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審決分類 審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H04L
審判 全部無効 2項進歩性  H04L
管理番号 1255840
審判番号 無効2010-800073  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-04-21 
確定日 2012-05-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第2530771号発明「送受信線切替器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第2530771号は、平成3年7月8日に出願(特願平3-167266号)され、平成8年6月14日に特許権の設定登録が行われたものである。
そして、本件無効審判請求後の手続の経緯は以下のとおりである。

無効審判請求:平成22年4月21日
答弁書:平成22年7月27日
口頭審理陳述要領書(請求人):平成22年10月13日
口頭審理陳述要領書(被請求人):平成22年10月13日
口頭審理:平成22年10月27日
上申書(被請求人):平成22年11月11日
上申書(請求人):平成22年11月29日

第2.本件特許発明
本件特許第2530771号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「IEEE802.3規格の10BASE-Tに準拠するツイストペア線を使用したネットワークにおいて、MAU又はDTEに接続される送受信線を切り替えるための切替器であって、信号線の接続を検査するために送信器から受信器に伝送されるリンクテストパルスを検出するリンクテストパルス検出手段と、リンクテストパルス検出手段の検出結果から送信線か受信線かを判断して信号線を切り替える信号線切替制御部とを備えることを特徴とする送受信線切替器。」

第3.当事者の主張及び証拠方法
1.請求人
請求人は、「特許第2530771号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めているところ、請求の理由の要点及び証拠方法は以下のとおりである。

(1)請求の理由の要点
ア.無効理由I-1
本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第4号証?甲第9号証記載の周知技術とを組み合わせることにより容易に想到し得るから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、第123条第1項第1号に該当し、無効にすべきである。
イ.無効理由I-2
本件特許発明は、甲第2号証に記載された発明と甲第4号証?甲第9号証記載の周知技術とを組み合わせることにより容易に想到し得るから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、第123条第1項第1号に該当し、無効にすべきである。
ウ.無効理由I-3
本件特許発明は、甲第3号証に記載された発明と甲第4号証?甲第9号証記載の周知技術とを組み合わせることにより容易に想到し得るから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、第123条第1項第1号に該当し、無効にすべきである。
エ.無効理由II
本件特許発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許に係る明細書の記載は、特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、第123条第1項第3号に該当し、無効にすべきである。
オ.無効理由III
本件特許発明は、甲第4号証に記載された発明と同一のものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、第123条第1項第1号に該当し、無効にすべきである。
なお、平成22年10月13日付け口頭審理陳述要領書により、本件特許発明に対して特許法第29条第1項第3号違反とする主張は撤回されたので、本審決においては、これを審理対象としない。

(2)証拠方法
甲第1号証:特開昭62-299138号公報
甲第2号証:特開昭61-140257号公報
甲第3号証:特表平3-500238号公報
甲第4号証:IEEE Standards 802.3i-1990のSection13およびSection14の表紙、22,23,28,52,53,54ページ(Approved September 28,1990 IEEE Standards Board)(1990年9月28日認証)
甲第5号証:オーム社「コンピュータ&ネットワークLAN」1990年9月号、Vol.8,No.9のpp25?31、“’90年代LANのエース「ツイスト・ペアEthernet」”および表紙、目次
甲第6号証:10 Mb/s twisted pair CMOS transceiver with transmit waveform pre-equalization, Custom Integrated Circus Conference, Proceedings of the IEEE 1991の7.3.1-7.3.4および表紙:1991(平成3)年5月発行
甲第7号証:特開平4-180437号公報
甲第8号証:特開平5-14359号公報
甲第9号証:本件特許掲載公報(特許第2530771号公報)
甲第10号証:実公昭63-12600号公報

2.被請求人
被請求人は、「本件請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めているところ、答弁の理由の要点は以下のとおりである。

(1)答弁の理由の要点
答弁書の趣旨および理由は、本件特許発明は、甲第1号証ないし甲第9号証に記載された発明ないし周知技術から容易に発明をすることができたものではなく、明細書の発明の詳細な説明に記載したものであり、甲第4号証に記載された発明と同一のものではないから、本件特許発明の特許は、無効にされるべきではない、というものである。

(2)証拠方法
乙第1号証:請求人HP ネットワーク機能講座
(http://allied-telesis.co.jp/library/nw_guide/device/hub./html)
乙第2号証:IEEE Standards 802.3i-1990のSection13およびSection14の表紙、35?45ページ(Approved September 28,1990 IEEE Standards Board)(1990年9月28日認証)
乙第3号証:広辞苑第二版補訂版 第1147ページ

