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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H03H |
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管理番号 | 1254835 |
審判番号 | 不服2010-8286 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-04-19 |
確定日 | 2012-04-05 |
事件の表示 | 特願2003-318597「積層型LC部品およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月31日出願公開、特開2005- 86676〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成15年9月10日の出願であって、平成21年4月24日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月26日付けで手続補正がなされたが、平成22年1月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成22年4月19日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年4月19日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に係る発明 平成22年4月19日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、当該補正前の平成21年6月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1を、以下のように、補正後の特許請求の範囲の請求項1に変更する補正を含むものである。 <補正前の請求項1の記載> 「導体パターンが表面に形成されたグリーンシート状の複数の第1絶縁シートが積層されることによって構成されたインダクタと、コンデンサ電極が表面に形成されたグリーンシート状の複数の第2絶縁シートが積層されることによって構成されたコンデンサとを有する積層体と、 前記積層体の側面に形成され、前記インダクタの両端にそれぞれ接続された一対の入出力電極と、 前記コンデンサのグランド側の前記コンデンサ電極に電気的に接続されたグランド電極と、を備え、 前記グランド電極は、前記積層体焼成前のグリーンシート状の第3絶縁シートであって、前記積層体の前記コンデンサ側の最外層に位置する前記第3絶縁シートにのみ形成され、前記複数の第1絶縁シートに形成されうるスルーホールを介することなく、前記第3絶縁シートに形成されたスルーホールを介して、又は、前記複数の第2絶縁シートのうちの少なくとも1つに形成されたスルーホール及び前記第3絶縁シートに形成されたスルーホールを介して、前記コンデンサのグランド側の前記コンデンサ電極に電気的に接続されることを特徴とする積層型LC部品。」 <補正後の請求項1の記載> 「導体パターンが表面に形成されたグリーンシート状の複数の第1絶縁シートが積層されることによって構成されたインダクタと、コンデンサ電極が表面に形成されたグリーンシート状の複数の第2絶縁シートが積層されることによって構成されたコンデンサとを有する積層体と、 前記積層体の側面に形成され、前記インダクタの両端にそれぞれ接続された一対の入出力電極と、 前記コンデンサのグランド側の前記コンデンサ電極に電気的に接続されたグランド電極と、を備え、 前記グランド電極は、前記積層体焼成前のグリーンシート状の第3絶縁シートであって、基板に実装されたときに前記積層体における前記インダクタよりも前記基板側に位置する前記コンデンサ側の最外層に位置する前記第3絶縁シートの前記基板に対向する面にのみ形成され、前記複数の第1絶縁シートに形成されうるスルーホールを介することなく、前記第3絶縁シートに形成されたスルーホールを介して、又は、前記複数の第2絶縁シートのうちの少なくとも1つに形成されたスルーホール及び前記第3絶縁シートに形成されたスルーホールを介して、前記コンデンサのグランド側の前記コンデンサ電極に電気的に接続されることを特徴とする積層型LC部品。」 そして、上記補正は、「前記グランド電極は、・・・前記積層体の前記コンデンサ側の最外層に位置する前記第3絶縁シートにのみ形成され、」を「前記グランド電極は、・・・基板に実装されたときに前記積層体における前記インダクタよりも前記基板側に位置する前記コンデンサ側の最外層に位置する前記第3絶縁シートの前記基板に対向する面にのみ形成され、」とするものであり、実質的に、「グランド電極」に関して、「前記積層体の前記コンデンサ側の最外層に位置する前記第3絶縁シートにのみ形成され」ることに、「基板に実装されたときに前記積層体における前記インダクタよりも前記基板側に位置する前記コンデンサ側の最外層に位置する前記第3絶縁シートの前記基板に対向する面にのみ形成され」るという特定の限定を付加するものである。 してみれば、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件手続補正後の上記請求項1の記載における発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された実願平3-22912号(実開平4-111723号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(なお、これは平成21年4月24日付けの拒絶理由通知書に「実願平 3- 22912号(実開平 4-111723号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を記録したCD-ROM」と記載された引用文献3である。)