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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47K
管理番号 1255725
審判番号 不服2011-10822  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-23 
確定日 2012-04-20 
事件の表示 特願2006-319048「色付き微細気泡発生浴槽装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月12日出願公開、特開2008-132037〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年11月27日に出願され、平成23年3月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月23日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされた。
その後、同年10月13日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年12月5日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成23年5月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成23年5月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正には、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする補正事項が含まれる(補正箇所に下線を付与した)。

「【請求項1】
一端部の吸込口から浴槽内の湯水を吸い込んで他端の噴出口から噴出する循環流路に微細気泡発生装置を設け、該微細気泡発生装置を、空気混入部、ポンプ、湯水中に混入した空気を湯水に溶解させるための空気溶解部と、湯水中に溶解した空気を析出させて微細気泡として発生させる微細気泡発生部を備えて構成し、上記微細気泡発生装置で発生させた微細気泡を循環流路の端部の噴出口から浴槽内に噴出するように構成し、該噴出口を浴槽の背もたれ側となる壁部と対向する足先が位置する側の壁部に設け、背もたれ側となる壁部と足先が位置する側の壁部との間の側壁部のほぼ中央部に、上記吸込口と、浴槽内の湯水に光を照射するための光照射手段とを設け、この光照射手段を吸込口より上方位置に設け、光照射手段の運転を微細気泡発生装置の運転に連動させる連動運転と、微細気泡発生装置の運転、光照射手段による照射をそれぞれ別々にオン、オフする個別オン、オフ運転とを切換可能として成ることを特徴とする色付き微細気泡発生浴槽装置。」

上記補正事項は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「吸込口」と「光照射手段」について、いずれも「側壁部のほぼ中央部」に位置し、かつ「光照射手段を吸込口より上方位置」に設けたものに限定するものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、上記本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしているか、について以下に検討する。

2 補正の適否の判断(独立特許要件:特許法第29条第2項違反)
(1)刊行物
刊行物1:特開2002-291634号公報
刊行物2:特開2006-296913号公報