第4.無効理由についての当審の判断
1.無効理由I-1について
(1)甲第1号証、甲第4号証?甲第9号証の記載事項
ア.甲第1号証の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第1号証の刊行物には、「データインタフェース装置の電気的接続条件選択方式」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
a.「データインタフェース装置(DIU)を含むディジタル交換機システムの一例を第2図に示す。同図に示されるように、データインタフェース装置(DIU)1及び2は、標準化されたRS-232Cケーブルによる信号線3及び4を介して、データ端末装置(DTE)5及びデータ回線終端装置(DCE)6にそれぞれ接続されている。データ端末装置(DTE)5としては、CRTディスプレイ、プリンタ、プロセッサ等が存在する。データ回線終端装置(DCE)6としては、モデム等が知られている。データ端末装置(DTE)に対する電気的接続条件とデータ回線終端装置(DCE)に対する電気的接続条件とは異なる。」(第2頁左上欄第2?14行)
b.「第3図はデータインタフェース装置(DIU)1とこれに接続される外部装置との接続切換を説明する図である。
上記の如く、データインタフェース装置(DIU)は、これに接続される相手により電気的接続条件が異なるので、接続される相手によって信号線3及び4を切換える必要がある。この切換えは半導体スイッチによって行われる。これを第3図によって説明する。
第3図において、データ端末装置(DTE)5の端子mはレシーバ21の入力端となっており、端子nはドライバ22の出力端となっている。一方、データ回線終端装置(DCE)6の端子mはドライバ23の出力端、端子nはレシーバ24の入力端となっている。
データインタフェース装置(DIU)1は、制御部25、ドライバ26、レシーバ27、及び半導体スイッチ28を備えている。ドライバ26の出力は半導体スイッチ28のスイッチ接点S_(1)に接続されており、レシーバ27の入力は半導体スイッチ28のスイッチ接点S_(2)に接続されている。
データ端末装置(DTE)5を接続する場合は、ドライバ26の出力をレシーバ21の入力に、ドライバ22の出力をレシーバ27の入力に接続すればよいので、半導体スイッチ28の図示実線の如く、接点S_(1)と端子mを接続し、接点S_(2)と端子nを接続すればよい。
データ回線終端装置(DCE)5を接続する場合は、ドライバ26の出力をレシーバ24の入力に、ドライバ23の出力をレシーバ27の入力に接続すればよいので、図示点線の如く、接点S_(1)と端子nを接続し、接点S_(2)と端子mを接続するように、半導体スイッチ28を切換える。」(第2頁右上欄第1行?同頁左下欄第13行)
c.「そこで、本出願人は、特願昭59-263379号によりデータ通信モード自動選択方式を提案した。この先行技術によれば、第6図に示すように、データインタフェース装置(DIU)内の1つのレシーバ27の入力電圧を監視し、その電圧により接続が正しいか否かを判定する。すなわち、正しい接続の場合、つまりレシーバ27の入力が接続相手のドライバ22の出力に接続された時のレシーバ27の入力電圧Vは、信号線RS-232Cの規格で5V<|V|<15V(入力インピーダンスRは3?7KΩ)と定られている。一方、レシーバ27の開放時の入力電圧は規格により2V以下である。したがって、正しい接続の場合は第6図に示すように、入力電圧Vは5<|V|<15であり、間違った接続の場合の入力端子Vは第7図に示すように、|V|<2Vとなる。このことを利用して、ある周期で半導体スイッチ28を切り換え続けながらレシーバ27の入力電圧を監視し続け、入力電圧Vが5<|V|<15となったところで半導体スイッチ28の切換えを止めることにより、自動的に接続モードを選択できる。」(第2頁右下欄第14行?第3頁左上欄第14行)
上記甲第1号証の摘記事項及び図面の記載を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「RS-232Cケーブルを使用したネットワークにおいて、DCE又はDTEに接続される送受信線を切り替えるためのデータインタフェース装置であって、レシーバの入力電圧を検出する手段と、検出する手段の検出結果から送信線か受信線かを判断して信号線を切り替える制御部と半導体スイッチを備えるデータインタフェース装置。」

