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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1255636 |
審判番号 | 不服2010-26852 |
総通号数 | 150 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-11-29 |
確定日 | 2012-04-19 |
事件の表示 | 特願2009-542085「太陽電池から太陽電池サブセルをつくる方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月26日国際公開、WO2008/074879、平成22年 4月30日国内公表、特表2010-514184〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2007年(平成19年)12月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年12月21日、欧州特許庁)を国際出願日とする特許出願であって、平成22年7月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月29日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである(以下、平成22年11月29日付けの手続補正を「本件補正」という。)。 第2 本件補正についての却下の決定 1 結論 本件補正を却下する。 2 理由 (1)補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲につき、補正前の 「【請求項1】 直列に接続された太陽電池を含んでいる太陽電池モジュールをつくる方法であって、該モジュールが第一の電極、活性層、および第二の電極を含んでおり、該第一および第二の電極のうちの少なくとも1が透明導電性酸化物層であり、 a) 第一の電極層によって上を覆われた基板から少なくとも構成される系であって、該第一の電極層が活性層によって上を覆われている上記系において、前面電極および活性層中に遮断体を備えるための遮断の第一の溝、ならびに活性層を貫通する相互接続の第二の溝の少なくとも1対をつくり、該第一および第二の溝が互いに近接した位置に置かれる段階、 b) 遮断溝中に絶縁コンパウンドを挿入する段階、 c) 段階b)の前に、段階b)と同時に、または段階b)の後に、相互接続溝の、絶縁溝とは反対側で相互接続溝に隣接した位置において活性層上に剥離コンパウンドを施与する段階、 d) 活性層、絶縁コンパウンドおよび剥離コンパウンドの全体上に第二の電極を施与する段階、および e) 剥離コンパウンドおよび該剥離コンパウンドの上を覆っている第二の電極を上記位置において除去して、第二の電極中に溝を得る段階 を含む方法。」 を 「【請求項1】 直列に接続された太陽電池を含んでいる太陽電池モジュールをつくる方法であって、該モジュールが第一の電極、活性層、および第二の電極を含んでおり、該第一および第二の電極のうちの少なくとも1が透明導電性酸化物層であり、 a) 第一の電極層によって上を覆われた基板から少なくとも構成される系であって、該第一の電極層が活性層によって上を覆われている上記系において、前面電極および活性層中に遮断体を備えるための遮断の第一の溝、ならびに活性層を貫通する相互接続の第二の溝の少なくとも1対をつくり、該第一および第二の溝が互いに近接した位置に置かれる段階、 b) 遮断溝中に絶縁コンパウンドを挿入する段階、 c) 段階b)と同時に、相互接続溝の、絶縁溝とは反対側で相互接続溝に隣接した位置において活性層上に剥離コンパウンドを施与する段階、 d) 活性層、絶縁コンパウンドおよび剥離コンパウンドの全体上に第二の電極を施与する段階、および e) 剥離コンパウンドおよび該剥離コンパウンドの上を覆っている第二の電極を上記位置において除去して、第二の電極中に溝を得る段階 を含む方法。」 に補正するものである(以下「本件補正」という。)。 (2)補正の目的についての判断 本件補正は、発明を特定するために必要な事項である相互接続溝の、絶縁溝とは反対側で相互接続溝に隣接した位置において活性層上に剥離コンパウンドを施与する段階につき、「段階b)の前に、段階b)と同時に、または段階b)の後に」剥離コンパウンドを施与する段階であったものを、「段階b)と同時に」剥離コンパウンドを施与する段階と限定するものである。 よって、本件補正による請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たすか否か)について検討する。 ア 本願補正発明の認定 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。) は、上記(1)において、補正後のものとして記載したとおりのものと認める。 