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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16K
管理番号 1255576
審判番号 不服2009-22964  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-24 
確定日 2012-04-17 
事件の表示 特願2003-566419「改良した弁座を有するポペット弁」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月14日国際公開,WO03/67096,平成17年 6月 9日国内公表,特表2005-517134〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は,2002年11月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年2月8日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成21年7月13日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付け手続補正書が提出され,さらに平成23年5月10日付けで当審拒絶理由が通知され,これに対して同年10月17日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。



2.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成23年10月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「空気圧弁組立体であって,
加圧空気源と流体連通状態にある加圧空気供給入口ポートを備えた弁体と,
前記弁体内を軸方向に延びる弁ボアと,
加圧空気の流れを前記加圧空気供給入口ポートから前記弁ボアを通して少なくとも1つの出口ポートに選択的に差し向けるよう前記弁ボア内において所定の位置相互間で動くことができる弁部材と,
前記弁部材上に設けられた少なくとも1つの弁要素と,を有し,前記少なくとも1つの弁要素に,前記加圧空気供給入口ポートと直接連通する傾斜した弁密封面を構成する弾性材料が一体成形され,
更に,前記弁ボアに対して傾斜した角度で前記弁ボアに形成された少なくとも1つの弁座を有し,
前記傾斜した角度は,前記弁部材の中心線から垂直方向外方に延びる半径方向線に対して測定され,前記少なくとも1つの弁座に対応する前記傾斜した弁密封面の角度測定値よりも2?3°小さく,前記弾性材料の弁密封面と前記弁座の互いに対向する部分の間の全体的な接触は,前記弁ボア内に位置決めされた前記弁座のコーナー部(83)から始まって前記弁密封面の前記対向する部分の半径方向外方端まで延びて,前記弁部材の閉鎖位置を定め,前記弁密封面と前記弁座の前記互いに対向する部分の全体的な接触により,前記弁部材が閉鎖位置にあるときの前記弁座と前記弁要素の弁密封面が,互いに面シール接触するように協働して,面シールを前記傾斜した弁密封面の傾斜平面に沿って且つ前記傾斜した弁密封面が前記弁座全体に及ぶことなしに軸方向に形成し,それにより,加圧空気の流れを遮ることを特徴とする空気圧弁組立体。」



3.引用例

(3-1)引用例1

平成23年5月10日付けの当審の拒絶の理由に引用した特開平6-147346号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は一般的には,弁に関する装置の部類にある技術の分野に属する。」

