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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1254838
審判番号 不服2010-12599  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-09 
確定日 2012-04-05 
事件の表示 特願2001- 58199「文字入力方法及び携帯通信端末」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月13日出願公開、特開2002-259032〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は,平成13年3月2日の出願であって,平成21年12月2日付けの拒絶理由通知に対して,平成22年2月8日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成22年2月25日付けの拒絶査定に対して平成22年6月9日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成23年3月22日付けの当審の審尋に対して,平成23年5月30日に回答書が提出され,平成23年11月1日付けで当審より拒絶理由を通知したところ,平成24年1月10日に意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年1月10日の手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「操作キーが短押しされると,該操作キーの短押しに対応する文字を表示し,
短押しされた該操作キーが長押しされると,当該長押しに対して文字を表示せず,
該操作キーの長押し後の次の該操作キーの短押しに対応する文字は,新たな文字として表示することを特徴とする文字入力方法。」


第3 当審における拒絶の理由について
当審における平成23年11月1日付けで通知した拒絶理由の概要は,以下のとおりである。
『この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
引用例1:特開平06-028086号公報
引用例2:特開平09-214591号公報
・請求項1
・引用例1,2
・備考
1.本願発明と各引用例発明について。
(1)本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)について。 ア 本願発明は,以下のとおりである。
(略)
イ 本願の発明の詳細な説明には,以下のことが記載されている。
(略)
ウ 上記イの(ア)?(オ)のことを参照すれば,上記アのことから,本願発明は以下の構成からなるものと理解される。
以下,操作キーの押下の時を「押下」といい,押下解除の時を「解除」という。
(当審注:当審拒絶理由通知では段ずれはない。以下同様。)
【構成A】「解除時の長短判定」
押下 解除 押下 解除
??▼ ▲????????▼ ▲???
↓ ↑ ↓ ↑
▼???▲ ▼??????????▲
<短押か長押か判定> 〔ここの文字確定〕<短押か長押か判定>
↑ ↓
↑ ↓
【構成B】「長押判定時の文字確定」 ↑ ↓
↑ ← <長押しであれば,
前に選択されている〔文字〕を,「確定」する。>
【構成C】「短押判定時の次文字選択」
押下 解除 押下 解除
??▼ ▲????????▼ ▲???
↓ ↑〔次文字選択〕 ↓ ↑
▼???▲ ▼??????????▲
<短押か長押か判定> <短押か長押か判定>

<短押しであれば,
解除時に次の〔文字〕を「選択」する。>
エ つまり本願発明は,解除時に短押しか長押しかが判定され,解除時に長押しと判定されると,長押し判定前に選択されている文字を確定し,解除時に短押しと判定されると,解除時に現在選択されている文字の次の文字を選択するものである。
(2)引用例発明について。
ア 引用例1には,以下のことが記載されている。
(略)
イ 上記アの(ア)?(ウ)の記載及び図3の記載を参照すれば,引用例1は以下の構成からなるものと理解される。
以下,キー1aを押す時を「押下」といい,キー1aを離す時を「解除」という。
【構成A】「解除時の長短判定」
押下 解除 押下 解除
??▼ ▲????????▼ ▲???
↓ ↑ ↓ ↑
▼???▲ ▼??????????▲
ア ア イ イ□
<短押か長押か判定> 〔ここの文字確定〕<短押か長押か判定>
↑ ↓
↑ ↓
【構成B】「長押判定時の文字確定」 ↑ ↓
↑ ← <長押しであれば,
前に選択されている〔文字〕を「確定」する。>
【構成D】「短押判定時の押下時次文字選択」
押下 解除 押下 解除
??▼ ▲????????▼ ▲???
↓ ↑ ↓〔次文字選択〕 ↑
▼???▲ ▼??????????▲
ア ア イ ↑ イ□
<短押か長押か判定> ↑ <短押か長押か判定>
↓ ↑
短押しであれば, ↑
次の押下時に「次」の〔文字〕を「選択」する。
ウ つまり引用例1は,「解除時に短押しか長押しかが判定され,解除時に長押しと判定されると,長押し判定前に選択されている文字を確定し,解除時に短押しと判定されると,解除の次の押下時に現在選択されている文字の次の文字を選択する」ものである。
(以下「引用例1発明」という。)
(3)引用例2について。
ア 引用例2には,以下のことが記載されている。
(略)
イ 上記アのことから,引用例2は以下の構成からなるものと理解できる。

