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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1256002 |
審判番号 | 不服2009-10926 |
総通号数 | 150 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-06-11 |
確定日 | 2012-04-25 |
事件の表示 | 特願2003-544634「知識ベースに対して情報抽出および品質管理を実施する方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月22日国際公開、WO03/42872、平成17年 4月14日国内公表、特表2005-509952〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年11月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成13年11月9日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成20年9月17日付けで拒絶理由が通知され、平成21年2月9日付けで手続補正がなされたが、同年3月11日付けで拒絶査定がされ、これに対し同年6月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成21年6月11日付けの手続補正についての補正却下の決定 [結論] 平成21年6月11日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正内容 平成21年6月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1のとおりに補正する補正事項を含むものである。 <本件補正前の特許請求の範囲の請求項1> 「【請求項1】 記事から情報を抽出し該抽出した情報を知識表現で格納するために、コンピュータによって実行されるシステムであって、 情報が抽出される記事を選択して優先順位付けする記事選択ユニットと、 該記事選択ユニットに接続されると共に通信を行い、前記記事選択ユニットから選択された記事を受信し予め定められた情報抽出プロトコルに従って前記選択された記事から情報を抽出する情報抽出ユニットであって、前記抽出された情報は少なくともオブジェクトとプロセスとの関係で表現された事実を含み、更に、前記抽出された情報は、自然言語の文章として入力される、前記情報抽出ユニットと、 該情報抽出ユニットに接続されると共に通信を行い、前記抽出された情報が適切に抽出されかつ知識表現で格納するためにフォーマットされているかを確認する知識表現管理ユニットと、 該知識表現管理ユニットに接続されると共に通信を行い、適切に抽出されかつフォーマットされていれば前記情報をその表現で格納しかつ格納された表現に関する問い合わせに応答する情報格納ユニットと、 該情報格納ユニットに接続されると共に通信を行い、前記情報格納ユニット内に格納された情報に対するユーザの問い合わせに応答し、該問い合わせに応答して情報格納ユニットから情報を検索し該検索した情報を表示する照会管理および情報表示ユニットと、 を含む前記システム。」 <本件補正後の特許請求の範囲の請求項1> 「【請求項1】 記事から情報を抽出し該抽出した情報を知識表現で格納するために、コンピュータによって実行されるシステムであって、 情報が抽出される記事を選択して優先順位付けする記事選択ユニットと、 該記事選択ユニットに接続されると共に通信を行い、前記記事選択ユニットから選択された記事を受信し予め定められた情報抽出プロトコルに従って前記選択された記事から情報を抽出する情報抽出ユニットであって、前記抽出された情報は少なくともオブジェクトとプロセスとの関係で表現された事実を含み、更に、前記抽出された情報は、自然言語の文章として入力され、オントロジーに従って知識表現に格納される、前記情報抽出ユニットと、 該情報抽出ユニットに接続されると共に通信を行い、前記抽出された情報が適切に抽出されかつ知識表現で格納するためにフォーマットされているかを確認する知識表現管理ユニットと、 該知識表現管理ユニットに接続されると共に通信を行い、適切に抽出されかつフォーマットされていれば前記情報をその表現で格納しかつ格納された表現に関する問い合わせに応答する情報格納ユニットと、 該情報格納ユニットに接続されると共に通信を行い、前記情報格納ユニット内に格納された情報に対するユーザの問い合わせに応答し、該問い合わせに応答して情報格納ユニットから情報を検索し該検索した情報を表示する照会管理および情報表示ユニットと、 を含む前記システム。」 2.