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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01L
管理番号 1254849
審判番号 不服2010-24360  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-28 
確定日 2012-04-05 
事件の表示 特願2001-120139「弁開閉時期制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月31日出願公開、特開2002-317611〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年4月18日の出願であって、平成21年5月28日付けで拒絶理由が通知され、平成21年8月3日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成21年12月22日付けで再び拒絶理由通知が通知され、平成22年2月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年7月26日付けで拒絶査定がなされ、平成22年10月28日付けで拒絶査定に対する審判請求がされると同時に、同日付けで手続補正書が提出され、さらに、当審において平成23年4月11日付けの書面による審尋がなされ、平成23年10月25日付けで拒絶理由が通知され、平成23年12月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成23年12月22日付け、平成22年10月28日付け及び平成21年8月3日付けの手続補正書によって補正された明細書、平成23年12月22日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び平成21年8月3日付けの手続補正書によって補正された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】 エンジンの回転軸または従動軸の一方と一体的に回転する回転伝達部材と、
前記回転伝達部材に対して相対回転可能に組み付けられると共に、前記従動軸または前記回転軸の他方と一体的に回転するロータと、
前記回転伝達部材と前記ロータとの間に形成される複数の流体圧室と、
前記回転伝達部材または前記ロータの少なくとも一方に設けられ、該流体圧室を進角油室と遅角油室に区画するベーンと、を備えてなる弁開閉時期制御装置において、
前記回転伝達部材は前記ロータとの間で流体圧室を形成するハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記回転軸の回転力が伝達される駆動力伝達部材と、
前記ハウジングの前記回転軸の軸方向一端に取り付けられるプレートとからなり、
前記ハウジングと前記駆動力伝達部材とを締結する第1締結部材としてのボルトと、
前記プレートと前記ハウジングと前記駆動力伝達部材とを接続する第2締結部材とによって一体的に組み付けられ、
前記ハウジングには前記回転軸の軸方向に貫通する孔が設けられ、
前記ボルトは前記孔に前記回転軸の軸方向一端側から組み付けられて、前記ボルトの頭部が前記ハウジング内に挿入されており、
前記第2締結部材により前記プレートが前記ハウジングに取り付けられることにより、前記プレートは前記孔を塞ぐと共に前記ボルトの頭部は前記プレートにより覆われる
ことを特徴とする弁開閉時期制御装置。」

2.引用文献記載の発明及び技術
2-1.引用文献1記載の発明
(1)引用文献1の記載
当審の拒絶の理由に引用され、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-60507号公報(以下、「引用文献1」という。)には、例えば、次のような記載がある。

(ア)「【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を示す複数の実施例を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)本発明の第1実施例によるエンジン用バルブタイミング調整装置を図1?図8に示す。図8は、第1実施例の油圧回路を示したものである。
【0009】図2に示すチェーンスプロケット1は、図示しないチェーンにより図示しないエンジンの駆動軸としてのクランクシャフトから駆動力を伝達され、クランクシャフトと同期して回転する。従動軸としてのカムシャフト2は、チェーンスプロケット1から駆動力を伝達され、図示しない吸気弁および排気弁の少なくと一方を開閉駆動する。カムシャフト2は、チェーンスプロケット1に対し所定の位相差をおいて回動可能である。チェーンスプロケット1およびカムシャフト2は図2に示す矢印X方向からみて時計方向に回転する。以下この回転方向を進角方向とする。
【0010】図1および図2に示すように、ハウジング部材であるチェーンスプロケット1とシューハウジング3とフロントプレート4とはボルト14により同軸上に固定されている。チェーンスプロケット1のボス部1aの内周壁はカムシャフト2の先端部2aに相対回動可能に嵌合している。フロントプレート4とシューハウジング3とはノックピン26により、シューハウジング3とチェーンスプロケット1とはノックピン27によりそれぞれ回転角度方向の位置決めがなされている。
【0011】図1に示すように、シューハウジング3は互いに対向する台形状のシュー3aおよび3bを有している。シュー3aおよび3bのそれぞれの対向面は、断面円弧状に形成されており、シュー3aおよび3bの周方向の二箇所の間隙にはそれぞれベーン9aおよび9bの収容室としての扇状空間部が形成されている。図1および図2に示すように、ベーンロータ9は支持部材9fと、支持部材9f外周の径方向両端に支持部材9fと一体に形成され支持部材9fとともに回転するベーン9aおよび9bとからなる。支持部材9fはボルト15によりカムシャフト2に一体に固定されている。ベーン9aおよび9bは扇形状に形成され、このベーン9aおよび9bがシュー3aおよび3bの周方向の間隙に形成されている扇状空間部内に回動可能に収容されている。インロー部9cはカムシャフト2の先端部2aに同軸に嵌合し、ベーンロータ9とカムシャフト2とはノックピン28により回転角度方向の位置決めがなされている。ベーンロータ9と一体に固定される円筒突出部5は、フロントプレート4の内周壁に相対回動可能に嵌合している。図1に示すように、ベーンロータ9の外周壁とシューハウジング3の内周壁との間に微小クリアランス16および17が設けられており、ベーンロータ9はシューハウジング3と相対回動可能である。シュー3aとベーン9aとの間には遅角油圧室10が形成され、シュー3bとベーン9bとの間には遅角油圧室11が形成され、シュー3aとベーン9bとの間には進角油圧室12が形成され、シュー3bとベーン9aとの間には進角油圧室13が形成されている。」(段落【0008】ないし【0011】)

