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審決分類 審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1255452
審判番号 不服2011-20625  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-26 
確定日 2012-04-12 
事件の表示 特願2011- 498号「建物の柱梁接合構造体、建物および接合方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月21日出願公開、特開2011- 80358号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年5月22日に出願した特願2003-144397号の一部を、平成19年9月21日に新たな特許出願とした特願2007-245253号(以下、「原出願」という。)の一部を、さらに平成23年1月5日に新たな特許出願としたとされるものであって、平成23年8月24日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成23年9月26日に本件審判請求がなされたものである。
そして、上記審判請求と同日に提出された上申書において、分割要件を満たすこと等について説明する面接の実施が希望されていたことを受け、平成23年12月6日に当審にて面接行った(平成24年1月10日作成の面接記録及び対応記録)。

第2 拒絶査定における出願日の認定
拒絶査定においては、本願の請求項1?3に記載の「PCa製水平構造体」に関して、仕口部から梁主筋を突出させたPCa製水平構造体については、原出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載された事項から自明な事項でないから、本願は分割の要件を満たしておらず出願日の遡及は認められないとしている。

第3 本願の出願日の認定
1.本願が特許法第44条第1項に定める分割要件を満たすかどうか、具体的には「仕口部から梁主筋を突出させたPCa製水平構造体」が、原出願の当初明細書等に記載されていたか否かについて検討する。

2.本願特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
PCa製柱とPCa製梁とが接合された建物の柱梁接合構造体であって、
前記PCa製柱の柱頭部の上面では柱用接続鉄筋が上方に突出しておらず、且つ前記柱頭部には柱継手部材が埋め込まれており、
上下方向の貫通孔が形成された柱用仕口部と梁主筋とが予め一体化され、該梁主筋が該柱用仕口部から突出したPCa製水平構造体を、水平方向に移動させて下階の前記PCa製柱の上に設置し、前記柱用接続鉄筋を前記PCa製水平構造体の前記貫通孔を貫通させ且つ前記下階のPCa製柱の前記柱継手部材で前記下階のPCa製柱の柱主筋と継手することにより、前記下階のPCa製柱と前記PCa製水平構造体とを接合し、
前記PCa製水平構造体又は前記PCa製梁を、水平方向に移動させ、これらの梁主筋を梁継手部材で継手することにより、前記PCa製水平構造体と前記PCa製梁とを接合したことを特徴とする建物の柱梁接合構造体。
【請求項2】
前記PCa製水平構造体には梁継手部材が設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の建物の柱梁接合構造体。
【請求項3】
PCa製柱とPCa製梁とが接合された建物の柱梁構造体における接合方法であって、
前記PCa製柱の柱頭部の上面では柱用接続鉄筋が上方に突出しておらず、且つ前記柱頭部には柱継手部材が埋め込まれており、
上下方向の貫通孔が形成された柱用仕口部と梁主筋とが予め一体化され、該梁主筋が該柱用仕口部から突出したPCa製水平構造体を、水平方向に移動させて下階の前記PCa製柱の上に設置し、前記柱用接続鉄筋を前記PCa製水平構造体の前記貫通孔を貫通させ且つ前記下階のPCa製柱の前記柱継手部材で前記下階のPCa製柱の柱主筋と継手することにより、前記下階のPCa製柱と前記PCa製水平構造体とを接合し、
前記PCa製水平構造体又は前記PCa製梁を、水平方向に移動させ、これらの梁主筋を梁継手部材で継手することにより、前記PCa製水平構造体と前記PCa製梁とを接合することを特徴とする建物の柱梁接合構造体における接合方法。」

上記記載によれば、特許請求の範囲に記載の「PCa製水平構造体」は、「上下方向の貫通孔が形成された柱用仕口部と梁主筋とが予め一体化され、該梁主筋が該柱用仕口部から突出したPCa製水平構造体」として特定されるものであって、発明特定事項として「柱用仕口部と梁とを予め一体化した」という特定がなされておらず、本願明細書の図3や図6に図示され、請求書の「5.」に[参考図1]として図示された、梁主筋が梁のコンクリートで被覆された状態で柱用仕口部から突出する仕口部と梁とが一体化されたPCa製水平構造体(以下「(a)構造体」という)と、審判請求書の「5.」に[参考図2]として図示された、梁主筋がコンクリートで被覆されることなく柱用仕口部から突出するだけのPCa製水平構造体(以下「(b)構造体」という)とを含むものであると認められる。

