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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1255506
審判番号 不服2011-1353  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-20 
確定日 2012-04-11 
事件の表示 特願2007-162279「撮影レンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月27日出願公開、特開2007-249239〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年12月27日に出願した特願2002-379401号の一部を平成19年6月20日に新たな特許出願とした特願2007-162279号であって、平成22年7月7日付けで拒絶理由が通知され、同年9月14日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、同年10月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年1月20日に拒絶査定不服審判の請求がなさたものである。

第2 本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年9月14日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「物体側から像面側に向けて順に配列された、
所定の口径をもつ開口絞りと、
物体側に凸面を向けた1枚のみのメニスカスレンズからなる正の屈折力を有する第1レンズと、
物体側に凹面を向け,物体側および像面側の両面に非球面を有し,樹脂材料により形成された正の屈折力を有する第2レンズと、
物体側に凸面を向け,物体側および像面側の両面に非球面を有し,樹脂材料により形成された負の屈折力を有する第3レンズと、
からなる3枚のレンズ構成である、
ことを特徴とする撮影レンズ。」

第3 引用例
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-228922号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)

「【0008】本発明は、前述した事情に鑑み、高解像でかつ構成枚数が少なく、コンパクトな撮影レンズを提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の撮影レンズは、最も物体側に開口絞りを配し、以降物体側より順に、第1レンズ群、第2レンズ群、及び第3レンズ群から構成され、前記第1レンズ群は物体側より順に、正の屈折力を有する(以下正レンズ)第1レンズ、及び前記第1レンズと接合あるいは分離して構成される負の屈折力を有する(以下負レンズ)第2レンズを配して構成され、前記第2レンズ群は少なくとも1つの屈折面を非球面形状とした正レンズである第3レンズのみで構成され、前記第3レンズ群は少なくとも1つの屈折面を非球面形状とした負レンズである第4レンズのみで構成される撮影レンズにおいて、前記第1レンズ群のパワーに関して下記条件式(1)を満足しており、レンズ全系の光軸方向寸法に関して下記条件式(2)を満足していることを特徴とする。(請求項1)
(1) 0.8<f_(1)/f<2.8
(2) TL/f<1.7
ただし、
f :レンズ全系の合成焦点距離
f_(1):第1レンズ群の合成焦点距離
TL:開口絞りの最も物体側の面から像面までの距離
(ただし、平行平面ガラス部分は空気換算距離)
【0010】本発明の撮影レンズのレンズ構成の基本的特徴としては、大きな正のパワーを持つ第1レンズ群と、それに続く小さな正のパワーの第2レンズ群及び小さな負のパワーを有する第3レンズ群とからなり、正、正、負のいわゆる望遠タイプのパワー配置を持つことである。さらに、色収差の補正のために、大きなパワーを持つ第1レンズ群にて主な色消しを行うことを特徴としている。 従って、第1レンズ群にて主に軸上付近の球面収差、コマ収差、色収差を補正し、第2レンズ群、第3レンズ群にて、主に軸外収差である歪曲収差の補正、テレセントリック性の良好に保つなどの作用を有している。
【0011】この様な全体構成のもとで、条件式(1)は、第1レンズ群のパワーを規定するもので、上限を越えてf_(1) が大きくなると、単レンズで構成されている第2レンズ群及び第3レンズ群のパワーも大きくならざるを得ず、色収差が大きくなってしまう。逆に下限を越えてf_(1) が小さくなると、第1レンズ群のパワーが過大となり、球面収差、コマ収差が大きくなり、また第1レンズ群を構成しているレンズの球面の曲率半径が小さくなり、加工が困難となる。条件式(2)は、レンズ全長を規定するもので、小型化に関する条件である。上限を越えると、収差補正という面では有利である反面、本発明の特徴である小型化と相反する事になる。」

