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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21V
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21V
管理番号 1255726
審判番号 不服2011-11762  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-02 
確定日 2012-04-20 
事件の表示 特願2006-146101号「ガイド灯」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月15日出願公開、特開2007-299717号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年5月26日の出願[【優先権主張番号】特願2006-103042【優先日】平成18年4月4日【優先権主張国】日本(JP)]であって、平成23年3月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年6月2日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

2.平成23年6月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年6月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本願補正発明について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「器具内に設置した光源と、光源の光出力方向に光源の基板と平行に設置した透明または半透明の空気より屈折率が高いカバーと、光源とカバー間を充填する空気より屈折率が高く且つ前記カバーより屈折率が低い樹脂とを備えるガイド灯。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「充填する樹脂の屈折率」について補正前の「前記カバーと屈折率が同等もしくは前記カバーより屈折率が低い樹脂」から「前記カバーより屈折率が低い樹脂」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号でいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)原査定の拒絶の理由に引用した文献等の記載
ア 本願の優先日前に頒布された刊行物1である特開平7-15047号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の(ア)?(ウ)の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、たとえばガソリンスタンド等の地面に埋め込まれた、車両等の誘導灯として使用される発光器に関するものである。」
(イ)「【0025】図1に示す発光器は、発光ダイオードランプ10と、容器50と、光透過性板60と、光透過性材料70とを備えるものである。発光ダイオードランプ10は、図3及び図4に示すように、反射型発光ダイオード12と、基板42と、ランプケース44と、黒色の樹脂46とを有する。」

(ウ)「【0031】次に、発光器を形成する手順について説明する。まず、発光ダイオードランプ10の中心軸L_(1) が容器50の中心軸L_(2) に対して所定の角度θだけ傾くように、発光ダイオードランプ10を容器50の内部に配置する。いま、空気(外部)の屈折率をn_(0) 、光透過性板60であるガラスの屈折率をn_(1 )(>n_(0 ))とし、また、光透過性材料70の屈折率がn_(1 )とほぼ等しいとする。本実施例では、発光素子22から発された光は凹面状反射面32で反射され、平行光として放射面34から放射されるので、この平行光は傾き角度θと同じ角度で光透過性板60と外部との界面に入射することになる。したがって、放射面34からの光が光透過性板60と外部との界面で全反射しないようにするためには、傾き角度θを、臨界角度sin^( -1)(n_(0) /n_(1 ))より小さくなるように設定する必要がある。尚、傾き角度θは発光器の用途に応じて決められる。
【0032】次に、容器50の前面に光透過性板60を載置した後、たとえば、リード24a,24bを外部に引き出すための、容器50の側壁に設けられた孔部(不図示)から光透過性材料70としてのシリコン樹脂を注入することにより、発光器が形成される。ここで、シリコン樹脂を所定の圧力で注入すると、発光ダイオードランプ10は全体がシリコン樹脂で覆われ、また容器50と光透過性板60とで囲まれた空間には空気溜まりが生じることなく、シリコン樹脂が充填される。」

イ 本願の優先日前に頒布された刊行物2である特開2005-19110号公報(以下「周知例1」という)には、図面とともに次の(エ)の事項が記載されている。
(エ)【図3】から、透光パネル1(カバー)を光源(発光素子)の光出力方向に光源の基板(光源基板)と平行に設置しているのを見ることができる。
なお、一般的に、強化ガラスの屈折率は通常1.51以上で、シリコン樹脂の屈折率は通常1.51以下である。

ウ 本願の優先日前に頒布された刊行物3である国際公開第2006/006544号(国際公開日2006年1月19日)(なお、翻訳文は上記刊行物に対応する日本特許文献である特表2008-506246号公報の対応する箇所を参照した。)(以下「周知例2」という)は、表示用の発光装置で、図面とともに次の(オ),(カ)の事項が記載されている。

(オ) 「(Second Embodiment)
FIG. 2 is a sectional view showing a white LED as another example of a light-emitting device according to the present invention. In this light-emitting device, an outer surface of a light-emitting element 4 is covered with a first sealing layer 1, the first sealing layer 1 is surrounded by and covered with a second sealing layer 2, and the second sealing layer 2 is covered with a third sealing layer 3. In other words, a sealing portion of this light-emitting device has a triple layer structure including the first sealing layer 1, the second sealing layer 2 and the third sealing layer 3. The second sealing layer 2 is formed into a convex lens shape for focusing light. A first light-transmitting material forming the first sealing layer 1 can be the above-mentioned light-transmitting material whose light-transmission factor is not lowered very much by the light and heat emitted from the light-emitting element 4 and that has an elasticity, and most preferably is a silicone material. In order to prevent damages to the light-emitting element 4, the first sealing layer 1 preferably has a thickness of 40μm to 300 μm from the outer surface of the light-emitting element 4.」(第12頁5?21行目)