イ.甲第4号証の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第4号証の刊行物には、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
a.「IEEE Std 802.3i-1990
・・・(中略)・・・
Twisted-Pair Medium Attachment Unit(MAU) and Baseband Medium, Type 10BASE-T(Section 14)」(表紙頁)
b.「14.2.1.7 Link Integrity Test Function Requirements. In order to protect the network from the consequences of a simplex link segment failure, the MAU shall monitor the RD circuit for RD_input and link test pulse activity. If neither RD_input nor a link test pulse is received for a time 'link_loss', the MAU shall enter the Link Test Fail state and cause the input_idle message to be sent on the DI circuit and the TD_idle message to be sent to the TD circuit(Fig 14-6). The value of 'link_loss' shall between 50 and 150 ms. When RD_input or a number 'lc_max' of consective link test pulses is received on the RD circuit, the MAU shall exit the Link Test Fail state. The value of 'lc_max' shall be between 2 and 10 inclusive.」
(当審仮訳:14.2.1.7 リンクインテグリティテスト機能の要求。ネットワークを単純なリンクセグメント障害という結果から守るために、MAUはRD回路でRD入力とリンクテストパルス活動を監視する。‘リンクロス’の期間にRD入力もリンクテストパルスも受信されなければ、MAUはリンクテスト障害状態に入り、入力アイドルメッセージがDI回路に送られ、TDアイドルメッセージがTD回路に送られる(図14-6)。‘リンクロス’の値は50msから150msの間である。RD入力か‘lc_max’個の連続したリンクテストパルスがRD回路で受信されたら、MAUはリンクテスト障害状態から出る。‘lc_max’の値は2以上10以下である。)(第28頁第25-33行)

ウ.甲第5号証の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第5号証の刊行物には、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
a.「【2】機能動作概要
状態図(AUIおよびリンク・セグメントの各信号ライン状態)を用いて10BASE-Tの動作を概説する(第5図)。
・・・(中略)・・・
(a)データ無送信
この状態では、リンク・セグメント上にリンクテスト・パルスが送出されている。このパルスが受信されないと、MAUまたはリピータセットは機能せず、回線確保は行われない。同軸LANには本機能はない。」(第28頁左欄第1?14行)

エ.甲第6号証の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第6号証の刊行物には、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
a.「Recently, unshielded twisted pair(UTP) media has been standardized as an alternate media that is cheaper and more readily available for a 10Mb/s Ethernet network(10Base-T).」(請求人訳:現在では、被覆されていないツイストペア媒体(UTP)が代わりの媒体として標準的なものとなり、より安価であり、かつ、より10Mb/sイーサネットネットワーク(10Base-T)にすぐに利用できる。)((7.3.1)の左欄第12?15行)
b.「Fig.7 The link integrity pulse waveform before the line with the 10Base-T link pulse template」(請求人訳:10Base-Tリンクパルステンプレートと共に、線の前のリンクインテグリティパルスの波形)((7.3.3)の図7)

上記イ.?エ.の各号証に記載されているように、「10BASE-Tに準拠するツイストペア線においてリンクテストパルスが伝送されること」は周知技術である。

オ.甲第7?9号証は本願出願時に未公知の文献であるから、容易想到性の判断の証拠としては採用しない。

(2)対比・判断
本件特許発明と甲1発明とを対比すると、
・本件特許発明の「IEEE802.3規格の10BASE-Tに準拠するツイストペア線を使用したネットワーク」と甲1発明の「RS-232Cケーブルを使用したネットワーク」はいずれも「ネットワーク」である点で共通し、
・本件特許発明の「MAU又はDTE」と甲1発明の「DCE又はDTE」は「DTE」で共通し、
・本件特許発明の「切替器」と甲1発明の「データインタフェース装置」はいずれも「送受信線を切り替える機能を備えた装置」である点で共通し、
・本件特許発明の「リンクテストパルス検出手段」と甲1発明の「レシーバの入力電圧を検出する手段」は「検出する手段」である点で共通し、
・本件特許発明の「信号線切替制御部」と甲1発明の「制御部と半導体スイッチ」は「検出結果から送信線か受信線かを判断して信号線を切り替える手段」である点で共通し、
以上を総合すれば、両者は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「ネットワークにおいて、DTEに接続される送受信線を切り替える機能を備えた装置であって、検出する手段と、検出する手段の検出結果から送信線か受信線かを判断して信号線を切り替える手段とを備える送受信線を切り替える機能を備えた装置。」

(相違点1)
「ネットワーク」が、本件特許発明は「IEEE802.3規格の10BASE-Tに準拠するツイストペア線を使用したネットワーク」であるのに対し、甲1発明は「RS-232Cケーブルを使用したネットワーク」である点。
(相違点2)
「送受信線」が接続されるものが、本件特許発明は「MAU又はDTE」であるのに対し、甲1発明は「DCEまたはDTE」である点。
(相違点3)
「送受信線を切り替える機能を備えた装置」が、本件特許発明では「切替器」であるのに対し、甲1発明では「データインタフェース装置」である点。
(相違点4)
「検出する手段」が、本件特許発明では「信号線の接続を検査するために送信器から受信器に伝送されるリンクテストパルスを検出するリンクテストパルス検出手段」であるのに対し、甲1発明では「レシーバの入力電圧を検出する手段」である点。
(相違点5)
「検出結果から送信線か受信線かを判断して信号線を切り替える手段」が、本件特許発明では「信号線切替制御部」であるのに対し、甲1発明では「制御部と半導体スイッチ」である点。

