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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1254839
審判番号 不服2010-12737  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-11 
確定日 2012-04-05 
事件の表示 特願2005- 23968「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月10日出願公開、特開2006-210828〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年1月31日の出願であって、平成21年5月22日付けで手続補正がなされ、平成22年3月3日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年6月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後当審において、平成23年10月20日付けで審尋がなされ、同年12月22日に回答書が提出されたものである。

2.補正の却下の決定
【補正の却下の決定の結論】
平成22年6月11日付けの手続補正を却下する。

【理由】
(1)補正の内容
平成22年6月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし10を、補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし7に補正するとともに、明細書を補正するものであり、そのうちの補正前後の請求項は、以下のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上に順に形成された層間絶縁膜、配線、及び第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の上に形成された窒素含有絶縁膜を含む遮蔽膜と、
前記遮蔽膜の上に形成された第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜の上に形成され、多結晶半導体膜をチャネルとする薄膜トランジスタと、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記遮蔽膜は、SiN膜とSiO_(2)膜との積層膜、又はSiON膜とSiO_(2)膜との積層膜であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体基板の上に、層間絶縁膜、配線、及び第1絶縁膜を順に形成する工程と、
前記第1絶縁膜の上に、エネルギービームを反射又は減衰する窒素含有絶縁膜を含む遮蔽膜を形成する工程と、
前記遮蔽膜の上に第2絶縁膜と非晶質半導体膜とを順に形成する工程と、
前記非晶質半導体膜にエネルギービームを照射することにより、少なくとも薄膜トランジスタのチャネルとなる部分の該非晶質半導体膜を溶融して多結晶半導体膜にする工程と、
前記チャネルを含む形状に前記多結晶半導体膜をパターニングする工程と、
前記チャネルの上の前記多結晶半導体膜上にゲート絶縁膜とゲート電極とを順に形成する工程と、
前記ゲート電極の横の前記多結晶半導体膜に不純物を導入してソース/ドレイン領域を形成し、該ソース/ドレイン領域、前記ゲート絶縁膜、及び前記ゲート電極で前記薄膜トランジスタを構成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記エネルギービームを照射する工程は、前記遮蔽膜が前記第1絶縁膜の全面に形成されている状態で行われることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記エネルギービームとしてレーザを使用することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記エネルギービームとして電子ビームを使用することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記エネルギービームを照射する工程の前に、前記非晶質半導体膜に対して熱処理を行い、該非非晶質半導体膜の中の水素濃度を低減させる工程を有することを特徴とする請求項3?6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記ソース/ドレイン領域にエネルギービームを照射して該ソース/ドレイン領域中の前記不純物を活性化させる工程を有することを特徴とする請求項3?7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記層間絶縁膜として、少なくとも低誘電率絶縁膜を有する積層絶縁膜を形成することを特徴とする請求項3?8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記配線として銅配線を形成することを特徴とする請求項3?9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。」

(補正後)
「【請求項1】
半導体基板の上に、層間絶縁膜、配線、及び第1絶縁膜を順に形成する工程と、
前記第1絶縁膜の上に、エネルギービームを反射又は減衰する窒素含有絶縁膜を含む遮蔽膜を形成する工程と、
前記遮蔽膜の上に第2絶縁膜と非晶質半導体膜とを順に形成する工程と、
前記非晶質半導体膜にエネルギービームを照射することにより、少なくとも薄膜トランジスタのチャネルとなる部分の該非晶質半導体膜を溶融して多結晶半導体膜にする工程と、
前記チャネルを含む形状に前記多結晶半導体膜をパターニングする工程と、
前記チャネルの上の前記多結晶半導体膜上にゲート絶縁膜とゲート電極とを順に形成する工程と、
前記ゲート電極の横の前記多結晶半導体膜に不純物を導入してソース/ドレイン領域を形成し、該ソース/ドレイン領域、前記ゲート絶縁膜、及び前記ゲート電極で前記薄膜トランジスタを構成する工程と、
前記ソース/ドレイン領域にエネルギービームを照射して該ソース/ドレイン領域中の前記不純物を活性化させる工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記非晶質半導体膜に前記エネルギービームを照射する工程は、前記遮蔽膜が前記第1絶縁膜の全面に形成されている状態で行われることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記非晶質半導体膜に照射する前記エネルギービームとしてレーザを使用することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記非晶質半導体膜に照射する前記エネルギービームとして電子ビームを使用することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記非晶質半導体膜に前記エネルギービームを照射する工程の前に、前記非晶質半導体膜に対して熱処理を行い、該非晶質半導体膜の中の水素濃度を低減させる工程を有することを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記層間絶縁膜として、少なくとも低誘電率絶縁膜を有する積層絶縁膜を形成することを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記配線として銅配線を形成することを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。」

