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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1255723
審判番号 不服2011-4956  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-04 
確定日 2012-04-20 
事件の表示 特願2001-162958「切削機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月13日出願公開、特開2002-359211〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年5月30日の出願であって、平成21年8月31日に自発の手続補正書が提出された後、平成22年8月10日付けの拒絶理由通知に対して平成22年10月15日付けで意見書が提出されたが、平成22年11月30日付けで拒絶査定がなされた。
その後、平成23年3月4日に審判請求がなされた後、当審の平成23年9月9日付けの拒絶の理由に対して、平成23年11月10日付けで意見書が提出されたものである。
本願の特許請求の範囲の請求項に係る発明は、平成21年8月31日付け手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は、次のとおりである。(以下「本願発明」という。)
「前面には操作パネルが配置されているハウジングを具備し、該ハウジングの前半部には、幅方向中央に位置するチャッキング域と、該チャッキング域の片側に位置するカセット載置域と、該チャッキング域の他側に位置する洗浄域とが配置されており、該ハウジングの後半部には、幅方向中央に位置する切削域が配置されており、
該カセット載置域にはカセット支持手段が配設され、該洗浄域には洗浄手段が配置されており、
該チャッキング域と該切断域の間を前後方向に移動自在にチャック手段が配設されており、
該ハウジングの後半部には第一の切削手段と第二の切削手段とが配設されており、該第一の切削手段は第一の回転軸及び該第一の回転軸に装着された第一の切削ブレードを有し、該第二の切削手段は第二の回転軸及び該第二の回転軸に装着された第二の切削ブレードを有し、該第一の回転軸と該第二の回転軸とは該ハウジングの後半部を幅方向に一直線状に延び、該第一の切削ブレードと該第二の切削ブレードとは、夫々、該第一の回転軸の幅方向内側端と該第二の回転軸の幅方向内側端とに装着されて、相互に対向して位置する、
ことを特徴とする切削機。」

2 引用刊行物記載の発明
これに対して、当審での平成23年9月9日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成13年1月12日に頒布された特開2001-7058号公報(以下「刊行物1」という。)、平成10年1月20日に頒布された特開平10-15706号公報(以下、「刊行物2」という。)、及び平成4年5月7日に頒布された特開平4-133976号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の発明が記載されている。
(1)刊行物1
ア 段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、半導体ウェーハ等の被加工物を切削する切削装置に関する。」
イ 段落【0009】
「【発明の実施の形態】本発明の実施の形態の一例として、図1に示す切削装置10について説明する。この切削装置10は、被加工物を収容したカセット11がカセットテーブル12aに載置される領域であるカセット領域12と、カセット領域12に載置されたカセット11から被加工物を挟持部13aで挟持して搬出する搬出手段13と、搬出手段13によって搬出された被加工物がチャックテーブル14に載置される領域である被加工物載置領域15と、チャックテーブル14に保持された被加工物を切削する切削手段16が配設される切削領域17と、切削手段16によって切削された被加工物を洗浄する洗浄手段18が配設される洗浄領域19と、被加工物載置領域15と洗浄領域19との間で被加工物を搬送する搬送手段20と、洗浄手段18によって洗浄された被加工物をカセット11内に搬入する搬入手段21とから概ね構成される。なお、図1の例においては、搬出手段13が搬入手段21を兼ねた構成となっている。」
ウ 段落【0010】
