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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) IPCコード:なし
管理番号 1255722
審判番号 不服2011-4066  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-24 
確定日 2012-04-20 
事件の表示 特願2006-239783号「電気機器」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月21日出願公開、特開2008- 64333号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年9月5日の出願であって、平成22年11月25日付けで平成22年8月9日付の手続補正の補正却下の決定がなされ、さらに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年2月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされた。そして、当審において平成23年10月5日付けで拒絶の理由が通知されたのに対し、平成23年10月20日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、さらに当審において平成23年11月2日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、平成24年1月10日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成24年1月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである(以下「本願発明」という。)。

「【請求項1】
光透過部を有した表面パネルが表面に取り付けられ、前記光透過部を介して内部を視認可能に形成される電気機器において、
前記表面パネルは開口部を有する基材の表面に前記光透過部が前記開口部と重なるように配置されるとともに、前記光透過部は前記開口部よりも狭い面積で形成され、
前記基材の背面側には、前記光透過部を介して内部を視認可能な位置に取り付けられた表示パネルを実装した基板が設けられるとともに、前記表示パネルは前記開口部よりも背方に配され、
粘着性物質が前記光透過部の周縁よりも外側で前記開口部周縁から内側にはみ出した部分を有して設けられるとともに、前記はみ出した部分は前記開口部に隣接し、
前記表面パネルの背面側の空間内で前記光透過部以外の領域に前記粘着性物質が前記表示パネル及び前記基板に対して露出するように設けられていることを特徴とする電気機器。」

3.引用刊行物
(1)当審における平成23年11月2日付けの拒絶の理由に引用した実公平7-10332号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア.「【請求項1】外装部に設けた開孔部に液晶モジュールなどの表示素子を極小の隙間をもって配置し、上記表示素子の上に対向して上記外装部の開孔部に対して十分大きい外形の銘板を配置し、上記銘板の裏面周部に外装部に貼り付けるための粘着層を設け、この粘着層の内端面を表示素子の外形よりも内側にまで入り込ませて設けた表示装置。」(【実用新案登録請求の範囲】)
イ.「産業上の利用分野
本考案は、主に民生、産業機器の表示機能をもつ製品で、液晶モジュールなどの表示素子を実装する表示装置に関するものである。」(1頁1欄10?13行)

ウ.「考案が解決しようとする課題
しかしながら、上記従来の構成では、糸くず、ごみなどの極小の異物が開孔部13と液晶モジュール12の隙間から、液晶モジュール12の可視部17に進入し、付着することについては対処できるが、ダンパー16などの弾性体を圧縮、圧接すると、銘板14がうすい場合、ダンパー16の反発力に負けて浮きが発生したりするため、外観不良となりやすく、使用が限定されるという課題があった。
本考案はこのような従来の課題を解決するものであり、部品点数を増やすことなく、品質的にも安定した構成の表示装置を提供することを目的とするものである。」(1頁2欄11?2頁3欄6行)

ウ.「作用
上記構成により銘板の裏面の粘着層を外装部の開孔部に対して露出させ、かつ液晶モジュール上までに広げられるので、銘板の裏面の粘着層の粘着、吸着効果を活用し、糸くず、ごみなどが外装部の開孔部から進入してきた段階で阻止でき、液晶モジュールなどの表示素子の可視部にまで及ばないようにすることができる。」(2頁3欄15行?21行)

エ.「実施例
以下本考案の一実施例を図面に基づいて説明する。
第1図は本考案の一実施例の表示装置の要部断面図である。第1図において、1は外装部であり、液晶モジュール2を極小の隙間を確保して実装する開孔部3を有している。4は開孔部3に対して十分大きな外形をもつ銘板であり、裏面周部の外装部1に貼り付けるための粘着層5を有し、この粘着層5の内端面は開孔部3の内側にまで入り込み、液晶モジュール2の端部上方を覆う位置にまで達している。
上記構成において、液晶モジュール2自体の高さ方向の寸法の許容寸法が0.5?1mmと大きいため、銘板4との隙間を無くすことが不可能であるが、液晶モジュール2の可視部6への糸くず、ごみの進入を防ぐために、銘板4の裏面の粘着層5の内端面を開孔部3の内側でさらに液晶モジュール2の外形より内側にまで入り込ませて設けたことにより、開孔部3より糸くず、ごみが進入しても、この粘着層5で吸着することが可能となり、液晶モジュール2の可視部6までに及ばないようにすることができる。」(2頁3欄22行?4欄14行)

オ.「考案の効果
以上のように、本考案によれば、粘着層の寸法を変更するだけで、糸くず、ごみなどの進入を防止でき、かつ、品質的に安定にできる。また、従来のような、ダンパーを使用することがないため、従来の構成に比較して、部品点数の削減、工数の削減などコストダウンを図ることができるとともに、銘板が浮き上がるような事態も回避できる。」(2頁4欄15?22行)

