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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L |
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管理番号 | 1254806 |
審判番号 | 不服2010-17491 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-08-05 |
確定日 | 2012-04-06 |
事件の表示 | 特願2005- 69912「トピック分割処理装置及びトピック分割処理プログラム。」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月21日出願公開、特開2006-251553〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年3月11日の出願であって、平成21年12月1日付け拒絶理由通知に応答して平成22年2月5日付けで手続補正書が提出されたが平成22年4月26日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成22年8月5日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 審判合議体は平成23年9月26日付けで特許法第36条第4項、第6項に基づく最後の拒絶理由通知し、これに対して平成23年11月28日付けで手続補正書及び意見書が提出されている。 第2 平成23年11月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成23年11月28日付けの補正を却下する。 [理由] 1.本件補正後の特許請求の範囲 本件補正による特許請求の範囲の請求項1、3の記載は、次のとおりのものである。 (以下、補正請求項1、補正請求項3とする。) [補正請求項1] マルチメディアコンテンツに含まれる音声を用いて、コンテンツを意味的に等質な部分に分割するトピック分割処理装置であって、 トピックラベルが付与された音声区間の集合のデータを格納するトピックデータベースと、 映像と音声を含むマルチメディアコンテンツから映像と音声を分離する映像音声分離部と、 前記映像音声分離部により分離された音声から単語よりも粒度の細かいサブワード符号列を生成する音声符号化部と、 前記サブワード符号列に対してカーネル主成分分析を適用し、得られた主成分を要素とするベクトルとして分析区間を表現した上でクラスタリングを行い、前記トピックデータベースのデータを参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成するトピック構造情報生成部と、 前記トピック構造情報生成部により生成されたトピック構造情報に従い、そのトピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報に基づいてマルチメディアコンテンツに含まれるトピックを階層的に表示し、ユーザーにより選択された階層に対応する開始時刻と終了時刻を読み出して、コンテンツの該当部分を前記トピックデータベースからロードし、該当部分の再生を行う構造化コンテンツ提示部と、 を備えることを特徴とするトピック分割処理装置。 [補正請求項3] マルチメディアコンテンツに含まれる音声を用いて、コンテンツを意味的に等質な部分に分割する処理をコンピュータに実行させるトピック分割処理プログラムであって、 トピックラベルが付与された音声区間の集合のデータを格納するトピックデータベースを備え、 映像と音声を含むマルチメディアコンテンツから、映像と音声を分離する映像音声分離手段、 前記映像音声分離部により分離された音声から単語よりも粒度の細かいサブワード符号列を生成する音声符号化手段、 前記サブワード符号列に対してカーネル主成分分析を適用し、得られた主成分を要素とするベクトルとして分析区間を表現した上でクラスタリングを行い、前記トピックデータベースのデータを参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成するトピック構造情報生成手段、および、 前記トピック構造情報生成部により生成されたトピック構造情報に従い、そのトピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報に基づいてマルチメディアコンテンツに含まれるトピックを階層的に表示し、ユーザーにより選択された階層に対応する開始時刻と終了時刻を読み出して、コンテンツの該当部分を前記トピックデータベースからロードし、該当部分の再生を行う構造化コンテンツ提示手段 としてコンピュータを機能させることを特徴とするトピック分割処理プログラム。 (下線部は補正箇所) 2. 