(2)補正事項の整理
(補正事項a)
補正前の請求項1及び2を削除すること。

(補正事項b)
補正前の請求項3を、補正後の請求項1の
「【請求項1】
半導体基板の上に、層間絶縁膜、配線、及び第1絶縁膜を順に形成する工程と、
前記第1絶縁膜の上に、エネルギービームを反射又は減衰する窒素含有絶縁膜を含む遮蔽膜を形成する工程と、
前記遮蔽膜の上に第2絶縁膜と非晶質半導体膜とを順に形成する工程と、
前記非晶質半導体膜にエネルギービームを照射することにより、少なくとも薄膜トランジスタのチャネルとなる部分の該非晶質半導体膜を溶融して多結晶半導体膜にする工程と、
前記チャネルを含む形状に前記多結晶半導体膜をパターニングする工程と、
前記チャネルの上の前記多結晶半導体膜上にゲート絶縁膜とゲート電極とを順に形成する工程と、
前記ゲート電極の横の前記多結晶半導体膜に不純物を導入してソース/ドレイン領域を形成し、該ソース/ドレイン領域、前記ゲート絶縁膜、及び前記ゲート電極で前記薄膜トランジスタを構成する工程と、
前記ソース/ドレイン領域にエネルギービームを照射して該ソース/ドレイン領域中の前記不純物を活性化させる工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。」
と補正すること。

(補正事項c)
補正前の請求項4を、補正後の請求項2の
「【請求項2】
前記非晶質半導体膜に前記エネルギービームを照射する工程は、前記遮蔽膜が前記第1絶縁膜の全面に形成されている状態で行われることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。」
と補正すること。

(補正事項d)
補正前の請求項5を、補正後の請求項3の
「【請求項3】
前記非晶質半導体膜に照射する前記エネルギービームとしてレーザを使用することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。」
と補正すること。

(補正事項e)
補正前の請求項6を、補正後の請求項4の
「【請求項4】
前記非晶質半導体膜に照射する前記エネルギービームとして電子ビームを使用することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。」
と補正すること。

(補正事項f)
補正前の請求項7を、補正後の請求項5の
「【請求項5】
前記非晶質半導体膜に前記エネルギービームを照射する工程の前に、前記非晶質半導体膜に対して熱処理を行い、該非晶質半導体膜の中の水素濃度を低減させる工程を有することを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。」
と補正すること。

(補正事項g)補正前の請求項8を削除すること。

(補正事項h)
補正前の請求項9を、補正後の請求項6の
「【請求項6】
前記層間絶縁膜として、少なくとも低誘電率絶縁膜を有する積層絶縁膜を形成することを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。」
と補正すること。

(補正事項i)
補正前の請求項10を、補正後の請求項7の
「【請求項7】
前記配線として銅配線を形成することを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。」
と補正すること。

(3)新規事項追加の有無及び補正の目的の適否についての検討
(3-1)補正事項a及びgについて
補正事項a及びgは、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下「特許法第17条の2第4項」という。)第1号に掲げられた請求項の削除を目的とする補正である。

(3-2)補正事項bについて
補正事項bは、補正前の請求項3に、補正前の請求項8の発明特定事項である「ソース/ドレイン領域にエネルギービームを照射して該ソース/ドレイン領域中の前記不純物を活性化させる工程」を追加する補正であり、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、「ソース/ドレイン領域にエネルギービームを照射して該ソース/ドレイン領域中の前記不純物を活性化させる工程」は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0088】の記載に基づく補正であり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(以下「特許法第17条の2第3項」という。)に規定された新規事項の追加禁止の要件を満たしている。

(3-3)補正事項cないしfについて
補正事項cないしfは、補正前の請求項4ないし7の発明特定事項である「エネルギービームを照射する工程」について、「非晶質半導体膜にエネルギービームを照射する工程」と限定的に減縮する補正であり、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、「非晶質半導体膜に」は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0054】の記載に基づく補正であり、特許法第17条の2第3項に規定された新規事項の追加禁止の要件を満たしている。

(3-4)補正事項h及びiについて
補正事項h及びiは、補正前の請求項1、2及び8の削除に伴い、項番を整理したものである。

(4)独立特許要件について
(4-1)はじめに
上記(3)において検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項(以下「特許法第17条の2第5項」という。)において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて、検討する。

(4-2)補正後の請求項1に係る発明
本件補正による補正後の請求項1ないし7に係る発明は、平成22年6月11日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載されている事項により特定されるとおりのものであって、そのうちの補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後の発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される上記2.(1)の補正後の請求項1として記載したとおりのものである。

(4-3)引用刊行物に記載された発明
(4-3-1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前である平成3年8月7日に日本国内で頒布された刊行物である特開平3-181120号公報(以下「引用刊行物」という。)には、第1、3図とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体において付加したものである。