【構成A】「解除時の長短判定」
押下 解除 押下 解除
??▼ ▲????????▼ ▲???
↓ ↑ ↓ ↑
▼???▲ ▼??????????▲
<短押か長押か判定> 〔ここの数字確定〕<短押か長押か判定>
↑ ↓
↑ ↓
【構成B】「長押判定時の文字確定」 ↑ ↓
↑ ← <長押しであれば,
前に選択されている〔数字〕を,「確定」する。>
ウ ここで,この「前に選択されている数字」がどのように決まるのか確認すると,引用例2は,「フックキー6を押す回数に応じて番号が選択され,再度フックキー6を一定時間T2だけ押し続けると一桁目の番号が決定する」ものであるから,押下時に次の数字が選択されることはあり得ず,(短押しの)解除時に次の数字が選択されると理解できる。 つまり,引用例2の数字の選択は,以下のとおりである。
【構成E】「解除時次数字選択」
押下 解除 押下 解除 押下 解除
??▼ ▲??▼ ▲???????▼ ▲???
↓ ↑ ↓ ↑〔次文字選択〕↓〔選択しない〕 ↑
▼??▲ ▼??▲ ▼?????????▲
… [1][1]→[2]→→→→→〔2〕 ↓
↑ ↓
〔ここの数字確定〕<短押か長押か判定>
↑ ↓
↑ ← <長押しであれば,
前に選択されている〔数字〕を,「確定」する。>
エ つまり,引用例2には,「解除時に短押しと判定されると,解除時に現在選択されている数字の次の数字を選択すること」が記載されている。
(以下「引用例2発明」という。)
2.一致点と相違点について。
上記「1.」のことから,本願発明と引用例1発明との一致点と相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「【構成A】の『解除時の長短判定』と【構成B】の『長押判定時の文字確定』の構成とを有する」点,つまり,「解除時に短押しか長押しかが判定され,解除時に長押しと判定されると,長押し判定前に選択されている文字を確定する」点。
[相違点]
本願発明が,【構成C】の「短押判定時の次文字選択」の構成であるのに対して,引用例1発明は,【構成D】の「短押判定時の押下時次文字選択」する構成である点,つまり,本願発明が,解除時に短押しと判定されると,解除時に現在選択されている文字の次の文字を選択するものであるのに対し,引用例1発明は,解除時に短押しと判定されると,解除の次の押下時に現在選択されている文字の次の文字を選択する点。
3.相違点に対する判断。
[相違点]について。
本願発明は,解除時に短押しと判定されると,解除時に現在選択されている文字の次の文字を選択するものである。
次の文字を選択するタイミングは,解除時と押下時のいずれかを選択するしかないところ,引用例2発明には,【構成E】の「解除時次数字選択」の構成を備えること,つまり,「解除時に短押しと判定されると,解除時に現在選択されている数字の次の数字を選択する」ことが記載されている。
ここで,次の数字を選択するか次の文字を選択するかは,設計上任意に選択しうる程度のものであることを勘案すれば,引用例1発明の次文字選択のタイミングに引用例2発明の数字選択のタイミングを採用し,もって,解除時に短押しと判定されると解除時に現在選択されている文字の次の文字を選択するよう構成することには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。
そして,本願発明の作用効果も,引用例1発明と引用例2発明から当業者が予測できる範囲のものである。
以上のことから,本願発明は,引用例1発明と引用例2発明とに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。』


第4 審判請求人の意見書における反論について
審判請求人の平成24年1月10日の意見書における反論の概要は,以下のとおりである。
『(b)本願発明と引用発明の対比
本願発明は,「短押しされた該操作キーが長押しされると,当該長押しに対して文字を表示せず」に特徴があります。
これに対し,審判官殿も御認識の通り,引用発明1は,“イ”と表示するそのアイウエオキー1aを1秒以上押続けるものであって,“イ”と表示したアイウエオキー1aを再度1秒以上押続けるものではなく,上述した本願発明の構成に対応する直接的な記載やこれを示唆する記載ではありません。
また,審判官殿は,『引用例2は,「フックキー6を押す回数に応じて番号が選択され,再度フックキー6を一定時間T2だけ押し続けると一桁目の番号が決定する」ものであるから,押下時に次の数字が選択されることはあり得ず,(短押しの)解除時に次の数字が選択されると理解できる。』と説示されておられます。
しかしながら,引用発明2(引用例2)には,番号を選択する際にフックキーを押す時間より,一定時間T2は長く設定されており,短く設定された番号を選択する時間は,時間T2だけフックキーを押し続けたときに,その間に到来してしまうことが開示されているので,再度フックキー6を一定時間T2だけ押し続けると,次の数字が選択されるため,引用発明2は,上述した本願発明の構成に対応する直接的な記載やこれを示唆する記載ではありません。
上述のような相違点に起因して,本願発明は,引用発明に比べて,操作キーの長押しに対して,文字は表示されないので,不要な文字が表示されることはないという格別な効果を奏します。
本願発明の効果は,引用発明1,2が意図していない,引用発明1,2が有する効果よりも優れた効果を奏するものであり,本願発明の各構成の結合によりはじめてもたらされたものです。
また,上述した相違点に係る構成は,当業者が出願当初の技術水準から予測し,適宜なし得る事項ではないものと思料致します。
よって,本願発明は,引用発明1,2に基づいて当業者が容易に想到し得たものには該当しないと思料致します。』


第5 当審の判断
当審は上記「第4」の審判請求人の反論によってもなお,本願発明は,当審の拒絶理由の理由により進歩性を有しないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1.本願発明と各引用例について。

