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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B05C
管理番号 1255000
審判番号 不服2010-13387  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-18 
確定日 2012-04-04 
事件の表示 平成11年特許願第260678号「液体材料の吐出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月27日出願公開、特開2001- 79472〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成11年9月14日の出願であって、平成22年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年6月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされた。その後、平成23年10月20日付けで当審から拒絶理由を通知したところ、平成23年12月22日付けで意見書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明は、平成22年6月18日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】容器内の液体材料を加圧して容器先端のノズルから所定量づつ液体材料を繰返し吐出するに当り、
液体材料を所定量づつ繰返し吐出する間に定期的に、大小二種類の任意の加圧力をそれぞれ適用した時の液体材料の単位時間当りの吐出量を計測し、それら二種類の加圧力と計測されたそれぞれの吐出量との間に比例関係が成り立つものとして近似された比例直線を求めて、その比例直線に基づき単位時間当りの所要吐出量に応じた加圧力を決定し、
その決定された加圧力を所要時間適用することで所定量の液体材料を吐出することを特徴とする液体材料の吐出方法。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

3 当審が通知した拒絶理由
当審が、平成23年10月20日付けで通知した拒絶理由は、概略次のとおりである。

「この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」

引用文献
1.特開平4-246886号公報
2.特開平9-171955号公報

4 引用文献の記載事項
当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開平4-246886号公報)には、図面と共に次の記載がある。
a「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、プリント基板上に塗布ノズルでシリンジ内の塗布剤を塗布する塗布装置に関する。」
b「【0003】然し、シリンジ内の残量によっては運転中に塗布量のバラツキが生じ、本来の塗布すべき量に比して、実際の塗布量が多かったり、少なかったりしていた。
【0004】【発明が解決しようとする課題】従って、塗布剤の安定供給を可能とすることである。
【0005】【課題を解決するための手段】そこで、本発明はプリント基板上に塗布ノズルでシリンジ内の塗布剤を塗布する塗布装置に於いて、ある所定条件に達した場合シリンジへの加圧条件を異ならせて複数点塗布された塗布剤の量を認識する認識装置と、該認識装置により認識された各塗布量を計算する計算装置と、該計算装置により計算された計算結果を基に加圧条件に対する塗布量の関係式を算出する算出装置と、該算出装置により算出された関係式を記憶する記憶装置と、該記憶装置に記憶された関係式を基に以降の塗布作業を行なうように制御する制御装置とを設けたものである。」
c「【0013】(16)は接着剤を吐出しプリント基板(1)上に該接着剤を塗布する塗布ノズルで、前記接着剤塗布ユニット(6)毎に塗布量の異なるノズル(16)が準備されている。(17)は該ノズル(16)の上方に接続され、接着剤を貯蔵するシリンジである。(18)はノズル(16)より接着剤を吐出させる圧縮空気を送り込むためのエア用チューブである。」
d「【0028】次に、画面選択キー(26)を押圧して、図7に示すような認識データ(DISPENSE RECOGNITION DATA)を映し出す。このデータは、各ノズル(16)に対する塗布量の認識に関するデータである。モード(MODE)には、塗布量認識を行なわないのであれば「0」が設定され、そのノズル(16)の前記塗布回数カウンタ(44)による所定塗布回数経過後に塗布量認識を行なうのであれば「1」が設定され、そのノズルの前記使用タイマ(34)による所定塗布時間経過後に塗布量認識を行なうのであれば「2」が設定され、前述の塗布回数カウンタ(44)あるいは使用タイマ(34)のいずれかの条件に基づき塗布量認識を行なうのであれば「3」が設定されている。塗布回数(DISPENSE)には、塗布量認識を行なわせる目安となるそのノズル(16)の塗布回数の限度回数が設定されている。時間(TIME)には、塗布量認識を行なわせる目安となるそのノズル(16)を使用して塗布を行なった塗布時間(ノズル(16)毎に使用時間を積算して行なったもの)の限度時間が設定されている。回数(COUNT)には、塗布量認識動作を終了させる塗布回数が設定されている。」
e「【0034】以下、順次塗布動作が行なわれて、各ノズル(16)の塗布量の認識動作が行なわれる場合について説明する。
【0035】各ステップに基づき本塗布動作が行なわれて、今度使用するノズル(16)がNOZZLE1のノズル(16)である場合、図7に示す認識データ(DISPENSE RECOGNITION DATA)のモード(MODE)が「1」(即ち、設定塗布回数に達したら塗布量認識を行なう。)であるから、塗布回数カウンタ(44)が該データ(DISPENSE RECOGNITION DATA)に設定された塗布回数(DISPENSE)の1000回に達していたら、次の1001回目(但し、1000回に達したらカウンタ(44)の内容はクリアされて1回となる。)の本塗布動作前に塗布量補正式算出用試し打ちが行なわれる。このとき、図6に示すロット管理&認識データ(MANEGEMENT DISPENSE & DISPENSE RECOGNITION DATA)内の基板内認識データ(R)宣言に基づいて、基板内試し打ちステップカウンタ(40)で示されるステップ(M-NO)12に設定されたプリント基板(1)上の余白部(1D)のX,Y座標位置にシリンジ(17)に所定加圧時間T_(A)(ここでは50[mSEC]である。)をかけてノズル(16)より吐出させた接着剤が試し打ちされる。そして、その位置への試し打ちが行なわれたら、X軸駆動モータ(2)及びY軸駆動モータ(3)によりXYテーブル(4)を移動させて、プリント基板(1)の試し打ちされた接着剤の位置を認識装置の撮像領域に移動させて、該接着剤の塗布量を認識させる。そして、CPU(30)内の図示しない計算装置で該接着剤の塗布量(塗布面積)を計算する。この計算結果はRAM(28)内に記憶されると共に回数カウンタ(38)の内容を1減算する。該NOZZLE1のノズル(16)は図7に示す回数(COUNT)に3回と設定されているため。再び所定加圧時間T_(A)で吐出された接着剤の試し打ちが行なわれる。即ち、ステップ(M-NO)13で示されるプリント基板(1)上のX,Y座標位置に接着剤が試し打ちされる。次に、その試し打ちされた接着剤の塗布量が認識装置で認識される。その接着剤の塗布面積を前述したようにして計算しRAM(28)に記憶すると共に回数カウンタ(38)の内容を1減算する。更に、同様にしてステップ(M-NO)14に設定された試し打ち位置に試し打ちが行なわれ、計算装置で塗布面積が計算され、その計算結果がRAM(28)に記憶されると共に回数カウンタ(38)の内容が0回となる。そして、前述のRAM(28)に記憶された塗布面積の3回の平均塗布面積S_(A)を計算し、RAM(28)に記憶する。
【0036】 次に、前述の所定加圧時間T_(A)と違う所定加圧時間T_(B)(ここでは、100[mSEC]である。)で同様に3回試し打ちを行ない塗布面積を計算する。この塗布面積の3回の平均塗布面積S_(B)を計算し、RAM(28)に記憶する。そして、計算装置はこれらの所定加圧時間T_(A),T_(B)及び平均塗布面積S_(A),S_(B)をRAM(28)内に記憶された塗布量補正のための塗布量補正式
【0037】【数1】

