて行っても良い。
【0034】キャラクタ画像KGの移動に伴った現在位置座標が検出された結果、ステップS87において、キャラクタ画像KGが一方通行の道路に到着されているのか否かを判別する。一方通行の道路に到着されていると判別された後、次のステップS88において、一方通行の通行禁止の標識が警告表示されるが、この通行禁止の標識を無視してキャラクタ画像KGが一方通行の道路内に進入したことを判別すると、ステップS89において、進入に伴って、経過時間の加算がなされてそれがRAM7に格納されるとともに逮捕の表示が表示部4に表示される。なお、この例の場合とは異なり、逮捕に伴って、ゲーム終了としても良い。」

(j)【図6】(A)には,ゲームの種類が「内蔵ゲーム」と「配信ゲーム」との2種類あり,携帯電話Kの画面でそのいずれかを選択できることが記載されている。また,【図6】(B)には,「配信ゲーム」を選択した場合に,携帯電話Kの画面に表示された複数のゲームの中から1つのゲームを選択できることが記載されている。

(k)【図10】(B)には,長野駅周辺の地図上で,キャラクタ画像KG等を表示して電子ゲームを実行処理している様子が記載されている。

また,上記摘記事項及び図面の記載から,以下のことが言える。

(α)上記摘記事項(g)に記載されるように,引用例1に開示された「配信ゲーム」は,「外部の配信センターHSから配信してもらい、内部RAM7に記憶されたゲームプログラム、キャラクタ画像等を用いたゲーム」であり,上記摘記事項(j)に記載されるように,「配信ゲーム」を選択した場合には,携帯電話Kの画面に表示された複数のゲームの中から1つのゲームを選択してプレーできることから,引用例1の「配信センターHS」すなわち「ホストコンピュータ30」であるか,「携帯電話K」であるかは不明であるものの,そのいずれか一方が,画面で表示される複数のゲームの実行に必要な「ゲームプログラム及びゲームキャラクタ等」の集まりを有し,その中から,前記画面で選択された1つのゲームの実行に必要な「ゲームプログラム及びゲームキャラクタ等」を選択することは自明である。

(β)上記摘記事項(f)に記載されるように,「携帯電話K」が「ゲームプログラム、ゲームに用いられるキャラクタ画像等をダウンロード」し,上記摘記事項(h)に記載されるように,「配信センターHSは…地図データ等の必要なデータを…携帯電話Kに向けて配信」するものであり,かつ,上記摘記事項(i)及び(k)に記載されるように,「電子ゲーム」はキャラクタ画像等を表示して地図上で実行処理されるものであるから,「地図データ」と「ゲームプログラム、キャラクタ画像等」とを,「携帯電話K」の内部で組み合わせることにより,「電子ゲーム」が形成されていることは自明である。