原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、刊行物1には、図面と共に、以下の事項が記載されている(以下、下線は当審で付与した)。
(1a)「【請求項1】 気泡噴出口から噴出される気泡の直径が略5乃至10μmである超微細気泡が噴出される浴槽であって、有色光を照射する水中ライトにより、白濁した浴槽水をスクリーンとして発色させて、光の演出を行なうことを特徴とする光演出装置付き浴槽。」
(1b)「【0012】本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、浴槽水に超微細気泡を発生させて白濁とし、その白濁した浴槽水をスクリーンとして、光の演出を行ない浴槽を単なる入浴の場とするだけでなく、通常経験することのできない光の世界に入浴者を誘い、素晴らしいリラクゼーションを可能とする光演出装置付き浴槽を提供することを目的とする。」
(1c)「【0020】図1において、1は浴槽であり、側壁下部には吸込口2と圧力開放弁55、が設けられ、さらに、側壁の中央部付近に超微細気泡が噴出される気泡噴出口3が設けられ、浴槽の底部と側壁部には水中ライト51、52が設置され、水中ライト51、52は配線54-1、54-2で水中ライト操作盤53に接続されている。
【0021】6は浴槽水の汚れを除去するためのフィルタを内蔵したプレフィルタタンク、4は浴槽水と空気を吸入加圧する自吸式のポンプであり、不図示のモータで駆動される。
【0022】5は空気を取入れるエア吸込弁であり、11はポンプ4の呼び水を供給するための給水弁である。
【0023】7は圧力調整タンクであり、ポンプ4で加圧された空気が加圧溶解された浴用水を整流し、余剰空気は余剰空気排出部12からを大気に放出する機能を有している。
【0024】50は超微細気泡発生エレメントであり、微細メッシュの金属製の網を複数枚相互に網の目が一致しないように重ねたものである。
【0025】8は圧力逃し用電動バルブであり、超微細気泡発生エレメント50から浴槽1内に噴出される加圧溶解水の一部を圧力開放弁55から浴槽1内に放出して、超微細気泡発生エレメント50の入口側の圧力を一定値に制御する機能を有している。
【0026】浴槽の吸込口2とプレフィルタタンク6とは第1の配管13-1によって接続され、プレフィルタタンク6とエア調整弁5とは第2の配管13-2によって接続され、ポンプ4と圧力調整タンク7とは配管13-3によって接続され、圧力調整タンク7と超微細気泡発生エレメントとは第4の配管13-4によって接続されている。
【0027】圧力逃し用電動バルブ8は第4の配管14-4の途中から分岐し圧力開放弁55に通じる第5の配管13-5の中間に位置して設置され、吸込み口2から気泡噴出口3または圧力開放弁55に至る循環回路が構成されている。
【0028】また、第2の配管の途中でポンプの直近にエア吸込弁5が設けられており、第3の配管13-3の途中には装置の安全を確保するための圧力計9と安全弁10が設けられている。」
(1d)「【0030】まず、装置のスイッチ(不図示)がオンにされることにより、開始信号が制御部(不図示)に送られ、続いて制御部からポンプ4の駆動モータに対する駆動用の信号と、エア吸込弁に対する開放信号がそれぞれ送られると、ポンプ4が作動して、浴槽1内の浴用水は吸入口2から吸込まれプレフィルタ6を通過して浄化された後、エア吸込弁から吸入される空気とが混じってポンプ4に吸入される。
【0031】ポンプ4に吸入された浴用水と空気はポンプ4内で所定の圧力に加圧され、空気が浴用水中に加圧溶解されて圧力調整タンク7に給送される。
【0032】圧力調整タンク7内では、流れが整流されると共に加圧溶解水と余剰空気とに分離され、余剰空気は余剰空気排出部12から大気中へ放出され、加圧溶解水のみが超微細気泡発生エレメント50へ給送される。
【0033】また、不図示の制御装置により圧力逃し用電動バルブ8の開度を制御し、余剰の加圧溶解水は圧力開放弁55から浴槽1内に放出され、超微細気泡発生エレメント50の入力側の圧力は所定の圧力に制御されている。
【0034】この圧力逃し用電動バルブ8の作動により超微細気泡発生エレメント50の入力側の圧力が高精度に制御され気泡噴出口3から噴出する気泡の直径は略5乃至10μmの均一なものとなっている。」
(1e)「【0036】気泡噴出口3から噴出された気泡は略5乃至10μmの超微細の気泡であるため、浴槽水内に噴出されても表面張力により破裂することなく、水質等によっても変動するが10乃至20秒間程度は気泡の状態が保持され、浴槽水は無数の気泡が充満して白濁現象を呈することになる。
【0037】この白濁現象を呈した浴槽水に浴槽1の底面および側壁面に埋め込んだ水中ライト51、52から有色光を照射することにより、白濁した浴槽水をスクリーンとして変化に富んだ光の演出を行なうことができる。
【0038】水中ライト51、52の使用数は、浴槽の容量1m^(3)乃至2m^(3)当たり1台、設置場所は浴槽の底部または底部に近い側壁部に設けるのが好ましく、両方に設けることも効果的である。 ・・・」
(1f)「【0042】操作盤53による操作により有色光の色彩は好みに応じて適宜選択することができ、所定のプログラムによって時間的に変化させることも可能である。
【0043】最初に浴室内の常設ライトの照度を通常の半分以下に落とし、同時に自動的に浴槽壁面の複数の噴出口3から真白い超微細の気泡が噴出されると、1分以内に浴槽水は超微細の気泡によって純白となる。
【0044】続いて水中ライト51、52が点灯され、浴槽水はゆっくりと7色に順次変化して行き、1色当たり2乃至3分で自動的に次の色彩に変化する。」
これらの記載によれば、刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。
「一端部の吸込口2から浴槽内の湯水を吸い込んで他端の気泡噴出口3から噴出する循環回路に超微細気泡を発生する装置を設け、
該超微細気泡を発生する装置を、空気を取入れるエア吸込弁5、浴槽水と空気を吸入加圧する自吸式のポンプ4、ポンプ4で加圧された空気が加圧溶解された浴用水を整流する圧力調整タンク7、超微細気泡発生エレメント50を備えて構成し、
上記超微細気泡を発生する装置で発生させた微細気泡を循環回路の端部の気泡噴出口3から浴槽内に噴出するように構成し、
該気泡噴出口3を浴槽の側壁に設け、上記吸込口2を浴槽の側壁下部に設け、浴槽内の湯水に有色光を照射するための水中ライト51、52を浴槽の側壁に設けた、超微細気泡が噴出される光演出装置付き浴槽。」

