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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1255432
審判番号 不服2011-1250  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-19 
確定日 2012-04-12 
事件の表示 特願2008- 822「無線チャネル制御方法、送信装置及び受信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月 8日出願公開、特開2008-109713〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯・本願発明
本願は、2003年2月20日を国際出願日とする特願2004-568488号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成20年1月7日に新たに特許出願したものであって、平成22年10月8日付けで拒絶査定がなされ、それに対して平成23年1月19日に拒絶査定不服の審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成22年8月16日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「移動通信システムにおける送信装置から受信装置に向けた方向の無線チャネルの制御方法において、
該送信装置から送信された信号を該受信装置によって受信し、
該受信装置において、該信号の受信品質を測定して、測定した該受信品質がリファレンス品質を上回るか、下回るかを示す2値化された情報を生成し、
該2値化された情報に基づいて、前記無線チャネルについての符号化方式を制御する、
ことを特徴とする無線チャネルの制御方法。」

第2 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-101043号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セルラ通信システムに用いられる通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】セルラ通信システムでは、1つの基地局が複数の通信端末と同時に無線通信を行う。このセルラ通信システムでは伝送効率を高めることが要求されている。
【0003】基地局から通信端末への下り回線の伝送効率を高める技術としてHDR(High Data Rate)が提案されている。HDRは、通信リソースを時間分割して各通信端末に割り振るスケジューリングを行い、さらに通信品質に従って通信端末毎に伝送レートを設定してデータの伝送効率を高める方法である。
【0004】以下、HDRを用いた通信について、図22を用いて説明する。図22において、基地局11は、現在、この基地局11がカバーするセルエリア15に存在する通信端末12?14と通信を行っているものとする。なお、通信端末20?22は、セルエリア15の範囲内に存在しているが、基地局11以外の基地局(図示しない)と通信を行うものである。
【0005】まず、基地局11が通信端末12?14にパイロット信号を送信する。通信端末12?14は、基地局11に送信されたパイロット信号を用いて、CIR(希望波対干渉波比)等により通信品質を推定し、通信可能な伝送レートを求める。さらに、通信端末12?14は、通信可能な伝送レートに基づいて、パケット長、エラー訂正、変調方式の組み合わせを示す通信モードを選択し、通信モードを示す信号を基地局11に対して送信する。
【0006】基地局11は、通信端末12?14により選択された通信モードに基づいてスケジューリングを行い、通信端末毎に伝送レートを設定し、コントロールチャネルを通して通信端末12?14に通信リソースの割り振りを示す信号を報知する。
【0007】基地局11は、割り振った時間において、該当する通信端末に対してのみ、データチャネルを介してデータを送信する。」(段落【0001】?【0007】)

(イ)「【0070】基地局装置により送信されたパイロット信号(制御チャネル信号)は、通信端末装置のアンテナ208に受信される。アンテナ208により受信された信号(受信信号)は、共用器207を介して受信RF部209に出力される。共用器207からの受信信号は、受信RF部209によりベースバンドに周波数変換され、逆拡散部213により逆拡散される。これにより、逆拡散部213では、受信信号におけるパイロット信号が抽出される。抽出されたパイロット信号は、CIR測定部214に出力される。
【0071】CIR測定部214では、逆拡散部213により出力されたパイロット信号に基づいてCIRが測定される。測定されたCIRは、要求変調方式決定部201およびマージン算出部202に送られる。
【0072】要求変調方式決定部201では、CIR測定部214により測定されたCIRに基づいて、本通信端末装置が所望の品質で受信可能な伝送レートが決定される。要求変調方式決定部201による伝送レートの決定方法について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態1にかかる通信装置を備えた通信端末装置の要求変調方式決定部201による伝送レートの決定方法を示す模式図である。
【0073】要求変調方式決定部201では、CIR測定部214により測定されたCIR(受信品質)に基づいて、本通信端末装置の受信信号の特性(謝り率特性)(当審注:「謝り率」は「誤り率」の誤記と認められる。)が所望品質を満たし、かつ、データの伝送効率が最良となるように、基地局装置に要求する伝送レートが決定される。
【0074】具体的には、例えば、CIR測定部214により測定されたCIRが、図3に示すような値(受信CIR301)であった場合には、本通信端末装置の受信信号の特性が所望品質(ここでは謝り率が10^(-3)であるとする。)(当審注:「謝り率」は「誤り率」の誤記と認められる。)を満たす伝送レートは、QPSKに対応する伝送レート、16QAMに対応する伝送レート、および、64QAMに対応する伝送レートのいずれかとなる。このような伝送レートのうち、データの伝送効率が最良となるような伝送レートは、64QAMに対応する伝送レートとなる。この結果、図3に示すようなCIRが測定された場合には、基地局装置に要求する伝送レートとして、64QAMに対応する伝送レートが決定される。
【0075】以上のようにして要求変調方式決定部201により決定された伝送レートは、マージン算出部202およびDRC信号作成部203に出力される。伝送レートが決定された後、要求変調方式決定部201から、適応逆拡散部210、適応復調部211および適応復号化部212に対して、それぞれ、受信信号に乗算する拡散符号を指示する信号、受信信号の復調方式を指示する信号、および、受信信号の復号化方式を指示する信号が出力される。」(段落【0070】?【0075】)