3.原出願の記載事項
(1)原出願の当初明細書等には、「建物の柱梁接合構造体」の「PCa製水平構造体」及び「仕口部」に関して、以下の記載がある。(下線は当審付与。)

ア.「【請求項1】
柱用仕口部と梁とを予め一体化したPCa製水平構造体が、建物のPCa製柱の上に水平方向に取付けられ、
PCa製水平構造体を構成する柱用仕口部は、柱梁接合部で少なくとも下階のPCa製柱に直接的に接合され、
梁同士は、隣り合うPCa製柱とPCa製柱との間に位置する少なくとも一つの梁接合部で直接的に接合されている建物の柱梁接合構造体であって、
PCa製水平構造体を鉄骨部材で連結する第1の手段と、所定の梁接合部で制振デバイスを介して梁同士を接合する第2の手段と、対向するPCa製柱とPCa製柱との間で耐震壁を梁と直交する方向に設ける第3の手段とのうち少なくとも一つの手段により、現場打ちコンクリートの箇所を全くなくしたことを特徴とする建物の柱梁接合構造体。
・・・【請求項3】
請求項1に記載の柱梁接合構造体における接合方法であって、
PCa製水平構造体をPCa製柱の上部で水平方向に移動させることにより、梁同士を梁接合部で直接的に接合することを特徴とする建物の柱梁接合構造体の接合方法。」
イ.「【背景技術】・・・
【0004】・・・
一方、図13ないし図15に示すように、従来の第2の接合方法を使用した多層建物101aの柱梁接合構造体102aでは、柱用仕口部106と梁104aとが予め一体化されたPCa製水平構造体107を、PCa製柱103aの上に水平方向に取付けている。」
ウ.「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0007】
前記第2の接合方法では、PCa製柱103aの上面から柱主筋の柱用接続鉄筋109が上方に突出している。そのため、この柱用接続鉄筋109が邪魔になって、PCa製水平構造体107をPCa製柱103aの上部で水平方向に移動させることはできなかった。
・・・
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、建物の柱梁接合構造体の柱梁接合部と梁接合部における現場打ちコンクリートの作業の全部を省略して現場作業を大幅に軽減することができる、建物の柱梁接合構造体、建物および接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる建物は、柱用仕口部と梁とを予め一体化したPCa製水平構造体が、建物のPCa製柱の上に水平方向に取付けられ、PCa製水平構造体を構成する柱用仕口部は、柱梁接合部で少なくとも下階のPCa製柱に直接的に接合され、梁同士は、隣り合うPCa製柱とPCa製柱との間に位置する少なくとも一つの梁接合部で直接的に接合される柱梁接合構造体により構成される建物であって、PCa製水平構造体を水平方向に移動させて梁接合部で梁同士を接合する場合に、隣り合うPCa製水平構造体の間の梁接合部のうち、梁同士を直接的に接合することができない箇所が生じれば、この箇所は現場打ちコンクリート接合部となり、梁接合部におけるこの現場打ちコンクリート接合部ではコンクリートを現場打ちして梁同士を接合する。
建物の最上階以外の階では、柱用仕口部は、柱梁接合部で下階(その階のこと)のPCa製柱と上階のPCa製柱の両方に直接的に接合され、最上階では、柱用仕口部は、柱梁接合部で下階(最上階のこと)のPCa製柱に直接的に接合されているのが好ましい。
例えば、直接的に接合される柱梁接合部と、直接的に接合される梁接合部との各隙間には、それぞれモルタルが充填されている。
本発明にかかる建物の柱梁接合構造体は、柱用仕口部と梁とを予め一体化したPCa製水平構造体が、建物のPCa製柱の上に水平方向に取付けられた建物の柱梁接合構造体であって、PCa製水平構造体を構成する柱用仕口部は、柱梁接合部で少なくとも下階のPCa製柱に直接的に接合され、・・・
他の実施態様にかかる建物の柱梁接合構造体は、柱用仕口部と梁とを予め一体化したPCa製水平構造体が、建物のPCa製柱の上に水平方向に取付けられ、PCa製水平構造体を構成する柱用仕口部は、柱梁接合部で少なくとも下階のPCa製柱に直接的に接合され、梁同士は、隣り合うPCa製柱とPCa製柱との間に位置する少なくとも一つの梁接合部で直接的に接合されている建物の柱梁接合構造体であって、PCa製水平構造体を所定の構成にするかまたは鉄骨部材で連結する第1の手段と、所定の梁接合部で制振デバイスまたは鉄骨部を介して梁同士を接合する第2の手段と、対向するPCa製柱とPCa製柱との間で耐震壁を梁と直交する方向に設ける第3の手段とのうち少なくとも一つの手段により、現場打ちコンクリートの箇所を全くなくするのが好ましい。