(以下、「引用例1」という。)、同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-54369号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。 (引用例1) A.「【0001】 【産業上の利用分野】 この考案はπ型フィルターを構成する積層複合電子部品に関するものである。」 B.「【0009】 【実施例】 図2はこの考案に係る積層複合電子部品の斜視図、図3は図2のA-A矢視断面図、図4は図2のB-B矢視断面図である。これらの図に示すように、この考案に係る積層複合電子部品は、インダクタ1と、このインダクタ1の両端部に各々接続された一対の積層磁器コンデンサ2,2とからなるものである。 【0010】 一対の積層磁器コンデンサ2,2は各々、1または2以上の内部アース電極3と、これら内部アース電極3に対向して設けられた1または2以上の内部キャパシタ電極4と、これら内部アース電極3と内部キャパシタ電極4との間に挟まれた1または2以上の誘電体層5とを備えている。 【0011】 一対の積層磁器コンデンサ2,2間において、同一平面に積層形成された内部アース電極3は共通に形成され、一対の積層磁器コンデンサ2,2の内部キャパシタ電極4のうちで、前記インダクタ1と同一平面に積層形成された一対の内部キャパシタ電極4,4はこのインダクタ1の両端部に各々接続されている。 【0012】 素体の中央部には内部アース電極3に接続されたアース電極6が積層形成され、素体の両端部には一対の入・出力電極7が形成されている。素体の中央部に形成されたアース電極6は入・出力電極7,7から所定の間隔をおき、素体の中央部を取り囲んだ状態で形成されている。 【0013】 図1はこの積層複合電子部品の分解斜視図である。同図に示すように、この積層複合電子部品は、以下に述べる構造のA?F層を後述する順序に積層して形成される。 【0014】 まず、F層は、蛇行した細線状の導体からなるインダクタ1と、このインダクタ1の両端部に各々接続された一対の内部キャパシタ電極4と、インダクタ1の両脇に配置された一対の帯状の内部アース電極3,3とからなる。この内部キャパシタ電極4は、積層体の長手方向の外形枠に接する状態で配置され、この帯状の内部アース電極3,3は、インダクタ1及び内部キャパシタ電極4に接触しないように、積層体の幅方向の外形枠に接する状態で配置されている。 【0015】 また、E層は、一対の帯状の内部アース電極3,3と、F層のインダクタ1を完全に被覆し、かつ両端部がF層の内部キャパシタ電極4と重なる誘電体層5とからなる。この帯状の内部アース電極3,3は前記インダクタ1及び前記内部キャパシタ電極4に接触しないように、積層体の幅方向の外形枠に接する状態で配置され、少なくとも一部がF層の帯状の内部アース電極3,3に接続されている。そして、誘電体層5の両側部のうちで帯状の内部アース電極3,3に相当する部分は切り欠かれている。 【0016】 また、C層は、E層の誘電体層5を介してF層の内部キャパシタ電極4と対向する部分を両端部に持つ内部アース電極3からなる。この内部アース電極3の中央部は少なくとも一部がE層の帯状の内部アース電極3,3に接続され、両端部はF層の内部キャパシタ電極4と接触しないようにE層の誘電体層5より小さく形成されている。 【0017】 また、B層は、C層の内部アース電極3の中央部に少なくとも一部が接続されている内部アース電極3と、この内部アース電極3の長手方向の両側に配置されている誘電体層5とからなる。この内部アース電極3は、F層の内部キャパシタ電極4の垂直方向投影と重ならないような位置に配置され、誘電体層5はC層の内部アース電極3より大きく形成されている。 【0018】 また、D層は、B層の内部アース電極3に積層されている内部アース電極3と、この内部アース電極3の長手方向の両側に配置された内部キャパシタ電極4,4とからなる。この内部キャパシタ電極4,4は、B層の内部アース電極3に接触しないように、積層体の幅方向の外形枠に接する状態で配置され、B層の誘電体層5を介して、C層の内部アース電極3と対向している。 【0019】 また、A層は、B層の内部アース電極3に接続されたアース電極6と、このアース電極6の長手方向の両側で、内部アース電極3と接触しない位置に形成された入・出力電極7,7とからなる。アース電極6は積層体の幅方向一杯まで広げて形成され、入・出力電極7,7は積層体の長手方向の両端部の外形枠に接するように形成されている。 【0020】 上記した各層の積層順序は、最上層と最下層にA層を、その間にE層、F層、E層をこの順に積層し、A層とE層-F層-E層との間に、A層の方から見てB層,C層,B層,D層,B層,C層,…,B層,D層,B層,C層またはB層,C層をこの順に積層する。 【0021】 各層をこのように積層すると、積層体の長手方向の端部には内部キャパシタ電極4の長手方向の端部が露出する。そこで、積層体の長手方向の端部にメッキを施して入・出力電極7,7を形成すると、内部キャパシタ電極4の端部は入・出力電極7,7に接続される。また、各層をこのように積層すると、各内部アース電極3は厚さ方向に連続的に接続され、最外層のアース電極6に接続される。 