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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1255939
審判番号 不服2010-21147  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-21 
確定日 2012-04-26 
事件の表示 特願2004-146647「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月24日出願公開、特開2005-323919〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年5月17日の出願であって、平成22年6月8日付け(発送:6月22日)で拒絶査定され、これに対し、同年9月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成22年5月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。
そして、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
遊技球が入賞または通過可能な始動遊技装置と、
少なくとも所定の図柄を変動表示して確定表示するスロットゲームを実行する画像表示装置と、
遊技者にとって有利となる状態と不利となる状態とに変換可能な可変入賞装置と、
上記始動遊技装置に入賞または通過した遊技球を検出する始動遊技球検出手段と、
該始動遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づいて、上記画像表示装置が実行する上記スロットゲームの表示制御を行う制御手段と、
上記スロットゲームの結果、上記画像表示装置に確定表示された図柄が大当り図柄である場合には、上記可変入賞装置を所定の態様に変換制御して遊技者にとって有利な特別遊技を発生させる特別遊技発生手段と、
上記スロットゲームの結果、上記画像表示装置に確定表示された図柄が特定の図柄である場合には、上記特別遊技の発生に係わり遊技者にとって有利な特定遊技を発生させる特定遊技発生手段と、
を備えた遊技機であって、
上記画像表示装置は、少なくとも第1画像表示装置と第2画像表示装置とが設けられ、
該第1画像表示装置と該第2画像表示装置とで、上記特定の図柄が確定表示される確率を異なるように設定する確率設定手段を備え、
上記可変入賞装置は、少なくとも第1可変入賞装置と、上記第1可変入賞装置とは左右方向における位置が異なる第2可変入賞装置とが設けられ、
上記特別遊技発生手段は、上記特定の図柄が確定表示された場合には該第1可変入賞装置のみを、上記特定の図柄以外の大当り図柄が確定表示された場合には該第2可変入賞装置のみをそれぞれ変換制御する選別変換制御手段を備えたことを特徴とする遊技機。」


3.引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された特開2001-62080号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】図柄を変動表示可能な複数の図柄表示装置と、当該複数の図柄表示装置の各々に対応して設けられ、前記複数の図柄表示装置に確定表示された図柄が所定図柄の場合には、遊技者に有利な特定遊技状態に変換可能な個別の変動入賞口を有する遊技機において、
所定の条件の充足により特定遊技状態を生起するか否かを決定する当たり判定手段と、
前記当たり判定手段にて、特定遊技状態を生起するか否かを決定した後に、図柄の変動を開始し、所定時間経過後、図柄を前記図柄表示装置に確定表示する図柄表示制御手段と、
前記当たり判定手段が特定遊技状態を生起すると決定したときに、前記図柄表示装置に表示する当たり図柄を決定する当たり図柄決定手段と、