本件補正に対する判断 本件補正のうちの上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「抽出された情報」を、「オントロジーに従って知識表現に格納される」ものに限定したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(上記改正前の特許法第17条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2-1.本願補正発明 本願補正発明は、上記「1.」の<本件補正後の特許請求の範囲の請求項1>の欄に転記したとおりのものである。 2-2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-259498号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 あ.「【0016】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態の構成例を示すブロック図である。この図において、文書入力部1からは、処理対象の文書が入力される。ユーザインタフェース部2は、ユーザからのクエリを受け付ける。 【0017】知識情報記憶手段3は、後述する事象やその事象に係わる属性に関する情報および固有名を固有コードに変換するための情報を記憶している。事象特定手段4は、知識情報記憶手段3に記憶されている知識情報(事象の種類に関する情報)を参照して、文書入力部1またはユーザインタフェース部2から入力された文書やクエリに記述されている事象の種類を特定する。 【0018】ここで、「事象」とは、実世界で生起する「できごと」を示している。例えば、新聞記事などでは「A社がXを発売する。」というような実世界で発生した(または、これから発生する)事象に種々の補足情報が付加されて記述されていると考える。 【0019】従って、事象特定手段4に対して、例えば、前述の「A社がXを発売する。」が入力されると、この文章に記述されている事象は、<新製品の発売>であると特定されることになる。ここで、<>は、その内部の語句が抽象化されて得られた概念であることを示している。 【0020】なお、新聞記事などのように、記述の対象となる事象が明確であり、また、その表現様式が限られている文書においては、記述された事象のとりうる構造(以下、事象構造と適宜略記する)にも所定の制約条件が自ずと生ずることから、このような「事象」に着目して文書を解析することにより、効果的な処理を行うことが可能となる。 【0021】属性値抽出手段5は、知識情報記憶手段3に記憶されている知識情報(所定の事象に係わる属性に関する情報)を参照して、文書またはクエリから属性値を抽出する。 【0022】例えば、知識情報記憶手段3は、前述の<新製品の発売>という事象に関しては、<販売会社>、<製品情報>、<日付>、および、<変更点>などの属性を記憶しており、属性値抽出手段5は、事象特定手段4によって特定された事象に対応する属性を知識情報記憶手段3から取得し、その属性に対応する属性値を文書またはクエリから抽出する。 【0023】例えば、前述の「A社がXを発売する。」という事象では、属性<販売会社>に対応する属性値「A社」が取得され、また、属性<製品情報>に対応する属性値「X」などが抽出される。 【0024】作成日時取得手段6は、文書またはクエリの作成日時を取得する。時制取得手段7は、文書またはクエリを構成する文章の時制(tense)を取得する。正規化手段8は、属性値抽出手段5によって抽出された属性のうち、数値に変換可能なものを選択し、対応する数値に変換(正規化)する。 【0025】単位変換手段9は、正規化手段8が正規化した数値の単位を変換する処理を行う。対応付け手段10は、知識情報記憶手段3に記憶されている知識情報を参照して、属性値抽出手段5によって抽出された属性値を、実世界における実体に対応付ける処理を行う。なお、この「実体」とは、文書に記述されている属性値が示す実世界の「オブジェクト」を意味している。例えば、前述の例では、「A社」と呼ばれる企業が複数存在する場合には、文書中に記述されている「A社」がどの企業(オブジェクト)を示しているのかを特定する必要があるので、対応付け手段10は、文書中の他の属性値(例えば、「社長の名前」や「本社地」など)を参照して「A社」を特定する。 【0026】文書記憶手段11は、対応付け手段10によって対応付けがなされた属性値集合と、もとの文書(または、もとの文書の格納場所を特定する情報)とを対応付けて記憶する。 【0027】文書抽出手段12は、対応付け手段10から供給されたクエリに対応する文書を、属性値を参照して文書記憶手段11から取得する。そして、重要度算出手段13によって算出された個々の文書の重要度を参照し、ある閾値以上の重要度を有する文書を出力する。 【0028】重要度算出手段13は、所定のキーワードの出現頻度などを求めることにより、対象とする文書の重要度を算出する。図2を参照して、図1に示す実施の形態を含む通信システムの構成例について説明する。」 い.「【0032】次に、以上の実施の形態の動作について説明する。