【0022】 しかして、この積層複合電子部品の内部には、内部キャパシタ電極4と内部アース電極3とが誘電体層5を間に挟んで対向した状態の一対の積層磁器コンデンサ2,2が形成され、また、一部の内部キャパシタ電極4,4の対の間に直列に接続されたインダクタ1が形成される。その結果、これらのコンデンサ2,2とインダクタ1とによってπ型フィルターが形成される。 【0023】 なお、上述したA?Fの各層は厚膜印刷またはフィルムの張り合せ、その他の手段によって積層することができる。また、インダクタ1のインダクタンスは、インダクタ1の導体の幅及び長さを変えることによりコントロールできる。また、コンデンサ2,2の静電容量は誘電体層5の誘電率あるいは内部キャパシタ電極4の対向面積あるいは誘電体層5の厚さを適当に変えることでコントロールできる。」 C.「【0024】 また、この実施例ではチップ形状として長方体のものを例に出したが、上記の内部構造が適用できる限りチップ形状は問わない。外観形状及び各層の形状も上記のものに限定されず、例えば、図5、6に示すようなもの、すなわち、基本的構成は図1に示すようなものであって、長方形の誘電体層の中央部に楕円形の孔を形成させ、この孔に楕円形の内部アース電極2を厚さ方向に貫通形成させるようにしたものでもよい。」 D.「【0026】 また、この考案に係る積層複合電子部品は、チップ構造で、しかも入・出力電極及びアース電極が同一面に有るため、基板の所定位置に置くだけでハンダ付けできる状態となり、基板への表面実装及び基板への両面表面実装が容易になるという効果がある。」 ここで、 (ア)上記Cの「例えば、図5、6に示すようなもの、すなわち、基本的構成は図1に示すようなものであって、長方形の誘電体層の中央部に楕円形の孔を形成させ、この孔に楕円形の内部アース電極2を厚さ方向に貫通形成させるようにしたものでもよい。」という記載より、図5,図6に記載された構成において格別に説明がなされていない点については、図1に記載された構成の説明によるものと認められる。 また、上記「内部アース電極2」は、それに対応する図6の記載を参照すると、「内部アース電極3」の誤記であると認められる。そして、図6に記載された、誘電体層の中央部の穴に、厚さ方向に貫通形成された楕円形の一連の内部アース電極3は、一般的にはスルーホールであると解される。 (イ)上記Bの段落【0022】の「しかして、この積層複合電子部品の内部には、内部キャパシタ電極4と内部アース電極3とが誘電体層5を間に挟んで対向した状態の一対の積層磁器コンデンサ2,2が形成され、また、一部の内部キャパシタ電極4,4の対の間に直列に接続されたインダクタ1が形成される。その結果、これらのコンデンサ2,2とインダクタ1とによってπ型フィルターが形成される。」という記載及び図1,図6より、引用例1のものは、導体パターンが表面に形成された誘電体層5によって構成されたインダクタ1と、内部キャパシタ電極4と内部アース電極3とがそれぞれ表面に形成された複数の誘電体層5が積層されることによって構成されたコンデンサ2,2とを有する積層体があると解される。 (ウ)上記Bの段落【0011】の「一対の積層磁器コンデンサ2,2の内部キャパシタ電極4のうちで、前記インダクタ1と同一平面に積層形成された一対の内部キャパシタ電極4,4はこのインダクタ1の両端部に各々接続されている。」という記載、及び上記Bの段落【0021】の「各層をこのように積層すると、積層体の長手方向の端部には内部キャパシタ電極4の長手方向の端部が露出する。そこで、積層体の長手方向の端部にメッキを施して入・出力電極7,7を形成すると、内部キャパシタ電極4の端部は入・出力電極7,7に接続される。」という記載より、インダクタ1の両端と、それにそれぞれ接続された一対の入・出力電極7,7とは、内部キャパシタ電極4を介して電気的に接続されているから、引用例1のものは、積層体の長手方向の端部に形成され、インダクタ1の両端にそれぞれ接続された一対の入・出力電極7,7があると解される。 よって、上記A?Dの記載及び関連する図面を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。) 「導体パターンが表面に形成された誘電体層5によって構成されたインダクタ1と、内部キャパシタ電極4と内部アース電極3とがそれぞれ表面に形成された複数の誘電体層5が積層されることによって構成されたコンデンサ2,2とを有する積層体と、 前記積層体の長手方向の端部に形成され、前記インダクタ1の両端にそれぞれ接続された一対の入・出力電極7,7と、 前記コンデンサ2,2の内部アース電極3に電気的に接続されたアース電極6と、を備え、 前記アース電極6は、誘電体層5であって、基板に実装されたときに前記積層体における前記インダクタ1よりも前記基板側に位置する前記コンデンサ2,2側の最外層に位置する前記誘電体層5の前記基板に対向する面に形成され、インダクタ1を構成する誘電体層5に形成されうるスルーホールを介することなく、前記最外層に位置する誘電体層5に形成されたスルーホールを介して、又は、コンデンサ2,2を構成する複数の誘電体層5のうちの少なくとも1つに形成されたスルーホール及び前記最外層に位置する誘電体層5に形成されたスルーホールを介して、前記コンデンサ2,2の内部アース電極3に電気的に接続される積層複合電子部品。」 (引用例2) E.「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、例えば積層型LC複合部品や3端子コンデンサのような積層電子部品にかかわり、更に具体的には、その端子電極における耐圧性の改良に関するものである。 【0002】 【背景技術】積層電子部品,例えば積層型LC複合部品の一例を示すと、図6(A)に示すような積層構造となっている。