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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1255669
審判番号 不服2011-15494  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-19 
確定日 2012-04-18 
事件の表示 特願2000-366840号「電解ガス発生方法及び電解ガス発生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年6月11日出願公開、特開2002-166279号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年12月1日の出願であって、平成22年7月2日付けの拒絶理由の通知に対して、同年9月3日付けで意見書が提出され、これに対して平成23年4月15日付けで拒絶査定がなされ、同年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「イオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させ、このイオン交換膜を固体電解質として電解することにより、陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する電解ガス発生方法において、
陽極側に供給する純水から残留している過酸化水素を除去した上で、前記純水を供給することを特徴とする電解ガス発生方法。」

2.引用例記載の発明
(2-1)原査定の拒絶の理由で引用された特開平11-335883号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
(a)「【請求項1】 その両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を配置させ、その間に固体電解質を配置し、陽極側に純水を供給して電解する事により陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する電解ガス発生装置において、常に陽極側の圧力が陰極側の圧力より大きく且つ、その差が2.0kg/cm^(2)以内になる様に、陽極側の圧力、及び/又は、陰極側の圧力を制御することを特徴とするオゾン、水素発生方法。」

(b)「【0003】パーフルオロカーボンスルフォン酸系陽イオン交換膜を固体電解質とし、その両側に陽極、陰極を密着させたいわゆるゼロギャップ方式の水電解は、構造が簡単で取り扱いが容易であり、腐食性もオゾンガス以外は無い為近年の水電解法オゾン発生の殆どを占めるようになった。」

(c)「【0027】発生したオゾン及び水素ガスは、各々ガス分離塔4,5により分離されオゾンガス導管11と水素ガス導管17に各々導かれる。オゾンガスは自動圧力調整機構10にて圧力調整されている。」

上記(a)ないし(c)の記載事項より、引用例1には、
「パーフルオロカーボンスルフォン酸系陽イオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させ、このイオン交換膜を固体電解質として電解することにより、陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する電解ガス発生方法において、陽極側に純水を供給する、電解ガス発生方法。」の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が開示されている。

(2-2)原査定の拒絶の理由で引用された特開2000-15272号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
(d)「【請求項3】 前記超純水が、超純水製造過程において過酸化水素の生成量が15μg/Lを超える強度の紫外線照射処理を受けたものである場合に、該超純水に過酸化水素除去処理を行ってからオゾンを溶解させることを特徴とする請求項1に記載のオゾン水製造方法。」

(e)「【0011】サブシステム3は、脱気器209、ポリッシャー(非再生式イオン交換器)211及び限外濾過膜装置212等からなり、ここでは、一次純水システム2から得られる処理水の純度を一層高め超純水にする。限外濾過膜装置212では、微粒子が除去され且つイオン交換樹脂の流出粒子も除去される。得られた超純水は各ユースポイントに供給され、残部は一次純水タンク208に戻され、次いでサブシステム3に供給される。一般に超純水製造装置で製造される超純水は、工場において洗浄、リンス、薬品溶解等多目的に使用される。従って、本実施の形態では、オゾン溶解用以外の超純水は従来通りの用途に使用され、オゾン溶解用の超純水のみ、超純水製造システムより一部を分岐した管路で取り出す構成とする。すなわち、超純水製造装置11aで得られる超純水が流通するメインの超純水流通管9から分岐した配管10に、オゾン発生器214と、これに連なるオゾン溶解器213からなるオゾン溶解部4(オゾン溶解手段)を組み込んだものである。本第1の実施の形態における超純水製造装置11aは、通常、使用される紫外線殺菌器(紫外線殺菌手段)と紫外線酸化器(紫外線酸化手段)を使用していないため、過酸化水素の生成は無く、超純水製造装置11aから得られる超純水中の過酸化水素濃度は極めて低濃度であり、ほとんど0μg/L である。このため、該超純水にオゾンを溶解させたオゾン水は自己分解が抑制され、その寿命は著しく延びる。

