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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1255640
審判番号 不服2009-352  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-05 
確定日 2012-04-18 
事件の表示 特願2003-506335「アルファ-オレフィンをベースとした枝分れポリマー」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月27日国際公開、WO2002/102863、平成17年2月17日国内公表、特表2005-504853〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年6月13日(パリ条約による優先権主張 2001年6月15日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成20年1月17日付けで拒絶理由が通知され、同年7月18日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月19日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、それに対して、平成21年1月5日に拒絶査定不服審判が請求され、同年3月18日に手続補正書(方式)が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?18に係る発明は、平成20年7月18日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?18にそれぞれ記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
少なくとも3個の炭素原子を有するアルファ-オレフィン(1')から誘導される単位(1)と、ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')から誘導される単位(2)と、エチレン(3')から誘導される単位(3)とを含むポリマーであって、
該ポリマーが、少なくとも75モル%の単位(1)、0.01モル%から5モル%までの単位(2)、及び20モル%までの単位(3)を含み、また、
該ポリマーが、分枝ファクターBF≦0.75[ファクターBFは比D/(A+B)を表し、式中のD、A、及びBは、該ポリマーの定量的な炭素-13NMR分光法により決定される積分信号値であって、ここで、Aは145.0ppmから142.5ppmまでの範囲における信号の積分値を表し、Bは142.5ppmから139.0ppmまでの範囲における信号の積分値を表し、そして、Dは115.0ppmから112.5ppmまでの範囲における信号の積分値を表す]を有するポリマー。
【請求項2】
該BFファクターが0≦BF≦0.50の範囲内の値を有する、請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
分枝タイプファクターBTF≧0.01[該ファクターBTFは比(B/A)を表し、式中のA及びBは、該ポリマーの定量的な炭素-13NMR分光法により決定される積分信号値であって、ここで、Aは145.0ppmから142.5ppmまでの範囲における信号の積分値を表し、そして、Bは142.5ppmから139.0ppmまでの範囲における信号の積分値を表す]を有する、請求項1記載のポリマー。
【請求項4】
BTFが0.01≦BTF≦50の範囲内の値を有する、請求項3記載のポリマー。
【請求項5】
単位(1)が、プロピレン、または、プロピレンと4個から20個までの炭素原子を有する1つもしくはそれ以上のアルファ-オレフィン(1')とから誘導される、請求項1記載のポリマー。
【請求項6】
単位(2)が、p-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、またはo-ジビニルベンゼン、あるいはこれらのうちの2つもしくはそれ以上の混合物(2')から誘導される、請求項1記載のポリマー。
【請求項7】
少なくとも85モル%の単位(1)と、0.02モル%から4モル%までの単位(2)と、エチレンから誘導される0.05モル%から10モル%までの単位(3)とを含む、請求項1記載のポリマー。
【請求項8】
プロピレンまたはプロピレンと4個から20個までの炭素原子を有する1つもしくはそれ以上のアルファ-オレフィン(1')とから誘導される単位(1)と、p-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、またはo-ジビニルベンゼン、あるいはこれらのうちの2つもしくはそれ以上の混合物(2')から誘導される単位(2)、エチレン(3')から誘導される単位(3)とを含むポリマーであって、
該ポリマーが、少なくとも85モル%の単位(1)と、0.02モル%から4モル%までの単位(2)、及び0.05モル%から10モル%までの単位(3)とを含み、また、
該ポリマーが、0≦BF≦0.50の範囲内の分枝ファクターBF[該BFは比D/(A+B)を表し、式中のD、A、及びBは、該ポリマーの定量的な炭素-13NMR分光法により決定される積分信号値であって、ここで、Aは145.0ppmから142.5ppmまでの範囲における信号の積分値を表し、Bは142.5ppmから139.0ppmまでの範囲における信号の積分値を表し、そして、Dは115.0ppmから112.5ppmまでの範囲における信号の積分値を表す]を有し、
