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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1256688 |
審判番号 | 不服2011-5164 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-03-07 |
確定日 | 2012-05-10 |
事件の表示 | 特願2006-169408「インクカートリッジ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月12日出願公開、特開2006-272972〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成12年5月18日(優先権主張平成11年5月20日、平成11年9月10日)に出願した特願2000-147057号の一部を平成18年6月19日に新たな特許出願としたものであって、平成19年5月10日及び平成22年7月30日付けで手続補正がなされ、同年11月30日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年3月7日付けで拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 なお、請求人は、当審における平成23年6月1日付けの審尋に対して同年8月3日付けで回答書を提出している。 2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成23年3月7日付け手続補正によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの次のものである。 「インクジェット記録装置に装着されるインクカートリッジであって、 圧電素子を有し、インク消費状態に応じて変化する残留振動状態を示す信号を出力して、音響インピーダンスの変化に基づいてインク消費状態を検出する液体センサと、 消費関連情報を記憶する記憶手段と、 を備え 前記消費関連情報は、前記液体センサを用いて前記インク消費状態を取得する場合に利用され、少なくとも該インクカートリッジの形状、前記液体センサの仕様、及び該インクカートリッジに収容されるインクの仕様によって決まる検出特性である音響インピーダンスの大きさを表す共振周波数の情報である検出特性情報を含み、 前記検出特性情報は、前記インクカートリッジ内のインクの消費を開始する前の検出特性を示す消費前検出特性情報を含む インクカートリッジ。」(以下「本願発明」という。) 3 刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開平3-169642号公報(以下「引用例」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている(下線は審決で付した、以下同じ。)。 (1)「2.特許請求の範囲 1.インクを記録ヘッドから吐出して印字用紙に像を形成することにより印字を行なうインクジェット記録装置において、 インクを溜めておくインクタンクに振動発生手段と振動検出手段とを固着し、前記振動発生手段によりインクタンクを振動させたとき、前記振動検出手段が検出した共振周波数によって前記インクタンク内のインクの有無を判別する判別手段を設けたことを特徴とするインクジェット記録装置。 2.記録ヘッドは、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する吐出エネルギー発生体として熱エネルギー発生素子を備えており、前記熱エネルギーによって生成する気泡により生ずる急激な圧力変化を利用することでインクを吐出することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。」(1頁左下欄4行?同頁右下欄1行) (2)「3.発明の詳細な説明 〔産業上の利用分野〕 本発明は、インクを記録ヘッドから吐出して印字用紙に像を形成することにより印字を行なうインクジェット記録装置に関する。 〔従来の技術〕 従来のインクジェット記録装置においては、インクを溜めておくインクタンク内に2本の針状の電極を埋め込み、インクの導電性を利用して両電極間の抵抗値を測定することにより、インクタンク内のインクの有無を検出する検出手段を有するものがあった。 〔発明が解決しようとする課題〕 上述した従来のインクジェット記録装置におけるインクの検出手段は、電極が腐食しやすく、検出抵抗値の変化量か大きくとれないため、信頼性が低いという問題点があった。 本発明の目的は、高信頼性のインクの検出手段を備えたインクジェット記録装置を提供することである。 