「図1に示した切削装置10の内部構造を図2に示す。図2に示すように、カセット載置領域12においては、カセットテーブル12aがガイドレール22aに摺動可能に係合すると共に、カセットテーブル12aに備えた図示しないナットが第一のボールネジ22に螺合しており、カセットテーブル12aは、第一のボールネジ22が図示しないモータに駆動されて回動することによりZ軸方向に上下動可能となっている。そして、この上下動によりカセットテーブル12aに載置されたカセット11が適宜の高さに位置付けられ、カセット11内に複数段に収容された被加工物が1枚ずつ搬出手段13によって挟持され、搬出手段13の+Y方向の移動により搬出される。」
エ 段落【0012】
「図2に示すように、チャックテーブル14の下部に備えた図示しないナットには、第二のボールネジ24が螺合しており、図示しないモータの駆動により回動し、一対のガイドレール24aに摺動可能に支持されたチャックテーブル14は、被加工物載置領域15から切削領域17までX軸方向に移動可能であり、半導体ウェーハWを保持したチャックテーブル14は、+X方向に移動して切削領域17に位置付けられると共に、X軸方向に往復移動して切削を遂行する。」
オ 段落【0013】?【0014】
「切削領域17には、切削領域17を跨ぐようにして架設した門型の壁部25の側面にY軸方向に設けた1本の非回動の第三のボールネジ26と、第三のボールネジ26に螺合して回動可能な駆動ナット(図示せず)を備え一対のガイドレール26aに案内されてY軸方向に移動可能な第一の基部27及び第二の基部28と、第一の基部27に配設された一対のガイドレール27aに摺動可能に係合すると共にモータ27bに連結された図示しないボールネジに螺合してZ軸方向に上下動可能に支持された第一の支持部29及び第二の基部28に配設された一対のガイドレール28aに摺動可能に係合すると共にモータ28bに連結された図示しないボールネジに螺合してZ軸方向に上下動可能に支持された第二の支持部30と、第一の支持部29に固定された第一のスピンドルユニット31及び第二の支持部30に固定された第二のスピンドルユニット32と、第一のスピンドルユニット31の側部に固定された第一の撮像手段33及び第二のスピンドルユニット32の側部に固定された第二の撮像手段34とから構成される切削手段35が配設されている。なお、第三のボールネジをモータにより回動可能とし、それに螺合する2つの駆動ナットを非回動とする構成としてもよい。
この切削手段35においては、第一の基部27及び第二の基部28がそれぞれ独立してY軸方向に割り出し移動可能となっている。また、第一の支持部29の上下動に伴い第一のスピンドルユニット31が上下動し、第二の支持部30の上下動に伴い第二のスピンドルユニット32が上下動する切り込み移動が可能な構成となっている。」
カ 段落【0015】?【0016】
「図3は、第一のスピンドルユニット31及び第二のスピンドルユニット32の構成を簡略化して示したもので、第一のスピンドルユニット31には、第一の支持部29に固定された第一のスピンドルハウジング36と、第一のスピンドルハウジング36に回転可能に支持され先端に第一のブレード37が装着された第一のスピンドル38とを備え、第二のスピンドルユニット32には、第二の支持部30に保持された第二のスピンドルハウジング39と、第二のスピンドルハウジング39に回転可能に支持され先端に第二のブレード40が装着された第二のスピンドル41とを備えている。
第一のスピンドルユニット31及び第二のスピンドルユニット32は、軸心がY軸方向に向くように、かつX軸方向の位置を共通にして一直線上になるように配設されており、これによって、第一のスピンドル38に装着された第一のブレード37と第二のスピンドル41に装着された第二のブレード40とが対峙する構成となっている。」
キ ここで、図面の図1を参照すると、切削装置10がハウジングで覆われていることが見て取れる。また、切削装置10の-X方向には、幅方向中央部に被加工物載置領域15が設けられ、その片側にカセット載置領域12が、他側に洗浄領域19が設けられているのが見て取れる。
さらに、図2を参照すると、+X方向には、切削領域17が設けられていることが理解できる。そして、図3を参照することにより、幅方向中央に切削領域17が設けられていることは明らかである。
また、摘記事項カの「第一のスピンドルユニット31及び第二のスピンドルユニット32は、軸心がY軸方向に向くように、かつX軸方向の位置を共通にして一直線上になるように配設されており、これによって、第一のスピンドル38に装着された第一のブレード37と第二のスピンドル41に装着された第二のブレード40とが対峙する構成となっている。」の記載、及び図面の図3から、第一のスピンドル38と第二のスピンドル41とが、ハウジングの+X方向において、Y軸方向、すなわち、幅方向に一直線状に延びていること、及び、第一のブレード37及び第二のブレード40は、第一のスピンドル38と第二のスピンドル41の幅方向内側端に装着されていることは明らかである。