該ポリマーが、0.01≦BTF≦50の範囲内の分枝タイプファクターBTF[該BTFは比(B/A)を表し、式中のA及びBは、該ポリマーの定量的な炭素-13NMR分光法により決定される積分信号値であって、ここで、Aは145.0ppmから142.5ppmまでの範囲における信号の積分値を表し、そして、Bは142.5ppmから139.0ppmまでの範囲における信号の積分値を表す]を有するポリマー。
【請求項9】
少なくとも3個の炭素原子を有するアルファ-オレフィン(1')から誘導される単位(1)と、ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')から誘導される単位(2)と、エチレン(3')から誘導される単位(3)とを含み、分枝ファクターBF≦0.75[該BFは比D/(A+B)を表し、式中のD、A、及びBは、該ポリマーの定量的な炭素-13NMR分光法により決定される積分信号値であって、ここで、Aは145.0ppmから142.5ppmまでの範囲における信号の積分値を表し、Bは142.5ppmから139.0ppmまでの範囲における信号の積分値を表し、そして、Dは115.0ppmから112.5ppmまでの範囲における信号の積分値を表す]を有するポリマーを調製するための方法であって、
該アルファ-オレフィン(1')と該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')とのモル比が少なくとも10:1であり、該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')と該エチレン(3')とのモル比が1:0.1から1:2000までの範囲であり、そして、該アルファ-オレフィン(1')と該エチレン(3')とのモル比が少なくとも4:1である重合条件下において、重合触媒の存在下で、該アルファ-オレフィン(1')、該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')、及び該エチレン(3')を接触させる調製方法。
【請求項10】
プロピレンまたはプロピレンと4個から20個までの炭素原子を有する1つもしくはそれ以上のアルファ-オレフィンを含むアルファ-オレフィン(1')、p-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、またはo-ジビニルベンゼン、あるいはこれらのうちの2つもしくはそれ以上の混合物を含むジビニルベンゼン化合物(2')、及びエチレン(3')が接触させられる請求項9記載の方法。
【請求項11】
該アルファ-オレフィン(1')と該ジビニルベンゼン化合物(2')とのモル比が少なくとも20:1であり、そして、該ジビニルベンゼン化合物(2')と該エチレン(3')とのモル比が1:0.5から1:1000までの範囲である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
該ポリマーが粒子の形態または重合希釈剤中に溶解された形態で調製される、請求項9記載の方法。
【請求項13】
該ポリマーが重合希釈剤中における粒子のスラリーの形態で調製される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
該重合希釈剤が液体の形態におけるアルファ-オレフィン(1')である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
該重合触媒が、以下の化学式:
Lp_(l)MXmX'_(n)X"_(p)、またはそれらのダイマー
[式中:
Lpは、50個までの非水素原子を含有する、Mに結合されたアニオン非局在化π-結合型基であり、場合によっては2個のLp基が一緒に結合されて架橋構造を形成していてよく、更に、場合によっては、1個のLpがXに結合されていてよく;
Mは、+2、+3、または+4の形式酸化状態にある、元素の周期表の4族に属する金属であり;
Xは、Lpと一緒になってMと共にメタロ環を形成する、50個までの非水素原子の任意の二価の基であり;
X'は、20個までの非水素原子を有する任意の中性の配位子であり;
X"は、存在毎に、40個までの非水素原子を有する一価のアニオン部分であり、場合によっては、2個のX"基が一緒に共有結合されて、Mに結合された両原子価を有する二価のジアニオン部分を形成していてよく、または、場合によって、2個のX"基が一緒に共有結合されて、M(このとき、Mは+2の酸化状態にある)にπ-結合された中性の共役または非共役ジエンを形成していてよく、あるいは、更に、場合によって、1個もしくはそれ以上のX"基と1個もしくはそれ以上のX'基が一緒に結合されて、これにより、共にMに共有結合され、且つ、ルイス塩基の官能性によりそこへ配位された部分を形成していてよく;
lは0、1、または2であり;
mは0または1であり;
nは0から3までの数であり;
pは0から3までの整数であり;そして
総和l+m+pは、2個のX"基が一緒になってMにπ-結合された中性の共役または非共役ジエンを形成している場合を除き(この場合には、総和l+mがMの形式酸化状態に等しい)、Mの形式酸化状態に等しい]
に相当する遷移金属錯体;あるいは、
以下の一般式:
【化1】