まず、上記(相違点4)について、以下に検討する。
上記(相違点4)に関連して、請求人は、審判請求書において「甲第1号証に記載の発明において、送受信線として周知の10BASE-T準拠のツイストペア線を使用すれば、検出する信号として、ツイストペア線において伝送されるリンクテストパルスを選択することは、本件特許出願前に当業者であれば容易に選択しうることである。」(第24頁下から3行?第25頁第1行)と主張している。
しかしながら、たとえ10BASE-Tに準拠するツイストペア線においてリンクテストパルスが伝送されることが周知技術であったとしても、リンクテストパルスはあくまで単純なリンクセグメント障害を検出する目的で送信される信号であり(甲第4号証の摘記事項b.)、これを送信線か受信線かの判定に用いる動機付けとなる記載は上記甲各号証のいずれにも見当たらない。
さらに、ツイストペア線に接続されたMAUのRD回路が受信しうる信号としては、リンクテストパルスの他にRD入力もある(甲第4号証の摘記事項b.)が、この2つの信号のうちリンクテストパルスを判定のため選択する積極的理由も上記甲各号証のいずれにも見当たらない。
そして、本件特許発明は、送信線か受信線かを判断する手段としてリンクテストパルス検出手段を採用することにより、「10BASE-Tにおいて、MAUとDTEを接続するときにはストレート接続、MAU同士あるいはDTE同士を接続するときにはクロス接続が要求されるという10BASE-Tに固有の問題点を、リンクテストパルスという10BASE-Tに元々備わっている機能をうまく利用して解決したものであるから、コストの増加を最小限に抑えることができる」(本願明細書段落【0011】)という作用効果を得ることができたものである。
したがって、上記(相違点4)は、甲第4?6号証に記載された事項から当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく本件特許発明が甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2.無効理由I-2について
(1)甲第2号証、甲第4号証?甲第9号証の記載事項
ア.甲第2号証の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第2号証の刊行物には、「データ通信モード自動選択方式」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
a.「複数の電気的接続条件を有するデータ通信装置に於いて、該データ通信装置の受信回路の入力端に受信信号電圧検出回路を接続し、該受信信号電圧検出回路の入力電圧が所定電圧範囲内にあるか又は範囲外にあるかにより、該データ回線終端装置の入出力信号線を自動的に切替えることを特徴とするデータ通信モード自動選択方式。」(第1頁左欄、特許請求の範囲)
b.「V.28インタフェイスの基準によると、受信回路の開放回路電圧は2V以下であり、而も通常使用状態で信号電圧が+3V以上、又は-3V以下であると云う規格がある。
従ってV.28インタフェイスの基準に合致するDCEのレシーバ11の入力端の通常使用状態での信号電圧は+3V以上、又は-3V以下である。
同様にV.28インタフェイスの基準に合致するDTEのD入力端子通常使用状態での信号電圧は+3V以上、又は-3V以下である。」(第3頁左上欄第3?12行)
c.「本発明に依ると、第1図に示す様に端子xと端子Cを接続し、端子yと端子Dを接続する。尚切替接点12、13は受信信号電圧検出回路14に内蔵されているリレー21の接点で常時は点線で示す接点位置にある。
DTEのドライバ15から出力された信号は本発明に依るDCE内の端子x、及び切替接点12を通り、レシーバ11に入る。レシーバ11の入力には受信信号電圧検出回路14が接続される。
此の状態に於いて、レシーバ11の入力端の受信信号電圧を受信信号電圧検出回路14により測定した時、受信信号電圧は前記規定によると-3V以下、又は+3V以上である。従って此の時受信信号電圧検出回路14は此れを検出して其の内蔵するリレー21が不動作状態となり、其の接点12、13は点線で示す接点位置をとる。
若し此の時、受信信号電圧が-3V?+3Vの間にあると受信信号電圧検出回路14が判定した時は、其の内蔵するリレー21を動作状態とし、其の接点12、13は実線で示す接点位置に変わる。
次にモデムに接続される場合には、端子xと端子C’を接続し、端子yと端子D’を接続する。
此の場合端子xにはモデムのレシーバ16’の入力が接続され、端子yにはモデムのドライバ15’の出力が接続される。従ってレシーバ11の入力端の受信信号電圧は-3V?+3Vの間にある値を取る。受信信号電圧検出回路14は此れを検出してリレー21を動作状態とし、其の切替接点12、13を駆動して実線で示す接点位置にする。
此の結果、ドライバ10の出力は切替接点12、端子xを通り、モデムのレシーバ16’の入力に接続され、モデムのドライバ15’出力は端子y、切替接点13を通りレシーバ11の入力端に接続される。
従ってレシーバ1の入力端の受信信号電圧は再び-3V以下、又は+3V以上となる。此の場合リレー21は復旧しない。」(第3頁左上欄第16行?同頁左下欄第11行)

