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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01L |
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管理番号 | 1254865 |
審判番号 | 不服2011-5100 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-03-07 |
確定日 | 2012-04-05 |
事件の表示 | 特願2006- 68936「内燃機関のバルブリフタ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月27日出願公開、特開2007-247449〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年3月14日の出願であって、平成22年5月25日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成22年8月2日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成22年12月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年3月7日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、平成22年8月2日付けで提出された手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「カムによって押圧されてバルブを開閉する内燃機関に回転可能に設けられたバルブリフタであって、 バルブリフタの冠面の下面から隆起し、バルブステムに当接するボス部と、 前記ボス部を貫通せずに、バルブリフタの回転に伴って特定される、前記バルブを実質的に開弁すべく前記カムから大きな押圧力が加わるバルブリフタ外周側のカムの押圧領域よりも内周側のバルブリフタ冠面を貫通する孔部と、 を有することを特徴とする内燃機関のバルブリフタ。」 第3 引用文献 1 引用文献の記載 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に出願公開された特開2005-232974号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次の記載がある。(なお、下線は、理解の一助のため当審において付したものである。) (a)「【0001】 本発明は、内燃機関の動弁装置、とりわけ揺動カムや機関弁及びこれらの周りの摺動部の潤滑性能を向上させることのできる内燃機関の動弁装置に関する。」(段落【0001】) (b)「【0010】 本発明は、前記従来の動弁装置の実情に鑑みて案出されたもので、請求項1に記載の発明は、駆動軸と一体に回転駆動し、軸心が駆動軸の軸心に対して偏心して設けられた駆動カムと、該駆動カムの外周面全体を回転自在に嵌合保持する嵌合孔を有し、前記駆動カムの回転を揺動力に変換するリンクアームと、前記駆動カムの両側に前記駆動軸を中心に揺動自在に設けられ、前記リンクアームを含む伝達機構を介して揺動する一対の揺動カムと、各揺動カムにそれぞれ当接しつつ該揺動カムの揺動力により支点を中心に揺動して対応する機関弁を開閉作動させる一対のスウィングアームと、前記各機関弁にそれぞれ設けられたスプリングリテーナと、該各スプリングリテーナに弾持されて前記各機関弁を閉方向に付勢する一対のバルブスプリングと、前記駆動軸の内部から前記駆動カムと前記リンクアームの嵌合孔との間の摺動隙間に向けて形成された潤滑油供給通路とを備えたことを特徴としている。」(段落【0010】) (c)「【0021】 以下、本発明に係る内燃機関の動弁装置の各実施形態を図面に基づいて詳述する。この実施形態の動弁装置は、1気筒あたり2つの吸気弁を備えかつ該各吸気弁のバルブリフト量を機関運転状態に応じて可変にする可変機構を備えた多気筒内燃機関に適用されている。 【0022】 すなわち、この動弁装置は、図1?図5に示すように、シリンダヘッド1に図外のバルブガイドを介して摺動自在に設けられた機関弁である一対の吸気弁2,2と、機関前後方向に配置された内部中空状の駆動軸3と、該駆動軸3の各気筒に対応する位置にそれぞれ1つずつ設けられた駆動カム4と、前記駆動軸3に揺動自在に支持されつつ駆動カム4を中心として左右対称位置に配置され、一対のスウィングアーム6,6を介して前記各吸気弁2,2を開作動させる一対の揺動カム5,5と、駆動カム4と揺動カム5,5との間に連係されて、駆動カム4の回転力を揺動カム5,5の揺動力(開弁力)として伝達する伝達機構7と、該伝達機構7の作動位置を可変にして吸気弁2,2のバルブリフト量を変化させる可変機構8とを備えている。 