少なくとも一つの図柄表示装置に確定表示される図柄が当たり図柄であると決定されているか、又は、少なくとも一つの変動入賞口が遊技者に有利な特定遊技状態に変換されている場合に、その他の図柄表示装置の図柄が変動を開始するまでの時間を、その他の場合より長時間にする遅延制御手段とを備えたことを特徴とする遊技機。」
(イ)「【0009】次に、パチンコ機1の遊技盤2の機械的構造について、図1を参照して説明する。遊技盤2のガイドレール3で囲まれた略円形の遊技領域4内の左側には、3桁の7セグメントのLED(発光ダイオード)表示装置を備えた左特別図柄表示装置8が設けられ、その左特別図柄表示装置8の右隣にも、3桁の7セグメントのLED表示装置を備えた右特別図柄表示装置9が設けられている。また、左特別図柄表示装置8の左上方には電飾風車10が設けられ、右特別図柄表示装置9の右上方にも電飾風車11が設けられている。さらに、左特別図柄表示装置8の直下には左特別図柄始動ゲート12が設けられ、右特別図柄表示装置9の直下にも右特別図柄始動ゲート13が設けられている。
【0010】また、左特別図柄始動ゲート12の直下には、普通入賞口14が設けられており、右特別図柄始動ゲート13の直下にも、普通入賞口15が設けられている。さらに、右特別図柄始動ゲート13の右横には、後述する右大入賞口17を開閉するための始動口を備えた回転体16が設けられ、回転体16の直下には、開閉部材を備えた右大入賞口17が設けられている。また、普通入賞口14の直下には開閉蓋を備えた左大入賞口18が設けられ、普通入賞口15の直下には、前記右大入賞口17を開閉させるための権利を取得するための遊技球の停留部を内部に備えた電動役物19が設けられている。
【0011】また、左大入賞口18の左上方には、普通入賞口20が設けられ、遊技領域4の最下部には、いずれの入賞口にも入賞しなかった遊技球を回収するアウト口21が設けられている。このパチンコ機1は、上記の説明でも分かるように遊技領域4の左半分が第1種の遊技機(以下、「左側装置4a」という。)となっており、また、遊技領域4の右半分が第3種の遊技機(以下、「右側装置4b」という。)となっている所謂複合機である。」
(ウ)「【0013】次に、左特別図柄表示装置8及び右特別図柄表示装置9の構造を説明する。左特別図柄表示装置8は、3桁の7セグメントLEDからなる表示部で、3桁の7セグメントLEDの左から、第1停止図柄表示部、第3停止図柄表示部、第2停止図柄表示部となっており、この左特別図柄表示装置8の3桁の7セグメントLEDに変動表示される数字は、左、右、中の順で停止するようになっている。また、右特別図柄表示装置9も、3桁の7セグメントLEDからなる表示部で、3桁の7セグメントLEDの左から、第1停止図柄表示部、第3停止図柄表示部、第2停止図柄表示部となっており、この右特別図柄表示装置9の3桁の7セグメントLEDに変動表示される数字も、左、右、中の順で停止するようになっている。なお、上記左特別図柄表示装置8及び右特別図柄表示装置9は、7セグメントLEDに限られず、液晶表示装置、CRT、ドットマトリクスLED等の各種の画像表示装置が使用可能であることは言うまでもない。
【0014】上記左特別図柄表示装置8及び右特別図柄表示装置9の第1停止図柄表示部、第2停止図柄表示部、第3停止図柄表示部に各々表示される図柄の一例としては、数字の「0,1,2,3,4,5,6,7,8,9」の10種類があり、左特別図柄始動ゲート12を遊技球が通過して、左特別図柄表示装置8の第1停止図柄表示部、第2停止図柄表示部、第3停止図柄表示部の3つの図柄が特定の同じ数字で揃った場合(例えば、「7」が3つ揃った場合)には、左側装置4aが当たりとなり、また、右特別図柄始動ゲート13を遊技球が通過して、右特別図柄表示装置9の第1停止図柄表示部、第2停止図柄表示部、第3停止図柄表示部の3つの図柄が特定の同じ数字で揃った場合には、右側装置4bが当たりとなる。
