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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03C
管理番号 1254860
審判番号 不服2011-1799  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-26 
確定日 2012-04-05 
事件の表示 特願2006- 60956「建物用排水システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月20日出願公開、特開2007-239256〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成18年3月7日の出願であって,平成22年10月19日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成23年1月26日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると共に,同時に手続補正がなされた。
その後,平成23年6月16日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年8月22日付けで回答書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成23年1月26日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「建物の上下方向に設けられる排水立て管と、前記排水立て管に接続される排水横枝管と、住戸内に設置される複数の排水器具と、前記複数の排水器具を前記排水横枝管に接続する複数の器具排水管とからなり、前記排水器具からの雑排水及び汚水を、前記器具排水管を介して前記排水横枝管で合流させ、前記排水立て管につないで排水するようにした建物用排水システムであって、前記排水横枝管の全長またはほぼ全長が建物の住戸専用部内に設置されており、前記器具排水管と前記排水横枝管との接続部の全部またはほぼ全部について器具排水管側が所定高さだけ高くなるように、該器具排水管側の接続端部を屈曲させて、鉛直方向の落差を設けることで、前記排水横枝管から前記器具排水管側への逆流を抑えるようにしてあることを特徴とする建物用排水システム。」
(以下,「本願発明」という。)


第3 引用刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2002-129616号公報(以下,「刊行物1」という。)には,以下の記載がある。(下線は,合議体にて付与。)
(1a)「【請求項1】 建物内の合流排水立管と、該合流排水立管に接続する合流排水横枝管と、衛生器具の排水を搬送する排水横枝管とを備える建物内排水管システムにおいて、
前記合流排水横枝管は管外周面に前記排水横枝管を接続する排水合流接続部を有し、かつ前記合流排水横枝管の管断面は卵形状であることを特徴とする建物内排水管システム。」

(1b)「【0004】すなわち、図6に示す第1従来例の建物内排水管システムでは、建物内に複数本の排水立管1A?1Cを立設し、各種衛生器具(大便器5、浴槽6,洗面器7、洗濯機パン8、流し台9)の排水を、それぞれの系統の排水横枝管5A、6A、7A、8A,8C、9Aによって、最寄りの排水立管1A、1B、1Cに対し個々に導く配管方式としており、このような配管方式では、複数本の排水立管1A?1Cを立てることによる配管スペースの無駄やコストの面で大きな問題点となっていた。
【0005】そこで、上記問題点を解決するために、複数の各種衛生器具の器具排水管を1本の合流排水横枝管に合流させて1本の排水立管に接続する建物内排水管システムも開発されており、その従来例を図7および図8に示す。
【0006】図7は第2従来例の建物内排水管システムを示す平面図であり、図6と同一または相当部分には同一符号を付して説明する。図7において、1は例えば集合住宅などの建物に配管された合流排水立管、2はその合流排水立管1に設けられた合流排水立管継手、3はその合流排水立管継手2を介して前記合流排水立管1に接続された合流排水横枝管であり、この合流排水横枝管3は断面円形の中空管からなっている。その合流排水横枝管3には、大便器5,浴槽6,洗面器7,洗濯機パン8,流し台9などの各種衛生器具の器具排水管である排水横枝管5A,6A,7A,8A,9Aが合流排水横枝管継手4を介して接続されている。10は通気立管、11はその通気立管10と前記合流排水横枝管3とを接続するループ通気管である。
【0007】図8は図7の建物内排水管システムの配管施工部を示す概略的な断面図であり、図6および図7と同一または相当部分には同一符号を付して説明する。図8において、12は例えば集合住宅などの建物に設けられているパイプシャフトであり、このパイプシャフト12内に前記合流排水立管1と通気立管10が配管されている。13は住戸内の床側(下階側)コンクリートスラブ、14は仕上げ床、15はその仕上げ床14と前記床側コンクリートスラブ13との間に設けられた床側配管スペースであり、この床側配管スペース15に前記合流排水横枝管3が配管されている。ここで、前記合流排水横枝管3は、各種衛生器具5?9からの排水を合流排水立管1に向って自然流下させるために、合流排水立管継手2側に漸次下降傾斜する勾配をつけて前記床側配管スペース15に配管されている。」

