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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04H
管理番号 1255696
審判番号 不服2008-24746  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-25 
確定日 2012-04-20 
事件の表示 特願2007-134569「ローカル情報放送システム、放送装置及び放送方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月17日出願公開、特開2008- 11510〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成19年5月21日(優先権主張平成18年5月31日)を出願日とする出願であって、平成20年8月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年10月27日付けで手続補正がなされ、当審で平成23年2月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年5月2日付けで手続補正がなされ、そして、同年11月14日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対し平成24年1月16日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成24年1月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年1月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、平成23年5月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「ローカルエリア毎に独立した任意のローカル情報による放送コンテンツを対応するローカルエリアに宛てて配信するコンテンツ配信センターと;
前記コンテンツ配信センターから配信される放送コンテンツを前記対応するローカルエリアそれぞれに送信する主局と;
前記ローカルエリアそれぞれに配置されて前記主局と通信路を介して接続され、前記主局を経由して前記コンテンツ配信センターから配信される放送コンテンツを、前記ローカルエリアそれぞれで運用される地上デジタル放送の伝送方式による放送信号に変換して前記ローカルエリアに向けて放送する放送装置と;
前記ローカルエリアに入ったとき、放送装置から送信される放送信号を受信する受信端末と
を具備し、
前記放送装置は、
前記コンテンツ配信センターから配信される放送コンテンツを受信する通信部と、
前記通信部で受信される放送コンテンツを蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積される放送コンテンツをサイクリックに出力する出力部と、
前記サイクリックに出力される放送コンテンツを前記地上デジタル放送の伝送方式の放送信号に変換し、前記地上デジタル放送の予め割り当てられたチャンネル周波数で送信する送信部と
を備えることを特徴とするローカル情報放送システム。」(下線は補正箇所を示す。)

2.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項であるコンテンツ配信センターにおいて、配信される任意のローカル情報による放送コンテンツを「ローカルエリア毎に独立した任意のローカル情報による放送コンテンツ」と限定し、また、配信先を「対応するローカルエリアに宛てて配信する」と限定し、また、それにあわせて「ローカルなサービスエリア」を「ローカルエリアそれぞれ」とするもので、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用例
当審の平成23年11月14日付けの拒絶の理由に引用された特開2005-203911号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「【請求項5】
前記主要駅内に前記列車の有する機能を含み、前記列車内に存在する携帯端末に代えて前記主要駅内に存在する携帯端末に対し独自放送を行うことを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の列車内放送システム。」

b)「【0022】
センター局10にはビデオテープレコーダ(以下、VTRと表示する)11と、エンコーダ(以下、ENCと表示する)12と、センターサーバ13とが設置されている。VTR11はVTRテープ1を再生するデッキである。ENC12はVTRテープ1に入っている番組映像および音声を簡易動画トランスポート・ストリーム(以下、TSと表示する)へエンコードする装置であり、センターサーバ13は簡易動画となったTSファイル形式の番組データを蓄積、転送するものである。」

c)「【0035】
第2実施例は、移動する列車内ではなく、固定した駅構内における放送という点で前述した第1実施例と異なる。
【0036】
図4は本発明に係る駅構内放送システムの一例の構成図である。なお、同図において図1と同様の構成部分には同一番号を付し、その説明を省略する。図4を参照すると、駅構内放送システムはセンター局10と、主要駅40とを含んで構成されている。
【0037】
センター局10の構成は第1実施例と同様なのでその説明を省略する。
【0038】
主要駅40には駅舎サーバ41と、駅舎AP42と、駅番組運行端末43と、駅放送サーバ44と、駅MUX45と、駅OFDM変調器46と、駅U/C PA47とが設置されている。
【0039】
センターサーバ13と駅舎サーバ41はLAN20でインターネット等にネットワーク接続されており、センターサーバ13から送られてきた放送番組データを駅舎サーバ41で受信および蓄積できるようになっている。
【0040】
駅舎サーバ41は構内ネットワーク100を介して駅番組運行端末43、駅放送サーバ44へ番組リスト、番組データを転送できるようになっている。
【0041】
駅番組運行端末43からの指示により、駅放送サーバ44、駅MUX45、駅OFDM変調器46は番組の送出、多重、変調を行う。変調波は駅構内に敷設されている同軸ケーブルもしくは光ケーブルなどのIF伝送路101を用いて駅U/C PA47に伝送され、駅U/C PA47から微弱電波102で放送を実施する。駅構内の客の持っている地上波デジタルTV受信機能付き携帯端末48は微弱電波102を受信し動作する。
【0042】
次に図5を参照して本実施例の動作について詳細に説明する。図5は駅舎サーバ41から携帯型受信端末48まで番組データを送信する動作を示す動作流れ図である。
【0043】
なお、図2のステップA5までの動作は第1実施例と同様なのでその説明を省略し、その次のステップからの動作について以下説明する。
【0044】
まず、駅舎サーバ41は駅番組運行端末43に対し、番組リストを要求(ステップC1)し、駅番組運行端末43はリストを返信する(ステップC2)。駅舎サーバ41はリストを照合(ステップC3)した後、差分を送信する(ステップC4)。駅番組運行端末43はリストの更新等を行う(ステップC5)。また、駅舎サーバ4 1は駅放送サーバ44に対し番組データを転送(ステップC6)するので、駅放送サーバ44はそのデータを更新する(ステップC7)。
【0045】
駅番組運行端末43は番組リストから放送開始時間、番組長を確認し(ステップC8)、次いで番組開始時刻、該当する番組データ、放送に必要なPSIなどの設定値を駅放送サーバ44へ指示する(ステップC9)。駅放送サーバ44は指示された値を用い、駅MUX45 へ番組を送出(ステップC10)し、駅MUX45はそれらの番組データを多重化して(ステップC11)、駅OFDM変調器46へ送る(ステップC12)。駅OFDM変調器46は多重化された番組データをODFM変調し送信する(ステップC13)。駅U/C PA47は受信した信号を予め指定された固定の周波数へアップコンバートし(ステップC14)、微弱電波で放送する(ステップC15)。駅舎内の客は自分の持っている携帯電話等の地上波デジタルTV受信機能付き携帯端末48で放送されている番組を視聴することができる(ステップC16)。
【0046】
以上説明したように、第2実施例の放送についてはほぼ第1実施例と同様であるが、駅は移動しないので、列車位置の確認と周波数の変更は不要である。よって、駅U/C PA47は予め指定されている固定の周波数で放送を行う。
【0047】
このように、第2実施例によれば主要駅内の客は携帯端末を用いて最新の情報を受信することが可能となる。」