この背景技術は、図6(D)に等価回路を示すように、いわゆるT型フィルタを構成するLC複合部品の積層構造の例である。同図に示すように、上部の6層によってコンデンサ(キャパシタ)部10が構成されており、下部の10層によってインダクタ(コイル)部12が構成されている。コンデンサ部10を構成するシートA1?A6は例えば誘電体材料によって形成されており、シートA2?A5にはコンデンサ用導体が形成されている。一方、インダクタ部12を構成するシートB1?B10は例えば磁性体材料(磁性フェライトなど)によって形成されており、シートB2?B9にはインダクタ用導体が形成されている。コンデンサ部10とインダクタ部12の間には、異種接合材料としてシート14が設けられている。以上の各シートを積層して成形,圧着,焼成し、この積層体に外部引出用の端子電極を形成することで積層型LC複合部品が得られる。 【0003】コンデンサ部10について説明すると、シートA1は保護層である。シートA2,A4には、一方のコンデンサ用導体D1がそれぞれ形成されている。これらのコンデンサ用導体D1は積層シートの前後辺側に露出しており、図6(B)又は(C)に示すGND電極(側面端子)16に接続されている。シートA3,A5には、他方のコンデンサ用導体D2がそれぞれ形成されている。これらのコンデンサ用導体D2は、略中央付近でバイアホールD3(接続線で表示)によって接続されている。すなわち、上述したコンデンサ用導体D1の中央部分に窓が設けられており、この部分を通過するバイアホールD3によってコンデンサ用導体D2の上下が接続されている。シートA6も保護層である。以上のコンデンサ用導体D1,D2によって、図6(D)の等価回路に示すコンデンサCが構成されている。 【0004】次に、インダクタ部12を説明すると、シートB1は保護層である。シートB2?B9には、コイル用導体が形成されている。シートB2には、略コ字状のコイル用導体E1,F1が形成されている。これらのコイル用導体E1,F1は略逆S字状に連続しており、その接続部分が、シートA6,14,B1を貫通するバイアホールD3によってコンデンサ部10側に接続されている。 【0005】シートB3には、略コ字状のコイル用導体E2,F2が、反対側に開口が向くように形成されている。そして、それらの一端は、バイアホールG1,H1によってそれぞれコイル用導体E1,F1に接続されている。同様に、次のシートB4には、略コ字状のコイル用導体E3,F3が、開口が向くように形成されている。そして、それらの一端は、バイアホールG2,H2によってそれぞれコイル用導体E2,F2に接続されている。以下のシートB5,B7には、シートB3と同様のコイル用導体E2,F2がそれぞれ形成されている。また、シートB6,B8には、シートB4と同様のコイル用導体E3,F3が形成されている。シートB9には、略コ字状のパターンを左右辺側にそれぞれ延長露出したコイル用導体E4,F4がそれぞれ形成されている。ホール接続も、前記シートと同様である。最下層のシートB10は保護層である。 【0006】以上の各部のうち、スパイラル状に連続するコイル用導体E1,E2,E3,E4及びバイアホールG1,G2によって、図6(D)に示す等価回路のコイルLAが構成されている。また、スパイラル状に連続するコイル用導体F1,F2,F3,F4及びバイアホールH1,H2によって、図6(D)に示す等価回路のコイルLBが構成されている。そして、シートB9のコイル用導体E4,F4が積層シートから左右に露出しており、図6(B),(C)の入出力電極18,20にそれぞれ接続されている。なお、図6(B),(C)の外観構造は、GND電極16が積層チップの側面前後にあるか、あるいは側面全周にあるかの点で異なる。」 F.「【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、上述した背景技術と対応する構成要素には同一の符号を用いることとする。 【0015】(1)実施形態1 図1には、実施形態1の積層構造と電極の形状寸法の一例が示されている。まず、同図(A)の積層構造から説明すると、基本的な構成は前記背景技術と同様であるが、コンデンサ部30の導体DA,DBの形状が異なる。すなわち、コンデンサ用導体DAは、入出力電極18,20の方向に狭い形状となっており、入出力電極18,20に対するマージンが大きい寸法となっている。図1(B)には、コンデンサ用導体DAの一例が示されている。この例によれば、コンデンサ用導体DAの幅WDAが1.9mmとなっている。上述した背景技術では2.1mmである。すなわち、本形態では、入出力電極18,20に対するマージンMAを背景技術よりも0.1mm大きくとっている。更に、このマージンMAは、コンデンサ用導体DA,DBの層間距離よりも大きく設定されている。 【0016】なお、コンデンサ用導体DAのみに着目すると、接続されるGND電極16側のマージンは狭く、電位差の大きい入出力電極18,20側のマージンは広く設計されている。」 G.「【0026】(3)実施形態1,2の実施例 次に、上述した形態1,2と背景技術のサンプルについて湿中負荷試験を行った実施例を示す。サンプルは、以下のような手順で製作した。 TiO_(2)誘電体材料に有機バインダを添加し厚さ50μmのグリーンシートを得た。また、Ni-Zn系磁性体材料に同様の処理を行い、厚さ30μmのグリーンシートを得る。そして、これらグリーンシト上に、コンデンサパターン及びインダクタパターンをスクリーン印刷にて形成した。このようにして得たシートを、内部の層構成順に編集し、例えば90℃,500Kg/cm^(2)の温度や圧力で積層した。 