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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1255954
審判番号 不服2011-2890  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-08 
確定日 2012-04-26 
事件の表示 特願2003-205052「情報処理装置、プッシュ型インストール方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月24日出願公開、特開2005- 50061〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成15年7月31日の出願であって、平成18年6月8日付けで審査請求がなされ、平成21年7月1日付けで最初の拒絶理由通知(同年7月7日発送)がなされ、平成21年9月2日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、平成22年8月11日付けで審査官により最後の拒絶理由通知(同年8月17日発送)がなされ、同年10月15日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたが、同年11月2日付けで審査官により前記平成22年10月15日付け手続補正を却下する旨の補正の却下の決定(同年11月8日発送)がなされるとともに、同日付けで審査官により拒絶査定(同年11月8日謄本送達)がなされ、これに対して、平成23年2月8日付けで審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。そして、平成23年3月4日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、同年8月29日付けで当審より審尋(同年8月30日発送)がなされ、同年10月27日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成23年2月8日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年2月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成23年2月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成21年9月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項16の記載

「 【請求項1】 サーバ装置からネットワークを介して1つ以上のクライアント装置にデバイスドライバをインストールするためのプッシュ型インストールシステムであって、
前記サーバ装置は、
前記ネットワークを介して、該ネットワークに接続されているクライアント装置毎にその稼動状態を取得する取得手段と、
前記取得手段により前記クライアント装置毎に取得された稼動状態に基づいて、前記クライアント装置毎にインストール可能状態にあるか否かを判別する判別手段と、
前記ネットワークを介して、前記インストール可能状態にあると判別されたクライアント装置に対してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストール手段と、
前記インストール手段がインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストール完了通知を送信してきたクライアント装置を表す表示と、前記インストール手段がインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置に対応する表示と、当該クライアント装置がインストール未完了であることを示すステータス表示と、をグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する表示手段と、
前記デバイスドライバがインストールされなかったクライアント装置に対してデバイスドライバを再度インストールする再指示の入力を、前記グラフィカルユーザインタフェースにおいて受け付ける再指示手段と、
前記再指示手段における再指示の入力に応答して、前記判別手段による判別処理と、前記インストール手段によるインストール指示の処理を繰り返す手段と、
を備えることを特徴とするプッシュ型インストールシステム。
【請求項2】 複数のクライアント装置とネットワークを介して接続される情報処理装置であって、
前記ネットワークを介して前記クライアント装置毎にその稼動状態を取得する取得手段と、
前記取得手段により前記クライアント装置毎に取得された稼動状態に基づいて、前記クライアント装置毎にインストール可能状態にあるか否かを判別する判別手段と、
前記ネットワークを介して、前記インストール可能状態にあると判別されたクライアント装置に対してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストール手段と、
前記インストール手段がインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストール完了通知を送信してきたクライアント装置を表す表示と、前記インストール手段がインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置に対応する表示と、当該クライアント装置がインストール未完了であることを示すステータス表示と、をグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する表示手段と、
前記デバイスドライバがインストールされなかったクライアント装置に対してデバイスドライバを再度インストールする再指示の入力を、前記グラフィカルユーザインタフェースにおいて受け付ける再指示手段と、
前記再指示手段における再指示の入力に応答して、前記判別手段による判別処理と、前記インストール手段によるインストール指示の処理を繰り返す手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】 デバイスドライバを指定するとともに、前記複数のクライアント装置の中から前記指定されたデバイスドライバのインストール先となる1つ以上のクライアント装置を指定する指定手段を備え、
前記判別手段は、前記取得手段により前記クライアント装置毎に取得された稼動状態に基づいて、前記インストール先として指定されたクライアント装置毎にインストール可能状態にあるか否かを判別し、
前記インストール手段は、前記ネットワークを介して、前記インストール可能状態にあると判別されたクライアント装置に対して前記指定されたデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行することを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】 前記ネットワークを介して、前記インストール可能状態にないと判別されたクライアント装置に対して、インストール可能状態にすることを促す旨の通知を行う通知手段を備えることを特徴とする請求項3記載の情報処理装置。
【請求項5】 前記取得手段は、前記クライアント装置の稼動状態として、CPUの稼働率、メモリ使用量のうち、少なくとも1つの情報を取得することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項6】 前記判別手段は、前記CPUの稼働率が低いまたは前記メモリ使用量が少ないクライアント装置をインストール可能状態にあるクライアント装置と判別することを特徴とする請求項5記載の情報処理装置。
【請求項7】 前記デバイスドライバがインストールされたクライアント装置からインストール完了通知を受信すると、前記ネットワークを介して、前記インストール完了通知の受信に応答して対応するクライアント装置に対して、インストールされたデバイスドライバの情報を通知するドライバ情報通知手段を備えることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項8】 前記デバイスドライバは、プリンタドライバであることを特徴とする請求項2ないし7のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項9】 サーバ装置からネットワークを介して1つ以上のクライアント装置にデバイスドライバをインストールするためのプッシュ型インストール方法であって、
前記サーバ装置は、
前記ネットワークを介して、前記クライアント装置毎にその稼動状態を取得する取得工程と、
前記取得工程により前記クライアント装置毎に取得された稼動状態に基づいて、前記クライアント装置毎にインストール可能状態にあるか否かを判別する判別工程と、
前記ネットワークを介して、前記インストール可能状態にあると判別されたクライアント装置に対してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストール工程と、
前記インストール工程でインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストール完了通知を送信してきたクライアント装置を表す表示と、前記インストール工程でインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置に対応する表示と、当該クライアント装置がインストール未完了であることを示すステータス表示と、をグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する表示工程と、
前記デバイスドライバがインストールされなかったクライアント装置に対してデバイスドライバを再度インストールする再指示の入力を、前記グラフィカルユーザインタフェースにおいて受け付ける再指示工程と、
前記再指示工程における再指示の入力に応答して、前記判別工程による判別処理と、前記インストール工程によるインストール指示の処理を繰り返す工程と、
を有することを特徴とするプッシュ型インストール方法。
【請求項10】 前記サーバ装置は、デバイスドライバを指定するとともに、前記複数のクライアント装置の中から前記指定されたデバイスドライバのインストール先となる1つ以上のクライアント装置を指定する指定工程を有し、
前記判別工程では、前記取得工程により前記クライアント装置毎に取得された稼動状態に基づいて、前記インストール先として指定されたクライアント装置毎にインストール可能状態にあるか否かを判別し、
前記インストール工程では、前記ネットワークを介して、前記インストール可能状態にあると判別されたクライアント装置に対して前記指定されたデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行することを特徴とする請求項9記載のプッシュ型インストール方法。
【請求項11】 前記サーバ装置は、前記ネットワークを介して、前記インストール可能状態にないと判別されたクライアント装置に対して、インストール可能状態にすることを促す旨の通知を行う通知工程を有することを特徴とする請求項10記載のプッシュ型インストール方法。
【請求項12】 前記取得工程では、前記クライアント装置の稼動状態として、CPUの稼働率、メモリ使用量のうち、少なくとも1つの情報を取得することを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1つに記載のプッシュ型インストール方法。
【請求項13】 前記判別工程で、前記CPUの稼働率が低いまたは前記メモリ使用量が少ないクライアント装置をインストール可能状態にあるクライアント装置と判別することを特徴とする請求項12記載のプッシュ型インストール方法。
【請求項14】 前記サーバ装置は、前記デバイスドライバがインストールされたクライアント装置からインストール完了通知を受信すると、前記ネットワークを介して、前記インストール完了通知の受信に応答して対応するクライアント装置に対して、インストールされたデバイスドライバの情報を通知するドライバ情報通知工程を有することを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1つに記載のプッシュ型インストール方法。
【請求項15】 前記デバイスドライバは、プリンタドライバであることを特徴とする請求項9ないし14のいずれか1つに記載のプッシュ型インストール方法。
【請求項16】 複数のクライアント装置とネットワークを介して接続される情報処理装置を制御するためのプログラムであって、
前記ネットワークを介して前記クライアント装置毎にその稼動状態を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより前記クライアント装置毎に取得された稼動状態に基づいて、前記クライアント装置毎にインストール可能状態にあるか否かを判別する判別ステップと、
前記ネットワークを介して、前記インストール可能状態にあると判別されたクライアント装置に対してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストールステップと、
前記インストールステップでインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストール完了通知を送信してきたクライアント装置を表す表示と、前記インストールステップでインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置に対応する表示と、当該クライアント装置がインストール未完了であることを示すステータス表示と、をグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する表示ステップと、