【0023】 前記吸気弁2,2は、前記バルブステム2a、2aの上端部(ステムエンド)にコッタを介して円板状のスプリングリテーナ9,9が固定されていると共に、該スプリングリテーナ9,9とシリンダヘッド1の上端部内に形成された図外の収容孔の底部との間に弾持されたバルブスプリング10,10によって閉方向に付勢されている。 【0024】 また、前記各スプリングリテーナ9は、後述する駆動カム4側から滴下される潤滑油の受け部材として機能し、その外径が各バルブスプリング10の外径よりも僅かに小さく形成されている。さらに、前記各バルブスプリング10,10も潤滑油受け部材として機能するようになっている。 【0025】 前記駆動軸3は、機関前後方向に沿って配置されて、両端部がシリンダヘッド1の上部に各気筒毎に設けられた複数の軸受(図示せず)によって回転自在に軸支されていると共に、一端部に設けられた図外の従動スプロケットや該従動スプロケットに巻装されたタイミングチェーン等を介して機関のクランク軸から回転力が伝達されている。 【0026】 前記駆動カム4は、ほぼ円板状に形成されて、各気筒毎に1つずつ駆動軸3に一体に成形されていると共に、中心Yが駆動軸3の軸心Xから偏心した位置に設けられて、外周面4aが偏心円のカムプロフィールに形成されている。 【0027】 前記各揺動カム5は、図4にも示すように同一形状のほぼ雨滴状を呈し、基端部5a側がカムシャフト4を介して前記駆動軸3の軸心Xを中心として揺動するようになっていると共に、下面には横断面半円弧状のカム面5bがそれぞれ形成され、このカム面5bは、最小リフト側となる基端部5aから最大リフト側となるカムノーズ部5c側に延びて、カムノーズ部5cの先端側に有する最大リフトの頂面に連なっており、該カム面5bがスウィングアーム6の後述するローラの外面に当接するようになっている。 【0028】 また、前記基端部5aは、駆動軸3に対して半割状に上下に分割形成されて、該各分割部が前後のボルト50、50によって上下方向から結合されて、結合された状態でそれぞれの半円弧状の内面が駆動軸3の外周面に摺動する円形面になっている。」(段落【0021】ないし【0028】) (d)「【0050】 以下、本実施形態における可変機構の作動を簡単に説明すれば、低リフト制御時には、コントローラからの制御信号によって電動アクチュエータを介して制御軸26が一方向へ回転駆動される。このため、制御カム27は、図9A、Bに示すように、肉厚部が制御軸26に対して図示の右方向へ回動して、かかる回動角度位置に保持される。これにより、ロッカアーム20の各第2アーム20b、20b側が上方向へ回動する。このため、各揺動カム5、5は、各リンクロッド22、22を介してカムノーズ部5c、5c側が強制的に引き上げられて全体が図9Aに示すように、時計方向の回動位置に保持される。 【0051】 したがって、駆動カム4が回転してリンクアーム21がロッカアーム20の第1アーム部20aを押し上げると、図9Bに示すように、そのリフト力がリンクロッド22を介して揺動カム5及びローラ12を介してスウィングアーム6に伝達される。したがって、このスウィングアーム6が、凹部6bを介してピボット11のプランジャ頭部16aを中心に揺動して、一端部の当接部6aで各吸気弁2のバルブステム2aを開弁方向へ押圧するが、そのリフト量は十分小さくなる。 【0052】 つまり、吸気弁2,2は、図11に示すように、そのバルブリフト量L1が小さくなると共に、開時期が遅くなり、排気弁とのバルブオーバラップが小さくなる。このため、例えば低負荷域の燃費の向上と機関の安定した回転が得られる。 【0053】 一方、高リフト制御時は、コントローラからの制御信号によって電動アクチュエータにより制御軸26が他方向へ回転駆動される。したがって、制御軸26が、図10A、Bに示すように、制御カム27を所定回転角度位置まで回転させ、肉厚部を下方向へ移動させる。 【0054】 このため、ロッカアーム20の第2アーム部20b側が下方へ移動して揺動カム5のカムノーズ部5cを、リンクロッド22を介して下方へ押圧して該揺動カム5全体が図10Bに示す反時計方向への回動位置に保持される。したがって、各揺動カム5の各スウィングアーム6のローラに対する各カム面5bの当接位置がカムノーズ部5c側に移動する。 【0055】 したがって、駆動カム4が回転してロッカアーム20の第1アーム部20aをリンクアーム21を介して押し上げる一方、他端部20bがリンクロッド22押し下げると、各揺動カム5は、図10Bに示すように、カムノーズ部5cの先端域でローラ12を押し下げることからスウィングアーム6の揺動量も大きくなる。 【0056】 よって、各吸気弁2は、図11に示すように、そのバルブリフト量L2が大きくなって、開時期が早くなると共に、閉時期が遅くなる。