〔課題を解決するための手段〕 本発明のインクジェットプリンタは、 インクを記録ヘッドから吐出して印字用紙に像を形成することにより印字を行なうインクジェット記録装置において、 インクを溜めておくインクタンクに振動発生手段と振動検出手段とを固着し、前記振動発生手段によりインクタンクを振動させたとき、前記振動検出手段が検出した共振周波数によって前記インクタンク内のインクの有無を判別する判別手段を設けた。 記録ヘッドは、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する吐出エネルギー発生体として熱エネルギー発生素子を備えており、前記熱エネルギーによって生成する気泡により生ずる急激な圧力変化を利用することでインクを叶出するものがある。 〔作 用〕 振動発生手段によってインクタンクを振動させると、インクタンク内にインクが有るときと無いときとでインクタンクの共振周波数が異なるため、振動検出手段が検出する周波数も異なるものとなる。この周波数の相違により判別手段がインクの有無を判別する。」(1頁右下欄2行?2頁右上欄5行) (3)「〔実施例〕 次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。 第1図は本発明のインクジェット記録装置の一実施例を示す斜視図、第2図(a)は第1図の実施例が備えているキャリアを矢印A方向から見たようすを示す部分破断図、第2図(b)は第2図(a)に示すキャリアに記録ヘッドを装着した状態を示す部分破断図である。 キャリア1は左右に1対の弾性を有する保持爪7を具備しており、該保持爪7は、キャリア1に装着されたとりはずし可能な記録ヘッド2の上面を押さえ込んで保持している。前記記録ヘッド2をプラテン3に沿って等速度で移動させて、その速度に応じたタイミングにてインクを吐出させて印字用紙4に像を形成することにより印字を行なうようになっている。 前記キャリア1は、第2図(a),(b)に示すように、2個のレバー11,12を備えており、各レバー11,12はそれぞれ紙面垂直方向の回動軸13,14を回動中心として回動自由に枢支されている。レバー11の上端部には後述する振動発生体9が、レバー12の上端部には後述する振動センサー10がそれぞれ取り付けられている。各レバー11,12の下端部は、引張ばね15にて結合されていて、記録ヘッド2がキャリア1に装着されていないときは、各レバー11,12を枢支している各回動軸13,14を回動中心として互いに反対方向に回動し、第2図(a)に示すように、振動発生体9および振動センサー10がそれぞれキャリア1の接触面1_(1)より突出するようになっている。-方、記録ヘッド2がキャリア1に装着されると、振動発生体9および振動センサー10は、第2図(b)に示すように、それぞれ記録ヘッド2の下面に押され、引張ばね15の力に抗して下がり、一定の圧力にて記録ヘッド2の下面に密着する。 前記振動発生体9は、例えばビエゾ素子のように、電圧が印加されると機械的変位を発するもので、振動波形の入力電圧信号が印加されることによって、振動発生手段として機械的振動を発生する。前記振動センサー10は、例えば歪みゲージのように、機械的変位を受けると電気的特性変化による電気的出力変化を得られるもので振動検知手段として機械的振動を感知して振動波形の電気信号を出力する。」(2頁右上欄6行?同頁右下欄11行) (4)「第3図(a)は前記記録ヘッド2の側面図、第3図(b)は第3図(a)のE-E線断面図である。 該記録ヘッド2はノズル系2_(1)とインクタンク2_(2)とを備えており、該ノズル系2_(1)の吐出面2_(3)には矢印D方向にインクを吐出する図示しないノズルが一定間隔で1列に設けられている。前記ノズル系2_(1)は図示しない電子回路等を備えているとともに、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する吐出エネルギー発生体として図示しない熱エネルギー発生素子を備えており、前記熱エネルギーによって生成する気泡により生ずる急激な圧力変化を利用することでインクを吐出する。前記インクタンク2_(2)の内部には、インクを含浸させて溜めておくための図示しない吸収体が収められている。これらノズル系2_(1)とインクタンク2_(2)は図示しないチューブにて連通されており、印字を行なう際、インクタンク2_(2)からノズル系2_(1)(審決注:『インクタンク2_(1)』は『ノズル系2_(1)』の明らかな誤記であるので訂正して摘記した。)へインクが供給される。」(2頁右下欄12行?3頁左上欄11行) (5)「次に、第1図ないし第3図(a),(b)に示す実施例の制御系について第4図を参照して説明する。 