「〈産業上の利用分野〉
この発明は、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板、さらにはガラス基板上のTFT(薄膜トランジスタ)用基板の作製に用いられる再結晶化シリコン膜の形成方法に関する。
〈従来の技術〉
近年、三次元回路素子のような積層構造のデバイスを作製するために、多結晶シリコン膜にレーザビームを照射して再結晶化シリコン膜を形成する方法が行われている。このような再結晶化シリコン膜を形成する場合、例えば第3図に示すように、まず、シリコン基板21の上に下地膜として層間絶縁膜(例えばSiO_(2)膜)22を形成した後、その上に多結晶シリコン膜23を形成し、最上層に絶縁膜からなる反射防止膜24を形成する。そして、多結晶シリコン膜23の表面23aへ向けてレーザビームLを照射し、横方向に走査して、多結晶シリコン膜3を溶融固化して再結晶させるようにしている。」(第1頁左下欄下から6行目?同頁右下欄第13行)
「〈発明が解決しようとする課題〉
しかしながら、第3図に示すような状態でレ-ザビームLを照射する場合、レーザビームLの数%乃至数十%が多結晶シリコン膜23を透過してシリコン基板21に達し、このため下層のシリコン基板21などに作り込まれたデバイスに熱的ダメージが生じて信頼性が損われるという問題がある。」(第2頁右下欄第19行?第2頁左上欄第6行)
「そこで、この発明の目的は、下層に形成したデバイスへの熱的ダメージを無くして信頼性を向上させることができ、しかも再結晶化シリコン膜の連続的な結晶方位の変化を抑制してSOI基板に形成した素子特性のばらつきを低減することができ、さらに、再結晶化シリコン膜をガラス基板上に形成する場合にガラス基板にクラックが生じるのを防止することができる再結晶化シリコン膜の形成方法を提供することにある。」(第2頁右上欄第8?16行)
「〈実施例〉
以下、この発明の再結晶化シリコン膜の形成方法を実施例により詳細に説明する。なお、まずシリコン基板上、次にガラス基板上に形成する場合について説明する。
第1図に示すように、まずシリコン基板lの上に、下地膜として、例えばSiO_(2)からなる層間絶縁膜2と、多結晶シリコンよりも高融点のMoまたはTiからなる金属膜3と、SiO_(2)からなる層間絶縁膜4を順次積層して形成する。この上に、従来と同様に、再結晶化シリコン膜の材料となる多結晶シリコン膜5と、絶縁膜からなり、レーザビームLに対する反射防止膜6とを形成する。そして、上記多結晶シリコン膜5の表面5aへ向けてレーザビームLを照射し、横方向に走査して、多結晶シリコン膜5を溶融固化して再結晶シリコン膜を形成する。このようにした場合、多結晶シリコン膜5を透過したレーザビームLは、下地膜中の高融点の金属膜3によって反射され、この金属膜3よりも下層に達することがない。また、金属膜3は多結晶シリコン膜5に比して熱伝導率が一桁以上高いため、放熱効率が向上する。したがって金属膜3よりも下層に形成されたデバイスが熱的ダメージを受けなくなり、信頼性が向上する。また、多結晶シリコン膜5を透過したレーザビームLは、上記金属膜3に反射された後、再び上記多結晶シリコン膜5の底面5bに達し、底面5bの付近の温度を上昇させる。このため、この多結晶ンリコン膜5の表面5a、底面5b間の温度差が低減される。したがって再結晶化シリコン膜の結晶方位の連続的な変化を抑制することができる。さらに、この再結晶化シリコン膜によってSOI基板を構成してデバイスを作り込む場合、従来に比して素子特性のバラツキを低減することができる。」(第2頁右下欄第18行?第3頁右上欄第6行)

(4-3-2)そうすると、引用刊行物には、以下の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。

「シリコン基板lの上に、SiO_(2)からなる層間絶縁膜2と、MoまたはTiからなる金属膜3と、SiO_(2)からなる層間絶縁膜4を順次積層して形成し、
この上に、再結晶化シリコン膜の材料となる多結晶シリコン膜5を形成し、
上記多結晶シリコン膜5の表面5aへ向けてレーザビームLを照射し、上記多結晶シリコン膜5を溶融固化して再結晶シリコン膜を形成する、
再結晶化シリコン膜の製造方法。」

(4-4)対比・判断
(4-4-1)刊行物発明の「シリコン基板1」、「SiO_(2)からなる層間絶縁膜2」及び「SiO_(2)からなる層間絶縁膜4」は、各々補正後の発明の「半導体基板」、「第1絶縁膜」及び「第2絶縁膜」に相当する。

