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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01G
管理番号 1255917
審判番号 不服2009-19597  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-14 
確定日 2012-04-26 
事件の表示 特願2005-244517「積層コンデンサの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月 8日出願公開、特開2007- 59708〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年8月25日の出願であって、平成20年7月11日付けの拒絶理由通知に対して、同年9月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年7月9日付けで拒絶査定がされ、それに対して、同年10月14日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに手続補正書が提出され、その後、平成23年7月26日付けで審尋がされ、同年9月26日に回答書が提出された。
その後、当審において同年11月21日付けで拒絶の理由が通知され、それに対して、平成24年1月20日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、平成24年1月20日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
支持体上で、誘電体ペーストを用いて、第1部分的スルーホールが形成された第1誘電体パターン層を印刷法により形成する工程と、
導電性ペーストを用いて、前記第1部分的スルーホールに対応する位置に、第1部分的柱状電極を形成する工程と、
前記第1部分的柱状電極が形成された前記第1誘電体パターン層の上で、導電性ペーストの印刷を行い、前記第1誘電体パターン層の上に、第1絶縁孔パターンと第1孤立パターンとを有する第1内部電極パターン層を形成する工程と、
誘電体ペーストを用いて、前記第1部分的スルーホールに接続することになる第2部分的スルーホールが形成された第2誘電体パターン層を、前記第1内部電極パターン層の上に印刷法により形成する工程と、
導電性ペーストを用いて、前記第2部分的スルーホールに対応する位置に、第2部分的柱状電極を形成する工程と、
前記第2部分的柱状電極が形成された前記第2誘電体パターン層の上で、導電性ペーストの印刷を行い、前記第2誘電体パターン層の上に、第2絶縁孔パターンと第2孤立パターンとを有する第2内部電極パターン層を形成する工程と、を有し、
前記第1孤立パターンは、前記第1部分的スルーホールの内径よりも大きくなるように、前記第1絶縁孔パターンの内部に形成され、
前記第2孤立パターンは、前記第2部分的スルーホールの内径よりも大きくなるように、前記第2絶縁孔パターンの内部に形成され、
前記第1部分的柱状電極と前記第2部分的柱状電極とが、積層方向に接続されて、スルーホール電極となり、
前記第1誘電体パターン層を形成する工程から、前記第2内部電極パターン層を形成する工程までの一連の工程を繰り返し行い、前記支持体の上に、複数の誘電体パターン層が積層された第1積層体を形成し、前記第1積層体を、前記支持体から引き剥がし、
複数の前記第1積層体を積み重ねて第2積層体を形成し、前記第2積層体における積層方向の両面に、前記部分的柱状電極に接続される外部電極を、行列状に形成し、
前記第1絶縁孔パターンと第2絶縁孔パターンとは、相互に相補的なパターンであり、
前記第1絶縁孔パターンを通る前記スルーホール電極と、前記第2絶縁孔パターンを通る前記スルーホール電極とが、平面において相互に隣接する前記外部電極に対して接続され、
隣接する前記外部電極の相互は、異なる極性の電圧が印加されるようになっていることを特徴とする積層コンデンサの製造方法。」

3.引用刊行物に記載された発明
(1)引用例1
(1-1)本願の出願前に日本国内において頒布され、平成23年11月21日付けで通知した拒絶の理由において引用された刊行物である特開2000-243873号公報(以下「引用例1」という。)には、図2及び図3とともに以下の記載がある(なお、下線は当合議体にて付加したものである。以下同じ。)。

a.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンデンサを備える配線基板、さらに詳しくは、コンデンサをコア基板に内蔵しその上下に樹脂絶縁層及び配線層を積層した、ノイズを確実に除去できる配線基板に関する。また、この配線基板を製造するためのコンデンサ内蔵コア基板、コンデンサを内蔵するためのコア基板本体、コンデンサ、及びこれらの製造方法に関する。」