これらの記載事項及び図示内容並びに上記自明な事項を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「電子ゲームの実行処理の方法において,
ホストサーバー30のデータROM33に記憶されている地図データ33nから,ホストサーバー30により,ゲームにおいて表示される実在する県のある地域の道路情報を含む地図データを読み出して携帯電話Kに配信するステップであって,
前記道路情報が道路の位置座標と前記道路の一方通行規制の情報を含む,地図データを読み出して携帯電話Kに配信するステップを含み,
ホストサーバー30から配信される各種ゲームを実行するのに必要となるゲームプログラム,キャラクタ画像等の集まりの中から,ホストサーバー30又は携帯電話Kのいずれか一方により,ゲームプログラム及びゲームキャラクタ等を選択するステップと,
前記地図データと前記ゲームプログラム,キャラクタ画像等とを携帯電話Kの内部で組み合わせて電子ゲームを形成し,当該電子ゲームを,携帯電話Kにより,プレーヤに提供するステップとを備えた方法。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると,
・引用発明の「電子ゲーム」は,本願発明の「コンピュータゲーム」又は「コンピュータゲーム製品」に相当し,
・引用発明の「電子ゲームの実行処理の方法」は,「地図データとゲームプログラム,キャラクタ画像等とを携帯電話Kの内部で組み合わせて電子ゲームを形成」するものであるから,本願発明の「コンピュータゲームを形成する方法」をも包含する。
また,引用発明1の「ホストサーバー30のデータROM33に記憶されている地図データ33n」は,本願発明の「地図データベース製品の在庫」に相当し,以下同様に,
・「実在する県のある地域」は「実世界地理的地域」に,
・「道路情報」は,「道路ネットワークを表すデータ」に,
・「ゲームにおいて表示される実在する県のある地域の道路情報を含む地図データ」は,「コンピュータゲームのプレイ筋書きの一部分として描写されるべき実世界地理的地域に位置する道路ネットワークを表わすデータを含む、地図データベース」に,
・「地図データを読み出して携帯電話Kに配信するステップ」は,「地図データベースを選択するステップ」に,
・「道路の位置座標」は,「道路の位置の地理的座標」に,
・「各種ゲームを実行するのに必要となるゲームプログラム,キャラクタ画像等の集まり」は,「ゲームシェルの在庫」に,
・「ゲームプログラム及びゲームキャラクタ等」は,「コンピュータゲームのための基本的ロジック、ルール、戦略及びキャラクタを含むゲームシェルデータ構造体」に,
それぞれ相当する。
さらに,引用発明の「プレーヤ」は,携帯電話Kを利用して,携帯電話外から提供された「地図データ」と「ゲームプログラム、キャラクタ画像等」により電子ゲームをプレーするのだから,引用発明の「プレーヤ」が,本願発明の「ゲーム開発者および地図開発者から離れたエンドユーザー」に相当することは自明である。

また,引用発明の「ホストサーバー30」と本願発明の「ゲーム開発者コンピュータ」とは,ゲーム用の「エンドユーザーから離れたコンピュータ」である点において共通し,以下同様に,
・「道路の一方通行規制の情報」と「道路の交差点における転回制限」の情報とは,「道路の交通規制の情報」である点において,
・「ホストサーバー30又は携帯電話Kのいずれか一方により,…選択するステップ」と「ゲーム開発者コンピュータにより,…選択するステップ」とは,「コンピュータにより、…選択するステップ」である点において,
・「地図データとゲームプログラム,キャラクタ画像等とを携帯電話Kの内部で組み合わせ」るステップと「地図データベース及びゲームシェルデータ構造体を…ゲーム開発者のコンピュータにより、結合するステップ」とは,「地図データベース及びゲームシェルデータ構造体を…コンピュータにより、結合するステップ」である点において,
・「電子ゲームを,携帯電話Kにより,…プレーヤに提供するステップ」と「コンピュータゲーム製品を、ゲーム開発者コンピュータにより、…エンドユーザーに提供するステップ」とは,「コンピュータゲーム製品を,コンピュータにより,…エンドユーザーに提供するステップ」である点において,
それぞれ共通する。

してみると,両発明の一致点及び相違点は,以下のとおりである。

[一致点]
「コンピュータゲームを形成する方法において,
地図データベース製品の在庫から,エンドユーザーから離れたコンピュータにより,コンピュータゲームのプレイ筋書きの一部分として描写されるべき実世界地理的地域に位置する道路ネットワークを表わすデータを含む,地図データベースを選択するステップであって,
道路ネットワークを表すデータが道路の位置の地理的座標と前記道路の交通規制の情報を含んでいる,地図データベースを選択するステップを含み,
ゲームシェルの在庫から,コンピュータにより,コンピュータゲームのための基本的ロジック,ルール,戦略及びキャラクタを含むゲームシェルデータ構造体を選択するステップと,
前記地図データベース及び前記ゲームシェルデータ構造体をコンピュータゲーム製品において、コンピュータにより,結合するステップと,
前記コンピュータゲーム製品を,コンピュータにより,ゲーム開発者および地図開発者から離れたエンドユーザーに提供するステップを備えた方法。」

