• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04Q
管理番号 1255950
審判番号 不服2011-2226  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-31 
確定日 2012-04-26 
事件の表示 特願2008-143547「電子装置、外部接続電子機器、外部接続電子機器の適合性識別方法、および、識別用信号変換方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月10日出願公開、特開2009-290772〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年5月30日の出願であって、平成22年10月29日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成23年1月31日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、当審により平成23年12月2日付けで拒絶理由を通知し、平成24年1月25日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明について
本願請求項1?8に係る発明は、平成24年1月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
外部接続端子に接続される外部接続電子機器に関し該接続を行って用いる場合における所定の適合性を有するか否かの識別を実行可能に構成された電子装置であって、
該識別に適用する第一の識別用信号を発生する識別用信号発生器と、
前記外部接続端子に接続された当該外部接続電子機器に前記外部接続端子を通して前記識別用信号発生器から発生した当該第一の識別用信号を送出する第一の識別用信号送出手段と、
前記第一の識別用信号送出手段から送出された当該第一の識別用信号に対し、当該外部接続電子機器に設けられた識別用信号変換手段で所定の信号変換(但し、暗号化技術による信号変換を除く)が施されて形成された第二の識別用信号を受信する第二の識別用信号受信手段と、
前記第二の識別用信号受信手段で受信された当該第二の識別用信号が当該第一の識別用信号に対して前記識別用信号変換手段で正規の信号変換が施されて形成された形態を成しているか否かに基づいて当該外部接続電子機器が前記適合性を有するか否かの識別をする適合性識別手段と、を備え、前記第一の識別用信号送出手段から送出された前記第一の識別用信号に対し、前記外部接続電子機器に設けられた前記識別用信号変換手段で前記信号変換が施されて形成された前記第二の識別用信号を前記外部接続電子機器から前記第二の識別用信号受信手段で受信することにより、前記外部接続電子機器と自装置との間で信号が往復した後、前記適合性識別手段において前記適合性を有するか否かの識別をするようにしたことを特徴とする電子装置。」(下線は請求人が付与。)

3.引用文献
当審において、平成23年12月2日付けで通知した拒絶理由に引用した特開平9-148958号公報(以下、「引用文献」と言う。)には、図面と共に、次のような記載がある。(下線は、当審が付与。)

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、アンテナ及び無線装置に関する。無線局の中には、無免許で運用でき、利用者がアンテナを着脱することを法的に認められている無線局がある。日本にもそのような無線局は多くはないが存在し、米国の場合は無許可で運用可能な無線局は着脱可能なものが多い。アンテナが着脱可能であることは、破損時の交換が容易なだけでなく、複数の(認可された)アンテナの中から、利用者が用途に適したものを選定して利用可能になること、アンテナの設置時に自由度が大きいこと等、利用者の利便性が高いことから、今後は着脱を法的に認めた無線局が増加して行くものと考えられる。しかし、アンテナを着脱可能とした場合、上記した利便性がある反面、無線機本体に適合しない(法的に認可されていない)大きな指向性利得を有したアンテナが、利用者によって意図的に利用されると、その無線局だけが大きな送信電界強度を得ることができ、他の無線局に混信や妨害を与える問題がある。
【0002】
【従来の技術】そのため、従来よりアンテナと無線機本体を接続するコネクタに、機械的に特殊な互換性のないものを用いることにより、不適合なアンテナの利用を防止することが実施されてきており、例えば米国のFCC(Federal Communication Comission)ではその§15.203において、これを義務付けており、標準的なアンテナジャック及び電気的コネクタの使用を禁止している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記したように特殊なコネクタを用いる場合、コスト上昇を招く問題があり、特に少量しか生産しない無線機本体及びアンテナにおいては、コスト上昇が非常に大きくなる問題がある。そしてこのコスト上昇分は不適合アンテナを使用することのない無線局の利用者には何らの利益ももたらさないものであるという問題点がある。またこのコスト上昇を抑えるために、一般の部品販売店の店頭では購入不可能で専門業者からは購入可能なコネクタを使用することも考えられるが、この場合は、不適合なアンテナを使用することの防止効果が薄れる問題がある。本発明は上記した従来の問題点を解決するためになされたもので、機械的に特殊なコネクタを用いる方法に代えて、コスト上昇を大幅に抑え、なおかつ不適合アンテナ使用の防止効果が十分であるアンテナ及び無線装置を提供することを目的とする。また特性の異なる複数の適合アンテナを選択して利用する場合に、アンテナの特性に応じて無線機本体の動作を変えることを可能とするような、アンテナ識別システムを提供することを目的とする。」