ク 刊行物1に記載された発明
以上アないしカの記載事項、及びキの認定事項から、刊行物1には、「ハウジングを具備し、該ハウジングの-X方向には、幅方向中央に位置する被加工物載置領域15と、該被加工物載置領域15の片側に位置するカセット載置領域12と、該被加工物載置領域15の他側に位置する洗浄領域19とが配置されており、該ハウジングの+X方向には、幅方向中央に切削領域17が配置されており、
該カセット載置領域12にはカセットテーブル12aが配設され、該洗浄領域19には洗浄手段18が配設されており、
該被加工物載置領域15と該切削領域17の間をX方向に移動自在にチャックテーブル14が配設されており、
該ハウジングの+X方向には第一のスピンドルユニット31と第二のスピンドルユニット32とが配設されており、該第一のスピンドルユニット31は第一のスピンドル38及び第一のスピンドルに装着された第一のブレード37を有し、該第二のスピンドルユニット32は第二のスピンドル41及び第二のスピンドル41に装着された第二のブレード40を有し、該第一のスピンドル38と該第二のスピンドル41とは該ハウジングの+X方向において、幅方向に一直線状に延び、該第一のブレード37と該第二のブレード40とは、それぞれ、該第一のスピンドル38の幅方向内側端と該第二のスピンドル41の幅方向内側端とに装着されて、対峙する切削装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(2)刊行物2
ア 段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、旋盤に備えられ、当該旋盤に対し制御命令などを入力する操作パネルであって、作業内容に応じて移動可能に操作パネルを支持する構造に関する。」
イ 段落【0002】
「・・・したがって、旋盤を製作する際の最終調整や保守点検、また刃物の交換や調整などの加工の段取りを行う場合には、前記の主軸室や切削室の保護カバーを開けて、覗き込むようにして調整を行う必要がある。このような作業中に操作パネルのキーボード操作を行うには、この操作パネルが作業者の邪魔にならず、かつ近傍に位置することが好ましい。すなわち、主軸の調整を行う場合にも、刃物交換などの切削室内の作業の場合にも対応するために、操作パネルが移動することが望まれる。」
ウ 段落【0003】?【0004】
「図9、図10および図11には、移動可能な操作パネル52が設けられた自動旋盤50の一例が示されている。各々の図において(a)は平面図を示し、(b)は正面図を示している。操作パネル52は、キーボードやディスプレイが設けられ制御データなどを入力する操作パネル本体54と、この操作パネル本体54を支持する支持アーム56および支持ブラケット58を含んでいる。支持ブラケット58は旋盤本体から正面に突設されており、ここに支持アーム56の一端が、第1の旋回軸60の回りを旋回可能に支持されている。さらに、支持アーム56の他端には、操作パネル本体54が第2の旋回軸62の回りを旋回可能に支持されている。
図9は、加工が行われているときの状態を示しており、操作パネル本体54は、主軸が納められている主軸室64の作業者にとって手前に、操作面を手前に向けた位置にある。次に、主軸の調整作業を行う場合、図10のように作業者は主軸室64の正面に立ち、主軸室保護カバー66を開く。このとき、支持アーム56は、第1旋回軸60の回りを約90°旋回し、操作パネル本体54は、第2旋回軸62の回りを180°旋回する。これによって、操作パネル本体54は、主軸室64の正面から退避する。また、切削室68内での調整作業においては、図11のように、作業者は切削室68の正面に立ち、切削室保護カバー70を開いて、ここから覗き込むようにして作業を行う。このとき、支持アーム56は、図9の状態と同じ位置にあり、操作パネル本体54のみが第2旋回軸62の回りに90°旋回している。」
エ 刊行物2に記載の発明
以上、アないしウの記載事項から、刊行物2には、「第1の旋回軸60、及び第2の旋回軸62の回りを旋回可能に支持された支持ブラケット58に操作パネル本体54が取り付けられた自動旋盤50。」(以下、「刊行物2記載の発明」という。)
(3)刊行物3
ア 特許請求の範囲の請求項(3)
「上記の操作パネルが装置ハウジング側面に設けられた操作パネル取付部に装着可能とされ、操作パネル取付部が装置ハウジングの4側面の中の少くとも相隣る2側面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。」
イ 第2ページ右上欄第15行?第20行