原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、刊行物2には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
(2a)「【0016】
図1に例示した入浴装置は、浴槽1の壁面下方に気泡発生手段2を備えており、また浴槽1の壁面に複数個のレーザー光照射手段3を備えている。気泡発生手段2から噴出された微細気泡4は直径0.2μmから100μmであり、この微細気泡4に対して、レーザー光照射手段3からレーザー光5が照射され、微細気泡4に反射して直線的は色光が形成される。
【0017】
気泡発生手段2は、例えば特許文献4に開示されているような装置手段を採用することができる。すなわち、モータ駆動によってポンプ内に吸入された浴槽水と大気中とがポンプ内で加圧溶解され、アキュムレータにより整流され、噴出口に供給される。噴出口では加圧溶解水が減圧され、噴出口の細孔カートリッジを通過して、微細気泡4が浴槽水中に噴出する。加圧や減圧、整流の程度、あるいはカートリッジの孔経等を調節することによって、直径0.2μmから100μmの微細気泡が噴出される。」
(2b)「【0021】
レーザー光照射手段3は、浴槽1の任意の壁面箇所に1以上設置される。レーザー光照射手段3の設置位置は、図1に例示したように、浴槽水に浸る位置であってもよく、あるいは、浴槽1の壁面上部方向から浴槽水表面にレーザー光5を照射するような位置であってもよい。またレーザー光照射手段3が複数個の場合は、それぞれが同一の色調、波長からなるレーザー光5を照射してもよく、あるいは異なる色調、波長のレーザー光5を照射してもよい。さらに、レーザー光照射手段3は、レーザー光5の照射方向が一定であってもよく、あるいは手動または自動で可変とするものであってもよい。ただし、レーザー光5の照射方向は、水平より下方とすることが好ましい。レーザー光5が水平以上に照射された場合には、入浴者の眼球にレーザー光5が照射される危険性があり、好ましくない。」
(2c)「【0022】
なお、レーザー光照射手段3は、手動スイッチによって随時に作動させることができ、あるいは気泡発生手段2の作動と自動的に連動させるようにすることもできる。」
(2d)図1には、次の図面が記載され、気泡発生手段2の噴出口を浴槽1の長手方向端部に位置する壁部に設け、複数のレーザー光照射手段3を、浴槽1の長手方向に延びる側壁部の上部に、長手方向に沿って中央部から噴出口と対向する壁部に向かって設けることが示されている。


(2)対比
補正発明と刊行物1記載の発明を対比する。
ア 刊行物1記載の発明の「気泡噴出口3」は、補正発明の「噴出口」に相当し、以下、同様に、
「循環回路」は「循環流路」に、
「超微細気泡を発生する装置」は「微細気泡発生装置」に、
「エア吸込弁5」は「空気混入部」に、
「超微細気泡発生エレメント50」は「微細気泡発生部」に、
「水中ライト51、52」は「光照射手段」に、
「超微細気泡が噴出される光演出装置付き浴槽」は「色付き微細気泡発生浴槽装置」に相当する。
イ 刊行物1記載の発明の「ポンプ4」は、浴槽水と空気を吸入加圧するものであるから、「湯水中に混入した空気を湯水に溶解させるための空気溶解部」を備えたものということができ、補正発明における「ポンプ」及び「湯水中に混入した空気を湯水に溶解させるための空気溶解部」に相当する。
ウ 刊行物1記載の発明の「側壁」と、補正発明の「側壁部」及び「壁部」は、「浴槽の壁部」である点で共通し、
エ 刊行物1記載の発明において「気泡噴出口3を浴槽の側壁部に設け、吸込口2を浴槽の側壁下部に設け、浴槽内の湯水に有色光を照射するための水中ライト51、52を浴槽の底部または側壁部に設ける」ことと、
補正発明において、「噴出口を浴槽の背もたれ側となる壁部と対向する足先が位置する側の壁部に設け、背もたれ側となる壁部と足先が位置する側の壁部との間の側壁部のほぼ中央部に、吸込口と、浴槽内の湯水に光を照射するための光照射手段とを設け、この光照射手段を吸込口より上方位置に設け」ることとは、
「浴槽の壁部に、噴出口、吸込口及び浴槽内の湯水に光を照射するための光照射手段とを設け、光照射手段を吸込口より上方位置に設け」た点で共通する。

したがって、両者は次の点で、一致する。
「一端部の吸込口から浴槽内の湯水を吸い込んで他端の噴出口から噴出する循環流路に微細気泡発生装置を設け、
該微細気泡発生装置を、空気混入部、ポンプ、湯水中に混入した空気を湯水に溶解させるための空気溶解部と、湯水中に溶解した空気を析出させて微細気泡として発生させる微細気泡発生部を備えて構成し、
上記微細気泡発生装置で発生させた微細気泡を循環流路の端部の噴出口から浴槽内に噴出するように構成し、
該浴槽の壁部に、上記噴出口、上記吸込口及び浴槽内の湯水に光を照射するための光照射手段とを設け、光照射手段を吸込口より上方位置に設けた、
色付き微細気泡発生浴槽装置。」