(f)「【0019】本第4の実施の形態のように、超純水が、超純水製造過程において過酸化水素の生成量が15μg/Lを超える強度の紫外線照射処理を受けたものである場合に、該超純水に過酸化水素除去処理を行ってからオゾンを溶解させれば、得られるオゾン水の自己分解が抑制され、オゾン水の長寿命化を図ることができる。また、オゾン水を溶解させる超純水のpHを酸性とすれば、オゾン水は更に長寿命となる。」

(g)「【0020】本発明において、オゾンを溶解させる超純水は、上記実施の形態における超純水製造装置により製造された超純水に限定されず、懸濁物質の除去処理、イオン性物質の除去処理、殺菌処理、有機物除去処理、微粒子の除去処理、脱気処理等の処理を適宜組合せたシステムによって精製された水であればよく、その水質としては、抵抗率が10MΩ・cm以上のものが好ましく、更に17MΩ・cm以上のものが好ましい。また、超純水中の過酸化水素濃度は、オゾン溶解前において15μg/L以下、好ましくは10μg/L以下、更に好ましくは0μg/Lである。」

(h)「【0025】図5より明らかなように、過酸化水素を35μg/L 含有する従来の超純水にオゾンを溶解してオゾン水を配管供給した場合(比較例1)、オゾン濃度の半減期は約1分である。例えば、オゾン溶解直後のオゾン濃度をユースポイントでの必要濃度の2倍としてオゾン水製造装置を設計する場合、従来の方法ではオゾン濃度の半減期が1分であるため、配管移送時間を1分以内としなければならない。通常行われているように、配管移送時の線速度を1.0?1.5m/秒とすれば、従来の方法では、移送配管長は60?90m以下に制限される。通常、工場内の配管は、発生源から移送先に対して直線状に敷設されることはなく、多くの曲折を含むから移送配管長が上記範囲に制限される従来の方法では、工場内の複数のユースポイントに対して、オゾン水を一括製造供給することは非常に困難であり、オゾン水製造装置を各ユースポイントの直近に個別に設置しなければならず、全体としての設計面積や維持管理費用を増大させる。これに対して、例えば、実施例2では超純水中の過酸化水素濃度が10μg/Lであり、この場合、オゾン濃度の半減期を4分以上とすることができる。前記と同様に、オゾン溶解直後のオゾン濃度をユースポイントでの必要濃度の2倍としてオゾン水製造供給装置を設計する場合、配管移送時間を4分以内まで設定することができ、配管移送時の線速度を1.0?1.5m/秒とした場合、配管長を240?360mまで延長することが可能となる。240?360mの配管長が可能となれば、ほとんどの工場において、工場内に分散した複数のユースポイントに対して、1台のオゾン水製造装置でオゾンを集中製造し供給することができ、全体としてオゾン水製造装置の設置面積を小さくできるので、初期投資や管理維持費用を節約することができる。」

上記(d)ないし(h)の記載事項より、引用例2には、
「オゾン水製造方法において、オゾン水の自己分解を抑制し、オゾン水の長寿命化を図るために、過酸化水素の生成量が15μg/Lを超える強度の紫外線照射処理を受けた超純水に存在する過酸化水素を除去して過酸化水素濃度を10μg/L以下(例えば0μg/L)にしてからオゾン溶解器においてオゾンを溶解させる、オゾン水製造方法。」の発明(以下、「引用例2記載の発明」という。)が開示されている。

3.対比・判断
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、両者は、
「イオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させ、このイオン交換膜を固体電解質として電解することにより、陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、又、陰極側より水素ガスを製造する電解ガス発生方法において、陽極側に純水を供給する、電解ガス発生方法。」という点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点>
本願発明では、「陽極側に供給する純水から残留している過酸化水素を除去した上で、純水を供給する」のに対して、引用例1記載の発明では、「陽極側に供給する純水から残留している過酸化水素を除去した上で、純水を供給する」ことを発明特定事項にしていない点。