(1)本願発明について。

ア 本願発明は,前記「第2」に記載したとおりである。

イ 本願の発明の詳細な説明には,以下のことが記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,キーの設置数が限られている端末における機能・文字入力の際のキー操作を簡易化した機能確定方法及び機能・文字入力の際のキー操作を簡易化した携帯通信端末に関する。」
(イ)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように,従来の携帯通信端末では,機能を確定する場合には確定キーを押下する必要があったため,確定キーを押すためにわざわざ指を移動させなければならず,速やかにキー操作を行うことができないという問題があった。
【0007】また,文字入力においては,上述したキー配列において同一キーに割り当てられた文字を連続して入力する場合,例えば,「きく」と入力する場合には,利用者は,1文字目である「き」を入力した後,一旦,「き」を確定するために確定キーを押し,その後「く」を入力しなければならず,キー操作が複雑化する。このため,文字入力を正確に且つ速やかに行うには,ある程度熟練することが必要となり,端末の操作に不慣れな利用者にとっては,入力ミスが頻発し,利便性が悪いという欠点が生じた。
【0008】本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので,機能・文字入力のキー操作の簡略化を図る機能確定方法及び機能・文字入力のキー操作の簡略化を図ることにより利便性がよい携帯通信端末を提供することを目的とする。」
(ウ)「【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,本発明は,操作キーが押下されたことを検出するステップと,押下された当該操作キーに割り当てられた機能を選択するステップと,前記操作キーが押下されている状態が所定の時間持続したか否かを判定するステップと,前記操作キーが押下されている状態が所定の時間未満の場合には,押下される前に選択されていた当該操作キーに割り当てられた機能の次の機能を選択するステップと,当該操作キーに割り当てられた機能が選択されているときに前記操作キーが押下されている状態が所定の時間持続された場合には,押下する前に選択されていた機能を確定するステップとを具備することを特徴とする機能確定方法を提供する。」
(エ)「【0017】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照し,本発明の一実施形態について説明する。図1は,本発明の一実施形態に係る携帯通信端末の構成を示したブロック図であり,図2は同携帯通信端末の概観図である。
【0018】図1において,符号1はアンテナ2を有するRF部であり,送信データを搬送波に乗せてアンテナ2から送信し,また,アンテナ2を介して着信した着信信号を出力する。符号3はコーデックであり,RF部1から入力されたデータを復号化して出力する一方,CPU12から入力されたデータを符号化してRF部1へ出力する。符号4は外部から入力された音声信号をアナログ信号に変換してCPU12へ出力するマイクロフォン,符号5はCPU12から出力される音声信号を音声として出力するスピーカ,符号6はCPU12から供給される表示データを表示する,液晶表示器等からなる表示部である。
【0019】符号7は電話番号,文字等を入力するためのテンキー7a及び各種ファンクションが割り当てられているファンクションキー7b等からなる操作部である。そして,テンキー7aを構成する各操作キー100,101,102…には,図3に示すように複数の文字が割り当てられている。
【0020】符号8は,操作部7を構成する各操作キーの押下を検出するキー押下検出部であり,操作キーの押下を検知した場合に,押下された操作キーの情報をCPU12に出力すると共に,当該操作キーの押下が解除された場合,即ち当該キーの押下が検出できなくなった場合に,押下解除通知をCPU12に出力する。
【0021】符号9はCPU12が実行する各種プログラム,各操作キーに割り当てられている機能情報等が記憶されているROM(リードオンメモリ),符号10はデータ記憶用のRAM(ランダムアクセスメモリ),符号11はタイマーである。CPU12(中央処理装置)は,ROM9に格納された各種プログラムを読み出して実行することにより,所定の処理を行う。また,処理過程においてデータをRAM10に一時的に格納する。
【0022】また,ROM9の所定のメモリエリアには,各操作キーに割り当てられている文字の情報が,その操作キーを短押しした回数に対応付けて格納されている。これにより,CPU12は,押下された操作キーと当該操作キーが短押しされた回数とに基づいて該当する機能・文字を検出することができる。
【0023】CPU12は,押下検出部8から操作キーの押下通知を受け取ると,タイマー11を起動し,操作キーの押下時間が所定時間以上か否かを判定する。即ち,タイマー11起動時から,所定時間内(タイマー11がタイムアップする前)に押下検出部8から操作キーの押下解除通知が入力されれば,操作キーの短押しと判定し,短押し前に選択されている機能・文字の次の機能・文字を選択する。他方,タイマー起動時から所定時間内に押下解除通知が入力されなかった場合には,操作キーの長押しと判定して,長押し前に選択されている機能・文字の確定を行う。」
(オ)「【0025】次に,上記構成からなる携帯通信端末の動作について説明する。まず,ユーザによりファンクションキー7b(図2参照)から入力モードを「かな文字入力」モードに設定する操作が行われ,続いて,「か行」が割り当てられている操作キー101の短押し(0.5秒未満の押下)が1回行われたとする。
【0026】係る操作が行われることにより,携帯通信端末内の各部は以下の処理を実行する。まず,押下検出部8は,操作キー101が押下されたことを検知すると,操作キー101の押下通知をCPU12に対して行う。CPU12は,押下通知を受け取ると,タイマー11を起動させる。続いて,押下検出部8は,操作キー101の押下解除を検知すると,押下解除通知をCPU12へ出力する。CPU12は,押下解除通知を受け取ると,タイマー11をリセットする。これによりCPU12は,タイマー11がタイムアップする前に押下解除通知を受け取ったことから,当該操作キーの押下は短押しであったと判定すると共にROM9にアクセスし,操作キー101を一回短押しした場合に対応する文字(機能)を読み出し,読み出した文字を選択されている文字として表示部6に表示させる。この結果,表示部6には,現在選択されている文字として「か」が表示される。また,短押しと判定されたことから,表示されている文字「か」の確定を行わない。
【0027】続いて,ユーザにより同操作キー101の短押し(0.5秒未満の押下)が行われたとする。
【0028】押下検出部8は,操作キー101が押下されたことを検知すると,操作キー101の押下通知をCPU12に対して行う。CPU12は,押下通知を受け取ると,タイマー11を起動させる。続いて,押下検出部8は,操作キー101の押下解除を検知すると,押下解除通知をCPU12へ出力する。CPU12は,押下解除通知を受け取ると,タイマー11をリセットする。これによりCPU12は,タイマー11がタイムアップする前に押下解除通知を受け取ったことから,当該操作キーの押下は短押しであったと判定すると共にROM9にアクセスし,操作キー101を二回短押しした場合に対応する文字(機能)を読み出し,読み出した文字を選択されている文字として表示部6に表示させる。この結果,表示部6には,現在選択されている文字として「き」が表示される。また,短押しと判定されたことから,表示されている文字「き」の確定を行わない。
【0029】続いて,ユーザにより同操作キー101の長押し(0.5秒以上の押下)が行われたとする。押下検出部8は,操作キー101が押下されたことを検知すると,操作キー101の押下通知をCPU12に対して行う。CPU12は,押下通知を受け取ると,タイマー11を起動させる。続いて,ユーザによって当該操作キー101が長押しされていることにより,押下検出部8から押下解除通知が入力されることなく,タイマー11がタイムアップすると,CPU12は当該キーが長押しされたと判定し,押下前に選択されていた機能,即ち押下前に選択されていた文字として表示部に表示されている「き」を確定する。
【0030】そして,上述した文字の確定を行った後に,更に,ユーザによって同操作キー101の短押しが行われた場合には,CPU12は,このキー操作を新たな文字入力として捉え,操作キー101を3回押下した時に該当する機能をROM9から読み出すのではなく,操作キー101を1回押下した時に該当する文字である「か」をROM9から読み出して,表示部6に選択された文字として表示させる。」

