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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1254834
審判番号 不服2010-5316  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-10 
確定日 2012-04-05 
事件の表示 特願2008-233002「コンテンツ再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月15日出願公開、特開2009- 10997〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年11月19日に出願した特願2002-334502号の一部を、平成20年9月11日に新たな特許出願(特願2008-233002号)としたものであって、平成21年12月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において平成23年11月10日付けで拒絶理由通知がなされ、平成24年1月13日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年1月13日付け手続補正書の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「電話機能を有するコンテンツ再生装置において、
相手方からの着信に応答して着信信号を出力する出力手段、
コンテンツが有料か否かを判断しコンテンツが有料である場合には、当該有料コンテンツの再生期間に前記出力手段を不能化する不能化手段、
前記有料コンテンツの再生期間における前記相手方からの着信に応答して記録案内メッセージを前記相手方に返送する返送手段、
前記記録案内メッセージに対する前記相手方の発話内容を記録する記録手段、
前記有料コンテンツを受信する受信手段、および
前記受信手段によって受信された有料コンテンツをリアルタイムで再生する再生手段を備え、
前記着信、及び前記コンテンツが同一のプロトコルに基づいて送受信される、コンテンツ再生装置。」

3.引用例発明
当審で通知した拒絶理由に引用された特開平10-248058号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に有料で視聴するデジタル放送を受信するデジタル放送受信装置にかかり、特に、受信装置に接続する電話回線のサービスに対応した受信装置に関するものである。」

ロ.「【0012】図1は、本発明によるデジタル放送受信装置の一実施例を示すブロック構成図である。
【0013】図において、101はデジタル放送の受信端子で、衛星放送の場合にはパラボラアンテナなどで受信した信号を入力する。CATVの場合には、ケーブルをこの端子に接続する。102は番組の選局を行うチューナ部、103は選局した番組のスクランブルされたデジタルデータを解除(デスクランブル)したり、圧縮されたデジタル画像データをデコードして、非圧縮の画像データに戻すデコーダ部、104はリモコン(図示せず)からの信号に従ってチューナ部102の選局を制御したり、スクランブル状態や課金情報などを検出してデコーダ部103の制御や、装置全体の制御を行う全体制御部、105は課金センター(図示せず)などと通信回線を介して課金情報などのやり取りを行なう通信制御部、106は電話回線などの通信回線を接続する回線端子、107は本発明の重要な要素の一つである発信電話番号検出部で、回線を通して送られてくる発信電話の電話番号を検出する。108はデコーダ部103でデコードした画像データと、発信電話番号検出部107で検出した発信電話番号などを一緒に表示したりするための表示制御部、109は画像信号の出力端子で、いわゆるNTSCなどのアナログビデオ信号やデジタル画像データを出力する。110は表示器であり、ブラウン管や液晶表示器などである。なお、この表示器110は図のように出力端子109に外付けする構成としてもよいし、表示器の中に本装置を内蔵するような構成としてもよい。」

ハ.「【0017】図4は、さらに別の実施例で、図において図3と同一部分は同一符号であり、401は電話のかかってきた時間などを計測する時計、402は発信電話番号検出部107で検出した発信電話番号と時計401で計測した時間などを記憶するメモリ、403は回線のフック状態を検出するフック検出部、404はいろいろな指示を与える指示部で、テンキーなどのボタンでもよいし、選局などを行なうワイヤレスリモコンなどを用いてもよい。この実施例では、例えば着呼があり発信電話番号を検出した場合には、まず、発信電話番号検出部107で検出した発信電話番号と時計401で計測したその着呼した時間をメモリ402に記憶する。次に、この着呼に対して電話機(図示せず)をとって応答したかどうかをフック検出部403で検出し、例えば応答した場合には、記憶しておいた発信電話番号と着呼した時間を消去する。この動作を繰返し、あとで指示部404で支持を与えるとメモリ402に記憶した番号と時間を表示器110にまとめて表示することにより、何処から電話がかかってきたかが判る。これにより、留守番電話と同様の使い方ができる。特にこの場合には、普通の留守番電話のように留守番モードに切り替えなくてもかかってきた電話の電話番号を後で知ることができる。また、電話機で応答した場合でも、記憶した番号や時間を消去しないようにすれば、かかってきた電話の記録を取っておくことができる。」