【0015】また、前記10図柄の内、「1,3,5,7,9 」を確率変動図柄(特定当たり図柄)とし、これらの内の何れかの図柄が第1停止図柄表示部、第2停止図柄表示部、第3停止図柄表示部に同じ図柄で揃った場合には、確率変動突入とし、次の当たりを引く確率を高くするように変更する。当たりの確率は、一例としては、通常状態では、359分の1であり、確率変動状態では、89.75分の1であるが、必ずしもこの値に限られるものではない。なお、「0,2,4,6,8」を非確率変動図柄(非特定当たり図柄又は通常図柄)とする。」
(エ)「【0029】左特別図柄始動ゲート12を遊技球が通過した場合は、4個まで、入賞数がRAM45の左特別図柄始動入賞数記憶エリア45dに記憶され、所謂、保留状態になる。また、右特別図柄始動ゲート13を遊技球が通過した場合は、4個まで、入賞数がRAM45の右特別図柄始動入賞数記憶エリア45eに記憶され、保留状態になる。
【0030】また、左特別図柄始動ゲート12を遊技球が通過した場合は、左特別図柄始動ゲート12に設けられている左始動口スイッチ52が遊技球の通過を検出し、ループカウンタ記憶エリア45aに記憶されている当たり判定用ループカウンタLC1、特別図柄作成カウンタLC2,LC3,LC4、リーチ判定カウンタLC5、リーチパターン決定カウンタLC6の値をRAM45の左特別図柄乱数記憶エリア45bに記憶する。また、右特別図柄始動ゲート13を遊技球が通過した場合は、当該右特別図柄始動ゲート13に設けられている右始動口スイッチ53が遊技球の通過を検出し、ループカウンタ記憶エリア45aに記憶されている当たり判定用ループカウンタLC1、特別図柄作成カウンタLC2,LC3,LC4、リーチ判定カウンタLC5、リーチパターン決定カウンタLC6の値をRAM45の右特別図柄乱数記憶エリア45cに記憶する。」
(オ)「【0036】次いで、この条件装置処理(S11)では、右大入賞口17、左大入賞口18の開放、閉鎖、左特別図柄表示装置8、右特別図柄表示装置9のLEDへの当たりデモ表示処理等が行われる。一巡目の処理では、後述する特別図柄処理(S12)での当たり判定処理がまだ行われていないので、条件装置処理(S11)では、何も行われず次の処理に進む。次いで、特別図柄処理(S12)が行われる。この特別図柄処理(S12)では、後述する図柄変動許可判定処理、当たり判定処理、遊技状態判定処理、図柄変動開始処理が行われる。
【0037】なお、特別図柄処理(S12)が終了すると、次に、賞品球の払い出しを行う払出制御(S13)が行われ、枠ランプ制御(S14)を経てメインルーチンの処理が終了する。なお、このメインルーチンの処理は各サブルーチンの処理を含めて、2ms以内に終了する。そして、リセット回路57からのリセット信号により、CPU44aは、図5に示すメインルーチンの処理を、スタートから繰り返し行う。従って、図5に示すメインルーチンの処理が、2ms単位で繰り返されていることになる。先の一巡目のメインルーチンの処理の特別図柄処理(S12)で当たり状態と判定されれば、RAM45の左当たりフラグ記憶エリア45g又は右当たりフラグ記憶エリア45hに「1」が記憶され、当たりフラグがONし、次の二巡目の条件装置処理(S11)では、右大入賞口17、左大入賞口18の開放、閉鎖の動作が所定回数(例えば、16回等)行われる。
【0038】なお、上記のパチンコ機1は、遊技盤2の下側に設けられた発射ハンドル7を操作することによって、遊技球を遊技領域4に打ち込めるようになっており、その遊技球が右大入賞口17、左大入賞口18に入賞した場合には、例えば、15個の賞品球を、その他の入賞口に入賞した場合には、例えば、5個の賞品球を、賞品球払出装置49により払い出すようになっている。なお、右側装置4bは、第3種の遊技機であるため、右特別図柄表示装置9に同じ数字が揃って当たり状態になったときには、まず、電動役物19が略5秒間開放されるので、電動役物19の中央部に設けられている停留部に遊技球を1個停留する。すると、右Vスイッチ55が、遊技球を検出して、権利が発生する。次いで、回転体16の上部に遊技球を1個乗せると回転体16の回転に伴って、遊技球が回転体16の入賞口に入賞して、回転体入賞スイッチ61により検出される、右大入賞口開放ソレノイド51が起動して、右大入賞口17が略20秒間開放される。なお、右カウントスイッチ65が右大入賞口17への遊技球の入賞を10個カウントした場合には、右大入賞口17は閉鎖される。」