【0038】に入力して、目標塗布面積Sを得るための所定加圧時間Tの関係式(図12参照)が得られる。この関係式は、RAM(28)内に記憶される。従って、以降の塗布動作時には、この関係式を基に目標塗布面積を得るための最適な加圧時間を計算し、その加圧時間で塗布作業が行なわれる。即ち、前記Rデータ「001」ではNOZZLE1のノズル(16)にREGULATOR1のレギュレータ(46)でその補正加圧時間だけ加圧されると直径[0.8mm]の接着剤が塗布される。」
f「【0043】また、本実施例では目標塗布面積を得るため加圧時間を補正する補正式を用いたが、加圧力を補正するようにしても良い。この場合、補正式は下記の通りである。
【0044】【数2】

【0045】更に、塗布量認識を行なわせる条件としては塗布回数、塗布時間だけに限られずに、例えば各基板毎、基板の所定枚数毎、運転開始時あるいは設定時刻等でも良い。」

そして、上記eには、大小二種類の加圧時間をそれぞれ適用した時の接着剤の塗布量を認識及び計算する点が記載されており、上記fには、上記eにおける加圧時間に代えて加圧力を適用することが可能である点が記載されていることから、引用文献1には、大小二種類の加圧力をそれぞれ適用した時の接着剤の塗布量を認識及び計算する点が記載されていると認められる。
また、【数1】及び図12には、大小二種類の加圧時間とそれぞれの塗布量との間に比例関係が成り立つものとして近似された比例直線が記載又は図示されており、上記fの加圧時間に代えて加圧力を適用する点及び【数2】の記載から、引用文献1には、大小二種類の加圧力とそれぞれの塗布量との間に比例関係が成り立つものとして近似された比例直線が記載されていると認められる。
さらに、上記fにおいて、大小二種類の加圧力を適用した際の加圧時間が互いに異なれば【数2】の関係が得られない(加圧時間が変数として数式に入ることになる)ことは明らかであるので、大小二種類の加圧力を適用した際の加圧時間は等しく、また、この加圧時間を単位時間とした塗布量を認識及び計算していると認められる。
以上の記載並びに図2及び図12によれば、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「シリンジ(17)内の接着剤を加圧してシリンジ(17)先端のノズル(16)から接着剤を繰返し吐出するに当り、
接着剤を繰返し吐出する間の所定塗布回数又は所定塗布時間等の経過後に、大小二種類の任意の加圧力をそれぞれ適用した時の接着剤の単位時間当りの塗布量を認識及び計算し、それら二種類の加圧力と認識及び計算されたそれぞれの塗布量との間に比例関係が成り立つものとして近似された比例直線を求めて、その比例直線に基づき単位時間当りの所要塗布量に応じた加圧力を決定し、その決定された加圧力を所要時間適用することで所定量の接着剤を吐出する接着剤の吐出方法」