本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の特許請求の範囲は、平成22年2月5日付け手続補正書により補正されたものであって、その記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 マルチメディアコンテンツに含まれる音声を用いて、コンテンツを意味的に等質な部分に分割するトピック分割処理装置であって、 トピックラベルが付与された音声区間の集合のデータベースであるトピックデータベースと、 映像と音声を含むマルチメディアコンテンツから映像と音声を分離する映像音声分離部と、 前記映像音声分離部により分離された音声から単語よりも粒度の細かいサブワード符号列を生成する音声符号化部と、 前記サブワード符号列に対してカーネル主成分分析を適用し、得られた主成分を要素とするベクトルとして分析区間を表現した上でクラスタリングを行い、前記トピックデータベースを参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成するトピック構造情報生成部と、 前記トピック構造情報生成部により生成されたトピック構造情報に従ってマルチメディアコンテンツを構造化した上で提示する構造化コンテンツ提示部と、 を備えることを特徴とするトピック分割処理装置。 【請求項2】 請求項1に記載のトピック分割処理装置において、 前記音声符号化部は、音声から、SPS(Sub-Phonetic Segment)符号列を生成し、 トピック構造情報生成部は、SPS符号列に対してカーネル主成分分析を適用し、得られた主成分を要素とするベクトルとして分析区間を表現した上でクラスタリングを行い、前記トピックデータベースを参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成する ことを特徴とするトピック分割処理装置。 【請求項3】 マルチメディアコンテンツに含まれる音声を用いて、コンテンツを意味的に等質な部分に分割する処理をコンピュータに実行させるトピック分割処理プログラムであって、 トピックラベルが付与された音声区間の集合のデータベースであるトピックデータベースを備え、 映像と音声を含むマルチメディアコンテンツから、映像と音声を分離する映像音声分離手段、 前記映像音声分離部により分離された音声から単語よりも粒度の細かいサブワード符号列を生成する音声符号化手段、 前記サブワード符号列に対してカーネル主成分分析を適用し、得られた主成分を要素とするベクトルとして分析区間を表現した上でクラスタリングを行い、前記トピックデータベースを参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成するトピック構造情報生成手段、および、 前記トピック構造情報生成手段により生成されたトピック構造情報に従ってマルチメディアコンテンツを構造化した上で提示する構造化コンテンツ提示手段 としてコンピュータを機能させることを特徴とするトピック分割処理プログラム。 【請求項4】 請求項3に記載のトピック分割処理プログラムにおいて、 前記音声符号化手段は、音声から、SPS(Sub-Phonetic Segment)符号列を生成し、 トピック構造情報生成手段は、SPS符号列に対してカーネル主成分分析を適用し、得られた主成分を要素とするベクトルとして分析区間を表現した上でクラスタリングを行い、前記トピックデータベースを参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成する ことを特徴とするトピック分割処理プログラム。 」 3. 本件補正の適否 本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定による適法な補正であるかを検討する。 (以下、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法を、平成18年改正前特許法、あるいは単に特許法と記す。) 補正前後の特許請求の範囲の記載を対比するに、この補正の内、「前記トピック構造情報生成部により生成されたトピック構造情報に従い、そのトピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報に基づいてマルチメディアコンテンツに含まれるトピックを階層的に表示し、ユーザーにより選択された階層に対応する開始時刻と終了時刻を読み出して、コンテンツの該当部分を前記トピックデータベースからロードし、該当部分の再生を行う構造化コンテンツ提示部」なる事項は、平成22年2月5日付け手続補正書により補正された請求項1,3夫々における「前記トピック構造情報生成部により生成されたトピック構造情報に従ってマルチメディアコンテンツを構造化した上で提示する構造化コンテンツ提示部」をそのように補正することにより、文言上、「構造化コンテンツ提示部」を減縮するものである。 しかしながら、構造化コンテンツ提示部が、「マルチメディアコンテンツを構造化した上で提示する」ことに加え、「コンテンツの該当部分を前記トピックデータベースからロードし、該当部分の再生を行う 」ことは、発明を特定するために必要な事項である「構造化コンテンツ提示部」を限定的に減縮するものではない。 コンテンツを「再生」する機能は「構造化コンテンツ提示部」の機能ではない。 構造化コンテンツ提示部については、明細書の段落【0034】に次のように記載されている。 