さらに他の実施態様にかかる建物の柱梁接合構造体は、柱用仕口部と梁とを予め一体化したPCa製水平構造体が、建物のPCa製柱の上に水平方向に取付けられた建物の柱梁接合構造体であって、PCa製水平構造体を構成する柱用仕口部は、柱梁接合部で少なくとも下階のPCa製柱に直接的に接合され、梁同士は、隣り合うPCa製柱とPCa製柱との間に位置する少なくとも一つの梁接合部で直接的に接合されており、下階のPCa製柱の柱頭部には柱継手部材を埋込み、柱主筋の柱用接続鉄筋を柱用仕口部の貫通孔を貫通させ且つ下階のPCa製柱の柱継手部材に挿入して固定することにより、上下階のPCa製柱同士を柱梁接合部で柱用仕口部を介して接合し、柱用仕口部の貫通孔内にシース管が埋め込まれている。
上階のPCa製柱には柱主筋の柱用接続鉄筋を柱脚部から下方に突出して設け、上階のPCa製柱をPCa製水平構造体の柱用仕口部上に配置する際に、上階のPCa製柱を下降させて、その柱用接続鉄筋を柱用仕口部の貫通孔を貫通させ下階のPCa製柱の柱継手部材に挿入して固定するのが好ましい。
PCa製水平構造体の一つの柱用仕口部には、複数の梁が、平面視で直線状,L字状,T字状または十字状に配置され、柱用仕口部には、PCa製柱が接合されて仕口となる。
本発明の建物は、上述の柱梁接合構造体を有している。本発明にかかる方法は、上述の柱梁接合構造体における接合方法であって、PCa製水平構造体をPCa製柱の上部で水平方向に移動させることにより、梁同士を梁接合部で直接的に接合する。
本発明にかかる建物の柱梁接合構造体を組み立てる施工方法は、柱用仕口部と梁とを予め一体化したPCa製水平構造体を、建物のPCa製柱の上に水平方向に取付けるために、PCa製水平構造体を構成する柱用仕口部を、柱梁接合部で少なくとも下階のPCa製柱に直接的に接合し、梁同士を、隣り合うPCa製柱とPCa製柱との間に位置する少なくとも一つの梁接合部で直接的に接合して建物の柱梁接合構造体を組み立てる施工方法であって、その階におけるPCa製水平構造体を組み込む際には、平面視でL字状をなす最初のPCa製水平構造体の柱用仕口部をPCa製柱の上に位置決めし、次いで、平面視で直線状をなす二番目のPCa製水平構造体を、水平方向に移動させ、PCa製柱上に位置決めして梁同士を梁接合部で直接的に接合し、その後は、その階における多数のPCa製水平構造体を順次組み立てるようにしている。
また、本発明の施工方法は、二番目のPCa製水平構造体を組み込んだ後に、平面視でT字状をなす三番目のPCa製水平構造体を、水平方向に移動させ、PCa製柱上に位置決めして梁同士を梁接合部で直接的に接合し、次いで、平面視で直線状をなす四番目のPCa製水平構造体を、水平方向に移動させ、PCa製柱上に位置決めして、最初のPCa製水平構造体の梁と四番目のPCa製水平構造体の梁とを直接的に接合し、その後は、その階における多数のPCa製水平構造体を順次組み立てるようにするのが好ましい。」
エ.「【発明を実施するための最良の形態】
・・・
【0015】
PCa製の大梁5,大梁5aと、PCa製の柱用仕口部6とを予め一体化したPCa製水平構造体7を、PCa製柱3の上に水平方向に取付けることにより、柱梁接合構造体4が構成されている。
PCa製水平構造体7は、柱用仕口部6に大梁5と大梁5aが固定されて、全体がプレキャストコンクリートにより一体的に形成されている。このようなPCa製水平構造体7を使用すれば、柱梁接合部8での現場打ちコンクリートをなくすることができる。
【0016】
PCa製水平構造体7の一つの柱用仕口部6には、複数(たとえば、二本,三本または四本)の大梁5,大梁5aが、平面視で直線状,L字状,T字状または十字状に配置されている。柱用仕口部6には、PCa製柱3が接合されて仕口となる。
柱用仕口部6には、複数の貫通孔29が上下方向に貫通形成されて所定の配列で配置されている。貫通孔29の内径は、柱主筋27の柱用接続鉄筋28の外径より大きい。・・・
また、他の変形例として、PCa製水平構造体が複数(たとえば、二つ)の柱用仕口部6を有し、この複数の柱用仕口部6の間に大梁5(または、大梁5a)を一体的に固定し、各柱用仕口部6に、さらに別の梁(大梁や小梁)を所定方向に向けて一体的に固定した場合であってもよい。
【0017】
PCa製水平構造体7を構成する柱用仕口部6は、柱梁接合部8で少なくとも下階のPCa製柱3に直接的に接合されている。すなわち、多層建物1の最上階以外の階では、柱用仕口部6は、柱梁接合部8で下階(その階のこと)のPCa製柱3と上階のPCa製柱3の両方に直接的に接合されている。最上階では、柱用仕口部6は、柱梁接合部8で下階(最上階のこと)のPCa製柱3に直接的に接合されている。・・・
このように、PCa製柱3と各種のPCa製水平構造体7とを組み合わせることにより、柱梁接合構造体4が構成されている。この柱梁接合構造体4ではPCa製水平構造体7を使用したので、柱梁接合部8における現場打ちコンクリートと梁接合部9における現場打ちコンクリートの作業のほとんど全部または全部を省略することができ、現場作業が大幅に軽減される。
【0018】・・・
そして、一方のPCa製水平構造体7の梁用接続鉄筋19を、他方のPCa製水平構造体7の梁用スリーブ16に挿入して固定することにより、大梁5同士を梁接合部9で接合している。これは大梁5aの場合も同様である。・・・
