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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C03B
管理番号 1255473
審判番号 不服2009-11768  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-29 
確定日 2012-04-10 
事件の表示 特願2003-515460「加熱ガラスシートをロール曲げする装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年2月6日国際公開、WO03/10100、平成16年12月2日国内公表、特表2004-536012〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2002年6月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年6月19日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年6月17日付けで手続補正書が提出され、平成20年5月16日付け拒絶理由通知に対して同年8月26日付けで意見書が提出されたが、平成21年3月19日付けで拒絶査定されたので、これに対し、同年6月29日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願発明は、平成17年6月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項10に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりのものである。
「一搬送方向に沿って炉加熱チャンバ内でガラスシートを搬送して、曲げ温度に加熱する段階と、
加熱チャンバ内で加熱されたガラスシートを、加熱チャンバの出口に隣接して配置された、回転駆動される水平ロール上で搬送することを続ける段階と、
加熱チャンバの両側壁で、加熱チャンバの外部の対をなす数組の曲げロールを支持する段階を有し、各組の曲げロールは、搬送方向に沿って徐々に増大する傾斜で炉内に突出しており、
搬送されるガラスシートの両側部と係合する数組の曲げロールを回転駆動させ、搬送方向に対して横方向に沿ってガラスシートを曲げる段階を更に有することを特徴とする加熱ガラスシートのロール曲げ方法。」

3 刊行物に記載された発明
(1)引用例1について
(i)引用例1の記載事項
これに対し、本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開平5-279065号公報(以下「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。
(ア)「本発明は例えば加熱炉とプレス曲げ装置との間に配置される板ガラスの予備曲げコンベアロール装置に関する。」【0001】
(イ)「・・・本発明は、軟化点近くまで加熱された板ガラスをプレス成形位置まで予備曲げしつつ搬送するコンベアロール装置を、板ガラス下面の中央部から外側部にかかる部分を支持する直線状の第1コンベアロールと、板ガラス下面の外側部を支持する直線状の第2コンベアロールとを板ガラスの搬送方向に交互に配列して構成し、しかも第2コンベアロールについては第1コンベアロールよりも傾斜角を大きくするとともにその傾斜角を調整可能とした。」【0006】
(ウ)「以上のごとき構成の予備曲げコンベアロール装置10を用いて板ガラスGを曲げ成形する方法を以下に述べる。先ず、予備曲げコンベアロール装置10を構成する複数本の第1コンベアロール11…については略水平に近い角度で固定し、第2コンベアロール12…については、加熱炉1の搬出口に近い第2コンベアロール12の傾斜角が小さく、プレス成形装置2に近い第2コンベアロール12の傾斜角が大きくなるように徐々にその傾斜角を変化させる。
斯かる状態で加熱炉1から搬出された板ガラスGは、コンベアロール装置10によって搬送される間に図7に示すように第1コンベアロール11と第2コンベアロール12によって徐々に予備成形される。・・・」(【0014】【0015】)

(ii)引用例1に記載された発明
以上の(ア)?(ウ)の記載事項より、引用例1には次の発明が記載されている。
まず、記載事項(ア)(イ)より、引用例1には、予備曲げコンベアロール装置が記載されており、これは、軟化点近くまで加熱された板ガラスを搬送支持する第1コンベアロールと、板ガラス下面の外側部を支持し、傾斜角が調整可能であり、傾斜角を第1コンベアロールより大きく設定した第2コンベアロールからなっている。
そして、同(ウ)には、これを用いた板ガラスの曲げ成型方法が記載されており、第1コンベアロールを略水平に近い角度で固定し、第2コンベアロールは、加熱炉の搬出口に近い部分では傾斜角は小さいが、板ガラスの進行方向に沿って傾斜角を徐々に大きくなるように設定し、これに加熱炉から搬出させた板ガラスを搬送して予備形成することからなっている。
以上の記載事項から、引用例1には次の発明(以下「引用例1発明」という)が記載されているとすることができる。
「加熱炉から搬出された板ガラスを搬送しつつ曲げ成形する方法であって、軟化点近くの温度まで板ガラスを加熱し、加熱された板ガラスを加熱炉出口近くに設けられた第1コンベアロールで支持し、板ガラスの外側に進行方向に沿って傾斜角度を徐々に増加した第2コンベアロールを設け、第1及び第2のコンベアロールにより板ガラスを搬送しつつ曲げ成形する方法。」