(4-4-2)刊行物発明の「レーザビームL」は、補正後の発明の「エネルギービーム」に相当する。そして、引用刊行物の「多結晶シリコン膜5を透過したレーザビームLは、下地膜中の高融点の金属膜3によって反射され、この金属膜3よりも下層に達することがない。」(第3頁左上欄第9?12行)という記載から、刊行物発明の「MoまたはTiからなる金属膜3」と、各々補正後の発明の「エネルギービームを反射又は減衰する窒素含有絶縁膜を含む遮蔽膜」は、「エネルギービームを反射又は減衰する」「遮蔽膜」という点で共通する。

(4-4-3)刊行物発明の「多結晶シリコン膜5」と補正後の発明の「非晶質半導体膜」は、「半導体膜」という点で共通し、刊行物発明の「再結晶シリコン膜」と補正後の発明の「多結晶半導体膜」も「半導体膜」という点で共通する。ここで、両者を区別するために、前者を「第1の半導体膜」、後者を「第2の半導体膜」と、便宜上称する。そうすると、刊行物発明の「多結晶シリコン膜5の表面5aへ向けてレーザビームLを照射し、」「多結晶シリコン膜5を溶融固化して再結晶シリコン膜を形成する」ことと、補正後の発明の「非晶質半導体膜にエネルギービームを照射することにより、少なくとも薄膜トランジスタのチャネルとなる部分の該非晶質半導体膜を溶融して多結晶半導体膜にする」こととは、「第1の」「半導体膜にエネルギービームを照射することにより、」「該」「第1の」「半導体膜を溶融して」「第2の」「半導体膜にする」点で共通する。

(4-4-4)刊行物発明の「再結晶化シリコン膜の製造方法」は、補正後の発明の「半導体装置の製造方法」に相当する。

(4-4-5)そうすると、補正後の発明と刊行物発明とは、
「半導体基板の上に、第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜の上に、エネルギービームを反射又は減衰する遮蔽膜を形成する工程と、
前記遮蔽膜の上に第2絶縁膜と第1の半導体膜とを順に形成する工程と、
前記第1の半導体膜にエネルギービームを照射することにより、該第1の半導体膜を溶融して第2の半導体膜にする工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。」である点で一致し、次の4点で相違する。

(相違点1)
補正後の発明では、「半導体基板の上に、層間絶縁膜、配線、及び第1絶縁膜を順に形成」しているのに対して、刊行物発明では、「シリコン基板1」の上に、補正後の発明の「層間絶縁膜」、「配線」に相当するものが明示されていない点。

(相違点2)
「遮蔽膜」が、補正後の発明では、「エネルギービームを反射又は減衰する窒素含有絶縁膜を含む」のに対して、刊行物発明では、「MoまたはTiからなる金属膜3」である点。

(相違点3)
補正後の発明では、「非晶質半導体膜を溶融して多結晶半導体膜に」しているのに対し、刊行物発明では、「多結晶シリコン膜5を溶融固化して再結晶シリコン膜を形成」している点。

(相違点4)
補正後の発明では、「少なくとも薄膜トランジスタのチャネルとなる部分の」「非晶質半導体膜を」「多結晶半導体膜にする工程と、
前記チャネルを含む形状に前記多結晶半導体膜をパターニングする工程と、
前記チャネルの上の前記多結晶半導体膜上にゲート絶縁膜とゲート電極とを順に形成する工程と、
前記ゲート電極の横の前記多結晶半導体膜に不純物を導入してソース/ドレイン領域を形成し、該ソース/ドレイン領域、前記ゲート絶縁膜、及び前記ゲート電極で前記薄膜トランジスタを構成する工程と、
前記ソース/ドレイン領域にエネルギービームを照射して該ソース/ドレイン領域中の前記不純物を活性化させる工程と、を有している」のに対して、刊行物発明は、そもそも、「再結晶化シリコンの製造方法」であり、この「再結晶化シリコン」を用いた薄膜トランジスタの具体的な製造方法までは記載されていない点。

