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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1256694
審判番号 不服2011-6751  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-31 
確定日 2012-05-10 
事件の表示 特願2005-216624「有機発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月 8日出願公開、特開2007- 35430〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年7月27日の出願(特願2005-216624号)であって、平成22年9月10日付けで拒絶理由が通知され、同年11月18日付けで意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされ、同年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年3月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成23年9月2日付けで審尋がなされ、同年11月4日付けで回答書が提出された。

第2 平成23年3月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定について

[補正の却下の決定の結論]
平成23年3月31日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲は、平成22年11月18日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載の、

「【請求項1】
有機EL材料からなる発光層を少なくとも一層含む有機材料層が第1の電極層と第2の電極層との間に配置され、前記有機材料層が発光する光を前記第1の電極層と前記第2の電極層の少なくともいずれかの前記電極層側に取り出すように構成された発光素子において、
前記有機材料層は、前記発光層の両面に、金属微粒子が誘電材料に分散された金属微粒子層を備え、
前記光が前記金属微粒子層内を伝搬することにより、前記金属微粒子のプラズモンが励起され、前記光を散乱光として出射することを特徴とする有機発光素子。
【請求項2】
有機EL材料からなる発光層を少なくとも一層含む有機材料層が第1の電極層と第2の電極層との間に配置され、前記有機材料層が発光する光を前記第1の電極層側に取り出すように構成された発光素子において、
前記有機材料層は、前記発光層の前記第1の電極層側に設けられた光透過誘電体層と、前記光透過誘電体層と前記第1の電極層との間に設けられ、金属微粒子が誘電材料に分散された金属微粒子層とを備え、
前記光が前記金属微粒子層内を伝搬することにより、前記金属微粒子のプラズモンが励起され、前記光を散乱光として出射することを特徴とする有機発光素子。
【請求項3】
有機EL材料からなる発光層を少なくとも一層含む有機材料層が第1の電極層と第2の電極層との間に配置され、前記有機材料層が発光する光を前記第1の電極層側および前記第2の電極層側に取り出すように構成された発光素子において、
前記有機材料層は、前記発光層と前記第1の電極層との間に、金属微粒子が誘電材料に分散された第1の金属微粒子層を備え、
前記有機材料層の前記第2の電極層上には、前記金属微粒子が前記誘電材料に分散された第2の金属微粒子層を備え、
前記光が前記第1の金属微粒子層内及び前記第2の金属微粒子層内を伝搬することにより、前記金属微粒子のプラズモンが励起され、前記光を散乱光として出射することを特徴とする有機発光素子。
【請求項4】
前記金属微粒子層の厚みが、前記金属微粒子のサイズと略同一であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記金属微粒子層は、複数の領域に分離され、前記領域の各々毎に略同一のサイズの前記金属微粒子が前記誘電材料に分散されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記金属微粒子層が、複数の種類の金属微粒子を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記金属微粒子層は、複数の領域に分離され、前記領域の各々毎に同一種類の前記金属微粒子が前記誘電材料に分散されていることを特徴とする請求項6に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記金属微粒子が、少なくともAu、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osのいずれかであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の有機発光素子。」が