(イ)「【0005】
【発明の実施の形態】図1により本発明の一実施形態を説明する。図1においては1はアンテナ、2は無線装置本体であって、アンテナ1は無線機本体2に脱着可能になっている。アンテナ1において、アンテナエレメント10にはC1を介してR1、L1が接続され、またケーブル3及びコネクタ4により無線機本体2と接続されている。20は送受信装置で、RF IN/OUTは送受信信号端子、TXENは送信をイネーブル(動作可能)にする入力端子である。+Vccには直流電源が接続され、R2→L2→ケーブル3→R1→L1の経路で直流電流I1が流されるようになっている。そして差動増幅器21により、R2の両端に発生した電圧V2を検出するようになっている。差動増幅器21の出力は電圧比較器22に入力し、ここで表1のように出力(OUT)信号を送受信装置20に送るようになっている。表からわかるようにVinがVth1以下で、なおかつVth2以上である場合のみ出力がTRUE(真)となるようになっている。
【0006】上記回路の各値は、一例として以下のように設計される。まず、R1の値としては、ケーブル3の直流抵抗やコネクタ4の接触抵抗、及びL1,L2の直流抵抗成分等の残留直流抵抗成分に対して十分に大きな値が選ばれる。ここでは一例として1kΩとする。R2の値もまた同じように選ばれ、一例として同じ1kΩとする。+Vccは一例として+5Vとする。I1は残留直流抵抗成分を無視して、
I1=Vcc/(R1+R2)=5/(1000+1000)=2.5mA
となる。したがって、V2は、
V2=R2 × I1=2.5V
となる。差動増幅器21の増幅度を1(0db)とすると、電圧比較器22のOutがTRUEになるべきVinは2.5Vとなる。したがって、Vth1はこの値よりわずかに大きな値、例えば3Vに、Vth2はわずかに小さな値、例えば2Vに選ばれる。
【0007】以上のように諸値を設定しておいた場合、R2≒1kΩを有するアンテナ1が無線機本体2に接続されると、送受信装置20のTXENにTRUE信号が送られ電圧比較器22が動作可能となる。アンテナ1がR2≒1kΩを有しない場合には、電圧比較器22からはFALSE信号のみが出力され、送受信装置20は動作可能にならない。これにより、適合しないアンテナによる無線装置の使用を防止できる。
【0008】なお、L1,L2はR1がアンテナの輻射効率に影響するのを防止するための高周波成分の阻止に、C1はアンテナを手で触れる等による測定結果への影響の防止に、C2は、本発明に使用する直流電圧が他の回路へ影響するのを防止するために用いられており、これらは周辺回路構成やアンテナの特性によっては、不要になったり、あるいは接続箇所を変える必要が生じるが、これは一般的な回路技術の範囲内での設計変更である。また、直流抵抗を測定する回路構成は、記載されたもの以外にも、通常の電気的知識の範囲で様々な変形が可能である。」

(ウ)「【0010】図2において差動増幅器21の出力側にA/D変換器30が接続され、更にA/D変換器30の出力がマイクロコンピュータ31に接続されている。またマイクロコンピュータ31の制御用出力は、送受信装置20のTXENと送信電力制御用のD/A変換器32に接続されている。なお、A/D変換器30やD/A変換器32はマイクロコンピュータに内蔵させることも可能である。この実施形態では差動増幅器21でR2の両端に発生した電圧を検出するまでは、図1の実施形態と同じである。ここでは、V2をA/D変換器30でデジタル信号に変え、マイクロコンピュータ31のソフトウエアで電圧を判定して、D/A変換器32への出力データを決定するようになっている。D/A変換器32は送受信装置20のPCONT入力に接続されており、図3に示すように、PCONT入力に与える電圧によって送信部201の高周波出力電力が可変できるように構成されている。図3において、202は高周波スイッチ、203は電力増幅器、204は電圧制御アッテネータである。」