前記デバイスドライバがインストールされなかったクライアント装置に対してデバイスドライバを再度インストールする再指示の入力を、前記グラフィカルユーザインタフェースにおいて受け付ける再指示ステップと、
前記再指示ステップにおける再指示の入力に応答して、前記判別ステップによる判別処理と、前記インストールステップによるインストール指示の処理を繰り返すステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】 複数のクライアント装置とネットワークを介して接続される情報処理装置であって、
前記ネットワークを介して前記複数のクライアント装置から稼動状態を取得する取得手段と、
前記取得手段により前記複数のクライアント装置から取得された稼動状態に基づいて、各クライアント装置がデバイスドライバをインストール可能な状態にあるか否かを判別する判別手段と、
デバイスドライバのインストール先となる1以上のクライアント装置を指定する指定手段と、
前記指定手段により指定された1以上のクライアント装置の中から、前記判別手段によりデバイスドライバがインストール可能な状態にあると判別されたクライアント装置に対して、前記ネットワークを介してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストール手段と、
前記インストール手段による処理の実行後に、前記指定手段により指定された1以上のクライアント装置について、前記デバイスドライバのインストールが完了したクライアント装置と、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置とをグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する表示手段と、
前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置に対してデバイスドライバを再度インストールする再指示の入力を、前記グラフィカルユーザインタフェースにおいて受け付ける再指示手段と、
前記再指示手段における再指示の入力に応答して、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置に対して、前記判別手段による判別処理と、前記指定手段による1以上のクライアント装置の指定処理と、前記インストール手段によるインストールを指示するための処理を再び行うように制御する手段とを備え、
前記表示手段によるグラフィカルユーザインタフェースの表示には、前記デバイスドライバのインストールが完了したクライアント装置として、前記インストール手段による処理の実行に応じてデバイスドライバのインストールを指示されたクライアント装置の中でインストール完了通知を送信してきたクライアント装置が含まれ、
前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置として、前記インストール手段による処理の実行に応じてデバイスドライバのインストールを指示されたクライアント装置の中でインストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置と、前記判別手段によりデバイスドライバがインストール可能な状態にないと判別されたクライアント装置とが含まれ、
前記表示手段は、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置の中で前記判別手段によりデバイスドライバがインストール可能な状態にないと判別されたクライアント装置に対応づけて、前記デバイスドライバがインストールされていないことを示すステータス表示を、前記グラフィカルユーザインタフェースにおいて表示することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】 前記ネットワークを介して、前記判別手段によりインストール可能な
状態にないと判別されたクライアント装置に対して、デバイスドライバがインストール可能な状態にすることを促す旨の通知を行う通知手段を備えることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】 前記取得手段は、前記クライアント装置の稼動状態として、CPUの稼働率、及びメモリ使用量のうち、少なくとも1つの情報を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】 前記判別手段は、前記CPUの稼働率が低いまたは前記メモリ使用量が少ないクライアント装置を、デバイスドライバのインストールが可能な状態にあるクライアント装置と判別することを特徴とする請求項3記載の情報処理装置。
【請求項5】 前記インストール完了通知の受信に応答してクライアント装置に対して、インストールされたデバイスドライバの情報を、前記ネットワークを介して通知するドライバ情報通知手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項6】 前記デバイスドライバは、プリンタドライバであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項7】 サーバ装置からネットワークを介して1つ以上のクライアント装置にデバイスドライバをインストールするためのプッシュ型インストール方法であって、
前記サーバ装置は、
前記ネットワークを介して前記複数のクライアント装置から稼動状態を取得する取得工程と、
前記取得工程により前記複数のクライアント装置から取得された稼動状態に基づいて、各クライアント装置がデバイスドライバをインストール可能な状態にあるか否かを判別する判別工程と、
デバイスドライバのインストール先となる1以上のクライアント装置を指定する指定工程と、
前記指定工程により指定された1以上のクライアント装置の中から、前記判別工程によりデバイスドライバがインストール可能な状態にあると判別されたクライアント装置に対して、前記ネットワークを介してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストール工程と、
前記インストール工程による処理の実行後に、前記指定工程により指定された1以上のクライアント装置について、前記デバイスドライバのインストールが完了したクライアント装置と、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置とをグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する表示工程と、
前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置に対してデバイスドライバを再度インストールする再指示の入力を、前記グラフィカルユーザインタフェースにおいて受け付ける再指示工程と、
前記再指示工程における再指示の入力に応答して、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置に対して、前記判別工程による判別処理と、前記指定工程による1以上のクライアント装置の指定処理と、前記インストール工程によるインストールを指示するための処理を再び行うように制御する工程とを有し、
前記表示工程によるグラフィカルユーザインタフェースの表示には、前記デバイスドライバのインストールが完了したクライアント装置として、前記インストール工程による処理の実行に応じてデバイスドライバのインストールを指示されたクライアント装置の中でインストール完了通知を送信してきたクライアント装置が含まれ、
前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置として、前記インストール工程による処理の実行に応じてデバイスドライバのインストールを指示されたクライアント装置の中でインストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置と、前記判別工程によりデバイスドライバがインストール可能な状態にないと判別されたクライアント装置とが含まれ、
前記表示工程では、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置の中で前記判別工程によりデバイスドライバがインストール可能な状態にないと判別されたクライアント装置に対応づけて、前記デバイスドライバがインストールされていないことを示すステータス表示を、前記グラフィカルユーザインタフェースにおいて表示することを特徴とするプッシュ型インストール方法。
【請求項8】 前記サーバ装置は、前記ネットワークを介して、前記判別工程によりインストール可能な状態にないと判別されたクライアント装置に対して、デバイスドライバがインストール可能な状態にすることを促す旨の通知を行う通知工程を有することを特徴とする請求項7記載のプッシュ型インストール方法。
【請求項9】 前記取得工程では、前記クライアント装置の稼動状態として、CPUの稼働率、及びメモリ使用量のうち、少なくとも1つの情報を取得することを特徴とする請求項7または8に記載のプッシュ型インストール方法。
【請求項10】 前記判別工程で、前記CPUの稼働率が低いまたは前記メモリ使用量が少ないクライアント装置を、デバイスドライバのインストールが可能な状態にあるクライアント装置と判別することを特徴とする請求項9記載のプッシュ型インストール方法。
【請求項11】 前記サーバ装置は、前記デバイスドライバがインストールされたクライアント装置からインストール完了通知を受信すると、前記ネットワークを介して、前記インストール完了通知の受信に応答して対応するクライアント装置に対して、インストールされたデバイスドライバの情報を、前記ネットワークを介して通知するドライバ情報通知工程を有することを特徴とする請求項7ないし10のいずれか1つに記載のプッシュ型インストール方法。
【請求項12】 前記デバイスドライバは、プリンタドライバであることを特徴とする請求項7ないし11のいずれか1つに記載のプッシュ型インストール方法。
【請求項13】 複数のクライアント装置とネットワークを介して接続される情報処理装置を制御するためのプログラムであって、
前記ネットワークを介して前記複数のクライアント装置から稼動状態を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより前記複数のクライアント装置から取得された稼動状態に基づいて、各クライアント装置がデバイスドライバをインストール可能な状態にあるか否かを判別する判別ステップと、
デバイスドライバのインストール先となる1以上のクライアント装置を指定する指定ステップと、
前記指定ステップにより指定された1以上のクライアント装置の中から、前記判別ステップによりデバイスドライバがインストール可能な状態にあると判別されたクライアント装置に対して、前記ネットワークを介してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストールステップと、
前記インストールステップによる処理の実行後に、前記指定ステップにより指定された1以上のクライアント装置について、前記デバイスドライバのインストールが完了したクライアント装置と、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置とをグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する表示ステップと、
前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置に対してデバイスドライバを再度インストールする再指示の入力を、前記グラフィカルユーザインタフェースにおいて受け付ける再指示ステップと、
前記再指示ステップにおける再指示の入力に応答して、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置に対して、前記判別ステップによる判別処理と、前記指定ステップによる1以上のクライアント装置の指定処理と、前記インストールステップによるインストールを指示するための処理を再び行うように制御するステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記表示ステップによるグラフィカルユーザインタフェースの表示には、前記デバイスドライバのインストールが完了したクライアント装置として、前記インストールステップによる処理の実行に応じてデバイスドライバのインストールを指示されたクライアント装置の中でインストール完了通知を送信してきたクライアント装置が含まれ、
前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置として、前記インストールステップによる処理の実行に応じてデバイスドライバのインストールを指示されたクライアント装置の中でインストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置と、前記判別ステップによりデバイスドライバがインストール可能な状態にないと判別されたクライアント装置が含まれ、
前記表示ステップでは、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置の中で前記判別ステップによりデバイスドライバがインストール可能な状態にないと判別されたクライアント装置に対応づけて、前記デバイスドライバがインストールされていないことを示すステータス表示を、前記グラフィカルユーザインタフェースにおいて表示することを特徴とするプログラム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件