ニ.「【0020】さて、図6のように切り替えスイッチ601を設け、その一方に電話機を接続する構成の場合、切り替えスイッチ601を常にa側に接続しておけば、電話がかかってきても電話機604のベルが鳴ることはない。すなわち、この切り替えスイッチ601によって接続した電話機604を非鳴動の状態にできる。そこで、指示部404で特定の時間を指示しておくことにより、その時間の間は接続した電話機604が鳴らないようにし、その間にかかってきた電話に対しては、その発信電話番号をメモリ402に記憶しておくようにすることもできる。さらに、指示部404で特定のチャンネルや番組(例えば、いわゆるペイパービュー番組やチャンネル、特定の視聴料の高い映画など)を指示しておくことにより、そのチャンネルや番組を見ているときは同様に電話機604が鳴らないようにしておき、その間の電話に対してはその発信電話番号を検出してメモリ402に記憶しておくことができる。このようにすることにより、電話にじゃまされることなく、放送を視聴することができる。
【0021】図7は、本発明のさらに別の実施例で、留守番電話機能を設けたものである。図において、図4と同一部分は同一符号であり、701は電話回線の音声を録音する録音部で、磁気テープを用いてもよいし、DPCM方式やCELP方式などでデジタル圧縮して半導体メモリなどに記憶するようにしてもよい。この構成では、指示部404で留守番モードを指示しておけば、通常の留守番電話と同様に電話の内容を録音部701に録音しておくことができる。また、指示部404に特定のチャンネルや番組(例えば、いわゆるペイパービュー番組やチャンネル、特定の視聴料の高い映画など)を指示しておくことにより、そのチャンネルや番組を見ているときには自動的に留守番モードになり、録音部701にかかってきた電話の内容を録音するようにできる。なお、録音部701に録音するのと共に発信電話番号検出部107で検出した発信電話番号を録音と関連付けてメモリ402あるいは録音部701に記憶しておいてもよい。
【0022】図8は、通常の留守番電話機を外部に接続する場合の実施例である。図において、図4と同一部分は同一符号であり、801は回線の接続を切り替える切り替えスイッチ、802は留守番電話機への直流供給をオンオフするスイッチで、スイッチ801と連動して動作し、スイッチ801がa側に接続されるときにはスイッチ802がオンする。803は電話機を接続する接続端子、804は接続した留守番電話機、805は接続端子803に接続した電話機のフック状態を検出するフック検出部、806は直流供給部である。この場合、通常はスイッチ801をa側に、スイッチ802をオン状態にしておく。この状態で電話がかかってくると、発信電話番号検出部107で発信電話番号を検出して画面に表示する。これに対して留守番電話機804の受話器をとりオフフック状態にすると、留守番電話機804には直流供給部806から直流が供給されているので、フック検出部805にも電流が流れ、これをフック検出部805で検出し、スイッチ802をオフすると共にスイッチ801をb側に切り替える。これによって、通常の通話ができる。次に、指示部404で特定のチャンネルや番組(例えば、いわゆるペイパービュー番組やチャンネル、特定の視聴料の高い映画など)を指示しておくことにより、そのチャンネルや番組を見ているときには強制的にスイッチ801をb側に接続し、留守番電話機803の留守番電話機能が動作するようにすることによって、テレビの視聴を電話によってじゃまされることがなくなる。また、図8では、接続端子803に留守番電話機804ではなく普通の電話機を接続しておき、切り替えスイッチ801をa側にスイッチ802をオン状態にしておけば、着呼があっても電話機が鳴動しない。この状態で着呼があった場合には、その着呼や相手の発信電話番号などを表示器110の画面あるいは音声でしらせ、これに対して受話器をとったらスイッチ801をb側に切り替えて通話できるようにしてもよい。本受信装置が電源オン時には、ずっとこのような動作になるようにしてもよいし、既に述べたように特定の番組やチャンネルを視聴しているときに、自動的にこのような動作になるようにしてもよいし、あるいはリモコンなどでこの動作モードがオンオフできるようにしてもよい。なお、スイッチ801がa側、スイッチ802がオン状態で、接続端子803に接続された留守番電話機804や電話機で電話をかける場合には、受話器をとるとフック検出部805に直流が流れるので、これを検出したらスイッチ801をa側に、スイッチ802をオフにすればよい。」

引用例のデジタル放送受信装置は、主に有料で視聴するデジタル放送を受信するものであるから、「有料のデジタル放送を受信する受信手段」を備えるものであり、デジタル放送の再生はリアルタイムでなされることは技術常識であるから、「受信手段で受信された有料のデジタル放送をリアルタイムで再生する再生手段」を備えるものであるといえる。
引用例の図6には、デジタル放送受信装置に電話機を接続することが示されている。
引用例の段落【0020】を参照すれば、有料のデジタル放送を見ているときは電話機のベルを鳴らさないようにできるものであるから、「有料のデジタル放送の再生期間に電話機のベルを鳴らさないようにする手段」を備えるものであるといえる。
引用例の段落【0021】を参照すれば、録音部を設けることにより、有料のデジタル放送を見ているときは、かかってきた電話の内容を録音することができるものである。