(エ)「【0015】図5に更にセキュリティーを向上させた他の実施形態を示す。図1の実施形態では、無線局の利用者が、本システムの基本動作を知っていれば、例えば市販の安価なテスターを利用してアンテナの直流抵抗を測定し、不適合アンテナに、測定した値の抵抗器を内蔵することによって、不適合アンテナを利用可能とすることができる。この実施形態では、アンテナの直流抵抗を時変(時間と共に変化すること)とすることにより、そのような行為を未然に防止するようにしたものである。図5において、図2と同一のものには同一の符号を付してあり、同一のものについては説明を省略する。アンテナ1に半導体を利用したスイッチング回路(抵抗RB,コンデンサCB及びトランジスタQ3)が設けられており、無線機本体2のマイクロコンピュータ31に+Vccの印加開始時間を基準にして時間を測定するタイマ33が備えられている。また、+Vccにスイッチ34が接続されている。マイクロコンピュータ31におけるV2の判定は、この測定された時間と同期しており、かつV2の判定が、異なる判定電圧によって少なくとも2回行われ、2回共に判定がTRUEの場合にのみ、送受信装置20のTXENをイネーブルにするようになっている。
【0016】まず、アンテナ1においてR1及びR1’は、共に直流抵抗値を決定する抵抗器である。Q3はスイッチング用のトランジスタ、RBはバイアス抵抗、CBは遅延用のコンデンサ、C3はバイパスコンデンサである。+Vccが印加されると、初めはトランジスタQ3がOFFとなっているため、直流抵抗値はR1+R1’に見える。RB→CBの経路でCBが充電されてゆき、電圧VBがトランジスタQ3をONにする値を越えるとトランジスタQ3がONとなって、R1’を短絡することになるため、直流抵抗値はR1のみが見える。このように、直流抵抗値が時変となっている。
【0017】次に、無線機本体2側におけるマイクロコンピュータ31の動作を図6により説明する。スイッチ34をONにして(ステップS10)+Vccの印加を開始すると同時に、タイマ33を起動し(ステップS11)、1回目のV2測定を行う(ステップS12)。この場合、判定は、V2がR1+R1’に対応した電圧である場合にTRUEになり、それ以外の場合はFALSEになる(ステップS13)。マイクロコンピュータ31はスイッチ34の測定値が、所定の値(トランジスタQ3がONになるために必要な時間)に達すると(ステップS14)、2回目のV2の判定を行う(ステップS15)。この場合の判定は、V2がR1に対応した電圧である場合にTRUEとなり、それ以外の場合はFALSEになる(ステップS16)。2回の判定で、共にTRUEとなった場合にのみ、最終結果がTRUEになり、送受信装置20のTXENをイネーブルにする(ステップS17、S18)。
【0018】更に、トランジスタQ3がONになった後のV2測定は継続して行い、途中からV2が変化する場合も判定の対象としても良い。なお、タイマ33は必ずしも必要ではなく、ソフトウエアタイマーによって置換可能である。以上の動作を時間軸と共に表現したのが図7である。以上の構成により、防護システムの安全性を高めることができる。また抵抗R1とR1’の組み合せによりアンテナ1の直流抵抗値を決定できるため、設定可能な数が多くとれる効果がある。」

(オ)「【0021】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば不適合なアンテナが接続された場合には送信が禁止され、指向性利得の高いアンテナを非合法に利用することによる混信の発生等を未然に防止できる。また、特殊なコネクタを利用する場合よりも、少量生産の場合は安価な装置とすることが可能である。またアンテナケーブルの切断やコネクタの接触不良を、直流抵抗値の測定により発見できるという副次的な利点も有する。また、請求項3の発明の場合は、単に不適合アンテナの使用を防止するだけでなく、指向性利得の異なる複数種類の適合アンテナを、利用者が選択して利用する場合に、常に合法となるようにな無線機本体での送信電力の調整を、利用者が操作することなく、自動的に行うことができる。更に請求項4の発明の場合は、利用者が意図的に本防護システムを破ろうとする場合のセキュリティーを大幅に向上でき、なおかつ、アンテナの直流抵抗値が、2つの抵抗値の組み合せによって決定できるために、設定可能な数が多くとれるという利点を有する。更に請求項5の発明では、特殊なコネクタ等を用いることなくダイバシティー機能を効率的に発揮させることができ、不要なダイバシティー動作を排除できる。」
(カ)図5においては、スイッチング用のトランジスタQ3のコレクタ及びエミッタ間に並列に接続されている抵抗器には、R1と記載されている。しかし、段落0016の「トランジスタQ3がONとなって、R1’を短絡することになるため、直流抵抗値はR1のみが見える。」という記載をみればR1’の誤記であることは明らかである。したがって、図5には、抵抗器R1及び接地間に、スイッチング用のトランジスタQ3及び抵抗器R1’が並列に接続される構成が記載されている。