上記甲第2号証の摘記事項及び図面の記載を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「V.28を使用したネットワークにおいて、DCE又はDTEに接続される送受信線を切り替えるためのデータ回線終端装置であって、受信回路の入力電圧を検出し、その検出結果から送信線か受信線かを判断して信号線を切り替える受信信号電圧検出回路を備えたデータ回線終端装置。」

イ.甲第4?9号証の記載事項
上記、「1.無効理由I-1について」の項において認定した通りである。

(2)対比・判断
本件特許発明と甲2発明とを対比すると、
・本件特許発明の「IEEE802.3規格の10BASE-Tに準拠するツイストペア線を使用したネットワーク」と甲2発明の「V.28を使用したネットワーク」はいずれも「ネットワーク」である点で共通し、
・本件特許発明の「MAU又はDTE」と甲2発明の「DCE又はDTE」は「DTE」で共通し、
・本件特許発明の「切替器」と甲2発明の「データ回線終端装置」はいずれも「送受信線を切り替える機能を備えた装置」である点で共通し、
・本件特許発明の「リンクテストパルス検出手段」と甲2発明の「受信信号電圧検出回路」は「検出する機能」を備える点で共通し、
・本件特許発明の「信号線切替制御部」と甲2発明の「受信信号電圧検出回路」は「検出結果から送信線か受信線かを判断して信号線を切り替える機能」を備える点で共通し、
以上を総合すれば、両者は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「ネットワークにおいて、DTEに接続される送受信線を切り替える機能を備えた装置であって、検出する機能と、検出する機能の検出結果から送信線か受信線かを判断して信号線を切り替える機能を備えた装置。」

(相違点1)
「ネットワーク」が、本件特許発明は「IEEE802.3規格の10BASE-Tに準拠するツイストペア線を使用したネットワーク」であるのに対し、甲2発明は「V.28を使用したネットワーク」である点。
(相違点2)
「送受信線」が接続されるものが、本件特許発明は「MAU又はDTE」であるのに対し、甲2発明は「DCEまたはDTE」である点。
(相違点3)
「送受信線を切り替える機能を備えた装置」が、本件特許発明では「切替器」であるのに対し、甲2発明では「データ回線終端装置」である点。
(相違点4)
「検出する機能」を備えるものが、本件特許発明では「信号線の接続を検査するために送信器から受信器に伝送されるリンクテストパルスを検出するリンクテストパルス検出手段」であるのに対し、甲2発明では「受信回路の入力電圧を検出」する「受信信号電圧検出回路」である点。
(相違点5)
「検出結果から送信線か受信線かを判断して信号線を切り替える機能」を備えるものがが、本件特許発明では「信号線切替制御部」であるのに対し、甲2発明では「受信信号電圧検出回路」である点。