(ウ)「【0079】DRC信号作成部203では、要求変調方式決定部201により算出された伝送レートを示すDRC信号が作成される。作成されたDRC信号は合成部215に出力される。
【0080】合成部215では、DRC信号作成部203からのDRC信号とマージン算出部202からのパワマージン情報とが合成されることにより、合成信号が生成される。生成された合成信号は、変調部204に出力される。
【0081】合成信号は、変調部204により変調され、拡散部205により拡散され、送信RF部206により無線周波数に周波数変換され、共用器207を介してアンテナ208により基地局装置に送信される。
【0082】通信端末装置により送信された信号は、基地局装置のアンテナ112により受信される。アンテナ112により受信された信号(受信信号)は、共用器111を介して受信RF部113に出力される。共用器111からの受信信号は、受信RF部113によりベースバンドに周波数変換され、逆拡散部114により逆拡散され、復調部115により復調される。この結果、復調部115により復調信号が生成される。生成された復調信号は、DRC信号検出部116およびパワマージン情報検出部117に出力される。」(段落【0079】?【0082】)

(エ)「【0085】一方、DRC信号検出部116では、復調部115により生成された復調信号からDRC信号が検出される。検出されたDRC信号は、割り当て部101に出力される。
【0086】割り当て部101では、各通信端末装置により送信されたDRC信号に基づいて、各通信端末装置への通信リソースの割り振りがなされる。基地局装置から通信端末装置に送られる下り送信データは、通信リソースの割り振りがなされるまでバッファ102に蓄えられる。
【0087】バッファ102により出力された下り送信データは、適応符号化部103により通信端末装置で受信可能な符号化方式で符号化され、適応変調部104により通信端末装置で受信可能な変調方式で変調され、適応拡散部105により通信端末装置で受信可能な拡散符号で拡散され、多重部108に出力される。多重部108では、拡散された下り送信データに拡散されたパイロット信号が時間多重されることにより、送信信号が生成される。
【0088】多重部108により生成された送信信号は、電力制御部109において、電力設定部118により設定された送信電力値となるように増幅される。増幅された送信信号は、送信RF部110により無線周波数に周波数変換され、共用器111を介してアンテナ112により各通信端末装置に送信される。
【0089】基地局装置により送信された信号は、通信端末装置のアンテナ208により受信される。アンテナ208により受信された信号(受信信号)は、共用器207を介して受信RF部209に出力される。共用器207からの受信信号は、受信RF部209によりベースバンドに周波数変換され、適応逆拡散部210により逆拡散される。これにより、適応逆拡散部210では、受信信号におけるパイロット信号以外の成分(データに対応する成分)が抽出される。抽出されたパイロット信号以外の成分は、適応復調部211で復調され、適応復号化部212により復号化される。これにより受信データが取り出される。」(段落【0085】?【0089】)

(オ)「【0099】なお、本実施の形態では、通信端末装置が、測定した受信品質に基づいて伝送レートおよびパワマージンを決定し、決定した伝送レートおよびパワマージンを基地局装置に報知した後、基地局装置が、報知された伝送レートおよびパワマージンを用いて、この通信端末装置の送信信号の送信電力値を設定する場合を例にとり説明したが、通信端末装置が測定した受信品質を基地局装置に報知し、基地局装置が、報知された受信品質に基づいて決定した伝送レートおよびパワマージンを用いて、この通信端末装置の送信信号の送信電力値を設定するようにしてもよい。これにより、通信端末装置の規模および消費電力を抑えることができる。
【0100】また、通信端末装置からパワマージンを送信するのは、最も伝送レートの早いDRCをリクエストしたときのみとしてもよい。これにより、通信端末装置の規模および消費電力を押さえることができる。この場合、高い伝送レートを要求できるということはCIRがよいということになるので、基地局の近くに位置している可能性が高い。よって、基地局の送信パワを大幅に低減できるので、干渉回避の効果が大きい。」(段落【0099】、【0100】)