ウ 上記イの(ア)?(オ)のことを参照すれば,本願発明は以下の構成からなるものと理解される。

以下,操作キーの押下の時を「押下」といい,押下解除の時を「解除」という。

【構成A】「解除時の長短判定」
押下 解除 押下 解除
??▼ ▲????????▼ ▲???
↓ ↑ ↓ ↑
▼???▲ ▼??????????▲
<短押か長押か判定> 〔ここの文字確定〕<短押か長押か判定>
↑ ↓
↑ ↓
【構成B】「長押判定時の文字確定」 ↑ ↓
↑ ← <長押しであれば,
前に選択されている〔文字〕を,「確定」する。>


【構成C】「短押判定時の次文字選択」
押下 解除 押下 解除
??▼ ▲????????▼ ▲???
↓ ↑〔次文字選択〕 ↓ ↑
▼???▲ ▼??????????▲
<短押か長押か判定> <短押か長押か判定>

<短押しであれば,
解除時に次の〔文字〕を「選択」する。>

エ つまり本願発明は,解除時に短押しか長押しかが判定され,解除時に長押しと判定されると,長押し判定前に選択されている文字を確定し,解除時に短押しと判定されると,解除時に現在選択されている文字の次の文字を選択するものであると理解される。


(2)引用例発明について。

ア 引用例1には,以下のことが記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,文字入力装置,特に複数の文字をグループ分けし,それぞれ1個のキーを割当てる文字入力装置に関する。」
(イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の文字入力装置では,グループ内の文字を入力する場合,グループの文字に対して割当てられたキーを何回か操作して特定の文字を選択し,入力するための入力キーを押している。このため,1つの文字を入力するために2種類のキーを操作する必要があり,煩わしく操作性が悪い。
【0005】本発明の目的は,1種類のキーを操作するだけで,特定の文字を選択し,入力することができる文字入力装置を提供することである。」
(ウ)「【0010】図3は,図1図示の電子式メモにおいて,電話帳モードで「イイダ」という名前をカナ入力する場合のキー操作と,それに基づく表示とを示す図である。手順1では,電話キー4aを押すと,表示部8に“ナマエ?”と表示される。これによって電話帳モードになり,カナ文字入力状態となる。手順2では,「イイダ」の1番目の文字「イ」を入力するために,その文字が含まれているアイウエオキー1aを押し,表示部8に“ア”と表示されると,アイウエオキー1aを離す。この場合のカーソルの表示位置は,“ア”の下にある。手順3では,再度アイウエオキー1aを押すと,“イ”と表示され,手順4でそのキーを1秒以上押続けると入力文字として確定され,表示が“イ ”に変化してカーソルが右へ移動する。手順5では,「イイダ」の2番目の文字「イ」を入力するために「イ」が含まれているアイウエオキーを押し,表示部8に“イア”と表示されると,アイウエオキーを離す。手順6では,再度アイウエオキーを押すと,“イイ”と表示され,手順7でそのキーを1秒以上押続けると入力文字として確定され,表示が“イイ ”に変化してカーソルが右へ移動する。手順8では,「イイダ」の3番目の文字「タ」を入力するために,「タ」が含まれているタチツテトキー1bを押し,“イイタ”と表示される。手順9でそのキーを1秒以上押続けると,入力文字として確定され,表示が“イイタ ”に変化してカーソルが右へ移動する。手順10で4番目の文字「゛」を入力するために,「゛,゜,ー」キー1cを押し,“イイタ゛”と表示され,手順11で1秒以上押続けると,入力文字として確定され,表示が“イイタ゛ ”に変化してカーソルが右へ移動する。以上で「イイダ」という名前をカナ入力することができたので,手順12で入力キー6を押し,名前のデータとして確定される。表示部8は,カナ文字入力状態が終了し,“バンゴウ?”と表示されて電話番号入力状態となる。」

イ 上記アの(ア)?(ウ)の記載及び図3の記載を参照すれば,引用例1は以下の構成からなるものと理解される。

以下,キー1aを押す時を「押下」といい,キー1aを離す時を「解除」という。


【構成A】「解除時の長短判定」
押下 解除 押下 解除
??▼ ▲????????▼ ▲???
↓ ↑ ↓ ↑
▼???▲ ▼??????????▲
ア ア イ イ□
<短押か長押か判定> 〔ここの文字確定〕<短押か長押か判定>
↑ ↓
↑ ↓
【構成B】「長押判定時の文字確定」 ↑ ↓
↑ ← <長押しであれば,
前に選択されている〔文字〕を「確定」する。>
(ここで「□」はカーソルである。以下同様。)

【構成D】「短押判定時の押下時次文字選択」
押下 解除 押下 解除
??▼ ▲????????▼ ▲???
↓ ↑ ↓〔次文字選択〕 ↑
▼???▲ ▼??????????▲
ア ア イ ↑ イ□
<短押か長押か判定> ↑ <短押か長押か判定>
↓ ↑
短押しであれば, ↑
次の押下時に「次」の〔文字〕を「選択」する。

ウ つまり引用例1には,以下の発明が開示されている。
「(a)押下時に最初の文字を表示し,
(b)短押しか長押しかを判定し,
(c)短押しであれば,次の押下時に次の文字を選択して表示することを繰り返し,
(d)長押しであれば,その直前の押下時に選択された文字を確定し,以後の文字の選択と表示は(a)?(c)を繰り返し,
(e)長押しと判定する際の押下時にも次の文字が選択される
ことを特徴とする文字入力方法。」
(以下「引用例1発明」という。)