平成23年2月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。

そして、本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的として、補正前の請求項1、請求項3、及び請求項10を削除し、特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的として、補正前の請求項2、請求項9、及び請求項16における表示手段についての不明りょうな記載を釈明するとともに、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的として、補正前の請求項2、請求項9、及び請求項16における再指示の入力に応答した処理について、下位概念化する補正であり、これによって、当該発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。

3.独立特許要件

本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、補正前の請求項2に対して、限定的減縮を行ったものと認められる。そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)補正後の発明

本件補正により、本願補正発明は、前記「1.補正の内容」の補正後の請求項1に記載されたとおりのものである。

(2)引用文献に記載されている技術的事項、引用発明及び周知技術の認定

(2-1)引用文献1に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原審が拒絶理由通知において引用した特開2003-140852号公報 (平成15年5月16日出願公開、以下、「引用文献1」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。

A 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ネットワークシステム、情報処理装置、方法、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に係り、ネットワーク上で共有された情報処理装置や周辺機器の表示や管理等を行うものに関する。」

B 「【0042】図1は、本発明の実施形態に用いられる情報処理装置の好適な一例を示すPCの構成を説明するブロック図である。同図において、1はシステムバスであり、当該システムバス1を介して以下に述べる各構成ブロックが接続されている。なお、本願の各実施形態においては、ドライバのインストール対象となるクライアント装置、クライアント装置に対してドライバのセットアップ指示を行うインストールサーバ装置の好適な一例として下記の構成を有するPCを用いている。」

C 「【0050】(第1の実施の形態)以下、図2?9を参照して、周辺機器のドライバのセットアップを行う場合について説明する。図2は、サーバ装置におけるドライバのセットアップを行う処理動作を示すフローチャートである。まず、ステップS201で、情報処理装置の好適な一例であるサーバ装置は、サーバ装置内の装置管理モジュール(装置管理手段)により、ネットワーク上のPC及び周辺機器の接続状況情報を取得し、その情報を記憶する。周辺機器は例えば、インクジェットプリンタ、デジタルカメラ、プリンタ機能を有する複写機などを含む。」

D 「【0051】次に、ステップS202で、サーバ装置は、各PCの周辺機器のセットアップ状況を示す情報を取得して認識する。周辺機器のドライバとは、プリンタ、スキャナ、デジタルカメラ、FAX等のドライバを含む。セットアップ状況情報の取得方法として、例えば、各PC上で自機にインストールされているドライバ情報を取得するモジュール(装置管理手段)を起動することで周辺機器並びに他のPCと通信し、情報を収集して、それらの情報をネットワークを通じて通信することが考えられる。ドライバ情報とは、例えば、周辺機器を制御するためのデバイスドライバ、周辺機器のドライバのセットアップ状況とは、登録されている周辺機器の登録名、当該周辺機器を動作させるためのドライバ名(ドライバのシステムへの登録名)、ドライバのバージョン情報、ドライバのモジュール名などを含む。装置名はプリンタ識別情報の好適な一例である。ドライバ名は、ドライバ識別情報の好適な一例である。例えば、プリンタ名、ドライバ名は、文字列以外の情報処理装置が認識可能な数字、記号などの識別子を含む。」

E 「【0057】このように画面でネットワーク上の全てのPC及び周辺機器の接続状態、さらにはステータスを確認することができる。この例では、画面の都合上、全てのアイコンが表示されていないが、画面横に配置されているスクロールバーを使って全てのPC及び周辺機器を確認することができる。」

F 「【0060】図2のフローチャートに説明を戻すと、ステップS203で、インストールサーバ装置内のインストーラは、周辺機器のドライバをセットアップするか否かを判定する。例えば、図4においてプリンタ403adを選択して、メニューからドライバのセットアップ指示を行うことができる。ここで、ドライバのセットアップ指示がなかった場合は、この処理を終了する。」