【0027】 以上のようにして得た積層体をダイシングマシンにて個々のチップに分離し、500℃にて1hr(時間)脱バインダ処理を行った後、900℃にて1hrの焼成を行った。次に、熱処理後のチップに外部電極用の導電ペーストを塗布し、600℃にて15分間焼成を行った。導電ペーストとしては、例えば、市販の銀ペーストを用いることができる。 【0028】なお、チップ側面のGND電極16については、スクリーン印刷法又は転写法を用いて形成した。スクリーン印刷法は平面のみ塗布することが可能であるため、チップの各面毎に塗布作業が行われる。また、転写法は、例えば可撓性の平板に形成した溝にペースト材を充填し、チップ側面を前記平板に押し付けて凹ませ、チップ側面とその隣接面の端部に渡ってペースト材を塗布する方法である。更に、チップ端面の入出力電極18,20については、導電ペーストを平板上に所定の厚みに展開し、これにチップ端面を垂直に浸漬して塗布するディップ法を用いて形成した。 【0029】 更に、この外部電極形成後のチップに対し、Niの上にSnやSnPb(半田)によるメッキを施し、完成品チップを得た。サンプルは、各形態についてそれぞれ100個用意した。各サンプルを基板上に実装し、GND電極16,入出力電極18,20との間に、DC32Vの負荷電圧を印加した。」 ここで、 (エ)上記Fの「【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、上述した背景技術と対応する構成要素には同一の符号を用いることとする。 【0015】(1)実施形態1 図1には、実施形態1の積層構造と電極の形状寸法の一例が示されている。まず、同図(A)の積層構造から説明すると、基本的な構成は前記背景技術と同様であるが、コンデンサ部30の導体DA,DBの形状が異なる。」という記載より、図1に記載された実施形態1の構成は、コンデンサ部30の導体DA,DBの形状以外は、図6に記載された背景技術の構成と同じであると認められる。 (オ)上記Eの段落【0002】の記載及び図6、上記Gの段落【0026】の記載及び図1より、引用例2のものは、導体パターンが表面に形成された複数のグリーンシートが積層されることによって構成されたインダクタ部12と、コンデンサパターンが表面に形成された複数のグリーンシートが積層されることによって構成されたコンデンサ部30とを有する積層体があるものと解される。 よって、上記E?Gの記載及び関連する図面を参照すると、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の発明」という。) 「導体パターンが表面に形成された複数のグリーンシートが積層されることによって構成されたインダクタ部12と、コンデンサパターンが表面に形成された複数のグリーンシートが積層されることによって構成されたコンデンサ部30とを有する積層体と、 前記積層体のチップ端面に形成され、前記インダクタ部12の両端にそれぞれ接続された一対の入出力電極18,20と、 前記コンデンサ部30のコンデンサ用導体DAに電気的に接続されたGND電極16と、を備える積層型LC複合部品。」 (3)対比 本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。 (あ)引用例1記載の発明における「インダクタ1」、「コンデンサ2,2」、「積層体の長手方向の端部」、「入・出力電極7,7」、「アース電極6」、「積層複合電子部品」は、それぞれ、本願補正発明における「インダクタ」、「コンデンサ」、「積層体の側面」、「入出力電極」、「グランド電極」、「積層型LC部品」に相当する。 (い)一般的に誘電体は絶縁性を有するものであるから、引用例1記載の発明における「誘電体層5」は、本願補正発明における「絶縁シート」に相当する。 (う)上記(い)で検討した事項を踏まえて、引用例1記載の発明におけるインダクタ1を構成する「誘電体層5」は、本願補正発明における「第1絶縁シート」に相当する。 (え)引用例1記載の発明におけるコンデンサ2,2を構成する「内部キャパシタ電極4」と「内部アース電極3」はともに、本願補正発明における「コンデンサ電極」に相当する。また、引用例1記載の発明における「コンデンサ2,2の内部アース電極3」は、本願補正発明における「コンデンサのグランド側のコンデンサ電極」に相当する。 (お)上記(い)で検討した事項を踏まえて、引用例1記載の発明におけるコンデンサ2,2を構成する「誘電体層5」は、本願補正発明における「第2絶縁シート」に相当する。 (か)上記(い)で検討した事項を踏まえて、引用例1記載の発明におけるアース電極6が形成される「誘電体層5」、及び最外層に位置する「誘電体層5」はともに、本願補正発明における「第3絶縁シート」に相当する。 よって、本願補正発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。 (一致点) 本願補正発明と引用例1記載の発明とは、ともに、 「導体パターンが表面に形成された第1絶縁シートによって構成されたインダクタと、コンデンサ電極が表面に形成された複数の第2絶縁シートが積層されることによって構成されたコンデンサとを有する積層体と、 前記積層体の側面に形成され、前記インダクタの両端にそれぞれ接続された一対の入出力電極と、 前記コンデンサのグランド側の前記コンデンサ電極に電気的に接続されたグランド電極と、を備え、 前記グランド電極は、第3絶縁シートであって、基板に実装されたときに前記積層体における前記インダクタよりも前記基板側に位置する前記コンデンサ側の最外層に位置する前記第3絶縁シートの前記基板に対向する面に形成され、第1絶縁シートに形成されうるスルーホールを介することなく、前記第3絶縁シートに形成されたスルーホールを介して、又は、前記複数の第2絶縁シートのうちの少なくとも1つに形成されたスルーホール及び前記第3絶縁シートに形成されたスルーホールを介して、前記コンデンサのグランド側の前記コンデンサ電極に電気的に接続される積層型LC部品。」 