(4-5)判断
(4-5-1)相違点1について
引用刊行物の「近年、三次元回路素子のような積層構造のデバイスを作製するために、多結晶シリコン膜にレーザビームを照射して再結晶化シリコン膜を形成する方法が行われている。このような再結晶化シリコン膜を形成する場合、例えば第3図に示すように、まず、シリコン基板21の上に下地膜として層間絶縁膜(例えばSiO_(2)膜)22を形成した後、その上に多結晶シリコン膜23を形成し、最上層に絶縁膜からなる反射防止膜24を形成する。そして、多結晶シリコン膜23の表面23aへ向けてレーザビームLを照射し、横方向に走査して、多結晶シリコン膜3を溶融固化して再結晶させるようにしている。」(第1頁右下欄第1?13行)、「第3図に示すような状態でレ-ザビームLを照射する場合、レーザビームLの数%乃至数十%が多結晶シリコン膜23を透過してシリコン基板21に達し、このため下層のシリコン基板21などに作り込まれたデバイスに熱的ダメージが生じて信頼性が損われるという問題がある。」(第1頁右下欄第20行?第2頁左上欄第6行)、「この発明の目的は、下層に形成したデバイスへの熱的ダメージを無くして信頼性を向上させることができ、しかも再結晶化シリコン膜の連続的な結晶方位の変化を抑制してSOI基板に形成した素子特性のばらつきを低減することができ、さらに、再結晶化シリコン膜をガラス基板上に形成する場合にガラス基板にクラックが生じるのを防止することができる再結晶化シリコン膜の形成方法を提供することにある。」(第2頁右上欄第8?16行)という記載から、刊行物発明の「シリコン基板1」には、複数のデバイスが形成されていることが前提となっており、それらデバイス間を接続するために、「シリコン基板1」の上に、層間絶縁膜、配線などからなる配線層を形成することは、当業者が必要に応じて、適宜なし得る程度のことである。したがって、刊行物発明においても、補正後の発明のように、「半導体基板の上に、層間絶縁膜、配線、及び第1絶縁膜を順に形成」する構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
よって、相違点1は、当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものである。

(4-5-2)相違点2について
レーザビームアニールを用いた再結晶化法により多結晶シリコン膜や単結晶シリコン膜を形成する方法において、再結晶化の対象となるシリコン膜の下に反射膜を形成し、該シリコン膜の上方からレーザビームを照射する際に、反射膜として窒素含有絶縁膜を用いることは、以下の周知例1、2に記載されているように、従来周知の技術である。

(周知例1)特開2003-347207号公報には、図3及び5とともに、以下の記載がなされている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体装置に関し、より具体的には非晶質シリコン膜などをレーザアニールして形成した粗大粒を有する多結晶シリコン膜を備える半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶表示装置などに用いられる薄膜トランジスタには、キャリアの移動度を向上させるため、非晶質シリコン膜をレーザアニールして形成した多結晶シリコン膜が用いられる傾向にある。レーザアニールでは、線状すなわち細長い矩形状の断面形状のレーザビームを、前記断面を部分的に重複させながら所定のピッチで、矩形の短辺の幅方向にずらしながら照射する。」
「【0050】(実施の形態2)図3は、本発明の実施の形態2における半導体装置を示す断面図である。図3において、ガラス基板1の上に下地膜として窒化シリコン膜5を配置し、その上に非晶質シリコン膜をレーザアニールすることにより得られた多結晶シリコン膜7が設けられている。屈折率1.52のガラス基板と、屈折率2.2の窒化シリコン膜、および非晶質シリコン膜は屈折率が明確に異なるため、窒化シリコン膜と非晶質シリコン膜の両方の内部で多重反射が起こる。したがって、窒化シリコン膜と非晶質シリコン膜の両方の膜厚を調整して、反射光の強度を高くして、非晶質シリコン膜における吸収率を増大させることができる。
【0054】(実施の形態3)図5は、本発明の実施の形態3における半導体装置を示す断面図である。本実施の形態では、ガラス基板1の上に、窒化シリコン膜5、酸化シリコン膜6の順で下地膜を形成し、その上にレーザアニールにより非晶質シリコン膜から多結晶シリコン膜7を形成する。非晶質シリコン膜をレーザアニールして多結晶シリコン膜7を形成する際、非晶質シリコン膜およびその下方における多重反射(反射メカニズム)は、窒化シリコン膜5、酸化シリコン膜6、非晶質シリコン膜の内部で起こることになる。たとえば、非晶質シリコン膜の膜厚が、通常用いられる50nmの場合、窒化シリコン膜および酸化シリコン膜の膜厚を変化させた場合の、非晶質シリコン膜の吸収率を図6に示す。このときの照射レーザ光として、NdをドープしたYAGレーザの第2高調波を用いるものとする。図6によれば、酸化シリコン膜厚と、窒化シリコン膜厚とを適当に設定することにより、非晶質シリコン膜における吸収率40%以上または50%以上を容易に達成することができる。」