(3)引用例2について。

ア 引用例2には,以下のことが記載されている。
(ア)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は操作方法を簡易にした通信装置に関し,特にフックキーのみの操作で特定の緊急連絡先に通信し得る様にした通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年,通信の自由化が進み,例えば有線電気通信分野では従来のダイヤル式黒電話に代えて種々の電話機が使われるようになっている。また,無線通信を利用した自動車電話あるいは携帯電話でも同様に,種々の電話機が使われている。図3は従来使用されている携帯電話の構成を簡単に示すブロック図である。同図において,通信機1はテンキー7を操作して電話番号を入力した後にフックキー6を押すと,送受信機2は通信の相手方へ電話をかけ,アンテナ3を通して通信し,回線が設定されることにより受話器4と送話器5を使って話すことができる。もう一度フックキー6を押下することで,通信を終話することができる。また,着信時はフックキー6を押下することで受信状態となり,同様に受話器4と送話器5を使って話すことができる。さらに,もう一度フックキー6を押下することで,通信を終話することができる。
【0003】しかし,上述してきたように,通信回線を介して通信を行う際には,毎回,6桁から10桁の電話番号を押さなければならず,そのため面倒であり,また電話番号を押し違える可能性もある。そこで,この面倒を解消するために,従来,いわゆる短縮番号機能によって通信に必要とされる番号キーの数を減らすようにしたものが知られる。この短縮番号機能は,予め例えば特定の10桁の加入者電話番号を1または2つの特定の番号キーに割り当てて記憶しておき,電話をかける際には,このかけようとする人(会社)等の加入者電話番号に対応する特定の番号キーを押すことで,記憶されていた加入者電話番号がメモリから呼び出され,ダイヤルされ回線が設定されるものである。これにより,毎回数個の番号キーを押すだけで発信操作が容易に行えた。
【0004】しかしながら,上述した従来の発信方法においては,電話番号のダイヤルに際して,登録された短縮番号が本来の加入者電話番号とは異なることから,緊急の場合等のように慌てた場合には,短縮番号についての記憶が定かでなくなり,短縮の番号キーを押し間違える可能性が高くなるという欠点があった。また,さらに近年になって電話機は種々の機能を備えるようになっているが,その反面,その多くは各種機能キーが新たに設けられ,あるいは電話番号を入力するテンキーにそれらの機能キーの機能を持たせるようになり,その操作は複雑になってきている。そのため,このような電話機を病人,怪我人,子供,老人,身障者等が扱い,緊急時に必要な連絡を行うには問題である。一方,緊急時の通信場所は迷うことのない1カ所の方が良く(例えば,自宅,病院,救急センター,老人ホーム,ヘルパー等),また携帯電話等では任意の電話番号等に自由に電話できると,紛失,盗難,盗用等で悪用された場合には料金,信用問題等が発生することが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述してきたように,従来の電話機にあっては,記憶が曖昧だったり,緊急で慌てている場合,番号キーさえも選んでいる余裕がなくなることがあり,また携帯電話等が盗用されると,悪用され多額の電話料金を抱える恐れがあった。本発明は上述した欠点を除去する為になされたものであって,例えばフックキーを押すだけで目的の電話番号のみに電話をかけることを可能とすることにより,緊急時等における通信先の特定を可能とし,また携帯電話機等を紛失等しても,不用意に掛けられる電話番号が限定されることから悪用されることの無い通信装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために,請求項1の発明は,操作キーとしてフックキーを備える通信装置であって,所望の通信相手に係る識別情報を記憶するメモリと,前記フックキーの操作によって前記メモリに記憶される識別情報を参照して当該通信相手との通信回線を設定する通信手段と,を具備することを特徴とする。請求項2の発明は,前記フックキーを予め設定される所定の時間T1以上押し続けたときにメモリ変更モードとなり,この変更可能状態の間に前記フックキーを押した回数に応じて番号等が選択され,前記フックキーを予め設定される所定の時間T2以上押し続けることにより次の桁の番号等の選択へ移行し,全桁の番号を選択し終わることにより変更終了となって通話モードに戻ることを特徴とする。」