判別手段である中央演算処理回路44(以下CPU44という)には、印字のドットイメージまたはパターンイメージを格納したキャラクタジェネレータROM41、全体の動作のプログラムを格納したプログラムROM42および作業用のRAM43が接続されている。ポート45に対しては、図示しないキーボードまたは外部回路等の入力手段により印字情報46が入力され、この印字情報46はポート45を介してCPU44へ入力される。CPU44へ入力された印字情報46に合致したドットイメージまたはパターンイメージかキャラクタジェネレータROM41から読み出され、プログラムROM42にあらかじめ収納されているマイクロインストラクションに従って出力されるCPU44からの指令により、ドライバー47を介して記録ヘッド2、振動発生体9および他の駆動源48を駆動する。また、CPU44は、ポート45を介して振動センサー10および図示しないセンサー類からの情報を入力し、入力した情報に応じて種々の制御をする。」(3頁左上欄12行?同頁右上欄14行) (6)「次に、第1図ないし第4図に示す実施例の動作について第5図を参照して説明する。 まず、振動発生体9の振動の周波数fとして定数f_(1)を与え(ステップ51)、該周波数fで振動させる(ステップ52)。ここで、前記定数f_(1)は、あらかじめ図示しないインクタンクの特性を調べてインク残量に応じて変化するインクタンク2_(2)の共振周波数の分布をカバーする範囲が周波数f_(1)?f_(2)であるときの下限値とする。すなわち、インクタンク2_(2)の中にインクが最大限充填されているときの共振周波数とする。次に、振動センサー10の振幅から周波数fが共振点であるか否か判断し(ステップ53)、共振点でなければ周波数fにきざみ値△fを加えて周波数を上げてステップ52へ戻るループに入る。ここで、前記きざみ値△fはあらかじめ前記周波数f_(1)?f_(2)間をn分割した定数であり、nは実験で適当に定められる整数である。共振点であると判別すると、このときの周波数fがあらかじめ実験にて定められたインク無しの固有振動数f_(2)と等しいかどうか判断し(ステップ55)、等しければインク無し、等しくなければインク有りとする(ステップ56,57)。ステップ56にてインク無しとしたときは、インク無しの表示やアラームを発するか、または印字動作を停止する等の制御をする。」(3頁右上欄15行?同頁左下欄最下行) (7)「第6図は、周波数fを変化させて振動発生体9から周波数fを変化させて振動を加えたときの振動センサー10の出力電圧の振幅を示す線図である。 インクタンク2_(2)の中にインクか最大限充填されているときは周波数f_(1)で最大振幅となる曲線61が得られ、インクタンク2_(2)が空のとき、すなわちインク無しのときは周波数f_(2)で最大振幅となる曲線62が得られる。最大振幅となる周波数にてインクタンク2_(2)が共振する。 本実施例で用いる周波数f_(1)?f_(2)は、使用者に感知されないように超音波帯とすることか望ましく、この点からインクタンク2_(2)の材質、容量および構造等を定めることか望ましい。」(3頁右下欄1?14行) (8)「前述の実施例は、振動発生体と振動センサーをインクタンクの外壁に一定の力で押つける構成であるが、内壁に設けるか、または壁に埋め込み、電気信号の接点のみインクタンクの外側に設けて入出力制御を行なう構成とすることも可能である。」(3頁右下欄15?20行) (9)「〔発明の効果〕 以上説明したように本発明は、インクタンクに振動を加え、その共振周波数によってインクタンク内のインクの有無を判別することにより、従来の技術が有しているような電極が不要となり、腐食のおそれがなく、信頼性が高い(審決注:「信頼性り高い」は「信頼性が高い」の明らかな誤記であるので訂正して摘記した。)簡便なインクの検出手段を具備したインクジェット記録装置を実現できる効果がある。」(4頁左上欄1?8行) (10)上記(1)ないし(9)からみて、引用例には、 「インクを溜めておくインクタンク内に2本の針状の電極を埋め込み、インクの導電性を利用して両電極間の抵抗値を測定することにより、インクタンク内のインクの有無を検出する検出手段を有する従来のインクジェット記録装置におけるインクの検出手段は、電極が腐食しやすく、検出抵抗値の変化量か大きくとれないため、信頼性が低いという問題点があったので、 高信頼性のインクの検出手段を備えたインクジェット記録装置を提供することを目的として、 