(1c)「【0011】一方、排水横枝管内の排水を上流から下流へ自然流下させるには、前述の管径に見合った下り勾配を設けることのほかに、衛生器具から合流排水立管との接続部までの間の排水管で、その管内下部に排水流域(排水層)が、かつ、管内上部には通気流域(空気層)が、お互いに管内の流れに支障を来さない状態で形成されるようにする必要がある。しかし、排水管の曲がり部では排水層・空気層の流れが乱れやすくなる。特に、他の衛生器具からの排水の合流部においては、流れが乱れるだけでなく、排水量が増大することによる一時的な排水管の満流状態も生じやすく空気層の流れが阻害されやすくなる。
【0012】排水横枝管内において、空気層の流れが阻害されると、空気層が異常正圧状態である部分では、最寄りの衛生器具のトラップ内封水を押し出して衛生器具の排水口から吹き出させてトラップを破封させる跳ね出し現象が起こる。また、空気層が異常負圧状態である部分では、最寄りの衛生器具のトラップ内封水を吸引してトラップを破封させる吸引現象が生じそれぞれ大きな問題となる。」

(1d)「【0021】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1による建物内排水管システムの配管構成を示す平面図であり、図6?図8と同一または相当部分には同一符号を付して重複説明を省略する。また、図2は図1中の合流排水横枝管と排水横枝管(器具排水管)との接続部分を示す拡大図、図3は図2のA-A線断面図である。図1?図3において、30は図8中の床側配管スペース15に一点鎖線で示すように配管される1本の合流排水横枝管であり、この合流排水横枝管30は後述する排水合流接続部40を有しており、この排水合流接続部40に各種衛生器具(大便器5,浴槽6,洗面器7,洗濯機パン8,流し台9)からの排水横枝管5A?9Aが接続されている。」

これら記載事項(1a)?(1d)及び図面の記載からみて,刊行物1には,図7に示す従来例として,以下の発明が記載されているものと認められる。

「集合住宅などの建物に配管された合流排水立管と,該合流排水立管に接続された合流排水横枝管と,各種衛生器具を合流排水横枝管3に接続する排水横枝管とからなり,各種衛生器具からの排水を,排水横枝管を介して合流排水横枝管で合流させ,合流排水立管に向って自然流下させて排水する建物内排水管システム。」
(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,実用新案登録第2527833号公報(以下,「刊行物2」という。)には,図面と共に,以下の記載がある。(下線は,合議体にて付与。)
(2a)「【請求項1】複数層建築物に、各階の排水器具(1)に連結される立排水管(3)が複数配管され、各立排水管(3)の下端からそれぞれ横方向に延出する横排水枝管(8)が、横排水主管(9)に連結され、横排水枝管(8)と横排水主管(9)とは、下流に向かうに従い下方に向かうよう傾斜配管されている排水管装置における横排水管の合流構造において、
横排水枝管(8)の横排水主管(9)との連結部(18)の水平に対する傾斜勾配が、横排水主管(9)の水平に対する傾斜勾配、及び、この連結部(18)よりも上流の横排水枝管(8)の水平に対する傾斜勾配よりも大きくされ、且つ、前記連結部(18)の横排水主管(9)との連結口(19)は、前記横排水主管(9)の頂部を除く側面に位置していることを特徴とする排水管装置における横排水管の合流構造。」(実用新案登録請求の範囲)

(2b)「(考案が解決しようとする課題)
横排水枝管8や横排水主管9の傾斜勾配は、配管スペースの制約があるため、一般に管径(mm)の逆数を目安として定められ、例えば内径125mm横排水枝管では1/125の勾配とされ、例えば内径150mm横排水枝管では1/150の勾配とされ、通常は1/100?1/120の範囲の小さなものとされる。そのため、横排水主管9や横排水枝管8での排水の流れは比較的緩やかである。
上記のような排水管装置では、横排水主管9内を流れる排水に、横排水枝管8内の排水が合流する際に、横排水枝管8からの排水の一部が、横排水主管9の上流側に逆流する現象を生じる。そうすると、その合流部分の下流側では第8図のように、排水の水面14の上方に通気空間15は存するが、その合流部分の上流側では第7図に示すように通気空気15が非常に小さくなったり、あるいは管内がすべて排水で満たされて通気空間がなくなったり小さくなると、その部分から上流では、排水器具1からの排水流下時に、排水管自体の通気管としての機能が阻害され、管内圧力が上昇し、排水器具1の排水トラップが破れるといった問題が生じる。」(3欄15?35行)

