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審決分類 審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1255493
審判番号 不服2010-17385  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-03 
確定日 2012-04-11 
事件の表示 特願2006-506701「制御パラメータの組合せを調整するシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月23日国際公開、WO2004/081782、平成19年10月18日国内公表、特表2007-529040〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理由
第1 手続の経緯
本願は、パリ条約による優先権主張を伴って2004年3月12日に国際事務局に対してなされた国際出願による特許出願であって、平成21年2月23日付け拒絶理由通知に対し、平成21年5月27日付けで手続補正がなされたが、平成22年4月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年8月3日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成22年8月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年8月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正前及び本件補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲についてするもので、請求項1については、本件補正前にに「ディスプレイ画面」とあったところ「タッチ画面」と補正するとともに、「ユーザが」「前記座標系内で位置を自由に示す」対象を「前記タッチ画面上」と限定し、さらに「前記第1の制御パラメータの値の前記範囲の値を有する第1の座標軸と、前記第2の制御パラメータの値の前記範囲の値を有する第2の座標軸とを表示し、前記第1及び前記第2の座標軸の交点は、前記第1及び前記第2の制御パラメータの値のデフォルトの組合せを表す段階」との要件を付加するものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものである。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について検討する。

平成22年8月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりのものである(以下、「本願補正発明」という。)。
「 【請求項1】
ユーザが、電子システムを制御する少なくとも第1及び第2の制御パラメータを調整することができる方法であって、
-タッチ画面上に座標系を表示し、前記座標系の第1の座標は前記第1の制御パラメータの値の範囲を表し、前記座標系の第2の座標は前記第2の制御パラメータの値の範囲を表す段階と、
-前記第1の制御パラメータの値の前記範囲の値を有する第1の座標軸と、前記第2の制御パラメータの値の前記範囲の値を有する第2の座標軸とを表示し、前記第1及び前記第2の座標軸の交点は、前記第1及び前記第2の制御パラメータの値のデフォルトの組合せを表す段階と、
-前記第1及び前記第2の制御パラメータの値のうち目下選択されている組合せに対応して、前記座標で位置を視覚的に示す段階と、
-前記ユーザが、前記タッチ画面上の前記座標系内で位置を自由に示すことによって、
前記第1及び前記第2の制御パラメータの値の新しい組合せを選択できる段階と、
-前記第1及び前記第2の制御パラメータの値の間の所望の均衡を表して前記座標系での少なくとも1つの位置を決定し示す段階と
を有する、方法。」

2.優先権の主張について
(1)本願は、受理官庁としての国際事務局に対し2004年3月12日を国際出願日としてなされた国際出願による特許出願(以下、「国際特許出願」ということがある。)であって、該国際出願には、2003年3月14日を出願日とする欧州特許出願(出願番号:EP 03100661.2)に基づいて、パリ条約による優先権主張がなされている。

(2)特許協力条約に基づく国際特許出願については、特許法第184条の3第2項の規定により、優先権主張手続に関して、特許法第43条の規定は適用されず、特許協力条約及び特許協力条約に基づく規則が適用されるところ、同規則17.1(本願の国際出願日時点の2004年3月12日時点のもの。)には、優先権書類について次のとおり規定されている。
「17.1 先の国内出願又は国際出願の謄本を提出する義務
(a) 第8条の規定により先の国内出願又は国際出願に基づく優先権の主張を伴う場合には、当該先の国内出願又は国際出願を受理した当局が認証したその出願の謄本(「優先権書類」)は、既に優先権書類が優先権を主張する国際出願とともに受理官庁に提出されている場合並びに(b)及び(bの2)の規定に従う場合を除くほか、優先日から十六箇月以内に出願人が国際事務局又は受理官庁に提出する。ただし、当該期間の満了後に国際事務局が受理した当該先の出願の写しは、その写しが国際出願の国際公開の日前に到達した場合には、当該期間の末日に国際事務局が受理したものとみなす。
(b) 優先権書類が受理官庁により発行される場合には、出願人は、優先権書類の提出に代えて、受理官庁に対し、優先権書類を、作成し及び国際事務局に送付するよう請求することができる。その請求は、優先日から十六箇月以内にするものとし、また、受理官庁は、手数料の支払を条件とすることができる。
(bの2) 受理官庁又は国際事務局が優先権書類を実施細則に定めるところにより電子図書館から入手可能な場合は、出願人は、次のいずれかの方法により優先権書類の提出に代えることができる。
(i) 受理官庁に対し、優先権書類を電子図書館から入手し、国際事務局に送付するよう請求すること。
(ii) 国際事務局に対し、優先権書類を電子図書館から入手するよう請求すること。
その請求は、優先日から十六箇月以内に行うものとし、また、受理官庁又は国際事務局は手数料の支払を条件とすることができる。
(c) (a)、(b)及び(bの2)の要件のいずれも満たされない場合には、指定官庁は、(d)の規定に従うことを条件として、優先権の主張を無視することができる。ただし、指定官庁は、事情に応じて相当の期間内に出願人に優先権書類を提出する機会を与えた後でなければ、優先権の主張を無視することはできない。
(d) 指定官庁は、(a)に規定する先の出願が国内官庁としての当該指定官庁に出願されている場合又は当該指定官庁が実施細則に定めるところにより優先権書類を電子図書館から入手可能な場合は、(c)の規定により優先権の主張を無視することはできない。」