インクを溜めておくインクタンクに振動発生体と振動センサーとを固着し、前記振動発生体によりインクタンクを振動させたとき、インクタンク内にインクが有るときと無いときとでインクタンクの共振周波数が異なるため、前記振動センサーが検出する周波数も異なるものとなるので、前記振動センサーが検出した共振周波数によって前記インクタンク内のインクの有無を判別する判別手段を設け、この検出した共振周波数の相違により前記判別手段がインクの有無を判別するようにしたインクジェット記録装置であって、 前記振動発生体は、電圧が印加されると機械的変位を発するものであって、振動波形の入力電圧信号が印加されることによって、振動発生手段として機械的振動を発生するものであり、 前記振動センサーは、機械的変位を受けると電気的特性変化による電気的出力変化を得られるもので振動検知手段として機械的振動を感知して振動波形の電気信号を出力するものであり、 前記振動発生体及び前記振動センサーがそれぞれ取り付けられている2個のレバー11,12を備えたキャリア1と、該キャリア1にとりはずし可能に装着される記録ヘッド2と、キャラクタジェネレータROM41、プログラムROM42及び作業用のRAM43が接続されている中央演算処理回路44(以下CPU44という)と、キーボードまたは外部回路等の入力手段により入力された印字情報46をCPU44へ入力するポート45と、CPU44からの指令により、前記記録ヘッド2、前記振動発生体及び他の駆動源48を駆動するドライバー47とを備え、 前記記録ヘッド2は、ノズル系2_(1)及びインクタンク2_(2)を備えており、該インクタンク2_(2)の内部にはインクを含浸させて溜めておくための吸収体が収められており、前記ノズル系2_(1)と前記インクタンク2_(2)はチューブにて連通されており、印字を行なう際前記インクタンク2_(2)から前記ノズル系2_(1)へインクが供給されるようになっており、 前記CPU44は、前記判別手段であって、ポート45を介して前記振動センサー及び他のセンサー類からの情報を入力し、入力した情報に応じて種々の制御をするものであって、 前記制御のうち、前記判別手段としての制御は、まず、前記振動発生体の振動の周波数fとして、あらかじめインクタンクの特性を調べてインク残量に応じて変化するインクタンク2_(2)の共振周波数の分布をカバーする範囲が周波数f_(1)?f_(2)であるときの下限値、すなわち、インクタンク2_(2)の中にインクが最大限充填されているときの共振周波数である定数f_(1)を与え(ステップ51)、定数f_(1)を与えた周波数fで振動させ(ステップ52)、次に、前記振動センサーの振幅から周波数fが共振点であるか否か判断し(ステップ53)、共振点でなければ周波数fに、あらかじめ前記周波数f_(1)?f_(2)間を実験で適当に定められる整数nで分割した定数であるきざみ値△fを加えて、周波数を上げてステップ52へ戻るループに入り、前記ステップ53の判断で共振点であると判別すると、このときの周波数fがあらかじめ実験にて定められたインク無しの固有振動数f_(2)と等しいかどうか判断し(ステップ55)、等しければインク無し、等しくなければインク有りとする(ステップ56,57)ものであり、 前記CPU44は、前記ステップ56にてインク無しとしたときは、インク無しの表示やアラームを発するか、または印字動作を停止する等の制御も行うものであり、 前記振動発生体から周波数fを変化させて振動を加え、インクタンク2_(2)が共振して前記振動センサーの出力電圧の振幅が最大振幅となるときの周波数fを、インクタンク2_(2)の中にインクか最大限充填されているときには前記周波数f_(1)とし、インクタンク2_(2)が空のとき、すなわちインク無しのときは前記周波数f_(2)とし、前記周波数f_(1)?f_(2)が使用者に感知されないような超音波帯となるようにインクタンク2_(2)の材質、容量および構造等を定めたインクジェット記録装置において、 前記振動発生体と前記振動センサーを前記インクタンクの内壁に設けるか、または前記インクタンクの壁に埋め込み、電気信号の接点のみ前記インクタンクの外側に設けて入出力制御を行なう構成としたインクジェット記録装置。」の発明(以下「引用装置発明」という。)が記載されているものと認められるところ、「引用装置発明のインクジェット記録装置において、前記キャリア1にとりはずし可能に装着される、インクタンク2_(2)を備えた記録ヘッド2であって、前記振動発生体と前記振動センサーを前記インクタンク2_(2)の内壁に設けるか、または前記インクタンク2_(2)の壁に埋め込み、電気信号の接点のみ前記インクタンク2_(2)の外側に設けて入出力制御を行なう構成とした、インクタンク2_(2)を備えた記録ヘッド。」の発明(以下「引用ヘッド発明」という。)も引用例に記載されているものと認められる。 4 対比 本願発明と引用ヘッド発明とを対比する。 (1)引用ヘッド発明の「インクジェット記録装置」、「とりはずし可能に装着される」、「『インクタンク2_(2)を備えて』いる『記録ヘッド2』」、「『インクジェット記録装置』が『備え』ている『キャリア1』に『とりはずし可能に装着され』る『記録ヘッド2』」、「『電圧が印加されると機械的変位を発するもの』である『振動発生体』」、「インクタンク内のインクの有無」、「インクタンク2_(2)が共振」、「『インクタンク2_(2)が共振』して『出力』される『振動センサー』の『出力電圧』」、「インクの有無を判別する」、「『振動発生体』及び『振動センサー』」、「『あらかじめインクタンクの特性を調べてインク残量に応じて変化するインクタンク2_(2)の共振周波数の分布をカバーする範囲が周波数f_(1)?f_(2)であるときの下限値、すなわち、インクタンク2_(2)の中にインクが最大限充填されているときの共振周波数である定数f_(1)』及び『インクタンク2_(2)が空のとき、すなわちインク無しのとき』の『前記周波数f_(2)』」、「『インクタンク2_(2)の材質、容量および構造等』を定めて『超音波帯となるように』した『インクタンク2_(2)の中にインクが最大限充填されているときの共振周波数である定数f_(1)』及び『インクタンク2_(2)が空のとき、すなわちインク無しのとき』の『前記周波数f_(2)』」、「『振動発生体』及び『前記振動発生体によりインクタンクを振動させたとき、インクタンク内にインクが有るときと無いときとでインクタンクの共振周波数が異なる』ため、『検出する周波数も異なるもの』となる『振動センサー』」、「『まず、前記振動発生体の振動の周波数f』として『定数f_(1)を与え(ステップ51)、定数f_(1)を与えた周波数fで振動させ(ステップ52)、次に、前記振動センサーの振幅から周波数fが共振点であるか否か判断し(ステップ53)、共振点でなければ周波数fに、あらかじめ前記周波数f_(1)?f_(2)間を実験で適当に定められる整数nで分割した定数であるきざみ値△fを加えて、周波数を上げてステップ52へ戻るループに入り、前記ステップ53の判断で共振点であると判別すると、このときの周波数fがあらかじめ実験にて定められたインク無しの固有振動数f_(2)と等しいかどうか判断し(ステップ55)、等しければインク無し、等しくなければインク有りとする(ステップ56,57)』ものである『判別手段としての制御』に用いる『インクタンク2_(2)の中にインクが最大限充填されているときの共振周波数である定数f_(1)』及び『インクタンク2_(2)が空のとき、すなわちインク無しのとき』の『前記周波数f_(2)』」及び「あらかじめインクタンクの特性を調べてインク残量に応じて変化するインクタンク2_(2)の共振周波数の分布をカバーする範囲が周波数f_(1)?f_(2)であるときの下限値、すなわち、インクタンク2_(2)の中にインクが最大限充填されているときの共振周波数である定数f_(1)」は、それぞれ、本願発明の「インクジェット記録装置」、「装着される」、「インクカートリッジ」、「インクジェット記録装置に装着されるインクカートリッジ」、「圧電素子」、「インク消費状態」、「残留振動状態」、「残留振動状態を示す信号」、「インク消費状態を検出する」、「液体センサ」、「消費関連情報」、「少なくとも該インクカートリッジの形状、前記液体センサの仕様、及び該インクカートリッジに収容されるインクの仕様によって決まる検出特性である音響インピーダンスの大きさを表す共振周波数」、「圧電素子を有し、インク消費状態に応じて変化する残留振動状態を示す信号を出力して、音響インピーダンスの変化に基づいてインク消費状態を検出する液体センサ」、「前記液体センサを用いて前記インク消費状態を取得する場合に利用され、少なくとも該インクカートリッジの形状、前記液体センサの仕様、及び該インクカートリッジに収容されるインクの仕様によって決まる検出特性である音響インピーダンスの大きさを表す共振周波数の情報である検出特性情報」及び「前記インクカートリッジ内のインクの消費を開始する前の検出特性を示す消費前検出特性情報」に相当する。 (2)引用ヘッド発明の「検出特性情報」は、「まず、前記振動発生体の振動の周波数fとして定数f_(1)を与え(ステップ51)、定数f_(1)を与えた周波数fで振動させ(ステップ52)、次に、前記振動センサーの振幅から周波数fが共振点であるか否か判断し(ステップ53)、共振点でなければ周波数fに、あらかじめ前記周波数f_(1)?f_(2)間を実験で適当に定められる整数nで分割した定数であるきざみ値△fを加えて、周波数を上げてステップ52へ戻るループに入り、前記ステップ53の判断で共振点であると判別すると、このときの周波数fがあらかじめ実験にて定められたインク無しの固有振動数f_(2)と等しいかどうか判断し(ステップ55)、等しければインク無し、等しくなければインク有りとする(ステップ56,57)ものである判別手段としての制御に用いるインクタンク2_(2)の中にインクが最大限充填されているときの共振周波数である定数f_(1)及びインクタンク2_(2)が空のとき、すなわちインク無しのときの前記周波数f_(2)」であるから、「あらかじめインクタンクの特性を調べてインク残量に応じて変化するインクタンク2_(2)の共振周波数の分布をカバーする範囲が周波数f_(1)?f_(2)であるときの下限値、すなわち、インクタンク2_(2)の中にインクが最大限充填されているときの共振周波数である定数f_(1)」を含んでいる。 