である点。 (相違点) 相違点1:「第1絶縁シート」、「第2絶縁シート」、「第3絶縁シート」が、本願補正発明においては、「グリーンシート状の」ものであるのに対し、引用例1記載の発明においては、そのようなものであるとは格別に特定されていない点。 相違点2:「インダクタ」が、本願補正発明においては、導体パターンが表面に形成された「複数の」第1絶縁シート「が積層されること」によって構成されたものであるのに対し、引用例1記載の発明においては、導体パターンが表面に形成された1つの第1絶縁シートによって構成されたものである点。 相違点3:「グランド電極」が、本願補正発明においては、「積層体焼成前のグリーンシート状の第3絶縁シート」に形成されたものであるのに対し、引用例1記載の発明においては、積層体焼成前のグリーンシート状のものであるとは格別に特定されていない第3絶縁シートに形成されたものである点。 相違点4:「グランド電極」が、本願補正発明においては、「基板に実装されたときに積層体におけるインダクタよりも前記基板側に位置するコンデンサ側の最外層に位置する第3絶縁シートの前記基板に対向する面にのみ形成され」たものであるのに対し、引用例1記載の発明においては、当該面にのみならず、当該面とは積層体に関して反対側の面にも形成されたものである点。 (4)判断 そこで、上記相違点1?4について検討する。 (相違点1?3について) 引用例2記載の発明は、インダクタの導体パターン、及びコンデンサパターンの導体電極が表面に形成された焼成前の複数のグリーンシートを積層して積層体を構成し、当該積層体内のインダクタ部12は、導体パターンが表面に形成された複数のグリーンシートが積層されることによって構成されたものである。そして、一般的にグリーンシートは絶縁性を有するものである。 ここで、引用例1記載の発明と引用例2記載の発明とは、積層形LC部品という共通の技術分野に属するものであるから、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用して、「第1絶縁シート」、「第2絶縁シート」、「第3絶縁シート」のそれぞれ(誘電体層5)を、「グリーンシート状の」ものとするとともに、「インダクタ」(インダクタ1)を、導体パターンが表面に形成されたグリーンシート状の複数の第1絶縁シートが積層されることによって構成されたものとし、さらに、「グランド電極」(アース電極6)を、「積層体焼成前のグリーンシート状の第3絶縁シート」に形成されたものとすることは、当業者が容易に想到できたことである。 また、このように引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用して第1絶縁シートを複数備えたことにともなって、グランド電極を、複数の第1絶縁シートに形成されうるスルーホールを介することなく、第3絶縁シートに形成されたスルーホールを介して、コンデンサのグランド側のコンデンサ電極に電気的に接続される構成のものとすることも、当業者が容易に想到できたことである。 (相違点4について) 引用例1記載の発明において、両面にあるグランド電極(アース電極6)のうち、一方の面のグランド電極を基板への実装に使用し、他方の面のグランド電極を基板への実装に使用しないときは、当該他方の面のグランド電極を備えない構成とすることができることは明らかであるから、グランド電極を、基板に実装されたときに積層体におけるインダクタよりも前記基板側に位置するコンデンサ側の最外層に位置する第3絶縁シートの前記基板に対向する面にのみ形成されたものとすることは、当業者が適宜実施できたことである。 (本願補正発明の作用効果について) そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明から、当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 (5)付記 請求人は、平成22年4月19日付けの審判請求書において、以下の主張を行っている。 「(2)拒絶査定の理由の要点 原査定の拒絶理由は、この出願の補正前の請求項1?5に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、所謂当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 要するに、引用文献1及び2に記載の積層型LC部品において、引用文献3に記載のアース電極6(本願発明のグランド電極に相当)の設け方、及び、アース電極6と内部アース電極3(本願発明のコンデンサ電極に相当)との接続の仕方を適用し、更に、引用文献4に記載の製造技術、すなわち、誘電体グリーンシート及び導体パターンによる積層体形成技術、及び、スルーホールによる導体パターン接続技術を適用すれば、補正前の請求項1?5に係る発明は所謂当業者が容易に発明できたものである、との査定がなされている。 <引用文献> 1:特開平11-54369号公報 2:特開平4-257112号公報 3:実願平3-22912号(実開平4-111723号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を記録したCD-ROM 4:特開平11-103229号公報 5:実願昭60-190168号(実開昭62-96828号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム 」 すなわち、拒絶査定の理由は、引用例2(引用文献1:特開平11-54369号公報)を主引用例とし、引用例1(引用文献3:実願平3-22912号(実開平4-111723号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(なお、これは平成21年4月24日付けの拒絶理由通知書及び平成22年4月19日付けの審判請求書に「実願平3-22912号(実開平4-111723号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を記録したCD-ROM」と記載されたものである。)を副引用例として書かれていると主張しているものと判断されるから、以下では、主引用例として引用例2を用いたときの対比・判断を検討する。なお、付言するに、以下の対比・判断は、上記引用文献2(特開平4-257112号公報)、上記引用文献4(特開平11-103229号公報)、及び上記引用文献5(実願昭60-190168号(実開昭62-96828号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム)のそれぞれを参酌するまでもなく行ったものである。 (5-1)対比 本願補正発明と引用例2記載の発明とを対比すると、引用例2記載の発明における「導体パターンが表面に形成された複数のグリーンシート」、「インダクタ部12」、「コンデンサパターン」、「コンデンサパターンが表面に形成された複数のグリーンシート」、「コンデンサ部30」、「積層体のチップ端面」、「入出力電極18,20」、「コンデンサ部30のコンデンサ用導体DA」、「GND電極16」、「積層型LC複合部品」は、それぞれ、本願補正発明における「導体パターンが表面に形成されたグリーンシート状の複数の第1絶縁シート」、「インダクタ」、「コンデンサ電極」、「コンデンサ電極が表面に形成されたグリーンシート状の複数の第2絶縁シート」、「コンデンサ」、「積層体の側面」、「入出力電極」、「コンデンサのグランド側のコンデンサ電極」、「グランド電極」、「積層型LC部品」に相当する。 よって、本願補正発明と引用例2記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。 (一致点) 本願補正発明と引用例2記載の発明とは、ともに、 「導体パターンが表面に形成されたグリーンシート状の複数の第1絶縁シートが積層されることによって構成されたインダクタと、コンデンサ電極が表面に形成されたグリーンシート状の複数の第2絶縁シートが積層されることによって構成されたコンデンサとを有する積層体と、 前記積層体の側面に形成され、前記インダクタの両端にそれぞれ接続された一対の入出力電極と、 前記コンデンサのグランド側の前記コンデンサ電極に電気的に接続されたグランド電極と、を備える積層型LC部品。」 である点。 (相違点) 「グランド電極」が、本願補正発明においては、「前記積層体焼成前のグリーンシート状の第3絶縁シートであって、基板に実装されたときに前記積層体における前記インダクタよりも前記基板側に位置する前記コンデンサ側の最外層に位置する前記第3絶縁シートの前記基板に対向する面にのみ形成され、前記複数の第1絶縁シートに形成されうるスルーホールを介することなく、前記第3絶縁シートに形成されたスルーホールを介して、又は、前記複数の第2絶縁シートのうちの少なくとも1つに形成されたスルーホール及び前記第3絶縁シートに形成されたスルーホールを介して、前記コンデンサのグランド側の前記コンデンサ電極に電気的に接続される」ものであるのに対し、引用例2記載の発明においては、そのようなものではない点。 (5-2)判断 そこで、上記相違点について検討する。 引用例1には、段落【0021】の「また、各層をこのように積層すると、各内部アース電極3は厚さ方向に連続的に接続され、最外層のアース電極6に接続される。」という記載が表している図1,図2に記載された構成の代わりに、段落【0024】に「外観形状及び各層の形状も上記のものに限定されず、例えば、図5、6に示すようなもの、すなわち、基本的構成は図1に示すようなものであって、長方形の誘電体層の中央部に楕円形の孔を形成させ、この孔に楕円形の内部アース電極2を厚さ方向に貫通形成させるようにしたものでもよい。」と記載されているように、図5,図6に記載された、アース電極6は、誘電体層5であって、基板に実装されたときに積層体におけるインダクタ1よりも前記基板側に位置するコンデンサ2,2側の最外層に位置する前記誘電体層5の前記基板に対向する面に形成され、インダクタ1を構成する誘電体層5に形成されうるスルーホールを介することなく、前記最外層に位置する誘電体層5に形成されたスルーホールを介して、又は、コンデンサ2,2を構成する複数の誘電体層5のうちの少なくとも1つに形成されたスルーホール及び前記最外層に位置する誘電体層5に形成されたスルーホールを介して、前記コンデンサ2,2の内部アース電極3に電気的に接続される構成を採用することができることが記載されている。 