・「【0021】図2は,本発明の原理の総括的に数字72によって表され数字73によって総括的に表された弁胴を備えた直動形電磁四方切換流量制御ポペット空気弁への適用を示している。ソレノイド・アクチュエータが部分図でかつ断面図で示され,図示のソレノイド部品を表す参照数字は,ソレノイド12について図1で用いたのと同じ参照数字に小文字のaを付けている。
【0022】図2に示されているように弁72は,弁胴73を通して伸びている一対の取り付けボルト穴74を備えており,弁72をそれが用いられる装置の動作位置に適用な取り付けボルトを受けるように構成されている。
【0023】図2に示されているように,弁胴73は加圧空気の適当な源に接続されるように構成されているねじ付き入口ポート75を備えている。入口ポート75は,弁胴73にある軸方向弁スプール穴76と通じている。軸方向弁スプール穴76は,弁胴73内で縦方向に中心に置かれ,それの左端で図2に見られるように拡大径軸方向穴77と通じており,この軸方向穴77は,図2に見られるように弁胴73の左端で開いているさらに拡大された直径のねじ付き外側端穴78を備えている。弁胴73の左端面79は,制御面であり,図1に示された本発明の第一の実施例にある弁胴制御面端55と同じように働く。図2に見られる軸方向弁スプール穴76の右端は,軸方向穴77と同じ直径のものである拡大径軸方向穴80と通じている。拡大径軸方向80は,弁胴73の右端まで伸びてさらに拡大径のねじ付き端穴81の中で終わっている。弁72は,拡大軸方向穴77及び80とそれぞれ通じている一対のシリンダ・ポート82及び83を備えている。
【0024】固定尖縁ポペット弁座86が弁胴73の中に軸方向弁スプール穴76と入口ポート75を軸方向弁スプール穴76と通じさせる横通路87との間の横接合点に形成される。
【0025】図2に示されているように,総括的に数字88によって表されている調節可能な尖縁ポペット弁座が通路87の右に間隔をあけているが固定尖縁ポペット弁座86と軸方向に整列した位置に配置されている。調節可能な尖縁ポペット弁座88は,総括的に89で表され,円筒形で図6,7及び8に更に詳しく示されているねじ付き外側周辺90を備えているねじ式に取りつけられた調節可能な本体に形成されている。図2に示されているように,調節可能な尖縁ポペット弁座本体89は軸方向穴80の縮径ねじ付き内側端91の中にねじ式に取りつけられている。
【0026】図8に最も良く見られるように,調節可能な尖縁ポペット弁座本体89は,前端で拡大穴93と通じ,後端で拡大穴94と通じている中心穴を備えた段付直径穴が貫通して形成されている。中央穴92と大直径前端穴93との間の接合点は,調節可能な尖縁ポペット弁座88を形成していることが分かるであろう。調節可能な尖縁可能な尖縁ポペット弁座本体89は,それの後端に,弁胴73の中のねじつき穴91(図2)の中で調節可能な尖縁ポペット弁座本体89を調節する調節工具142の端を受けるように構成されている一対の横長穴95を備えている。 図2に示されているように,加圧空気の入口ポート75から弁胴73を通る流れは,総括的に数字98によって示されている縦に可動なポペット弁スプールによって制御される。ポペット弁スプール98は,中央部分99と二つの一体端部分100及び101含む細長い円筒形体を備えている。ポペット弁スプール98は,円錐形をしており互いに収斂する角度付き外側端面をもち,一対の角度付きポペット弁面105と106が適当なエラストマ材料で一体に成形されてついており,中央に位置する環状の半径方向フランジを備えている。
【0027】図2に示されているように,ポペット弁スプール98の拡大された左端100は,外側周辺にねじを切られた左端ブシュ108を通して形成された軸方向穴107の中に滑動可能に取りつけられ,弁胴73にあるねじ付き穴78の中にねじ式に取りつけられている。ポペット弁スプール98の拡大径右端101は,弁胴73にあるねじ付き穴81の中にねじ式に取りつけられたねじ付き外周辺を備えている右端ブシュ110の中に形成された軸方向穴110の中に滑動可能に取りつけられている。ポペット弁スプール98の拡大径右端101は,ポペット弁スプール98の右端101に形成された軸方向穴115に内側端が据えられている弁スプール戻しばね114に押し付けて据えられている。戻しばね114の外側端は,ブシュ端壁113の内側に押しつけて据えられる。」

・「【0032】使用時には,ポペット弁スプール98を図2に示された初期位置にし,ソレノイド12aを除勢して,加圧空気を入口ポート75に入れると,加圧空気は,開いた弁座88を過ぎて弁穴80に流入し,シリンダ・ポート83を通って出て,弁72によって作動されている空気シリンダ又はその他の装置へ流れる。同時に,前記空気シリンダ又はその他の装置からの空気がシリンダ・ポート82の中に排出され,その空気は,軸方向穴77を通り,開いたポペット弁座123を過ぎ,段付通路129を通って排気ポート128を通って弁72から流出する。
【0033】ソレノイド12aが付勢されると,ポペット弁スプール98は,右へ第二の動作位置へ動かされ,その位置で角度付きポペット弁面105は,ポペット弁座88に乗り左端ポペット弁要素118は,ポペット弁座123に載る。次に,入口加圧空気入口ポート75から弁座86を過ぎて軸方向穴77に入りシリンダポート82に入り,次に制御されている空気シリンダ又はその他の装置へ流れる。同時に,前記制御されている空気シリンダ又はその他の装置からの空気がポート83に入り,軸方向穴の中に入り,右端ブシュ内側端121の中の軸方向穴133を通り段付き通路132を通過し,排気ポート131を通って弁72から出て行く。」

・「【0035】・・・数字138は,ポペット弁スプール98が図1に示された初期動作位置から右へ,角度付きポペット弁面105が尖縁ポペット弁座88に載る第二の動作位置まで動かされる前のポペット弁スプール98の行程の長さを表している。」

・上記【0032】,【0033】の記載及び図2より,ポペット弁スプール98は,ねじ付き入口ポート75から前記軸方向弁スプール穴76,拡大径軸方向穴77及び80,ねじ付き外側端穴78及びねじ付き端穴81内において初期位置と第2の動作位置との間で動くことができるものと看て取れ,さらに,角度付きポペット弁面105又は106が対応する調節可能な尖縁ポペット弁座88又は固定尖縁ポペット弁座86に乗ることで,ポペット弁スプール98が閉鎖位置にあるときの調節可能な尖縁ポペット弁座88又は固定尖縁ポペット弁座86と外側端面の角度付きポペット弁面105又は106が,互いにシール接触するように協働して,シールを形成し,それにより,加圧空気の流入を遮ることが看て取れる。