(3)そこで、本件の手続が、上記規則を充足しているか否かについて検討すると、WIPO国際事務局が2004年11月19日付けで出願人に対して発送し、その写しを指定国である日本国特許庁に送付した、「優先権主張の書類提出に関する通知(NOTIFICATION CONCERNING SUBMISSION OR TRANSMITTAL OF PRIORITY DOCUMENT)」(PCT/IB/304(January 2004))には、優先日(Priority date)が「14 March 2003(14.03.2003)」の優先権主張に関して、優先権書類の受領日(Date of receipt of priority document)は「10 Nove 2004(10.11.2004)*」(アスタリスクが付されており、該通知の項目3.に該当する。)と記載されており、これらの優先権書類は、特許協力条約に基づく規則17.1(a)で規定する提出期限である、優先権主張日から16箇月を経過した後にWIPO国際事務局により受領されたものであると認められる。

また、上記受領日(2004年11月10日)は、本件国際出願の国際公開の日(2004年9月23日である。)前ではないから、本件の手続は、同規則17.1(a)のただし書には該当しない。

そして、同規則17.1(b)又は(bの2)の請求が、優先日から16箇月以内になされた事実も認められない。

したがって、本件については、同規則17.1(a)、(b)、及び(bの2)の要件のいずれも満たされない場合に該当する。

(4)次に、上記規則17.1(c)のただし書の規定について検討すると、国際特許出願についての優先権主張の手続について、上記規則17.1(c)ただし書の規定には特許法施行規則第38条の14が対応しており、優先権の主張を伴う国際特許出願をする者は、上記規則17.1(a)に規定する優先権書類を、国内書面提出期間が満了する時の属する日後2月以内に特許庁長官に提出することができると規定され、国際段階で優先権書類の提出がない場合においても、特許庁に対して優先権書類を提出する機会が与えられている。

しかしながら、本件において、上記施行規則の規定に基づいて、国内書面提出期間が満了する時の属する日(本件においては、優先権主張日から30箇月、すなわち、2005年9月14日)後2月以内(2005年11月14日まで)に、特許庁に対して優先権証明書の提出がなされた事実は認められない。

(5)次に、上記規則17.1(d)の規定について検討すると、優先権主張の基礎とされた先の出願は、国内官庁としての日本国特許庁に出願されているわけではない。
また、上記規則17.1(d)に関係する実施細則は、審決時においては、特許協力条約に基づく実施細則715号(インターネット<URL http://www.wipo.int/pct/en/texts/ai/s715.html>より入手可能。)として規定されているが、該実施細則715号の発効日は2010年1月1日であって、本件における特許法施行規則第38条の14に規定された国内書面提出期間が満了する時の属する日(本件においては、優先権主張日から30箇月、すなわち、2005年9月14日)後2月以内(2005年11月14日まで)において、日本国特許庁が国際事務局に対し該実施細則715号(a)(i)に定める通知をし(has notified)、かつ、該実施細則715号(a)(ii)に規定されているとおり、本件の優先権書類が当該電子図書館において保有され(is held)、請求人が該実施細則715号(a)(ii)に定める承諾をし(has authorized)ていた事実は認められない。
よって、日本国特許庁が上記規則17.1(d)に規定されたとおり、実施細則に定めるところにより、本件の優先権書類を電子図書館から入手可能であったとする事実は認められない。