まず、上記(相違点4)について、以下に検討する。
上記(相違点4)に関連して、請求人は、審判請求書において「甲第2号証に記載の発明において、送受信線として周知の10BASE-T準拠のツイストペア線を使用すれば、検出する信号として、ツイストペア線において伝送されるリンクテストパルスを選択することは、本件特許出願前に当業者であれば容易に選択しうることである。」(第28頁第5?8行)と主張している。
しかしながら、たとえ10BASE-Tに準拠するツイストペア線においてリンクテストパルスが伝送されることが周知技術であったとしても、リンクテストパルスはあくまで単純なリンクセグメント障害を検出する目的で送信される信号であり(甲第4号証の摘記事項b.)、これを送信線か受信線かの判定に用いる動機付けとなる記載は上記甲各号証のいずれにも見当たらない。
さらに、ツイストペア線に接続されたMAUのRD回路が受信しうる信号としては、リンクテストパルスの他にRD入力もある(甲第4号証の摘記事項b.)が、この2つの信号のうちリンクテストパルスを判定のため選択する積極的理由も上記甲各号証のいずれにも見当たらない。
そして、本件特許発明は、送信線か受信線かを判断する手段としてリンクテストパルス検出手段を採用することにより、「10BASE-Tにおいて、MAUとDTEを接続するときにはストレート接続、MAU同士あるいはDTE同士を接続するときにはクロス接続が要求されるという10BASE-Tに固有の問題点を、リンクテストパルスという10BASE-Tに元々備わっている機能をうまく利用して解決したものであるから、コストの増加を最小限に抑えることができる」(本願明細書段落【0011】)という作用効果を得ることができたものである。
したがって、上記(相違点4)は、甲第4?6号証に記載された事項から当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく本件特許発明が甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3.無効理由I-3について
(1)甲第3号証、甲第4号証?甲第9号証の記載事項
ア.甲第3号証の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第3号証の刊行物には、「インタフェースユニット」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
a.「1.データ通信装置(DCE)または端末装置(DTE)の複数の並列入力及び出力タイミング信号、制御信号及びデータ信号からなる並列結合に接続され、出力される並列結合信号を多重処理化して直列伝送結合に出力される直列信号にし、直列伝送結合から入力された直列信号を分離して入力並列信号にするマルチプレクサ手段(52,54)を備えたインタフェースユニットにおいて、マルチプレクサ部(52,54)が、各結合信号用のI/Oライン(L1ないしL16)からなるI/O機構(51)を通じて並列結合信号に接続され、I/Oラインの少なくとも一部が、入力または出力として自動的に選択可能であり、及び/またはマルチプレクサ部(52,54)の少なくとも2個の選択的な入力または出力と自動的に接続可能になっていて、インタフェースユニットが端末装置(DTE)またはデータ通信装置(DCE)のいずれかに接続されているかに応じて異なった種類のクロスコネクションを行うことを特徴とするインタフェースユニツト。
・・・(中略)・・・
4.1以上のI/Oラインにおけるインピーダンスレベルを測定して、検出したインピーダンスレベルに基づいてI/Oユニットが結合信号の所要の結合を行えるように制御する機構(511)を備えたことを特徴とする、請求の範囲第1項ないし第3項のいずれかに記載のインタフェースユニツト。」(第1頁、特許請求の範囲)
b.「第3図は、本願発明によるインタフェースユニットを備えたデータ通信機器4を示すものである。インタフェースユニットは、接続ケーブルの端部でデータ通信機器の外に設けられる。データ通信機器4は、一体化したマルチプレクサ・直列伝送ユニット34を備え、このマルチプレクサ・直列伝送ユニットにより、データ通信機器4の内部論理レベルデータ及び制御信号を、時分割多重化処理で、インタフェースユニットに加える直列信号に変換する。相応して、マルチプレクサユニット34は、インタフェースユニットから入力する直列信号を、データ通信機器4の内部信号バスに加える並列信号に変換する。マルチプレクサ・直列伝送ユニット34の直列伝送ボートは、データ通信機器4の端子32に、セパレーショントランスフォーマ(separation transformer)36等のセパレーション機構を介して接続される。マルチプレクサ・直列伝送ユニット34と端子32との間には、セパレーショントランスフォーマ36により、ガルバニック・セパレーション(galvanic separation)がもたらされる。端子32は、使用する接続ケーブル31のタイプ、及び利用する直列伝送技術に応じて、適切なタイプのものとしてよい。2導線接続ケーブル31は、端子32にこれと組み合う端子(図示せず)により接続される。本願発明によるインタフェースユニット35が、端子33に設けられて接続ケーブル32の一端に接続される。このようにして、他のデータ通信機器により用いられるインタフェースタイプへの転換を、適切なインタフェースユニットを選択することによって容易に行いながら、データ通信機器の端子では同じタイプのインタフェースを絶えず用いることができる。
端子33は、データ通信機器4に接続される、端末装置5及び他のデータ通信機器6等の他の機器によって用いられているインタフェース規格に機械的及び電気的に整合する。したがって、端子33は、端末装置5またはデータ通信機器6の端子と整合することになる。インタフェースユニット35は、データ通信機器の一体化したマルチプレクサ・直列伝送ユニット34に対応するマルチプレクサ・直列伝送ユニットを備え、これにより、受信した直列信号を論理レベル制御信号、クロック信号及びデータ信号に変換する。インタフェースユニット35には、端末装置5で用いているインタフェース規格に電気的及び機能的に従った形に論理レベル信号を変換する接続回路を設け、この変換した形で、信号を端末装置5の端子に端子33を通じて供給するようにしてもよい。」(第2頁左下欄下から4行?第3頁左上欄第13行)
c.「I/O回路51の内部構造を、第6図に拡大して示しである。この図示の例では、I/OラインL1、L2ないしL16の各々は、2個の互いに逆向きに並列接続した緩衝増幅器A1及びA2を備え、これらの緩衝増幅器は、緩衝増幅器A1及びA2の一方が作動状態にあり他方が作動状態にないように制御論理部514により制御できる。このようにして、16本のラインL1ないしL16のライン出力が、入力であるのか出力であるのかを選択的に判別できる。緩衝増幅器A1及びA2は、更に、インタコネクションフィールド(interconnection field)部513に接続され、これにより、制御論理部514による制御を受けながら、ラインL1ないしL16の各々を、マルチプレクサ回路52のある入力またはディマルチプレクサ回路54のある出力として機能するように接続する。このような選択動作は、検出回路511により制御される。検出回路511は、2本のライン、この実施例の場合ではラインL1及びL2に接続された2個の入力を有し、これらの入力では、信号方向が公知のように互いに反対方向であり、端末機器のインタフェースからデータ伝送機器のインタフェースへの転移時に逆転する。送信機(たとえばA1)の出力インビータンスが低く(100ないし300オーム)、受信機(たとえばA2)の出力インピーダンスが比較的高い(3ないし7キロオーム)ことを、測定に利用する。測定は、ラインL1とL2を入力として働かせることにより開始し、受信機A2のインビータンスが高いことは、I/O回路の側のラインに表われる。このようにして、検出回路511により測定されたラインからのインピーダンスレベルは、受信機が装置の側でもラインに接続されている場合には高く、これと相応して、送信機が装置の側でラインに接続されていると低い、インピーダンスの測定は、3つの異なった結果をもたらす、すなわちL1が低くL2が高い場合、L1が高くL2が低い場合、及びL1が高くL2も高い場合である。最初の2つの結果は、対象となっている装置が端末装置またはデータ通信装置であることを示している。最後の結果は、インタフェースユニットが、いずれの装置とも接続されていないことを示している。1以上のラインL1ないしL16のインピーダンスレベルを測定することにより、インタフェースが取り付けられる装置が、端末装置DTAまたはデータ通信装置DCEであるかどうかを自動的に判別できる。この判別に基づいて、制御論理部514が、今までは新しい接続ケーブルの据え付は又は他の複雑な処理を必要としていた、信号の所要のクロスコネクションを実施できるように自動的に制御される。」(第3頁左下欄下から7行?第4頁左上欄第11行)