・図2より,一対の角度付きポペット弁面105と106は,ねじ付き入口ポート75と直接連通していることが看て取れる。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には,次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「直動形電磁四方切換流量制御ポペット空気弁72であって,
加圧空気の源に接続されるねじ付き入口ポート75を備えた弁胴73と,
前記弁胴73にある軸方向弁スプール穴76,拡大径軸方向穴77及び80,ねじ付き外側端穴78及びねじ付き端穴81と,
加圧空気を前記ねじ付き入口ポート75から前記軸方向弁スプール穴76,拡大径軸方向穴77及び80,ねじ付き外側端穴78及びねじ付き端穴81の一部に流入し2つのシリンダポート82,83に切り換えて入るよう前記軸方向弁スプール穴76,拡大径軸方向穴77及び80,ねじ付き外側端穴78及びねじ付き端穴81内において初期位置と第2の動作位置との間で動くことができるポペット弁スプール98と,
前記ポペット弁スプール98に設けられた円錐形をしており互いに収斂する角度付き外側端面と,をもち,前記外側端面に,前記ねじ付き入口ポート75と直接連通する一対の角度付きポペット弁面105と106をエラストマ材料で一体に成形し,
更に,前記軸方向弁スプール穴76,拡大径軸方向穴77及び80,ねじ付き外側端穴78及びねじ付き端穴81内に形成された固定尖縁ポペット弁座86及び調節可能な尖縁ポペット弁座88を有し,
前記角度付きポペット弁面105又は106が対応する調節可能な尖縁ポペット弁座88又は固定尖縁ポペット弁座86に乗ることで,ポペット弁スプール98が閉鎖位置にあるときの調節可能な尖縁ポペット弁座88又は固定尖縁ポペット弁座86と外側端面の角度付きポペット弁面105又は106が,互いにシール接触するように協働して,シールを形成し,それにより,加圧空気の流入を遮る直動形電磁四方切換流量制御ポペット空気弁72。」


(3-2)引用例2

同じく平成23年5月10日付けの当審の拒絶の理由に引用した実願平1-88413号(実開平3-28370号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「本考案は,上記の事情のもとになされたもので,その目的とするところは,シール力を増加させる必要なく,シール性を確保することができるようにした真空弁装置を提供することにある。」(明細書4頁7行?10行)

・「第1図は,本考案に係る真空弁装置のテーパ型の第1実施例を示すもので,弁座1の弁孔2を雌型のテーパ開口面2aにし,かつ弁体3のシート面3aを雄型のテーパ面にするとともに,この弁体3のシート面3aのテーパ面の角度βが,前記弁孔2のテーパ開口面2aの角度αよりも約1°程度の角度差(β=α-1)をもたせて僅かに小さくなるように形成してなる構成を有するものである。
しかして,上記の構成によれば,弁体3の弁座1に対する荷重を増加させることにより,弁体3弾性変形して弁座1の全面で接触し,これによって,同一材料,同一面積,同一時間及び同一差圧では従来のものよりも漏れ量を小さくすることが可能になる。」(明細書6頁10行?7頁9行)