b.「【0055】次いで、上記配線基板100の製造方法について、個別の部材であるコンデンサ20、コア基板本体10の製造方法を含めて説明する。まず、コンデンサ20の製造方法について、図3を参照しつつ説明する。まず、図3(a)に示すように、公知のグリーンシート製造技術により、BaTiO_(3)粉末を主成分とする高誘電体セラミックグリーンシート(以下、単にシートともいう)124を多数製造する。次いで、図3(b)に示すように、このシート124の所定位置に、その表裏面124A,124B間を貫通するビア孔124Hをパンチングにより形成する。
【0056】さらに、図3(c)に示すように、各シート124のビア孔124H内に、Pdペーストを充填して未焼成ビア導体126,127,128を形成し、さらに、各シート124の上面124A側に、Ag-Pdペーストからなる所定形状の未焼成電極層125E,125Fを形成する。このうち、一方の未焼成電極層125Eは、図3(c)において3つ形成した未焼成ビア導体126,127のうち、左右2つと接続し、中央の未焼成ビア導体126,127とは接続しないパターンに形成されている。他方の未焼成電極層125Fは、これとは逆に、3つ形成した未焼成ビア導体126,127のうち、中央の未焼成ビア導体126,127と接続し、左右のものとは接続しないパターンに形成されている。
【0057】なお、未焼成ビアパッド125Eあるいは125Fと接続しないビア126,127については、後述する積層時に確実に上下方向にビア導体同士を接触、導通させるため、各未焼成ビア導体126,127の上方に、未焼成電極層125E,125Fと同時にカバーパッド129を形成しておくと良い。また、次述する積層時に最も上に積層する未焼成誘電体層124Dには、未焼成電極層125E,125Fのいずれも形成せず、各未焼成ビア導体128の上方に、カバーパッド122のみを形成するようにしている。
【0058】次いで、図3(d)に示すように、未焼成電極層125Eが積層されたシート124と、125Fが積層されたシート124とを、交互に積み重ねるようにして積層する。そして、最も上には、未焼成電極層125E,125Fのいずれも形成せず、カバーパッド122のみを形成したシート124Dを積層し、これらを圧着して積層体120を形成する。これにより、未焼成誘電体層124と未焼成電極層125E,125Fとは、交互に積層され、しかも、未焼成電極層125Eと125Fとは互いに1層おきに配置された状態となる。また、未焼成電極層125E,125Eはそれぞれ未焼成ビア導体126,127を介して、互いに接続され、同様に、未焼成電極層125F,125Fもそれぞれ未焼成ビア導体126,127を介して、互いに接続される。その上、未焼成電極層125Eの群と125Fの群とは、接触することはなく、互いに絶縁された状態となる。
【0059】その後、この積層体120を上下反転させて、未焼成ビア導体127が露出する積層体120の上面にカバーパッドを形成した上で、この積層体120を焼成(同時焼成)して、図2に示すコンデンサ20を形成する。コンデンサ20をこのようにして形成したので、例えば、焼成後に誘電体層24の側面に電極層25E、あるいは25Fと接続するための共通電極を形成する必要はなく、焼成後、直ちにコンデンサとして使用することができる。なお、ビア導体26,27,28(未焼成ビア導体126,127,128)は、上層や下層のビア導体の位置や隣り合うビア導体24との間隔等を考慮すれば、誘電体層24の面内いずれの位置にも形成できる。
【0060】したがって、上部コンデンサ接続配線60や下部コンデンサ接続配線70の引き回しの容易さ、上部コンデンサ接続配線60に接続するフリップチップパッド101の数や、下部コンデンサ接続配線70に接続するLGAパッド103の数などに応じて、上面接続パッド21および下面接続パッド22の位置や数も任意に選択して形成することができる。さらには、コンデンサ20を配線基板100に内蔵させない場合においても、上下に接続させるICチップ等の電子部品の端子配置に応じて、上面接続パッド21および下面接続パッド22の位置や数も任意に選択して形成することができる。なお、Pdからなる上面接続パッド21あるいは下面接続パッド22は、ハンダ付け性やCuからなる配線層45との接続性を考慮して、Ni-Auメッキや、Cuメッキ等を施しておくこともできる。また、上面接続パッド21、及び/または、下面接続パッド22の周囲には、公知の手法により、セラミックや樹脂などからなるソルダーレジスト層を形成しておくこともできる。
【0061】完成したコンデンサ20は、ショートの有無、静電容量値、電極群25Eと25Fとの間の絶縁抵抗値、各上面接続パッド21及び各下面接続パッド22と、電極群25E,25Fとの導通あるいは絶縁のチェック等、各種のチェックを行い、不具合のあるコンデンサ20は廃棄する。これにより、後述する工程で不具合のあるコンデンサ20を使用する危険性を減少させることができる。」

(1-2)以上によれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「BaTiO_(3)粉末を主成分とする高誘電体セラミックグリーンシート124の所定位置に、その表裏面124A,124B間を貫通するビア孔124Hをパンチングにより形成し、
各セラミックグリーンシート124のビア孔124H内に、Pdペーストを充填して未焼成ビア導体126,127,128を形成し、
各シート124の上面124A側に、Ag-Pdペーストからなる所定形状の未焼成電極層125E,125Fを、一方の未焼成電極層125Eは、未焼成ビア導体126,127のうち、左右2つと接続し、中央の未焼成ビア導体126,127とは接続せず、他方の未焼成電極層125Fは、3つ形成した未焼成ビア導体126,127のうち、中央の未焼成ビア導体126,127と接続し、左右のものとは接続しないように形成し、
未焼成ビアパッド125Eあるいは125Fと接続しないビア126,127には、積層時に確実に上下方向にビア導体同士を接触、導通させるため、各未焼成ビア導体126,127の上方に、未焼成電極層125E,125Fと同時にカバーパッド129を形成し、
未焼成電極層125Eが積層されたシート124と、125Fが積層されたシート124とを、交互に積み重ねるようにして積層し、最も上には、未焼成電極層125E,125Fのいずれも形成せず、カバーパッド122のみを形成したシート124Dを積層し、これらを圧着して積層体120を形成し、
積層体120を上下反転させて、未焼成ビア導体127が露出する積層体120の上面にカバーパッドを形成し、この積層体120を焼成するコンデンサ20の製造方法。」