(6)以上によれば、本件は、特許協力条約に基づく規則17.1(a)、(b)及び(bの2)の要件のいずれも満たされない場合であって、同規則17.1(c)のただし書により与えられた提出機会にも優先権書類の提出がなされておらず、また、上記規則17.1(d)の規定の適用もないため、同規則17.1(c)本文の規定により、上記優先権主張の効力を認めることはできない。

以上のとおり、本願は、2004年3月12日を国際出願日としてなされた、パリ条約による優先権主張の効力が認められない出願であるから、以下、進歩性の要件についての判断は、上記国際出願日を基準日として行う。

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2003-114678号公報(公開日:平成15年4月18日)(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の技術事項が記載されている。
(イ)「【0009】キーボードとマウスというパーソナル・コンピュータの標準的なユーザ入力環境下で、複数種のアナログ・パラメータを利用しようとした場合、スタティックなものでよければ数値をキーボードから直接入力することができ、ダイナミックなものであればポインティング・デバイスでパラメータにあるカーソルをドラッグするような入力形態が一般的である。しかしながら、映像系や音楽系のアプリケーションのように即時性が求められる場合には、複数のパラメータを同時に扱うのに適しているとは言い難い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、即時性が求められる操作を、キーボードやマウスなどのユーザ入力装置からの入力操作に応答して即時に操作を反映させることができる、優れた情報処理装置及び情報処理方法、並びに記憶媒体を提供することにある。
【0011】本発明の更なる目的は、キーボードとマウスというパーソナル・コンピュータの標準的なユーザ入力環境下で、即時性が求められる複数種のアナログ・パラメータをダイナミックに入力することができる、優れた情報処理装置及び情報処理方法、並びに記憶媒体を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、ユーザ入力に応じてパラメータ値を変更して所定の処理を実行する情報処理装置であって、モード切替に割り当てられた第1のユーザ入力装置と、パラメータ操作に割り当てられた第2のユーザ入力装置と、パラメータを操作するためのパラメータ操作平面と、前記パラメータ操作平面上の水平軸又は垂直軸にそれぞれパラメータを割り当てるパラメータ割り当て手段と、前記第1のユーザ入力装置に対するユーザ入力操作に応答して、前記第2のユーザ入力装置を前記パラメータ操作平面上でパラメータ操作するためのパラメータ操作モードに遷移させる制御手段とを備え、前記パラメータ操作モード下では、前記パラメータ操作平面上で、前記第2のユーザ入力装置からのユーザ入力に従って水平軸又は垂直軸にそれぞれ割り当てられたパラメータ値を変更する、ことを特徴とする情報処理装置である。パラメータの割り当ては、操作平面上で、水平軸又は垂直軸のどちらに割り当てることも可能である。」(第7欄第19行?第8欄第10行)

(ロ)「【0016】ここで、前記第1のユーザ入力装置は例えばキーボード又はキーボード上の所定のキーを持つ入力装置であり、また、前記第2のユーザ入力装置はマウス又はトラックパッドなどの座標指示装置である。複数のキーを有する入力装置及び座標指示装置などのユーザ入力装置には、例えば、キーボードのような押下キーを複数備えたデバイスや、マウスやトラックパッド、トラックポイントのような座標指示機能を備えたデバイス、さらには、押下ボタンやジョイスティックなど多様な入力手段を備えたゲーム用コントローラなどが含まれる。
【0017】また、前記パラメータ操作平面を画面表示するパラメータ操作平面表示手段又はステップをさらに備え、前記パラメータ操作平面上では現在のパラメータ値に対応する位置に指示ポイントを表示している。すなわち、パラメータ操作平面上では、指示ポインタの出現位置が、アナログ的なパラメータ値と2次元的に相対させて表示される。
【0018】所定キーの押下操作により、指示ポインタが出現するとともに、表示中はマウスやトラックポイントで指示ポインタを移動させることができ、その2次元的な座標位置を基にパラメータが決定する。パラメータの性質によっては、指示ポインタの座標位置に対して複数のアナログ要素を結び付けることができる。
【0019】前記パラメータ操作モードに遷移したときに、該座標指示装置における座標指示位置を前記パラメータ操作平面上での各パラメータ値に対応する位置にプリセットする。すなわち、パラメータ操作モードに遷移すると同時にマウス・カーソルは指示ポイントの位置にセットされるので、ユーザはパラメータ操作のために画面上で指示ポイントの場所を探したりマウス・カーソルを移動させる手間を省くことができ、瞬時にパラメータ操作を行うことができる。」(第9欄第10?41行)