[相違点1]
「地図データベースを選択するステップ」を行う「エンドユーザーから離れたコンピュータ」が,本願発明では,「ゲーム開発者コンピュータ」であるのに対して,引用発明では,ゲーム開発者のものであるか不明な「ホストサーバー30」である点。

[相違点2]
「地図データベース製品」が,本願発明では,「ゲーム開発者から離れた地図開発者のコンピュータにより提供されている」と特定されているのに対して,引用発明では,「地図データベース製品」の出所が不明である点。

[相違点3]
「ゲームシェルデータ構造体を選択するステップ」を行う「コンピュータ」が,本願発明では,「ゲーム開発者コンピュータ」であるのに対して,引用発明では,「ホストサーバー30又は携帯電話Kのいずれか一方」である点。

[相違点4]
「結合するステップ」及びコンピュータゲーム製品を「提供するステップ」を行う「コンピュータ」が,本願発明では,「ゲーム開発者コンピュータ」であるのに対して,引用発明では,エンドユーザーの「携帯電話K」である点。

[相違点5]
「道路の交通規制の情報」が,本願発明では,「道路の交差点における転回制限」の情報であるのに足して,引用発明では,「道路の一方通行規制の情報」である点。

4.判断
上記各相違点について以下に検討する。

(1)[相違点1]について
引用発明の「ホストサーバー30」をどの主体が管理・使用するかは,単なる取り決めに過ぎず,「ホストサーバー30」を「ゲーム開発者」が管理・使用することに,技術的困難性はない。
してみると,引用発明の「ホストサーバー30」を「ゲーム開発者」が管理・使用するものとして,上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得た事項である。

(2)[相違点2]について
原審審査官も述べているように,「現実世界を表わす地図データが『地図開発者』から提供されることは普通であ」り(拒絶査定書から引用),地図データを利用するゲームにおいて,地図データとして国土地理院(本願発明の「地図開発者」に相当。)が発行するものを利用することで,データ入力の手間や開発コストを低減する技術も,例えば,以下の公知文献に開示されるように,周知技術である。
A.特開平9-311624号公報
(特に,段落【0002】?【0005】,【0012】及び【0018】?【0019】の記載を参照。)
B.特開平10-283501号公報
(特に,段落【0002】?【0006】及び【0024】の記載を参照。)
C.特開2002-159742号公報
(特に,段落【0018】及び【0020】?【0021】の記載を参照。)
D.特開2003-196670号公報
(特に,段落【0074】,【0102】,【0109】及び【0126】?【0128】の記載を参照。)
してみると,データ入力の手間や開発コストを低減するために,引用発明の「地図データベース製品」として上記周知技術を適用して,「地図開発者のコンピュータにより提供されている」ものを利用するようにし,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。
ここで,引用発明の「地図データベース製品」が地図開発者から提供されることにより,上記(1)欄に記載したように,「ホストサーバー30」を「ゲーム開発者」が管理・使用するものとした場合,上記「地図開発者のコンピュータ」が「ゲーム開発者から離れた」ものとなることは自明である。

(3)[相違点3]及び[相違点4]について
上記相違点3に係る「ゲームシェルデータ構造体を選択」,及び,上記相違点4に係る「結合」を,ゲームシェルデータ構造体及び地図データの配信元のコンピュータで行うか,配信先のコンピュータで行うかは,当業者が適宜選択し得た設計的事項であるから,引用発明において,これらを配信元のコンピュータ,すなわち,「ホストサーバー30」で行うことすることは当業者が容易に想到し得た事項である。また,この場合,上記相違点4に係るコンピュータゲーム製品の「提供」が「ホストサーバー30」により行われるようになることは自明である。
そして,上記(1)欄に記載したように,「ホストサーバー30」を「ゲーム開発者」が管理・使用することは,当業者が適宜なし得た事項であるから,引用発明の「コンピュータ」として「ゲーム開発者コンピュータ」を採用し,上記相違点3及び4に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(4)[相違点5]について
「道路の交通規制の情報」として,「道路の交差点における転回制限」の情報は,特に公知文献を提示するまでもなく周知なものである。
よって,引用発明の「道路の交通規制の情報」として,「道路の交差点における転回制限」の情報を含むようにして,上記相違点5に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(5)作用・効果の予測性について
本願発明の全体構成により奏される作用・効果は,引用発明及び上記各周知技術から当業者が予測できた範囲内のものである。