4.対比・判断

本願発明と引用発明とを比較すると,その機能・作用からみて,後者における「直動形電磁四方切換流量制御ポペット空気弁72」は前者の「空気圧弁組立体」に相当し,以下同様に,「加圧空気の源」は「加圧空気源」に,「接続される」という態様は「流体連通状態にある」という態様に,「ねじ付き入口ポート75」は「加圧空気供給入口ポート」に,「弁胴73」は「弁体」に,「軸方向弁スプール穴76,拡大径軸方向穴77及び80,ねじ付き外側端穴78及びねじ付き端穴81」は「軸方向に延びる弁ボア」及び「弁ボア」に,「シリンダポート82,83」は「出口ポート」に,「切り換えて入るよう」という態様は「選択的に差し向けるよう」という態様に,「初期位置と第2の動作位置との間で動くことができる」という態様は「所定の位置相互間で動くことができる」という態様に,「ポペット弁スプール98」は「弁部材」に,それぞれ相当する。これらを踏まえると,後者における「加圧空気をねじ付き入口ポート75から軸方向弁スプール穴76,拡大径軸方向穴77及び80,ねじ付き外側端穴78及びねじ付き端穴81の一部に流入し2つのシリンダポート82,83に切り換えて入るよう前記軸方向弁スプール穴76,拡大径軸方向穴77及び80,ねじ付き外側端穴78及びねじ付き端穴81内において初期位置と第2の動作位置との間で動くことができるポペット弁スプール98」は前者の「加圧空気の流れを加圧空気供給入口ポートから弁ボアを通して少なくとも1つの出口ポートに選択的に差し向けるよう前記弁ボア内において所定の位置相互間で動くことができる弁部材」に相当する。
後者における「円錐形をしており互いに収斂する角度付き外側端面」及び「外側端面」は前者の「弁要素」に相当し,以下同様に「一対の角度付きポペット弁面105と106」は「弁密封面」に,「エラストマ材料」は「弾性材料」に,それぞれ相当する。これらを踏まえると,後者における「ポペット弁スプール98は円錐形をしており互いに収斂する角度付き外側端面と,をもち,前記外側端面に,ねじ付き入口ポート75と直接連通する一対の角度付きポペット弁面105と106をエラストマ材料で一体に成形し」という態様は前者の「弁部材上に設けられた少なくとも1つの弁要素と,を有し,前記少なくとも1つの弁要素に,加圧空気供給入口ポートと直接連通する傾斜した弁密封面を構成する弾性材料が一体成形され」という態様に相当する。
後者における「固定尖縁ポペット弁座86及び調節可能な尖縁ポペット弁座88」と前者の「少なくとも1つの弁座」とは,「少なくとも1つの弁座部」という概念で共通し,これを踏まえると後者における「軸方向弁スプール穴76,拡大径軸方向穴77及び80,ねじ付き外側端穴78及びねじ付き端穴81内に形成された固定尖縁ポペット弁座86及び調節可能な尖縁ポペット弁座88を有し」という態様と前者の「弁ボアに対して傾斜した角度で前記弁ボアに形成された少なくとも1つの弁座を有し」という態様とは,「弁ボアに形成された少なくとも1つの弁座部を有し」という概念で共通する。
後者における「角度付きポペット弁面105又は106が対応する調節可能な尖縁ポペット弁座88又は固定尖縁ポペット弁座86に乗る」という態様と前者の「弁密封面と弁座の互いに対向する部分の全体的な接触」という態様とは,「弁密封面と弁座部の互いに対向する部分の接触」という概念で共通し,これを踏まえると後者における「角度付きポペット弁面105又は106が対応する調節可能な尖縁ポペット弁座88又は固定尖縁ポペット弁座86に乗ることで,ポペット弁スプール98が閉鎖位置にあるときの調節可能な尖縁ポペット弁座88又は固定尖縁ポペット弁座86と外側端面の角度付きポペット弁面105又は106が,互いにシール接触するように協働して,シールを形成し,それにより,加圧空気の流入を遮る」という態様と前者の「弁密封面と弁座の互いに対向する部分の全体的な接触により,弁部材が閉鎖位置にあるときの前記弁座と弁要素の弁密封面が,互いに面シール接触するように協働して,面シールを前記傾斜した弁密封面の傾斜平面に沿って且つ前記傾斜した弁密封面が前記弁座全体に及ぶことなしに軸方向に形成し,それにより,加圧空気の流れを遮る」という態様とは,「弁密封面と弁座部の互いに対向する部分の接触により,弁部材が閉鎖位置にあるときの弁座部と弁要素の弁密封面が,互いにシール接触するように協働して,シールを形成し,それにより,加圧空気の流れを遮る」という概念で共通する。

したがって,本願発明と引用発明とは,

「空気圧弁組立体であって,
加圧空気源と流体連通状態にある加圧空気供給入口ポートを備えた弁体と,
前記弁体内を軸方向に延びる弁ボアと,
加圧空気の流れを前記加圧空気供給入口ポートから前記弁ボアを通して少なくとも1つの出口ポートに選択的に差し向けるよう前記弁ボア内において所定の位置相互間で動くことができる弁部材と,
前記弁部材上に設けられた少なくとも1つの弁要素と,を有し,前記少なくとも1つの弁要素に,前記加圧空気供給入口ポートと直接連通する傾斜した弁密封面を構成する弾性材料が一体成形され,
更に,前記弁ボアに形成された少なくとも1つの弁座部を有し,
前記弁密封面と前記弁座部の互いに対向する部分の接触により,前記弁部材が閉鎖位置にあるときの前記弁座部と前記弁要素の弁密封面が,互いにシール接触するように協働して,シールを形成し,それにより,加圧空気の流れを遮る空気圧弁組立体。」