イ 刊行物の記載 (ア)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された特表2006-528420号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の記載AないしFがある(下線は、審決で付した。以下同じ。)。 a 「【請求項7】 表面電極と、PV層と、裏面電極とを備える太陽電池ユニットにおいて、該太陽電池ユニットは、直列接続された少なくとも2つの個別の電池に分割され、その直列接続は、一つの電池の表面電極を隣接する電池の裏面電極に電気的に接続する相互接続体からなり、表面電極および裏面電極は相互接続体の異なる側で、各々断続されており、その太陽電池ユニットにおいて、保護キャップが表面電極の上に相互接続体の位置で被着されており、その保護キャップは相互接続体とは異なる材料からなることを特徴とする太陽電池ユニット。」(特許請求の範囲) b 「【0021】 上述のように、各太陽電池ユニットでは、裏面電極と表面電極(TCO層)が各々相互接続体の他方の側で断続されている。両方の断続のために、電極層自体を貫通する、また任意的にPV層をも貫通する断続溝がある。以下で議論される実施例のいくつかには、PV層を貫通する溝の存在が明瞭に記載されているが、それは一般に適用してもよい。但し、断続溝が電極層やPV層を貫通する場合、PV層における溝を介して電極が他の電極と不注意に短絡しないように注意することが必要である。絶縁材片が、上記断続溝の形成された場所に例えばレーザー罫書によって被着されてもよい。絶縁材はレーザーストッパとして作用し、下にある材料の溶解による短絡の発生を防止する。以下に記載する実施例の中には、絶縁材片の製作が明瞭に記載されているものがあるが、それらは他の実施例においても同様に用いてもよい。必要であれば、絶縁材はTCO層および・またはPV層上に設けてもよい。」 c 「【0033】 本実施例の好ましい例として、裏面電極の塗布を行う前に、保護的な絶縁材片8および9をPV層に貼付するものがある。そのような絶縁材片は、裏面電極やTCO層の溝が後に得られるような位置に貼付する。これらの絶縁材片は、例えばレーザー罫書による溝の作製時に下部材料を保護するためのものである。この実施例は図2cに示されている。」 d 「【0037】 本発明による第4実施例は、 エッチング可能な仮基板を設ける工程と、 透明導電性酸化物(TCO)の表面電極を仮基板上に被着させる工程と、 TCO層上に光起電(PV)層を被着させ、PV層およびTCO層を貫通して仮基板に達する溝を設け、任意的にキャップを被着させながら該溝を絶縁材料で埋め、必要に応じて絶縁片を貼付し、PV層を貫通してTCOに達する導電性接続体(の前駆体)を設ける工程と、 裏面電極層をPV層上に被着させる工程と、 裏面電極内に、PV層に達する、または絶縁片があるならば絶縁片に達する溝を設ける工程と、 任意的に永久担体を被着させる工程と、 前記工程のいずれかにおいて、仮基板のTCO側ではない側の上に相互接続体の位置でエッチングレジストを設ける工程と、 エッチングレジストで被覆されていない仮基板を選択的に取り除く工程とからなる方法である。 【0038】 本方法は図5に示されている。図5aには、仮基板1とその上面のTCO2と、PV層3とからなる太陽電池箔が示されている。溝fgはPV層およびTCO層を貫通して仮基板に達している。この溝fgは絶縁材8で埋められる。さらに、溝6がPV層を貫通してTCOに達するまで設けられている。この溝6が相互接続体の基礎を成すので、相互接続体の前駆体としてみなされてもよい。図5bにおいて、絶縁材片8および9が設けられており、一方がPV層およびTCOを貫通して仮基板に達する溝内に、もう一方が相互接続体前駆体6の他方側のPV層上に設けられている。図5cにおいて、裏面電極4が加えられ、絶縁片9の上面に溝bgが設けられている。相互接続体はこうして完成する。さらに、エッチングレジストキャップ7が仮基板上の、相互接続体の位置に設けられている。図5dには、永久担体5が被着されて、仮基板がエッチングレジストキャップの設けられている部分以外取り除かれた後の同組織が示されている。」 e 「【0040】 本発明の第5実施例は、 a. 仮基板を設ける工程と、 b. 透明導電性酸化物(TCO)を被着させる工程と、 c. TCO上に光起電(PV)層を被着させる工程と、 d. 必要に応じて、PV層上に1つまたは2つの絶縁片を貼付する工程と、 e. 裏面電極をPV層上に、また絶縁片がある場合には絶縁片上に被着させる工程と、 f. 相互接続体がまだ設けられていない場合には、必要に応じて、裏面電極のシャント(短絡)を修理する工程と、 g. 裏面電極内に、PV層に達する、または絶縁片がある場合には、絶縁片に達する溝を設ける工程と、 h. 