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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07C
管理番号 1255834
審判番号 不服2008-26381  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-14 
確定日 2012-04-12 
事件の表示 平成9年特許願第516231号「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成9年5月1日国際公開、WO97/15540、平成12年10月17日国内公表、特表2000-513705〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、1996年10月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1995年10月23日、フランス(FR))を国際出願日とする出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりである。
平成15年 9月26日 手続補正書
平成18年12月 4日付け 拒絶理由通知書
平成19年 6月12日 意見書・手続補正書
平成20年 7月 7日付け 拒絶査定
平成20年10月14日 審判請求書
平成20年11月13日 手続補正書
平成20年12月25日 手続補正書(方式)
平成21年 2月 2日付け 前置報告書
平成21年 4月 8日付け 審尋
平成21年10月14日 回答書
平成22年 1月21日付け 補正の却下の決定・拒絶理由通知書
平成22年 7月26日 意見書・手続補正書

第2 本願発明
この出願の発明は、平成22年7月26日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、下記のとおりのものである。

「ヒドロフルオロ化アンチモン触媒(但し、五フッ化アンチモン及び/又は三フッ化アンチモンは除く)の存在下で1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンをフッ化水素と液相中で連続的に反応させる1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの製造方法であって、
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンが気体である温度及び圧力下で前記反応が実施され、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン及び塩化水素をそれらが形成されるにつれて気相で抜き出して反応混合物から分離し、
1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン1モル当たり5?100モルのフッ化水素を使用する製造方法。」

第3 当審で通知した拒絶理由
当審で通知した平成22年1月21日付けの拒絶の理由は、「2.本願発明1?8は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。」という理由を含むものであり、その「下記の特許出願」のうちの一つは、特願平07-44094号(以下、「先願3」という。「先願3」は、原査定で引用した「出願3」と同じ。また、先願3の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面を「先願明細書3」という。)である。

第4 当審の判断
1.先願明細書3の記載事項
先願明細書3には、次の事項が記載されている。

A.「1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンをアンチモン触媒存在下フッ化水素により液相フッ素化することを特徴とする1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの製造方法。」(特許請求の範囲の【請求項1】)

B.「そこで、アンチモン化合物を具体的に挙げると、五塩化アンチモン、五臭化アンチモン、五沃化アンチモン、五フッ化アンチモン、三塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三沃化アンチモン、三フッ化アンチモンを例示できるが、五塩化アンチモンまたは三塩化アンチモンが最も好ましい。」(段落【0008】)

C.「1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンに対するフッ化水素のモル比は5?30の範囲が好ましく、特に好ましくは10?20である。この範囲未満では1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンの反応率は十分高くなく、この範囲を越えても1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン反応率の向上は認められず、未反応フッ化水素回収の点からも経済的に有利でない。」(段落【0011】)

D.「本発明の方法は、バッチ式、生成物のみを反応器から除去しながら行う半バッチ式または流通式反応装置において実施することができるが、それぞれの反応装置において、当業者が容易に調節しうる程度の反応条件の変更を妨げるものではない。」(段落【0015】)

E.「本発明の方法で製造された1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンは、フッ素化反応生成物について公知の方法を適用して精製されるが、例えば、塩化水素、未反応のフッ化水素とともに反応器から液体または気体状態で取り出された後、過剰のフッ化水素が液相分離などの操作で除去され、ついで、水または塩基性水溶液で酸性成分を除いた後、蒸留により目的とする高純度の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとする。」(段落【0017】)

2.先願明細書3に記載された発明
先願明細書3には、「1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンをアンチモン触媒存在下フッ化水素により液相フッ素化することを特徴とする1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの製造方法」が記載され(摘記A)、さらに、アンチモン化合物としては、「五塩化アンチモンまたは三塩化アンチモンが最も好ましい」(摘記B)こと、「1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンに対するフッ化水素のモル比は5?30の範囲が好まし」いこと(摘記C)、上記製造方法は、「流通式反応装置において実施することができる」こと(摘記D)、「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンは、…塩化水素…とともに反応器から…気体状態で取り出」すこと(摘記E)が記載されている。
そうすると、先願明細書3には、
「1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンを五塩化アンチモンまたは三塩化アンチモンからなるアンチモン触媒存在下フッ化水素により液相フッ素化することを特徴とする1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの製造方法において、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンに対するフッ化水素のモル比は5?30の範囲であり、流通式反応装置において実施し、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンは塩化水素とともに反応器から気体状態で取り出す方法」
の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているといえる。