(ハ)「【0051】次いで、計算機システム100上での音響コンテンツの処理について説明する。音響コンテンツの処理は、実際には、CPU101上で音響コンテンツをリアルタイムで編集並びに再生処理する音響コンテンツ処理ソフトウェアを実行することによって実現される。
【0052】本実施形態に係る音響コンテンツ処理ソフトウェアは、メロディ、リズム、ワンショットなどからなる各音片を時系列的に繋ぎ合わせたり、適宜重ね合わせていく(すなわち合成する)ことによって、音楽にしていくことができる。さらに、完成された音楽をスピーカ116から音響出力することによって、計算機システム100は、一種の「楽器」として機能することができる。
【0053】また、演奏中すなわち音響コンテンツを再生している最中にキーボード112やマウス113などのユーザ入力装置からのユーザ入力を取り込んで、音楽の演奏内容にリアルタイムで反映させることによって、ユーザは、計算機システム100上で、DJ(ディスク・ジョッキー)ライクなプレイを楽しむことができる。また、ディスプレイ111画面を利用して音響の出力に合わせた映像を出力したり、ユーザ入力に応答して映像内容をリアルタイムで反映させることによって、ユーザは、VJ(ビジュアル・ジョッキー)ライクなプレイを楽しむことができる。
【0054】ここで、本実施形態に係る計算機システム100上で取り扱われるコンテンツは、例えば、静止画像、動画像、音声などのコンテンツの基本構成要素である「パターン」と、特定のコンテンツに対してさまざまな能動的処理を施す「エフェクト」と、時間的に短いコンテンツからなる「ワンショット」などの各レイヤで構成される。パターンは、ワンショットに比べて時間的に長いコンテンツである。コンテンツが音声であれば、パターンを「サウンド・パターン」と呼び、ループ・パターンの音片などに相当する。音響コンテンツは、1以上のサウンド・パターンの組み合わせ又はその繰り返しと、各サウンド・パターンに対するディレイやエコーその他の音響効果を加えるエフェクトと、パーカッションやドラムなどの短い音片からなるワンショット(ワンショットは連続出力しない)という複数の演奏レイヤからなる。」(第15欄第30行?第16欄第19行)

(ニ)「【0091】エフェクト・キーを押下している間は、スイング・ボックス(後述)が画面上に出現し、当該キーの押下を解除するとスイング・ボックスは消滅する。
【0092】スイング・ボックスが画面に出現している期間中は、マウスやトラックパッドによる座標指示操作に応答して、押下中のキーに対応するエフェクトのパラメータの設定値(エフェクト・ポイント)を変更する(すなわち、エフェクト・バランスを変更する)ことができる。また、パラメータの変更値は、リアルタイムで演奏に反映される。また、スイング・ボックスが出現している期間中は、ワンショット・キーの操作を行っても、前述したデジタル・スクラッチ効果は機能しない。」(第21欄第14?25行)

(ホ)「【0096】図4には、エフェクト・ポイントの変更のために使用されるスイング・ボックスの構成例を示している。同図に示すように、スイング・ボックスは、A軸及びB軸からなる2次元的な操作座標系を持ち、A軸及びB軸にはエフェクト・チップ作成時(後述)に設定したバランス・ファクタがそれぞれ割り当てられる。各軸の全長は、割り当てられたバランス・ファクタのmin?max,dry?wet,cut?boostに相当する。スイング・ボックスの各軸については、例えば、1024×768ドットで構成されるXGA(eXtended Graphics Array)画面を各エフェクト要素のパラメータの[100%×100%]に見立てて、その範囲内でどの位置にポインタがあるかに応じて各軸方向に割り当てられたエフェクト要素のパラメータに変換し、演奏にリアルタイム編集に用いることができる。
【0097】例えば、A軸側には、Control(min<->max)やBalance(dry<->wet)のような基調とするエフェクトのパラメータを設定し、他方のB軸側には、A軸とも、また各種パラメータ間で相互に干渉しないようなパラメータを設定する。ユーザがA軸とB軸に対して干渉し合うようなエフェクト・パラメータを設定しようとした場合(同じパラメータを各軸に割り当てようとした場合を含む)、OKボタンを押した時点で割り振られた内容が正しいかどうか判断して、エラーの旨のメッセージ・ボックス(図示しない)を表示するようにしている。また、プルダウンメニュー・レベルでパラメータ選択に制限を行ってもよい。
【0098】現在設定中のエフェクト・ポイントが、スイング・ボックス内の該当する操作座標位置に表示される。そして、マウス又はトラックパッドによる座標指示操作に応答して、スイング・ボックス内のエフェクト・ポイントの位置が移動するとともに、演奏中の曲に適用されているエフェクト・バランスそのものもリアルタイムで変化する。
【0099】図5には、スイング・ボックスを用いたエフェクタが行う処理手順をフローチャートの形式で示している。スイング・ボックスは、キーボード112上で割り当てられたエフェクト・キーとマウス又はトラックパッドの組み合わせで操作される。
【0100】キーボード112上でいずれかのエフェクト・キーが押下されると(ステップS1)、エフェクタの動作モードが切り替わり(ステップS2)、画面上にはスイング・ボックス(図4を参照のこと)が出現する。
【0101】スイング・ボックス上には、現在のエフェクト・パラメータの設定値に相当するエフェクト・ポイントが表示されているが(前述)、マウス又はトラックパッドなどの指示座標のデフォルト値としてスイング・ボックスの操作座標系上のエフェクト・ポイントの対応位置がプリセットされる(ステップS3)。
【0102】マウス又はトラックパッドなどの座標指示装置から座標指示入力が行われると(ステップS4)、入力された移動量を算出する(ステップS5)。そして、算出された移動量をエフェクト・パラメータの設定値に変換して、スイング・ボックス上では、変換された設定値に該当する位置までエフェクト・ポイントを移動する(ステップS6)。
【0103】その後、押下していたエフェクト・キーがリリースされると(ステップS7)、エフェクト・ポイントを元の位置まで戻して(ステップS8)、元のモードに復帰して、本処理ルーチン全体を終了する。
【0104】なお、ステップS8の代替案として、エフェクト・ポイントを元の位置に戻すのではなく、スイング・ボックス上で移動した先のエフェクト・ポイントの位置を保存するようにしてもよい。
【0105】パック・チェンジャは、サウンド・パターン、ワンショット、エフェクトの各演奏レイヤに対して登録されているサウンド・パック、ワンショット・パック、エフェクト・パックを切り替えるための機能モジュールである。」(第21欄第47行?第23欄第16行)

また、引用例の【図4】には、「エフェクタのために使用されるスイング・ボックスの構成例」として、スイング・ボックス内に、A軸及びB軸のそれぞれに対応する座標軸を表示することが記載されている。

上記引用例記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「音響コンテンツをリアルタイムで編集並びに再生処理する計算機システムにおいて、所定キーの押下操作により、スイング・ボックスが画面上に出現し、マウスやトラックパッドのような座標指示機能を備えたユーザ入力装置による座標指示操作に応答して、エフェクトのパラメータの設定値(エフェクト・ポイント)を変更する(すなわち、エフェクト・バランスを変更する)ことができ、エフェクト・ポイントの変更のために使用されるスイング・ボックスの構成例では、スイング・ボックスは、A軸及びB軸からなる2次元的な操作座標系を持ち、A軸及びB軸にはバランス・ファクタがそれぞれ割り当てられ、各軸の全長は、割り当てられたバランス・ファクタのmin?max,dry?wet,cut?boostに相当し、スイング・ボックスの各軸については、画面を各エフェクト要素のパラメータの[100%×100%]に見立てて、その範囲内でどの位置にポインタがあるかに応じて各軸方向に割り当てられたエフェクト要素のパラメータに変換し、例えば、A軸側には、Control(min<->max)やBalance(dry<->wet)のような基調とするエフェクトのパラメータを設定し、他方のB軸側には、A軸とも、また各種パラメータ間で相互に干渉しないようなパラメータを設定し、画面には、A軸及びB軸の座標軸が表示され、現在設定中のエフェクト・ポイントが、スイング・ボックス内の該当する操作座標位置に表示され、そして、マウス又はトラックパッドのような座標指示機能を備えたユーザ入力装置による座標指示操作に応答して、スイング・ボックス内のエフェクト・ポイントの位置が移動するとともに、演奏中の曲に適用されているエフェクト・バランスそのものもリアルタイムで変化し、複数種のアナログ・パラメータをダイナミックに入力することができる情報処理方法。」