「【0018】さらに、前記第2レンズ群を構成する前記第3レンズ及び第3レンズ群を構成する前記第4レンズが樹脂素材により製作されていることが好ましい。(請求項5)
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、具体的な数値実施例について、本発明を説明する。以下の実施例1から実施例10では、いずれも最も物体側に開口絞りS(面としてはS1,S2)を有し、以降物体側より順に、第1レンズ群LG1、第2レンズ群LG2、第3レンズ群LG3から構成され、第1レンズ群LG1は物体側より順に、第1レンズL1、及び第2レンズL2を配して構成され、第2レンズ群LG2は第3レンズL3のみで構成され、前記第3レンズ群LG3は第4レンズL4のみで構成される。前記第4レンズL4と像面との間には空気間隔をおいて平行平面ガラスLPが配されている。前記平行平面ガラスLPは、実際には水晶光学フィルター、及び赤外吸収フィルターから構成されるのであるが、本発明の光学的説明には何ら問題はないのでこれらの総厚に等しい1枚の平行平面ガラスとして表現している。
【0020】各実施例において使用している非球面については、周知のごとく、光軸方向にZ軸、光軸と直交する方向にY軸をとるとき、非球面式:
Z=(Y^(2)/r)〔1+√{1-(1+K)(Y/r)^(2)}〕+A・Y^(4)+B・Y^(6)+C・Y^(8)+D・Y^(10)+‥‥
で与えられる曲線を光軸の回りに回転して得られる曲面で、近軸曲率半径:r、円錐定数:K、高次の非球面係数:A、B、C、Dを与えて形状を定義する。尚表中の円錐定数及び高次の非球面係数の表記において「Eとそれに続く数字」は「10の累乗」を表している。例えば、「E-4」は10^(-4)を意味し、この数値が直前の数値に掛かるのある。
【0021】[実施例1] 本発明の撮影レンズの第1実施例について数値例を表1に示す。また図1は、そのレンズ構成図、図2はその諸収差図である。表及び図面中、fはレンズ全系の焦点距離、F_(no)はFナンバー、2ωはレンズの全画角、b_(f )はバックフォーカスを表す。バックフォーカスb_(f )は前記第4レンズの像側面から像面までの空気換算距離である。また、Rは曲率半径、Dはレンズ厚またはレンズ間隔、N_(d) はd線の屈折率、ν_(d) はd線のアッベ数を示す。また、球面収差図中のd、g、Cはそれぞれの波長における収差曲線であり、S.C.は正弦条件である。また非点収差図中のSはサジタル、Mはメリディオナルを示している。
【0022】
【表 1】



「【0029】
[実施例8] 第8実施例について数値例を表8に示す。また、図15はその
レンズ構成図、図16はその諸収差図である。
【表 8】



「【図1】



「【図15】



2 引用例1に記載された発明
【図1】及び【図15】から、第1レンズ群の第1レンズが物体側に凸面を向けていること、第1レンズ群の第2レンズが像面側に凹面を向けていること、第2レンズ群の第3レンズが物体側に凹面を向けていること、及び、第3レンズ群の第4レンズが物体側に凸面を向けていることが見て取れる。
また、【表1】及び【表8】を合わせて読めば、第2レンズ群の第3レンズの両面(【表1】の第4,5面、及び、【表8】の第5,6面)、並びに、第3レンズ群の第4レンズの両面(【表1】の第6,7面、及び、【表8】の第7,8面)が、いずれも非球面であることがわかる。
よって、上記記載事項(図面の記載も含む)を総合すると、引用例1には、
「最も物体側に開口絞りを配し、以降物体側より順に、第1レンズ群、第2レンズ群、及び第3レンズ群から構成され、
前記第1レンズ群は物体側より順に、物体側に凸面を向けた正レンズである第1レンズ、及び前記第1レンズと接合あるいは分離して構成され、像面側に凹面を向けた負レンズである第2レンズを配して構成されて正の屈折力を有し、
前記第2レンズ群は、物体側に凹面を向け、両面を非球面形状とし、樹脂素材により製作された正レンズである第3レンズのみで構成され、
前記第3レンズ群は、物体側に凸面を向け、両面を非球面形状とし、樹脂素材により製作された負レンズである第4レンズのみで構成されている撮影レンズ。」
の発明(以下「引用発明」という。)の記載が認められる。

第4 対比
1 ここで、本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「開口絞り」が本願発明の「所定の口径をもつ開口絞り」に相当する。

イ 引用発明の「物体側より順に、物体側に凸面を向けた正レンズである第1レンズ、及び前記第1レンズと接合あるいは分離して構成され、像面側に凹面を向けた負レンズである第2レンズを配して構成されて正の屈折力を有」する「第1レンズ群」と、本願発明の「物体側に凸面を向けた1枚のみのメニスカスレンズからなる正の屈折力を有する第1レンズ」とは、「正の屈折力を有する第1レンズ群」である点で一致する。(なお、撮影レンズの技術分野において、「レンズ群」の概念には、1枚ないしは複数枚のレンズが含まれる。)

ウ 引用発明の「物体側に凹面を向け、両面を非球面形状とし、樹脂素材により製作された正レンズである第3レンズのみで構成され」た「第2レンズ群」が、本願発明の「物体側に凹面を向け,物体側および像面側の両面に非球面を有し,樹脂材料により形成された正の屈折力を有する第2レンズ」に相当する。