したがって、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「アンテナ1は無線機本体2に脱着可能になっており、アンテナ1において、アンテナエレメント10にはC1を介してR1、L1及び、並列に接続されたスイッチング用のトランジスタQ3及び抵抗器R1’が接続され、またアンテナ1はケーブル3及びコネクタ4により無線機本体2と接続され、
無線機本体2の送受信装置20には、RF IN/OUT(送受信信号端子)、TXEN(送信をイネーブル(動作可能)にする入力端子)が設けられ、+Vccには直流電源が接続され、直流電流が流され、そして差動増幅器21により、R2の両端に発生した電圧V2を検出するようになっており、
差動増幅器21の出力側にA/D変換器30が接続され、更にA/D変換器30の出力がマイクロコンピュータ31に接続され、またマイクロコンピュータ31の制御用出力は、送受信装置20のTXENに接続され、
アンテナ1において、+Vccが印加されると、初めはトランジスタQ3がOFFとなっているため、直流抵抗値はR1+R1’に見え、電圧VBがトランジスタQ3をONにする値を越えるとトランジスタQ3がONとなって、R1’を短絡することになるため、直流抵抗値はR1のみが見え、直流抵抗値が時変となっていて、
無線機本体2側には、半導体を利用したスイッチング回路(抵抗RB,コンデンサCB及びトランジスタQ3)、マイクロコンピュータ31に+Vccの印加開始時間を基準にして時間を測定するタイマ33が備えられ、+Vccにはスイッチ34が接続され、マイクロコンピュータ31におけるV2の判定は、スイッチ34をONにして+Vccの印加を開始すると同時に、タイマ33を起動し、1回目のV2測定を行い、この場合の判定は、V2がR1+R1’に対応した電圧である場合にTRUEになり、それ以外の場合はFALSEになり、
マイクロコンピュータ31はスイッチ34の測定値が、所定の値(トランジスタQ3がONになるために必要な時間)に達すると、2回目のV2の判定を行い、この場合の判定は、V2がR1に対応した電圧である場合にTRUEとなり、それ以外の場合はFALSEになり、2回の判定で、共にTRUEとなった場合にのみ、最終結果がTRUEになり、送受信装置20の送信動作を可能にし、不適合なアンテナが接続された場合には送信が禁止される無線機本体2」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「無線機本体2」は、本願発明の「電子装置」に相当する。そして、無線機本体2に「コネクタ4」により「アンテナ1」は接続されるのであるから、該「コネクタ4」及び該「アンテナ1」は、それぞれ本願発明の「外部接続端子」及び「外部接続電子機器」に相当する。
また、「+Vcc」をアンテナ1に印加することにより、該アンテナ1が該無線機本体2に適合するか否かを判定する点において、該「+Vcc」は、本願発明の「第一の識別用信号」に相当する。

引用発明のアンテナ1における「トランジスタQ3及び直流抵抗R1、R1’」は、+Vccが印加されたとき、抵抗R2の両端に発生する電圧を、初めはトランジスタQ3がOFFのために直流抵抗R1+R1’に対応した電圧V2となるようにし、トランジスタQ3がONした後は直流抵抗R1に対応した電圧V2となるようにしているから、時間によって変化するV2を生じさせる「所定の信号変換を施し」ているといえる。また、引用発明の電圧「V2」は、アンテナの適合を判定するために用いるから、本願発明の「第二の識別用信号」に相当する。
よって、引用発明の「トランジスタQ3及び直流抵抗R1、R1’」は、「+Vcc」に対して「所定の信号変換を施し」て「第二の識別用信号」を形成しているから、「第一の識別用信号」に対し、「所定の信号変換を施し」て「第二の識別用信号」を形成する点で本願発明の「識別用信号変換手段」と共通している。
また、アンテナ1側の直流抵抗に応じた電圧V2を形成する際には、単純にオームの法則を利用しており、暗号化技術を利用していないことは明らかである。
引用発明の「差動増幅器21」が抵抗R2の両端に生じた「電圧V2」を検出することは、アンテナの適合を判定するために「第二の識別用信号」を受信することであるので、「第二の識別用信号」を受信する点で引用発明の「差動増幅器21」は、本願発明の「第二の識別用信号受信手段」と共通している。