図3は、図1に示す実施の形態において、新たな文書が文書入力部1から入力された場合(例えば、図2に示すサーバ23から新たな文書が供給された場合)に実行される処理の一例を説明するフローチャートである。 ・・・中略・・・ [S4]正規化手段8は、抽出された属性値に日付表現が含まれているか否かを判定し、日付表現が含まれている場合にはステップS5に進み、それ以外の場合にはステップS7に進む。 ・・・中略・・・ [S7]正規化手段8は、抽出された属性値に金額表現が含まれているか否かを判定し、金額表現が含まれている場合には、ステップS8に進み、それ以外の場合にはステップS11に進む。 ・・・中略・・・ [S11]正規化手段8は、他の数値表現が存在するか否かを判定し、他の数値表現が存在する場合にはステップS12に進み、それ以外の場合にはステップS13に進む。 ・・・中略・・・ [S13]対応付け手段10は、属性値に固有名(例えば、「橋本電気」等)が含まれているか否かを判定し、含まれている場合にはステップS14に進み、それ以外の場合にはステップS15に進む。 ・・・中略・・・ [S15]対応付け手段10は、参照表現(「同」または「両」などの表現)が存在するか否かを判定し、参照表現が存在する場合にはステップS16に進み、それ以外の場合にはステップS18に進む。 ・・・中略・・・ [S18]対応付け手段10は、正規化された属性値(以下、正規化情報と略記する)と、元の文書(または、元の文書の格納場所を特定するための情報)とを関連付けて文書記憶手段11に記憶させる。 【0046】以上の処理により、入力された文書に記述されている事象が特定されるとともに、その事象に係わる属性の属性値が取得される。そして、取得された属性値と実世界の実体とが対応付けられて得られた正規化情報と、もとの文書(または、元の文書の格納場所を特定するための情報)とが文書記憶手段11に記憶されることになる。」 う.「【0098】このような入力画面から入力されたクエリは、各入力項目の属性を示す情報が付与された後、事象特定手段4、属性値抽出手段5、および、対応付け手段10を介して、文書抽出手段12に供給される。なお、付与される情報としては、例えば、「AAA」に対してはタグ<組織名>が付与される。また、価格はタグ<価格 type=price unit=円 value=“from 100000 to 300000”>に変換される。更に、発売日は、タグ<発売日 type=date value=“from 1997-1-1 to 1997-6-30”>に変換される。 【0099】文書抽出手段12は、ユーザインタフェース部2から供給されたクエリとタグとに対応する属性値を有する文書を文書記憶手段11から取得する。即ち、文書記憶手段11には、元の文書とともに正規化情報が記憶されているので、文書抽出手段12は、この正規化情報に含まれている属性値と、クエリのタグとを照合することにより、所望の文書を抽出する。 【0100】このようにして検索された結果は、図示せぬ表示装置に表示出力される。図21は、検索結果を表示する画面のテンプレートを示している。この例では、検索結果の属性値として「組織名」、「製品種」、「製品名」、「価格」、「発売日」、および、「見出し」が表示される。」 ここで、上記各記載事項を関連図面及び各種常識に照らせば、以下のことがいえる。 (ア)上記記載事項中の「通信システム」が有する「文書入力部1」、「事象特定手段4」及び「属性値抽出手段5」は、予め定められた情報抽出手順に従って、自然言語の文章として入力される「文書」から「事象」および該「事象」に関する「属性」の「属性値」を抽出するものであって、該抽出される「属性値」と「事象」とは、「属性値」というオブジェクトと「事象」というできごととの関係で表現された事実を含む情報であるから、該「通信システム」が有する「文書入力部1」、「事象特定手段4」及び「属性値抽出手段5」は、全体として、「文書」から情報を抽出するユニットであって、前記抽出された「情報」は少なくともオブジェクトとプロセス(できごと)との関係で表現された事実を含み、更に、前記抽出された情報は、自然言語の文章として入力され、正規化情報の表現で格納される、「抽出ユニット」とも呼び得るものである。 (イ)上記記載事項中の「サーバ23」は、上記「抽出ユニット」とも呼び得るものに、「情報」が抽出される文書を供給しているから、該「サーバ23」は、情報が抽出される文書を供給する「供給ユニット」とも呼び得るものであり、また当然に、文書を供給する際には該供給する文書を選択している。 (ウ)上記記載事項中の「正規化手段8」は、抽出された「情報」が示すオブジェクトが特定されているか、及び、抽出された「情報」が正規化情報の表現で記憶させるための変換処理を必要とするか、等を確認しているから、該「正規化手段8」は、抽出された情報が適切に抽出されかつ正規化情報の表現で格納するためにフォーマットされているかを確認する「管理ユニット」とも呼び得るものである。 (エ)上記記載事項中の「対応付け手段10」は、上記適切に抽出されかつフォーマットされている情報を「文書記憶手段11」に記憶させるとともに、入力されたクエリを「文書抽出手段12」に供給するから、該「通信システム」が有する「対応付け手段10」及び「文書記憶手段11」は、全体として、適切に抽出されかつフォーマットされている情報をその表現で格納しかつ格納された表現に関する問い合わせに応答する「情報格納ユニット」とも呼び得るものである。 (オ)上記記載事項中の「文書抽出手段12」は、上記「情報格納ユニット」とも呼び得るものに格納された情報に対するユーザのクエリに応答して情報を検索し、検索した情報を「表示装置」に表示するから、該「文書抽出手段12」及び「表示装置」は、全体として、格納された情報に対するユーザの問い合わせに応答して情報を検索し、検索した情報を表示する「照会管理および情報表示ユニット」とも呼び得るものである。 (カ)上記記載事項中の「通信システム」によって「正規化情報の表現」で格納された情報は、図16や図18のようにXML表記で格納されているから、該「通信システム」は、当然に、抽出した情報を「知識表現」で格納する、「システム」である。 したがって、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「文書から情報を抽出し該抽出した情報を知識表現で格納するために、コンピュータによって実行されるシステムであって、 情報が抽出される文書を選択して供給する供給ユニットと、 該供給ユニットに接続されると共に通信を行い、前記供給ユニットから選択された文書を受信し予め定められた情報抽出手順に従って前記供給された記事から情報を抽出する抽出ユニットであって、前記抽出された情報は少なくともオブジェクトとプロセスとの関係で表現された事実を含み、更に、前記抽出された情報は、自然言語の文章として入力され、知識表現で格納される、前記抽出ユニットと、 該抽出ユニットに接続されると共に通信を行い、前記抽出された情報が適切に抽出されかつ知識表現で格納するためにフォーマットされているかを確認する管理ユニットと、 該管理ユニットに接続されると共に通信を行い、適切に抽出されかつフォーマットされている情報をその表現で格納しかつ格納された表現に関する問い合わせに応答する情報格納ユニットと、 該情報格納ユニットに接続されると共に通信を行い、前記情報格納ユニット内に格納された情報に対するユーザの問い合わせに応答して情報を検索し該検索した情報を表示する照会管理および情報表示ユニットと、 を含む前記システム。」 2-3.本願補正発明と引用発明との対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。 (1)引用発明の「文書」、「情報格納ユニット」、「管理ユニット」、および「照会管理および情報表示ユニット」はそれぞれ、本願補正発明の「記事」、「情報格納ユニット」、「知識表現管理ユニット」、および「照会管理および情報表示ユニット」に相当する。 (2)引用発明の「抽出ユニット」と本願補正発明の「情報抽出ユニット」とは、「記事」(文書)を受信し予め定められた情報抽出プロトコル(手順)に従って前記記事から情報を抽出するためのユニットであって、該抽出された情報は少なくともオブジェクトとプロセスとの関係で表現された事実を含み、更に、前記抽出された情報は、自然言語の文章として入力され、知識表現で格納される、抽出のためのユニットである点で共通する。 (3)引用発明の「供給ユニット」と本願補正発明の「記事選択ユニット」とは、情報が抽出される記事(文書)を選択するユニットである点で共通する。 したがって、本願補正発明と引用発明との間には、以下の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「記事から情報を抽出し該抽出した情報を知識表現で格納するために、コンピュータによって実行されるシステムであって、 情報が抽出される記事を選択するユニットと、 該選択するユニットに接続されると共に通信を行い、前記選択するユニットから選択された文書を受信し予め定められた情報抽出プロトコルに従って前記選択された記事から情報を抽出するユニットであって、前記抽出された情報は少なくともオブジェクトとプロセスとの関係で表現された事実を含み、更に、前記抽出された情報は、自然言語の文章として入力され、知識表現で格納される、抽出のためのユニットと、 該抽出のためのユニットに接続されると共に通信を行い、前記抽出された情報が適切に抽出されかつ知識表現で格納するためにフォーマットされているかを確認するユニットと、 該確認するユニットに接続されると共に通信を行い、適切に抽出されかつフォーマットされている情報をその表現で格納しかつ格納された表現に関する問い合わせに応答する情報格納ユニットと、 該情報格納ユニットに接続されると共に通信を行い、前記情報格納ユニット内に格納された情報に対するユーザの問い合わせに応答して情報を検索し該検索した情報を表示する照会管理および情報表示ユニットと、 を含む前記システム。」