(2)引用文献1記載の事項
上記(1)(ア)の記載及び図1ないし8を参酌すると、以下の事項が分かる。
(イ)チェーンスプロケット1は、チェーンにより、エンジンの駆動軸としてのクランクシャフトと同期して一体的に回転することが分かる。

(ウ)ベーンロータ9は、シューハウジング3に対して相対回動可能に組み付けられると共に、カムシャフトと一体に固定され、一体的に回転することが分かる。

(エ)シュー3a及び3bを有するシューハウジング3とベーンロータ9との間に、遅角油圧室10、遅角油圧室11、進角油圧室12及び進角油圧室13が形成されていることが分かる。

(オ)シュー3a及び3bの周方向の二箇所の間隙に形成された扇状空間部は、ベーンロータ9に設けられたベーン9a及び9bによって、遅角油圧室10と進角油圧室13、遅角油圧室11進角油圧室12にそれぞれ区画されていることが分かる。

(カ)フロントプレート4はシューハウジング3の回転軸の軸方向一端に取り付けられていることが分かる。

(キ)エンジン用バルブタイミング装置は、シューハウジング3とチェーンスプロケット1とを固定するノックピン27と、チェーンスプロケット1とシューハウジング3とフロントプレート4とを接続するボルト14とによって一体的に組み付けられていることが分かる。

(ク)チェーンスプロケット1からシューハウジング3に達する孔が設けられ、ロックピン27は該孔に回転軸の軸方向他端側から組み付けられていることが分かる。

(3)引用文献1記載の発明
上記(1)(ア)、(2)(イ)ないし(ク)及び図1ないし8の記載を参酌すると、引用文献1には以下の発明が記載されているといえる。
「エンジンの駆動軸としてのクランクシャフトと同期して一体的に回転するチェーンスプロケット1と、
シューハウジングに対して相対回動可能に組み付けられると共に、カムシャフトと一体に固定され、一体的に回転するベーンロータ9と、
シューハウジング3とベーンロータ9との間に形成される遅角油圧室10、遅角油圧室11、進角油圧室12及び進角油圧室13と、
ベーンロータに設けられ、シュー3a及び3bの周方向の二箇所の間隙に形成された扇状空間部を、遅角油圧室10と進角油圧室13、遅角油圧室11進角油圧室12にそれぞれ区画するベーン9a及び9bと、を備えたエンジン用バルブタイミング調整装置において、
ベーンロータ9との間で遅角油圧室10、遅角油圧室11、進角油圧室12及び進角油圧室13を形成するシューハウジング3と、
シューハウジング3に固定され、エンジンの駆動軸としてのクランクシャフトと同期して一体的に回転するチェーンスプロケット1と、
シューハウジング3の回転軸の軸方向一端に取り付けられるフロントプレート4とを有し、
シューハウジング3とチェーンスプロケット1とを固定するノックピン27と、
フロントプレート4とシューハウジング3とチェーンスプロケット1とを接続するボルト14とによって一体的に組み付けられ、
チェーンスプロケット1からシューハウジング3に達する孔が設けられ、ロックピン27は前記孔に回転軸の軸方向他端側から組み付けられたエンジン用バルブタイミング調整装置。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

