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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04D
管理番号 1254854
審判番号 不服2010-28668  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-20 
確定日 2012-04-05 
事件の表示 特願2006-202103「機械式固定用防水シート材及び防水構造」拒絶査定不服審判事件〔平成20年2月7日出願公開、特開2008-25306〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成18年7月25日の出願であって,平成22年9月17日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
その後,平成23年10月21日付けで,当審において拒絶理由を通知したところ,同年12月19日付けで,意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成23年12月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「非透水性シート材の端部から離れた中間部の裏面側に固定用部材を一体化してなり、前記非透水性シート材は、隣接する非透水性シート材同士と重合して接着することができ、前記固定用部材は、少なくとも一端が前記非透水性シート材とは非接着の状態にあり、残る部分は接着状態にあることを特徴とする機械式固定用防水シート材。」(以下,「本願発明」という。)


第3 引用刊行物
(1)刊行物1
当審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開2002-339698号公報(以下,「刊行物1」という。)には,次の記載がある。(下線は,当審にて付与。)
(1a)「【0016】
【発明の実施の形態及び実施例】以下、本発明について図面を参照してより詳細に説明する。図1は、本発明の防水シートの一構成例を説明する防水シート1の断面図である。
【0017】防水シート1は、不透水性シート2の一面(施工壁側の面)に透水性シート3がこれら両シート2,3の長さ方向両側端部、即ち、不透水性シート2の一側端部2aと透水性シート3の一側端部3a、不透水性シート2の他方の側端部2bと透水性シート3の他方の側端部3bが互いに遊離状態となるように部分的に接着されている。なお、両シート2,3の接着は、両シート2,3の長さ方向両側端部が互いに遊離状態となっていればよく、他の部分は全面接着されていてもよい。
【0018】そして、不透水性シート2の一側端部2aは、他方の側端部2b、透水性シート3の一側端部3a,他方の側端部3bに比べて短くなっており、その透水性シート側の面には、不透水性の伸長シート4の一端部が固着されていると共に、伸長シート4の他端側が自由端部4aとして構成され、この場合、伸長シート4は、その他端部(自由端部)4aが透水性シート3の一側端部3aより外側方に若干延出されるように形成されている。なお、本発明の場合、防水シートの一方の側端部だけに伸長シートを取り付けても効果があるが、両側に取り付けると、より効果的である。
【0019】一方、透水性シート3の他面(不透水性シート2に対する反対面)の幅方向略中央部には、透水性の固定用テープ5の一端部が固着されていると共に、固定用テープ5の他端側が自由端部5aとして構成されている。」

(1b)「【0029】次に、この防水シート1を利用した本発明のトンネルの防水施工方法の一構成例を図2,3を用いて説明すると、まず、図2に示すように、AGF工法を施工した地山に打設され、トンネルの長さ方向に傾斜、段差が生じた一次覆工コンクリート6面に一の防水シート1をその透水性シート3が一次覆工コンクリート6に対向すると共に、伸長シート4が固着した一側端部2aが一次覆工コンクリート6面になじみ、且つ他方の側端部2bにタルミが生じるようにトンネルの周方向に沿って展張し、透水性シート3の他方の側端部3b、固定用テープ5の自由端部5aにコンクリート釘(固定部材)7を打ち込んで透水性シート3の他方の側端部3b、固定用テープ5の自由端部5aをそれぞれ一次覆工コンクリート6に固定する。」

(1c)「【0030】次に、他の防水シート1を他方の側端部2bが一の防水シート1の一側端部2aに隣接するようにタルミを持たせて展張し、一の防水シート1の透水性シート3の一側端部3aと他の防水シート1の透水性シート3の他方の側端部3bとを重ね合わせ、これらと他の防水シート1の固定用テープ5の自由端部5aをそれぞれコンクリート釘7によって一次覆工コンクリート6に固定して、他の防水シート1をトンネルの周方向に沿って張設する。そして、一の防水シート1の伸長シート4の遊離端部4aを他の防水シート1の他方の側端部2bの長さと同程度となるようにシートの長さ方向に伸ばしながら、他の防水シート1の不透水性シート2の他方の側端部2bに合掌させ、この合掌部を熱接着する。」

上記記載事項(1a)ないし(1c)及び図面の記載から,刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。
「不透水性シート2の一面(施工壁側の面)に透水性シート3が接着され,該透水性シート3の不透水性シート2に対する反対面の幅方向略中央部に固定用テープ5の一端部が固着されており,固定用テープ5の他端側は自由端部として構成されている防水シート1。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(2)刊行物2
当審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開平6-49960号公報(以下,「刊行物2」という。)には,次の記載がある。(下線は当審にて付与。)
(2a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建物の屋根やバルコニー等に敷設される防水シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば、家屋の屋根やバルコニーの下地には、この下地から家屋室内への雨水等の侵入を防止するために防水シートが敷設されている。
【0003】このような防水シートとしては、・・・シート部材の隣接した端部同士が重合され、その重合された端部の縁部とこの縁部に対向した端部とが接合されたものが知られている。」