(2)引用例2
本願の出願前に日本国内において頒布され、平成23年11月21日付けで通知した拒絶の理由において引用された刊行物である特開2001-185442号公報(以下「引用例2」という。)には、図1?3及び図5とともに以下の記載がある。

a.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、積層コンデンサ、デカップリングコンデンサの接続構造および配線基板に関するもので、特に、高周波回路において有利に適用され得る積層コンデンサ、ならびに、この積層コンデンサを用いて構成される、デカップリングコンデンサの接続構造および配線基板に関するものである。」

b.「【0046】
【発明の実施の形態】図1ないし図3は、この発明の一実施形態による積層コンデンサ41を示している。ここで、図1および図2は、積層コンデンサ41の内部構造を示す平面図であり、図1と図2とは互いに異なる断面を示している。また、図3は、図1および図2に示した線III-IIIに沿う断面図である。
【0047】積層コンデンサ41は、積層される複数の誘電体層42を含むコンデンサ本体43を備えている。誘電体層42は、たとえばセラミック誘電体から構成される。
【0048】コンデンサ本体43の内部には、特定の誘電体層42を介して互いに対向する少なくとも1対の第1および第2の内部電極44および45が設けられている。この実施形態では、複数対の第1および第2の内部電極44および45が設けられている。
【0049】コンデンサ本体43の内部には、さらに、第2の内部電極45に対して電気的に絶縁されかつ第1の内部電極44に電気的に接続された状態で、特定の誘電体層42を貫通する複数の第1の貫通導体46が設けられている。また、第1の内部電極44に対して電気的に絶縁されかつ第2の内部電極45に電気的に接続された状態で、コンデンサ本体43を貫通する複数の第2の貫通導体47が設けられている。
【0050】また、コンデンサ本体43の、内部電極44および45と平行に延びる第1の主面48上には、複数の第1の貫通導体46にそれぞれ電気的に接続された状態で、個々の第1の貫通導体46にそれぞれ対応する複数の第1の外部端子電極49が設けられる。
【0051】また、コンデンサ本体43の、第1の主面48上には、複数の第2の貫通導体47にそれぞれ電気的に接続された状態で、個々の第2の貫通導体47にそれぞれ対応する複数の第2の外部端子電極51aが設けられるとともに、第1の主面48に対向する第2の主面50上には、複数の第2の貫通導体47にそれぞれ電気的に接続された状態で、個々の第2の貫通導体47にそれぞれ対応する複数の第2の外部端子電極51bが設けられる。
【0052】この実施形態では、各々複数の第1および第2の内部電極44および45が設けられ、第1および第2の内部電極44および45の各間に形成される静電容量が、第1および第2の貫通導体46および47によって並列接続され、このように並列接続された静電容量が、第1の外部端子電極49と第2の外部端子電極51aおよび51bとの間に取り出される。
【0053】上述した第1の貫通導体46と第2の貫通導体47とは、内部電極44および45を流れる電流によって誘起される磁界を互いに相殺するように配置されている。すなわち、この実施形態では、第1および第2の貫通導体46および47は、互いに隣り合うように配置され、内部電極44および45の各々を流れる電流に関して、その方向を多様化するとともに、電流長を短くし、それによって、低ESL化を図っている。」

c.「【0068】また、この実施形態による積層コンデンサ41にあっては、充電後の放電段階において、第1の貫通導体46と第2の貫通導体47とにおける図3に示した断面上での電流の流れを互いに逆方向に向けることができる。したがって、磁界が相殺され、それに応じて、低ESL化を図ることができる。」

d.「【0070】図5は、この発明の他の実施形態による積層コンデンサ41aを示す、図3に相当する図である。図5において、図3に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0071】図5に示した積層コンデンサ41aにおいては、第2の外部端子電極51aおよび51bだけでなく、第1の外部端子電極49aおよび49bについても、コンデンサ本体43の第1の主面48上および第2の主面50上の双方に位置されていることが特徴である。すなわち、第1の主面48上に第1の外部端子電極49aが形成され、第2の主面50上に第1の外部端子電極49bが形成されている。
【0072】この実施形態によれば、充電段階および放電段階の双方において、第1の貫通導体46と第2の貫通導体47とにおける図5に示した断面上での電流の流れを互いに逆方向に向けることができる。したがって、このことによる磁界の相殺効果から、低ESL化を図ることができる。」