4.対比
引用発明において、「音響コンテンツをリアルタイムで編集並びに再生処理する計算機システム」が本願補正発明の「電子システム」に相当する。
次に、引用発明において、「A軸」及び「B軸」が、本願補正発明の「第1の座標軸」及び「第2の座標軸」に相当する。
次に、引用発明において、「エフェクトのパラメータの設定値」は、エフェクトを制御するためのパラメータであるから、本願補正発明の「制御パラメータ」の値に相当する。
次に、引用発明において「A軸側には、Control(min<->max)やBalance(dry<->wet)のような基調とするエフェクトのパラメータを設定し、他方のB軸側には、A軸とも、また各種パラメータ間で相互に干渉しないようなパラメータを設定し」、「現在設定中のエフェクト・ポイントが、スイング・ボックス内の該当する操作座標位置に表示され、そして、マウス又はトラックパッドのような座標指示機能を備えたユーザ入力装置による座標指示操作に応答して、スイング・ボックス内のエフェクト・ポイントの位置が移動するとともに、演奏中の曲に適用されているエフェクト・バランスそのものもリアルタイムで変化」することが、本願補正発明の「電子システムを制御する少なくとも第1及び第2の制御パラメータを調整すること」に相当する。
次に、引用発明において「画面」と、本願補正発明の[タッチ画面」とは、画面の点で共通する。
次に、引用発明において「A軸及びB軸からなる2次元的な操作座標系を持」つ「スイング・ボックスが画面上に出現し」、「スイング・ボックス」の「A軸及びB軸にはエフェクト・チップ作成時に設定したバランス・ファクタがそれぞれ割り当てられ、各軸の全長は、割り当てられたバランス・ファクタのmin?max,dry?wet,cut?boostに相当し、スイング・ボックスの各軸については、画面を各エフェクト要素のパラメータの[100%×100%]に見立て」ることが、本願補正発明の「画面上に座標系を表示し、前記座標系の第1の座標は前記第1の制御パラメータの値の範囲を表し、前記座標系の第2の座標は前記第2の制御パラメータの値の範囲を表す段階」に相当する。
次に、引用発明において「画面には、A軸及びB軸の座標軸が表示され」、「各軸の全長は、割り当てられたバランス・ファクタのmin?max,dry?wet,cut?boostに相当し、スイング・ボックスの各軸については、画面を各エフェクト要素のパラメータの[100%×100%]に見立て」ることが、本願補正発明の「前記第1の制御パラメータの値の前記範囲の値を有する第1の座標軸と、前記第2の制御パラメータの値の前記範囲の値を有する第2の座標軸とを表示」することに相当する。
次に、引用発明の「現在設定中のエフェクト・ポイントが、スイング・ボックス内の該当する操作座標位置に表示され」ることが、本願補正発明の「前記第1及び前記第2の制御パラメータの値のうち目下選択されている組合せに対応して、前記座標で位置を視覚的に示す段階」に相当する。
次に、引用発明において「マウス又はトラックパッドのような座標指示機能を備えたユーザ入力装置による座標指示操作に応答して、スイング・ボックス内のエフェクト・ポイントの位置が移動するとともに」、「エフェクトのパラメータの設定値(エフェクト・ポイント)」が変更されて、「演奏中の曲に適用されているエフェクト・バランスそのものもリアルタイムで変化」することが、本願補正発明の「前記ユーザが、前記」「画面上の前記座標系内で位置を自由に示すことによって、前記第1及び前記第2の制御パラメータの値の新しい組合せを選択できる段階」に相当する。