以上の記載によれば、この引用例には以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「セルラ通信システムにおいて基地局から通信端末への下り回線の伝送効率を高める方法であって、
基地局装置により送信されたパイロット信号(制御チャネル信号)は、通信端末装置のアンテナ208に受信され、受信RF部209、逆拡散部213により抽出されたパイロット信号は、CIR測定部214に出力され、パイロット信号に基づいてCIR(希望波対干渉波比)が測定され、
要求変調方式決定部201で、CIR測定部214により測定されたCIRに基づいて、本通信端末装置の受信信号の特性(誤り率特性)が所望品質を満たし、かつ、データの伝送効率が最良となるように、基地局装置に要求する伝送レート、例えば、本通信端末装置の受信信号の特性が所望品質を満たす伝送レートがQPSKに対応する伝送レート、16QAMに対応する伝送レート、64QAMに対応する伝送レートのいずれかとなる場合、データの伝送効率が最良となるような64QAMに対応する伝送レートに決定し、DRC信号作成部203では、要求変調方式決定部201により算出された伝送レートを示すDRC信号が作成され、
DRC信号作成部203からの伝送レートを示すDRC信号とマージン算出部202からのパワマージン情報とが合成されることにより生成された合成信号は、基地局装置に送信され、
基地局装置では、各通信端末装置により送信された伝送レートを示すDRC信号に基づいて、各通信端末装置へ伝送レートの通信リソースの割り振りがなされることを特徴とする基地局から通信端末への下り回線の伝送方法。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-339458号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
「【0032】TPCカウンタ106は、復調後の受信信号の中から通信端末装置200-Kが生成し送信してきたTPCを抽出し、抽出したTPCが0か1かを判定する。このTPCは、判定結果が0の時は相手局からの指示が送信電力を下げることであると判断して現在の送信電力を1dB下げ、判定結果が1なら1dB上げる、というように予め定めておく。以下、0と判定されるTPCを「減少指示ビット」といい、1と判定されるTPCを「増加指示ビット」という。TPCカウンタ106は、TPCが0か1かを判定した後、減少指示ビット、増加指示ビットを15スロット分蓄積する。TPCは、1フレームに1ビット挿入されているので、合計15ビットの減少指示ビット及び増加指示ビットが蓄積される。
【0033】判定部107は、TPCカウンタ106に蓄積された減少指示ビットと増加指示ビットとを参照して、伝播路が「良くなる」か「悪くなる」か「変化が少ない」かを15スロット毎(1フレーム毎)に予測する。
【0034】伝送フォーマット用メモリ109には、伝播路予測部105での予測結果とDSCHの変調方式とを対応付けるテーブルが備えられている。伝送フォーマット制御部108は、この伝送フォーマット用メモリ109に備えられた予測結果と変調方式の切り替えパターンとを対応付けるテーブルを参照して、伝播路予測部105での予測結果に対応するDSCHの変調方式を決定する。
【0035】図5は、伝播路状態の判定結果とDSCHの変調方式の切り替えパターンの対応を示すテーブルである。この図に示すように、伝播路状態が「良くなる」と予測された場合にはフレームの後半部分で前半部分よりも多値数を上げた変調を行うように設定されている。逆に、伝播路状態が「悪くなる」と予測された場合にはフレームの後半部分で前半部分よりも多値数を下げた変調を行うように設定されている。このように変調方式を切り替えることにより、伝播路状態に応じた変調方式で、DSCHのデータを送信することができる。
【0036】フレームの前半部分の変調方式は、SIR(Signal to Interference Ratio)等を用いて推定した前フレームの伝播路状態に応じて適宜変更して設定される。すなわち、伝播路状態が良い場合には256QAM、64QAM等の1シンボル当たりのビット数が大きな変調方式に設定され、逆に伝播路状態が悪い場合には、QPSK、BPSK等の1シンボル当たりのビット数が小さな変調方式に設定される。
【0037】なお、伝送フォーマット用メモリ109に記憶されるテーブルは、図5に示したものに限られず、装置構成に応じた変調方式に適宜変更することが可能である。また、フレームの前半部分の変調方式と後半部分の変調方式の切り替えパターンも適宜変更可能である。」(段落【0032】?【0036】)