必要に応じて、永久担体を設ける工程と、 i. 前記工程のいずれかにおいて、仮基板のTCO側ではない側の上に相互接続の位置でエッチングレジストを設ける工程と、 j. エッチングレジストで被覆されていない仮基板を選択的に取り除く工程と k. TCO層側からTCO層を貫通して、またはPV層を貫通して裏面電極まで、または、絶縁片がある場合には絶縁片まで溝を設ける工程と l. 必要に応じて、封入剤をTCO層に被着させる工程と からなる方法であって、 PV層を通る導電接続体は 工程fとhとの間、または 工程cとeとの間に設立される。」 f 上記dの記載「図5bにおいて、絶縁材片8および9が設けられており、一方がPV層およびTCOを貫通して仮基板に達する溝内に、もう一方が相互接続体前駆体6の他方側のPV層上に設けられている。図5cにおいて、裏面電極4が加えられ、絶縁片9の上面に溝bgが設けられている。」、及び、図5から、相互接続体が埋められる溝6の、絶縁材8が埋められる溝fgとは反対側で、相互接続体が埋められる溝6に隣接した位置において、PV層3上に裏面電極4の溝bgを設けることが見てとれる。 g 引用発明 (a)上記a?fによれば、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。 「エッチング可能な仮基板を設ける工程と、 透明導電性酸化物(TCO)の表面電極を仮基板上に被着させる工程と、 TCO層上に光起電(PV)層を被着させ、PV層およびTCO層を貫通して仮基板に達する溝を設け、任意的にキャップを被着させながら該溝を絶縁材料で埋め、必要に応じて絶縁片を貼付し、PV層を貫通してTCOに達する導電性接続体(の前駆体)を設ける工程と、 裏面電極層をPV層上に被着させる工程と、 相互接続体が埋められる溝の、絶縁材が埋められる溝とは反対側で、相互接続体が埋められる溝に隣接した位置の裏面電極内に、PV層に達する、または絶縁片があるならば絶縁片に達する溝を設ける工程と、 任意的に永久担体を被着させる工程と、 前記工程のいずれかにおいて、仮基板のTCO側ではない側の上に相互接続体の位置でエッチングレジストを設ける工程と、 エッチングレジストで被覆されていない仮基板を選択的に取り除く工程と からなる方法。」 (b)上記(a)の発明は、上記aの記載から、「表面電極と、光起電(PV)層と、裏面電極とを備える太陽電池ユニットにおいて、該太陽電池ユニットは、直列接続された少なくとも2つの個別の電池に分割され、その直列接続は、一つの電池の表面電極を隣接する電池の裏面電極に電気的に接続する相互接続体からなり、表面電極および裏面電極は相互接続体の異なる側で、各々断続されて」いる「太陽電池ユニット」の製造方法であると認められる。 (c)上記(a)の発明は、「任意的にキャップを被着させながら該溝を絶縁材料で埋め、必要に応じて絶縁片を貼付し、・・・裏面電極内に、PV層に達する、または絶縁片があるならば絶縁片に達する溝を設ける」ものであるところ、「絶縁片を貼付」けるか否かは必要に応じてなされることであって、なくてもよいものであるから、上記(a)の発明は「任意的にキャップを被着させながら該溝を絶縁材料で埋め、・・・裏面電極内に、PV層に達する溝を設ける」ものであってもよい。 (d)上記(a)の発明は、「TCO層上に光起電(PV)層を被着させ、PV層およびTCO層を貫通して仮基板に達する溝を設け、任意的にキャップを被着させながら該溝を絶縁材料で埋め、必要に応じて絶縁片を貼付し、PV層を貫通してTCOに達する導電性接続体(の前駆体)を設ける」ものであるところ、上記dには、「溝fgはPV層およびTCO層を貫通して仮基板に達している。この溝fgは絶縁材8で埋められる。さらに、溝6がPV層を貫通してTCOに達するまで設けられている。この溝6が相互接続体の基礎を成すので、相互接続体の前駆体としてみなされてもよい。」と記載されているから、上記(c)とともに、上記(a)の発明は「TCO層上に光起電(PV)層を被着させ、PV層およびTCO層を貫通して仮基板に達する溝を設け、任意的にキャップを被着させながら該溝を絶縁材料で埋め、相互接続体の基礎を成す溝がPV層を貫通してTCOに達するまで設けられる」ものであってもよい。 (e)以上によれば、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。 