4.本願発明と引用発明との対比
(1)まず、引用発明における「未焼成電極層125E」及び「カバーパッド129」が形成された「高誘電体セラミックグリーンシート124」(引用例1の図3(c)で上から3層目及び5層目のグリーンシート)に注目する。

(1-1)引用発明の「ビア孔124H」は、本願発明の「第1部分的スルーホール」に相当する。また、引用発明の「BaTiO_(3)粉末を主成分とする高誘電体セラミックグリーンシート124」は、「表裏面124A,124B間を貫通するビア孔124H」が形成されることによりパターン化されていることは明らかであるから、本願発明の「第1誘電体パターン層」に相当する。
したがって、引用発明の「BaTiO_(3)粉末を主成分とする高誘電体セラミックグリーンシート124の所定位置に、その表裏面124A,124B間を貫通するビア孔124Hをパンチングにより形成し」という構成は、本願発明の「第1部分的スルーホールが形成された第1誘電体パターン層を」「形成する工程」に相当する。

(1-2)引用発明の「Pdペースト」及び「未焼成ビア導体126」は、各々、本願発明の「導電性ペースト」及び「第1部分的柱状電極」に相当するから、引用発明の「各セラミックグリーンシート124のビア孔124H内に、Pdペーストを充填して未焼成ビア導体126,127,128を形成し」という構成は、本願発明の「導電性ペーストを用いて、前記第1部分的スルーホールに対応する位置に、第1部分的柱状電極を形成する工程」に相当する。

(1-3)引用発明の「Ag-Pdペースト」は、本願発明の「導電性ペースト」に相当する。
また、引用発明の「未焼成ビアパッド125E」及び「カバーパッド129」は、本願発明の「第1内部電極パターン」に相当するものである。そして、引用発明においては「未焼成ビアパッド125E」に形成された孔の内部に「カバーパッド129」が形成されることにより、両者が絶縁されることは明らかである。すなわち、引用発明においては、本願発明の「第1の絶縁孔パターン」に相当する孔パターンが形成されていることは明らかである。
さらに、引用発明の「カバーパッド129」は、図2及び図3の記載からみても、また「未焼成ビアパッド125Eあるいは125Fと接続しないビア126,127」を「積層時に確実に上下方向にビア導体同士を接触、導通させるため」に設けられるものであるという目的からみても、「未焼成ビアパッド125E」に接触しないように、かつ、未焼成ビア導体126よりも大きな径で形成されていることは明らかである。よって、該「カバーパッド129」は、本願発明の「第1孤立パターン」に相当するとともに、「前記第1部分的スルーホールの内径よりも大きくなるように、前記第1絶縁孔パターンの内部に形成され」たものであることが明らかである。
したがって、引用発明の「各シート124の上面124A側に、Ag-Pdペーストからなる所定形状の未焼成電極層125E,125Fを、一方の未焼成電極層125Eは、未焼成ビア導体126,127のうち、左右2つと接続し、中央の未焼成ビア導体126,127とは接続せず、他方の未焼成電極層125Fは、3つ形成した未焼成ビア導体126,127のうち、中央の未焼成ビア導体126,127と接続し、左右のものとは接続しないように形成し、 未焼成ビアパッド125Eあるいは125Fと接続しないビア126,127には、積層時に確実に上下方向にビア導体同士を接触、導通させるため、各未焼成ビア導体126,127の上方に、未焼成電極層125E,125Fと同時にカバーパッド129を形成し、」という構成は、本願発明の「前記第1部分的柱状電極が形成された前記第1誘電体パターン層の上で、導電性ペースト」を用いて「前記第1誘電体パターン層の上に、第1絶縁孔パターンと第1孤立パターンとを有する第1内部電極パターン層を形成する工程」という構成、及び「前記第1孤立パターンは、前記第1部分的スルーホールの内径よりも大きくなるように、前記第1絶縁孔パターンの内部に形成され、」という構成に相当する。

(2)次に、引用発明における「未焼成電極層125F」及び「カバーパッド129」が形成された「高誘電体セラミックグリーンシート124」(引用例1の図3(c)で上から2層目及び4層目のグリーンシート)に注目する。

(2-1)引用発明の「ビア孔124H」は、本願発明の「第2部分的スルーホール」に相当する。また、引用発明の「BaTiO_(3)粉末を主成分とする高誘電体セラミックグリーンシート124」は、「表裏面124A,124B間を貫通するビア孔124H」が形成されることによりパターン化されるものであることは明らかであるから、本願発明の「第2誘電体パターン層」に相当する。さらに、上記「ビア孔124H」は、その上下の層に形成された「ビア孔124H」と接続されることは明らかである。
そして、引用発明の「BaTiO_(3)粉末を主成分とする高誘電体セラミックグリーンシート124」が、積層時には「未焼成電極層125E」の上に位置することは明らかであるから、引用発明の「BaTiO_(3)粉末を主成分とする高誘電体セラミックグリーンシート124の所定位置に、その表裏面124A,124B間を貫通するビア孔124Hをパンチングにより形成し」という構成は、本願発明の「第1部分的スルーホールに接続することになる第2部分的スルーホールが形成された第2誘電体パターン層を、前記第1内部電極パターン層の上に」「形成する工程」に相当する。