2-2.引用文献2記載の技術
(1)引用文献2の記載
当審の拒絶の理由に引用され、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-324612号公報(以下、「引用文献2」という。)には、例えば、次のような記載がある。

(ア)「【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る内燃機関の可変バルブタイミング(VVT)機構を具体化した各実施形態について図面を参照して説明する。」(段落【0030】)

(イ)「【0149】[第4の実施形態]次に、本発明の第4の実施形態に係るVVT機構80について図14及び図15を参照して説明する。‥‥(後略)‥‥」(段落【0149】)

(ウ)「【0152】図14及び図15に示すように、ハウジング84は略円筒状をなし、複数のボルト37によってドリブンギア82の前面に固定されている。ハウジング84は係合ピン(図示せず)によって、ドリブンギア82に固定されている。従って、ハウジング84はドリブンギア82と一体に回転する。ハウジング84の内周には中心へ向かって突出する4つの凸部843が等角度間隔をおいて形成されている。それらの凸部843の間には4つの凹部842が形成されている。
【0153】ロータ83は、貫通孔831aを備えた円筒部831と、その円筒部831の外周に等角度間隔をおいて放射方向へ突出する4つのベーン832とを有する。ロータ83はカムシャフト15のフランジ151aの前面に係合ピン(図示せず)を介して接合されている。従って、ロータ83はカムシャフト15と一体に回転する。
【0154】ロータ83の円筒部831はハウジング84の凸部843の間の空間内に収容され、各ベーン832はハウジング84の各凹部842内に配置される。この状態で、各ベーン832の両側に進角室101及び遅角室102が形成される。各ベーン832の外端面には、シール部材123及びそれを各凹部842の内壁面に向かって付勢する板バネ124が装着されている。
【0155】貫通孔81aを有するフロントプレート81は、ハウジング84及びロータ83の前面を覆っている。複数のボルト38はフロントプレート81の前面からロータ83のベーン832を貫通してフランジ151aに螺着されている。このボルト38によって、フロントプレート81及びロータ83が、カムシャフト15に一体回転可能に固定されている。また、ハウジング84はその前端の内周においてフロントプレート81の外周に相対回動可能に支持されている。シール811はフロントプレート81とハウジング84との間をシールするために、両者81,84間に配置されている。」(段落【0152】ないし【0155】)

(2)引用文献2記載の事項
上記(1)(ア)ないし(ウ)並びに図14及び15の記載を参酌すると、以下の事項が分かる。

(エ)ハウジング84に回転軸の軸方向に貫通する孔が設けられ、該孔にボルト37が前記回転軸の軸方向でハウジング84よりカムと反対の側から組み付けられて、ボルト37の頭部がハウジング84内に挿入されており、ボルト38のによりフロントプレート81がハウジング84に取り付けられることにより、フロントプレート81は前記孔を塞ぐと共に前記ボルト37の頭部は前記フロントプレート81により覆われることが分かる。

(3)引用文献2記載の技術
上記(1)(ア)ないし(ウ)、(2)(エ)並びに図14及び15の記載を参酌すると、引用文献2には以下の技術が記載されているといえる。

「可変バルブタイミング機構において、ハウジング84に回転軸の軸方向に貫通する孔が設けられ、該孔にボルト37が前記回転軸の軸方向でハウジング84よりカムと反対の側から組み付けられて、ボルト37の頭部がハウジング84内に挿入されており、ボルト38によりフロントプレート81がハウジング84に取り付けられることにより、フロントプレート81は、前記孔を塞ぐと共に前記ボルト37の頭部は前記フロントプレート81により覆われるという技術」(以下、「引用文献2記載の技術」という。)