である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点]
弁座に関し,本願発明のものは,弁ボアに対して傾斜した角度で形成されており,前記傾斜した角度は,弁部材の中心線から垂直方向外方に延びる半径方向線に対して測定され,前記少なくとも1つの弁座に対応する傾斜した弁密封面の角度測定値よりも2?3°小さく,弾性材料の弁密封面と前記弁座の互いに対向する部分の間の全体的な接触は,前記弁ボア内に位置決めされた前記弁座のコーナー部から始まって前記弁密封面の前記対向する部分の半径方向外方端まで延びて,前記弁部材の閉鎖位置を定め,前記弁密封面と前記弁座の前記互いに対向する部分の全体的な接触により,前記弁部材が閉鎖位置にあるときの前記弁座と弁要素の弁密封面が,互いに面シール接触するように協働して,面シールを前記傾斜した弁密封面の傾斜平面に沿って且つ前記傾斜した弁密封面が前記弁座全体に及ぶことなしに軸方向に形成するものであるのに対し,引用発明のものは,そのように特定されていない点。


上記相違点について,以下に検討する。

引用例2には,テーパ開口面2aを有する弁座1が記載されており,前記テーパ開口面2aの角度αは,弁体3のシート面3aのテーパ面の角度βよりも僅かに大きく,弁体3の弁座1に対する荷重を増加させることにより,弁体3が弾性変形して弁座1の全面で接触し,これにより従来のものよりも漏れ量を小さくすることが可能になる弁装置が記載されている。
引用例2に記載された技術の,弁座1のテーパ開口面2aの角度αが,弁体3のシート面3aのテーパ面の角度βよりも僅かに大きいとは,すなわち,弁座1のテーパ開口面2aの角度が,弁体3の中心線から垂直方向外方に延びる半径方向線に対して測定され,弁座1に対応する傾斜した弁体3のシート面3aの角度測定値よりも,僅かに小さいことと等しい。
また,引用例2に記載された技術も,上記の構成を備えているので,弾性変形する弁体3のシート面3aと弁座1のテーパ開口面2aの互いに対向する部分の間の全体的な接触は,弁孔2内に位置決めされた前記弁座1のテーパ開口面2aのコーナー部から始まって前記弁体3のシート面3aの前記対向する部分の半径方向外方端まで延びて,前記弁体3の閉鎖位置を定め,前記弁体3のシート面3aと前記弁座1のテーパ開口面2aの前記互いに対向する部分の全体的な接触により,前記弁体3が閉鎖位置にあるときの前記弁座1のテーパ開口面2aと前記弁体3のシート面3aが,互いに面シール接触するように協働して,面シールを前記傾斜した弁体3のシート面3aの傾斜平面に沿って軸方向に形成するものであることは,明らかである。

そして,漏れ量を小さくすることは,弁組立体において一般的な課題であり,引用発明も当然内在している課題である。

よって,引用発明も引用例2に記載された技術も,漏れ量を小さくするという課題が共通するので,引用発明に引用例2に記載された技術を適用することは,当業者が容易に想到し得ることである。

また,本願明細書には,弁座の傾斜角度と弁密封面の傾斜角度との差を2?3°とすることについて,技術的意義は何ら記載されておらず,臨界的意義は認められないから,当業者が適宜選択し得る事項であり,それにより格別な効果を奏するものでもない。

さらに,面シールを,弁密封面が弁座全体に及ぶことなしに形成することは,本願の優先日前に慣用手段である(必要ならば,特開2001-141100号公報(特に,図2における「弁要素30」と「弁座36」との関係,及び,図3における「弁要素34」と「弁座41」との関係),実願平5-31396号(実開平7-44362号)のCD-ROM(特に,図1ないし図3における「ポペット弁座34」と「弁座24」との関係),実願昭59-59660号(実開昭60-172060号)のマイクロフィルム(特に,第1図及び第2図における「パッキング6」と「弁座3」との関係),実願昭53-100051号(実開昭55-18638号)のマイクロフィルム(特に,第2図における「パッキン1」と「弁座3」との関係)を参照。)。

よって,引用発明において,上記引用例2に記載された技術及び上記慣用手段に基づいて,相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。


そして,本願発明の全体構成によって奏される効果も,引用発明,上記引用例2に記載された技術及び上記慣用手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。


したがって,本願発明は,引用発明,上記引用例2に記載された技術及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。



5.むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明,上記引用例2に記載された技術及び上記慣用手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-15 
結審通知日 2011-11-21 
審決日 2011-12-02 
出願番号 特願2003-566419(P2003-566419)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐伯 憲一  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 倉橋 紀夫
槙原 進
発明の名称 改良した弁座を有するポペット弁  
代理人 渡邊 徹  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 弟子丸 健  
代理人 大塚 文昭  
代理人 井野 砂里  

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