[式中、
R^(1)は、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、置換へテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換へテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、
Tは、R^(2)及びR^(3)が水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、置換へテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換へテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、アルコキシル、アリールオキシル、シリル、ボリル、ホスフィノ、アミノ、チオ、セレノ、ハライド、ニトロ、及びそれらの組み合わせからなる群から独立的に選択されることを条件として、-CR^(2)R^(3)-及び-SiR^(2)R^(3)-からなる群から選択される架橋基であり、
J"はヘテロアリール及び置換へテロアリールからなる群から選択され、
xは1または2であり、
各Lは、ハライド、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、置換へテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換へテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、ボリル、シリル、アミノ、アミン、ヒドリド、アリル、ジエン、セレノ、ホスフィノ、ホスフィン、カルボキシレート、チオ、1,3-ジオネート、オキサレート、カルボネート、ナイトレート、スルフェート、及びそれらの組み合わせからなる群から独立的に選択され、そして、
nは3(xが1のとき)、またはnは1もしくは2(xが2のとき)であり、
ここで、J"は供与結合していてもよく、あるいは供与結合していなくてもよい]
の金属-配位子錯体;あるいは、
次の一般式:
【化2】

[式中、
Mはジルコニウムまたはハフニウムであり;
R^(1)及びTは、上で定義されている通りのものであり;
J"'は、金属Mに結合されている2個の原子を伴う置換へテロアリールの群から選択され、それら該2個の原子のうち少なくとも1つはヘテロ原子であって、J'"の1つの原子が供与結合によりMに結合されている場合には、もう一方の原子は共有結合を通じて結合されており;そして、
L^(1)及びL^(2)は、ハライド、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、置換へテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換へテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、ボリル、シリル、アミノ、アミン、ヒドリド、アリル、ジエン、セレノ、ホスフィノ、ホスフィン、カルボキシレート、チオ、1,3-ジオネート、オキサレート、カルボネート、ナイトレート、スルフェート、及びそれらの組み合わせからなる群から独立的に選択される]
の金属-配位子錯体;
を含む、請求項9記載の方法。
【請求項16】
該遷移金属錯体が、活性化共触媒と組み合わせることにより触媒的に活性に為される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの他のポリマーと、請求項1記載のポリマーとの混合物。
【請求項18】
請求項1記載のポリマーから調製される物品、あるいは、請求項1記載のポリマーを含有する物品。」

3.原査定の拒絶の理由の概要
これに対して、原査定における拒絶の理由は、平成20年1月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由1.-5.によって、拒絶をすべき、というものであり、そのうち、理由1.及び3.は、それぞれ、
1.本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物(国際公開第2000/47643号)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当する。
3.本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
というものである。

4.原査定の拒絶の理由の妥当性
そこで、本願の請求項9に係る発明(以下、「本願発明9」という。)について、上記拒絶の理由1及び3が妥当であるか否かについて検討する。
(1)理由1について
引用刊行物:国際公開第2000/47643号
a.引用刊行物の記載事項
上記引用刊行物は国際公開(英語)であることにかんがみ、その記載の摘示(日本語訳)は、対応する公表公報である特表2002-536514号公報の記載を援用する。
ア.「実施例4
窒素雰囲気下、-25℃に保った100mLパイレックスガラス三口フラスコ中に、トルエン(28mL)、p-メチルスチレン(2mL)およびメチルアルモキサン(MAO)(460mg)の順で導入する。窒素を除去した後、液相を、常圧でプロピレン/エチレン混合物(124/1モル/モル)を泡立たせ、毎分0.3Lで流入させて飽和させる。
反応を、フラスコ中に2mLの無水トルエンに溶解させた6mgのrac-エチレン-ビス(1-インデニル)ZrCl_(2)触媒を注入することにより開始させる。
3時間の反応時間の後、生成したポリマーをHClで酸性化したエタノール200mL中で凝固させ、ろ過して真空オーブンで乾燥する。
収率は約500mgである。
^(13)C-NMR分析から、ポリマーは本質的にアイソタクチックポリプロピレンからなり、0.7モル%のp-メチルスチレン単位と0.9モル%のエチレン単位(そのうち0.7%はp-メチルスチレン単位に結合する、X_(S)=0.07)を結果的に含む。
10K/分の走査速度で行った示差熱量測定分析から、ポリマーは134℃(△H_(f)=85J/g)の融点に結果的に特徴がある。
この触媒系と同じ条件で得られた、アイソタクチックポリプロピレンは151℃の融点(△Hf=95J/g)を示すことは興味深い。」(11頁27行?12頁15行:公表公報の段落0063?0067)