エ 引用発明の「物体側に凸面を向け、両面を非球面形状とし、樹脂素材により製作された負レンズである第4レンズのみで構成されている」「第3レンズ群」が、本願発明の「物体側に凸面を向け,物体側および像面側の両面に非球面を有し,樹脂材料により形成された負の屈折力を有する第3レンズ」に相当する。

オ 引用発明の「最も物体側に開口絞りを配し、以降物体側より順に、第1レンズ群、第2レンズ群、及び第3レンズ群から構成され」ることと、本願発明の「物体側から像面側に向けて順に配列された」「開口絞り」「第1レンズ」「第2レンズ」「第3レンズ」であることとは、「物体側から像面側に向けて順に配列された」「開口絞り」「第1レンズ群」「第2レンズ」「第3レンズ」である点で共通している。

2 一致点
したがって、本願発明と引用発明は、
「物体側から像面側に向けて順に配列された、
所定の口径をもつ開口絞りと、
正の屈折力を有する第1レンズ群と、
物体側に凹面を向け,物体側および像面側の両面に非球面を有し,樹脂材料により形成された正の屈折力を有する第2レンズと、
物体側に凸面を向け,物体側および像面側の両面に非球面を有し,樹脂材料により形成された負の屈折力を有する第3レンズと、
からなる撮影レンズ。」
の発明である点で一致し、次の点で相違する。

3 相違点;
正の屈折力を有する第1レンズ群について、本願発明が「物体側に凸面を向けた1枚のみのメニスカスレンズからなる」のに対して、引用発明は、「物体側より順に、物体側に凸面を向けた正レンズである第1レンズ、及び前記第1レンズと接合あるいは分離して構成され、像面側に凹面を向けた負レンズである第2レンズを配して構成され」、それによって、本願発明が「3枚のレンズ構成である」のに対して、引用発明は4枚のレンズ構成である場合も含まれる点。

第5 当審の判断
1 次に、上記相違点について検討する。
まず第1に、引用発明の第1レンズ群のレンズ構成については「第1レンズ群は・・・・第1レンズ、及び前記第1レンズと接合あるいは分離して構成され、・・・・である第2レンズを配して構成され」とされている。
ここで、上記の構成の内、第1レンズと第2レンズが「接合」されたものについては、当該接合されたレンズを一体化された1枚のレンズと解釈することができる。そのように解釈した場合、引用発明の内、第1レンズ群の第1レンズと第2レンズが「接合」されて一体化された「接合」レンズについては、物体側に凸面を向けた正レンズである第1レンズと像面側に凹面を向けた負レンズが接合されたものであることから、レンズ全体として「物体側に凸面を向けた1枚のみのメニスカスレンズからなる」となり、また、第1ないし第3レンズ群のレンズ構成は、「3枚のレンズ構成」となることは明らかである。(この点について、例えば、特開平6-300964号公報(【請求項1】)、特開2000-292708号公報(【請求項2】)、特開2001-350095号公報(【0043】において、2枚のレンズを接合して一体化し全体としてメニスカスレンズの形態となっているレンズを1つのメニスカス状の「接合レンズ」としている点を参照。))
一方で、第1レンズ群の第1レンズと第2レンズが「接合」されたものについて、当該接合されたレンズは1枚のレンズではないとする場合について検討すると、レンズ群を構成するレンズについて、単一のレンズからなるレンズを用いることも、複数のレンズを接合したレンズを用いることも周知であり、さらに、接合レンズを単一のレンズで代用することも慣用手段(例えば、特開平11-84230号公報(【0006】)参照)であるから、引用発明の第1レンズ群において、第1レンズ(物体側に凸面を向けた正レンズ)と第2レンズ(像面側に凹面を向けた負レンズ)が「接合」されて構成されたレンズを、例えば、構成の簡略化や製造上の便宜を考慮して、単一のレンズ(物体側に凸面を向けた1枚のみのメニスカスレンズ)として、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
以上のとおりであるから、接合されたレンズを一体化された1枚のレンズと解釈できるとする場合においても、接合されたレンズを1枚のレンズではないとする場合においても、いずれにしても上記相違点は格別のものではなく、当業者が容易に想到し得ることに過ぎない。

2 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び上記の周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

3 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 結言
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-27 
結審通知日 2012-02-07 
審決日 2012-02-20 
出願番号 特願2007-162279(P2007-162279)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬川 勝久  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 森林 克郎
橋本 直明
発明の名称 撮影レンズ  
代理人 山本 敬敏  

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