(イ)「【0007】
【発明の実施の形態】以下,図示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明の通信装置の概略の構成を示すブロック図の一例であり,図2は図1に示す通信装置の外観図である。まず,図2を参照して外観を説明すると,通信機1の前面には受話器4,送話器5,フックキー6のみが現れており,非常にすっきりとした前面となっている。またアンテナ3は通信機1の上面から上方に向けて突出して設けられている。すなわち,この通信機1には操作するためのキーとしてはフックキー6のみしかなく,操作を誤る恐れは全く無く,また操作を煩わしく感じることもないものとなっている。なお,携行中に誤ってフックキー6を押してしまう可能性があることから簡易なロック機構を設けるようにする。次に,図1を参照して機能を簡単に説明する。本実施の形態における通信機1は,送受信器2と,この送受信器2に接続されるアンテナ3,受話器4,送話器5およびフックキー6によって構成される。また,送受信器2はCPU21とメモリ22とを具備している。したがって,本実施の形態における通信機1においては,操作手段として,従来のテンキー等の如きキーは存在せず,フックキー6以外の操作キーは一切備えていない。
【0008】次に,本実施の形態における通信機1の作用を説明する。まず,フックキー6を押すと,送受信器2のCPU21はメモリ22から対応する電話番号等を読み出す。尚,メモリ22には後述するメモリ登録内容の変更方法により書き込まれた1件分の加入者電話番号に対応する識別情報(識別番号)のみが記憶されている。そしてCPU21は前記電話番号の通信の相手方へ電話を掛け,アンテナ3を介して通信し,受話器4と送話器5を使って話すことができる。もう一度フックキー6を押下することで,通信を終話することができる。したがって,フックキーを押すだけで目的の電話番号のみに電話を掛けることができる。また,着信時にはフックキー6を押下することで受信することが可能となり,受話器4と送話器5を使って話すことができる。もう一度フックキー6を押下することで,通信を終話することができる。また前記電話番号等の識別情報をメモリ登録変更する場合には次のようにして行う。まず発着信できる通話モードにおいて,前記フックキー6を一定時間T1だけ押し続けると確認音により,前記番号等のメモリ22の内容を変更可能な状態(メモリ変更モード)に切り替わる。
【0009】次に,フックキー6を押す回数に応じて番号が選択され,再度フックキー6を一定時間T2だけ押し続けると一桁目の番号が決定すると同時にその確認音が発生し,次の桁へ移行する。順次番号を決定していき,目的の最終桁まで番号を入力し終わった後,一定時間T3だけ押し続けると確認音とともに前記番号等のメモリ登録内容が変更されて通話可能な状態(通話モード)に戻る。以後変更された番号等に対して通信することができる。なお,前記フックキーを押し続ける時間は,時間T3より時間T2が短くなるように規定している。すなわち,時間T3が時間T2より短く設定されると,次の桁に移行する際に時間T2だけフックキーを押し続けたときに,その間に時間T3が到来してしまい,これによりメモリ登録内容の変更が終了してしまうからである。また,時間T1と時間T2との関係は,特に規定しなくても良く,さらには前記時間T1,T2,T3は,番号を選択する際にフックキーを押す時間より長く設定することは言うまでもない。
【0010】また,前記確認音はビープ音等の信号音の他,音声による確認で行っても良い。例えば,メモリ変更モードに切り替わった際に“メモリ変更モードです”と発声し,番号選択時にフックキー6を押す毎に“1,2・・・”と発声し,番号決定時に選択した番号を読み上げ,番号登録が終了して通話モードに切り替えた際に“電話番号は01-2345-6789です”と登録番号を読み上げるようにして確認することもできる。また,メモリ登録の内容の変更状況を確認するには,前記携帯電話等にLCD等の表示装置を設け,LCD等で表示することもできる。」