(カ)「【0043】以上の処理が終了すると、ループカウンタ更新処理(S9)を経てS10に進む。通常時はパチンコ機1にエラーが発生していないので(S10:NO)、条件装置処理(S11)に進むが、まだ、当たりの判定がなされていないので、条件装置処理(S11)では何もされず、特別図柄処理(S12)を行う。

(段落【0043】?【0055】は全文引用)

【0055】なお、上記の図柄変動中フラグは、図柄の変動の停止時にクリアされ、また、左変動前ディレーフラグ記憶エリア45qの変動前ディレーフラグは、右側装置4bの当たり動作の終了時にクリアされる。」
(キ)「【0068】以上説明したように、本実施例では、右側装置4b又は左側装置4aの何れか一方の装置の当たり判定処理を行うときに、遊技領域4に設けられている他の装置(左側装置4aの判定を行っているときは右側装置4b、右側装置4bの判定を行っているときは左側装置4a)が当たりの図柄を表示しているか(当たりになったか)又は、当たり動作をしているかを判断して、もし他の装置が上記の状態になっているならば、現在当たり判定を行っている装置側の当たり判定処理や図柄の変動開始を遅らせるようにしているので、複合機において、当たりが同時に発生することを防止することができる。
【0069】上記の実施例は、遊技機の一例としてパチンコ機を用いて説明したが、本発明は、パチンコ機に限らず、パチコン機、パチスロ機等に転用可能であることはいうまでもない。また、上記の実施例では、第1種の遊技機と第3種の遊技機を組み合わせているが、第1種の遊技機と第2種の遊技機を組み合わせても良い。また、第2種と第3種とを組み合わせても良い。さらに、同一の種類の遊技機を組み合わせても良い。また、遊技機の組み合わせは、2つに限られず、3つ、4つ等の複数の遊技機を組み合わせることもできる。また、上記の実施例では、左側装置4aと右側装置4bとで、当たり判定用ループカウンタLC1、特別図柄作成カウンタLC2,LC3,LC4、リーチ判定カウンタLC5、リーチパターン決定カウンタLC6を共用していたが、右側装置4bと左側装置4aとで個別に各ループカウンタを設けても良い。また、当たりの確率は、右側装置4bと左側装置4aとで異なるようにしても良い。」

以上、(ア)ないし(キ)の記載、および図面(特に、図1、図5、図8ないし図11を参照)を総合すると、引用例1には、以下の発明が開示されていると認めることができる。
「1 同一の遊技領域内に図柄を変動表示可能な複数の図柄表示装置と、当該複数の図柄表示装置の各々に対応して設けられ、前記複数の図柄表示装置に確定表示された図柄が所定図柄の場合には、遊技者に有利な特定遊技状態に変換可能な個別の変動入賞口を有し、所定の条件の充足により特定遊技状態を生起するか否かを決定する当たり判定手段と、前記当たり判定手段にて、特定遊技状態を生起するか否かを決定した後に、図柄の変動を開始し、所定時間経過後、図柄を前記図柄表示装置に確定表示し、少なくとも一つの図柄表示装置に確定表示される図柄が当たり図柄であると、少なくとも一つの変動入賞口が遊技者に有利な特定遊技状態に変換される、パチンコ機等の遊技機である。
2 遊技領域4内の左側には、3桁の7セグメントLED表示装置を備えた左特別図柄表示装置8が設けられ、当該左特別図柄表示装置8の直下に左特別図柄始動ゲート12が、さらにその下方に変動入賞口である左大入賞口18が設けられて「左側装置4a」を構成しており、また、遊技領域4内の右側に、3桁の7セグメントLED表示装置を備えた右特別図柄表示装置9が設けられ、右特別図柄表示装置9の直下に右特別図柄始動ゲート13が、さらにその下方に電動役物19および右大入賞口17が設けられて「右側装置4b」を構成している。