【0019】・・・柱用接続鉄筋28を、柱用仕口部6の貫通孔29を貫通させ、且つ下階のPCa製柱3の柱用スリーブ26に挿入して固定することにより、上下階のPCa製柱3,3同士が柱梁接合部8で柱用仕口部6を介して接合される。・・・
【0021】・・・上階のPCa製柱3をPCa製水平構造体7の柱用仕口部6上に配置する際に、上階のPCa製柱3を下降させて、その柱用接続鉄筋28を、柱用仕口部6の貫通孔29を貫通させ、且つ下階のPCa製柱3の柱用スリーブ26に挿入して固定している。
このように、柱主筋27と柱用接続鉄筋28をPCa製柱3に予め取付けているので、上階のPCa製柱3を柱用仕口部6の直上で下降させれば、上階のPCa製柱3の柱用接続鉄筋28が貫通孔29を貫通し、且つ下階のPCa製柱3の柱用スリーブ26に挿入される。・・・
【0022】
PCa製水平構造体7を所定のPCa製柱3の上に取付ける以前には、このPCa製柱3の柱頭部25上には、PCa製水平構造体7を水平方向(桁行方向Cまたは梁間方向D)に移動させるためのスペースが確保されている。
すなわち、PCa製柱3は「逆挿し柱」なので、その柱頭部25の上面では、柱用接続鉄筋は上方に突出していない。したがって、PCa製水平構造体7がPCa製柱3の上部で水平移動するときに、柱用接続鉄筋が邪魔になることはない。なお、PCa製水平構造体7の水平移動の邪魔にならなければ、若干の柱用接続鉄筋が柱頭部25から上方に突出している場合であってもよい。
柱梁接合構造体4では、PCa製水平構造体7をPCa製柱3の上部で水平方向に移動させることにより、大梁5同士(および、大梁5a同士)を梁接合部9で直接的に接合している。これにより、梁接合部9における現場打ちコンクリートをなくすることができる。
【0023】
次に、柱梁接合構造体4の組立手順について説明する。・・・
図3ないし図5において、下階(ここでは、基準階)ではPCa製柱3の施工が完了し、全てのPCa製柱3の柱頭部25上は、柱主筋,柱用接続鉄筋などは突出しておらず何もない状態になっている(図4(A1),(B1))。
なお、現場工事の手順として、下階における全てのPCa製柱3の施工が完了したのちPCa製水平構造体7を取付けるのが好ましいが、一部のPCa製柱3の取付けが完了していない場合であってもよい。・・・
【0024】
まず、一のPCa製水平構造体7をPCa製柱3の上に水平方向(たとえば、桁行方向C)に取付ける(図4(A2),(B2),図5(A))。このPCa製水平構造体7は、柱用仕口部6に対して二つの大梁5と一つの大梁5aとが平面視でT字状をなして一体的に取付けられている。大梁5と大梁5aには、床スラブ31を打設するための多数の鉄筋32が、予め水平方向に突出して設けられている。
この一のPCa製水平構造体7の柱用仕口部6を、PCa製柱3の直上に位置させた状態で、PCa製水平構造体7を矢印E1に示すように下降させて、柱用仕口部6をPCa製柱3上に載置する。
この一のPCa製水平構造体7が位置決めされると、PCa製柱3の柱頭部25に配置された複数の柱用スリーブ26の位置に、柱用仕口部6の複数の貫通孔29の位置が一致した状態になっている。
・・・
【0028】
上述のようにして、PCa製水平構造体を水平方向に移動させ、大梁5同士(および、大梁5a同士)を梁接合部9で直接的に接合している。
なお、図4,図5では、大梁5に対して直角に取付けられる二つのPCa製水平構造体が大梁5aのみにより構成された場合を示しているが、PCa製水平構造体は、大梁5のみにより構成された場合、柱用仕口部に大梁(または、小梁)が一体的に取付けられた場合などであってもよい。この柱用仕口部に大梁(または、小梁)が取付けられた場合には、柱用仕口部が、さらに他のPCa製柱の上に位置決めされることになる。
【0029】
図1中の符号A1,A2,A3,A4,・・・は、その階におけるPCa製水平構造体7を組み込む際のPCa製水平構造体7の順番を示している。また、隣り合うPCa製水平構造体7の間の梁接合部9における矢印Eは、次に組み込むPCa製水平構造体7の水平移動方向を示している。
たとえば、最初のPCa製水平構造体7を、符号A1に示すように位置決めする。この最初のPCa製水平構造体7は平面視でL字状をなして、その柱用仕口部6がPCa製柱3の上に位置決めされている。
次いで、平面視で直線状をなす二番目のPCa製水平構造体7(符号A2)を、矢印Eに示すように水平方向(ここでは、桁行方向C)に移動させ、PCa製柱3上に位置決めして、大梁5同士を梁接合部9で直接的に接合する。
次に、平面視でT字状をなす三番目のPCa製水平構造体7(符号A3)を、矢印Eに示すように水平方向(ここでは、桁行方向C)に移動して、PCa製柱3上に位置決めし、大梁5同士を梁接合部9で直接的に接合する。
次いで、平面視で直線状をなす四番目のPCa製水平構造体7(符号A4)を、矢印Eに示すように水平方向(ここでは、梁間方向D)に移動して、PCa製柱3上に位置決めし、大梁5同士を梁接合部9で直接的に接合する。その後は同じようにして、その階における多数のPCa製水平構造体7が順次組み立られる。
【0030】