上記甲第3号証の摘記事項及び図面の記載を総合すると、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
「接続ケーブルを使用したネットワークにおいて、DCE又はDTEに接続される送受信線を切り替えるためのインタフェースユニットであって、I/Oラインのインピーダンスを検出する検出回路と、その検出結果から送信線か受信線かを判断して信号線を切り替える制御論理部とインターコネクションフィールド部を備えるインタフェースユニット。」

イ.甲第4?9号証の記載事項
上記、「1.無効理由I-1について」の項において認定した通りである。

(2)対比・判断
本件特許発明と甲3発明とを対比すると、
・本件特許発明の「IEEE802.3規格の10BASE-Tに準拠するツイストペア線を使用したネットワーク」と甲3発明の「接続ケーブルを使用したネットワーク」はいずれも「ネットワーク」である点で共通し、
・本件特許発明の「MAU又はDTE」と甲3発明の「DCE又はDTE」は「DTE」で共通し、
・本件特許発明の「切替器」と甲3発明の「インタフェースユニット」はいずれも「送受信線を切り替える機能を備えた装置」である点で共通し、
・本件特許発明の「リンクテストパルス検出手段」と甲3発明の「I/Oラインのインピーダンスを検出する検出回路」は「検出する手段」である点で共通し、
・本件特許発明の「信号線切替制御部」と甲3発明の「制御論理部とインターコネクションフィールド部」は「検出結果から送信線か受信線かを判断して信号線を切り替える手段」である点で共通し、
以上を総合すれば、両者は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「ネットワークにおいて、DTEに接続される送受信線を切り替える機能を備えた装置であって、検出する手段と、検出する手段の検出結果から送信線か受信線かを判断して信号線を切り替える手段とを備える送受信線を切り替える機能を備えた装置。」

(相違点1)
「ネットワーク」が、本件特許発明は「IEEE802.3規格の10BASE-Tに準拠するツイストペア線を使用したネットワーク」であるのに対し、甲3発明は「接続ケーブルを使用したネットワーク」であって規格が不明である点。
(相違点2)
「送受信線」が接続されるものが、本件特許発明は「MAU又はDTE」であるのに対し、甲3発明は「DCEまたはDTE」である点。
(相違点3)
「送受信線を切り替える機能を備えた装置」が、本件特許発明では「切替器」であるのに対し、甲3発明では「インタフェースユニット」である点。
(相違点4)
「検出する手段」が、本件特許発明では「信号線の接続を検査するために送信器から受信器に伝送されるリンクテストパルスを検出するリンクテストパルス検出手段」であるのに対し、甲3発明では「I/Oラインのインピーダンスを検出する検出回路」である点。
(相違点5)
「検出結果から送信線か受信線かを判断して信号線を切り替える手段」が、本件特許発明では「信号線切替制御部」であるのに対し、甲3発明では「制御論理部とインターコネクションフィールド部」である点。