イ.「実施例5
用いた触媒系、操作方法および反応条件は、p-メチルスチレンの代わりにジビニルベンゼンを用い、プロピレン/エチレン混合物の組成物は75/1モル/モルである以外は、実施例4のものと同一である。
収率は約500mgである。
^(13)C-NMR分析から、ポリマーは本質的にアイソタクチックポリプロピレンからなり、0.7モル%のジビニルベンゼン単位と、0.7モル%の結合したエチレン単位(X_(S)=0.007)を結果的に含む。
10K/分の走査速度で行われた示差熱量測定分析から、ポリマーは131℃(△H_(f)=90J/g)の融点に結果的に特徴がある。」(12頁16?26行:公表公報の段落0068?0069)

b.引用刊行物に記載された発明
上記摘示イの実施例5は摘示アの実施例4を参酌すれば、以下のとおりのものと認められる。
「窒素雰囲気下、-25℃に保った100mLパイレックスガラス三口フラスコ中に、トルエン(28mL)、ジビニルベンゼン(2mL)およびメチルアルモキサン(MAO)(460mg)の順で導入する。窒素を除去した後、液相を、常圧でプロピレン/エチレン混合物(75/1モル/モル)を泡立たせ、毎分0.3Lで流入させて飽和させる。
反応を、フラスコ中に2mLの無水トルエンに溶解させた6mgのrac-エチレン-ビス(1-インデニル)ZrCl_(2)触媒を注入することにより開始させる。
3時間の反応時間の後、生成したポリマーをHClで酸性化したエタノール200mL中で凝固させ、ろ過して真空オーブンで乾燥する。
収率は約500mgである。
^(13)C-NMR分析から、ポリマーは本質的にアイソタクチックポリプロピレンからなり、0.7モル%のジビニルベンゼン単位と、0.7モル%の結合したエチレン単位(X_(S)=0.007)を結果的に含む。
10K/分の走査速度で行った示差熱量測定分析から、ポリマーは131℃(△H_(f)=90J/g)の融点に結果的に特徴がある。」

そうすると、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものといえる。
「トルエン中-25℃常圧で、ジビニルベンゼン(2mL)とプロピレン/エチレン混合物(75/1モル/モル、0.3L/分)とをrac-エチレン-ビス(1-インデニル)ZrCl_(2)触媒及びメチルアルモキサン(MAO)を用いて3時間反応させることによる、本質的にアイソタクチックポリプロピレンからなり、0.7モル%のジビニルベンゼン単位と、0.7モル%の結合したエチレン単位を結果的に含むポリマーの製造方法。」

c.対比・判断
本願発明9と引用発明とを対比する。
引用発明における「プロピレン」は、本願発明9における「少なくとも3個の炭素原子を有するアルファ-オレフィン(1')」に該当する。
また、引用発明においては「ジビニルベンゼン、プロピレン及びエチレンをrac-エチレン-ビス(1-インデニル)ZrCl_(2)触媒及びメチルアルモキサン(MAO)を用いて反応させる」ものであるから、これは、本願発明9における「重合触媒の存在下で、アルファ-オレフィン(1')、ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')、及びエチレン(3')を接触させる」ものといえる。
さらに、引用発明では「プロピレン/エチレン混合物の組成物は75/1モル/モル」であるから、「アルファ-オレフィン(1')とエチレン(3')とのモル比は少なくとも4:1」といえる。

そうすると、本願発明9と引用発明とは、
「少なくとも3個の炭素原子を有するアルファ-オレフィン(1')から誘導される単位(1)と、ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')から誘導される単位(2)と、エチレン(3')から誘導される単位(3)とを含むポリマーを調製するための方法であって、
該アルファ-オレフィン(1')と該エチレン(3')とのモル比が少なくとも4:1である重合条件下において、重合触媒の存在下で、該アルファ-オレフィン(1')、該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')、及び該エチレン(3')を接触させる調製方法。」
である点で一致しているが、次の点でとりあえず相違するものである。

相違点1:
本願発明9では「該アルファ-オレフィン(1')と該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')とのモル比が少なくとも10:1であり、該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')と該エチレン(3')とのモル比が1:0.1から1:2000までの範囲である」との重合条件を特定しているが、引用発明ではそのような特定がない点。

