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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1255594
審判番号 不服2010-29593  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-28 
確定日 2012-04-13 
事件の表示 特願2000-400867「スイッチングハブ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月19日出願公開、特開2002-204244〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年12月28日の出願であって、平成22年5月20日付けで手続補正がされたものの、同年10月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月28日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年5月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものと認める。

「電磁シールド材により中空体を形成し、該中空体の内部に外界の電磁波から閉ざされた空間からなる電磁伝搬路を形成し、前記中空体に複数の端末を結合するためのインターフェイス取付部を設け、該インターフェイス取付部に取り付けられる端末側に、電波・電気信号相互変換素子と、該電波・電気信号相互変換素子に接続し該電波・電気信号相互変換素子の受信したフレームデータのID情報を識別する信号識別手段を設け、前記インターフェイス取付部に前記端末を取り付けて前記インターフェイス取付部に前記端末側の電波・電気信号相互変換素子を配置し、前記中空体のインターフェイス取付部に取り付けた各端末間のフレームデータのやりとりを電波を介して選択的に行うようにしたことを特徴とするスイッチングハブ。」

第3.引用発明
原審の拒絶の理由に引用された特開昭63-173423号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項イ.?ニ.が記載されている。

イ.「2.特許請求の範囲
建物内に電磁波遮蔽材で取囲んだ通信用ダクトを配設し、該通信用ダクト内の適宜位置に通信機器のアンテナを臨ませ得るようにしたことを特徴とする建物に於ける電磁波遮蔽ダクトシステム。」(1頁左欄4行?8行)

ロ.「第1図および第2図において、1は建物の躯体であって、そのスラブ面上に電磁波遮蔽材2を敷設する。
この電磁波遮蔽材2は、例えば亜鉛メッキ鉄板等の金属板、金網、金属格子、メッキまたは蒸着板・膜等の電磁波反射材や、フェライト等の高透磁率の磁性体等から成る電磁波吸収材であって、遮蔽目的に応じて各々単独あるいは組合せて使用する。
3は床パネルであって、その裏面にも上記電磁波遮蔽材2が貼付けられており、全体として電磁波遮蔽材により封じられた空間としての通信用ダクトを形成している。
上記スラブ上の電磁波遮蔽材2と、床パネル3の電磁波遮蔽材2とは、相互に導電性ファスナー4により導電的に接合されている。
また、本実施例の床パネル3は複数に分割されていて、その継目は、導電性ファスナー5により導電的に連結されている。」(2頁右上欄15行?左下欄13行)

ハ.「上記床パネル3の適宜箇所には通信用アウトレット6が設けられていて、該アウトレット6には通信用アンテナ7が着脱自在に取付けられるようになっている。この通信用アンテナ7は近くの室内通信機器8に接続されている。」(2頁左下欄14行?18行)

ニ.「本実施例は以上のように構成されているので、例えばホストコンピュータ12と各種通信機器8とを無線通信する場合には、各々の通信用アンテナ7をアウトレット6を介して共通のダクト内に臨ませて行なう。この場合、ダクトは外部を電波シールドされているので、独立した通信連絡空間が形成される。また、アウトレット6をあらかじめ適宜位置に配置しておけば、単にアンテナ7を移動させるだけで通信機器8を自由な位置に選択的に移動させることができる。」(2頁右下欄6行?15行)

A.上記摘記事項イ.?ニ.の記載及び図面によれば、引用例は電磁波遮蔽材で取囲んだ通信用ダクトにより無線通信を行う電磁波遮蔽ダクトシステムに係るものであるから、「無線通信を行うシステム」に係るものといえる。