3.対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「ベーンロータ9」は、その構成及び機能からみて、本願発明における「ロータ」に相当し、以下同様に、「遅角油圧室10、遅角油圧室11、進角油圧室12及び進角油圧室13」は「複数の流体圧室」に、「エンジン用バルブタイミング調整装置」は「弁開閉時期制御装置」に、「シューハウジング3」は「ハウジング」に、「チェーンスプロケット1」は「駆動力伝達部材」に、「フロントプレート4」は「プレート」にそれぞれ相当する。
また、本願発明において「回転伝達部材」は「ハウジング」と「駆動力伝達部材」と「プレート」からなるから、引用文献1記載の発明において「シューハウジング3」と「チェーンスプロケット1」と「フロントプレート4」を一体的に組み付けたものは、本願発明における「回転伝達部材」に相当する。
そして、引用文献1記載の発明において「シューハウジング3」と「チェーンスプロケット1」と「フロントプレート4」を一体的に組み付けたものが一体的に回転することは明らかであるから、引用文献1記載の発明において「チェーンスプロケット1」が「エンジンの駆動軸としてのクランクシャフトと同期して一体的に回転する」ことと、本願発明において「回転伝達部材」が「エンジンの回転軸または従動軸の一方と一体的に回転する」ことは、「回転伝達部材」が「エンジンの回転軸と一体的に回転する」という限りにおいて相当する。
さらにまた、引用文献1記載の発明において、「ベーンロータ9」が、「チェーンスプロケット1」と「フロントプレート4」に一体的に組み付けた「シューハウジング3に相対回転可能に組み付けられる」ことは、本願発明において、「ロータ」が、「回転伝達部材に対して相対回転可能に組み付けられる」ことに相当する。そして、引用文献1記載の発明において「ベーンロータ9」が「カムシャフトと一体に固定され」ることと、本願発明において「ロータ」が「前記従動軸または前記回転軸の他方と一体的に回転する」ことは、「ロータ」が「エンジンの従動軸と一体に回転する」という限りにおいて相当する。
そして、引用文献1記載の発明における「扇状空間部」は「遅角油圧室10、遅角油圧室11、進角油圧室12及び進角油圧室13」に区画されるから、引用文献1記載の発明における「ベーンロータに設けられ、シュー3a及び3bの周方向の二箇所の間隙に形成された扇状空間部を、遅角油圧室10と進角油圧室13、遅角油圧室11進角油圧室12にそれぞれ区画するベーン9a及び9b」と本願発明における「前記回転伝達部材または前記ロータの少なくとも一方に設けられ、該流体圧室を進角油室と遅角油室に区画するベーン」は、「ロータに設けられ、流体圧室を進角油室と遅角油室に区画するベーン」という限りにおいて相当する。
さらにまた、引用文献1記載の発明における「シューハウジング3とチェーンスプロケット1とを固定するノックピン27」と本願発明における「前記ハウジングと前記駆動力伝達部材とを締結する第1締結部材としてのボルト」は、「ハウジングと駆動力伝達部材とを締結する締結部材」という限りにおいて相当する。
そして、引用文献1記載の発明における「ボルト14」は、その構成及び機能からみて、本願発明における「第2締結部材」に相当する。

したがって、本願発明と引用文献1記載の発明とは、
「エンジンの回転軸と一体的に回転する回転伝達部材と、
前記回転伝達部材に対して相対回転可能に組み付けられると共に、前記従動軸と一体的に回転するロータと、
前記回転伝達部材と前記ロータとの間に形成される複数の流体圧室と、
前記ロータに設けられ、該流体圧室を進角油室と遅角油室に区画するベーンと、を備えてなる弁開閉時期制御装置において、
前記回転伝達部材は前記ロータとの間で流体圧室を形成するハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記回転軸の回転力が伝達される駆動力伝達部材と、
前記ハウジングの前記回転軸の軸方向一端に取り付けられるプレートとからなり、
前記ハウジングと前記駆動力伝達部材とを締結する締結部材と、
前記プレートと前記ハウジングと前記駆動力伝達部材とを接続する第2締結部材とによって一体的に組み付けられた弁開閉時期制御装置。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