である点。 (相違点1) 本願補正発明の「選択するユニット」(記事選択ユニット)は、「記事を選択して優先順位付けする」ユニットであるのに対し、引用発明の「選択するユニット」(供給ユニット)は、「記事を選択して優先順位付けする」ユニットではない点。 (相違点2) 本願補正発明の「抽出のためのユニット」(情報抽出ユニット)が扱う「抽出された情報」は、「オントロジーに従って」知識表現に格納されるものであるのに対し、引用発明の「抽出のためのユニット」(抽出ユニット)が扱う「抽出された情報」は、「オントロジーに従って」知識表現に格納されるものではない点。 2-4.判断 上記相違点について検討する。 (相違点1)について 情報処理分野一般において、選択される処理対象が常に単数であるとは限らないこと、選択される処理対象が複数の場合には(同時には処理できないから)逐次処理する必要があること、逐次処理をするにあたり何らかの優先順位付けをして処理対象を選択することはごく自然に行われること、等を鑑みれば、引用発明の「選択するユニット」(供給ユニット)を、「記事を選択して優先順位付けする」ユニットとすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。 (相違点2)について 以下の事情を勘案すると、引用発明の「抽出のためのユニット」(抽出ユニット)が扱う「抽出された情報」を、「オントロジーに従って」知識表現に格納されるものとすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。 (あ)情報抽出を行うシステム一般において、対象とする記事から情報を抽出する際の手法として何を用いるかは当業者が設計事項として適宜実施すべき事項にすぎない。 (い)情報抽出の一手法にオントロジーを利用した情報抽出があることは、例えば“オントロジー主導による情報抽出,廣田啓一、佐々木裕、加藤恒昭,人工知能学会誌Vol.14 No.6,1999年11月,pp.1010-1018”や“オントロジー主導による情報抽出の実装と評価,廣田啓一、佐々木裕、加藤恒昭,言語処理学会第6回年次大会発表論文集,2000年3月,pp.137-138”等に記載されるように、周知である。 (う)引用発明の「システム」も、対象とする記事(文書)から情報を抽出して格納するシステムであるから、情報を抽出する際の手法として上記(い)のような周知の手法を用いて、格納される情報、すなわち抽出された情報をオントロジーに従ったものとすることに格別の困難性はない。 (え)上記(あ)?(う)のことは、取りも直さず、引用発明の「抽出のためのユニット」(抽出ユニット)が扱う「抽出された情報」を、「オントロジーに従って」知識表現に格納されるものとすることが当業者にとって容易であったことを意味している。 (本願補正発明の効果について) 本願補正発明の奏する効果は、引用発明及び上述した周知の事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別なものということはできない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び上述した周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年2月9日付け手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものである。 そして、その平成21年2月9日付け手続補正書の請求項1に記載された事項は、前記「第2」の「1.」の<本件補正前の特許請求の範囲の請求項1>の欄に転記したとおりのものである。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2」の「2.」の「2-2.」の項に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が前記「第2」の「2.」の項に記載したとおり、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-11-28 |
結審通知日 | 2011-11-29 |
審決日 | 2011-12-14 |
出願番号 | 特願2003-544634(P2003-544634) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 梅本 達雄 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
加内 慎也 石川 正二 |
発明の名称 | 知識ベースに対して情報抽出および品質管理を実施する方法およびシステム |
代理人 | 清水 邦明 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 浅村 肇 |
代理人 | 岩見 晶啓 |