したがって、引用ヘッド発明の「検出特性情報」と本願発明の「検出特性情報」とは、上記(1)に照らせば、「前記インクカートリッジ内のインクの消費を開始する前の検出特性を示す消費前検出特性情報を含む」点で一致する。 (3)引用ヘッド発明の「消費関連情報」は、「あらかじめインクタンクの特性を調べてインク残量に応じて変化するインクタンク2_(2)の共振周波数の分布をカバーする範囲が周波数f_(1)?f_(2)であるときの下限値、すなわち、インクタンク2_(2)の中にインクが最大限充填されているときの共振周波数である定数f_(1)及びインクタンク2_(2)が空のとき、すなわちインク無しのときの前記周波数f_(2)」であるから、「まず、前記振動発生体の振動の周波数fとして定数f_(1)を与え(ステップ51)、定数f_(1)を与えた周波数fで振動させ(ステップ52)、次に、前記振動センサーの振幅から周波数fが共振点であるか否か判断し(ステップ53)、共振点でなければ周波数fに、あらかじめ前記周波数f_(1)?f_(2)間を実験で適当に定められる整数nで分割した定数であるきざみ値△fを加えて、周波数を上げてステップ52へ戻るループに入り、前記ステップ53の判断で共振点であると判別すると、このときの周波数fがあらかじめ実験にて定められたインク無しの固有振動数f_(2)と等しいかどうか判断し(ステップ55)、等しければインク無し、等しくなければインク有りとする(ステップ56,57)ものである判別手段としての制御に用いるインクタンク2_(2)の中にインクが最大限充填されているときの共振周波数である定数f_(1)及びインクタンク2_(2)が空のとき、すなわちインク無しのときの前記周波数f_(2)」を含んでいる。 したがって、引用ヘッド発明の「消費関連情報」と本願発明の「消費関連情報」とは、上記(1)に照らせば、「前記液体センサを用いて前記インク消費状態を取得する場合に利用され、少なくとも該インクカートリッジの形状、前記液体センサの仕様、及び該インクカートリッジに収容されるインクの仕様によって決まる検出特性である音響インピーダンスの大きさを表す共振周波数の情報である検出特性情報を含」む点で一致する。 (4)引用ヘッド発明の「インクカートリッジ(インクタンク2_(2)を備えている記録ヘッド2)」は、前記キャリア1にとりはずし可能に装着されるものであって、前記振動発生体と前記振動センサーを前記インクタンク2_(2)の内壁に設けるか、または前記インクタンク2_(2)の壁に埋め込み、電気信号の接点のみ前記インクタンク2_(2)の外側に設けて入出力制御を行なう構成としたものであるから、上記(1)に照らせば、本願発明の「インクカートリッジ」と、「インクジェット記録装置に装着されるインクカートリッジであって、圧電素子を有し、インク消費状態に応じて変化する残留振動状態を示す信号を出力して、音響インピーダンスの変化に基づいてインク消費状態を検出する液体センサと、を備え」る点で一致する。 (5)上記(1)ないし(4)からみて、本願発明と引用ヘッド発明とは、 「インクジェット記録装置に装着されるインクカートリッジであって、 圧電素子を有し、インク消費状態に応じて変化する残留振動状態を示す信号を出力して、音響インピーダンスの変化に基づいてインク消費状態を検出する液体センサと、 を備え 前記液体センサを用いて前記インク消費状態を取得する場合に利用される消費関連情報は、少なくとも該インクカートリッジの形状、前記液体センサの仕様、及び該インクカートリッジに収容されるインクの仕様によって決まる検出特性である音響インピーダンスの大きさを表す共振周波数の情報である検出特性情報を含み、 前記検出特性情報は、前記インクカートリッジ内のインクの消費を開始する前の検出特性を示す消費前検出特性情報を含む インクカートリッジ。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 前記インクカートリッジが、本願発明では、前記消費関連情報を記憶する記憶手段を備えているのに対して、引用ヘッド発明では、記憶手段を備えていない点。 5 判断 上記相違点について検討する。 (1)インクタンクからなるカートリッジあるいはインクタンクと記録ヘッドとが一体になったカートリッジにおいて、メモリを設け、そのカートリッジに対応したデータを前記メモリに記憶しておき、インクジェット記録装置に装着した際に、インクジェット記録装置によって読み出されて利用されるようにしておくことは、本願の優先日前に周知である(以下「周知技術」という。例.特開平11-115217号公報(【0162】?【0163】、図68、【0224】?【0234】、図88、図89参照。)、国際公開第97/23352号(電極62、63及び64、65、抵抗値検出手段90、インク量検出手段91、インク性状検出手段92、インク特性データ記憶手段70、電気記憶手段72、第5図、第7図(イ)、第8図に注目。)、特開平6-320732号公報(【0005】?【0176】参照。)、特開平5-38814号公報(【0006】、【0007】参照。)、特開平4-250066号公報(【0162】?【0163】、図68、【0206】?【0216】、図88、図89参照。)、特開平3-67657号公報(8頁左下欄1行?9頁左上欄15行参照。)、特開平2-279344号公報(3頁右上欄13行?同頁左下欄4行、FIG3参照。)、特開昭62-184856号公報(2頁右下欄4行?3頁右上欄2行参照。)、)。 (2)引用ヘッド発明は、引用装置発明のインクジェット記録装置において、前記キャリア1にとりはずし可能に装着される、インクタンク2_(2)を備えた記録ヘッド2であって、前記振動発生体と前記振動センサーを前記インクタンク2_(2)の内壁に設けるか、または前記インクタンク2_(2)の壁に埋め込み、電気信号の接点のみ前記インクタンク2_(2)の外側に設けて入出力制御を行なう構成とした、インクタンク2_(2)を備えた記録ヘッドであるところ、引用ヘッド発明において、インクタンク2_(2)の材質、容量および構造等が異なるインクタンクを備えている記録ヘッドは、インク残量に応じて変化するインクタンク2_(2)の共振周波数の分布をカバーする範囲である前記周波数f_(1)?f_(2)が異なり、したがって、前記振動発生体の振動の周波数fとしてまず与える定数f_(1)も異なり、あらかじめ前記周波数f_(1)?f_(2)間を実験で適当に定められる整数nも、きざみ値△fも、共振点であると判別したときの周波数fを比較して、等しければインク無し、等しくなければインク有りとするインク無しの固有振動数f_(2)も異なることになるから、引用ヘッド発明において、「インクカートリッジ(インクタンク2_(2)を備えている記録ヘッド2)」にメモリを設け、その「インクカートリッジ」のインクタンク2_(2)の材質、容量および構造等に対応した前記周波数f_(1)及びf_(2)、前記整数nなどのデータを前記メモリに記憶しておき、「インクジェット記録装置」に装着した際に、「インクジェット記録装置」によって読み出されて利用されるようにしておくことは、当業者が周知技術に基づいて容易に想到することができた程度のことである。 ここで、上記「インクカートリッジにメモリを設け、そのインクカートリッジのインクタンク2_(2)の材質、容量および構造等に対応した前記周波数f_(1)及びf_(2)、前記整数nなどのデータを前記メモリに記憶してお」くことは、引用ヘッド発明において、前記「消費関連情報」を記憶する「記憶手段」を備えることになるから、引用ヘッド発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易に想到することができた程度のことである。 (3)本願発明の奏する効果は、引用ヘッド発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測できた程度のものである。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明、及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 本願発明は、当業者が引用例に記載された発明、及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-12 |
結審通知日 | 2012-03-13 |
審決日 | 2012-03-26 |
出願番号 | 特願2006-169408(P2006-169408) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 牧 隆志、藤本 義仁、大塚 裕一 |
特許庁審判長 |
小牧 修 |
特許庁審判官 |
鈴木 秀幹 東 治企 |
発明の名称 | インクカートリッジ |
代理人 | 飯山 和俊 |