したがって、引用例1には、以下の発明が記載されている(以下、引用発明という。)

「主要駅内に存在する携帯端末に対し独自放送を行う列車内放送システムにおいて、
センター局10にはビデオテープレコーダ11と、エンコーダ12と、センターサーバ13とが設置され、センターサーバ13は番組データを蓄積、転送するものであり、
主要駅40には駅舎サーバ41と、駅舎AP42と、駅番組運行端末43と、駅放送サーバ44と、駅MUX45と、駅OFDM変調器46と、駅U/C PA47とが設置され、 センターサーバ13と駅舎サーバ41はLAN20でインターネット等にネットワーク接続されており、センターサーバ13から送られてきた放送番組データを駅舎サーバ41で受信および蓄積できるものであり、
駅放送サーバ44、駅MUX45、駅OFDM変調器46は、番組の送出、多重、変調を行い、変調波は駅構内に敷設されている同軸ケーブルもしくは光ケーブルなどのIF伝送路101を用いて駅U/C PA47に伝送され、駅U/C PA47から微弱電波102で放送を実施し、駅構内の客の持っている地上波デジタルTV受信機能付き携帯端末48は微弱電波102を受信し動作する、
列車内放送システム」

4.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、
(1)引用発明の「駅構内」は、いわゆる一般的な放送エリアと比べて限られたエリア(本願補正発明の「ローカルエリア」に相当。)であり、引用発明はその限られたエリアに対して一般放送とは別の放送を行うシステムであることから、引用発明の「列車内放送システム」は、本願補正発明の「ローカル情報放送システム」に相当する。
また、引用発明は、複数の各「主要駅40」の構内の各エリアに向けて、それぞれ地上デジタル放送を行う放送設備(駅放送サーバ44、駅MUX45、駅OFDM変調器46、IF伝送路101、駅U/C PA47:本願補正発明の「放送装置」に相当。)を有しており、また、放送信号を受信する地上波デジタルTV受信機能付き携帯端末48(本願補正発明の「受信端末」に相当。)を有している。
(2)引用発明の「センター局」は、ビデオテープレコーダ11と、エンコーダ12と、センターサーバ13とが設置され、センターサーバ13は番組データを蓄積し、主要駅の駅放送サーバへ転送するもので、その主要駅で放送するための「番組データ」は、駅で放送するための独自の「ローカル情報による放送コンテンツ」であることから、引用発明の「センター局」は、ローカル情報による放送コンテンツをローカルエリア宛てに配信し、ローカルエリアに送信する点で、本願補正発明の「コンテンツ配信センター」及び「主局」に相当している。
(3)引用発明の「駅放送サーバ44」は、配信される番組データを受信し、蓄積することから、本願補正発明の「通信部」及び「蓄積部」に相当し、さらに、引用例発明の「駅MUX45」、「駅OFDM変調器46」、「IF伝送路101」、「駅U/C PA47」は、番組データを地上デジタル放送信号に変換し、送信することから、本願補正発明の「送信部」に相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「任意のローカル情報による放送コンテンツをローカルエリアに宛てて配信するコンテンツ配信センターと;
前記コンテンツ配信センターから配信される放送コンテンツを前記ローカルエリアそれぞれに送信する主局と;
前記ローカルエリアそれぞれに配置されて前記主局と通信路を介して接続され、前記主局を経由して前記コンテンツ配信センターから配信される放送コンテンツを、前記ローカルエリアそれぞれで運用される地上デジタル放送の伝送方式による放送信号に変換して前記ローカルエリアに向けて放送する放送装置と;
前記ローカルエリアに入ったとき、放送装置から送信される放送信号を受信する受信端末と
を具備し、
前記放送装置は、
前記コンテンツ配信センターから配信される放送コンテンツを受信する通信部と、
前記通信部で受信される放送コンテンツを蓄積する蓄積部と、
前記放送コンテンツを前記地上デジタル放送の伝送方式の放送信号に変換し、前記地上デジタル放送の予め割り当てられたチャンネル周波数で送信する送信部と
を備えることを特徴とするローカル情報放送システム。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明は、配信される放送コンテンツが「ローカルエリア毎に独立した任意のローカル情報による放送コンテンツ」であって、放送コンテンツを対応するローカルエリアに宛てて配信するのに対し、引用発明では、各主要駅にローカル情報による放送コンテンツが配信されるものの、そのローカル情報は、ローカルエリア(主要駅の構内)毎に独立しているローカル情報であるかは、記載がない点。