相違点2:
本願発明9では調製するポリマーについて「分枝ファクターBF≦0.75[該BFは比D/(A+B)を表し、式中のD、A、及びBは、該ポリマーの定量的な炭素-13NMR分光法により決定される積分信号値であって、ここで、Aは145.0ppmから142.5ppmまでの範囲における信号の積分値を表し、Bは142.5ppmから139.0ppmまでの範囲における信号の積分値を表し、そして、Dは115.0ppmから112.5ppmまでの範囲における信号の積分値を表す]を有する」ものであることを特定しているが、引用発明ではそのような特定がない点

相違点1について
引用発明では、ジビニルベンゼンは2mL使用するものである。
ところで、ジビニルベンゼンの比重は約0.92であり[「化学大辞典」(共立出版)によれば、ジビニルベンゼンの比重はo-体が0.934、m-体が0.926、p-体が0.913であり、一般にm-及びp-体が用いられる(第4巻425頁右欄の「ジビニルベンゼン」の項)ことにかんがみれば、約0.92とすることに問題はないものと考えられる。]、またジビニルベンゼンの分子量は130(C_(10)H_(10))であるから、そのモル数は
2(mL)×0.92(g/mL)÷130(g/モル)=0.014モル
と計算できる。
また、引用発明においては、プロピレンとエチレンは75/1モル/モル混合物を3時間(すなわち180分)の反応時間中毎分0.3L(常圧)で吹き込むことから、使用するプロピレン/エチレン混合物は
0.3(L/分)×180(分)=54L
であり、1モルの気体は0℃1気圧で約22.4Lであるから、
54(L)÷22.4(L/モル)=3.41モル
と計算できる。したがって、
プロピレン:3.41モル×(75/(75+1))=2.38モル
エチレン:3.41モル×(1/(75+1))=0.03モル
となる。
そうすると、プロピレンとジビニルベンゼンとのモル比は、2.38:0.014=170:1と計算でき、これは本願発明9で特定する「該アルファ-オレフィン(1')と該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')とのモル比が少なくとも10:1」との重合条件を満たしており、またジビニルベンゼンとエチレンとのモル比は、0.014:0.03=1:2.14と計算でき、これは本願発明9で特定する「該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')と該エチレン(3')とのモル比が1:0.1から1:2000までの範囲」との重合条件を満たしている。
そうすると、相違点1に係る事項は相違点ではない。

相違点2について
本願発明9は、
「少なくとも3個の炭素原子を有するアルファ-オレフィン(1')とジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')とのモル比が少なくとも10:1であり、該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')とエチレン(3')とのモル比が1:0.1から1:2000までの範囲であり、そして、該アルファ-オレフィン(1')と該エチレン(3')とのモル比が少なくとも4:1である重合条件下において、重合触媒の存在下で、該アルファ-オレフィン(1')、該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')、及び該エチレン(3')を接触させる」という製造方法を採用することにより、
「該アルファ-オレフィン(1')から誘導される単位(1)と、該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')から誘導される単位(2)と、該エチレン(3')から誘導される単位(3)とを含み」、「分枝ファクターBF≦0.75[該BFは比D/(A+B)を表し、式中のD、A、及びBは、該ポリマーの定量的な炭素-13NMR分光法により決定される積分信号値であって、ここで、Aは145.0ppmから142.5ppmまでの範囲における信号の積分値を表し、Bは142.5ppmから139.0ppmまでの範囲における信号の積分値を表し、そして、Dは115.0ppmから112.5ppmまでの範囲における信号の積分値を表す]を有する」(以下、「分枝ファクター要件」という。)ポリマーが調製されるものと認められる。

一方で、引用発明は、「一致点」及び「上記相違点1について」で検討したとおり、「少なくとも3個の炭素原子を有するアルファ-オレフィン(1')とジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')とのモル比が少なくとも10:1であり、該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')とエチレン(3')とのモル比が1:0.1から1:2000までの範囲であり、そして、該アルファ-オレフィン(1')と該エチレン(3')とのモル比が少なくとも4:1である重合条件下において、重合触媒の存在下で、該アルファ-オレフィン(1')、該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')、及び該エチレン(3')を接触させる」という製造方法については相違しないことから、これによって調製される「該アルファ-オレフィン(1')から誘導される単位(1)と、該ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')から誘導される単位(2)と、該エチレン(3')から誘導される単位(3)とを含むポリマー」は、結局、「分枝ファクター要件」を満たすものと認められる。
そうすると、相違点2に係る事項は実質的に相違点ではない。