(6)審判請求人の主張について
(イ)審判請求時の主張
審判請求人は,平成23年2月16日付けの審判請求書の手続補正書の3.欄(第7頁)において,以下のような主張をしている。

「引用文献に関しては、審査官殿は、引用文献が地図開発者とゲーム開発者とを区別しているかどうか不明であるとしている。このことは、引用文献が請求項に記載された発明を独特の明確性を教示していないということを意味する。さらに、審査官殿は、請求項1は引用文献から容易推考であるとしている。しかしながら、引用文献は、ゲームの創作を促進するための異なる地図データベースの在庫を提供するためのナビゲーション型の地理的データを用いることを提案ないし教示するものではない。
このことは単なる設計的事項では全くない。引用文献も審査官殿もそのようなゲームを設計する方法が公知であるないし示唆されていることの証拠を提供するものではない。選択するための異なるデータベースを用いて、高度に進化したゲーム開発することは、単なる設計的事項ということはできない。」

しかしながら,「ゲームの創作を促進するための異なる地図データベースの在庫を提供するためのナビゲーション型の地理的データを用いること」に相当する発明特定事項は本願の請求項1には記載されておらず,上記主張は特許請求の範囲の記載に基づくものではない。また,地図データを利用するゲームにおいて,地図データとして地図開発者が発行するものを利用することで,データ入力の手間や開発コストを低減する技術は,上記(2)欄に公知文献A?Dを提示して説明したように,周知技術である。
よって,上記主張は採用できない。

(ロ)平成22年4月26日付け意見書での主張
審判請求人は,平成22年4月26日付けの意見書の4.「理由3(第29条2項進歩性)について」欄(第3頁)において,以下のような主張をしている。

「請求項1におきましては、ゲーム開発者コンピュータが、地図データベース製品在庫からコンピュータゲームを生成するように選択し、当該在庫の地図データベース製品が地図開発者(ゲーム開発者ではなく)から提供されることを記載いたしました。
このユニークな構成は引用文献1には全く教示されておりません。また、地理的座標及び道路の転回制限(右左折制限)が存在することについては一切開示ないし示唆がありません。これらの形式のデータは車両のナビゲーションシステムのデータからは見つけられる可能性があります。しかし、引用文献1は車両ナビゲーションシステムのデータを使用して、ゲーム開発のための地図データの在庫を生成するシステムについては全く記載がありません。(たとえば、地図開発者、ナビゲーション地図開発者がゲームを作成するために使用されるゲーム開発者の在庫のための地図データベースを提供することについては一切開示ないし示唆はありません。)」

しかしながら,上記主張における「ユニークな構成」は,上記(2)欄に記載したように周知技術である。また,引用発明の「実世界地理的地域に位置する道路ネットワークを表わすデータを含む,地図データベース」が「地理的座標」を有することは自明であり,上記(4)欄に記載したように,「道路の交通規制の情報」として,「道路の交差点における転回制限」の情報は,特に公知文献を提示するまでもなく周知である。さらに,「車両ナビゲーションシステムのデータを使用して、ゲーム開発のための地図データの在庫を生成するシステム」に相当する発明特定事項は本願の請求項1には記載されておらず,引用例1に当該システムが開示されていないことは,本願発明の特許性を肯定する材料とはならない。
よって,上記主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2011-10-20 
結審通知日 2011-10-24 
審決日 2011-11-10 
出願番号 特願2005-112744(P2005-112744)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 537- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宇佐田 健二  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 仁科 雅弘
中川 真一
発明の名称 コンピュータゲーム開発ファクトリシステム及び方法  
代理人 大塚 文昭  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 西島 孝喜  

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