(2b)「【0013】図1に示したように、シート部材12の一方の端部12aはシート部材11の一方の端部11aと重合され、且つ、シート部材12の一方の端部12aがシート部材11の一方の端部11aの上方に位置して接合部2を構成している。
【0014】また、シート部材12の一方の端部12aの縁部12bはシート部材11の一方の端部11aに接着、溶着または熱融着等により接合され、シート部材11の一方の端部11aの縁部11bは自由端部とされている。
【0015】この端部11aには、後述の固定手段としてのタッカーTを打ち付けるための代11cが設けられている。図中、符号3はシート部材11の一方の端部11aとシート部材12の一方の端部12aの縁部12bとの接合部分を示す。
【0016】シート部材12の他方の端部12cはシート部材13の一方の端部13aと重合され、且つ、シート部材12の一方の端部12aがシート部材13の一方の端部13aの下方に位置して接合部2を構成している。
【0017】また、シート部材12の他方の端部12cには、シート部材13の一方の端部13aの縁部13bが接着、溶着または熱融着等により接合され、シート部材12の他方の端部12cの縁部12dは自由端部とされている。
【0018】この端部12cには、タッカーTを打ち付けるための代12eが設けられている。図中、符号4はシート部材12の他方の端部12cとシート部材13の一方の端部13aの縁部13bとの接合部分を示す。」

(2c)「【0019】次に、本発明の防水シートSを敷設する場合の固定方法を図2に基づいて説明する。
【0020】先ず、図2(A)に示すように、屋根やバルコニー等の下地5の所定位置にシート部材11及びその一方の端部11aを位置させる。この時、シート部材12,13は作業者が手に持ってめくり上げられた状態となり、しかも、シート部材11の一方の縁部11bはシート部材12の一方の端部12aから離反して下地5に沿っている。また、この状態から、シート部材11の代11cの適宜複数箇所に固定手段としてのタッカーTを図示外の専用工具により打ちつけて下地5にシート部材11を敷設固定する。
【0021】次に、図2(B)に示すように、シート部材12を下地5を覆うように下地5に沿わせ、このシート部材12の一方の端部12aでシート部材11の一方の端部11aとタッカー5を覆い、今度はシート部材12の他方の端部12cをシート部材13の一方の端部13aから離反させて下地5に沿わす。
【0022】この状態から、シート部材12の他方の端部12cに設定された代12eの適宜複数箇所にタッカーTを打ちつけて下地5にシート部材11を敷設固定する。以下、図2(C)に示すように、同様の作業をシート部材13,…と順次繰り返すことにより、防水シートSが下地5に敷設固定される。」

上記記載事項(2a)乃至(2c)及び図面の記載から,刊行物2には,次の発明が記載されているものと認められる。

「隣接するシート部材同士を重合して接着する防水シート。」(以下,「刊行物2記載の発明」という。)

第4 当審の判断
1.本願発明と刊行物1記載の発明との対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「固定用テープ5」及び「防水シート1」は本願発明の「固定用部材」及び「防水シート材」にそれぞれ相当している。
そして,刊行物1記載の発明の「一面に透水性シート3が接着された不透水性シート2」と本願発明の「非透水性シート材」とは,ともに全体として「非透水性機能を有するシート材」として共通しており,それに伴って,刊行物1記載の発明の「不透水性シート2の一面(施工壁側の面)に透水性シート3が接着され,該透水性シート3の不透水性シート2に対する反対面の幅方向略中央部に固定用テープ5の一端部が固着されて」なるという構成と本願発明の「非透水性シート材の端部から離れた中間部の裏面側に固定用部材を一体化して」なるという構成は,ともに「非透水性機能を有するシート材の端部から離れた中間部の裏面側に固定用部材を設けて」なるという構成として共通している。
さらに,刊行物1記載の発明の「固定用テープ5」の「一端部が固着されており,他端側は自由端部」であるという構成は,本願発明の「固定用部材」の「少なくとも一端が非接着の状態にあり,残る部分は接着状態にある」という構成に相当している。

したがって,両者は,以下の点で一致している。
「非透水性機能を有するシート材の端部から離れた中間部の裏面側に固定用部材を設けてなり,前記固定用部材は,少なくとも一端が前記非透水性機能を有するシート材とは非接着の状態にあり,残る部分は接着状態にある防水シート材。」