以上検討したとおり、相違点1及び2は何れも相違点ではないから、本願発明9と引用発明とは相違するところがない。
したがって、本願発明9は上記引用刊行物に記載された発明である。

d.請求人の主張
請求人は、審判請求書の請求の理由において、次の主張をしている。
「上述するように、本願発明の調製方法は、請求項に記載されたモノマー量及び0.75以下の分枝ファクター(BF)を有するポリマーを提供するものです。引用文献1の実施例5は0.994のBFを有する線状のポリマーを提供するものであるため、実施例5で用いられる調製方法が本願発明に係る調製方法とは異なることは明らかです。

引用文献1の実施例5では、重合反応が、0.75以下のBFを有するプロピレン系分枝ポリマーを調製するのに適した条件下で行われていないと考えられます。
本願発明では、請求項に記載された要件を満たす分枝ポリマーを得るために、明細書に記載された様々なファクターが慎重に選択されます。このようなファクターには、例えば、ポリマーに組み込まれるべきモノマー単位の具体例(例えば段落[0022]及び[0023]など)、各単位のモル%(例えば段落[0013]など)、各単位間のモル比(例えば段落[0014]及び[0026]など)、使用するエチレンの量(例えば段落[0017]及び[0024]など)、重合の種類(例えば段落[0030]など)、使用される触媒(例えば段落[0031]?[0088]など)、重合反応の条件(例えば段落[0089]?[0097]など)などが含まれます。

本願発明の調製方法と、引用文献1の実施例5で用いられる調製方法との違いは、以下であると考えられます。
引用文献1の実施例5には、本願の実施例7に類似すると思われる溶液重合方法が記載されています。各実施例では、2mLのDVB(ジビニルベンゼン化合物)を用いて、(プロピレン-DVB-エチレン)コポリマーを調製しています。しかしながら、これらの実施例では生成ポリマーの収量に大きな違いがあり、引用文献1では約0.5gのポリマーしか得られない一方、本願では64.7gのポリマーが得られています。DVBの転換又はポリマーへの組み込みは、このデータから推算することができます。引用文献1の実施例5の場合、DVB転換は0.6%であり、本願実施例では11%であると推算できます(引用文献1の実施例5の生成ポリマーは0.7モル%のDVBを有し、本願の実施例7では0.1モル%を有する)。引用文献1が目的とするものは、単反応(singly-reacted)のDVB分枝で終端された線状のポリマー鎖を調製することであり、DVBの二重反応を最小限にするため低い収率及び転換率を保ちます。一方、本願の実施例が目的とするものは、二重反応のDVBの発生率を高くすることにより分枝ポリマーを調製することであり、このためポリマー中のスチリル残基のレベルは低くなります(BF≦0.75)。

引用文献1の実施例5で用いられる重合条件が詳細には記載されていないので、どの条件が原因となってDVB転換が極めて低くなるのか説明することは困難です(本願の実施例では11%であるのに対して、0.6%という低率)。
引用文献1の実施例5で用いられた、触媒、使用する触媒の量、重合反応に供給される各モノマーの比率、重合温度、重合時間、モノマーや触媒を供給する方法などが、DVB転換を高くして、0.75以下の分枝ファクターを有する分枝ポリマーを調製するには不適当である可能性があります。
本願の発明者は、先行技術において触媒の選択や低い転換率が、部分的に反応したDVB分子によって終端された線状のポリマーを調製する主要な方法であると考えています。本願の実施例7?9は、溶液重合反応や適切な触媒選択や高い転換率をどのように適用すれば、引用文献1で調製される線状のポリマーとは対照的に分枝ポリマーを調製できるかを示しています。請求項に記載されたポリマーは上述したモノマー量や分枝ファクターを有するので、生成ポリマーがこれらの要件を満たすようにプロセス条件が選択されます。