(2c)「(考案の作用及び効果)
本考案によれば、横排水枝管8の排水は、連結部18で増速されるので、下流方向に向かう勢いが大きく、横排水主管9内の排水と合流する際に上流側に逆流するのが防止されている。また、前記連結部18の横排水主管9との連結口19は、前記前記横排水主管9の頂部を除く側面に位置しているので、これにより、横排水主管9内の通気空間がなくなったり小さくなることはなく、排水時の管内圧力の上昇を防止することができる。
(実施例)
以下、本考案の実施例を図面を参照して説明する。なお、排水管装置の全体構成は第3図、第4図に示したものと同様であるので、第5図、第6図に示した従来例との相違点のみ説明する。
第1図及び第2図において、横排水主管9と横排水枝管8とは継手管16を介して連結されている。この継手管16は、横排水主管9の一部となる主管部17と、主管部17から一体的に側方に延出されて横排水枝管8の一部となる連結部18とで形成されている。すなわち、主管部17の両端部は接続部17a,17bとされ、横排水主管9を構成する真直管9aに連結される。また、連結部18の端部は接続部18aとされ、横排水枝管8を構成する真直管8aと連結される。 そして、継手管16の連結部の傾斜勾配は、横排水主管9の下流(第1図中右方)に向かうに従い下方に向かう傾斜勾配よりも大きくされ、かつ、横排水枝管8の下流に向かうに従い下方に向かい傾斜勾配よりも大きくされていて、約1/1(45°)とされている。 これにより、排水は連結部18で増速され、下流に向かう勢いが強くなり、横排水主管9内で上流に逆流するのが防止される。」(4欄5?35行)
上記記載事項(2a)?(2c)及び図面の記載から見て,刊行物2には,以下の発明が記載されているものと認められる。
「横排水主管に対して,複数の横排水枝管を合流させてまとめて排水するに際して,横排水枝管の排水が合流する際に,横排水枝管からの排水の一部が,横排水主管の上流側に逆流し,その合流部分の上流側での排水管自体の通気管としての機能が阻害されることによって排水器具の排水トラップが破れるといった問題を解決するために,横排水主管と横排水枝管とを下に向かい大きい傾斜勾配を有する連結部により連結してなる排水システム。」

(3)刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2001-254413号公報(以下,「刊行物3」という。)には,以下の記載がある。(下線は,合議体にて付与。)
(3a)「【0009】
【発明の実施の形態】この発明の一実施形態を図1?図6、および図9,図10と共に説明する。まず、図9,図10と共に概略構成を説明する。この集合住宅の配管構造は、複数階の集合住宅において、建物躯体1に、互いに上下階に並ぶ複数の住戸2に沿って、各階部分F1?Fnを貫通した竪配管スペース3を、共用廊下等の共用部分30に設ける。各住戸2の床スラブ4に、この床スラブ4の下面に梁状に張り出して上面が溝状の配管ピットとなるピット形成部6を設ける。ピット形成部6は、水廻り設備の設置部31の近傍から竪配管スペース3に延びて設ける。建物躯体1は、例えば鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造とされるが、鉄骨造であっても、これらが併用された構造であっても良い。図示の例では、各階部分F1?Fnに複数の住戸2が一列に並んで設けられて、これら複数の住戸2に沿って、共用廊下が設けられたものとされている。共用廊下となる共有部分30は、建物躯体1の片面に設けられ、他の片面にはバルコニー32が設けられている。」

(3b)「【0012】図1?図3に示すように、配管ピット5内には、竪配管スペース3に設置された設備配管の竪管15a,16aと、各衛生設備(浴槽7,洗い場8,洗面器具9,流し台10,便器11等)とに接続される横引き配管15b,16bが設けられる。ここでは、設備配管の中で管径の大きい配管である排水管15および汚水管16の横引き配管15b,16bが、配管ピット5内に設置される。排水管15の横引き配管15bは、浴槽7,洗い場8,洗面器具9および流し台10に接続される。汚水管16の横引き配管16bは便器11に接続される。」

(3c)「【0015】この集合住宅の配管構造によると、設備配管の一部である管径の大きい排水管15および汚水管16の横引き配管15b,16bが、上下階に並ぶ複数の住戸2の共用部分である竪配管スペース3での竪管15a,16aから延びて、前記配管ピット5内に設けられ、その配管ピット5に蓋18が設けられる。そのため、これらの配管のメンテナンスは、自分の住戸2内の配管ピット5の蓋18を開いて行うことができ、従来の場合のような別の住人の住戸2内での工事は不要となる。また、配管ピット5となるピット形成部6は、床スラブ4の下面に梁状に張り出すだけであるため、階高を高くしないで済ませることができる。例えば、2750mm程度の階高としても十分であり、二重床とする場合の3000mm以上の階高の場合に比べて、同じ建物高さでも階数を多くとることができ、また低コストで済む。」


第4 当審の判断
1.本願発明と刊行物1記載の発明との対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,
刊行物1記載の発明の「建物内排水管システム」は,本願発明の「建物用排水システム」に相当しており,以下同様に,
「合流排水立管」は,「排水立て管」に,
「合流排水横枝管」は,「排水横枝管」に,
「各種衛生器具」は,補正発明の「複数の排水器具」に,
「排水横枝管」は,「器具排水管」に,
それぞれ相当している。