(2-2)引用発明の「Pdペースト」及び「未焼成ビア導体126」は、各々、本願発明の「導電性ペースト」及び「第2部分的柱状電極」に相当するから、引用発明の「BaTiO_(3)粉末を主成分とする高誘電体セラミックグリーンシート124の所定位置に、その表裏面124A,124B間を貫通するビア孔124Hをパンチングにより形成し」という構成は、本願発明の「導電性ペーストを用いて、前記第2部分的スルーホールに対応する位置に、第2部分的柱状電極を形成する工程」に相当する。

(2-3)引用発明の「Ag-Pdペースト」は、本願発明の「導電性ペースト」に相当する。
また、引用発明の「未焼成ビアパッド125F」及び「カバーパッド129」は、本願発明の「第2内部電極パターン」に相当するものである。そして、引用発明においては「未焼成ビアパッド125F」に形成された孔の内部に「カバーパッド129」が形成されることにより、両者が絶縁されることは明らかである。すなわち、引用発明においては、本願発明の「第2の絶縁孔パターン」に相当する孔パターンが形成されていることは明らかである。
さらに、引用発明の「カバーパッド129」は、図2及び図3の記載からみても、また「未焼成ビアパッド125Eあるいは125Fと接続しないビア126,127」を「積層時に確実に上下方向にビア導体同士を接触、導通させるため」に設けられるものであるという目的からみても、「未焼成ビアパッド125F」に接触しないように、かつ、未焼成ビア導体126よりも大きな径で形成されていることは明らかである。よって、該「カバーパッド129」は、本願発明の「第2孤立パターン」に相当するとともに、「前記第2部分的スルーホールの内径よりも大きくなるように、前記第2絶縁孔パターンの内部に形成され」たものであることが明らかである。
したがって、引用発明の「各シート124の上面124A側に、Ag-Pdペーストからなる所定形状の未焼成電極層125E,125Fを、一方の未焼成電極層125Eは、未焼成ビア導体126,127のうち、左右2つと接続し、中央の未焼成ビア導体126,127とは接続せず、他方の未焼成電極層125Fは、3つ形成した未焼成ビア導体126,127のうち、中央の未焼成ビア導体126,127と接続し、左右のものとは接続しないように形成し、 未焼成ビアパッド125Eあるいは125Fと接続しないビア126,127には、積層時に確実に上下方向にビア導体同士を接触、導通させるため、各未焼成ビア導体126,127の上方に、未焼成電極層125E,125Fと同時にカバーパッド129を形成し、」という構成は、本願発明の「前記第2部分的柱状電極が形成された前記第2誘電体パターン層の上で、導電性ペースト」を用いて「前記第2誘電体パターン層の上に、第2絶縁孔パターンと第2孤立パターンとを有する第2内部電極パターン層を形成する工程」という構成、及び「前記第2孤立パターンは、前記第2部分的スルーホールの内径よりも大きくなるように、前記第2絶縁孔パターンの内部に形成され、」という構成に相当する。

(3)引用発明の「未焼成電極層125E」及び「カバーパッド129」が形成された「高誘電体セラミックグリーンシート124」における「未焼成ビア導体126」と、「未焼成電極層125F」及び「カバーパッド129」が形成された「高誘電体セラミックグリーンシート124」における「未焼成ビア導体126」とは、積層方向に接続されてコンデンサのビア導体を形成していることは明らかであるから、引用発明は、本願発明の「前記第1部分的柱状電極と前記第2部分的柱状電極とが、積層方向に接続されて、スルーホール電極となり」に相当する構成を有するものである。

(4)引用発明の「カバーパッド122」及び「カバーパッド」は、本願発明の「外部電極」に相当する。これらは、各々、積層体の下面及び上面に形成され、「未焼成ビア導体126」に接続されており、引用例1の図2から行列状に形成されることも明らかであるから、引用発明は、本願発明の「積層体における積層方向の両面に、前記部分的柱状電極に接続される外部電極を、行列状に形成し」に相当する構成を有するものである。

(5)引用発明の「一方の未焼成電極層125Eは、未焼成ビア導体126,127のうち、左右2つと接続し、中央の未焼成ビア導体126,127とは接続せず、他方の未焼成電極層125Fは、3つ形成した未焼成ビア導体126,127のうち、中央の未焼成ビア導体126,127と接続し、左右のものとは接続しないように形成し」という構成は、「未焼成電極層125E」と接続される「未焼成ビア導体126」は「未焼成電極層125F」とは接続されず、「未焼成電極層125F」と接続される「未焼成ビア導体126」は「未焼成電極層125E」とは接続されないことを意味するものである。そして、そのためには、「未焼成電極層125E」と接続される「未焼成ビア導体126」を「未焼成電極層125F」と接続させないための孔パターンと、「未焼成電極層125F」と接続される「未焼成ビア導体126」を「未焼成電極層125E」と接続させないための孔パターンとが相補的に設けられる必要があることは明らかである。したがって、引用発明は、本願発明の「前記第1絶縁孔パターンと第2絶縁孔パターンとは、相互に相補的なパターンであり、」に相当する構成を有するものである。