第3 対 比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「セルラ通信システム」、「基地局装置」、「通信端末装置」は、それぞれ本願発明の「移動通信システム」、「送信装置」、「受信装置」に相当し、引用発明の「セルラ通信システムにおいて基地局から通信端末への下り回線の伝送効率を高める方法」は、本願発明の「移動通信システムにおける送信装置から受信装置に向けた方向の無線チャネルの制御方法」に相当する。
(2)引用発明の「基地局装置により送信されたパイロット信号(制御チャネル信号)」は、本願発明の「該送信装置から送信された信号」に相当する。
(3)引用発明のパイロット信号に基づく「CIR(希望波対干渉波比)」は、本願発明の「該信号の受信品質」に相当する。
(4)引用発明の「測定されたCIRに基づいて、本通信端末装置の受信信号の特性(誤り率特性)が所望品質を満た」すように、「基地局装置に要求する伝送レートを決定」し「伝送レートを示すDRC信号が作成され」る点は、本願発明の「該信号の受信品質を測定して、測定した該受信品質がリファレンス品質を上回るか、下回るかを示す2値化された情報を生成」すると「該受信装置において、該信号の受信品質を測定して、測定した該受信品質に関連する情報を生成し」の点で対応するといえる。
(5)引用発明の「QPSKに対応する伝送レート、16QAMに対応する伝送レート、64QAMに対応する伝送レート」である「伝送レート」は、本願発明の「無線チャネルについての符号化方式」と「無線チャネルについての送信方式」である点で対応するといえ、引用発明の「伝送レートを示すDRC信号に基づいて、各通信端末装置へ伝送レートの通信リソースの割り振りがなされる」点は、本願発明「該2値化された情報に基づいて、前記無線チャネルについての符号化方式を制御する」と「受信品質に関連する情報に基づいて、前記無線チャネルについての送信方式を制御する」点で対応するといえる。

したがって、両者は、
「移動通信システムにおける送信装置から受信装置に向けた方向の無線チャネルの制御方法において、
該送信装置から送信された信号を該受信装置によって受信し、
該受信装置において、該信号の受信品質を測定して、測定した該受信品質に関連する情報を生成し、
該受信品質に関連する情報に基づいて、前記無線チャネルについての送信方式を制御する、ことを特徴とする無線チャネルの制御方法。」
で一致するものであり、次の(1)、(2)の点で相違している。

(相違点)
(1)伝送方式を制御するのに、本願発明は、「測定した該受信品質がリファレンス品質を上回るか、下回るかを示す2値化された情報を生成し、」「該2値化された情報に基づいて」いるのに対し、引用発明は、「測定されたCIRに基づいて、本通信端末装置の受信信号の特性(誤り率特性)が所望品質を満た」すように、「基地局装置に要求する伝送レートを決定」し「伝送レートを示すDRC信号」を生成し、「伝送レートを示すDRC信号」に基づいている点。

(2)本願発明は、無線チャネルについての「符号化方式」を制御するのに対し、引用発明は、「伝送レート」を制御するものである点。

第4 当審の判断
・相違点(1)について
引用例2には、通信端末装置200-Kが生成し送信してきたTPCを抽出し、抽出したTPCが0か1かを判定し、TPCカウンタ106は、TPCが0か1かを判定した後、減少指示ビット、増加指示ビットを蓄積し、伝播路予測部105が蓄積された減少指示ビットと増加指示ビットとを参照して、伝播路が「良くなる」か「悪くなる」か「変化が少ない」ことを予測し、伝播路予測部105での予測結果と変調方式の切り替えパターンとを対応付けるテーブルを参照して、伝播路予測部105での予測結果に対応するDSCHの変調方式を決定することが記載されており、通信端末装置200-Kが生成し送信する「TPC」は、「0か1か」であるから2値化された情報であり、測定した受信品質がリファレンス品質を上回るか、下回るかを示す2値化された情報であることは明らか(例えば、特開2002-84578号公報段落【0052】「各通信端末は、測定したSIRと所望のSIRとを比較し、測定したSIRが所望のSIRよりも小さい場合には、DPDCHデータの送信電力の増加を基地局に対して要求するTPCコマンドを生成し、測定したSIRが所望のSIR以上の場合には、DPDCHデータの送信電力の減少を基地局に対して要求するTPCコマンドを生成する。・・・中略・・・つまり、回線状況が悪く受信品質が所望の品質よりも低くなる場合には、DPDCHデータの送信電力を増加させる指示が基地局へ通知され、回線状況が良く受信品質が所望の品質以上となる場合には、DPDCHデータの送信電力を減少させる指示が基地局へ通知され」の記載等参照。)である。
したがって、上記引用例2記載の技術を適用することより、引用発明において「測定した該受信品質がリファレンス品質を上回るか、下回るかを示す2値化された情報を生成し、」「該2値化された情報に基づいて」伝送方式を制御するようにすることは、当業者が容易になし得ることある。