「表面電極と、光起電(PV)層と、裏面電極とを備える太陽電池ユニットにおいて、該太陽電池ユニットは、直列接続された少なくとも2つの個別の電池に分割され、その直列接続は、一つの電池の表面電極を隣接する電池の裏面電極に電気的に接続する相互接続体からなり、表面電極および裏面電極は相互接続体の異なる側で、各々断続されている太陽電池ユニットの製造方法であって、 エッチング可能な仮基板を設ける工程と、 透明導電性酸化物(TCO)の表面電極を仮基板上に被着させる工程と、 TCO層上に光起電(PV)層を被着させ、PV層およびTCO層を貫通して仮基板に達する溝を設け、任意的にキャップを被着させながら該溝を絶縁材料で埋め、相互接続体の基礎を成す溝がPV層を貫通してTCOに達するまで設けられる工程と、 裏面電極層をPV層上に被着させる工程と、 相互接続体が埋められる溝の、絶縁材が埋められる溝とは反対側で、相互接続体が埋められる溝に隣接した位置の裏面電極内に、PV層に達する溝を設ける工程と、 任意的に永久担体を被着させる工程と、 前記工程のいずれかにおいて、仮基板のTCO側ではない側の上に相互接続体の位置でエッチングレジストを設ける工程と、 エッチングレジストで被覆されていない仮基板を選択的に取り除く工程と からなる太陽電池ユニットの製造方法。」(以下「引用発明1」という。) (イ)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された特開昭62-190882号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の記載がある。 a 「1)個々の太陽電池間の電気的接続を行うために薄膜太陽電池(3)に分離溝(5)が形成されて裏面電極(8)の製作の際に金属(6)によつて充填され、基板(1)上に設けられた一つの太陽電池の前面電極(2)が隣接する太陽電池の金属によつて製作された裏面電極(8)と接続されるようにした、共通の絶縁性透明基板(1)上に配設された多数の光起電性薄膜太陽電池を集積直列接続する方法において、 a)太陽電池の大きさに応じて所定の間隔にて薄膜太陽電池(3)上に、溶媒中で容易に溶解し得るかもしくは薄膜太陽電池表面から容易に分離可能である材料から成るストライプパターン(4)が、薄膜太陽電池(3)の下に位置する前面電極(2)に対して横方向にずらされかつ薄膜太陽電池(3)の、後で作成される裏面電極(8)によつて被覆されない領域を覆うように設けられ、b)機械的方法によりストライプパターン(4)に対応して、ストライプパターン(4)に対して横方向にずらされて分離溝(5)が薄膜太陽電池(3)内に作られ、 c)全面にわたつて金属膜(6)が設けられ、d)ストライプパターン(4)が除去技術によつて分離され、その場合に裏面電極(8)の選択的分離(7)が行われる、 ことを特徴とする薄膜太陽電池の集積直列接続方法。・・・ 6)ストライプパターン(4)はスクリーン印刷法により製作されることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の方法。」(特許請求の範囲) b 上記aによれば、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。 「薄膜太陽電池上に、スクリーン印刷法によりストライプパターンが設けられ、全面にわたつて金属膜が設けられ、ストライプパターンが除去技術によつて分離され、その場合に裏面電極の選択的分離が行われる薄膜太陽電池の集積直列接続方法。」(以下「引用発明2」という。) (ウ)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された特開2003-249673号公報(以下「引用例3」という。)には、以下の記載がある。 a 「【請求項1】1つの絶縁性の表面を備える基板と、前記表面上に形成され直列接続された複数のユニットセルとを備える太陽電池の製造方法であって、 (i)前記基板の前記表面上に第1の電極層を形成する工程と、 (ii)前記第1の電極層の一部をストライプ状に除去することによって前記第1の電極層を分割する工程と、 (iii)前記第1の電極層上にpn接合を含む半導体層を形成する工程と、 (iv)前記半導体層の一部をストライプ状に除去することによって前記半導体層を分割する工程と、 (v)前記半導体層上および前記半導体層が除去されて露出した前記第1の電極層上に第2の電極層を形成する工程と、 (vi)前記第2の電極層の一部をストライプ状に除去することによって前記第2の電極層を分割する工程とを含み、 前記第1の電極層および前記第2の電極層から選ばれる少なくとも1つの電極層は、 (a)レジスト液を塗布してストライプ状のレジストパターンを形成する工程と、(b)前記レジストパターンを覆うように前記少なくとも1つの電極層を形成する工程と、(c)前記レジストパターンおよび前記レジストパターン上に形成された前記少なくとも1つの電極層を共に除去する工程とを含む工程によって分割されることを特徴とする太陽電池の製造方法。・・・ 【請求項4】 前記(a)の工程において、吐出口を有する容器内に前記レジスト液を入れ、前記レジスト液を前記吐出口から排出させてストライプ状に配置する請求項1に記載の太陽電池の製造方法。・・・ 【請求項9】 前記(a)の工程において、印刷版を備えるロールを用いて前記レジスト液をストライプ状に配置する請求項1に記載の太陽電池の製造方法。」 