3 左特別図柄始動ゲート12を遊技球が通過した場合、左始動口スイッチ52が遊技球の通過を検出して当該遊技球の通過に対応する当たり判定用カウンタの値等を記憶し、当該当たり判定用カウンタの値に応じて、左側装置4aの当たりを判定する。左側装置4aが当たりの場合、右側装置4bの動作状態(当たりの図柄を表示しているか、当たり動作をしているか)に応じて左特別図柄表示装置8の変動開始を遅らせるか、又は変動を開始させ、左特別図柄表示装置8の変動開始後、当たりの図柄で停止表示されると、当たりとなり、左側大入賞口18の開放、閉鎖の動作が所定回数行われる。
4 前記左特別図柄表示装置8に当たりの図柄として「0,2,4,6,8」の数字の3つ揃い(通常図柄)が表示されると、通常の当たりとなり、「1,3,5,7,9」の数字の3つ揃い(特定当たり図柄)が表示されると、確率変動突入の当たりとなる。
5 左側装置と右側装置は、同一の種類の遊技機を組み合わせても良い。また、当たりの確率は左側装置と右側装置とで異なるようにしても良い。」
(以下、この発明を「引用発明1」という。)

また、原査定の拒絶の理由において引用文献3として引用された特開2003-340010号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ク)「【0007】図1を参照し、パチンコ機の遊技制御装置について説明する。遊技制御装置は遊技盤1、一般入賞部品2、普通図柄始動入賞部品3、特別図柄始動入賞部品4、可変入賞部品5、普通図柄表示器6、特別図柄表示器7、センター飾り8、アウト口9、一般入賞球検出器10、普通図柄始動入賞球検出器(普図始動入賞球検出器)11、特別図柄始動入賞球検出器(特図始動入賞球検出器)12、羽根駆動源13、第1開閉駆動源14、第2開閉駆動源15および制御装置16を備える。一般入賞部品2、普通図柄始動入賞部品3、特別図柄始動入賞部品4、可変入賞部品5、普通図柄表示器6、特別図柄表示器7、センター飾り8、アウト口9などの遊技部品はパチンコ機の遊技主体である遊技盤1の前面である意匠盤面のガイドレール21で囲まれた内側の遊技領域22に設けられる。」
(ケ)「【0009】可変入賞部品5は遊技領域22から入賞した球を遊技盤1の裏側に排出する取込形であって、遊技領域22と直交する方向の前後方向に開閉する複数の扉と呼ばれる開閉体24;25を上下に有するアタッカーや大入賞口と呼ばれる形態になっている。可変入賞部品5は開閉体24;25が閉じた場合に遊技領域22から球が入賞することはなく、開閉体24;25が開いた場合にだけ遊技領域22から球が入賞する可能性のある形態である。可変入賞部品5は、本実施形態では、確率変動が発生する場合は上側の開閉体24を開閉し、確率変動が発生しない場合に下側の開閉体25を開閉するというように、上下の開閉体24;25の動きで確率変動の未発生と発生とを遊技者に報知する可動部品である。」
(コ)「【0014】具体的には、コンピューターが特別図柄始動入賞に伴う当たり外れや確率変動有無などの抽選を行った結果として確率変動有を抽選した場合、確率変動判定手段26は確率変動有抽選結果に基づき次回または次回から数回まで特別図柄合わせ遊技に対する当たりの発生する確率が高くなる確率変動の発生したことを遊技者に報知すべく第1開閉駆動源14を制御し、また、コンピューターが特別図柄始動入賞に伴う当たり外れや確率変動有無などの抽選を行った結果として確率変動無を抽選した場合、確率変動判定手段26は確率変動無抽選結果に基づき次回以降も特別図柄合わせ遊技に対する当たりの発生する確率は通常であることを遊技者に報知すべく第2開閉駆動源15を制御する。」