全ての重合触媒が所望の構造特性(BTF及びBF)を有するポリマーを提供するわけではありません。本願の調製方法では図1に示されるように重合触媒がジビニルベンゼンを組み込む能力や明細書に記載の構成比率を要求されますが、引用文献1では唯一図1Bに示されるように重合触媒がジビニルベンゼンを組み込む能力のみが要求されます。
本願の[図1]の引用 ≪省略≫
引用文献1の実施例5ではrac-エチレン-ビス(1-インデニル)ZrCl2触媒が用いられ、本願の実施例7の溶液重合方法では、遷移金属化合物rac-[ジメチルシランジイルビス(1-(2-メチル-4-フェニル)インデニル)]ジルコニウム(トランス、トランス-1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン)および活性化剤化合物ジ(C14-18アルキル)メチルアンモニウム1,3-ビス(トリス(ペンタフルオロフェニル)アルマン)-2-ウンデシルイミダゾリドを含む触媒溶液(触媒B)が用いられています。したがって、実施例5(引用文献1)で用いられた条件下での溶液重合方法においてrac-エチレン-ビス(1-インデニル)ZrCl2触媒を使用することが原因で0.75以下のBFを有する分枝ポリマーが得られないといことも考えられます。

本願発明者は、本願発明が溶液重合方法で実施可能であることを実施例で示していますが(実施例2、運転番号7?9)、本願発明にとって好ましい重合方法は、不均一スラリー重合方法または気相重合方法(実施例1、運転番号1?6)です。
不均一重合法には当業者には公知の特有の温度制限があります。溶液重合温度は、系の均一性を維持できる温度より高い必要があります。配位触媒は、失活したり高効率の重合反応が阻害されたりするような温度以上という、特徴的な温度制限を受ける傾向があります。
本願明細書に詳細に記載したように、スラリー重合法はポリマー粒子の不溶性を維持するために当然要求される温度や範囲の制限があります。好適には、溶液重合温度は、約75℃から、より好適には約80℃から、約200℃まで、より好適には約160℃までの範囲です(明細書の段落[0092]を参照)。溶液重合法を用いた実施例(運転番号7?9)は高いポリマー収量で実施されており、この収量は0.75以下のBFと関連していると推測され、ポリマー中のスチリル残基が低レベルであることを意味すると考えられています(明細書の段落[0120]を参照)。当業者であれば、ポリマー収量は最高の重合速度と最小の触媒の失活で反応器温度を最適化することによって増加し得ると理解できます。しかしながら、引用文献1の実施例5では、そのような最適化はされていないと考えられます。

引用文献1には、例えば重合温度やモノマー及び触媒の供給の方法などの重合反応条件が詳細には記載されておらず、触媒、重合温度、モノマー及び触媒の系への供給方法の選択などが分枝ポリマーを調製できるようなものではなかった可能性があります。引用文献1は上述するように線状のポリマーを調製することを目的としているため、この推測は合理的なものです。

したがって、引用文献1の実施例5で用いられている調製方法が本願発明の分枝ポリマーの調製方法とは異なると判断することは合理的なものであり、本願発明の新規性及び進歩性は引用文献1によって否定されることはありません。
また、当業者であれば、本願明細書の記載内容、特に請求項に記載された分枝ポリマーが現実にうまく調製されている実施例の記載内容を参考にして、重合方法や触媒の種類、反応器に供給すべきモノマーの量を適切に選択することができるということにご留意下さい。」

しかし、この請求人の主張は、本願請求項9において発明を特定するために必要と認める事項(以下、「発明特定事項」という。)として記載していない事項に基づくものであるから失当である。
たとえば、請求人は「引用文献1の実施例5で用いられた、触媒、使用する触媒の量、重合反応に供給される各モノマーの比率、重合温度、重合時間、モノマーや触媒を供給する方法などが、DVB転換を高くして、0.75以下の分枝ファクターを有する分枝ポリマーを調製するには不適当である可能性があります。」と述べ、さらに、具体的に触媒、重合方法、重合温度等を挙げて反論しているが、「触媒、使用する触媒の量、重合温度、重合時間、モノマーや触媒を供給する方法」や「重合方法」は、請求項9に「発明特定事項」として記載されていない。
本願発明9は製造方法に係る発明であるところ、これらの製造条件に係る事項が従来技術との差別化に必須であると認識しているのであれば、請求項9において発明特定事項として記載した上で、そのような事項が引用発明にないことを主張する必要がある。
しかし、上記したとおり、これらの事項は、請求項9において発明特定事項としては含まれていないのであるから、引用発明との対比において特段考慮する必要はないものである。