B.上記摘記事項ロ.の「全体として電磁波遮蔽材により封じられた空間としての通信用ダクトを形成している。」という記載からすれば、電磁波遮蔽材は、内側に空間を有するように閉じられた構造とされていることが分かるから、「電磁波遮蔽材により中空体が形成」されているということができる。また、上記摘記事項ニ.の「ホストコンピュータ12と各種通信機器8とを無線通信する場合には、各々の通信用アンテナ7をアウトレット6を介して共通のダクト内に臨ませて行なう。この場合、ダクトは外部を電波シールドされているので、独立した通信連絡空間が形成される。」という記載も参酌すると、中空体(ダクト)の内部は外界の電磁波から閉ざされた空間からなる通信連絡空間が形成されており、この通信連絡空間で無線通信を行うことが分かる。そして技術常識によれば、無線通信は電磁波を利用して行うものであるから、「通信連絡空間」は「電磁伝搬路」といいうるものであることは明らかである。

C.上記摘記事項ハ.の記載及び図面によれば、通信用アンテナは室内通信機器に接続されていることと、床パネルには複数の通信用アンテナを取付けるための通信用アウトレットが設けられていることが分かる。さらに上記摘記事項ロ.の「3は床パネルであって、その裏面にも上記電磁波遮蔽材2が貼付けられており」、上記摘記事項ニ.の「各々の通信用アンテナ7をアウトレット6を介して共通のダクト内に臨ませて行なう。」という記載や、第2図によれば、電磁波遮蔽材にも通信用アンテナを貫通させるための挿入口が設けられていることは明らかであり、電磁波遮蔽材により形成される中空体にも通信用アウトレットが設けられているということができる。
ここで、引用例では通信用アウトレットに通信用アンテナを「取付ける」と記載されているが、取付けることによって通信用アウトレットに通信用アンテナを「配置」していると表現することもできる。また、中空体(ダクト)は電波シールドされる必要があるから、中空体への通信用アンテナの取付けは当然に密にされなければならないところ、この取付けの状態について、中空体に通信用アンテナを「結合」していると表現することもできる。

D.上記摘記事項ニ.の「ホストコンピュータ12と各種通信機器8とを無線通信する場合には、各々の通信用アンテナ7をアウトレット6を介して共通のダクト内に臨ませて行なう。」という記載、第1図、及びすでに検討した事項を参酌すると、引用例は、「中空体の通信用アウトレットに取付けた通信用アンテナに接続されている室内通信機器間のデータのやりとりを電波を介して行うようにした」ものであるといえる。

したがって、これらの記載事項によると、引用例には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「電磁波遮蔽材により中空体を形成し、該中空体の内部に外界の電磁波から閉ざされた空間からなる電磁伝搬路を形成し、前記中空体に複数の通信用アンテナを結合するための通信用アウトレットを設け、該通信用アウトレットに取付けられる通信用アンテナは室内通信機器に接続され、前記通信用アウトレットに前記通信用アンテナを取付けて前記通信用アウトレットに前記室内通信機器に接続される通信用アンテナを配置し、前記中空体の通信用アウトレットに取付けた通信用アンテナに接続されている各室内通信機器間のデータのやりとりを電波を介して行うようにしたことを特徴とする無線通信を行うシステム。」

第4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「電磁波遮蔽材」は、本願発明の「電磁シールド材」に相当する。

b.引用発明の「室内通信機器」は、他の機器とデータのやりとりをする「通信端末」である点で、本願発明の「端末」と一致する。

c.本願明細書の段落0008には、「電波・電気信号相互変換素子」の一例として「マイクロアレイアンテナ」が挙げられている。したがって、引用発明の「通信用アンテナ」と本願発明の「電波・電気信号相互変換素子」とは、共に「アンテナ」である点で一致している。また、引用発明の「室内通信機器に接続される通信用アンテナ」と本願発明の「端末側の電波・電気信号相互変換素子」とは、共に「通信端末に付属するアンテナ」である点で一致している。

d.引用発明の「通信用アウトレット」は「通信用アンテナ」が配置されるものであり、本願発明の「インターフェイス取付部」は「電波・電気信号相互変換素子」が配置されるものである。上記のように引用発明の「通信用アンテナ」と本願発明の「電波・電気信号相互変換素子」は共にアンテナであるから、引用発明の「通信用アウトレット」と本願発明の「インターフェイス取付部」とは、「アンテナ配置部」である点で一致している。