したがって,両者は,以下の点で一致している。
「建物の上下方向に設けられる排水立て管と、前記排水立て管に接続される排水横枝管と、住戸内に設置される複数の排水器具と、前記複数の排水器具を前記排水横枝管に接続する複数の器具排水管とからなり、前記排水器具からの雑排水及び汚水を、前記器具排水管を介して前記排水横枝管で合流させ、前記排水立て管につないで排水するようにした建物用排水システム。」

そして,以下の点で相違している。
(相違点1)
本願発明は,排水横枝管の全長またはほぼ全長が建物の住戸専用部内に設置されているのに対して,刊行物1記載の発明は,排水横枝管の全長またはほぼ全長が建物の住戸専用部内に設置されているか否かは明確ではない点。

(相違点2)
本願発明は,器具排水管と排水横枝管との接続部の全部またはほぼ全部について器具排水管側が所定高さだけ高くなるように,該器具排水管側の接続端部を屈曲させて,鉛直方向の落差を設けることで,前記排水横枝管から前記器具排水管側への逆流を抑えるようにしてあるのに対して,刊行物1記載の発明は,そのようになっていない点。

2.相違点についての判断
(相違点1について)
刊行物3の記載事項(3a)?(3c)及び図面の記載から,刊行物3には,浴槽7,洗い場8,洗面器具9および流し台10や便器11からの排水や汚水を竪管15a,16aに運ぶ横引き配管15b,16bの全長またはほぼ全長が建物の住戸専用部内に設置されていることが記載されており,上記相違点1に係る本願発明の構成は,公知である。
そして,該技術を,刊行物1記載の発明に採用することは,当業者が適宜なしうる設計事項に過ぎない。

(相違点2について)
本願発明や刊行物1記載の発明の「排水横枝管」及び「器具排水管」に直接相当するものではないが,横排水主管に対して複数の横排水枝管を合流させる排水システムにおいて,合流によって発生する逆流や空気層の流れが阻害される問題を解決するための技術として,横排水主管と横排水枝管とを下に向かい大きい傾斜勾配を有する連結部により連結する技術は,刊行物2記載の発明として開示されており,本願発明の「器具排水管側が所定高さだけ高くなるように,該器具排水管側の接続端部を屈曲させて,鉛直方向の落差を設ける」構成の基本的な技術思想は公知である。
そして,記載事項(1c)にあるように,刊行物1において,排水横枝管と器具排水管との合流部においては,空気層の流れが阻害されやすいという問題点は認識されているのであるから,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明の上記技術思想を採用することは当業者が容易になし得たことであり,それによって,排水横枝管から器具排水管への逆流がおさえられるようになることは,当業者にとって自明である。

なお,請求人は,刊行物1記載の発明は,断面形状を卵形状として,排水能力を高めようとするものであり,「落差」に相当する構成は必要としておらず,「落差」に相当する構成を組み合わせることは想定されていない旨主張している。
しかしながら,刊行物1に,「集合住宅などの建物に配管された合流排水立管と,該合流排水立管に接続された合流排水横枝管と,各種衛生器具を合流排水横枝管3に接続する排水横枝管とからなり,各種衛生器具からの排水を,排水横枝管を介して合流排水横枝管で合流させ,合流排水立管に向って自然流下させて排水する建物内排水管システム。」の発明が記載されていることには誤りはない。
そして,刊行物1においては,上記問題点を解決するための手段として,排水管の断面形状を卵形状とすることが記載されているが,上記問題点を解決するための技術として刊行物2記載の発明が公知であれば,排水管の断面形状を卵形状とすることに代えて刊行物2記載の発明の技術を採用することが当業者にとって思い付かないことであるとも認められないし,また,排水管の断面形状が卵形状であることによって「段差」を設けることが不可能となるものでもないから,上記刊行物1記載の発明の建物用排水管システムに上記問題点を解決するための技術である刊行物2記載の発明を採用することは当業者にとって容易である。
したがって,上記請求人の主張は採用できない。

4.本願発明の効果について
本願発明の,他の器具排水管への逆流や排水トラップにおける封水切れのないスムーズな流れが形成されるという効果は,器具排水管から排水横枝管への合流部分に落差を設けるという構成から当業者が容易に予測できる効果に過ぎず,刊行物1,2記載の発明から予測できるものであり,何ら格別の効果ではない。

5.まとめ
以上より,本願発明は,刊行物1,2記載の発明及び刊行物3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび
以上のとおり,本願発明は特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-24 
結審通知日 2012-01-31 
審決日 2012-02-23 
出願番号 特願2006-60956(P2006-60956)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 家田 政明鈴木 秀幹神崎 共哉伊藤 昌哉  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 宮崎 恭
土屋 真理子
発明の名称 建物用排水システム  
代理人 久門 享  
代理人 久門 保子  

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