(2)理由3について
仮に、上記引用発明で製造されるポリマーが「分枝ファクター要件」を満足しないものであるとすると、本願発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が、本願発明9の実施をするために過度の試行錯誤が必要となるから、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

すなわち、本願発明9は「分枝ファクター要件」をその発明特定事項として備えるものであるが、この「分枝ファクター要件」を満足する「少なくとも3個の炭素原子を有するアルファ-オレフィン(1')から誘導される単位(1)と、ジビニルベンゼンまたはそれらのC_(1-10)ヒドロカルビル置換誘導体(2')から誘導される単位(2)と、エチレン(3')から誘導される単位(3)とを含む」ポリマーをどのようにして製造すればよいのか、発明の詳細な説明の記載を考慮しても過度の試行錯誤が必要であり、実施例に開示されたもの以外はどのようにすれば「分枝ファクター要件」を満足させ得るのか当業者が理解できるように記載されていない。
例えば、上記引用発明で使用する触媒である「rac-エチレン-ビス(1-インデニル)ZrCl_(2)」は本願発明9で特定する「重合触媒」であることは疑いがない。(さらに言えば、この「rac-エチレン-ビス(1-インデニル)ZrCl_(2)」は本願請求項15(請求項9を引用している)で特定する化学式「Lp_(l)MXmX'_(n)X"_(p)」に該当する触媒である。)それにもかかわらず、請求人は、審判請求書の請求の理由において、「実施例5(引用文献1)で用いられた条件下での溶液重合においてrac-エチレン-ビス(1-インデニル)ZrCl_(2)触媒を使用することが原因で0.75以下のBFを有する分枝ポリマーが得られないことも考えられます。」と述べている。ここで、「実施例5(引用文献1)で用いられた条件下での溶液重合において」というが、実施例5に記載された条件は、上記したとおり、本願発明9で特定する条件と相違しないものであるから、結局「rac-エチレン-ビス(1-インデニル)ZrCl_(2)」を使用した場合には、「分枝ファクター要件」を満足できないことを請求人自ら認めているものといえる。
さらに、審判請求書の請求の理由において、「本願発明では、請求項に記載された要件を満たす分枝ポリマーを得るために、明細書に記載された様々なファクターが慎重に選択されます。」と述べ、「分枝ファクター要件」を満たすためには試行錯誤が必要なことを認めた上で、「当業者であれば、本願明細書の記載内容、特に請求項に記載された分枝ポリマーが現実にうまく調製されている実施例の記載内容を参考にして重合方法や触媒の種類、反応器に供給すべきモノマーの量を適切に選択することができるということにご留意下さい。」と述べているが、一方で、請求人自身、「引用文献1の実施例5で用いられた、触媒、使用する触媒の量、重合反応に供給される各モノマーの比率、重合温度、重合時間、モノマーや触媒を供給する方法などが、DVB転換を高くして、0.75以下の分枝ファクターを有する分枝ポリマーを調製するには不適当である可能性があります。」とか、「引用文献1には、例えば重合温度やモノマー及び触媒の供給方法などの重合反応条件が詳細には記載されておらず、触媒、重合温度、モノマー及び触媒の系への供給方法の選択などが分枝ポリマーを調製できるようなものではなかった可能性があります。」と主張し、引用発明が「分枝ファクター要件」を満たさない原因を確定できないでいる。
このことは、「分枝ファクター要件」を満足するポリマーを製造するためには、当業者が“過度”の試行錯誤を必要とすることを裏付けるものといえる。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明9は、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものであるか、あるいは、そうでないとしても、明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないものである。
したがって、他の請求項に係る発明及び他の理由について検討するまでもなく、本願は上記理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-17 
結審通知日 2011-11-22 
審決日 2011-12-05 
出願番号 特願2003-506335(P2003-506335)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C08F)
P 1 8・ 113- Z (C08F)
P 1 8・ 536- Z (C08F)
P 1 8・ 121- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大久保 智之  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 小野寺 務
藤本 保
発明の名称 アルファ-オレフィンをベースとした枝分れポリマー  
代理人 片山 英二  
代理人 鈴木 康仁  
代理人 井口 司  
代理人 大森 規雄  
代理人 小林 浩  

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