ここで、引用例2記載の発明は、積層体のチップ側面にコンデンサ部30のコンデンサ用導体DAに電気的に接続されたGND電極16が備えられているところ、引用例2記載の発明と引用例1記載の発明とは、積層形LC部品という共通の技術分野に属するものであるから、引用例2記載の発明に引用例1記載の発明を適用して、グランド電極(引用例2記載の発明のGND電極16)を、積層体のチップ側面に備える構成の代わりに、積層体焼成前のグリーンシート状の第3絶縁シートであって、基板に実装されたときに前記積層体におけるインダクタよりも前記基板側に位置するコンデンサ側の最外層に位置する前記第3絶縁シート(引用例2記載の発明のシートA1)の前記基板に対向する面にのみ形成し、複数の第1絶縁シートに形成されうるスルーホールを介することなく、前記第3絶縁シートに形成されたスルーホールを介して、又は、複数の第2絶縁シートのうちの少なくとも1つに形成されたスルーホール及び前記第3絶縁シートに形成されたスルーホールを介して、前記コンデンサのグランド側のコンデンサ電極(引用例2記載の発明のコンデンサ用導体DA)に電気的に接続する構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 (本願補正発明の作用効果について) そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例2記載の発明及び引用例1記載の発明から、当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用例2記載の発明及び引用例1記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 (6)むすび よって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.補正却下の決定を踏まえた検討 (1)本願発明 平成22年4月19日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成21年6月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「導体パターンが表面に形成されたグリーンシート状の複数の第1絶縁シートが積層されることによって構成されたインダクタと、コンデンサ電極が表面に形成されたグリーンシート状の複数の第2絶縁シートが積層されることによって構成されたコンデンサとを有する積層体と、 前記積層体の側面に形成され、前記インダクタの両端にそれぞれ接続された一対の入出力電極と、 前記コンデンサのグランド側の前記コンデンサ電極に電気的に接続されたグランド電極と、を備え、 前記グランド電極は、前記積層体焼成前のグリーンシート状の第3絶縁シートであって、前記積層体の前記コンデンサ側の最外層に位置する前記第3絶縁シートにのみ形成され、前記複数の第1絶縁シートに形成されうるスルーホールを介することなく、前記第3絶縁シートに形成されたスルーホールを介して、又は、前記複数の第2絶縁シートのうちの少なくとも1つに形成されたスルーホール及び前記第3絶縁シートに形成されたスルーホールを介して、前記コンデンサのグランド側の前記コンデンサ電極に電気的に接続されることを特徴とする積層型LC部品。」 (2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,2とそれらの記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、実質的に、上記2.(1)で検討した本願補正発明における、「グランド電極」に関して、「基板に実装されたときに前記積層体における前記インダクタよりも前記基板側に位置する前記コンデンサ側の最外層に位置する前記第3絶縁シートの前記基板に対向する面にのみ形成され」ることから、「前記積層体の前記コンデンサ側の最外層に位置する前記第3絶縁シートにのみ形成され」ることへ特定の限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件に特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明に基いて、(あるいは、上記2.(5)に記載したとおり、引用例2記載の発明及び引用例1記載の発明に基いて、)当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明も、同様に、引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明に基いて、(あるいは、上記2.(5)に記載したとおり、引用例2記載の発明及び引用例1記載の発明に基いて、)当業者が容易に発明をすることができたものである (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び引用例2記載の発明に基いて、(あるいは、上記2.(5)に記載したとおり、引用例2記載の発明及び引用例1記載の発明に基いて、)当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-02-02 |
結審通知日 | 2012-02-07 |
審決日 | 2012-02-21 |
出願番号 | 特願2003-318597(P2003-318597) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H03H)
P 1 8・ 121- Z (H03H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 白井 孝治 |
特許庁審判長 |
岩崎 伸二 |
特許庁審判官 |
甲斐 哲雄 飯田 清司 |
発明の名称 | 積層型LC部品およびその製造方法 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 石坂 泰紀 |
代理人 | 三上 敬史 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |