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審決分類 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない H01M
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない H01M
管理番号 1255988
審判番号 訂正2011-390122  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2011-11-10 
確定日 2012-04-23 
事件の表示 特許第4685192号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判は、平成22年7月27日に出願され、平成23年2月18日に特許第4685192号として設定登録された特許(以下「本件特許」という。)について、平成23年11月10日付けで訂正審判が請求されたものであって、当審において同年12月26日付けで訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見を求めたところ、指定期間を過ぎても何らの応答もなかったものである。

第2 請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、本件特許の明細書(以下、「本件明細書」という。)及び図面(以下、「本件図面」という。)を、審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正図面のとおり訂正することを求めるものである。

第3 訂正の内容
本件審判に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)は、以下の訂正事項1?5からなるものと認める(以下、明瞭化のため下線を引いた。)。

1 訂正事項1
本件明細書の段落【0029】記載の、「本発明においては、イオン交換樹脂としては、充電に基づいて正極においてはケイ素の陽イオン(Si^(+))が形成され、負極においてはケイ素の陰イオン(Si^(-))が形成されており、何れか一方を両極間において移行させれば良いことから、カチオン性の電解質及びアニオン性の電解質の何れをも採用することができる。」を「本発明においては、イオン交換樹脂としては、充電に基づいて正極においてはケイ素の陽イオン(Si^(+))が形成され、負極においてはケイ素の陰イオン(Si^(-))が形成されているが、その際電子(e^(-))が正極から負極に移行することから、カチオン性の電解質及びアニオン性の電解質の何れをも採用することができる。」と訂正する。

2 訂正事項2
本件明細書の段落【0033】記載の、「発明者の経験では、スルホン酸基(-SO_(3)H)を有しているポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(PAMPS)が、円滑にケイ素の負イオン((Si^(-))を支障なく移動させる点において好適に採用することができる。」を「発明者の経験では、スルホン酸基(-SO_(3)H)を有しているポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(PAMPS)が、円滑に電子(e^(-))を支障なく移動させる点において好適に採用することができる。」と訂正する。

3 訂正事項3
本件明細書の段落【0034】記載の、「ポリマーによるイオン交換樹脂を採用する場合、単に当該イオン交換樹脂のみによって正極と負極間を充填した場合には、ケイ素イオン(Si^(+)又はSi^(-))が円滑に移動するために適切な空隙を形成することができない場合が生じ得る。」を「ポリマーによるイオン交換樹脂を採用する場合、単に当該イオン交換樹脂のみによって正極と負極間を充填した場合には、電子(e^(-))が円滑に移動するために適切な空隙を形成することができない場合が生じ得る。」と訂正する。

4 訂正事項4
本件明細書の段落【0046】記載の、「前記基盤1の典型例としては、石英ガラスが好適に採用され、金属としては白金等の貴金属を使用する場が多い。」を「前記基盤1の典型例としては、石英ガラスが好適に採用され、金属としては白金等の貴金属を使用する場合が多い。」と訂正する。

5 訂正事項5
本件図面の【図2】中、時間軸の始点にある「-40」を削除する。

第4 当審の判断
1 新規事項の有無について
(1)訂正事項1について
本件明細書の段落【0029】にある、「本発明においては、イオン交換樹脂としては、充電に基づいて正極においてはケイ素の陽イオン(Si^(+))が形成され、負極においてはケイ素の陰イオン(Si^(-))が形成されており、何れか一方を両極間において移行させれば良いことから、カチオン性の電解質及びアニオン性の電解質の何れをも採用することができる。」との記載は、正極と負極の間の二次電池内部を移行するイオン種と、当該イオンが移行する際の媒体となる電解質の種類との関係について述べたものである。他方、訂正後の段落【0029】にある、「電子(e^(-))」は電池の内部を移行するものではなく、電池の外部に接続された回路を移行するものであるから、訂正後の段落【0029】の記載は、電池の外部に接続された回路を移行する電子と、電池内部の電解質の種類との関係を述べたものとなる。そして、電池の外部に接続された回路を移行する電子と、電池内部の電解質の種類との関係については、本件明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載されておらず、また、訂正事項1が仮に誤記の訂正を目的とするものであるとしても、上記電池の外部に接続された回路を移行する電子と、電池内部の電解質の種類との関係については、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)にも記載されていない。
したがって、訂正事項1は、本件明細書等、及び当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項以外の技術的事項を新たに導入するものであるから、本件明細書等、及び当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではない。

(2)訂正事項2、3について
訂正事項2、3も、訂正事項1と同様、二次電池の内部を移動するイオン種と、当該イオンが移動する際の媒体となる電解質との関係について述べた段落【0033】、【0034】の記載を、電池の外部に接続された回路を移動する電子と、電池内部の電解質との関係を述べたものに訂正するものであるから、上記「(1)」で述べた訂正事項1についての判断と同様、本件明細書等、及び当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとは認められない。

2 独立特許要件について
請求人は訂正事項1?3に係る訂正について、誤記の訂正を目的とするものと主張しているが、電池の内部に存在する電解質と電池の内部を移行する(Si^(+))又は(Si^(-))との関連性は、本件明細書の記載に基づいて矛盾なく理解できるものの、電解質と電池の外部回路を移行する電子との関連性を示す根拠は、上記「1」で述べたとおり特許明細書に記載されていないし、技術常識から矛盾なく理解できる事項でもないから、訂正事項1?3に係る訂正は、誤記の訂正を目的とするものに該当しない。
なお、仮に、訂正事項1?3に係る訂正が、請求人の主張する誤記の訂正を目的とするものであるとして、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
上記「1」で述べたとおり、訂正後の段落【0029】、【0033】、【0034】には、電池の外部に接続された回路を移行する電子と、電池内部の電解質との関係について記載されていると認められるが、電池の外部に接続された回路を移行する電子の移行のし易さと電池内部の電解質の種類との間の技術的な関連性が不明であるから、電解質の種類に関して段落【0029】に「カチオン性の電解質及びアニオン性の電解質の何れをも採用することができる」と記載されているものの、その理由が不明であり、当該記載の技術的意義を当業者が理解することができない。したがって、実施例において用いられているカチオン性のポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(PAMPS)については、発明の詳細な説明において実質的に記載された電解質と認められるものの、アニオン性を含むその他の電解質を採用する場合にまで本件発明の効果を推認することができない。
そうすると、発明の詳細な説明の欄に記載された技術内容を、カチオン性のポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(PAMPS)を電解質として特定していない訂正後の請求項1?3、5?7に係る発明にまで拡張ないし一般化することはできない。
よって、訂正後の請求項1?3、5?7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものということができないから、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、訂正事項1?3を含む本件訂正は、特許法第126条第3項の規定に適合せず、さらに同条第5項の規定に適合しないので、本件訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-23 
結審通知日 2012-02-27 
審決日 2012-03-12 
出願番号 特願2010-168403(P2010-168403)
審決分類 P 1 41・ 856- Z (H01M)
P 1 41・ 841- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀧 恭子  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 山本 一正
田中 則充
登録日 2011-02-18 
登録番号 特許第4685192号(P4685192)
発明の名称 シリコン化合物による固体型二次電池及びその製造方法  
代理人 赤尾 直人  

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