b 上記aによれば、引用例3には、次の発明が記載されているものと認められる。 「吐出口を有する容器内にレジスト液を入れ、レジスト液を前記吐出口から排出させてストライプ状に配置するか、印刷版を備えるロールを用いてレジスト液を塗布してストライプ状のレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンを覆うように電極層を形成する工程と、レジストパターンおよびレジストパターン上に形成された電極層を共に除去する工程とを含む工程によって分割される太陽電池の製造方法。」(以下「引用発明3」という。) ウ 対比 (ア)本願発明と引用発明1を対比すると、 引用発明1の「表面電極」、「光起電(PV)層」、「裏面電極」、「太陽電池ユニット」、「直列接続された少なくとも2つの個別の電池に分割され」、「透明導電性酸化物(TCO)の表面電極」、「溝を絶縁材料で埋め」、「(PV層を貫通してTCOに達するまで設けられる)相互接続体の基礎を成す溝」、「裏面電極層をPV層上に被着させる工程」、「裏面電極内に、PV層に達する溝を設ける工程」、及び「太陽電池ユニットの製造方法」は、 本願補正発明の「第一の電極」、「活性層」、「第二の電極」、「太陽電池モジュール」、「直列に接続された太陽電池を含んでいる」、「該第一および第二の電極のうちの少なくとも1が透明導電性酸化物層」、「遮断溝中に絶縁コンパウンドを挿入する」、「(活性層を貫通する)相互接続の第二の溝」、「活性層、絶縁コンパウンドの上に第二の電極を施与する段階」、「第二の電極中に溝を得る段階」、及び「太陽電池モジュールをつくる方法」にそれぞれ相当する。 (イ)引用発明1の「透明導電性酸化物(TCO)の表面電極を仮基板上に被着させる工程」によって構成されるものは、「(透明導電性酸化物(TCO)の表面電極によって上を覆われた)仮基板」であり、また、引用発明1の「TCO層上に光起電(PV)層を被着させ・・る工程」によって構成されるものは、「TCO層が光起電(PV)層によって上を覆われている」ものであるから、引用発明1の上記工程によって構成されるものは、本願補正発明の「第一の電極層によって上を覆われた基板から少なくとも構成される系であって、該第一の電極層が活性層によって上を覆われている上記系」に相当する。 (ウ)引用発明1の「PV層およびTCO層を貫通して仮基板に達する溝」は、「該溝を絶縁材料で埋める」から、「TCO層及びPV層に絶縁材料を備えるための絶縁の溝」ということができ、引用発明1は、「電極および活性層中に遮断体を備えるための遮断の第一の溝」をつくる段階を含む点で本願補正発明と一致する。 (エ)したがって両者は、 「直列に接続された太陽電池を含んでいる太陽電池モジュールをつくる方法であって、該モジュールが第一の電極、活性層、および第二の電極を含んでおり、該第一および第二の電極のうちの少なくとも1が透明導電性酸化物層であり、 第一の電極層によって上を覆われた基板から少なくとも構成される系であって、該第一の電極層が活性層によって上を覆われている上記系において、前面電極および活性層中に遮断体を備えるための遮断の第一の溝、ならびに活性層を貫通する相互接続の第二の溝の少なくとも1対をつくる段階、 遮断溝中に絶縁コンパウンドを挿入する段階、 活性層、絶縁コンパウンドの上に第二の電極を施与する段階、および 第二の電極中に溝を得る段階 を含む方法。」 である点で一致し、 a.本願補正発明は、「該第一および第二の溝が互いに近接した位置に置かれる」のに対して、引用発明1は、「電極および活性層中に遮断体を備えるための遮断の第一の溝」と「(活性層を貫通する)相互接続の第二の溝」が「互いに近接した位置に置かれる」のか否か明らかではない点(以下「相違点1」という。)、及び、 b.本願補正発明は、「c) 段階b)と同時に、相互接続溝の、絶縁溝とは反対側で相互接続溝に隣接した位置において活性層上に剥離コンパウンドを施与する段階」を有し、「d) 活性層、絶縁コンパウンドおよび剥離コンパウンドの全体上に第二の電極を施与」し、「剥離コンパウンドおよび該剥離コンパウンドの上を覆っている第二の電極を上記位置において除去して、第二の電極中に溝を得る」ものであるのに対して、引用発明1は「剥離コンパウンドを施与する」ものではなく、第二の電極が剥離コンパウンドの上に施与されず、第二の電極中に溝を得る際に「剥離コンパウンドおよび該剥離コンパウンドの上を覆っている第二の電極を上記位置において除去」するものではない点(以下「相違点2」という。) で相違するものと認められる。 エ 判断 (ア)上記相違点1について検討する。 引用発明1において、「PV層およびTCO層を貫通して仮基板に達する溝」と「相互接続体の基礎を成す溝」をどのような位置に置くかは当業者が当該引用発明1を実施する上で設計上適宜に定めるべき事項であり、両者の間は無駄な部分となるため、両者を互いに近接した位置に置くことは当業者が容易になし得ることである。 (イ)上記相違点2について検討する。 上記イ(イ)及び(ウ)によれば、上記引用発明2及び3は、いずれも、電極中に溝を得るために、剥離コンパウンド(ストライプパターン、ストライプ状のレジストパターン)を施与し、剥離コンパウンドの上に電極(金属膜、電極層)を施与し、剥離コンパウンドおよび該剥離コンパウンドの上を覆っている電極を除去(裏面電極の選択的分離、レジストパターン上に形成された電極層を・・・除去)する発明であるといえるところ、引用発明1の「裏面電極層をPV層上に被着させる工程と、相互接続体が埋められる溝の、絶縁材が埋められる溝とは反対側で、相互接続体が埋められる溝に隣接した位置の裏面電極内に、PV層に達する溝を設ける工程」の具体的手段として、上記のような「電極中に溝を得るために、剥離コンパウンドを施与し、剥離コンパウンドの上に電極を施与し、剥離コンパウンドおよび該剥離コンパウンドの上を覆っている電極を除去する」発明を採用することは、当業者が容易になし得ることである。 そして、その際、光起電(PV)層上に剥離コンパウンドを施与する段階と、PV層およびTCO層を貫通する溝に絶縁材料を埋める工程とを同時に行って、上記相違点2にかかる本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。 オ まとめ 以上アないしエの検討によれば、本願補正発明は、引用例1、2及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)小括 したがって、本願補正発明は、引用例1、2及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たしていない。 3 本件補正についてのむすび 上記2で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年6月18日に提出された国内書面の明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2、2(1)において、補正前のものとして示したとおりのものである。 2 刊行物の記載及び引用発明 前記第2、2(3)イのとおりである。 3 対比・判断 前記第2、2(3)での検討に照らして、本願発明と引用発明1とを対比すると、 本願発明は、「該第一および第二の溝が互いに近接した位置に置かれる」のに対して、引用発明1は、「電極および活性層中に遮断体を備えるための遮断の第一の溝」と「(活性層を貫通する)相互接続の第二の溝」が「互いに近接した位置に置かれる」のか否か明らかではない点(以下「相違点3」という。)、及び、 本願発明は、「c) 段階b)の前に、段階b)と同時に、または段階b)の後に、相互接続溝の、絶縁溝とは反対側で相互接続溝に隣接した位置において活性層上に剥離コンパウンドを施与する段階」を有し、「d) 活性層、絶縁コンパウンドおよび剥離コンパウンドの全体上に第二の電極を施与」し、「剥離コンパウンドおよび該剥離コンパウンドの上を覆っている第二の電極を上記位置において除去して、第二の電極中に溝を得る」ものであるのに対して、引用発明1は「剥離コンパウンドを施与する」ものではなく、第二の電極が剥離コンパウンドの上に施与されず、第二の電極中に溝を得る際に「剥離コンパウンドおよび該剥離コンパウンドの上を覆っている第二の電極を上記位置において除去」するものではない点(以下「相違点4」という。) で相違し、両者はその余の点において一致するものと認められる。 そして、上記相違点3は、前記第2、2(3)ウ(エ)aで示した相違点1であり、上記相違点4は、前記第2、2(3)ウ(エ)bで示した相違点2に含まれるものである。そして、引用発明1において、上記相違点3及び4に係る構成を備えたものとすることは、前記第2、2(3)エでの検討と同様の理由により、引用例2及び3に記載された発明を採用することにより当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明に、引用例2及び3に記載された発明を採用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1、2及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-11-16 |
結審通知日 | 2011-11-21 |
審決日 | 2011-12-02 |
出願番号 | 特願2009-542085(P2009-542085) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 和田 将彦 |
特許庁審判長 |
吉野 公夫 |
特許庁審判官 |
北川 創 松川 直樹 |
発明の名称 | 太陽電池から太陽電池サブセルをつくる方法 |
代理人 | 松井 光夫 |