G 「【0061】ドライバのセットアップ指示があった場合、ステップS204に移行し、ユーザにセットアップするドライバを指示させる画面を表示する。図6はセットアップするドライバを選択するための画面の一例であり、ここで製造元を選択して、ユーザは対象プリンタを指示する。また、ユーザがセットアップ情報のあるフォルダを指示することもできる。」

H 「【0062】さらに、ステップS205で、PDからの入力に基づいて、インストールサーバ装置内のインストーラは、ドライバをセットアップするクライアント装置を選択する。図7はドライバをセットアップするクライアント装置を選択するための画面の一例であり、ここでドメイン、及びクライアント装置を選択する。この際、複数のクライアント装置を選択することができる。」

I 「【0063】そして、インストールサーバ装置内のインストーラは、PDなどからOKの指示があると、ステップS206に移行し、指示されたドライバを指示された各クライアント装置にセットアップする必要があるか否かを、それぞれのクライアント装置からのドライバ情報から判定する。指示されたドライバが既にインストールされている等してセットアップする必要がない場合は、インストール処理を行わない。」

J 「【0064】インストールサーバ装置内のインストーラは、セットアップする必要がある場合、ステップS207に移行し、ステップS205で指示されたクライアント装置に対してステップS204で指示されたドライバのセットアップ処理を実行するように指示を送るようOSを制御する。そして、その指示に従ってドライバのセットアップ処理が実行される。セットアップ指示は、ドライバセットアップ指示構造体とセットアップ指示命令を含む。図8はセットアップ指示に含まれるドライバセットアップ指示構造体の一例であり、デバイス種類、ドライバ名、バージョン情報、出力ポート、セットアップ情報等から構成される。なお、セットアップ情報は、この構造体と共に送られてもよいが、ネットワーク上の共有フォルダに記憶しておいてそのパス名を指示するようにしてもよい。」

K 「【0065】次に、ステップS208で、インストールサーバ装置内のインストーラは、ドライバのセットアップ処理が正常終了したか否かを判定する。判定方法としては、ドライバのインストール処理が正常に行われたかどうか判定すると同時に、実際にそのドライバを使用して正常動作するかどうかで判定する。例えば、ドライバが正常にインストールできた場合には、セットアップ指示をしたクライアント装置に対して正常終了したメッセージが送信されるようにして、画面上で確認できるようにする。」

L 「【0067】正常終了しなかった場合、ステップS209に移行し、インストールサーバ装置内のインストーラは、正常終了しなかったクライアント装置に対して再度実行指示をするか否かを判定する。再実行の指示があった場合は、ステップS204に戻り、再実行の指示がなかった場合、処理を終了する。」

M 「【0068】以上述べたように、ネットワーク上で共有されているクライアント装置及び周辺機器が表示されている画面において、周辺機器のドライバがインストールされていない場合、簡単な操作でドライバをインストールできると共に、実際にインストールされたことを確認することができ、ネットワーク上での作業効率を大幅に向上させることができる。」

N 【図2】のS201における「ネットワーク上の全てのPCおよび周辺機器の接続状況を取得する」との記載

(ア)上記Aの「本発明は、…(中略)…、情報処理装置、…(中略)…に係り、ネットワーク上で共有された情報処理装置や周辺機器の表示や管理等を行うものに関する。」との記載、上記Bの「本願の各実施形態においては、ドライバのインストール対象となるクライアント装置、クライアント装置に対してドライバのセットアップ指示を行うインストールサーバ装置」との記載、上記Cの「ステップS201で、情報処理装置の好適な一例であるサーバ装置は、サーバ装置内の装置管理モジュール(装置管理手段)により、ネットワーク上のPC及び周辺機器の接続状況情報を取得」、上記Eの「画面でネットワーク上の全てのPC及び周辺機器の接続状態、さらにはステータスを確認することができる。」との記載、及び上記Nの「ネットワーク上の全てのPCおよび周辺機器の接続状況を取得する」からすると、引用文献1には、
複数のクライアント装置とネットワークを介して接続されるサーバ装置であって、
前記ネットワークを介して前記複数のクライアント装置から接続状態やステータスを取得する手段(以下、「取得手段」という。)
が記載されている。

(イ)上記(ア)、及び上記Fの「ステップS203で、インストールサーバ装置内のインストーラは、周辺機器のドライバをセットアップするか否かを判定する。」との記載からすると、引用文献1には、
取得手段により複数のクライアント装置から取得された接続状態やステータスに基づいて、各クライアント装置にドライバをセットアップするか否かを判定する手段(以下、「判定手段」という。)
が記載されている。

(ウ)前記(ア)ないし(イ)、上記Gの「ドライバのセットアップ指示があった場合、ステップS204に移行し、ユーザにセットアップするドライバを指示させる画面を表示する。」との記載、及び上記Hの「ステップS205で、PDからの入力に基づいて、インストールサーバ装置内のインストーラは、ドライバをセットアップするクライアント装置を選択する。」との記載からすると、引用文献1には、
ドライバのインストール先となる1以上のクライアント装置を選択する手段(以下、「選択手段」という。)
が記載されている。

(エ)前記(ア)ないし(ウ)、及び上記Jの「インストールサーバ装置内のインストーラは、セットアップする必要がある場合、ステップS207に移行し、ステップS205で指示されたクライアント装置に対してステップS204で指示されたドライバのセットアップ処理を実行するように指示を送るようOSを制御する。そして、その指示に従ってドライバのセットアップ処理が実行される。」との記載からすると、引用文献1には、
選択手段により選択された1以上のクライアント装置に対して、ネットワークを介してドライバのセットアップ処理を実行する手段(以下、「セットアップ手段」という。)
が記載されている。

(オ)前記(ア)ないし(エ)、及び上記Kの「ステップS208で、インストールサーバ装置内のインストーラは、ドライバのセットアップ処理が正常終了したか否かを判定する。…(中略)…。例えば、ドライバが正常にインストールできた場合には、セットアップ指示をしたクライアント装置に対して正常終了したメッセージが送信されるようにして、画面上で確認できるようにする。」との記載からすると、引用文献1には、
セットアップ手段による処理の実行後に、選択手段により選択された1以上のクライアント装置について、ドライバのセットアップ処理が正常終了したか否かを判定し、画面上に表示する手段(以下、「表示手段」という。)
が記載されている。

(カ)前記(ア)ないし(オ)、及び上記Lの「正常終了しなかった場合、ステップS209に移行し、インストールサーバ装置内のインストーラは、正常終了しなかったクライアント装置に対して再度実行指示をするか否かを判定する。再実行の指示があった場合は、ステップS204に戻り、再実行の指示がなかった場合、処理を終了する。」との記載からすると、引用文献1には、
ドライバのセットアップ処理が正常終了しなかったクライアント装置に対してドライバを再度セットアップする再実行の指示を行う手段(以下、「再指示手段」という。)
が記載されている。そして、再実行の指示があった場合は、ステップS204に戻って処理を行うことから、引用文献1には、
再指示手段における再実行の指示に応答して、ドライバがセットアップされていないクライアント装置に対して、選択手段による1以上のクライアント装置の選択処理と、セットアップ手段によるセットアップを実行するための処理を再び行うように制御する手段
が記載されている。