「本発明は、従来の画像形成装置の上記の実情にかんがみ、同一の装置で給紙口と排紙口の位置を操作パネルの位置に対して機器の設置スペースの都合や操作者の使い勝手のよいように自由に選択することのできる画像形成装置を提供することを課題とする。」
ウ 刊行物3に記載の発明
以上、アないしイの記載事項から、刊行物3には、「操作パネルの位置を機器の設置スペースの都合で操作者の使い勝手のよいように自由に選択することのできる画像形成装置。」(以下、「刊行物3記載の発明」という。)

3 対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「被加工物載置領域15」、「カセット載置領域12」、「洗浄領域19」、「切削領域17」、「カセットテーブル12a」、「洗浄手段18」、「チャックテーブル14」は、それぞれ、本願発明の「チャッキング域」、「カセット載置域」、「洗浄域」、「切削域」、「カセット支持手段」、「洗浄手段」、「チャック手段」に相当する。
引用発明の「第一のスピンドルユニット31」、「第二のスピンドルユニット32」、「第一のスピンドル38」、「第二のスピンドル41」、「第一のブレード37」、「第二のブレード40」は、それぞれ、本願発明の「第一の切削手段」、「第二の切削手段」、「第一の回転軸」、「第二の回転軸」、「第一の切削ブレード」、「第二の切削ブレード」に相当する。
引用発明において、-X方向の部分を装置の前半部と、また、+X方向の部分を装置の後半部と考えることができる。そうすると、引用発明の「ハウジングの-X方向」、「ハウジングの+X方向」は、それぞれ、本願発明の「ハウジングの前半部」、「ハウジングの後半部」に相当する。また、引用発明の「X方向に移動自在」は、本願発明の「前後方向に移動自在」に相当する。
引用発明の「対峙する」は、本願発明の「相互に対向して位置する」に相当する。
引用発明の「切削装置」は本願発明の「切削機」に相当する。
以上の点から、両者は「ハウジングを具備し、該ハウジングの前半部には、幅方向中央に位置するチャッキング域と、該チャッキング域の片側に位置するカセット載置域と、該チャッキング域の他側に位置する洗浄域とが配置されており、該ハウジングの後半部には、幅方向中央に位置する切削域が配置されており、
該カセット載置域にはカセット支持手段が配設され、該洗浄域には洗浄手段が配置されており、
該チャッキング域と該切断域の間を前後方向に移動自在にチャック手段が配設されており、
該ハウジングの後半部には第一の切削手段と第二の切削手段とが配設されており、該第一の切削手段は第一の回転軸及び該第一の回転軸に装着された第一の切削ブレードを有し、該第二の切削手段は第二の回転軸及び該第二の回転軸に装着された第二の切削ブレードを有し、該第一の回転軸と該第二の回転軸とは該ハウジングの後半部を幅方向に一直線状に延び、該第一の切削ブレードと該第二の切削ブレードとは、夫々、該第一の回転軸の幅方向内側端と該第二の回転軸の幅方向内側端とに装着されて、相互に対向して位置する切削機。」で一致し、以下の点で相違している。
<相違点>
本願発明では、ハウジングの「前面には操作パネルが配置されている」と特定しているのに対して、引用発明では、操作パネルの位置について不明な点。

4 当審の判断
上記相違点について検討する。
刊行物2記載の発明は、「第1の旋回軸60、及び第2の旋回軸62の回りを旋回可能に支持された支持ブラケット58に操作パネル本体54が取り付けられた自動旋盤50。」であり、刊行物3記載の発明は、「操作パネルの位置を機器の設置スペースの都合で操作者の使い勝手のよいように自由に選択することのできる画像形成装置。」である。操作パネルを装置本体に対して移動自在に構成することは刊行物2に記載され、操作パネルを装置本体に対して自由に選択して取り付けることは刊行物3に記載されている。してみると、引用発明においても、操作パネルを使い勝手のよい位置に移動可能に、あるいは、固定的に取り付けることは、刊行物2記載の発明、及び刊行物3記載の発明を適用することにより、当業者が格別困難なくなし得たものである。そして、装置の前面に操作パネルが存在すれば、操作者が操作パネルを操作し易いことは当然であるから、引用発明において、ハウジングの前面に操作パネルを配置するように構成することは、当業者が容易になし得た程度のものである。
なお、請求人は、平成23年11月10日付けの意見書において、「本願発明によれば、本願明細書の段落[0027]の記載等から明確に理解される如く、切削の遂行によって損耗した切削ブレードの交換操作をハウジング(2)の前面から充分容易に遂行することができる。ハウジング(2)の両側或いは後側に操作員が進入するための空間を確保する必要がなく、切削機を装備するための必要空間を充分に小さくすることができる。周知の如く、半導体ウエーハの切削等に使用される切削機は、高度なクリーンルーム内に配設することが必要であり、配設に必要な空間を充分に小さくせしめることは、高価なクリーンルームを充分効果的に利用する上で極めて重要な事項である。