また、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
浴槽の壁部に設けられる噴出口、吸込口、光照射手段の配置が、補正発明では、「噴出口を浴槽の背もたれ側となる壁部と対向する足先が位置する側の壁部に設け、背もたれ側となる壁部と足先が位置する側の壁部との間の側壁部のほぼ中央部に、吸込口と、光照射手段とを設け」たものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、噴出口、吸込口、光照射手段を配置する壁部(側壁)が、浴槽の4面ある側壁のどの位置の壁部か限定されておらず、さらに光照射手段及び吸込口の配置は、壁部の中央部に限定されていない点。

[相違点2]
光照射手段の運転が、補正発明では、「微細気泡発生装置の運転に連動させる連動運転と、微細気泡発生装置の運転、光照射手段による照射をそれぞれ別々にオン、オフする個別オン、オフ運転とを切換可能として成る」のに対し、刊行物1記載の発明はこのようなものか否か不明な点。

(3)判断
ア 上記相違点1について検討する。
まず、噴出口と光照射手段の配置について検討すると、刊行物2には、微細気泡発生装置(刊行物2における「気泡発生手段2」)と光照射手段(同「レーザー光照射手段3」)とを備えた浴槽装置において、微細気泡発生装置の噴出口を浴槽の長手方向端部に位置する壁部に設け、光照射手段を浴槽1の長手方向に延びる側壁部に設けることが示され、光が直接人の目に照射されないようにすることが記載されている。
そして、人は入浴する際に浴槽の長手方向に足を伸ばすことは明らかであるから、刊行物2記載の浴槽において、光照射手段は、背もたれ側となる壁部と足先が位置する側の壁部との間の側壁部に設けられているといえる。
また、人が入浴する際に、微細気泡の噴出口を塞ぐことがないように、また、微細気泡による演出が見えやすいように、噴出口を、浴槽の長手方向端部に位置する2つの壁部のうち、足先が位置する側の壁部に設けることは当然であって、刊行物2には、噴出口を浴槽の背もたれ側となる壁部と対向する足先が位置する側の壁部に設けることが実質的に開示されているといえる。
さらに、刊行物2の図2には、複数の光照射手段の一部を側壁部の中央付近に配置することも示されている。
そうすると、刊行物1記載の発明において、刊行物2記載の発明を適用し、「噴出口」を、浴槽の背もたれ側となる壁部と対向する足先が位置する側の壁部に設けること、及び「光照射手段」を、背もたれ側となる壁部と対向する足先が位置する側の壁部との間の側壁部の中央部に配置することは、当業者が容易になしうることである。

次に、吸込口の配置について検討する。
本願の明細書には「吸込口」を、特に、「背もたれ側となる壁部と足先が位置する側の壁部との間の側壁部のほぼ中央部」に設けることの技術的意義は記載されていないが、微細気泡は噴出口から吸込口に向かって循環するものであるから、吸込口を噴出口から離れた位置に配置する方が、微細気泡が、浴槽の広い範囲に分散し演出効果が高くなることが予想される。
一方、吸込口が人の体で塞がれることがないようにすることも当然考慮すべきことであるから、刊行物1記載の発明において、吸込口を設ける位置を、噴出口から離れた位置で、かつ人の体で塞がれることがない、背もたれ側となる壁部と対向する足先が位置する側の壁部との間の側壁部のほぼ中央部とすることは、当業者が適宜なしうることである。

なお、請求人は、審判請求の理由及び平成23年12月5日付け回答書において、吸込口と光照射手段が同一の側壁部に設けられていることを前提に、「吸込口の直ぐ上位置の光照射手段に近い箇所で吸込口に流入する直前の微細気泡流が光で照らされ、微細気泡が照らされると共に反射し、これを次々と繰り返しながら微細気泡の全域に分散して湯水全体が任意の色で発光発色した色濁湯を現出でき、この場合、側壁部のほぼ中央部の光照射手段よりも下方に位置する吸込口へ向けて流れる微細気泡の下降流が生じることで、光照射手段で照射される微細気泡が上昇するのが抑制され、色付きの微細気泡の滞留時間が長くなる」旨、主張している。
しかし、補正発明は、「光照射手段を吸込口より上方位置に設け」たことが特定されているだけであって、光照射手段を設けた側壁部と吸込口を設けた側壁部が同じ側壁部であることは特定されておらず、請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものである。
なお、本願の図面に示される実施例には、光照射手段と吸込口を同じ側壁部に設けたものが記載されているが、補正発明において、微細気泡は湯水内を浮遊して万遍なく分散して隅々までいきわたるものであり(補正明細書の段落【0010】参照)、特に光照射手段と吸込口を同じ側壁部の上下に配置することによる演出効果が格別のものとは認められず、光照射手段と吸込口を同じ側壁部の上下に配置することは、当業者が適宜なしうることである。