以上、(ア)ないし(カ)で指摘した事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。

複数のクライアント装置とネットワークを介して接続されるサーバ装置であって、
前記ネットワークを介して前記複数のクライアント装置から接続状態やステータスを取得する取得手段と、
前記取得手段により前記複数のクライアント装置から取得された接続状態やステータスに基づいて、各クライアント装置にドライバをセットアップするか否かを判定する判定手段と、
ドライバのインストール先となる1以上のクライアント装置を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された1以上のクライアント装置に対して、前記ネットワークを介してドライバのセットアップ処理を実行するセットアップ手段と、
前記セットアップ手段による処理の実行後に、前記選択手段により選択された1以上のクライアント装置について、前記ドライバのセットアップ処理が正常終了したか否かを判定し、画面上に表示する表示手段と、
ドライバのセットアップ処理が正常終了しなかったクライアント装置に対してドライバを再度セットアップする再実行の指示を行う再指示手段と、
前記再指示手段における再実行の指示に応答して、前記ドライバがセットアップされていないクライアント装置に対して、前記選択手段による1以上のクライアント装置の選択処理と、前記セットアップ手段によるセットアップを実行するための処理を再び行うように制御する手段とを備えることを特徴とするサーバ装置。

(2-2)引用文献2に記載されている技術的事項及び周知技術の認定

原審が拒絶理由通知において引用した特開平8-123690号公報 (平成8年5月17日出願公開、以下、「引用文献2」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。

O 「【0024】また、サーバ計算機2は、ホスト計算機1に対して、専用の通信回線9を介することによりリモート接続(遠隔して接続)され、ホスト計算機1から所望のファイルデータの転送を受けるものであり、版数チェック機構2A,端末受信可能チェック機構2B,データ転送機構2C,適用機構2D,バックアウト機構2E及びファイルサーバ機能2Fをそなえている。」

P 「【0027】ホスト計算機1側の端末受信可能チェック機構1Bにおいては、端末受信可能チェック機構2Bからの通知を受けて転送するデータ量及びCPU負荷が転送可能状態であることを確認し、データを転送するかしないかを判断し、この判断結果に基づいてデータを転送することができる。上述の構成により、本システムの端末受信可能チェック機能においては、ホスト計算機1及びサーバ計算機2における各機構において、図4?図12のフローチャートに示すように動作する。」

(キ)上記O及び上記Pの記載からすると、引用文献2には、
ホスト計算機が、通信回線を介して接続されたサーバ計算機におけるCPU負荷状況の通知を受けて、データ転送可能状態であることを確認し、データを転送するかしないかを判断し、この判断結果に基づいてデータを転送する技術(以下、「周知技術1」という。)
が記載されている。

(2-3)引用文献3に記載されている技術的事項及び周知技術の認定

原審が拒絶理由通知において引用した特開平3-223929号公報 (平成3年10月2日出願公開、以下、「引用文献3」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。

Q 「ホストコンピュータ1は、回線交換網を介して端末2?6とオンラインで接続され、端末2?6を修正・変更したメンテナンスプログラムでメンテナンスする場合は、プログラムメンテナンス命令を発行する。次にホストコンピュータ1は、その命令に従いプログラム名、レコード件数名等の情報を有する開始命令を端末2?6の全端末に通知する。全端末から開始通知を受けると、全端末に対してメンテナンスプログラムの実データの送信を行い、全データの送信を完了すると終了命令を通知する。全端末から今までの処理結果を終了回答という形で受けると、各端末からの処理結果をディスプレイ等に出力し、異常があった端末に対しては再び個別にプログラムメンテナンス命令を発行する。」(第2頁左下欄9行目?右下欄3行目)

(ク)上記Qの記載からすると、引用文献3には、
ホストコンピュータから複数の端末に対してプログラムデータを送信した後、各端末から処理結果の通知を受け、当該各端末からの処理結果をディスプレイに出力し、異常があった端末に対して再びプログラムメンテナンス命令を発行する技術(以下、「周知技術2」という。)
が記載されている。

(3)本願補正発明と引用発明1との対比

本願補正発明と引用発明1とを対比する。

上記Cに「情報処理装置の好適な一例であるサーバ装置」と記載されるように、引用発明1の「サーバ装置」は、本願補正発明の「情報処理装置」に相当する。したがって、本願補正発明と引用発明1は、“複数のクライアント装置とネットワークを介して接続される情報処理装置”である点で一致する。

引用発明1の「接続状態やステータス」は、本願補正発明の「稼働状態」に相当する。したがって、本願補正発明と引用発明1は、“前記ネットワークを介して前記複数のクライアント装置から稼動状態を取得する取得手段”を備える点で一致する。

引用発明1の「ドライバ」及び「セットアップ」は、それぞれ、本願補正発明の「デバイスドライバ」及び「インストール」に相当する。そして、引用発明1の「各クライアント装置にドライバをセットアップするか否かを判定する判定手段」においても、クライアント装置の「接続状態やステータス」に基づいて、各クライアント装置がドライバをセットアップ可能かどうか(接続されていてドライバのセットアップができる状態にあるか否か)判定しているものである。してみると、引用発明1の「判定」及び「判定手段」は、それぞれ、本願補正発明の「判別」及び「判別手段」に相当し、本願補正発明と引用発明1は、“前記取得手段により前記複数のクライアント装置から取得された稼動状態に基づいて、各クライアント装置がデバイスドライバをインストール可能な状態にあるか否かを判別する判別手段”を備える点で一致する。

引用発明1の「選択」及び「選択手段」は、それぞれ、本願補正発明の「指定」及び「指定手段」に相当する。したがって、本願補正発明と引用発明1は、“デバイスドライバのインストール先となる1以上のクライアント装置を指定する指定手段”を備える点で一致する。

そして、引用発明1の「前記選択手段により選択された1以上のクライアント装置に対して、前記ネットワークを介してドライバのセットアップ処理を実行するセットアップ手段」と、本願補正発明の「前記指定手段により指定された1以上のクライアント装置の中から、前記判別手段によりデバイスドライバがインストール可能な状態にあると判別されたクライアント装置に対して、前記ネットワークを介してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストール手段」とは、ともに、“前記指定手段により指定された1以上のクライアント装置に対して、前記ネットワークを介してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストール手段”を備える点で共通する。

引用発明1における「ドライバのセットアップ処理が正常終了したか否かを判定し、画面上に表示する」ということは、ドライバのセットアップ処置結果を画面上に表示していることに他ならない。そして、本願補正発明における「前記デバイスドライバのインストールが完了したクライアント装置と、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置とをグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する」ということは、デバイスドライバのインストール処理結果を画面上に表示していることに他ならない。してみれば、本願補正発明と引用発明1は、“前記インストール手段による処理の実行後に、前記指定手段により指定された1以上のクライアント装置について、前記デバイスドライバのインストール処理結果を画面上に表示する表示手段”を備える点で共通する。