「 【0034】 このトピック分割処理装置において、映像音声分離部201は、映像と音声を含むマルチメディアコンテンツから、映像と音声を分離する。映像音声分離部201により分離された音声は、SPS符号化部202に入力される。SPS符号化部202では、音声からSPS符号列を生成する。SPS符号化部202により生成されたSPS符号列は、トピック構造情報生成部203に入力される。トピック構造情報生成部203では、SPS符号列に対してカーネル主成分分析を適用し、得られた主成分を要素とするベクトルとして分析区間を表現した上でクラスタリングを行い、トピック境界の時刻情報と、クラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成する。この場合にトピックデータベース205が参照される。トピック構造情報生成部203により生成されたトピック構造情報は、構造化コンテンツ提示部204に入力されて、トピック構造情報に従って、マルチメディアコンテンツを構造化した上で提示される。 」 しかしながら、当該段落に、「コンテンツの該当部分を前記トピックデータベースからロードし、該当部分の再生を行う 」ことは記載されていない。 一方、コンテンツのロード、再生に関し、段落【0052】【0053】には次のように記載されている。 「 【0052】 さらに、ユーザーが、ある階層を選択すると、コンテンツ再生部432のウィンドウ表示処理を行うユーザインタフェース処理部では、トピック構造情報から選択された階層に対応する開始時刻と終了時刻を読み出し、コンテンツの該当部分をロードする。そして、区間再生ボタンが押されると、該当部分の再生を行う。 【0053】 また、コンテンツ再生部432のウィンドウ表示を行うユーザインタフェース処理部においては、フレーズ再生ボタンが押されると、その区間を特徴付けるフレーズが再生される。このようなフレーズは、SPS符号列wが分析区間sにおいてどの程度特徴的であるかを表す指標f(w,s)に基づいて抽出され、例えば、特徴的なフレーズ上位3箇所がフレーズ再生ボタン1?3に関連付けられる。そして、フレーズ再生ボタン1が押されると、最も特徴的なフレーズが再生され、フレーズ再生ボタン2が押されると、2番目に特徴的なフレーズが再生され、フレーズ再生ボタン3が押されると、3番目に特徴的なフレーズが再生される。」 しかしながら、この記載は、「構造化コンテンツ提示部」が「前記トピック構造情報生成部により生成されたトピック構造情報に従ってマルチメディアコンテンツを構造化した上で提示」した後に「ユーザインタフェース処理部」によりなされる再生機能についての説明であって、「構造化コンテンツ提示部」の機能ではない。 なお、当該段落には、再生されるコンテンツが、「トピックデータベースから」ロードされるものであることは記載されておらず、この点については、新規事項である疑義がある。 「トピックデータベース」について、その機能、位置付けは必ずしも明確ではないが、図4、図5及び段落【0034】等の関連記載から、トピック構造情報を生成するために参照されるものであって、ロードされ、再生されるコンテンツが記憶されているものではない。 更に、段落【0045】には、「トピックデータベース」には、「SPS符号化列」が存在する旨が記載されているが、この「SPS符号化列」は、ロードされ再生されるものではない。 願書に最初に添付した明細書の他の箇所、特許請求の範囲又は図面に、「コンテンツの該当部分を前記トピックデータベースからロードし、該当部分の再生を行う 」ことが記載されていたとは直ちにはいえない。 したがって、本件補正は、補正前の請求項1、3に対して「ユーザインタフェース処理部」によりなされる再生機能を新たな構成としてを付加することにより特許請求の範囲を減縮するものではあるが、補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項である、「構造化コンテンツ提示部」を限定するものではない。 よって、当該請求項1、3についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求項の限定的減縮の要件を目的とするものではない。 また、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に規定する次の、 一 第36条第5項に規定する請求項の削除 三 誤記の訂正 四 明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。) の何れの要件をも目的とするものではないことは明らかである。 したがって、当該補正は平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。 よって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.特許請求の範囲、明細書の記載 平成23年11月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の記載は、平成22年2月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1から請求項4までに記載したものとなる。 