(2)引用例2について
(i)引用例2の記載事項
同じく、仏国特許発明第2221409号明細書(以下「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。
(ア)「La presente invention se rapporte au formage des feuilles de verre transpotees horizontalement sur un train de rouleaux. Le procede de l'invention peut s'appliquer aussi bien a un ruban continu tel que celui produit par laminage a la sortie du four de fusion qu'a des feuilles individuelles decoupees a l'avance. Dans ce dernier cas, les feuilles sont rechauffees au prealable jusqu'a leur temperature de ramollissement dans un four a l'interieur duquel elles sont transportees sur des rouleaux horizontaux.」(第1頁1?9行)
(当審による訳)「本発明は、1組のローラ上で水平に搬送されるガラス板の成形加工に関する。本発明による方法は、溶解窯の出口でロールアウト法により形成されるような連続ガラス帯にも、予めカットされた個々のガラス板にも同様に適用可能である。後者の場合、ガラス板は、これらのガラス板が水平ローラで内部に搬送される窯の中で、予め融点まで加熱される。」
(イ)「On voit, sur la figure 2, un exemple d'inclinaison des rouleaux 5 et 6 pendant l'operation de bombage d'une feuille de verre 17. Cette feuille de verre transportee par les rouleaux ne repose sur ceux-ci que par ses bords et s'affaisse sous l'effet de son propre poids pour prendre la forme incurvee representee sur cette figure 2.」(第2頁24?29行)
(当審による訳)「図2では、ガラス板17を曲げ加工する操作(bombage)の間にローラ5と6を傾斜させる1つの例が示されている。ローラにより搬送されるこのガラス板は、ガラス板の縁だけでローラにより保持されるので、その固有の重量のためにへこみ、図2に示されたような湾曲形状を取る。」
(ウ)「Sur cette meme fig.2 on a represente une variante du dispositif d'inclinaison des rouleaux orientables. Selon cette variante, la plaque 11 portant les butees 9 peut etre elevee ou abaissee par l'intermediaire d'une cremaillere 25 dont elle est solidaire et qui est en prise avec une roue dentee 26. Un dispositif similaire est place de chaque cote de la cellule de formage et les roues dentees 26 peuvent etre commandees simultanement par des chaines 26a representees en pointille sur la figure. 」(第2頁30?37行)
(当審による訳)「この図2では、配向可能なローラの傾斜装置の変形実施形態を示した。この変形実施形態によれば、ストッパ9を支持するプレート11は、このプレートが結合されていて歯車26に係合するラック25を介して、上げ下げすることができる。同様の装置が成形加工セルのそれぞれの側に配置されており、歯車26は、図では点線で示したライン26aによって同時に制御することができる。」
(エ)図2を参照すれば、上記(ウ)に記載されたローラの傾斜装置は、当該ガラス板を加熱成形する装置の外側に設置されていることを確認することができる。、
(オ)「S'il s'agit de bomber un ruban de verre produit en continu, par exemple par laminage, les rouleaux de trasport du poste de bombage sont regles a des inclinaisons differentes depuis l'entree jusqu'a la sortie du poste de bombage : les premiers rouleaux ont une inclinaison tres faible sur l'horizontale et cette inclinaison est accentuee d'une paire de rouleaux a la suivante jusqu'a obtenir la courbure desiree au voisinage de la sortie du poste de bombage. 」(第2頁38?第3頁6行)
(当審による訳)「たとえばロールアウト法により連続生産されるガラス帯に曲げ加工を施す場合、曲げ加工部署の搬送ローラは、この部署の入口から出口まで異なる傾斜になるように調節される。第1のローラの水平線上での傾斜はごくわずかであり、この傾斜は、曲げ加工部署の出口付近で所望の湾曲を得るまで、一組のローラから次の組のローラへと大きくされていく。」
(カ)「Il n'est pas necessaire que tous les rouleaux de la cellule de formage soient inclinables. C'est ainsi que sur la fig.4 on a represente une cellule de formage dans laquelle des rouleaux tels que 18 et 19, intercales de facon analogue a ceux de la fig.3, cooperent avec des rouleaux horizontaux tels que 21, eux-memes intercales entre les rouleaux 18 et19. Ces rouleaux 21 sont avantageusement entraines en rotation par les pignons 22 et 22a. L'axe des rouleaux 21 est situe a un niveau inferieur a celui des axes d'articulation 7 des boitiers 10 des rouleaux inclinables. On peut ainsi obtenir des profiles tels que ceux representes sur la fig.4, c'est a dire presentant un double bonbage ou deux ailes.」(第3頁最下行?第4頁10行)
(当審による訳)「成形加工セルのすべてのローラが傾斜可能であるようにする必要はない。そのため、図4では、図3と同様に配置されたローラ18、19等が、これらのローラ18と19の間にそれ自体が配置された水平ローラ21と協働している成形加工セルを示した。水平ローラ21は、有利には、ピニオン22と22aとによって回転駆動される。ローラ21の軸は、傾斜可能なローラの支持体またはハウジング10の連結軸7よりも下の位置に配置されている。従って、図4に示されたような形材、すなわち2重に曲げ加工された形材または2個のヨークを有する形材が得られる。」

(ii)引用例2に記載された発明
ア 引用例2における記載事項(ア)によれば、引用例2には、加熱されたガラス板をローラ上で水平に搬送することで成形加工することに関する技術が記載されている。
イ 記載事項(イ)?(オ)には図2に示された実施例について記載されている。同(イ)によれば、ローラにより搬送されるガラス板を、当該ガラス板の縁のみを保持するローラを用いることで、当該ガラス板に湾曲形状を形成するとされている。
そして、同(ウ)には、ローラの傾斜装置が示されており、歯車、プレート、ラック等から構成されてローラの傾斜角度を調整するものであるが、同(エ)によれば、当該傾斜装置はガラス板の成形装置の外側に設置されている。
また、同(オ)には、ガラス帯に曲げ加工を施す場合の曲げ加工部署での搬送ローラの傾斜角度について記載されており、搬送ローラは、曲げ加工部署の入り口から出口にかけて角度を増加させるよう調整されている。
ウ 記載事項(カ)には、図4に示される実施例について記載されており、傾斜された一対のローラの間に、これと協働して回転駆動する水平ローラを使用することが記載されている。
図4の実施例に関する記載事項(カ)には、図2の実施例に関する同(イ)?(オ)に相当する詳細な説明は省略されているが、図2の実施例についての詳細部分は、図4の実施例についても共通するものである。また、図面を参照すれば、図2及び図4の実施例では、ガラス板のロール曲げ加工は、加熱炉内で行われていることを確認することができる。
以上より、引用例2には、次の技術が記載されているといえる。
「加熱されたガラス板を、加熱炉内で水平ローラ及び傾斜された搬送ローラでガラス板及びその縁を支持・搬送しつつ、湾曲形状に形成されたガラス板を成形するに当たり、加熱炉内で一連の工程を行うこととし、このため、傾斜角度を調整するためのローラの傾斜装置を、ガラス板の成形装置の外側に設置すること。」

4 対比・判断
(1)対比
引用例1発明のガラス板は、加熱炉内で軟化点近くの温度まで加熱されているので、本願発明にいうところの「炉加熱チャンバ内で」「曲げ温度に加熱」されているといえる。
引用例1発明における第1コンベアロールは、略水平に固定され、加熱されたガラス板を支持・搬送するので、その機能から見て本願発明における「水平ロール」に相当する。
引用例1発明における第2コンベアロールは、板ガラスの外側に進行方向に沿って配置され、その傾斜角度を徐々に増加させるように設定されているので、本願発明における「曲げロール」に相当するものである。
引用例1発明においては、これらのロールを回転駆動させて加熱されたガラス板を成形しているので、本願発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。
(2)一致点と相違点
(i)一致点
「一搬送方向に沿って炉加熱チャンバ内でガラスシートを搬送して、曲げ温度に加熱する段階と、
加熱チャンバ内で加熱されたガラスシートを、加熱チャンバの出口に隣接して配置された、回転駆動される水平ロール上で搬送することを続ける段階と、
各組の曲げロールは、搬送方向に沿って徐々に増大する傾斜で炉内に突出しており、
搬送されるガラスシートの両側部と係合する数組の曲げロールを回転駆動させ、搬送方向に対して横方向に沿ってガラスシートを曲げる段階を更に有することを特徴とする加熱ガラスシートのロール曲げ方法。」
(ii)相違点
本願発明は「加熱チャンバの両側壁で、加熱チャンバの外部の対をなす数組の曲げロールを支持する段階を有し」、加熱チャンバ内でロール曲げするのに対し、引用例1発明では、ロール曲げを加熱下で行っていない点。
(3)判断
引用例1発明では、加熱炉から搬出されたガラス板を、特に加熱手段を施すことなくロール曲げ加工している。しかし、ガラスの加工はガラスが軟化点近くに加熱された状態で行うのが通常であるから、温度を安定化させることによる曲げ加工の安定性を考慮すれば、引用例1発明のロール曲げ加工を加熱炉内で行おうとすることは、当業者が当然に検討するところである。
一方、引用例2には、加熱炉内で水平ロールと傾斜ロールを用いてガラス板を曲げ加工し、傾斜ロールの傾斜装置を加熱炉の外側に配置する技術が記載されているので、引用例1発明において、当該技術を採用すること、すなわち、ロール曲げ加工を加熱炉内で行うこととし、これを実施するために傾斜ロールの傾斜装置を加熱炉の外側に配置することは、当業者が容易に想到することろである。

5 結論
以上のとおりであるので、本願の請求項10に係る発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-17 
結審通知日 2011-10-24 
審決日 2011-11-30 
出願番号 特願2003-515460(P2003-515460)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 直也  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 中澤 登
深草 祐一

発明の名称 加熱ガラスシートをロール曲げする装置および方法  
代理人 弟子丸 健  
代理人 井野 砂里  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 大塚 文昭  

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