イ 上記アのことから,引用例2は以下の構成からなるものと理解できる。

【構成A】「解除時の長短判定」
押下 解除 押下 解除
??▼ ▲????????▼ ▲???
↓ ↑ ↓ ↑
▼???▲ ▼??????????▲
<短押か長押か判定> 〔ここの数字確定〕<短押か長押か判定>
↑ ↓
↑ ↓
【構成B】「長押判定時の文字確定」 ↑ ↓
↑ ← <長押しであれば,
前に選択されている〔数字〕を,「確定」する。>

ウ ここで,この「前に選択されている数字」がどのように決まるのか確認すると,引用例2は,「フックキー6を押す回数に応じて番号が選択され,再度フックキー6を一定時間T2だけ押し続けると一桁目の番号が決定する」ものであるから,押下時に次の数字が選択されることはあり得ず,(短押しの)解除時に次の数字が選択されると理解できる。 そして,番号の設定や登録は,フックキーのみで可能であり,テンキー等の操作キーによらずとも簡単に設定や登録ができることを目的としていることから,フックキー6を押す回数に応じて番号(数字)が選択されること,選択された番号(数字)を発声等により確認すること,そして番号(数字)が目的とする番号(数字)になったと確認できたときには,再度フックキーを一定時間T2だけ押し続けることにより,その番号(数字)は変化せず,その桁の番号(数字)が確定し,例えばその選択した番号(数字)を読み上げること,次の桁の設定を同様に行うこと,すべての桁の番号(数字)の設定が終了したときにさらに一定時間T3だけ押し続けると登録内容が変更され,通話モードに切り替えたときに登録番号が読み上げられることにより確認することができるものであると理解できる。

つまり,引用例2の番号(数字)の選択は,以下のとおりである。

【構成E】「解除時次数字選択」
押下 解除 押下 解除 押下 解除
??▼ ▲??▼ ▲???????▼ ▲???
↓ ↑ ↓ ↑〔次文字選択〕↓〔選択しない〕 ↑
▼??▲ ▼??▲ ▼?????????▲
… [1][1]→[2]→→→→→〔2〕 ↓
↑ ↓
〔ここの数字確定〕<短押か長押か判定>
↑ ↓
↑ ← <長押しであれば,
前に選択されている〔数字〕を,「確定」する。>


エ つまり,引用例2には,「解除時に短押しと判定されると,解除時に現在選択されている数字の次の数字を選択すること」との事項が開示されている。
(以下「引用例2開示事項」という。)


2.一致点と相違点について。

上記「1.」を整理すると,本願発明と引用例1発明とは,「【構成A】の『解除時の長短判定』と【構成B】の『長押判定時の文字確定』の構成とを有する」点,つまり,「解除時に短押しか長押しかが判定され,解除時に長押しと判定されると,長押し判定前に選択されている文字を確定する」点で一致し,本願発明が,【構成C】の「短押判定時の次文字選択」の構成であるのに対して,引用例1発明は,【構成D】の「短押判定時の押下時次文字選択」する構成である点で相違する。

これを以下に順次説明する。
(ア)引用例1発明は,押下時に最初の文字を表示し,短押しか長押しかを判定し,短押しであれば,次の押下時に次の文字を選択して表示することを繰り返すものである。
(イ)本願発明は,先ず短押しか長押しか判定し,短押しであれば解除時に最初の文字を選択して表示し,次の短押しの判定で次の文字を選択して表示するものである。
(ウ)してみると,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「操作キーが短押しされると,該操作キーの短押しに対応する文字を表示する」との概念に包摂される。
(エ)引用例1発明は,短押しか長押しかを判定し,長押しであれば,その前の押下時に選択された文字を確定し,以後の文字の選択と表示は(ア)を繰り返すものである。
(オ)本願発明は,短押しか長押しかを判定し,長押しであれば,その前の解除時に選択された文字を確定し,以後の文字の選択と表示は(イ)を繰り返すものである。
(カ)してみると,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「操作キーの長押しの後の次の該キーの短押しに対応する文字は,新たな文字として表示する」という概念に包摂される。

してみると,引用例1発明と本願発明とは,以下の点で一致する。
「操作キーが短押しされると,該操作キーの短押しに対応する文字を表示し,
操作キーの長押しの後の次の該キーの短押しに対応する文字は,新たな文字として表示することを特徴とする文字入力方法。」