<相違点2>
本願補正発明は、放送装置は、「放送コンテンツをサイクリックに出力する出力部」を備えるのに対し、引用発明では、放送コンテンツをサイクリックに出力する出力部について、明記されていない点。

5.相違点の判断
以下、相違点について検討する。

<相違点1について>
一般に、放送を行う側は、その放送の受け手である需要者の要望や、放送を行う側の目的に対応し、エリア毎にきめ細かく放送を行うようにしようとすることは、当然のことである。
(本願の当初明細書の【背景技術】記載の特開2000-244383号公報の【0040】、【0056】?【0058】参照。)
したがって、引用発明において、各主要駅を利用する需要者等の要望や、各主要駅の環境、状況にあった番組を放送するために、各主要駅毎に独立したローカル情報による放送コンテンツを配信するようし、相違点1に係る発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想達し得るものである。

<相違点2について>
引用発明は、主要駅に設置された放送のための装置に、放送コンテンツを蓄積し放送するものであり、また、引用文献1には、駅番組運行端末43は番組リストから放送開始時間、番組長を確認し、次いで番組開始時刻、該当する番組データ、放送に必要なPSIなどの設定値を駅放送サーバ44へ指示し、番組を放送するとも記載(上記c)の【0045】参照)されている。してみると、引用発明の放送装置は、蓄積された放送コンテンツを、指示に基づいて繰り返して放送できる機能も備えるものといえる。
そして、当該機能は、放送番組の編成等において、放送する側、需要者の要望等に基づいて、必要に応じて使うことができるものであり、引用発明において、当該相違点2に係る発明の構成を備える様にすることは、当業者が適宜なし得る程度のものである。

そして、本願補正発明が奏する作用、効果についてみても、引用発明から当業者が予想できる程度のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成24年1月16日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年5月2日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「任意のローカル情報による放送コンテンツを配信するコンテンツ配信センターと;
前記コンテンツ配信センターから配信される放送コンテンツを任意のローカルなサービスエリアに送信する主局と;
前記任意のローカルなサービスエリアに配置されて前記主局と通信路を介して接続され、前記主局を経由して前記コンテンツ配信センターから配信される放送コンテンツを、前記ローカルなサービスエリアで運用される地上デジタル放送の伝送方式による放送信号に変換して前記ローカルなサービスエリアに向けて放送する放送装置と;
前記ローカルなサービスエリアに入ったとき、前記放送装置から送信される放送信号を受信する受信端末と
を具備し、
前記放送装置は、
前記コンテンツ配信センターから配信される放送コンテンツを受信する通信部と、
前記通信部で受信される放送コンテンツを蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積される放送コンテンツをサイクリックに出力する出力部と、
前記サイクリックに出力される放送コンテンツを前記地上デジタル放送の伝送方式の放送信号に変換し、前記地上デジタル放送の予め割り当てられたチャンネル周波数で送信する送信部と
を備えることを特徴とするローカル情報放送システム。」

第4 引用例の記載事項
当審の平成23年11月14日付け拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2の3.引用例」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、前記第2の「2.補正の目的」に記載した限定のあるところを削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の「5.相違点の判断」に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-14 
結審通知日 2012-02-21 
審決日 2012-03-05 
出願番号 特願2007-134569(P2007-134569)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04H)
P 1 8・ 575- WZ (H04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 貴裕  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 稲葉 和生
佐藤 匡
発明の名称 ローカル情報放送システム、放送装置及び放送方法  
代理人 峰 隆司  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中村 誠  
代理人 福原 淑弘  
代理人 河野 哲  
代理人 村松 貞男  

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