このようにして、PCa製水平構造体7を水平方向の一方向のみ(桁行方向Cまたは梁間方向D)に移動させて、梁接合部9で大梁5同士(および、大梁5a同士)を直接的に接合している。
ところで、隣り合うPCa製水平構造体7の間の梁接合部のうち、どうしても大梁5同士(または、大梁5a同士)を直接的に接合することができない箇所が必然的に生じる。これは、PCa製水平構造体7の水平移動方向が、その箇所の梁接合部における梁用接続鉄筋19と梁用スリーブ16との係合方向に対して直角になるからである。・・・
【0031】
次に、矢印E6に示すように、一のPCa製水平構造体7上に上階のPCa製柱(逆挿し柱)3を取付ける(図4(A5),(B5),図5(E))。その後、矢印E7に示すように、他のPCa製水平構造体7上に、他の上階のPCa製柱(逆挿し柱)3を取付ける(図4(A6),(B6),図5(F))。
これらPCa製柱3には、柱用接続鉄筋28が、柱脚部30から下方に突出して設けられている。上階のPCa製柱3は、柱用仕口部6の直上に配置されたのち真っ直ぐ下方に移動することにより(矢印E6,E7)、柱用仕口部6上に載置されて位置決めされる。すると、上階のPCa製柱3の柱用接続鉄筋28は、柱用仕口部6の貫通孔29を貫通し、且つ下階のPCa製柱3の柱用スリーブ26に挿入される。
【0032】
こうして、その階(下階,基準階)および上階の柱梁接合構造体4やPCa製柱3の一部(または、全部)の組立が完了した後、各柱梁接合部8における目地(柱用仕口部6の上下の目地),柱用仕口部6の貫通孔29,柱頭部25の柱用スリーブ26などに、グラウトを注入(または、圧入充填)して固定する。・・・」
オ.「【実施例】
【0035】
次に、本実施形態の各種変形例について説明する。なお、本実施形態と同一または相当部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
図6ないし図9に示す各変形例においても、多層建物の柱梁接合構造体4は、柱用仕口部6と大梁5,大梁5aとを予め一体化したPCa製水平構造体7が、PCa製柱3の上に水平方向に取付けられている。
柱用仕口部6は、柱梁接合部8で少なくとも下階のPCa製柱3に直接的に接合されている。大梁5同士(および、大梁5a同士)は、隣り合うPCa製柱3とPCa製柱3の間(たとえば、ほぼ中央部)に位置する少なくとも一つの梁接合部9で直接的に接合されている。
【0036】
第1の変形例(図6(A))では、隣り合うPCa製柱3,3の間に二つの梁接合部9が位置する場合を示している。この第1の変形例では、図6(A)中の右側のPCa製水平構造体7の大梁5は、一箇所の梁接合部9で分割されていると考えてもよいが、図6(A)中の左右のPCa製水平構造体の間に、PCa製水平構造体としての中間梁(大梁5)が配置されていると考えることもできる。・・・
このようにすれば、現場で取り扱うユニット(すなわち、PCa製水平構造体7,大梁5)が軽量化するので、小型の重機を使用することができ、現場作業がさらに容易になる。
【0037】
図6(B)は第2の変形例を示している。・・・
柱主筋27の柱用接続鉄筋28を、柱用仕口部6の貫通孔28を貫通させ、下階のPCa製柱3の柱頭部25の柱用スリーブ26と、上階のPCa製柱3の柱脚部30の柱用スリーブ26とに挿入して固定している。
【0038】・・・
柱用接続鉄筋28を、柱用仕口部6の貫通孔28を貫通させて、下階のPCa製柱3の柱頭部25の柱用スリーブ26と、上階のPCa製柱3のシース管41に挿入して固定している。なお、シース管41を設けないで貫通孔40のみを形成した場合でもよい。
【0039】
こうして、図6(B)では、上下階のPCa製柱3同士を柱梁接合部8で柱用仕口部6を介して接合している。このように、上階のPCa製柱3に柱用スリーブ26,貫通孔40,シース管41などを設ければ、PCa製水平構造体7をPCa製柱3上に取付けた後、柱用接続鉄筋28を柱用仕口部6の貫通孔29および下階のPCa製柱3の柱頭部25の柱用スリーブ26などに挿入し、その後、柱用仕口部6上に上階のPCa製柱3を載せて位置決めすることになる。・・・
【0040】
図7,図8,図9にそれぞれ示す第3,第4,第5の変形例では、PCa製水平構造体7を所定の構成にするかまたは鉄骨部材で連結する第1の手段と(図7)、所定の梁接合部9で制振デバイス50(または、鉄骨部)を介して大梁5a同士を接合する第2の手段と(図8)、対向するPCa製柱3とPCa製柱3との間で耐震壁51を大梁5と直交する方向(梁間方向D)に設ける第3の手段(図9)とのうち、少なくとも一つの手段により、現場打ちコンクリートの箇所(図1中の黒三角印Bで示す箇所)を全くなくしている。・・・」
カ.「【符号の説明】
【0047】・・・
6 柱用仕口部 7 PCa製水平構造体」
キ.【図1】ないし【図9】には本発明の実施形態の一例が、【図10】ないし【図15】には従来技術が図示されている。
そしてそれらには、「本発明の実施形態」に係る「PCa製水平構造体7」が、柱用仕口部と梁とを予め一体化したものとして記載されている。