(6)引用発明の「コンデンサ20」は、本願発明の「積層コンデンサ」に相当する。

(7)以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、
「第1部分的スルーホールが形成された第1誘電体パターン層を形成する工程と、
導電性ペーストを用いて、前記第1部分的スルーホールに対応する位置に、第1部分的柱状電極を形成する工程と、
前記第1部分的柱状電極が形成された前記第1誘電体パターン層の上で、導電性ペーストを用いて、前記第1誘電体パターン層の上に、第1絶縁孔パターンと第1孤立パターンとを有する第1内部電極パターン層を形成する工程と、
前記第1部分的スルーホールに接続することになる第2部分的スルーホールが形成された第2誘電体パターン層を、前記第1内部電極パターン層の上に形成する工程と、
導電性ペーストを用いて、前記第2部分的スルーホールに対応する位置に、第2部分的柱状電極を形成する工程と、
前記第2部分的柱状電極が形成された前記第2誘電体パターン層の上で、導電性ペーストを用いて、前記第2誘電体パターン層の上に、第2絶縁孔パターンと第2孤立パターンとを有する第2内部電極パターン層を形成する工程と、を有し、
前記第1孤立パターンは、前記第1部分的スルーホールの内径よりも大きくなるように、前記第1絶縁孔パターンの内部に形成され、
前記第2孤立パターンは、前記第2部分的スルーホールの内径よりも大きくなるように、前記第2絶縁孔パターンの内部に形成され、
前記第1部分的柱状電極と前記第2部分的柱状電極とが、積層方向に接続されて、スルーホール電極となり、
積層体における積層方向の両面に、前記部分的柱状電極に接続される外部電極を、行列状に形成し、
前記第1絶縁孔パターンと第2絶縁孔パターンとは、相互に相補的なパターンであることを特徴とする積層コンデンサの製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、「第1誘電体パターン層」を「支持体上で、誘電体ペーストを用いて、」「印刷法により形成」し、「第1内部電極パターン層」を「前記第1誘電体パターン層の上で、導電性ペーストの印刷を行」って形成し、「第2誘電体パターン層」を「誘電体ペーストを用いて、」「印刷法により形成」し、「第2内部電極パターン層」を「前記第2誘電体パターン層の上で、導電性ペーストの印刷を行」って形成しているのに対し、引用発明においては、そのような特定をしていない点。

(相違点2)
本願発明は、「前記第1誘電体パターン層を形成する工程から、前記第2内部電極パターン層を形成する工程までの一連の工程を繰り返し行い、前記支持体の上に、複数の誘電体パターン層が積層された第1積層体を形成し、前記第1積層体を、前記支持体から引き剥がし、 複数の前記第1積層体を積み重ねて第2積層体を形成し」ているのに対し、引用発明は、そのような特定をしていない点。

(相違点3)
本願発明は、「前記第1絶縁孔パターンを通る前記スルーホール電極と、前記第2絶縁孔パターンを通る前記スルーホール電極とが、平面において相互に隣接する前記外部電極に対して接続され、 隣接する前記外部電極の相互は、異なる極性の電圧が印加されるようになっている」のに対して、引用発明は、そのような特定をしていない点。

5.相違点についての検討
(1)相違点1について
(1-1)積層セラミックコンデンサの製造において、支持体上にスルーホールが形成された誘電体層を誘電体ペーストの印刷により形成し、さらに、前記誘電体層の上に導電ペーストの印刷により電極層を形成することは、例えば、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である周知例1及び2に記載されているように、当業者における周知技術である。