そのうち、請求項1の記載は、次のとおりである。(再掲) 「 【請求項1】 マルチメディアコンテンツに含まれる音声を用いて、コンテンツを意味的に等質な部分に分割するトピック分割処理装置であって、 トピックラベルが付与された音声区間の集合のデータベースであるトピックデータベースと、 映像と音声を含むマルチメディアコンテンツから映像と音声を分離する映像音声分離部と、 前記映像音声分離部により分離された音声から単語よりも粒度の細かいサブワード符号列を生成する音声符号化部と、 前記サブワード符号列に対してカーネル主成分分析を適用し、得られた主成分を要素とするベクトルとして分析区間を表現した上でクラスタリングを行い、前記トピックデータベースを参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成するトピック構造情報生成部と、 前記トピック構造情報生成部により生成されたトピック構造情報に従ってマルチメディアコンテンツを構造化した上で提示する構造化コンテンツ提示部と、 を備えることを特徴とするトピック分割処理装置。」 また、平成23年11月28日付けの手続補正書においては、明細書の段落【0014】?【0017】及び段落【0030】、【0034】についての補正がされているが、上記補正の却下の決定により当該手続補正書は却下されたため、明細書の記載は従前のままである。 2.平成23年9月26日付け拒絶理由 審判合議体が平成23年9月26日付けで通知した拒絶理由は次のものである。 「 理 由 <<< 最後理由 >>> 本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。 記 発明内容が不明である。 平成22年2月5日付け提出の意見書において、「出願人は、明細書の全体を見直し、特に、特許請求の範囲の記載の内容については、本発明の要件が十分に明確になるように、具体的には、図4に示す実施例の内容として明確になるように、手続補正書により補正を行いました。」としている。 たしかに現在の請求項の記載は図4の内容ではあるが、「トピック構造情報」とは何であるか明らかではなく、これがどのような技術思想を具現化した発明であるのか不明である。 図4における「トピック構造情報生成部」の詳細が図5に示されているが、このフロー構造をもってしても「トピック構造情報」とは何であるか明らかではない。 具体的には、以下に示す点が特に不明である。 (1)「トピックラベルが付与された音声区間」「トピックデータベース」とは何か明確でない。 予め「音声区間」として分析区間が定められ、「トピックラベル」が付与されているのであれば、クラスタリングが何故必要となるのか不明である。 「トピックデータベース」がどのように用いられるものであるか、図5にフローチャートが示され、段落【0043】【0044】に該フォローチャートの説明がされているが、この記載と特許請求の範囲の記載との対応が不明である。 特許請求の範囲における「トピックデータベース」が「あらかじめ構築したトピックモデル」を意味し、「トピック構造情報生成部」が「トピックモデル生成部」を意味するのであれば、用語を統一されたい。 また、「トピックデータベース」が「あらかじめ構築したトピックモデル」を意味するのであれば、「トピックデータベース」は教師ありトピック分割の場合にのみ用いられるものであるが、請求項の記載はその前提を欠いており、発明の詳細な説明に記載されている実施例に対応しない。 なお、「トピックデータベース」が「あらかじめ構築したトピックモデル」を指すものであるとしても、「トピックデータベース」がどのように構築されたデータ(データ構造)であるのかは明確に説明がされていない。 また、トピックデータベース」が「あらかじめ構築したトピックモデル」を意味するのでなければ、「トピックデータベース」とは何か著しく不明である。 (2)「 前記サブワード符号列に対してカーネル主成分分析を適用し、得られた主成分を要素とするベクトルとして分析区間を表現した上でクラスタリングを行い、前記トピックデータベースを参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成する」の意味が不明である。 「トピック境界」「クラスターの階層関係」とは何を意味するのか。 クラスタリングは、予め定められた分析区間について為されるものと推察されるが、そのクラスタリングされた区間と、「トピック境界の時刻情報」「クラスターの階層関係」とはどう対応し、「トピック構造情報」としてどのような情報を生成することであるのか明らかでない。 なお、「階層」には、通常、 ア:下位の概念の種々のものを一括して上位概念とし総合する場合の上位下位の概念。 イ:複数の内容を重ねて表示する場合における表示の優先度。 の意味があるが、本願発明における「クラスターの階層関係」とは何を意味するのか不明である。 (3)「トピック構造情報生成部」の詳細が図5に示されているが、ここでは、「教師なしトピック分割」と「教師ありトピック分割」の場合により、処理内容が異なっている。 本願発明は、そのような場合分けを含むものであるのか、常に「教師ありトピック分割」の場合を行う発明であるのか明らかでない。 