(2)上記記載によれば、原出願の当初明細書等に記載された「PCa製水平構造体」は、プレキャストコンクリートで「柱用仕口部と梁とを予め一体化した」構造体であると認められ、柱用仕口部と一体化されている「梁」は、柱と柱の長さを有するものでも、それより短い長さのものでもよいと解される。
しかしながら、梁主筋がコンクリートで被覆されることなく柱用仕口部から突出するだけのPCa製水平構造体、すなわち、(b)構造体については、原出願の当初明細書等には記載されていないし示唆もない。

(3)請求人は、審判請求書「3.(1)」において、次のように主張している。
「『予め柱用仕口部と一体化された梁主筋を柱用仕口部から突出させること』は、当然に必要なものであるところ、『柱用仕口部から突出した梁主筋をコンクリートで被覆するか否か、』及び『PCa製水平構造体とPCa製梁との継手位置を梁の中間部にするか梁の端部にするか』という事項は、発明による課題の解決に関係がない単なる設計的事項、即ち、任意の付加的事項であると、当業者であれば当然に理解できるものと思料します。
また、原出願の段落0035?0036及び図6(A)、(B)に、PCa製水平構造体とPCa製梁との継手箇所を1箇所から2箇所に変更したり、PCa製水平構造体とPCa製梁との継手位置を梁の中央側から端側に変更したりすることが変形例として記載されているように、このような継手箇所の増減や継手位置の変更は、当業者が適宜行う設計変更であり、添付の参考図1、2に示すように、継手位置を梁の中間部にするか梁の端部にするかという事項は、本来的に技術上の意義を有さないものであって、本分割出願により新たな技術上の意義が導入されないことは明らかです。」