a.周知例1:特開2000-222940号公報
上記周知例1には、以下の記載がある。
「【0003】セラミックス基板上にコンデンサを多数個搭載するために積層チップコンデンサが用いられているが、このコンデンサの小型化や高密度化の要求に対してコンデンサは(1)グリーンシート化してまとめて積層するグリーンシート多層法と(2)ペーストをスクリーン印刷により順々に積層する印刷多層法によって製造されている。」
「【0007】一方、電子機器の小型化に対して多層セラミックス基板の中でコンデンサを内蔵した多層セラミックス基板が開発されているが、コンデンサを内蔵する方法には、厚膜印刷法とグリーンシート積層法とがある。
【0008】グリーンシート積層法は誘電体のグリーンシートと絶縁体のグリーンシートを交互に積層するもので多層化には有利である。厚膜印刷法は絶縁体のグリーンシート上に導電ペーストで導体を形成し、ビアホールに導体を埋め込んだ後、コンデンサ形成部分に誘電体ペーストを印刷後、その上に対抗電極を印刷する。必要に応じてさらに導電体ペーストと誘電体ペーストの印刷を繰り返し、多層化し、一回で焼成を完了してコンデンサを内蔵した多層のセラミックス基板を作製するものである。
【0009】コンデンサを内蔵したセラミックス多層基板においてグリーンシート積層法あるいは印刷積層法においても誘電層間の層間接続をなすためにヴィアホールの形成が必要である。従来、ヴィアホールの形成印刷積層法においてはヴィアホールの形成のために予めパターン化されたスクリーンを用いて誘電体ペーストを、第1層配線層が形成されているセラミックス基板上に印刷し、乾燥、焼成してヴィアホールを形成するものである。この方法は工程が比較的簡単であるが、パターン形成をスクリーンによって行うためヴィアホールの形成には限界があり、100μm以下のものの形成は非常に難しく、また150μm以下のものは品質のバラツキが大きくなって歩留まりが低下し、基板コストが増加するなど大きな問題であった。」

b.周知例2:特開平10-270282号公報
上記周知例2には、以下の記載がある。
「【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の積層セラミックコンデンサでは、誘電体層と内部電極層を交互に上下に積層した積層体を有し、内部電極層を積層体の下面側から数えて奇数番目と偶数番目の2群に分けた第1内部電極層群と第2内部電極層群を各々、第1外部電極と第2外部電極に接続した積層セラミックコンデンサにおいて、第1、第2外部電極を積層体の下面に形成し、第1内部電極層群を成す各内部電極層間及び第1外部電極を積層体内に設けた層間貫通導体により共通接続し、第2内部電極層群を成す各内部電極層間及び第2外部電極を積層体内に設けた層間貫通導体により共通接続したこと、を特徴としている。
【0018】これにより、積層体を積層方向に見たときの底面側に第1、第2外部電極を設ければ良いので、多数の積層体を一体にしたバーを形成し、1つづつ積層体をカットして積層セラミックコンデンサを製造する場合、各積層体にカットする前に第1、第2外部電極を形成しておくことができ、バラバラにカットした後、積層体を一定の向きに揃え、第1、第2外部電極を形成するという面倒な作業をしなくて済む。
【0019】なお、積層体はAg、Ag-Pd等の電極ペーストを印刷して形成した電極層付のセラミック誘電体シート(グリーンシート)を多数枚積層し、熱圧着後、焼成して形成するのが一般的であるが(グリーンシート積層法)、ポリエステルフィルム等のベーステープ上に、電極層用のWまたはAgまたはAg-Pdなどの電極ペーストの厚膜印刷と、アルミナ、ガラスセラミックス、チタン酸バリウム等の誘電体粉末を主原料とする誘電体層の厚膜印刷とを交互に繰り返し、焼成することで形成しても良い(多層印刷法)。そして、例えば、グリーンシート積層法では、グリーンシートにビアホール用の穴加工をし、電極層の印刷時に一緒に穴埋めを行うか、または、電極層の印刷とは別に穴埋め印刷をすることで、層間貫通導体の一例としてのビアホールを形成することができる。多層印刷法では、誘電体層を印刷する際にビアホール用の所定の空き領域を設けておき、誘電体層の上に電極層を印刷する際に当該空き領域を一緒に埋めることで、ビアホールを形成することができる。但し、ベーステープに対しては、ビアホール用の穴加工をし、電極層の印刷時に一緒に穴埋めを行うか、または、電極層の印刷とは別に穴埋め印刷をする。」

(1-2)上記周知技術は、引用発明と同様に、積層セラミックコンデンサに関する技術であり、上記周知例1及び2において、印刷法がグリーンシート法と同列に記載される程度のものであることも考慮すれば、引用発明におけるセラミックグリーンシートを用いた積層セラミックコンデンサの製造方法に代えて、誘電体パターン層及び電極層を支持体上で順次積層する、いわゆる印刷法を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
(2-1)基板上に形成されたセラミック層と内部電極との積層体ブロック(本願発明1の「第1積層体」に相当)を前記基板から剥がした後、前記積層体ブロックを複数個積み重ねて積層セラミックコンデンサを製造することは、例えば、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である周知例3に記載されるように、当業者における周知技術である。