この結果、例えば、高負荷域における吸気充填効率が向上し、十分な出力が確保できる。 【0057】 なお、前記可変機構8による吸気弁2,2の大小バルブリフト量の制御は、図11に示すように、機関運転状態の変化に応じて零及び微小リフトから最大リフトまで連続的に変化させることができるようになっている。」(段落【0050】ないし【0057】) (e)「【0109】 図19及び図20は第6の実施形態を示し、駆動カム4やリンクアーム21などの基本構成は第4の実施形態と同一であるが、異なるところは、各揺動カム5,5の当接対象を各スウィングアームに代えてバルブリフタ41,41としたものである。 【0110】 この各バルブリフタ41,41は、ほぼ有底円筒状に形成され、シリンダヘッド1の上部に形成されたボア1b、1bに摺動自在に設けられていると共に、冠部41a、41aの下面中央の突部41b、41bに前記バルブステム2aの上端縁が当接している。また、冠部41a、41aの所定位置に油孔41cが貫通形成されている。 【0111】 また、リンクアーム21は、円環部21aの幅長Wが隣接する両バルブリフタ41,41の一部にオーバーラップする大きさに設定されていると共に、内部の駆動カム4の幅長W1よりも大きく設定されている。 【0112】 したがって、第1油通路28から連通路を通って駆動カム4の外周面4aと嵌合孔21cとの摺動隙間Cに流入した潤滑油は、該摺動面を潤滑した後に、駆動カム4の回転駆動とリンクアーム21の揺動によって放射方向に飛散して、前記各バルブリフタ41,41の冠部41a上面などに付着する。 【0113】 さらに、この付着した潤滑油は、冠部41a上面を伝ってボア1cの内周面とバルブリフタ41の外周面との間の微小隙間S内に流下して該両者1c、41間を潤滑する。また、油孔41b(審決注;「油孔41c」の誤記と認める。)からバルブリフタ41,41内のスプリングリテーナ9,9やバルブスプリング10,10に滴下する。したがって、バルブステム2aの上端縁と突部41bとの間を効果的に潤滑する。 【0114】 また、リンクアーム21の嵌合孔21cの両側縁に潤滑油が一旦貯留されることから、前記各摺動部には比較的多くの潤滑油を供給することができる。」(段落【0109】ないし【0114】) (f)「【図面の簡単な説明】 【0185】 【図1】本実施形態の動弁装置を展開して示す断面図である。 【図2】本実施形態の動弁装置の前方斜視図である。 【図3】本実施形態の動弁装置の後方斜視図である。 【図4】本実施形態の動弁装置を示す側断面図である。 【図5】本実施形態の動弁装置の正面図である。 【図6】本実施形態に供されるスウィングアームとスプリングリテーナの配置状態を示す平面図である。 【図7】本実施形態に供されるスウィングアームを示し、Aはその平面図、Bは側面図、Cは底面図、DはAのA-A線断面図である。 【図8】本実施形態に供される油圧ラッシアジャスタの縦断面図である。 【図9】Aは本実施形態の動弁装置による小リフト制御時における吸気弁の閉作動状態を示す作用説明図、Bは同小リフト制御時における吸気弁の開作動状態を示す作用説明である。 【図10】Aは本実施形態の動弁装置による最大リフト制御時における吸気弁の閉作動状態を示す作用説明図、Bは同最大リフト制御時における吸気弁の開作動状態を示す作用説明である。 【図11】可変機構による吸気弁のバルブリフト制御特性図である。 【図12】本発明の第2の実施形態における動弁装置の側断面図である。 【図13】同第2の実施形態における動弁装置を展開して示す断面図である。 【図14】第3の実施形態における動弁装置の側断面図である。 【図15】第4の実施形態における動弁装置の側断面図である。 【図16】同実施形態に供されるリンクアームとスプリングリテーナの配置状態を示す平面図である。 【図17】第5の実施形態における動弁装置の側断面図である。 【図18】同実施形態に供されるカムに対するスプリングリテーナの配置状態を示す平面図である。 【図19】第6の実施形態における動弁装置の側断面図である。 【図20】同実施形態に供されるリンクアームに対するバルブリフタの配置状態を示す平面図である。 【符号の説明】 【0186】 1…シリンダヘッド 2…吸気弁 3…駆動軸 4…駆動カム 4a…外周面 5…揺動カム 6…スウィングアーム 7…伝達機構 8…可変機構 9…スプリングリテーナ(潤滑油受け部材) 10…バルブスプリング(潤滑油受け部材) 20…ロッカアーム 20a…第1アーム部 20b…第2アーム部 21…リンクアーム 21c…嵌合孔 22…リンクロッド 28…第1油通路 29…連通路 30…第2油通路 31…直径方向孔 C…摺動隙間」(【図面の簡単な説明】及び【符号の説明】) 2 引用文献に記載された事項 上記1(a)ないし(f)及び図面の記載を参酌すれば、引用文献には以下の事項が記載されていることが分かる。 (ア)上記1(a)ないし(f)及び図面(特に図19及び20を参照。)の記載から、引用文献には、揺動カム5によって押圧されて吸気弁2を開閉する内燃機関に設けられたバルブリフタ41が記載されていることが分かる。また、このようなバルブリフタ41が偏摩耗を防止するために回転可能に設けられていることは、技術常識(参考文献として、特開平4-318210号公報(例えば段落【0015】を参照)、実願平5-29136号(実開平6-87605号)のCD-ROM(例えば段落【0009】及び図面を参照。)、特開2000-230409号公報(例えば段落【0046】、【0047】、【0055】等を参照。)、特開2006-57637号公報(2006年3月2日公開。例えば段落【0029】を参照。))であり、引用文献に記載されているバルブリフタ41も、内燃機関に回転可能に設けられているものと認められる。 (イ)上記1(a)ないし(f)及び図面の記載から、引用文献に記載されたバルブリフタ41は、バルブリフタ41の冠部41aの下面から隆起し、バルブステム2aに当接する突部41bと、前記突部41bを貫通せずに、バルブリフタ41冠部41aを貫通する油孔41cとを有していることが分かる。 (ウ)上記1(e)及び2(ア)並びに図面(特に図19を参照。)の記載から、引用文献に記載されたバルブリフタ41の油孔41cは、図19におけるバルブリフタの回転に伴って特定される、バルブリフタ外周側の揺動カム5の押圧領域よりも内周側のバルブリフタ冠部41aを貫通していることが分かる。 3 引用発明 (1)上記1(a)ないし(f)及び2(ア)ないし(ウ)並びに図面の記載を総合すると、引用文献には以下の発明が記載されているといえる。 「揺動カム5によって押圧されて吸気弁2を開閉する内燃機関に回転可能に設けられたバルブリフタ41であって、 バルブリフタ41の冠部41aの下面から隆起し、バルブステム2aに当接する突部41bと、 前記突部41bを貫通せずに、バルブリフタ41の回転に伴って特定される、バルブリフタ41外周側の揺動カム5の押圧領域よりも内周側のバルブリフタ冠部41aを貫通する油孔41cと、 を有する、内燃機関のバルブリフタ。」(以下、「引用発明」という。) (2)対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「揺動カム5」は、その技術的意義からみて、本願発明における「カム」に相当し、以下同様に、「吸気弁2」は「バルブ」に、「バルブリフタ41」は「バルブリフタ」に、「バルブリフタ41の冠部41a」は「バルブリフタの冠面」に、「バルブステム2a」は「バルブステム」に、「突部41b」は「ボス部」に、「油孔41c」は「孔部」に各々相当するから、本願発明と引用発明とは、 「カムによって押圧されてバルブを開閉する内燃機関に回転可能に設けられたバルブリフタであって、 バルブリフタの冠面の下面から隆起し、バルブステムに当接するボス部と、 前記ボス部を貫通せずに、バルブリフタの回転に伴って特定される、バルブリフタ外周側のカムの押圧領域よりも内周側のバルブリフタ冠面を貫通する孔部と、 を有することを特徴とする内燃機関のバルブリフタ。」 の点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点> 本願発明においては、「孔部」が「前記ボス部を貫通せずに、バルブリフタの回転に伴って特定される、前記バルブを実質的に開弁すべく前記カムから大きな押圧力が加わるバルブリフタ外周側のカムの押圧領域よりも内周側のバルブリフタ冠面を貫通する孔部」であるのに対し、引用発明においては、本願発明の「孔部」に相当する「油孔41c」が、「前記突部41bを貫通せずに、バルブリフタの回転に伴って特定される、バルブリフタ外周側の揺動カム5の押圧領域よりも内周側のバルブリフタ冠部41aを貫通する油孔41c」ではあるものの、「前記バルブを実質的に開弁すべく前記カムから大きな押圧力が加わるバルブリフタ外周側のカムの押圧領域よりも内周側」のバルブリフタ冠面を貫通するものであるかどうか明らかでない点(以下、「相違点」という。)。 3 判断 相違点について検討する。 引用文献の第6の実施形態における図19の状態は、駆動カム4の位置からみて、バルブリフタ41がストロークの最下点近くにあり、吸気弁4は実質的に開弁状態であると認められる。(この点について、審判請求人も「引用文献1の図19には、駆動カム4の姿勢から明らかなように、バルブがほぼ最大リフトになった状態が示されています。」(審判請求書第3ページ下から第4及び3行)と認めている。)したがって、図19の状態において、バルブスプリング10は強い圧縮状態にあり、バルブリフタ41は圧縮されたバルブスプリング10の強い力と、それに抗する駆動カム4の大きな押圧力を受けている。