しかし、上記(2)に記載したように、原出願の当初明細書等において、「PCa製水平構造体」は、「柱用仕口部と梁とを予め一体化したPCa製水平構造体」として一貫して取り扱われており、柱用仕口部から突出した梁主筋をコンクリートで被覆しない(b)構造体、すなわち、柱用仕口部と一体化した部分が、プレキャストコンクリート梁でなくてもよいことは何ら記載されていないし示唆もない。
よって、原出願の当初明細書等に記載の発明の課題は「柱用仕口部と梁とを予め一体化したPCa製水平構造体」を水平移動させて、PCa製柱の上に設置することであるところ、その「PCa製水平構造体」も、「柱用仕口部と梁とを予め一体化した」ものと解すのが相当である。
この点について、審判請求人は、(a)構造体とするか(b)構造体とするかは、「発明による課題の解決に関係がない単なる設計的事項、即ち、任意の付加的事項である」と主張するものの、当該主張は、(a)構造体から(b)構造体を容易想到できることを裏付けるものであるかもしれないが、当初明細書等に(b)構造体が記載されていた又は記載されていたに等しいということを裏付けるものではないから採用できない。

4.分割の適否の判断
そうすると、(a)構造体と(b)構造体とを含む、本願の特許請求の範囲に記載された「上下方向の貫通孔が形成された柱用仕口部と梁主筋とが予め一体化され、該梁主筋が該柱用仕口部から突出したPCa製水平構造体」のうち(b)構造体の部分は、原出願の当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、本願は特許法第44条第1項により適法に分割出願されたものではない。
したがって、本願は、現実の出願日である平成23年1月5日に出願されたものとして取り扱うべきものである。