イ 相違点2について検討する。
刊行物1には、噴出口から超微細の気泡が噴出され、浴槽水が超微細の気泡によって純白となると、続いて水中ライト51、52が点灯され、浴槽水の色を順次変化させることが記載され(記載事項(1f)参照)、光照射手段の運転を微細気泡発生装置の運転に連動させることが示されている。
また、刊行物2には、光照射手段は、手動スイッチによって随時に作動させることも、気泡発生手段の作動と連動させるようにすることもできることが記載されている(記載事項(2c)参照)。
そして、気泡を発生させる装置と光照射手段を有する浴槽において、光照射手段の運転を、気泡を発生させる装置の運転に連動させる連動運転と、気泡を発生させる装置の運転、光照射手段による照射をそれぞれ別々にオン、オフする個別オン、オフ運転とに切換可能とすることは、原査定の拒絶の理由で引用した特開2001-173249号公報に記載されているように周知であり、刊行物1記載の発明において、光照射手段の運転を、微細気泡発生装置の運転に連動させる連動運転と、微細気泡発生装置の運転、光照射手段による照射をそれぞれ別々にオン、オフする個別オン、オフ運転とを切換可能とすることは、刊行物2記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易になしうることである。

ウ 補正発明の作用効果について
補正後の明細書段落【0010】に記載の、微細気泡は気泡径が極めて小さいため湯水内を浮遊して万遍なく分散して隅々までいきわたって湯水全体が微細気泡が満たされた不透明の濁湯となり、この微細気泡による濁湯内に光照射手段により光を照射することで、浴槽2内の湯水全体が任意の色相の光色で発光発色した色濁湯を現出することができるとの効果は、刊行物1、2記載の発明も奏するものであり、また、噴出口が入浴者の身体に塞がれることなく、光照射手段の光源の光が直接目に入り難くてまぶしくならない等の効果は、刊行物2記載の発明も奏するものであって、補正発明の効果は、刊行物1、2及び周知技術から予測できる程度のことである。

したがって、補正発明は、刊行物1、2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしていないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明
1 本願発明
平成23年5月23日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成22年6月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明は、次のとおりである。
「【請求項1】
一端部の吸込口から浴槽内の湯水を吸い込んで他端の噴出口から噴出する循環流路に微細気泡発生装置を設け、該微細気泡発生装置を、空気混入部、ポンプ、湯水中に混入した空気を湯水に溶解させるための空気溶解部と、湯水中に溶解した空気を析出させて微細気泡として発生させる微細気泡発生部を備えて構成し、上記微細気泡発生装置で発生させた微細気泡を循環流路の端部の噴出口から浴槽内に噴出するように構成し、該噴出口を浴槽の背もたれ側となる壁部と対向する足先が位置する側の壁部に設け、背もたれ側となる壁部と足先が位置する側の壁部との間の側壁部に、浴槽内の湯水に光を照射するための光照射手段を設け、光照射手段の運転を微細気泡発生装置の運転に連動させる連動運転と、微細気泡発生装置の運転、光照射手段による照射をそれぞれ別々にオン、オフする個別オン、オフ運転とを切換可能として成ることを特徴とする色付き微細気泡発生浴槽装置。」(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)。

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された、上記刊行物1、2に記載された事項及び記載された発明は、「第2 2(1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本件補正発明から、「吸込口」と「光照射手段」について、いずれも「側壁部のほぼ中央部」に位置するとの限定、及び「光照射手段を吸込口より上方位置」に設けたとの限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 2(3)」に記載したとおり、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-16 
結審通知日 2012-02-21 
審決日 2012-03-06 
出願番号 特願2006-319048(P2006-319048)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A47K)
P 1 8・ 121- Z (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 聡  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
仁科 雅弘
発明の名称 色付き微細気泡発生浴槽装置  
代理人 坂口 武  
代理人 西川 惠清  
代理人 北出 英敏  
代理人 水尻 勝久  
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