引用発明1の「再実行の指示を行う」は、本願補正発明の「再指示の入力を」「受け付ける」に相当する。そして、引用発明1の「ドライバのセットアップ処理が正常終了しなかったクライアント装置」において、ドライバのセットアップ処理が正常終了しなかったということは、ドライバがセットアップされていないことを意味するものと認められることから、本願補正発明と引用発明1は、“前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置に対してデバイスドライバを再度インストールする再指示の入力を受け付ける再指示手段”を備える点で共通する。

そして、本願補正発明と引用発明1は、“前記再指示手段における再指示の入力に応答して、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置に対して、前記指定手段による1以上のクライアント装置の指定処理と、前記インストール手段によるインストールを指示するための処理を再び行うように制御する手段”を備える点で共通する。

以上から、本願補正発明と引用発明1とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

複数のクライアント装置とネットワークを介して接続される情報処理装置であって、
前記ネットワークを介して前記複数のクライアント装置から稼動状態を取得する取得手段と、
前記取得手段により前記複数のクライアント装置から取得された稼動状態に基づいて、各クライアント装置がデバイスドライバをインストール可能な状態にあるか否かを判別する判別手段と、
デバイスドライバのインストール先となる1以上のクライアント装置を指定する指定手段と、
前記指定手段により指定された1以上のクライアント装置に対して、前記ネットワークを介してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストール手段と、
前記インストール手段による処理の実行後に、前記指定手段により指定された1以上のクライアント装置について、前記デバイスドライバのインストール処理結果を画面上に表示する表示手段と、
前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置に対してデバイスドライバを再度インストールする再指示の入力を受け付ける再指示手段と、
前記再指示手段における再指示の入力に応答して、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置に対して、前記指定手段による1以上のクライアント装置の指定処理と、前記インストール手段によるインストールを指示するための処理を再び行うように制御する手段とを備えることを特徴とする情報処理装置。

(相違点1)

インストール手段において、本願補正発明が、「指定手段により指定された1以上のクライアント装置の中から、前記判別手段によりデバイスドライバがインストール可能な状態にあると判別されたクライアント装置に対して」「インストールを指示するための処理を実行する」ものであるのに対して、引用発明1は、選択手段により選択された1以上のクライアント装置に対して、セットアップ処理を実行するものである点。

(相違点2)

インストール手段による処理の実行後において、本願補正発明が、「指定手段により指定された1以上のクライアント装置について、前記デバイスドライバのインストールが完了したクライアント装置と、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置とをグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する表示手段」を備え、「前記表示手段によるグラフィカルユーザインタフェースの表示には、前記デバイスドライバのインストールが完了したクライアント装置として、前記インストール手段による処理の実行に応じてデバイスドライバのインストールを指示されたクライアント装置の中でインストール完了通知を送信してきたクライアント装置が含まれ、」「前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置として、前記インストール手段による処理の実行に応じてデバイスドライバのインストールを指示されたクライアント装置の中でインストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置と、前記判別手段によりデバイスドライバがインストール可能な状態にないと判別されたクライアント装置とが含まれ、」「前記表示手段は、前記デバイスドライバがインストールされていないクライアント装置の中で前記判別手段によりデバイスドライバがインストール可能な状態にないと判別されたクライアント装置に対応づけて、前記デバイスドライバがインストールされていないことを示すステータス表示を、前記グラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する」ものであるのに対して、引用発明1は、選択手段により選択された1以上のクライアント装置について、前記ドライバのセットアップ処理結果を画面上に表示するものではあるが、具体的な表示内容について明記されていない点。

(相違点3)

再指示手段における再指示の入力に応答した処理において、本願補正発明が「判別手段による判別処理」を備えるのに対して、引用発明1は、当該判別処理を備えていない点。

(4)当審の判断

上記「相違点1」ないし「相違点3」について検討する。

(4-1)相違点1及び相違点3について

引用文献2に、ホスト計算機が、通信回線を介して接続されたサーバ計算機におけるCPU負荷状況の通知を受けて、データ転送可能状態であることを確認し、データを転送するかしないかを判断し、この判断結果に基づいてデータを転送する技術(「周知技術1」)が記載されているように、データ転送を行う前に、転送先の装置の状況を確認してから処理を行うようにすることは、当該技術分野において、慣用的に行われている技術に過ぎない。してみれば、引用発明1のセットアップ手段においても、当該周知技術1及び慣用技術を適用し、「前記選択手段により選択された1以上のクライアント装置の中から、前記判定手段によりドライバがセットアップ可能な状態にあると判定されたクライアント装置に対して、前記ネットワークを介してドライバのセットアップ処理を実行する」ように構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。そして、再指示手段における再指示の入力に応答した処理においても、「判定手段による判定処理」を備え、「前記ドライバがセットアップされていないクライアント装置に対して、前記判定手段による判定処理と、前記選択手段による1以上のクライアント装置の選択処理と、前記セットアップ手段によるセットアップを実行するための処理を再び行うように制御する」ように構成することについても、当業者が容易に想到し得たものである。

よって、相違点1及び相違点3は格別なものではない。

(4-2)相違点2について

引用文献3に、ホストコンピュータから複数の端末に対してプログラムデータを送信した後、各端末から処理結果の通知を受け、当該各端末からの処理結果をディスプレイに出力し、異常があった端末に対して再びプログラムメンテナンス命令を発行する技術(「周知技術2」)が記載されているように、端末毎に処理結果をディスプレイに表示するようにすることは、当該技術分野において、慣用的に行われている周知技術に過ぎない。また、画面表示に際して、グラフィカルユーザインタフェースを用いることについては、当業者が必要に応じて適宜採用し得る設計的事項に過ぎない。してみれば、引用発明1においても、選択手段により選択された1以上のクライアント装置について、ドライバのセットアップ処理が正常終了したか否かを判定しているのだから、当該周知技術2を適用し、各クライアント装置から送信されるセットアップの処理結果を、クライアント装置毎にグラフィカルユーザインタフェースを用いて表示させるように構成すること、すなわち、引用発明1において、「選択手段により選択された1以上のクライアント装置について、前記ドライバのセットアップが完了したクライアント装置と、前記ドライバがセットアップされていないクライアント装置とをグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する表示手段」を備え、「前記表示手段によるグラフィカルユーザインタフェースの表示には、前記ドライバのセットアップが完了したクライアント装置として、前記セットアップ手段による処理の実行に応じてドライバのセットアップを指示されたクライアント装置の中でセットアップ完了通知を送信してきたクライアント装置が含まれ、」「前記ドライバがセットアップされていないクライアント装置として、前記セットアップ手段による処理の実行に応じてドライバのセットアップを指示されたクライアント装置の中でセットアップの完了通知を送信してこなかったクライアント装置と、前記判定手段によりドライバがセットアップ可能な状態にないと判定されたクライアント装置とが含まれ、」「前記表示手段は、前記ドライバがセットアップされていないクライアント装置の中で前記判定手段によりドライバがセットアップ可能な状態にないと判定されたクライアント装置に対応づけて、前記ドライバがセットアップされていないことを示すステータス表示を、前記グラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する」ように構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。