(周知例2)特開昭64-7610号公報には、第1図とともに、以下の記載がなされている。
「〔産業上の利用分野〕
本発明はSOI(セミコンダクタ・オン・インシュレータ,Semiconductor on Insulator)基板を、レーザビームアニールすることによって絶縁膜上に単結晶シリコン膜を形成する方法に関する。」(第1頁左下欄下から8?4行)
「第1図は、レーザアニールを施す試料の断面図である。まず、図に示すように、シリコン基板1上に、シリコン酸化膜2、シリコン窒化膜3、シリコン酸化膜4を順にそれぞれ膜厚0.27μm,0.04μm,0.1μmに形成し、これを層間絶縁膜とする。この上にポリシリコン薄膜5を0.5μm形成する。
上記膜厚を含めた膜構成の場合に、シリコン酸化膜4とポリシリコン薄膜5との界面でのレーザ光反射率は0.75となる。これは層間絶縁膜をシリコン酸化膜4(膜厚0.4μm)のみで形成した従来の場合の1.3倍である。シリコン酸化膜4とポリシリコン薄膜5との界面でのレーザ光透過率は1-0.75=0.25であり、これは従来の場合の3/5である。レーザ光透過率が小さくなれば、前記(1)式中のエネルギー透過率Tも小さくなり、ポリシリコン薄膜5に吸収されるレーザ光のエネルギー量は増加する。したがって、本実施例では従来よりも多いエネルギーがポリシリコン薄膜5に吸収される。その結果、ある一定のエネルギーのレーザ光を照射した場合、従来にくらべ、本発明の方がポリシリコン薄膜5を溶融しやすく、すなわち再結晶化しやすい。」(第2頁右上欄第3行?同頁左下欄第4行)

したがって、刊行物発明の「MoまたはTiからなる金属膜3」に換えて、「窒素含有絶縁膜」を採用することにより、補正後の発明のように、「エネルギービームを反射又は減衰する窒素含有絶縁膜を含む」構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 よって、相違点2は、当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものである。

(4-5-3)相違点3及び4について
薄膜トランジスタ等に用いられるシリコン薄膜として、非晶質シリコンをレーザアニールより溶融・再結晶化させた多結晶シリコン薄膜を用いることは、前記周知例1及び以下の周知例3ないし6に記載されているように、従来周知の技術である。

(周知例3)特開2004-356282号公報には、以下の記載がなされている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリシリコンをチャネル層とした薄膜トランジスタの製造などに用いられるレーザアニール装置、およびレーザアニール装置などに適用される光照射装置、並びにコリメート調整装置に関する。より詳細には、複数の光源により被照射物に対して均一照射する照射光学系に関し、特に、液晶表示装置、有機EL表示素子の駆動回路素子、スイッチング素子などに用いられる多結晶シリコン薄膜トランジスタの製造装置、非晶質シリコン薄膜を溶融・再結晶化して薄膜トランジスタ活性層となる多結晶シリコン膜に転換させるレーザアニール装置に用いるレーザ照射光学系への適用に有効な照射光学系の構成と当該照射光学系のコリメート調整に関する。」

(周知例4)特開2005-5323号公報には、以下の記載がなされている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、異種基板上に積層させた非晶質シリコンから結晶シリコンを形成するための半導体加工方法および半導体加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、非導電性の異種基板、例えばガラス基板の上にシリコン薄膜を形成する研究が盛んに行われている。ガラス基板上に形成したシリコン薄膜の用途は広く、液晶デバイス用TFT(Thin Film Transistor)や薄膜太陽光発電素子などに用いることができる。」
「【0007】一方、レーザー光の照射によって結晶化する試みも種々検討されており、エキシマレーザーを用いて結晶化する研究が盛んに行われている。エキシマレーザーは、一般的に数百mJ/shot、光パルス幅は数10nmである。瞬時電力に換算すると、10MW以上と極めて大きいエネルギーを出力する。このレーザー光を用いると10cm^(2)/s以上の大面積を融解、再結晶化できるので、高い生産性を有するだけでなく、面内に渡って均一な温度が比較的容易に得られる。また、100nsec程度の短時間で処理が終了することから、ガラス等の安価な基板が使用可能である。このエキシマレーザー結晶化技術は、液晶ディスプレイ用TFT基板向けに開発が進められており、製品化も行われている。
【0008】しかしながら、この方法で形成される多結晶シリコン薄膜は、結晶粒径が100nm程度であり、TFT等の電子デバイス用基板として用いる場合、結晶粒界がキャリアの走行を阻害し、デバイス特性には上限があるという問題があった。
【0009】他種のレーザー光を照射することによって結晶化する試みも種々検討されており、連続波を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1)。この方法は、異種基板上に非晶質シリコンを形成し、帯状の連続波光源を非晶質シリコン膜の上下から照射しながら走査することで、多結晶シリコン層に溶融、結晶化するもので、走査方向に長い結晶粒を成長させることを可能としている。用いるレーザーは、Nd:YAGレーザーまたはNd:YVO_(4)レーザー等の第二高調波波長が532nmの波長の光を出力する固体レーザーである。」