3.本願発明と先願発明の対比
本願発明と先願発明を対比すると、先願発明の「1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンを…フッ化水素により液相フッ素化することを特徴とする1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの製造方法」は、本願発明の「1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンをフッ化水素と液相中で…反応させる1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの製造方法」に相当する。

そして、上記製造方法の触媒である、先願発明の「五塩化アンチモンまたは三塩化アンチモンからなるアンチモン触媒」は、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンをフッ素化して1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとする反応、すなわち、「ヒドロフルオロ化」反応に用いる「アンチモン触媒」であり、「五フッ化アンチモン及び/又は三フッ化アンチモン」とは異なる触媒である。
そうすると、先願発明の「五塩化アンチモンまたは三塩化アンチモンからなるアンチモン触媒」は、本願発明の「ヒドロフルオロ化アンチモン触媒(但し、五フッ化アンチモン及び/又は三フッ化アンチモンは除く)」に相当する。

また、先願発明の「1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンに対するフッ化水素のモル比は5?30の範囲」である方法は、本願発明の「1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン1モル当たり5?100モルのフッ化水素を使用する」方法とはその範囲が重複する。

そして、先願発明の「流通式反応装置」は、原料を流通しながら反応させる装置であるから、「連続的に反応」させるための装置であり、そうすると、先願発明の「流通式反応装置において実施」する方法は、本願発明の「連続的に反応させる」方法に相当する。

さらに、先願発明は、「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンは塩化水素とともに反応器から気体状態で取り出す方法」であるところ、「流通式反応装置」によって、連続的に反応を行う際には、これらが形成されるにつれて、連続的に気体状態、すなわち、気相で抜き出して反応混合物から分離するものといえる。
そうすると、先願発明の「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンは塩化水素とともに反応器から気体状態で取り出す方法」は、本願発明の「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン及び塩化水素をそれらが形成されるにつれて気相で抜き出して反応混合物から分離」する方法に相当する。

そして、先願発明は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを「反応器から気体状態で」取り出す方法であるから、「流通式反応装置」によって、連続的に反応を行う際には、それが気体状態である条件、すなわち、「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンが気体である温度及び圧力下」で反応が実施されているものといえる。
そうすると、本願発明と先願発明は、いずれも「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンが気体である温度及び圧力下で前記反応が実施され」る方法である。

以上のとおりであるから、本願発明と先願発明は、
「ヒドロフルオロ化アンチモン触媒(但し、五フッ化アンチモン及び/又は三フッ化アンチモンは除く)の存在下で1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパンをフッ化水素と液相中で連続的に反応させる1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの製造方法であって、
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンが気体である温度及び圧力下で前記反応が実施され、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン及び塩化水素をそれらが形成されるにつれて気相で抜き出して反応混合物から分離し、
1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン1モル当たり5?100モルのフッ化水素を使用する製造方法。」
の点で一致し差異はない。

4.まとめ
したがって、本願発明は、先願明細書3に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願3に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が先願3の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

5.審判請求人の主張
審判請求人は、平成22年7月26日の意見書の「(4)理由2について」において、以下の主張をしている。

「先願3には、本願発明の「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン及び塩化水素をそれらが形成されるにつれて気相で抜き出して反応混合物から分離」することは記載されておりません。
なお、先願3の[0015]には「 本発明の方法は、バッチ式、生成物のみを反応器から除去しながら行う半バッチ式または流通式反応装置において実施することができる・・・」と一応記載されていますが、連続式反応については記載されておりません。仮に「半バッチ式」が連続式反応を意図するものであったとしても、生成物を気相から除去することは何ら記載されておりません(液相から除去する態様もありえます)。そして、生成物を気相から除去することによる効果は先願1に関して既にご説明したとおりです。」

しかしながら、上記3.で述べたとおり、先願発明の「流通式反応装置」は、「連続的に反応」させるための装置であるから、先願明細書3には、「連続的に反応させる」方法が記載されている。
そして、先願発明は、「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンは塩化水素とともに反応器から気体状態で取り出す方法」であるところ、上記3.で述べたとおり、連続的に反応を行う際には、これらが形成されるにつれて、連続的に気相で抜き出して反応混合物から分離するものといえるから、先願明細書3には、「1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン及び塩化水素をそれらが形成されるにつれて気相で抜き出して反応混合物から分離」する方法について記載されている。

したがって、審判請求人の主張は採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-10 
結審通知日 2010-12-14 
審決日 2010-12-27 
出願番号 特願平9-516231
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 泰之穴吹 智子  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 井上 千弥子
橋本 栄和
発明の名称 1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの製造方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 棚井 澄雄  

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