a.周知例3:特開昭61-253811号公報
上記周知例3には、第1?6図とともに、以下の記載がある。
「まず、シート工法では、内部電極の厚みがセラミックグリーンシートの上にそのまま載るので、多数のセラミックグリーンシートを積み重ねていくと、内部電極の厚みが重畳されて、積層体の厚みが内部電極の部分において厚くなり、全体として厚みが不均一となる。そのため、焼成後においてデラミネーションの問題が生じる。また、セラミックグリーンシートの積み重ねにおいて、ずれが生じやすく、そのため、得られた積層セラミックコンデンサの静電容量のばらつきが比較的大きくなる。また、シート工法では、セラミックグリーンシートを個々に取扱わなければならないので、その厚みをそれほど薄くすることができない。したがって、内部電極の枚数を増やそうとして、セラミックグリーンシートの積層数を増やすと、できあがった積層セラミックコンデンサの全体の厚みが増し、製品の規格からくる限定により、それほど、内部電極の枚数を多くすることができないという欠点もあった。・・・・(中略)・・・・
それゆえに、この発明は、上述した従来の工法の欠点を解消し得る、セラミックコンデンサの製造方法を提供しようとするものである。」(第2ページ右上欄第2行?右下欄第16行)
「第1図ないし第6図は、この発明の一実施例に従って積層セラミックコンデンサを得る工程を順次示したものである。これらの図は、いずれも、セラミック層および内部電極の積層の態様を示しているが、図解を容易にするため、実際のものに比べて、厚み方向には誇張されて示されていることを指摘しておく。また、積層数についても、実際の場合に比べると、少なく図示されている。
第1図に示すように、まず、たとえば樹脂シートからなる基板1上に、第1層のセラミック層2がたとえばブレードを用いた塗布法により形成される。この状態で乾燥され、次に、第2図に示すように、セラミック層2上に内部電極3が、たとえばスクリーン印刷により塗布される。そして、内部電極3の乾燥が行なわれる。さらに、第3図に示すように、第2層のセラミック層2が塗布法により形成され、乾燥される。
以後、上述したような内部電極3の塗布および乾燥、次いでセラミック層2の形成および乾燥が繰返され、所望の内部電極3の積み重ね数に達したとき、さらにセラミック層2を形成してから、得られた積層体ブロックが基板1から剥がされる。
第4図には、このようにして得られた積層体ブロック4が示されている。第4図では、内部電極3が3層積み重ねられた場合を示しているが、通常、25層程度の内部電極を有する積層体ブロックが用意される。内部電極3の積層数については、取扱いおよび作業時間を考慮したとき、30程度以下であることが好ましい。なお、内部電極の積層数の少ない積層体ブロックについては、適当に用意しておけばよい。
次に、第5図に示すように、複数の積層体ブロック4が積み重ねられる。このとき、内部電極が形成されていないセラミックからなる外層用ブロック5も用意され、積層体ブロック4の積み重ねの上と下とにそれぞれ配置される。
このようにして得られた積層体ブロック4および外層用ブロック5の積み重ねは、プレスされて圧着される。そして、第6図に拡大されて一部が示されているような、得ようとする積層セラミックコンデンサのための未焼成の積層体チップ6を得るために、第5図に示す切断線7によって切断される。
切断されて得られた積層体チップ6は、焼成され、その後、内部電極3に接続されるように、外部電極8が、積層体チップ6の各端面に形成される。
第6図において、一点鎖線で分けられた1つの領域は、1個の積層体ブロック4に対応している。第6図に示すように、或る積層体ブロック4の最も端にある内部電極3とこれに隣接する積層体ブロック4の最も端にある内部電極3とが、同じ外部電極8に接続される場合には、これら内部電極3の間の領域は、容量形成に寄与することはない。したがって、誘電体ブロック4の積み重ね工程において、多少ずれが生じても、これが容量のばらつきとして現われることはない。」(第3ページ右下欄第2行?第4ページ右上欄第18行)

(2-2)上記周知技術は、引用発明と同様に、積層セラミックコンデンサに関する技術であり、引用発明において用いられるグリーンシート法における問題点を解決するためのものであることを考慮すれば、引用発明において、上記周知技術を採用し、複数の誘電体パターン層が積層され支持体から引き剥がされた複数の第1積層体を積み重ねて第2積層体を形成する手法を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(3)相違点3について
上記3.(2)に示したとおり、引用例2には、積層コンデンサにおいて、隣接するビアホールに流れる電流を互いに逆の極性とすることでビアホール外側の磁束を相殺し、積層コンデンサのESLを低減する技術が記載されている。
引用発明と引用例2に記載された発明は、いずれもスルーホール電極を有する積層コンデンサに関するものであり、積層コンデンサのESL低減は、当業者が常に念頭に置いている課題であることを考慮すれば、引用発明において、引用例2に記載された発明を採用し、隣接するビアホールに流れる電流を互いに逆の極性とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(4)以上より、本願発明は、周知技術を勘案することにより、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、平成23年11月21日付けで通知した拒絶の理由において指摘したとおり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


6.むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶をすべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-23 
結審通知日 2012-02-28 
審決日 2012-03-13 
出願番号 特願2005-244517(P2005-244517)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小池 秀介  
特許庁審判長 北島 健次
特許庁審判官 西脇 博志
酒井 英夫
発明の名称 積層コンデンサの製造方法  
代理人 前田 均  

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