そして,引用例1発明と本願発明とは,以下の点で相違する。
[相違点1]
「操作キーが短押しされると,該操作キーの短押しに対応する文字を表示」する際,本願発明では,先ず短押しか長押しか判定し,短押しであれば解除時に最初の文字を選択して表示し,次の短押しの判定で次の文字を選択して表示するものであるのに対し,引用例1発明では,押下時に最初の文字を表示し,短押しか長押しかを判定し,短押しであれば,次の押下時に次の文字を選択して表示することを繰り返すものである点。
[相違点2]
「操作キーの長押しの後の次の該キーの短押しに対応する文字」を「新たな文字として表示」する際,本願発明では先ず短押しか長押しか判定し,短押しであれば解除時に最初の文字を選択して表示し,次の短押しの判定で次の文字を選択して表示するものであるのに対し,引用例1発明では,押下時に最初の文字を表示し,短押しか長押しかを判定し,短押しであれば,次の押下時に次の文字を選択して表示することを繰り返すものである点
[相違点3]
本願発明が,「短押しされた該操作キーが長押しされると,当該長押しに対して文字を表示しない」のに対し,引用例1発明では,長押しと判定するための押下時に次の文字が選択される点。

3.相違点に対する判断。

[相違点1]?[相違点3]は,前記「2.」で整理したとおり,本願発明が,【構成C】の「短押判定時の次文字選択」の構成であるのに対して,引用例1発明は,【構成D】の「短押判定時の押下時次文字選択」する構成である点,つまり,本願発明が,解除時に短押しと判定されると,解除時に現在選択されている文字の次の文字を選択するものであるのに対し,引用例1発明は,解除時に短押しと判定されると,解除の次の押下時に現在選択されている文字の次の文字を選択するという相違点に帰着する。
そこで,この相違点について検討する。
本願発明は,解除時に短押しと判定されると,解除時に現在選択されている文字の次の文字を選択するものである。
次の文字を選択するタイミングは,解除時と押下時のいずれかを選択するしかないところ,引用例2開示事項によれば引用例2には,【構成E】の「解除時次数字選択」の構成を備えること,つまり,「解除時に短押しと判定されると,解除時に現在選択されている数字の次の数字を選択する」ことが記載されている。
ここで,次の「数字」を選択するか次の「文字」を選択するかは,設計上任意に選択しうる程度のものであることを勘案すれば,引用例1発明の次文字選択のタイミングに引用例2開示事項の数字選択のタイミングを採用し,もって,解除時に短押しと判定されると解除時に現在選択されている文字の次の文字を選択するよう構成することには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。

そして,本願発明の作用効果も,引用例1発明と引用例2開示事項から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のことから,本願発明は,引用例1発明と引用例2開示事項とに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.審判請求人の主張の参酌。
ここで,前記「第3」の審判請求人の意見書における主張について検討する。

審判請求人の主張は,これを要すれば,引用例2は,
「再度フックキー6を一定時間T2だけ押し続けると,次の数字が選択される」
というものである。

審判請求人が主張する,「再度フックキー6を一定時間T2だけ押し続ける」と,「次の数字が選択される」との主張は,前記「1.(3)ア(イ)」の【0009】段落として摘記した事項,つまり,「フックキー6を押す回数に応じて番号が選択され,再度フックキー6を一定時間T2だけ押し続けると一桁目の番号が決定する」との記載事項に関する主張と理解される。
しかし,引用例2が,「再度フックキー6を一定時間T2だけ押し続ける」と,「次の数字が選択される」との主張は不自然だと考える。
仮に,審判請求人の主張のとおりであるとすると,例えば数字の「5」を設定する場合には,フックキーを押して(発声等により)数字が「4」であることを確認し,しかる後に(意を決して)一定時間T2だけ押し続けることにより数字の「5」が設定され,これが選択した番号として読み上げられることになる。
しかし,フックキーの操作だけで数字を設定するものである引用例2が,そのような操作を前提としているとは考えられない。
したがって,審判請求人の主張を採用することはできない。

なお仮に,審判請求人の主張が,一定時間T2だけ押し続けて数字を選択し,その後に「再度フックキー6を一定時間T2だけ押し続けると,次の数字が選択される」というものであるとすると,引用例2は,そのようなものである可能性は否定できないが,例え引用例2がそのような構成であったとしても,本願発明の構成とは関係がない主張であることから,やはり,審判請求人の主張を採用することはできない。
以上のとおりであるから,審判請求人の意見書における主張を参酌してもなお,本願発明は進歩性を有しないものと判断される。

5.まとめ。
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明及び引用例2開示事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,発明の効果についてみても,引用例1発明及び引用例2開示事項から予測される範囲のものにすぎない。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明及び引用例2開示事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-31 
結審通知日 2012-02-07 
審決日 2012-02-20 
出願番号 特願2001-58199(P2001-58199)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 秀樹  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 山本 章裕
松尾 俊介
発明の名称 文字入力方法及び携帯通信端末  

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