したがって、引用例には、技術常識を考慮すると、
「電話がかかってくるとベルの鳴る電話機を接続するデジタル放送受信装置において、
有料のデジタル放送の再生期間に電話機のベルを鳴らさないようにする手段、
前記有料のデジタル放送の再生期間に、かかってきた電話の内容を録音する録音部、
前記有料のデジタル放送を受信する受信手段、および
前記受信手段によって受信された有料のデジタル放送をリアルタイムで再生する再生手段を備える、デジタル放送受信装置。」
との発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
本願発明と引用例発明とを対比する。
引用例発明の「有料のデジタル放送」は、本願発明の「有料コンテンツ」に相当する。
引用例発明の「電話機を接続するデジタル放送受信装置」は、接続される電話機を含めれば、「電話機能を有するコンテンツ再生装置」であるといえる。
引用例発明の「電話機」は、「電話がかかってくるとベルが鳴る」ものであるから、「相手方からの着信に応答して着信信号を出力する出力手段」を備えているといえる。
引用例発明の「前記有料のデジタル放送の再生期間に電話機のベルを鳴らさないようにする手段」は、本願発明の「有料コンテンツの再生期間に前記出力手段を不能化する不能化手段」と一致している。
引用例発明の「前記有料のデジタル放送の再生期間に、かかってきた電話の内容を録音する録音部」と、本願発明の「前記有料コンテンツの再生期間における前記相手方からの着信に応答して記録案内メッセージを前記相手方に返送する返送手段」及び「前記記録案内メッセージに対する前記相手方の発話内容を記録する記録手段」とは、「前記有料コンテンツの再生期間における前記相手方からの着信に応答して前記相手方の発話内容を記録する記録手段」である点で共通している。

したがって、本願発明と引用例発明とは、
「電話機能を有するコンテンツ再生装置において、
相手方からの着信に応答して着信信号を出力する出力手段、
有料コンテンツの再生期間に前記出力手段を不能化する不能化手段、
前記有料コンテンツの再生期間における前記相手方からの着信に応答して前記相手方の発話内容を記録する記録手段、
前記有料コンテンツを受信する受信手段、および
前記受信手段によって受信された有料コンテンツをリアルタイムで再生する再生手段を備える、コンテンツ再生装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「当該有料コンテンツの再生期間に前記出力手段を不能化する不能化手段」について、本願発明では、「コンテンツが有料か否かを判断しコンテンツが有料である場合には、」と特定されているのに対して、引用例発明では、そのように特定されていない点。

[相違点2]
本願発明は、「前記有料コンテンツの再生期間における前記相手方からの着信に応答して記録案内メッセージを前記相手方に返送する返送手段、前記記録案内メッセージに対する前記相手方の発話内容を記録する記録手段」を備えるものであるのに対して、引用例発明は、「前記有料コンテンツの再生期間における前記相手方からの着信に応答して前記相手方の発話内容を記録する記録手段」を備えるものであるが、「記録案内メッセージ」について言及されていない点。

[相違点3]
着信とコンテンツの送受信のプロトコルについて、本願発明では、「前記着信、及び前記コンテンツが同一のプロトコルに基づいて送受信される」ものであるのに対して、引用例発明は、着信とコンテンツの送受信のプロトコルについて特定されていない点。

5.当審の判断
[相違点1]について
コンテンツ再生装置において、コンテンツが有料か否かを判断することは、例えば、特開昭63-123294号公報、特開平3-178289号公報に示されているように周知事項と認められる。
引用例発明は、本願発明と同様に「当該有料コンテンツの再生期間に前記出力手段を不能化する不能化手段」を備えるものであるから、有料コンテンツの再生期間を認識するために、当該周知事項を適用して相違点1に係る構成とすることは困難を伴うものではない。

[相違点2]について
留守番電話機において、相手方からの着信に応答して記録案内メッセージを相手方に返送し、そのメッセージに対する相手方の発話内容を記録することは、例えば、当審の拒絶理由で引用した特開平11-234394号公報の段落【0019】に示されているように周知事項と認められる。
引用例発明は、コンテンツ再生装置に留守番電話機能を設けたものであるから、留守番電話機における当該周知事項を引用例発明に適用して相違点2に係る構成とすることは格別のことではない。

[相違点3]について
携帯電話等へのコンテンツ配信において、電話回線網によりコンテンツの送受信を行うことは、例えば、特開2001-352583号公報、特開2001-331661号公報に示されているように周知事項であり、また、コンテンツの送受信にどのようなプロトコルを採用するかは当業者において設計事項であることを考慮すると、引用例発明の着信とコンテンツの送受信を電話回線により行い、両者のプロトコルを同一とすることは、当業者が容易になし得たものというべきである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例発明及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-06 
結審通知日 2012-02-07 
審決日 2012-02-21 
出願番号 特願2008-233002(P2008-233002)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢島 伸一  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 宮田 繁仁
萩原 義則
発明の名称 コンテンツ再生装置  

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