発明の詳細な説明の記載からも、発明の真意を把握することができない。 (4)「前記トピック構造情報生成部により生成されたトピック構造情報に従ってマルチメディアコンテンツを構造化した上で提示する」とは何を表示することであるのか明らかでない。 「従って」「構造化した上で」というのみでは、表示する対象、態様を何ら表していない。 実施例では、図8に示されているものが提示装置の表示画面とされているが、この表示が技術的にどういう意味をもつものであるか明らかでない。 」 3.判断 (1)拒絶理由において指摘した(1)の点について 拒絶理由においては、次の指摘をした。 「(1)「トピックラベルが付与された音声区間」「トピックデータベース」とは何か明確でない。 予め「音声区間」として分析区間が定められ、「トピックラベル」が付与されているのであれば、クラスタリングが何故必要となるのか不明である。 「トピックデータベース」がどのように用いられるものであるか、図5にフローチャートが示され、段落【0043】【0044】に該フォローチャートの説明がされているが、この記載と特許請求の範囲の記載との対応が不明である。 」(再掲) これに対し、審判請求人は、平成23年11月28日付け提出の意見書において次の意見を述べている。 「 2-2.指摘(b)について、 「トピックラベルが付与された音声区間」は、マルチメディアコンテンツに含まれる音声を、トピックに対応した音声区間に分割するため、分析区間ごとの処理により、分割処理がなされて、分割された音声区間の集合となり、それぞれのトピックを識別するためのラベルが付与された音声区間です。トピック分割処理については、従来技術として明細書において文献を揚げて説明しています。また、本発明の「トピックデータベース」は、トピックラベルが付与された音声区間の集合のデータが格納されるデータベースとなっております。 2-3.指摘(c)について、 上記に説明したように、マルチメディアコンテンツに含まれる音声が、トピックと判別できる区間に分割処理(セグメンテーション)がなされて、音声区間の集合のデータとなり、その際に、クラスタリングが行われ、構造情報を有するトピックのデータとなり、ラベルが付与されて、対応の音声区間と関係づけられます。 2-4.指摘(d)について、 図5に示される内容は、「0036」段落に示されるように、トピック構造情報生成部の構成を説明するブロック図であります。特許請求の範囲の記載では、その内容を「前記サブワード符号列に対してカーネル主成分分析を適用し、得られた主成分を要素とするベクトルとして分析区間を表現した上でクラスタリングを行い、前記トピックデータベースのデータを参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成するトピック構造情報生成部」と明確に記載しております。この内容については、本発明者による引用文献1においても開示されている内容であり、当業者には十分に明確となっております。」 以下、この意見書の内容をを検討するに、「2-2」として述べられている内容自体は形式上の定義として確かにそのとおりであるが、これは拒絶理由で問うた「予め「音声区間」として分析区間が定められ、「トピックラベル」が付与されているのであれば、クラスタリングが何故必要となるのか不明である。」という不明点に何ら応えていない。 また、「「トピックデータベース」がどのように用いられるものであるか、図5にフローチャートが示され、段落【0043】【0044】に該フォローチャートの説明がされているが、この記載と特許請求の範囲の記載との対応が不明である。 」という疑問点についても、「その内容を「前記サブワード符号列に対してカーネル主成分分析を適用し、得られた主成分を要素とするベクトルとして分析区間を表現した上でクラスタリングを行い、前記トピックデータベースのデータを参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成するトピック構造情報生成部」と明確に記載しております。」とするだけで、図5及び明細書の関連段落において、トピックデータベースのデータの何を参照し、参照したデータからどのような構造情報を生成するものであるかということは依然として明らかでない。 したがって、拒絶理由において指摘した(1)の点については実質的に何ら解消していない。 (2)拒絶理由において指摘した(2)の点について 拒絶理由においては、次の指摘をした。 「(2)「 前記サブワード符号列に対してカーネル主成分分析を適用し、得られた主成分を要素とするベクトルとして分析区間を表現した上でクラスタリングを行い、前記トピックデータベースを参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成する」の意味が不明である。 」 これに対し、審判請求人は、平成23年11月28日付け提出の意見書において次の意見を述べている。 「 2-8.