よって、相違点2は格別なものではない。

(4-3)小括

上記で検討したごとく、「相違点1」ないし「相違点3」は格別のものではなく、そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、上記引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ

以上のように、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4.むすび

以上のとおり、本件補正は、上記「3.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

平成23年2月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願は、平成21年9月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項16に記載された事項により特定されるものである。

1.特許法第17条の2第3項に規定する要件についての検討

平成21年9月2日付けの手続補正により、請求項1、2、9、及び16には、「インストール指示をしたクライアント装置のうち、インストール完了通知を送信してきたクライアント装置を表す表示」と、「インストール指示をしたクライアント装置のうち、インストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置に対応する表示」と、「当該クライアント装置がインストール未完了であることを示すステータス表示」とを「グラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する」態様が追加された。

そして、上記態様は、その記載からして、次の事項(a)及び(b)を含んでいる。

(a)「インストール指示をしたクライアント装置のうち、インストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置に対応する表示をグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する」態様
(b)「クライアント装置がインストール未完了であることを示すステータス表示をグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する」態様

しかしながら、出願当初の明細書を参照すると、(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

「【0047】
ステップS1006において、CPU1は、LAN100を介して、選択されたクライアント装置中のアイドル状態であるクライアント装置に対して選択されたプリンタドライバをダウンロードする。このプリンタドライバがダウンロードされたクライアント装置においては、上述したように、プリンタドライバが既にインストールされている場合、既にインストールされているプリンタドライバの削除が行われた後に、ダウンロードされたプリンタドライバのインストールが行われる。そして、クライアント装置上でプリンタドライバのインストールや更新が正しく行われた場合、当該クライアント装置からサーバ装置101へインストール完了通知が返される。」、
「【0049】
次いで、CPU1は、ステップS1008において、ステップS1007のインストール完了通知の受信結果に基づいて、選択されたクライアント装置の全てに対するプリンタドライバのインストール結果の一覧を表示する。ここでは、選択されたクライアント装置毎にそのインストールが正常に完了したか否かを示す情報を表示する。ここで、例えば、選択されたクライアント装置の中にアイドル状態以外のクライアント装置が含まれている場合、アイドル状態以外のクライアント装置に対しては、アイドル状態にすることを促すメッセージは送信されているが、プリンタドライバはインストールされてないので、このようなクライアント装置に対しては、選択されたプリンタドライバがインストールされていない旨を示す情報が対応付けて表示されることになる。…(後略)」

と記載されるように、「インストール完了通知の受信結果に基づいて、選択されたクライアント装置の全てに対するプリンタドライバのインストール結果の一覧を表示する」、「ここでは、選択されたクライアント装置毎にそのインストールが正常に完了したか否かを示す情報を表示する」、「例えば、…(中略)…プリンタドライバはインストールされてない…(中略)…、このようなクライアント装置に対しては、選択されたプリンタドライバがインストールされていない旨を示す情報が対応付けて表示される」との記載はあるものの、プリンタドライバのインストールが正常にされていないクライアント装置について、前記(a)の含む態様(すなわち、「インストール手段がインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置に対応する表示をグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する」態様)と前記(b)の含む態様(すなわち、「クライアント装置がインストール未完了であることを示すステータス表示をグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する」態様)とを区別して、グラフィカルユーザインタフェースにおいて表示することについては、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面には、記載も示唆もなく、また自明な事項でもない。

よって、上記事項(a)及び(b)を追加する平成21年9月2日付けの手続補正は、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしていない。

2.特許法第29条第2項に規定する要件についての検討

(1)本願発明

本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年9月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「複数のクライアント装置とネットワークを介して接続される情報処理装置であって、
前記ネットワークを介して前記クライアント装置毎にその稼動状態を取得する取得手段と、
前記取得手段により前記クライアント装置毎に取得された稼動状態に基づいて、前記クライアント装置毎にインストール可能状態にあるか否かを判別する判別手段と、
前記ネットワークを介して、前記インストール可能状態にあると判別されたクライアント装置に対してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストール手段と、
前記インストール手段がインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストール完了通知を送信してきたクライアント装置を表す表示と、前記インストール手段がインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置に対応する表示と、当該クライアント装置がインストール未完了であることを示すステータス表示と、をグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する表示手段と、
前記デバイスドライバがインストールされなかったクライアント装置に対してデバイスドライバを再度インストールする再指示の入力を、前記グラフィカルユーザインタフェースにおいて受け付ける再指示手段と、
前記再指示手段における再指示の入力に応答して、前記判別手段による判別処理と、前記インストール手段によるインストール指示の処理を繰り返す手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。」

(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成23年2月8日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項、引用発明及び周知技術の認定」に記載したとおりである。

そして、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。

複数のクライアント装置とネットワークを介して接続されるサーバ装置であって、
前記ネットワークを介して前記クライアント装置毎にその接続状態やステータスを取得する取得手段と、
前記取得手段により前記クライアント装置毎に取得された接続状態やステータスに基づいて、前記クライアント装置毎にセットアップ可能状態にあるか否かを判定する判定手段と、
ドライバのインストール先として選択されたクライアント装置に対して、前記ネットワークを介して、ドライバのセットアップ処理を実行するセットアップ手段と、
前記セットアップ手段による処理の実行後に、前記選択されたクライアント装置について、前記ドライバのセットアップ処理が正常終了したか否かを判定し、画面上に表示する表示手段と、
前記ドライバのセットアップ処理が正常終了しなかったクライアント装置に対してドライバを再度セットアップする再実行の指示を行う再指示手段と、
前記再指示手段における再実行の指示に応答して、前記セットアップ手段によるセットアップを実行するための処理を再び行うように制御する手段と、
を備えることを特徴とするサーバ装置。

(3)対比

本願発明と引用発明2とを対比する。

上記Cに「情報処理装置の好適な一例であるサーバ装置」と記載されるように、引用発明2の「サーバ装置」は、本願発明の「情報処理装置」に相当する。したがって、本願発明と引用発明2は、“複数のクライアント装置とネットワークを介して接続される情報処理装置”である点で一致する。

引用発明2の「接続状態やステータス」は、本願発明の「稼働状態」に相当する。したがって、本願発明と引用発明2は、“前記ネットワークを介して前記クライアント装置毎にその稼動状態を取得する取得手段”を備える点で一致する。

引用発明2の「セットアップ」は、本願発明の「インストール」に相当する。そして、引用発明2の「クライアント装置毎にセットアップ可能状態にあるか否かを判定する判定手段」においても、クライアント装置の「接続状態やステータス」に基づいて、クライアント装置毎にセットアップ可能かどうか(接続されていてセットアップ可能状態にあるか否か)判定しているものである。してみると、引用発明2の「判定」及び「判定手段」は、それぞれ、本願発明の「判別」及び「判別手段」に相当し、本願発明と引用発明2は、“前記取得手段により前記クライアント装置毎に取得された稼動状態に基づいて、前記クライアント装置毎にインストール可能状態にあるか否かを判別する判別手段”を備える点で一致する。