引用発明の「マイクロコンピュータ31」が「1回目のV2判定でV2がR1+R1’に対応した電圧である場合にTRUEと判定し、トランジスタQ3がONになるために必要な時間に達すると、2回目のV2判定でV2がR1に対応した電圧である場合にTRUEと判定し、2回の判定共にTRUEとなった場合にのみ、送受信装置20の送信動作を可能にし、不適合なアンテナが接続された場合には送信が禁止されるように判断する」ことは、「第二の識別用信号が正規の信号変換を施されて形成された形態を成しているか否かに基づいて当該外部接続電子機器が前記適合性を有するか否かの識別をする」ことである。よって、引用発明の「マイクロコンピュータ31」と、本願発明の「適合性識別手段」は、共に「第二の識別用信号が正規の信号変換を施されて形成された形態を成しているか否かに基づいて当該外部接続電子機器が前記適合性を有するか否かの識別をする」点で共通している。

したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 外部接続端子に接続される外部接続電子機器に関し該接続を行って用いる場合における所定の適合性を有するか否かの識別を実行可能に構成された電子装置であって、
第一の識別用信号に対し、当該外部接続電子機器に設けられた識別用信号変換手段で所定の信号変換(但し、暗号化技術による信号変換を除く)が施されて形成された第二の識別用信号を受信する第二の識別用信号受信手段と、
前記第二の識別用信号受信手段で受信された当該第二の識別用信号が当該第一の識別用信号に対して前記識別用信号変換手段で正規の信号変換が施されて形成された形態を成しているか否かに基づいて当該外部接続電子機器が前記適合性を有するか否かの識別をする適合性識別手段と、を備え、前記第一の識別用信号送出手段から送出された前記第一の識別用信号に対し、前記外部接続電子機器に設けられた前記識別用信号変換手段で前記信号変換が施されて形成された前記第二の識別用信号を前記外部接続電子機器から前記第二の識別用信号受信手段で受信することにより、前記適合性識別手段において前記適合性を有するか否かの識別をするようにした電子装置。」

(相違点1)
本願発明では、「識別用信号発生器」が識別に適用する第一の識別用信号を発生しているのに対して、引用発明では、識別のために電圧+Vccを発生する「直流電源」が接続される記載があるにとどまり識別用信号発生器を備えるか明らかでない点。

(相違点2)
本願発明では、外部接続端子を通して第一の識別用信号を送出する「第一の識別用信号送出手段」を備えるのに対し、引用発明では、コネクタ4に接続されたアンテナ1に電圧+Vccの印加を開始する「スイッチ34」及び「マイクロコンピュータ31」を設けているものの「第一の識別用信号送出手段」を備えるか明らかでない点。

(相違点3)
本願発明では、適合性識別手段において適合性を有するか否かの識別をするのが、外部接続電子機器と自装置との間で信号が往復した後であるのに対して、引用発明では、そのような構成にする特段の記載がない点。

5.判断
上記相違点について以下に検討する。

(相違点1について)
引用発明の「直流電源」は、アンテナの適合性を判定するために用いる電圧信号として+Vccを発生しているから、本願発明の第一の識別用信号を発生する「識別用信号発生器」に相当するものである。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

(相違点2について)
引用発明の「スイッチ34」及び「マイクロコンピュータ31」は、コネクタ4に接続されたアンテナ1に、アンテナ1の適合を判定するために、電圧+Vccの印加を開始しているから、本願発明の外部接続端子を通して第一の識別用信号を送出する「第一の識別用信号送出手段」に相当するものである。
したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。

(相違点3について)
引用発明の無線機本体2の「マイクロコンピュータ31」においては、+Vccの印加開始時間を基準にして時間を測定するタイマ33を起動して、直流抵抗値(R1+R1’)及び(R1)によって変換された直流電流を2回測定している。2回目の測定時の直流抵抗値R1によって変換された直流電流はトランジスタQ3がオンした後の電流値である。そして、トランジスタQ3がオンするのは、信号電圧+Vccが印加され、コンデンサCBが充電されることによる。したがって、引用発明には、適合性識別手段において適合性を有するか否かの識別をするのが、信号電圧+Vccを印加してから十分な時間をおいた後であることが示されているから、信号が往復するのに十分な時間をおいて識別することが示唆されている。
したがって、引用発明においても、適合性識別手段において適合性を有するか否かの識別をするのが、外部接続電子機器と自装置との間で信号が往復した後である構成とすることは当業者が容易に想到するものである。

そして、本願発明の効果も引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2012-02-23 
結審通知日 2012-02-28 
審決日 2012-03-12 
出願番号 特願2008-143547(P2008-143547)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼須 甲斐  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 鈴木 重幸
近藤 聡
発明の名称 電子装置、外部接続電子機器、外部接続電子機器の適合性識別方法、および、識別用信号変換方法  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
代理人 森 哲也  
代理人 小西 恵  
代理人 阪間 和之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