すると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
ユーザが、電子システムを制御する少なくとも第1及び第2の制御パラメータを調整することができる方法であって、
-画面上に座標系を表示し、前記座標系の第1の座標は前記第1の制御パラメータの値の範囲を表し、前記座標系の第2の座標は前記第2の制御パラメータの値の範囲を表す段階と、
-前記第1の制御パラメータの値の前記範囲の値を有する第1の座標軸と、前記第2の制御パラメータの値の前記範囲の値を有する第2の座標軸とを表示する段階と、
-前記第1及び前記第2の制御パラメータの値のうち目下選択されている組合せに対応して、前記座標で位置を視覚的に示す段階と、
-前記ユーザが、前記画面上の前記座標系内で位置を自由に示すことによって、前記第1及び前記第2の制御パラメータの値の新しい組合せを選択できる段階と、
を有する、方法。

また、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明では、画面が「タッチ画面」であって、「タッチ画面上の前記座標系内で位置を自由に示す」のに対し、引用発明では「画面」がタッチ画面ではなく、「エフェクトのパラメータの設定値」(本願補正発明の「制御パラメータの値」に相当する。以下、同じ。)の変更は「マウス又はトラックパッドのような座標指示機能を備えたユーザ入力装置」によっている点。

<相違点2>
本願補正発明では「前記第1及び前記第2の座標軸の交点は、前記第1及び前記第2の制御パラメータの値のデフォルトの組合せを表す」のに対し、引用発明では、「A軸及びB軸」(前記第1及び前記第2の座標軸)の交点が「エフェクトのパラメータの設定値」のデフォルト値の組合せを表しているか明らかでない点。

<相違点3>
本願補正発明では「前記第1及び前記第2の制御パラメータの値の間の所望の均衡を表して前記座標系での少なくとも1つの位置を決定し示す段階」を有しているのに対し、引用発明では、「A軸及びB軸」の「エフェクトのパラメータの設定値」の間の所望の均衡を表して「2次元的な操作座標系」での少なくとも1つの位置を決定し示す段階を有していない点。

5.判断
<相違点1>について:
ディスプレイの表示面をタッチパネル、すなわちタッチ画面とすることにより、パラメータの入力を、タッチ画面上の位置を自由に示すことにより行うことは周知技術である(例えば、特開平11-272385号公報第【0017】段落の「ディスプレイ12は、表示面HGに画像又は文字などを表示し、パラメータの入力のための後述する図形FRを表示し、また操作のための他の種々の表示などを行う。ディスプレイ12の表示面HGをタッチパネルとして入力を行うようにしてもよい。」との記載、及び、特開平7-311853号公報第【0013】段落及び【図3】に記載された「マップ画像を表示する」「液晶表示部34の表示面上に」「透明な感圧式タッチパネル35が配置され」、「マップ画像内の任意の座標を入力できる」「2次元座標入力装置」参照。)

よって、引用発明において、該周知技術を適用し、引用発明において、「エフェクトのパラメータの設定値」(制御パラメータの値)の変更のための座標指示操作を、「マウス又はトラックパッドのような座標指示機能を備えたユーザ入力装置」によって行うことに代え、「画面」をタッチ画面とし、該タッチ画面上の前記座標系内で位置を自由に示すことにより行うことは、当業者が容易になし得たことである。

<相違点2>について:
例えば、浜田 洋、千葉仁一、GUIによる音声コントローラと音声強調インタフェース設計への応用、情報処理学会論文誌、第34巻、第12号、社団法人情報処理学会、1993年12月15日、p.2569?2577、の第2571頁右欄第34行?第2572頁左欄第2行に「2次元座標によるパラメータ制御の概念を図1(a)に示す.この方法は,たて軸方向で強調部分のパラメータ値を,横軸方向で強調部分以外のパラメータ値を表すことにより, 2次元座標上の位置で両者のパラメータの値を決定する方法である.・・・(中略)・・・座標の原点は,パラメータを変化させていない標準値(装置のデフォルト値)である.」と記載され、また、特開2002-95864号公報第【0091】段落に「パラメータ表示点をデフォルトの位置(例えば原点)に設定する」と記載されているように、二次元操作座標系の原点を、それぞれの軸が表すパラメータ値のデフォルト値の組合せとすることは周知技術である。
よって、引用発明において、該周知技術を適用し、「A軸及びB軸」(第1及び前記第2の座標軸)の交点が、それぞれの軸の「エフェクトのパラメータの設定値」(制御パラメータの値)のデフォルト値の組合せを表すようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