指摘(h)について、 不明として指摘されている「前記サブワード符号列に対してカーネル主成分分析を適用し、得られた主成分を要素とするベクトルとして分析区間を表現した上でクラスタリングを行い、前記トピックデータベースを参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成する」の内容は、補正前の特許請求の範囲に記載の「トピック構造情報生成部」の内容を、そのまま記載されているようですが、上記の指摘(d)の説明に関係して説明したように、明細書においては、図5及びそれに関係して説明している内容であり、また、本発明者による引用文献1においても開示されている内容であるので、当業者に十分に明確であると思います。「トピック境界」「クラスターの階層関係」の意味についても、そのまま文言どおりの意味で用いており、例えば、「トピック境界」は、トピックの境界を意味しており、具体的には、音声区間がトピックに応じて分割されますので、その分割されたそれぞれのトピックに対応した音声区間の境界を意味します。また、「クラスターの階層関係」の意味についても、そのまま文言どおりの意味で用いております。具体的には、それぞれの音声区間(分析区間)のトピックがクラスタリングされますので、その階層関係を意味しております。」 しかしながら、「明細書においては、図5及びそれに関係して説明している内容であり、また、本発明者による引用文献1においても開示されている内容であるので、当業者に十分に明確であると思います。」、「そのまま文言どおりの意味で用いており」、「そのまま文言どおりの意味で用いております。」という回答は、不明点指摘に対して何ら応えているものではない。 「前記トピックデータベースを参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報を含むトピック構造情報を生成する」について、「階層関係」とはどういうものであるか、また、「トピックデータベース」の何を参照し、トピック境界の時刻情報とクラスターの階層関係に関する情報がどのように得られ、どういう「トピック構造情報」が生成されるのか依然として不明である。 審判請求人は「引用文献1においても開示されている内容」であるとしているが、引用文献1には「階層的クラスタリング」「階層化」という文言はあるものの、この文言で説明する図3において「階層」とは何か明らかでなく、引用文献1を参酌しても、本願における「クラスターの階層関係」の意味は明らかとはならない。 したがって、拒絶理由において指摘した(2)の点についても実質的に何ら解消していない。 なお、平成23年11月28日付けの手続補正は却下されたが、仮に却下されないものとしても、「階層」についての不明点は解消されるものではない。 (3)拒絶理由において指摘した(4)の点について この指摘については、補正した請求項1、請求項4に対しての意見が述べられているが、平成23年11月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、当該意見は採用することができない。 なお、平成23年11月28日付けの手続補正書が上記理由により却下されないものとしても、当該補正された請求項の記載において、「前記トピック構造情報生成部により生成されたトピック構造情報に従ってマルチメディアコンテンツを構造化」とはどのような構造とすることであるのか明確でなく、拒絶理由において指摘した(4)の点は依然として解消していない。 なお、平成23年11月28日付けの手続補正は却下されたが、仮に却下されないものとしても、指摘事項(2)で指摘した「階層」についての不明点が存在するため、「階層」「階層的に表示」なる要素を含む補正後の記載は依然として明確ではない。 以上のとおりであるから、拒絶理由で指摘した不明点(3)について解消しているとしても、(1)(2)(4)で指摘した点に関して、平成22年2月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲には発明として明確に記載されておらず、また明細書にも発明の内容が明確に記載されていない。 したがって、本件出願は平成23年9月26日付け拒絶理由通知書により通知した「本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。」という拒絶理由は解消していない。 よって、本件出願は、平成23年9月26日付け拒絶理由通知書により通知した拒絶理由により、特許法第49条第1号の規定に基づき拒絶査定すべきものである。 第4. むすび 以上のとおりであるから、原査定を取り消す、本願は特許すべきであるとの審決を求める審判請求は、これを認めることができない。、 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-30 |
結審通知日 | 2012-02-08 |
審決日 | 2012-02-21 |
出願番号 | 特願2005-69912(P2005-69912) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(G10L)
P 1 8・ 537- WZ (G10L) P 1 8・ 57- WZ (G10L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 菊池 智紀 |
特許庁審判長 |
板橋 通孝 |
特許庁審判官 |
千葉 輝久 古川 哲也 |
発明の名称 | トピック分割処理装置及びトピック分割処理プログラム。 |
代理人 | 南野 貞男 |