e.引用発明の「無線通信を行うシステム」は、室内通信機器間のデータのやりとりを中継するものである。一方で、本願発明の「スイッチングハブ」もデータの中継をする機能を有していることは明らかであるから、両者は、「中継装置」である点で一致する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「電磁シールド材により中空体を形成し、該中空体の内部に外界の電磁波から閉ざされた空間からなる電磁伝搬路を形成し、前記中空体に複数のアンテナ配置部を設け、前記アンテナ配置部に通信端末に付属するアンテナを配置し、各通信端末間のデータのやりとりを電波を介して行うようにしたことを特徴とする中継装置。」

(相違点1)
「アンテナ配置部」に関し、本願発明の「インターフェイス取付部」は端末を結合ないし取り付けるようにされるのに対し、引用発明の「通信用アウトレット」は通信用アンテナを結合ないし取り付けるようにされている点。

(相違点2)
「通信端末」の構成に関し、本願発明では「端末側に、電波・電気信号相互変換素子と、該電波・電気信号相互変換素子に接続し該電波・電気信号相互変換素子の受信したフレームデータのID情報を識別する信号識別手段を設け」るとされているが、引用発明では「通信用アンテナは室内通信機器に接続され」るとされている点。

(相違点3)
アンテナ配置部に配置される「通信端末に付属するアンテナ」に関し、本願発明では「端末側の電波・電気信号相互変換素子」であるのに対し、引用発明では「室内通信機器に接続される通信用アンテナ」である点。

(相違点4)
本願発明は、「各端末間のフレームデータのやりとりを電波を介して選択的に行う」ものであるのに対し、引用発明は、「各室内通信機器間のデータのやりとりを電波を介して行う」ものである点。

(相違点5)
「中継装置」に関し、本願発明は「スイッチングハブ」であるのに対し、引用発明は「無線通信を行うシステム」である点。

まず、上記相違点2及び4について検討する。
引用発明においては、室内通信機器(通信端末)と通信用アンテナ(アンテナ)とは別のものとされ、両者を接続するようにしているが、これらを一体で構成することは適宜設計的になし得たことである。
また、端末にフレームデータのID情報を識別する手段を設け、フレームデータのやりとりを選択的に行うようにすることは、例えば特開平11-289338号公報の段落0071、特開平9-84084号公報の段落0019、特開平8-97785号公報の段落0096?0104等に記載されているように周知技術である。
したがって、技術常識も勘案すれば、「端末側に、電波・電気信号相互変換素子と、電波・電気信号相互変換素子に接続し該電波・電気信号相互変換素子の受信したフレームデータのID情報を識別する信号識別手段を設け」、「各端末間のフレームデータのやりとりを電波を介して選択的に行う」ように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

次に、上記相違点1及び3について検討する。
上記のように「端末側に、電波・電気信号相互変換素子を設け」る構成とすれば、その結果として、アンテナ配置部には端末を結合ないし取り付けるようにされて、端末側の電波・電気信号相互変換素子がアンテナ配置部に配置されることとなるから、端末が結合ないし取り付けられ、端末側の電波・電気信号相互変換素子が配置される「インターフェイス取付部」を構成することは、当業者であれば適宜なし得たことである。

次に、上記相違点5について検討する。
上記の検討のとおり、電磁シールドされた空間において、各端末間のフレームデータのやりとりを電波を介して選択的に行うための構成は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものと認められる。本願発明の「スイッチングハブ」は、上記の構成を備えるものであるが、明細書及び図面を参酌しても、それ以外の特段の構成を備えるものとは認められないため、引用発明との呼称の違いによる格別の差違をさらに認めることはできない。

また、効果についても、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。

第5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-17 
結審通知日 2012-02-20 
審決日 2012-03-02 
出願番号 特願2000-400867(P2000-400867)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 脇水 佳弘  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 小宮 慎司
矢島 伸一
発明の名称 スイッチングハブ  
代理人 西島 綾雄  

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