まず、上記(相違点4)について、以下に検討する。
上記(相違点4)に関連して、請求人は、審判請求書において「甲第3号証に記載の発明において、送受信線として周知の10BASE-T準拠のツイストペア線を使用すれば、検出する信号として、ツイストペア線において伝送されるリンクテストパルスを選択することは、本件特許出願前に当業者であれば容易に選択しうることである。」(第31頁第16?19行)と主張している。
しかしながら、たとえ10BASE-Tに準拠するツイストペア線においてリンクテストパルスが伝送されることが周知技術であったとしても、リンクテストパルスはあくまで単純なリンクセグメント障害を検出する目的で送信される信号であり(甲第4号証の摘記事項b.)、これを送信線か受信線かの判定に用いる動機付けとなる記載は上記甲各号証のいずれにも見当たらない。
さらに、ツイストペア線に接続されたMAUのRD回路が受信しうる信号としては、リンクテストパルスの他にRD入力もある(甲第4号証の摘記事項b.)が、この2つの信号のうちリンクテストパルスを判定のため選択する積極的理由も上記甲各号証のいずれにも見当たらない。
そして、本件特許発明は、送信線か受信線かを判断する手段としてリンクテストパルス検出手段を採用することにより、「10BASE-Tにおいて、MAUとDTEを接続するときにはストレート接続、MAU同士あるいはDTE同士を接続するときにはクロス接続が要求されるという10BASE-Tに固有の問題点を、リンクテストパルスという10BASE-Tに元々備わっている機能をうまく利用して解決したものであるから、コストの増加を最小限に抑えることができる」(本願明細書段落【0011】)という作用効果を得ることができたものである。
したがって、上記(相違点4)は、甲第4?6号証に記載された事項から当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく本件特許発明が甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4.無効理由IIについて
(1)請求人の主張
無効理由IIについて、請求人は、審判請求書の「7.請求の理由 (1)請求の理由の要約」(第9頁)および「(4-4)記載不備(特許法第36条5項1号)」(第33?34頁)において、概略、以下の主張をしている。
ア.「本件特許発明(請求項1)の「信号線」は、送受信線切替器の「外部」にあるツイストペア線(本件特許の図1、図2参照)であるという解釈は成立しうる。よって、本件特許発明(請求項1)の「信号線を切り替える」は送受信線切替器の「外部」にあるツイストペア線(本件特許の図1、図2参照)を切り替える(例えば、クロスケーブルを、ストレートケーブルに切り替えるといった解釈が成立しうる。」
イ.「送受信線切替器の「内部」の配線の切替ならば、ともかく、送受信線切替器の「外部」の配線の切替は、明細書に記載もなく、出願時の技術水準で可能でもない。」
ハ.実現不能であり、当然、課題も解決できないような解釈が、本件特許発明(請求項1)の「信号線を切り替える」について成立しうる。よって、本件特許発明(請求項1)においては、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許が成立している。したがって、本件特許発明(請求項1)が、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。」
(2)当審の判断
上記のように、無効理由IIに関する請求人の主張は、要するに、送受信線切替器の「外部」の配線の切替をも行う送受信線切替器が特許請求の範囲の記載された範囲に含まれるというものである。
しかしながら、本件特許発明が解決しようとする課題は「送信線と受信線の接続が間違っている場合には自動的に信号線を切り替えることが可能な送受信線切替器を提供すること」(本願明細書の段落【0003】)であるが、請求人も認めているように、送受信線切替器の「外部」の配線の切替は、出願時の技術水準で可能であるとは認められない。つまり、出願時の技術常識に照らせば、「自動的に信号線を切り替える」ことが可能な、本件特許発明に係る送受信線切替器とは、送受信線切替器の「内部」の配線の切替を行う送受信線切替器のみであることは自明である。
したがって、本件特許発明は発明の詳細な説明に記載されたものであるといえるから、特許法第36条第5項第1号の規定要件に違反しているものとはいえない。

第5. 結び
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明に係る特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第89条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-06 
結審通知日 2010-12-13 
審決日 2010-12-27 
出願番号 特願平3-167266
審決分類 P 1 113・ 534- Y (H04L)
P 1 113・ 121- Y (H04L)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 新川 圭二
高野 洋
登録日 1996-06-14 
登録番号 特許第2530771号(P2530771)
発明の名称 送受信線切替器  
代理人 速見 禎祥  
代理人 宍戸 充  
代理人 細田 益稔  
代理人 上田 有美  
代理人 石井 総  
代理人 岩坪 哲  
代理人 菅 尋史  
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