(1)「ハウジングと駆動力伝達部材とを締結する締結部材」に関し、本願発明においてはボルトを用いているのに対し、引用文献1記載の発明においてはノックピンを用いている点(以下、「相違点1」という。)。
(2)本願発明においては「ハウジングには回転軸の軸方向に貫通する孔が設けられ、ボルトは前記孔に前記回転軸の軸方向一端側から組み付けられて、前記ボルトの頭部が前記ハウジング内に挿入されており、第2締結部材によりプレートが前記ハウジングに取り付けられることにより、前記プレートは前記孔を塞ぐと共に前記ボルトの頭部は前記プレートにより覆われる」のに対し、引用文献1記載の発明においては、「チェーンスプロケット1からシューハウジングに達する孔が設けられ、ロックピンは前記孔に回転軸の軸方向他端側から組み付けられ」ており、ロックピンの頭部がフロントプレートにより覆われるような構成を有しない点(以下、「相違点2」という。)。

4.判断
(1)相違点1について
上記相違点1について検討すると、位置決めして締結する2つの部材を締結する際に、ノックピン又はボルトを適宜選択して用いることは周知技術(特開平11-257370号公報(特に、段落【0003】)、特開平4-365626号公報(特に、請求項2)、特開平8-108076号公報(特に、請求項9、段落【0053】)等参照、以下、「周知技術」という。)であって、引用文献1記載の発明においてノックピン27に代えてボルトを用いることにより、相違点1に係る本願発明のようにすることは、当業者が上記周知技術から容易に推考し得たものである。

(2)相違点2について
次に、上記相違点2について検討する。
本願発明と引用文献2記載の技術を対比すると、引用文献2記載の技術における「可変バルブタイミング機構」は、その構成及び機能からみて、本願発明における「弁開閉時期制御装置」に相当し、以下同様に、「ハウジング84」は「ハウジング」に、「ボルト37」は「第1締結部材としてのボルト」に、「回転軸の軸方向でハウジング84よりカムと反対の側から組み付けられ」る構成は「回転軸の軸方向一端側から組み付けられ」る構成に、「ボルト38」は「第2締結部材」に、「フロントプレート81」は「プレート」に、それぞれ相当する。したがって、引用文献2記載の技術を本願発明の用語を用いて表現すると、
「弁開閉時期制御装置において、ハウジングに回転軸の軸方向に貫通する孔が設けられ、該孔に第1締結部材としてのボルトが前記回転軸の軸方向一端側から組み付けられて、第1締結部材としてのボルトの頭部がハウジング内に挿入されており、第2締結部材によりプレートがハウジングに取り付けられることにより、プレートは前記孔を塞ぐと共に前記第1締結部材としてのボルトの頭部は前記プレートにより覆われるという技術」といえる。
そして、引用文献1記載の発明においてノックピン27に代えてボルトを用いたときに、ボルトの脱落防止や外観上の見栄えの向上という一般的課題のために、引用文献2記載の技術を採用し、相違点2に係る本願発明のようにすることは、当業者が容易に推考し得たものである。

また、本願発明を全体として検討しても、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏すると認めることはできない。

なお、審判請求人は、平成23年12月22日付けの意見書において、引用文献1記載の発明におけるノックピン27と引用文献2記載の技術におけるボルト37は、取り付け方向が異なっており、取り付け方向が異なる2つを組み合わせることには発想の飛躍がある旨、及び引用文献1記載の発明において、ノックピン27に代えて引用文献2記載の技術におけるボルトを用いた場合には、ノックピン26によるフロントプレート4とシューハウジング3との接続が不可能になる旨を主張している。
しかし、上記相違点2に対する判断に記したように、引用文献2記載の技術は、ハウジング84とドリブンギヤ82をカムと反対の側から締結するボルト37と、フロントプレート81とハウジング84とを接続するボルト38とを用いるものであり、引用文献1記載の発明において、ボルトの脱落防止や外観上の見栄えの向上という一般的課題のために、引用文献2記載の技術を採用し、相違点2に係る本願発明のようにすることに何ら困難性は見いだせない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-30 
結審通知日 2012-01-31 
審決日 2012-02-13 
出願番号 特願2001-120139(P2001-120139)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 敏行  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 中川 隆司
川口 真一
発明の名称 弁開閉時期制御装置  

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