引用例1に記載された銘板4は、本願発明の光透過性の表面パネルに相当するものである。
そして、第1図によれば、液晶モジュール2のハッチングのない部分が可視部6であるから、これに対向する銘板4の部分は、少なくとも光透過部(以下「液晶モジュール可視部対向光透過部」という。)といえる。この液晶モジュール可視部対向光透過部は、開孔部3よりも狭い面積で形成されており、粘着層5が液晶モジュール可視部対向光透過部の周縁よりも外側で開孔部3周縁から内側にはみ出した部分を有して設けられている点が図示されている。
また、第1図には、液晶モジュール2の下方に点が付された板状の部材があり、この部材の端部の周囲にも、開孔部3を進入して粘着層5に吸着される糸くず、ごみが存在すること、言い換えれば、この部材に対して粘着層5が露出していることが、図示されている。

上記記載事項及び図面の記載を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「液晶モジュール可視部対向光透過部を有した銘板4が表面に取り付けられ、前記液晶モジュール可視部対向光透過部を介して内部を視認可能に形成される民生、産業機器において、
前記銘板4は開孔部3を有する外装部1の表面に前記液晶モジュール可視部対向光透過部が前記開孔部3と重なるように配置されるとともに、前記液晶モジュール可視部対向光透過部は前記開孔部3よりも狭い面積で形成され、
前記外装部1の背面には、前記液晶モジュール可視部対向光透過部を介して内部を視認可能な位置に取り付けられた液晶モジュール2を実装した部材が設けられるとともに、前記液晶モジュール2は開孔部3に配され、
粘着層5が前記液晶モジュール可視部対向光透過部の周縁よりも外側で前記開孔部3周縁から内側にはみ出した部分を有して設けられるとともに、前記はみ出した部分は前記開孔部3に隣接し、
前記銘板4の背面側の空間内で前記液晶モジュール可視部対向光透過部以外の領域に前記粘着層5の内端面が液晶モジュール2の外形より内側にまで入り込ませて露出するように設けられている民生、産業機器。」

(2)当審における平成23年11月2日付けの拒絶の理由に引用した実願平1-102282号(実開平3-42188号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア.「1は電子レンジの操作部であり、以下のように構成される。2はコントロール基板、3はプリント基板4に取り付けられ、そのプリント基板4に組み付けられた電子回路によって駆動されて加熱時間を表示する表示器としての螢光表示管、5はコントロール基板2の螢光表示管3前方位置に形成された開口、…(中略)… 、7はコントロール基板2に粘着剤8によって貼り付けられ同時に透視板6を固定するシート材としての文字シートである。」(明細書3頁2?12行)

イ.「文字シート7はポリエステルなどの透明な可撓性フィルムよりなり、「分」「秒」等の不動文字を印刷するとともに、螢光表示管3前方部分以外には、前方から見たとき粘着剤8を隠すように不透明印刷9を施してある。」(明細書3頁13?17行)

上記記載事項及び図面の記載を総合すると、引用例2には、次の事項1、2が記載されている。
「表示器としての螢光表示管3がプリント基板4に取り付けられること。」(事項1)及び「透明な文字シート7は、螢光表示管3前方部分以外には、前方から見たとき粘着剤8を隠すように不透明印刷9を施すこと。」(事項2)

3.判断
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「銘板4」は、本願発明の「表面パネル」に相当し、以下同様に、「開孔部3」は「開口部」に、「外装部1」は「基材」に、「液晶モジュール2」は「表示パネル」に、「粘着層5」は「粘着性物質」に、それぞれ相当する。
また、本願発明の「電気機器」は引用発明の「民生、産業機器」に包含されるものである。
さらに、本願発明の「光透過部」と引用発明の「液晶モジュール可視部対向光透過部」とは、光が透過することが必要な部分であるから「光透過部分」である点で共通する。
よって、両発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)
「光透過部分を有した表面パネルが表面に取り付けられ、前記光透過部分を介して内部を視認可能に形成される民生、産業機器において、
前記表面パネルは開口部を有する基材の表面に前記光透過部分が前記開口部と重なるように配置されるとともに、前記光透過部分は前記開口部よりも狭い面積で形成され、
前記基材の背面側には、前記光透過部分を介して内部を視認可能な位置に取り付けられた表示パネルを実装した部材を設け、
粘着性物質が前記光透過部分の周縁よりも外側で前記開口部周縁から内側にはみ出した部分を有して設けられるとともに、前記はみ出した部分は前記開口部に隣接し、
前記表面パネルの背面側の空間内で前記光透過部分以外の領域に前記粘着性物質が前記表示パネル及び前記部材に対して露出するように設けられている民生、産業機器。」

〔相違点1〕
本願発明では電気機器であるのに対し、引用発明では民生、産業機器である点。

〔相違点2〕
表示パネルを実装した部材が、本願発明では基板であるのに対し、引用発明では基板であるかは不明である点。

〔相違点3〕
本願発明では表示パネルは前記開口部よりも背方に配されるのに対し、引用発明では開口部(開孔部)よりも背方に配されるかどうか不明である点。

〔相違点4〕
本願発明では、光透過部分が光透過部の範囲であるのに対し、引用発明では、表面パネル(銘板)の液晶モジュール可視部対向光透過部は少なくとも光透過部分であるものの、表面パネルのそれ以外の部分は光が透過するのか不透明なのか不明である点。