<相違点3>について:
前記特開平7-311853号公報に「マップ画像は、ウインドウレベル(WL)を横軸、ウインドウ幅(WW)を縦軸とした2次元領域内で、部位、例えば肺野、縦隔の画像読影に最適とされるウインドウレベル、ウインドウ幅の各パラメータの推奨値または推奨範囲を表した画像である。」(第【0011】段落)、「図4(a)に示すようにCRU9の制御のもとで、マップ画像がCRT3の一部領域に表示される。または同図(c)に示すようにCRU9の制御のもとで、マップ画像が液晶表示部34に表示される。オペレータによりスライダボタンが操作され、マップ画像の任意の座標が入力される(S1)。このとき、マップ画像の推奨値(推奨範囲)が参照される。」(第【0017】段落)と記載され、また、特開平9-331464号公報の「デジタイザ16」の「倍率を設定するための座標位置検出板」(第【0030】段落、図7)に、X方向の倍率とY方向の倍率との比を1:1とする補助線が引かれていることからみて、2次元の操作座標系において、制御パラメータの値の間の推奨値または推奨範囲等、制御パラメータの値の間の所望の均衡を表して前記座標系での少なくとも1つの位置を決定し、示すことは周知技術であると認められる。
よって、引用発明において、該周知技術を適用し、「A軸及びB軸」からなる2次元的な操作座標系において、それぞれの軸に割り当てられた「エフェクトのパラメータの設定値」(制御パラメータの値)の間の推奨値または推奨範囲等、制御パラメータの値の間の所望の均衡を表して前記座標系での少なくとも1つの位置、を決定し、示すことは当業者が容易になし得たことである。

また、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測しうるものである。

6.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成22年8月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成21年5月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ユーザが、電子システムを制御する少なくとも第1及び第2の制御パラメータを調整することができる方法であって、
-ディスプレイ画面上に座標系を表示し、前記座標系の第1の座標は前記第1の制御パラメータの値の範囲を表し、前記座標系の第2の座標は前記第2の制御パラメータの値の範囲を表す段階と、
-前記第1及び前記第2の制御パラメータの値のうち目下選択されている組合せに対応して、前記座標で位置を視覚的に示す段階と、
-前記ユーザが、前記座標系内で位置を自由に示すことによって、前記第1及び前記第2の制御パラメータの値の新しい組合せを選択できる段階と、
-前記第1及び前記第2の制御パラメータの値の間の所望の均衡を表して前記座標系での少なくとも1つの位置を決定し示す段階と
を有する、方法。」

2.優先権について
本願について、パリ条約による優先権主張の効力が認められないことは、上記「第2 [理由]2.」に記載したとおりである。
よって、本願発明についての、進歩性の要件についての判断は、国際出願日である2004年3月12日を基準日として行う。

3.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 [理由]3.」に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、上記「第2 [理由]」で検討した本願補正発明から、「画面」についての「タッチ画面」との限定を解除して「ディスプレイ画面」とするとともに、「ユーザが」「前記座標系内で位置を自由に示す」対象から「前記タッチ画面上」との限定を省き、さらに「前記第1の制御パラメータの値の前記範囲の値を有する第1の座標軸と、前記第2の制御パラメータの値の前記範囲の値を有する第2の座標軸とを表示し、前記第1及び前記第2の座標軸の交点は、前記第1及び前記第2の制御パラメータの値のデフォルトの組合せを表す段階」との要件を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2「理由」5.」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-09 
結審通知日 2011-11-15 
審決日 2011-11-30 
出願番号 特願2006-506701(P2006-506701)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 03- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 円子 英紀  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 江口 能弘
丸山 高政
発明の名称 制御パラメータの組合せを調整するシステム  
代理人 伊東 忠彦  

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