(サ)「【0019】また、遊技領域22に発射された球が特別図柄始動入賞部品4に入賞し、特別図柄始動入賞球検出器12から特別図柄始動入賞検出信号が制御装置16に入力されると、制御装置16が特別図柄始動入賞検出信号に基づく賞球払出処理および特別図柄合わせ遊技処理を開始する。賞球払出処理により制御装置16が遊技機枠の裏側に設けられた図外の球払出機構を駆動し、球払出機構が所定数の賞球を遊技機枠の前側に設けられた図外の皿装置に払い出す。特別図柄合わせ遊技処理の開始により制御装置16は特別図柄抽選処理、特別図柄抽選処理の結果による特別図柄変動処理、抽選処理の結果による当たり処理を実行する。特別図柄抽選処理では制御装置16での特別図柄始動入賞検出信号の入力タイミングにより特別図柄変動に対する当たり外れおよび確率変動有無抽選を実行し、その抽選結果を記録する。特別図柄変動処理では制御装置16が特別図柄表示器7を次のように駆動する。
【0020】特別図柄抽選結果として当たりが記憶されている場合、制御装置16が特別図柄表示器7の図柄変動を開始した後に当たり図柄に揃うように停止する(特別図柄表示器7に停止表示された確定特別図柄が当たり図柄となる)。特別図柄抽選結果として外れが記憶されている場合、制御装置16が特別図柄表示器7の図柄変動を開始した後に外れ図柄に揃うように停止する(特別図柄表示器7に停止表示された確定特別図柄が外れ図柄となる)。特別図柄合わせ遊技での当たり処理は抽選処理の結果として当たりが決定された場合だけ、特別図柄表示器7による図柄変動の停止後に制御装置16が実行する。とりわけ、前記特別図柄抽選結果として当たりが記憶されている場合だけ、確率変動有または確率変動無のいずれかが記憶されている。
【0021】よって、特別図柄合わせ遊技での当たり処理において、確率変動有が決定されている場合は特別図柄表示器7の確定図柄が当たり図柄に揃った後に制御装置16が第1開閉駆動源14を制御し、第1開閉駆動源14が特別図柄始動入賞部品4の上側の開閉体24を所定時間または所定回数に開閉する。特別図柄合わせ遊技での当たり処理において、確率変動無が決定されている場合は特別図柄表示器7の確定図柄が当たり図柄に揃った後に制御装置16が第2開閉駆動源15を制御し、第2開閉駆動源15が特別図柄始動入賞部品4の下側の開閉体25を所定時間または所定回数に開閉する。」

以上、(ク)ないし(サ)の記載、および図面を総合すると、引用例3には、以下の発明が開示されていると認めることができる。
「1 遊技領域22内に、特別図柄始動入賞部品4、特別図柄表示器7、可変入賞部品5等が設けられている。
2 可変入賞部品5は、遊技領域22と直交する方向の前後方向に開閉する複数の扉と呼ばれる開閉体24;25を上下に有するアタッカーや大入賞口と呼ばれる形態になっており、上側開閉体24および下側開閉体25のどちらも閉じた場合に遊技領域22から球が入賞することはなく、上側開閉体24または下側開閉体25のいずれかが開いた場合にだけ遊技領域22から球が入賞する可能性のある形態となっている。
3 特別図柄始動入賞部品4に遊技球が入賞すると、特別図柄合わせ遊技処理を開始し、当たり外れ、および確率変動有無を抽選して、その抽選結果を記憶する。
4 当たりが記憶されている場合、特別図柄表示器7の図柄変動を開始した後、当たり図柄が揃うように停止させ、当たり処理を行う。
5 特別図柄合わせ遊技処理での当たり処理において、確率変動有が記憶されている場合は、前記上側開閉体24が所定時間あるいは所定回数開閉し、確率変動無が記憶されている場合は、前記下側開閉体25が所定時間あるいは所定回数開閉する。」
(以下、この発明を「引用発明3」という。)


4.対比
引用発明1と本願発明を対比する。
引用発明1の「左特別図柄始動ゲート12」、「左特別図柄表示装置8」、「左大入賞口18」、「左始動口スイッチ52」は、それぞれ本願発明の「遊技球が入賞または通過可能な始動遊技装置」、「少なくとも所定の図柄を変動表示して確定表示するスロットゲームを実行する画像表示装置」、「遊技者にとって有利となる状態と不利となる状態とに変換可能な可変入賞装置」、「始動遊技装置に入賞または通過した遊技球を検出する始動遊技球検出手段」に相当する。