そして,以下の点で相違している。
(相違点1)
本願発明は,非透水性機能を有するシート材が「非透水性シート材」であって,「非透水性機能を有するシート材の端部から離れた中間部の裏面側に固定用部材を設け」るという構成が,「非透水性シート材の端部から離れた中間部の裏面側に固定用部材が一体化される」構成であるのに対して,刊行物1記載の発明は,非透水性機能を有するシート材が「不透水性シート材の一面に透水性シート3が接着された」ものであって,「非透水性機能を有するシート材の端部から離れた中間部の裏面側に固定用部材を設け」るという構成が,「非透水性シート材の一面(施工壁側の面)に透水性シート3が接着され,該透水性シート3の非透水性シート材に対する反対面の幅方向略中央部に固定用部材の一端部が固着され」る構成である点。

(相違点2)
非透水性機能を有するシート材が,本願発明では,隣接する非透水性機能を有するシート材同士と重合して接着することができるものであるのに対して,刊行物1記載の発明では,隣接する非透水性機能を有するシート材同士と重合して接着するものか否か明らかではない点。

2.相違点についての検討
(1)相違点1について
刊行物1記載の発明の防水シートのように,「不透水性シートと透水性シートを積層した防水シート」は,トンネルの防水施工に使用される防水シートとして,周知であり(例えば,実願昭63-97065号(実開平2-18599号)のマイクロフィルム,特開平9-96195号公報),刊行物1記載の発明は,そのような防水シートを固定するために固定用部材を備えるものであるから,固定用部材が,非透水性シート材の裏面側に接着された透水性シートに固着される構成となっている。
つまり,相違点1は,固定用部材が固着される防水シートの構造が相違することにより生じるものであり,刊行物1記載の発明と本願発明とは,全体として防水機能を有するシート状の部材を固定するための構成として,シート状の部材の裏面中央部に少なくとも一端が非接着の状態にあり,残る部分は接着状態にある固定用部材を設ける点において,相違するものではない。
そして,本願発明のような,非透水性シート材単体より構成され,家屋の屋根やバルコニー等に用いられる防水シートは,刊行物2に開示されているように周知であり,刊行物1記載の発明として開示されている防水機能を有するシート材部材を固定するための構成を,刊行物2に開示されている周知の防水シート材の構成として採用することは,当業者が容易になし得たことである。
それによって,上記相違点1に係る本願発明の構成は当業者により自然と採用される構成である。

(2)相違点2について
刊行物1の記載事項(1c)には,伸長シート4を介してはいるものの,不透水性シート2の端部同士を合掌させ,該合掌部を熱接着することが記載されているし,隣接するシート部材同士を重合して接着する防水シートは,刊行物2記載の発明として開示されているように公知の技術であるから,刊行物1記載の発明の防水シート材に上記刊行物2記載の発明の技術を採用して,相違点2に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が容易になし得たことである。

3.請求人の主張に対して
請求人は,平成23年12月19日付け意見書(2頁30行?3頁17行)において,刊行物1の透水性シート3は,固定用テープ5だけでなく,その端部に直接的にコンクリート釘7を打ち込む構成が採用されているから,刊行物1に記載された固定手段を刊行物2に採用するのであれば,固定用テープ5による固定に加えシートの端部に直接的に釘を打ち込む固定を合わせて適用するのが自然であって,固定用テープ5の構成を刊行物2に適用して,端部を直接固定する方法を採用しない理由はなく,刊行物2の防水シートの固定方法として刊行物1記載の発明を採用して本願発明の構成とすることはできないと主張している。
しかしながら,刊行物1に,シート部材を固定するための構成として,シート部材の裏面に一端が固定され他端を自由端とした「固定用テープ」を備えて固定することが開示されていることは明らかであり,固定用テープによって固定した際には,かならずシートの端部を直接釘等によって固定しなくては,シート部材が固定できないものではないことも当業者にとって自明である。
したがって,刊行物1記載の発明のシート状部材を固定するための構成である,裏面に固定用テープを備えて釘等で固定する固定技術だけを,刊行物2記載の発明のような防水シートの固定技術として採用して本願発明の構成とすることは当業者にとって容易である。
さらに,本願発明が,防水シート材の固定に「固定用部材」による固定手段のみを採用することに格別の技術的な意味も見あたらないし,前記「固定部材による固定」の構成と隣接するシート材同士と重合して接着する構成を採用することによって,当業者が予測できない格別の効果を奏するとも認められない。
以上より,請求人の主張は採用できない。

4.まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,刊行物1記載の発明,刊行物2記載の発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第5 むすび
以上より,本願発明は特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-24 
結審通知日 2012-01-31 
審決日 2012-02-23 
出願番号 特願2006-202103(P2006-202103)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南澤 弘明  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 仁科 雅弘
宮崎 恭
発明の名称 機械式固定用防水シート材及び防水構造  
代理人 加藤 恭介  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 賢三  
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