第4 本願発明の特許性について
1.本願発明
本件出願の請求項1?3に係る発明は、上記「第3 2.」に記載されたとおりであり、このうち請求項1に係る発明を、以下「本願発明」という。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2008-31838号公報(以下単に「刊行物」という。)は、原出願の公開公報であり、前記「第3 3.(1)」のア.?キ.に記載した事項が記載されている。

すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「PCa製柱とPCa製の梁とが接合された建物の柱梁接合構造体であって、
前記PCa製柱の柱頭部の上面では柱用接続鉄筋が上方に突出しておらず、且つ前記柱頭部には柱継手部材が埋め込まれており、
上下方向の貫通孔が形成された柱用仕口部とPCa製の梁とが予め一体化され、PCa製の梁の中の梁主筋が柱用仕口部を貫通して突出したPCa製水平構造体を、水平方向に移動させて下階の前記PCa製柱の上に設置し、上階のPCa製柱の前記柱用接続鉄筋を前記PCa製水平構造体の前記貫通孔を貫通させ、且つ前記下階のPCa製柱の前記柱継手部材で前記下階のPCa製柱の柱主筋と継手することにより、前記下階のPCa製柱と前記PCa製水平構造体とを接合し、
前記PCa製水平構造体又は前記PCa製の中間梁を、水平方向に移動させ、これらの梁主筋を梁継手部材で継手することにより、前記PCa製水平構造体と前記PCa製梁とを接合した建物の柱梁接合構造体。」

3.本願発明と引用発明との対比
(1)本願発明の「柱用仕口部と梁主筋とが予め一体化され、該梁主筋が該柱用仕口部から突出したPCa製水平構造体」が(a)構造体の態様である場合
引用発明の「柱用仕口部とPCa製の梁とが予め一体化され、PCa製の梁の中の梁主筋が柱用仕口部を貫通して突出したPCa製水平構造体」は、本願発明の「柱用仕口部と梁主筋とが予め一体化され、該梁主筋が該柱用仕口部から突出したPCa製水平構造体」の一態様である(a)構造体と同じものであるので、本願発明の「柱用仕口部と梁主筋とが予め一体化され、該梁主筋が該柱用仕口部から突出したPCa製水平構造体」に相当する。
そうすると、両発明に相違点は存在しないので、本願発明は引用発明と同一の発明であるといえる。

(2)本願発明の「柱用仕口部と梁主筋とが予め一体化され、該梁主筋が該柱用仕口部から突出したPCa製水平構造体」が(b)構造体の態様である場合
引用発明の「柱用仕口部とPCa製の梁とが予め一体化され、PCa製の梁の中の梁主筋が柱用仕口部を貫通して突出したPCa製水平構造体」と、本願発明の「柱用仕口部と梁主筋とが予め一体化され、該梁主筋が該柱用仕口部から突出したPCa製水平構造体」の一態様である(b)構造体とは、「柱用仕口部と梁主筋とが予め一体化されPCa製水平構造体」である点で共通するものの、引用発明が「梁主筋がコンクリートで被覆されることなく柱用仕口部から突出するだけの」ものではない点で両者は相違する。

そこで上記相違点について検討する。
PCa製構造体からなる仕口部において、梁主筋をコンクリートで被覆しない状態で突出させたものは周知(例えば、特開平01-226943号公報,特開平04-261934号公報,特開平06-146476号公報,特開平06-017481号公報等参照)であり、引用発明の柱用仕口部を、該周知の構成のものとして上記相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明、及び当業者に周知の事項から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、及び当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって本願発明は、引用発明と同一の発明であるから、若しくは引用発明、及び当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第1項第3号、若しくは同条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-03 
結審通知日 2012-02-07 
審決日 2012-02-27 
出願番号 特願2011-498(P2011-498)
審決分類 P 1 8・ 03- Z (E04B)
P 1 8・ 113- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五十幡 直子  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 仁科 雅弘
中川 真一
発明の名称 建物の柱梁接合構造体、建物および接合方法  
代理人 一色国際特許業務法人  
代理人 一色国際特許業務法人  
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