したがって、図19の状態において、駆動カム4は、「吸気弁4を実質的に開弁すべく駆動カム4から大きな押圧力が加わるバルブリフタ外周側の駆動カム4の押圧領域」に位置しているといえる。 よって、引用文献の第6の実施形態における図19の状態においては、本願発明の「孔部」に相当する「油孔41c」が、本願発明における「バルブリフタの回転に伴って特定される、前記バルブを実質的に開弁すべく前記カムから大きな押圧力が加わるバルブリフタ外周側のカムの押圧領域よりも内周側のバルブリフタ冠面」に相当する「バルブリフタ41の回転に伴って特定される、前記吸気弁2を実質的に開弁すべく前記駆動カム4から大きな押圧力が加わるバルブリフタ41外周側の揺動カム5の押圧領域よりも内周側のバルブリフタ冠部41a」を貫通する油孔41cであるといえる。 したがって、相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において、引用文献の第6の実施形態における図19の状態について深く考察することにより、当業者が容易に想到することができたものである。 しかも、本願発明は、全体構成でみても、引用発明から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。 よって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、審判請求人は、「引用文献1の図19には、駆動カム4の姿勢から明らかなように、バルブがほぼ最大リフトになった状態が示されています。この状態からリフトが低下しますと、揺動カム5のノーズ部5cが上昇してカム面5bが水平状態に近づきます。これにともなってバルブリフタ41の部分であって揺動カム5(カム面5b)に押圧される部分は、図19に示されている部分よりも中心側に移動します。したがって「C:・・・・・、バルブを実質的に開弁すべくカムから大きな押圧力が加わるバルブリフタ外周側のカムの押圧領域」に相当するのは、引用文献1では、図19の状態で揺動カム5によって押圧される部分から、バルブリフタ41の中心側の範囲に存在することにはなりますが、果たしてどこまで存在するのかという境界が一切不明です。したがって、引用文献1の孔部41cが「C:・・・・・押圧領域よりも内周側」という領域を確定することができません。ゆえに「C:・・・・・、バルブを実質的に開弁すべくカムから大きな押圧力が加わるバルブリフタ外周側のカムの押圧領域よりも内周側のバルブリフタ冠面を貫通する孔部」という存在範囲が具体的に特定された構成が開示されていないことが明らかです。」(審判請求書第3ページ下から第4行ないし第4ページ第11行)と主張しているので、この主張について検討する。上記「この状態からリフトが低下しますと、揺動カム5のノーズ部5cが上昇してカム面5bが水平状態に近づきます。」という状態は、吸気弁2のリフト量が小さくなって弁開度が小さい状態であり、バルブスプリング10の反発力も小さくなっていることから、もはやカムから「大きな押圧力」が加わる状態ではない。また、上記「バルブリフタ41の中心側の範囲」は、「バルブリフタ外周側のカムの押圧領域」ではない。したがって、引用文献においてカム面5bが水平状態に近づいたときの押圧領域は、本願発明でいう「前記カムから大きな押圧力が加わるバルブリフタ外周側のカムの押圧領域」には該当しないと考えられる。(本願発明においても、カム面が水平状態に近づいたときのカム面に押圧される部分(図7の中央付近の領域)は、「前記カムから大きな押圧力が加わるバルブリフタ外周側のカムの押圧領域(図7の接触領域C)」とはされていない。) したがって、引用発明においても、図19に示される第6の実施形態について深く考察すれば、「油孔41c」は、実質的に「バルブリフタ41の回転に伴って特定される、前記吸気弁2を実質的に開弁すべく前記駆動カム4から大きな押圧力が加わるバルブリフタ41外周側の揺動カム5の押圧領域よりも内周側のバルブリフタ冠部41aを貫通する油孔41c」であるといえる。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-31 |
結審通知日 | 2012-02-07 |
審決日 | 2012-02-20 |
出願番号 | 特願2006-68936(P2006-68936) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋本 敏行 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
川口 真一 金澤 俊郎 |
発明の名称 | 内燃機関のバルブリフタ |
代理人 | 後藤 政喜 |
代理人 | 藤井 正弘 |
代理人 | 三田 康成 |
代理人 | 飯田 雅昭 |