(周知例5)特開2005-12013号公報には、以下の記載がなされている。
「【0002】
【従来の技術】一般に、半導体素子は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)、密着センサ、光電変換素子をはじめとして様々な分野で大量に用いられている。例えば、薄膜トランジスタを液晶表示装置のガラス基板に搭載した例としては、(非特許文献1)に記載されている。液晶表示装置等に用いられる表示装置は、薄型且つ軽量が望まれており、低電圧駆動が可能で、さらにカラー表示も容易である等の特徴を有している。この表示装置は、近年のパーソナルコンピュータ、若しくは各種携帯用情報端末の表示装置として幅広く採用されている。そして、液晶表示装置の画素部、駆動回路部のスイッチング素子としては、MOS(MIS)電界効果トランジスタなどの薄膜トランジスタが広く用いられている。
【0003】これらのうち、チャネルにシリコン膜を用いた薄膜トランジスタをキャリア走行層(活性層)の構成材料から分類すると、▼1▲非晶質シリコン(アモルファスシリコン:a-Si)を用いたものと、▼2▲結晶相を有する多結晶質シリコン(非単結晶の結晶質シリコン)を用いたものとに分類される。このうち、多結晶質シリコンは、主として多結晶シリコン(poly-Si)、または微結晶シリコン(μc-Si)が知られている。さらに薄膜トランジスクのチャネル半導体膜の材料としては、シリコン以外にも例えば、SiGe、SiO、CdSe、Te、CdS等が用いられている。
【0004】Poly-Si若しくはμc-Si等の多結晶質シリコン(非単結晶の結晶質シリコン)からなる半導体は、アモルファスシリコンからなる半導体と比較してキャリアの移動度が10倍から100倍程度大きいという特徴があり、スイッチング素子の構成材料として非常に優れた特性を有している。また、多結晶シリコンを活性層に用いた薄膜トランジスタは、高速動作が可能なことから、近年では各種論理回路(例えば、ドミノ論理又は、CMOSトランスミッションゲート回路等)や、これらを用いたマルチプレクサ、EPROM、EEPROM、CCD及び、RAM、さらに液晶表示装置、エレクトロルミネセンス表示装置等の駆動回路などを構成するスイッチング素子としても注目されている。
【0005】このようなpoly-Si若しくはμc-Si等の多結晶質シリコンからなる半導体膜をチャネルに用いた薄膜トランジスタの代表的な製造プロセスは以下のようなものがある。
【0006】まず、ガラス等からなる絶縁性基板(例えば、Corning社1737等)上にプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置などの成膜装置によりSiO2等からなるアンダコート層(バッファ層)を成膜し、さらに、その上に膜厚約50nm程度のa-Si半導体膜を成膜する。
【0007】次に、熱処理によりa-Si半導体膜中の脱水素処理を行い、続いてエキシマレーザ結晶化法等によりa-Si半導体膜の溶融再結晶化を行い、poly-Si半導体膜に形成する。poly-Si半導体膜を薄膜トランジスタの形状にパターニングした後、SiO_(2)、SiN_(x)等からなる厚さ約80nm程度のゲート絶縁膜を成膜する。」

そして、再結晶化されたシリコン薄膜として、どのような結晶性のものとするかは、作成するデバイスに求められる特性に応じて、適宜選択し得るものであるから、刊行物発明において、上記周知の技術を勘案することにより、補正後の発明のように、「非晶質半導体膜を溶融して多結晶半導体膜にする」構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
また、引用刊行物の「〈産業上の利用分野〉
この発明は、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板、さらにはガラス基板上のTFT(薄膜トランジスタ)用基板の作製に用いられる再結晶化シリコン膜の形成方法に関する。」(第1頁左下欄下から6?2行)、「さらに、この再結晶化シリコン膜によってSOI基板を構成してデバイスを作り込む場合、従来に比して素子特性のバラツキを低減することができる。」(第3頁右上欄第3?6行)という記載から、引用発明により製造された「再結晶化シリコン膜」を用いて、薄膜トランジスタを形成することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、上記周知例のごとく、多結晶半導体層を用いた薄膜トランジスタの製造において、「チャネルを含む形状に」「多結晶半導体膜をパターニングする」こと、「前記チャネルの上の前記多結晶半導体膜上にゲート絶縁膜とゲート電極とを順に形成する」こと、「前記ゲート電極の横の前記多結晶半導体膜に不純物を導入してソース/ドレイン領域を形成し、該ソース/ドレイン領域、前記ゲート絶縁膜、及び前記ゲート電極で」「薄膜トランジスタを構成する」ことは、以下の周知例にも記載されるように、通常採用される周知の工程にすぎない。
そして、刊行物発明において、「多結晶シリコン膜5の表面5aへ向けてレーザビームLを照射し、上記多結晶シリコン膜5を溶融固化して再結晶シリコン膜を形成する」際に、形成しようとする薄膜トランジスタのチャネルとなる部分の「多結晶シリコン膜5を溶融固化して再結晶シリコン膜を形成する」ことは、薄膜トランジスタの特性向上のために、当業者が当然に行うことであるといえる。
また、「半導体膜に不純物を導入してソース/ドレイン領域を形成し」た後、「前記ソース/ドレイン領域にエネルギービームを照射して該ソース/ドレイン領域中の前記不純物を活性化させる」ことも、以下の周知例に記載されているように従来周知の技術である。