引用発明1は、左始動口スイッチ52で遊技球を検出すると、左特別図柄表示装置での図柄の変動を行うものであるから、引用発明1と本願発明は、「始動遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づいて、上記画像表示装置が実行する上記スロットゲームの表示制御を行う制御手段」を備えた点で一致している。
引用発明1において、当たりとなった後に左大入賞口18を開閉する遊技、当たりとなった後に確率変動突入する遊技は、それぞれ本願発明の「特別遊技」、「特定遊技」に相当するから、引用発明1において「当たりの図柄として「0,2,4,6,8」の数字の3つ揃い(通常図柄)が表示されると、通常の当たりとなる」ことは、本願発明の「スロットゲームの結果、上記画像表示装置に確定表示された図柄が大当り図柄である場合には、上記可変入賞装置を所定の態様に変換制御して遊技者にとって有利な特別遊技を発生させる」ことに相当し、また、引用発明1において「当たりの図柄として「1,3,5,7,9」の数字の3つ揃い(特定当たり図柄)が表示されると、確率変動突入の当たりとなる」ことは、本願発明の「スロットゲームの結果、上記画像表示装置に確定表示された図柄が特定の図柄である場合には、上記特別遊技の発生に係わり遊技者にとって有利な特定遊技を発生させる」ことに相当する。
そして、引用例1には、同一の遊技領域内に設けられる左側装置と右側装置について「同一の種類の遊技機を組み合わせても良い」と記載されているから、引用発明1と本願発明は実質的に、「画像表示装置は、少なくとも第1画像表示装置と第2画像表示装置とが設けられ」る点、「可変入賞装置は、少なくとも第1可変入賞装置と、上記第1可変入賞装置とは左右方向における位置が異なる第2可変入賞装置とが設けられ」る点で共通している。

以上のことから、引用発明1と本願発明は、
<一致点>
「遊技球が入賞または通過可能な始動遊技装置と、
少なくとも所定の図柄を変動表示して確定表示するスロットゲームを実行する画像表示装置と、
遊技者にとって有利となる状態と不利となる状態とに変換可能な可変入賞装置と、
上記始動遊技装置に入賞または通過した遊技球を検出する始動遊技球検出手段と、
該始動遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づいて、上記画像表示装置が実行する上記スロットゲームの表示制御を行う制御手段と、
上記スロットゲームの結果、上記画像表示装置に確定表示された図柄が大当り図柄である場合には、上記可変入賞装置を所定の態様に変換制御して遊技者にとって有利な特別遊技を発生させる特別遊技発生手段と、
上記スロットゲームの結果、上記画像表示装置に確定表示された図柄が特定の図柄である場合には、上記特別遊技の発生に係わり遊技者にとって有利な特定遊技を発生させる特定遊技発生手段と、
を備えた遊技機であって、
上記画像表示装置は、少なくとも第1画像表示装置と第2画像表示装置とが設けられ、
上記可変入賞装置は、少なくとも第1可変入賞装置と、上記第1可変入賞装置とは左右方向における位置が異なる第2可変入賞装置とが設けられた遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明は、「第1画像表示装置と第2画像表示装置とで、上記特定の図柄が確定表示される確率を異なるように設定する確率設定手段を備えた」ものであるのに対し、
引用発明1は、上記構成を備えていない点。
<相違点2>
本願発明は、「特別遊技発生手段は、特定の図柄が確定表示された場合には第1可変入賞装置のみを、上記特定の図柄以外の大当り図柄が確定表示された場合には第2可変入賞装置のみをそれぞれ変換制御する選別変換制御手段を備えた」ものであるのに対し、
引用発明1は、上記構成を備えていない点。


5.判断
<相違点1>について