(【0038】
(実施形態2)
図2は、本発明の発光装置の他の一例である白色LEDの断面図である。本発光装置は、発光素子4の外面が第1の封止層1で覆われ、第1の封止層1の周囲が第2の封止層2で覆われ、第2の封止層2が第3の封止層3で覆われている。即ち、本発光装置の封止部は、第1の封止層1と、第2の封止層2と、第3の封止層3とからなる三層構造を有している。また、第2の封止層2は、光を集光するために凸レンズ状に形成されている。
【0039】第1の封止層1を形成する第1の透光性材料としては、前述の、発光素子4から放出される光及び熱に対して光透過率の低下が少なく、かつ弾性を有する透光性材料が用いられ、最も好ましくはシリコーン材料が用いられる。第1の封止層1の厚さは、発光素子4の損傷の防止のため、発光素子4の外面から40μm以上300μm以下であることが好ましい。)
(カ)「In addition, it is preferable that the refractive index decreases from the third sealing layer 3 in an outermost part via the second sealing layer 2 as an intermediate layer to the first sealing layer 1 covering the light-emitting element in this order. This reduces the total reflection of light, making it possible to raise a light extraction efficiency.」(第14頁30行目?第15頁4行目)
(【0049】また、最外殻の第3の封止層3から、中間層の第2の封止層2、発光素子を覆う第1の封止層1に向かって、順次屈折率が低くなることが好ましい。これにより、光の全反射が少なくなり、光の取り出し効率を上げることができる。)

《引用発明》
上記引用例1の記載事項(ア)?(ウ)及び図1に示された内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「容器50内に設置した反射型発光ダイオード12と、反射型発光ダイオード12の光出力方向に反射型発光ダイオード12のランプケース44と角度θだけ傾くように設置したガラスの屈折率をn_(1 )(>n_(0) )とした光透過性板60と、反射型発光ダイオード12と光透過性板60間を充填する屈折率がn_(1) とほぼ等しい光透過性材料70としてのシリコン樹脂とを備える車両等の誘導灯として使用される発光器。」

(3)対比
引用発明の「車両等の誘導灯として使用される発光器」は本願補正発明の「ガイド灯」に相当し、以下同様に、「容器50」は「器具」に、「反射型発光ダイオード12」は「光源」に、「光透過性板60」は「カバー」に、「光透過性材料70としてのシリコン樹脂」は「樹脂」にそれぞれ相当する。
また、「ガラスの屈折率をn_(1) (>n_(0) )とした」は、空気の屈折率がn_(0)であるから、「透明または半透明の空気より屈折率が高い」ことになり、樹脂の「屈折率がn_(1) とほぼ等しい」は「空気より屈折率が高」いことになる。

上記の事項を考慮して、引用発明と本願補正発明を対比すると、両者はともに「光源を透光性カバーで覆ったガイド(誘導)灯において、外部との境界での全反射を防ぐ」という課題で共通しており、その具体的な構成として次の点で一致し、
「器具内に設置した光源と、透明または半透明の空気より屈折率が高いカバーと、光源とカバー間を充填する空気より屈折率が高い樹脂とを備えるガイド灯」

以下の点で相違する。
(相違点)本願補正発明では「カバー」が「光源の光出力方向に光源の基板と平行に設置」し「カバーより屈折率が低い樹脂」が充填されているのに対し、引用発明では「光透過性板60」が「光源の光出力方向に光源の基板と角度θだけ傾くように設置」し「屈折率がn_(1 )とほぼ等しい光透過性材料70としてのシリコン樹脂」が充填されている点。

(4)当審の判断
上記の相違点に関して、「光源の光出力方向に光源の基板と平行に設置」することは、ガイド灯では通常の形態であり、周知例1に示されている如くであるから、引用発明においても、カバーを「光源の光出力方向に光源の基板と平行に設置」して本願補正発明のように構成することは当業者であれば容易に設計しうる程度の事項と認められる。

また、上記(2)(ウ)【0031】の記載から、「光源の光出力方向に光源の基板と角度θだけ傾くように設置」した引用発明において、光透過性材料70の屈折率を「n_(1 )とほぼ等し」くするのは「放射面34からの光が光透過性板60と外部との界面で全反射しないようにする」ためのものである。
そして、周知例2(上記(2)(カ)の記載参照)に示されているように、光の取り出し効率を上げるために、最外殻の封止層から発光素子を覆う封止層に向かって、順次屈折率を低くすることが、表示装置における周知技術であることを加味すれば、光透過性板60を「光源の光出力方向に光源の基板と平行に設置」した場合、外部との界面で全反射しないようにするために、光透過性材料70の屈折率をガラスの屈折率n_(1)以下にすればよいことは当業者であれば容易に推測できるものである。
そうすると、引用発明に上記周知例1及び2に記載された周知技術を適用することにより、本願補正発明の上記相違点のごとく構成することは当業者が容易になし得ることと認められる。

したがって、本願補正発明は、引用発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成23年6月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成22年9月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「器具内に設置した光源と、光源の光出力方向に光源の基板と平行に設置した透明または半透明の空気より屈折率が高いカバーと、光源とカバー間を充填する空気より屈折率が高く且つ前記カバーと屈折率が同等もしくは前記カバーより屈折率が低い樹脂とを備えるガイド灯。」

(2)刊行物等
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物等、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から『充填する樹脂の屈折率』の限定事項である「前記カバーより屈折率が低い」に選択肢「前記カバーと屈折率が同等」を加えたに過ぎないものである。
そうすると、本願補正発明の構成要件を依然として含むものであり、本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物1及び刊行物2に記載された発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-31 
結審通知日 2012-02-07 
審決日 2012-03-06 
出願番号 特願2006-146101(P2006-146101)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21V)
P 1 8・ 575- Z (F21V)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 政道  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 栗山 卓也
小関 峰夫
発明の名称 ガイド灯  
代理人 西川 惠清  
代理人 北出 英敏  
代理人 水尻 勝久  
代理人 坂口 武  

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