5 対比
本願発明1と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明の「シリンジ(17)」、「接着剤」、「ノズル(16)」、「所定塗布回数又は所定塗布時間等の経過後に」、「塗布量」、「認識及び計算」は、それぞれ本願発明1の「容器」、「液体材料」、「ノズル」、「定期的に」、「吐出量」、「計測」に相当する。
そうすると、両者は、
「容器内の液体材料を加圧して容器先端のノズルから液体材料を繰返し吐出するに当り、
液体材料を繰返し吐出する間に定期的に、大小二種類の任意の加圧力をそれぞれ適用した時の液体材料の単位時間当りの吐出量を計測し、それら二種類の加圧力と計測されたそれぞれの吐出量との間に比例関係が成り立つものとして近似された比例直線を求めて、その比例直線に基づき単位時間当りの所要吐出量に応じた加圧力を決定し、その決定された加圧力を所要時間適用することで所定量の液体材料を吐出する液体材料の吐出方法」
である点で一致し、次の点で相違する。

《相違点》
本願発明1では、液体材料の吐出が所定量づつ行われるのに対し、引用文献1記載の発明では、そのような構成を備えていない点。

6 相違点の検討
上記相違点について検討する。

液体材料の吐出ごとの吐出量をどの程度とするかは、液体材料の用途等に応じて当業者が適宜決定し得た事項であるので、液体材料の吐出を所定量ずつ行うことは、当業者が容易になし得たことである。

また、本願発明1が奏する効果は、引用文献1記載の発明から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用文献1記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7 付記
請求人は平成23年12月22日付けの意見書において、「さらに本願発明によれば、大小二種類の任意の加圧力をそれぞれ適用した時の液体材料
の吐出量を計測する際、吐出量を計測して単位時間当りの吐出量を求めており(出願当初明細書の段落番号[0006]、「0007」の記載参照)、このことは、当業者であれば通常「任意時間で計測した吐出量をその任意時間で除して単位時間当りの吐出量を求める(単位時間当りに換算する)」ことを意味していると解する。従って、本願発明における「大小二種類の任意の加圧力での加圧時間」は、「実際の塗布(吐出)作業時の加圧時間」である必要がなく、塗布作業上都合が良い任意の加圧時間とすることができ、それゆえ例えば、必要とされる精度を確保する上で必要最小限の互いに同一の加圧時間に設定することで作業能率をさらに向上させることが出来る、といった顕著な効果を奏することができる。
また「大小二種類の任意の加圧力での加圧時間」が互いに同一の場合は本来単位時間当りの吐出量に換算しなくても図1のグラフを作成可能なところ、本願発明ではあえて任意時間で計測した吐出量を単位時間当りの吐出量に換算しているので、「大小二種類の任意の加圧力での加圧時間」を互いに異ならせることもできる。それゆえ例えば、小さい加圧力での吐出量の計測時には加圧時間を長くすることで計量に充分な吐出量を得ることができる一方、大きい加圧力での吐出量の計測時には加圧時間を短くすることで吐出量の過多による液材の無駄をなくすことができる、といった顕著な効果を奏することができる。」と主張している。
しかしながら、「任意時間で計測した吐出量をその任意時間で除して単位時間当りの吐出量を求める(単位時間当りに換算する)」点や、「「大小二種類の任意の加圧力での加圧時間」を互いに異ならせることもできる」点、及び単位時間をどのように設定するか等については、本願明細書及び図面には記載も示唆もされておらず、また、「実際の塗布(吐出)作業時の加圧時間」が単位時間であることを妨げる特段の事情もない。
したがって、請求人のこの主張は、本願明細書等の記載に基づかない主張であるから、失当であり、採用することができない。
また、仮に、請求人の主張のとおり、本願発明1が「任意時間で計測した吐出量をその任意時間で除して単位時間当りの吐出量を求める(単位時間当りに換算する)」ものであると解したとしても、大小二種類の任意の加圧力での加圧時間が異なる場合に比例直線を求めるためには、計測した吐出量をそれぞれの加圧時間で除して単位時間当りの吐出量を求めることは自ずと必要となることであるので、単位時間当りの吐出量を求めることは、当業者が適宜なし得た設計的事項に過ぎない。

8 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-26 
結審通知日 2012-01-31 
審決日 2012-02-14 
出願番号 特願平11-260678
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B05C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横島 隆裕  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 熊倉 強
▲高▼辻 将人
発明の名称 液体材料の吐出方法  
代理人 小川 順三  

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