<相違点>について検討する。
(i)上記2.(2-1)で示した引用例1記載の発明は、陽極側に純水を供給して純水を電解することにおいて、陽極側でオゾン水を生成すると共にこのオゾン水よりオゾンを製造することを示すものであり、ここで、オゾンの製造が良好になるように、陽極側(オゾン水生成部)のオゾン水を劣化させないようにすること自体、当然の事項である。
そして、一般に、上記2.(2-2)(g)で示した「【0025】図5より明らかなように、過酸化水素を35μg/L含有する従来の超純水にオゾンを溶解してオゾン水を配管供給した場合(比較例1)・・・」からして、純水中に過酸化水素が存在すること自体、従来よりよく知られた事項であり、そうである以上、引用例1記載の発明において、陽極側に供給される純水には過酸化水素が存在しているということができる。
一方、上記2.(2-2)で示した引用例2記載の発明は、「オゾン水製造方法において、オゾン水の自己分解を抑制し、オゾン水の長寿命化を図るために、過酸化水素の生成量が15μg/Lを超える強度の紫外線照射処理を受けた超純水に存在する過酸化水素を除去して過酸化水素濃度を10μg/L以下(例えば0μg/L)にしてからオゾン溶解器においてオゾンを溶解させる、オゾン水製造方法。」であり、これは、オゾン水の自己分解を抑制し、オゾン水の長寿命化を図るために、つまり、オゾン溶解器(オゾン水生成部)のオゾン水を自己分解(劣化)させないようにするために、オゾン溶解器(オゾン水生成部)に供給される純水中の過酸化水素濃度を10μg/L以下(例えば0μg/L)にすることを示すものである。
そうすると、引用例1、2記載の発明は、純水中に過酸化水素が存在すると共に、オゾン水生成部のオゾン水を劣化させないようにするという点で軌を一にしていることから、引用例1記載の発明において、陽極側(オゾン水生成部)のオゾン水を劣化させないようにするために、引用例2記載の発明の上記事項を適用することで、オゾン水生成部(陽極側)に供給される純水中の過酸化水素濃度(例えば35μg/L)を10μg/L以下(例えば0μg/L)にする(過酸化水素を除去する)ことは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

(ii)上記2.(2-1)で示した引用例1記載の発明は、陽極側に純水を供給して純水を電解することにおいて、パーフルオロカーボンスルフォン酸系陽イオン交換膜(固体電解質)を用いてオゾン水を生成すると共にこのオゾン水よりオゾンを製造することを示すものであり、ここで、オゾンの製造が良好になるように、純水中のイオン交換膜を劣化させないようにすること自体、当然の事項である。
そして、上記(i)で示したように、引用例1記載の発明において、陽極側に供給される純水には過酸化水素が存在しているということができる。
一方、一般に、純水中のイオン交換膜(例えば、特開平1-138237号公報の特に第4頁右上欄第6?20行に記載されているようにスルフォン酸系陽イオン交換膜として知られているデュオライトC-20)を劣化させないようにするために、純水中の過酸化水素を除去することは、本願出願前周知の事項(例えば、特開平9-192658号公報の特に【0029】【0052】【0058】【表3】、特開平11-77091号公報の特に【0021】【0027】【0030】参照)である。
そうすると、引用例1記載の発明と本願出願前周知の事項は、純水中に過酸化水素が存在すると共に、純水中のイオン交換膜を劣化させないようにするという点で軌を一にしていることから、引用例1記載の発明において、純水中のイオン交換膜を劣化させないようにするために、上記周知の事項を適用することで、純水中の過酸化水素を除去すること、更にいうと、陽極側に供給される純水中の過酸化水素を除去することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

上記(i)(ii)より、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、引用例1、2記載の発明および本願出願前周知の事項に基いて当業者であれば容易になし得ることである。
そして、本願発明の作用効果は、引用例1、2記載の発明および本願出願前周知の事項より当業者であれば十分に予測し得るものである。
よって、本願発明は、引用例1、2記載の発明および本願出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用例1、2記載の発明および本願出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2ないし6に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-21 
結審通知日 2012-02-22 
審決日 2012-03-06 
出願番号 特願2000-366840(P2000-366840)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金 公彦  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 斉藤 信人
目代 博茂
発明の名称 電解ガス発生方法及び電解ガス発生装置  
代理人 鶴若 俊雄  

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