(周知例6)特開2004-303972号公報には、図8とともに、以下の記載がなされている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶粒径の大きな半導体薄膜を形成しうる半導体薄膜の結晶化装置及び方法、並びにその半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタの製造方法に関する。」
「【0077】ここで、アモルファスシリコン膜50の結晶化後に、多結晶シリコン膜52をパターニングしてチャネル層54を形成しているのは次のような理由による。すなわち、アモルファスシリコン膜50を直接図6に示すような形状にパターニングし、その後にアモルファスシリコン膜50を結晶化したのでは、パターンが微細であるために粒径の大きな結晶の成長が困難となる可能性があるためである。上述のように、アモルファスシリコン膜50の結晶化後のパターニングによりチャネル層54を形成することで、結晶粒径の大きな多結晶シリコン膜52よりなるチャネル層54を確実に得ることができる。
【0078】次いで、全面に、例えばPECVD法により、膜厚200nmのシリコン酸化膜よりなるゲート酸化膜56を形成する(図5(d)を参照)。なお、ゲート酸化膜56は、LP(Low Pressure、減圧)CVD法、スパッタ法等を用いて形成してもよい。
【0079】次いで、全面に、スパッタ法により、膜厚300nmのアルミニウム層58を形成する(図7(a)を参照)。
【0080】次いで、フォトリソグラフィ技術を用い、アルミニウム層58をゲート電極60の形状にパターニングする(図7(b)を参照)。
【0081】次に、ゲート電極60に自己整合でゲート酸化膜56をエッチングする(図7(c)を参照)。
【0082】次いで、ゲート電極60に自己整合で、チャネル層54に不純物イオンを注入する。(図7(d)を参照)。不純物としては、例えばリンを用いることができる。
【0083】次いで、エキシマレーザにより、ガラス基板10上からレーザビームを照射し、チャネル層54に導入された不純物を活性化する。こうしてゲート電極60に自己整合でソース/ドレイン拡散層62を形成する(図8(a)を参照)。なお、不純物の活性化は、エキシマレーザによるもののほか、ランプ等を用いた熱処理、熱アニール等によって行ってもよい。」

そうすると、刊行物発明を用い、さらに上記周知の技術を勘案することにより、補正後の発明のように、「薄膜トランジスタのチャネルとなる部分の」「晶質半導体膜を溶融して多結晶半導体膜にする工程と、
前記チャネルを含む形状に前記多結晶半導体膜をパターニングする工程と、
前記チャネルの上の前記多結晶半導体膜上にゲート絶縁膜とゲート電極とを順に形成する工程と、
前記ゲート電極の横の前記多結晶半導体膜に不純物を導入してソース/ドレイン領域を形成し、該ソース/ドレイン領域、前記ゲート絶縁膜、及び前記ゲート電極で前記薄膜トランジスタを構成する工程と、
前記ソース/ドレイン領域にエネルギービームを照射して該ソース/ドレイン領域中の前記不純物を活性化させる工程と、
を有する」構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
よって、上記相違点3及び4は、当業者が容易になし得た程度のものである。

(4-6)独立特許要件についてのまとめ
以上、検討したとおり、補正後の発明と刊行物発明との相違点は、周知の技術を勘案することにより、当業者が容易に想到し得た範囲に含まれる程度のものにすぎず、補正後の発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

(5)補正の却下についてのむすび
本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるが、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものである。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成22年6月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成21年5月22日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうちの請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される上記2.(1)の補正前の請求項3として記載したとおりのものである。

4.刊行物に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物には、上において検討したとおり、上記2.(4-3-1)に記載したとおりの事項及び上記2.(4-3-2)において認定したとおりの発明(刊行物発明)が記載されているものと認められる。

5.判断
上記2.(3)において検討したとおり、補正後の発明は、補正前の請求項8の発明特定事項である「ソース/ドレイン領域にエネルギービームを照射して該ソース/ドレイン領域中の前記不純物を活性化させる工程」を追加したものである。逆に言えば本件補正前の請求項1に係る発明(本願発明)は,補正後の発明から上記の追加事項をなくしたものである。
そうすると、上記2.(4)において検討したように、補正後の発明が,引用刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-03 
結審通知日 2012-02-07 
審決日 2012-02-20 
出願番号 特願2005-23968(P2005-23968)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後谷 陽一和瀬田 芳正  
特許庁審判長 齋藤 恭一
特許庁審判官 小野田 誠
小川 将之
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 岡本 啓三  
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