・相違点(2)について
基地局装置から通信端末(移動局)装置への下り無線回線に用いる変調方式及び符号化方式を基地局装置から通信端末装置に送信された信号の受信品質に基づいて制御することは、原出願の国際出願日前周知の技術である(例えば、特開2002-26808号公報段落【0005】、【0006】「通信端末装置13は、基地局装置11により送信されたCPICH信号および基地局装置12により送信されたCPICH信号の受信品質を測定する。次に、通信端末装置13は、DSCH信号の要求先として、基地局装置11および基地局装置12のうち、良好な品質で受信できたCPICH信号を送信した基地局装置(ここでは基地局装置11とする。)を選択する。この後、通信端末装置13は、基地局装置11により送信されたCPICH信号の受信品質に基づいて、通信端末装置13におけるDSCH信号の受信品質が所要品質を実現するように、DSCH信号に用いことが可能な変調方式および誤り訂正符号化方式を決定する。通信端末装置13は、このように決定した変調方式および誤り訂正符号化方式を通知するための情報と、DSCH信号の要求先として基地局装置11を通知するための情報と、を含むDPCH信号を送信する。」の記載、特開2001-268148号公報段落【0026】、【0027】「この発明に係る無線通信システムは、移動局の受信信号を監視して下り無線回線の回線品質を測定し、その回線品質にしたがって下り無線回線の回線モードを提案する回線モード提案手段と、その回線モード提案手段により提案された回線モードが記憶手段に記憶されている場合、その回線モードを下り無線回線に適用し、その回線モード提案手段により提案された回線モードが記憶手段に記憶されていない場合、その記憶手段に記憶されている何れかの回線モードを下り無線回線に適用する回線モード設定手段とを設けたものである。この発明に係る無線通信システムは、回線品質に応じて変調方式と符号化率を組み合わせることにより、提案する回線モードを決定するようにしたものである。」の記載、特開2002-64424号公報段落【0004】、【0005】「以下、基地局と通信端末とが、HDRにおいて無線通信を行う動作について、説明する。まず、基地局が各通信端末にパイロット信号を送信する。各通信端末は、パイロット信号に基づくCIR(希望波対干渉波比)等により下り回線の回線品質を測定し、通信可能な伝送レートを求める。そして、各通信端末は、通信可能な伝送レートに基づいて、パケット長、符号化方式および変調方式の組み合わせである通信モードを選択し、通信モードを示すデータレートコントロール(以下「DRC」という。)信号を基地局に送信する。なお、各システムにおける選択可能な変調方式の種類は、BPSK、QPSK、16QAM、64QAM等、予め決められている。また、各システムにおける選択可能な符号化の種類は、1/2ターボ符号、1/3ターボ符号、3/4ターボ符号等、予め決められている。そして、これらパケット長、変調方式、符号化方式の組み合わせにより、各システムにおける選択可能な伝送レートが複数定められている。各通信端末は、それらの組み合わせの中から、下り回線の現在の回線品質において最も効率よく通信を行える組み合わせを選択し、選択した通信モードを示すDRC信号を基地局に送信する。一般的にDRC信号は1?Nの番号により表されており、番号が大きくなるほど下り回線の回線品質が良いことを示す。」の記載参照。)。
引用発明の「伝送レート」は、「QPSKに対応する伝送レート、16QAMに対応する伝送レート、64QAMに対応する伝送レート」であって、無線チャネルについての変調方式であり、また、引用例1には、「下り送信データは、適応符号化部103により通信端末装置で受信可能な符号化方式で符号化され」(記載事項(エ)段落【0087】)ることが記載されている。
したがって、上記周知技術を適用することより、引用発明において、無線チャネルについての「符号化方式」を制御するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、本願発明の作用効果も、引用発明、引用例2記載の技術及び周知技術から、当業者であれば予想できる範囲内のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-02 
結審通知日 2012-02-14 
審決日 2012-02-28 
出願番号 特願2008-822(P2008-822)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 哲  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 稲葉 和生
鈴木 重幸
発明の名称 無線チャネル制御方法、送信装置及び受信装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 山口 昭則  

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