本願発明において「第1画像表示装置と第2画像表示装置とで、特定の図柄が確定表示される確率を異なるように設定する」の意味は、「第1画像表示装置と第2画像表示装置とで、確定表示される確率が異なるのは『少なくとも特定の図柄』である」とも、「第1画像表示装置と第2画像表示装置とで、確定表示される確率が異なるのは『特定の図柄のみ』である」とも解釈できるが、一応後者の意味に解釈する。
引用例1(段落【0069】参照)には、左側装置と右側装置について「同一の種類の遊技機を組み合わせても良い。」という記載があり、また「当たりの確率は左側装置と右側装置とで異なるようにしても良い。」という記載がある。
そして、上記引用例1の記載および左側装置の動作、並びに「当たりの確率」は「当たり図柄が確定表示される確率」と同じことであることを鑑みれば、引用例1には、左右の画像表示装置に当たり図柄が表示されるものにおいて、当該左右の画像表示装置で、当たり図柄が確定表示される確率を異ならせることが開示されているといえる。
ところで、引用例1でいう当たり図柄とは、通常図柄と特定当たり図柄の両方であるから、引用例1に開示されているのは、左右の画像表示装置で、通常図柄と特定当たり図柄の両方を含む当たり図柄が確定表示される確率を異なるようにすることであるところ、これを、左右の画像表示装置で、特定当たり図柄のみが確定表示される確率を異なるようにする程度のことは容易に想到できると認められる。
したがって、相違点1に係る事項は、当業者が容易に想到できたと認められる。
<相違点2>について
引用例1には、左大入賞口(第1可変入賞装置)と、この左大入賞口の右側に右大入賞口(第2可変入賞装置)が設けられたものが開示されているといえるが、この装置ついては、左大入賞口と右大入賞口は、当たり図柄が確定表示されたことに基づいて個別に開閉されるものである。
一方、引用例3には上記した引用発明3が開示されており、当該発明から、2つの大入賞口を異なった位置に配置した遊技機において、確率変動当たりの場合は一方の大入賞口のみを開閉させ、普通当たりの場合は他方の大入賞口のみを開閉させるという技術思想が読み取れる。
してみると、引用発明1における左右に設けられた大入賞口(本願発明の第1可変入賞装置と第2可変入賞装置に対応するもの)について、確率変動当たりの場合(特定の図柄が確定表示された場合)には一方の大入賞口のみを、普通当たりの場合(特定の図柄以外の大当り図柄が確定表示された場合)には他方の大入賞口のみをそれぞれ開閉(変換制御)させるように換えることは、引用発明3から当業者が容易に想到できたと認められる。

なお請求人は、「相違点1と相違点2は、その両者が組み合わされることにより、1.スロットゲームがどちらの画像表示装置で行われているかに基づき、その後どちらの可変入賞装置が変換制御されそうかを遊技者に予測させることができる、2.その予測が当たる場合/外れる場合に応じて、遊技者は適切な遊技を行う必要があり、遊技の意外性が増す、という相乗効果を奏する」旨主張している。
しかしながら、請求人の主張する上記作用効果は、相違点1および相違点2に係る事項より奏される個別の効果を越えるものでなく、格別のものと認めることはできない。


6.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明1および引用発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-14 
結審通知日 2012-02-21 
審決日 2012-03-05 
出願番号 特願2004-146647(P2004-146647)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤脇 昌也  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 秋山 斉昭
瀬津 太朗
発明の名称 遊技機  
代理人 足立 勉  

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