引用発明2の「ドライバ」は、本願発明の「デバイスドライバ」に相当する。そして、引用発明2の「ドライバのインストール先として選択されたクライアント装置に対して、前記ネットワークを介して、ドライバのセットアップ処理を実行するセットアップ手段」と、本願発明の「前記ネットワークを介して、前記インストール可能状態にあると判別されたクライアント装置に対してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストール手段」とは、ともに、“前記ネットワークを介して、前記インストール可能状態にあると判別されたクライアント装置に対してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストール手段”を備える点で共通する。

引用発明2の「(インストール先として)選択されたクライアント装置」は、本願発明の「(インストール)指示をしたクライアント装置」に相当する。そして、引用発明2における「ドライバのセットアップ処理が正常終了したか否かを判定し、画面上に表示する」ということは、ドライバのセットアップ処置結果を画面上に表示していることに他ならない。また、本願発明における「前記インストール手段がインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストール完了通知を送信してきたクライアント装置を表す表示と、前記インストール手段がインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置に対応する表示と、当該クライアント装置がインストール未完了であることを示すステータス表示と、をグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する」ということは、デバイスドライバのインストール処理結果を画面上に表示していることに他ならない。してみれば、本願発明と引用発明2は、“前記インストール手段による処理の実行後に、インストール指示をしたクライアント装置について、前記デバイスドライバのインストール処理結果を画面上に表示する表示手段”を備える点で共通する。

引用発明2の「再実行の指示を行う」は、本願発明の「再指示の入力を」「受け付ける」に相当する。そして、引用発明2の「ドライバのセットアップ処理が正常終了しなかったクライアント装置」において、ドライバのセットアップ処理が正常終了しなかったということは、ドライバがセットアップされなかったことを意味するものと認められることから、本願発明と引用発明2は、“前記デバイスドライバがインストールされなかったクライアント装置に対してデバイスドライバを再度インストールする再指示の入力を受け付ける再指示手段”を備える点で共通する。

そして、本願発明と引用発明2は、“前記再指示手段における再指示の入力に応答して、前記インストール手段によるインストール指示の処理を繰り返す手段”を備える点で共通する。

以上から、本願発明と引用発明2とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

複数のクライアント装置とネットワークを介して接続される情報処理装置であって、
前記ネットワークを介して前記クライアント装置毎にその稼動状態を取得する取得手段と、
前記取得手段により前記複数のクライアント装置から取得された稼動状態に基づいて、各クライアント装置がデバイスドライバをインストール可能な状態にあるか否かを判別する判別手段と、
前記ネットワークを介して、前記インストール可能状態にあると判別されたクライアント装置に対してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行するインストール手段と、
前記インストール手段による処理の実行後に、インストール指示をしたクライアント装置について、前記デバイスドライバのインストール処理結果を画面上に表示する表示手段と、
前記デバイスドライバがインストールされなかったクライアント装置に対してデバイスドライバを再度インストールする再指示の入力を受け付ける再指示手段と、
前記再指示手段における再指示の入力に応答して、前記インストール手段によるインストール指示の処理を繰り返す手段とを備えることを特徴とする情報処理装置。

(相違点1)

インストール手段(セットアップ手段)において、本願発明が、「インストール可能状態にあると判別されたクライアント装置に対してデバイスドライバのインストールを指示するための処理を実行する」ものであるのに対して、引用発明2は、ドライバのインストール先として選択されたクライアント装置に対して、ドライバのセットアップ処理を実行するものである点。

(相違点2)

表示手段において、本願発明が、「前記インストール手段がインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストール完了通知を送信してきたクライアント装置を表す表示と、前記インストール手段がインストール指示をしたクライアント装置のうち、インストールの完了通知を送信してこなかったクライアント装置に対応する表示と、当該クライアント装置がインストール未完了であることを示すステータス表示と、をグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する」ものであるのに対して、引用発明2は、選択されたクライアント装置について、前記ドライバのセットアップ処理結果を画面上に表示するものではあるが、具体的な表示内容について明記されていない点。

(相違点3)

再指示手段における再指示の入力に応答した処理において、本願発明が「判別手段による判別処理」を備えるのに対して、引用発明2は、当該判別処理を備えていない点。

(4)判断

上記「相違点1」ないし「相違点3」について検討する。

(4-1)相違点1及び相違点3について

引用文献2に、ホスト計算機が、通信回線を介して接続されたサーバ計算機におけるCPU負荷状況の通知を受けて、データ転送可能状態であることを確認し、データを転送するかしないかを判断し、この判断結果に基づいてデータを転送する技術(「周知技術1」)が記載されているように、データ転送を行う前に、転送先の装置の状況を確認してから処理を行うようにすることは、当該技術分野において、慣用的に行われている技術に過ぎない。してみれば、引用発明2のセットアップ手段においても、当該周知技術1及び慣用技術を適用し、「前記ネットワークを介して、前記セットアップ可能状態にあると判定されたクライアント装置に対してドライバのセットアップを指示するための処理を実行する」ように構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。そして、再指示手段における再指示の入力に応答した処理において、「判定手段による判定処理」を備えるように構成することについても、当業者が容易に想到し得たものである。

よって、相違点1及び相違点3は格別なものではない。

(4-2)相違点2について

引用文献3に、ホストコンピュータから複数の端末に対してプログラムデータを送信した後、各端末から処理結果の通知を受け、当該各端末からの処理結果をディスプレイに出力し、異常があった端末に対して再びプログラムメンテナンス命令を発行する技術(「周知技術2」)が記載されているように、端末毎に処理結果をディスプレイに表示するようにすることは、当該技術分野において、慣用的に行われている周知技術に過ぎない。また、画面表示に際して、グラフィカルユーザインタフェースを用いることについては、当業者が必要に応じて適宜採用し得る設計的事項に過ぎない。してみれば、引用発明2においても、選択されたクライアント装置について、ドライバのセットアップ処理が正常終了したか否かを判定しているのだから、当該周知技術2を適用し、各クライアント装置から送信されるセットアップの処理結果を、クライアント装置毎にグラフィカルユーザインタフェースを用いて表示させるように構成すること、すなわち、引用発明2において、「前記セットアップ手段がセットアップ指示をしたクライアント装置のうち、セットアップの完了通知を送信してきたクライアント装置を表す表示と、前記セットアップ手段がセットアップ指示をしたクライアント装置のうち、セットアップの完了通知を送信してこなかったクライアント装置に対応する表示と、当該クライアント装置がセットアップ未完了であることを示すステータス表示と、をグラフィカルユーザインタフェースにおいて表示する」ように構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。

よって、相違点2は格別なものではない。

(4-3)小括

上記で検討したごとく、「相違点1」ないし「相違点3」は格別のものではなく、そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

したがって、本願発明は、上記引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。

5.むすび

以上のとおり、平成21年9月2日付けの手続補正は、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてしたものではないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしていない。

また、本願発明は、本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-21 
結審通知日 2012-02-27 
審決日 2012-03-09 
出願番号 特願2003-205052(P2003-205052)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 篤男北川 純次  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 清木 泰
田中 秀人
発明の名称 情報処理装置、プッシュ型インストール方法およびプログラム  
代理人 別役 重尚  

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