・・・
刊行物1は、本願明細書の段落[0002]において従来技術を開示している先行文献として提示したものにほかならない。刊行物1に開示されている切削機においては、刊行物1の図1及び図2を参照することによって明確に理解されるとおり、前後方向に細長く延在するハウジングが配設されており、かかるハウジングの片側には後方に向かって順次にカセット載置域、チャッキング域及び洗浄域が配置され、ハウジングの他側における前後方向中央部には切削域が配設されている。ハウジングの上記他側には第一の切削手段と第二の切削手段とが配設されており、第一の切削手段は第一の回転軸及び第一の回転軸に装着された第一の切削ブレードを有し、第二の切削手段は第二の回転軸及び第二の回転軸に装着された第二の切削ブレードを有し、第一の回転軸と第二の回転軸とはハウジングの他側を前後方向に一直線状に延在し、第一の切削ブレードと第二の切削ブレードとは、夫々、第一の回転軸の内側端と第二の回転軸の内側端とに装着されて、相互に対向して位置する。
即ち、本願発明においては、カセット載置手段、チャッキング手段及び洗浄域が前後方向前側において幅方向に配列されていると共に、第一の切削手段の第一の回転軸及び第二の切削手段が前後方向後側において幅方向に配列されているのに対して、刊行物1に開示されている切削機においては、カセット載置手段、チャッキング手段及び洗浄域が前後方向前側において前後方向に配設されていると共に、第一の切削手段の第一の回転軸及び第二の切削手段が幅方向他側(図1において前側から見て左側)において前後方向に配列されている。
刊行物1に開示されている上述したとおりの切削機には、切削の遂行により損耗され、従って交換する必要がある切断ブレードが前後方向に細長く延在するハウジングの他側中央部に位置することに起因して、本願明細書の段落[0004]に明記するとおりの問題が存在する。即ち、ハウジングの正面から切削ブレードの装着位置までは相当な距離があり、ハウジングの正面から切削ブレードの交換操作を遂行することは不可能ではないにしても著しく困難である。通常、操作員はハウジングの側面に位置し、切削ブレードの交換操作を遂行しなければならず、交換操作が比較的煩雑である。そしてまた、切削ブレードの交換時に操作員がハウジングの側面に位置することができるようになすために、ハウジングの側面近傍に所要空間を確保しておくことが必要であり、これに起因して切削機を装備するために必要な空間が比較的大きくなり、高価なクリーンルームの相当な容積を占有してしまうことになる。」(第1ページ下から2行?第2ページ第38行。)と主張している。
しかしながら、装置をクリーンルーム内に配置した場合、どちらの向きを前面とし、どちらの向きを側面とするかは任意であるから、引用発明において、-X方向を前面とし、+X方向を後面とすることができる。そうした場合、操作パネルの位置を任意の位置に移動自在、あるいは取り付け可能とすることが刊行物2や刊行物3に記載されていることからすれば、引用発明においても、操作パネルを操作し易い前面に設けることは、当業者が容易になし得た程度のものであることは前記したとおりである。また、切削ブレードの交換についても、そのための切削機の装置としての引用発明との相違は操作パネルの位置しかなく、しかも操作パネルの位置については前記したとおりである。
したがって、請求人の上記意見書による主張は採用することができない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明に、刊行物2、刊行物3に記載された発明を採用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-14 
結審通知日 2012-02-21 
審決日 2012-03-05 
出願番号 特願2001-162958(P2001-162958)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 良隆  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 長屋 陽二郎
藤井 眞吾
発明の名称 切削機  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 小野 尚純  

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