上記相違点について検討する。
〔相違点1について〕
電気機器は民生、産業機器に包含されるものであり、電気機器とした点に格別な効果はなく、このようにした点は単なる設計的事項である。

〔相違点2について〕
本願発明と引用例2に記載された事項1とを対比すると、引用例2に記載された事項1の「表示器としての螢光表示管3」、「プリント基板4」は、それぞれ、本願発明の「表示パネル」、「基板」に相当するので、引用例2に記載された事項1は、「表示パネルを基板に取り付けること」と言える。
加えて、液晶等の表示パネルを基板に実装することは例示するまでもなく従来周知の事項である。
してみれば、引用発明において、引用例2に記載された事項1及び周知事項に基づき、表示パネルを実装した部材を基板とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

〔相違点3について〕
引用例1の第1図の実施例では、液晶モジュール2が開孔部3内に配されているものの、「銘板の裏面の粘着層を外装部の開孔部に対して露出させ、かつ液晶モジュール上までに広げられるので、銘板の裏面の粘着層の粘着、吸着効果を活用し、糸くず、ごみなどが外装部の開孔部から進入してきた段階で阻止でき、液晶モジュールなどの表示素子の可視部にまで及ばないようにすることができる。」(摘記事項ウ)ことは、開孔部の深さ、即ち、外装板1の厚さとは無関係であり、第1図においても外装板1を薄くしたり、あるいは液晶モジュール2と銘板4との間隔をどの程度にするかで、開孔部3と液晶モジュール2の相対位置は任意に変わるものである。
してみれば、液晶モジュール2が開孔部3に配されるものである引用発明は、開孔部3の背方に配されることを排除するものではないというべきである。
そして、液晶表示装置において、製造工程中等に内部に入ったゴミや塵等の異物が移動して粘着部材にて捕獲できるように部材間に所定の隙間を設けることは従来周知〔例えば、特開2000-193948号公報(段落【0003】?【0005】、段落【0009】の「… 所定の隙間Sをもって…」、段落【0011】の「…この接着部材12は、…(中略)… 粘着剤を塗布したものであり、…」、段落【0014】の「…除去部材10での移動の変わりに液晶表示パネルをケースごと振ることにより接着部材12に接着させても良い。」 )、特開平7-28409号公報(段落【0008】?【0011】、段落【0014】?【0015】、段落【0026】?【0028】、図1、図3)を参照。〕であり、液晶モジュール2と銘板4との間隔をごみ等が移動可能な隙間とすれば、液晶モジュール2が開孔部3よりも背方にある場合とそうでない場合とで作用効果に格別な差異はなく、引用発明において、液晶モジュール2と銘板4との間隔を製造工程中に内部に入った糸くずやごみ等の異物が移動可能となるような隙間にするために外装板1の厚さとの関係で結果的に液晶モジュール2を開孔部3の背方にすることは当業者が容易に想到し得たことである。
なお、請求人は、意見書において(「(c)本願発明と引用発明との対比」)、「刊行物1の構成では、液晶モジュール2は開孔部3内に配されており(第1図)、表示パネルが開口部よりも背方に配される本願請求項1とは構成が異なります。刊行物1の構成では、液晶モジュール2が開孔部3内に配されるため、液晶モジュール2と銘板4との間の距離が短くなりがちになります。このため、液晶モジュール2と銘板4との間に形成される空間内で塵埃が移動しにくくなり、完成品で光透過部上に塵埃が残存するおそれがあります。従って、本願請求項1の構成と比較して歩留りが低下するおそれがあります。」と主張するが、前述の次第であるから採用できない。

〔相違点4について〕
本願発明と引用例2に記載された事項2とを対比すると、引用例2に記載された事項2の「文字シート7」、「螢光表示管3」、「粘着剤8」は、それぞれ、本願発明の「表面パネル」、「表示パネル」、「粘着材」に相当するので、引用例2に記載された事項2は、「透明な表面パネルは、表示パネル前方部分以外には、前方から見たとき粘着材を隠すように不透明印刷9を施すこと」、言い換えれば、「表面パネルは、表示パネル前方部分だけ光透過部としたこと」と言える。
してみれば、この引用例2に記載された事項2に倣い、見やすさ等を勘案して、引用発明において、表面パネル(銘板)の液晶モジュール可視部対向光透過部以外の部分を不透明にして可視部対向光透過部を光透過部とすることは当業者が適宜行う設計的事項である。

そして、本願発明による効果も、引用発明、引用例2に記載された事項1、2及び周知事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項1、2及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項1、2及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-14 
結審通知日 2012-02-21 
審決日 2012-03-05 
出願番号 特願2006-239783(P2006-239783)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ ()
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中里 翔平  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 佐野 遵
長浜 義憲
発明の名称 電気機器  
代理人 井上 温  
代理人 佐野 静夫  

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