「【請求項1】
有機EL材料からなる発光層を少なくとも一層含む有機材料層が第1の電極層と第2の電極層との間に配置され、前記有機材料層が発光する光を前記第1の電極層と前記第2の電極層の少なくともいずれかの前記電極層側に取り出すように構成された発光素子において、
前記有機材料層は、前記発光層の両面に、金属微粒子が誘電材料に分散された金属微粒子層を備え、
前記金属微粒子層は、複数の領域に分離され、前記領域の各々毎に略同一のサイズの前記金属微粒子が前記誘電材料に分散され、
前記光が前記金属微粒子層内を伝搬することにより、前記金属微粒子のプラズモンが励起され、前記光を散乱光として出射することを特徴とする有機発光素子。
【請求項2】
有機EL材料からなる発光層を少なくとも一層含む有機材料層が第1の電極層と第2の電極層との間に配置され、前記有機材料層が発光する光を前記第1の電極層側に取り出すように構成された発光素子において、
前記有機材料層は、前記発光層の前記第1の電極層側に設けられた光透過誘電体層と、前記光透過誘電体層と前記第1の電極層との間に設けられ、金属微粒子が誘電材料に分散された金属微粒子層とを備え、
前記金属微粒子層は、複数の領域に分離され、前記領域の各々毎に略同一のサイズの前記金属微粒子が前記誘電材料に分散され、
前記光が前記金属微粒子層内を伝搬することにより、前記金属微粒子のプラズモンが励起され、前記光を散乱光として出射することを特徴とする有機発光素子。
【請求項3】
有機EL材料からなる発光層を少なくとも一層含む有機材料層が第1の電極層と第2の電極層との間に配置され、前記有機材料層が発光する光を前記第1の電極層側および前記第2の電極層側に取り出すように構成された発光素子において、
前記有機材料層は、前記発光層と前記第1の電極層との間に、金属微粒子が誘電材料に分散された第1の金属微粒子層を備え、
前記有機材料層の前記第2の電極層上には、前記金属微粒子が前記誘電材料に分散された第2の金属微粒子層を備え、
前記金属微粒子層は、複数の領域に分離され、前記領域の各々毎に略同一のサイズの前記金属微粒子が前記誘電材料に分散され、
前記光が前記第1の金属微粒子層内及び前記第2の金属微粒子層内を伝搬することにより、前記金属微粒子のプラズモンが励起され、前記光を散乱光として出射することを特徴とする有機発光素子。
【請求項4】
有機EL材料からなる発光層を少なくとも一層含む有機材料層が第1の電極層と第2の電極層との間に配置され、前記有機材料層が発光する光を前記第1の電極層と前記第2の電極層の少なくともいずれかの前記電極層側に取り出すように構成された発光素子において、
前記有機材料層は、前記発光層の両面に、金属微粒子が誘電材料に分散された金属微粒子層を備え、
前記金属微粒子層は、複数の領域に分離され、前記領域の各々毎に同一の種類の元素の前記金属微粒子が前記誘電材料に分散され、
前記光が前記金属微粒子層内を伝搬することにより、前記金属微粒子のプラズモンが励起され、前記光を散乱光として出射することを特徴とする有機発光素子。
【請求項5】
有機EL材料からなる発光層を少なくとも一層含む有機材料層が第1の電極層と第2の電極層との間に配置され、前記有機材料層が発光する光を前記第1の電極層側に取り出すように構成された発光素子において、
前記有機材料層は、前記発光層の前記第1の電極層側に設けられた光透過誘電体層と、前記光透過誘電体層と前記第1の電極層との間に設けられ、金属微粒子が誘電材料に分散された金属微粒子層とを備え、
前記金属微粒子層は、複数の領域に分離され、前記領域の各々毎に同一の種類の元素の前記金属微粒子が前記誘電材料に分散され、
前記光が前記金属微粒子層内を伝搬することにより、前記金属微粒子のプラズモンが励起され、前記光を散乱光として出射することを特徴とする有機発光素子。
【請求項6】
有機EL材料からなる発光層を少なくとも一層含む有機材料層が第1の電極層と第2の電極層との間に配置され、前記有機材料層が発光する光を前記第1の電極層側および前記第2の電極層側に取り出すように構成された発光素子において、
前記有機材料層は、前記発光層と前記第1の電極層との間に、金属微粒子が誘電材料に分散された第1の金属微粒子層を備え、
前記有機材料層の前記第2の電極層上には、前記金属微粒子が前記誘電材料に分散された第2の金属微粒子層を備え、
前記金属微粒子層は、複数の領域に分離され、前記領域の各々毎に同一の種類の元素の前記金属微粒子が前記誘電材料に分散され、
前記光が前記第1の金属微粒子層内及び前記第2の金属微粒子層内を伝搬することにより、前記金属微粒子のプラズモンが励起され、前記光を散乱光として出射することを特徴とする有機発光素子。
【請求項7】
前記金属微粒子層は、前記領域の各々毎に同一の種類の元素の金属微粒子を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記金属微粒子層の厚みが、前記金属微粒子のサイズと略同一であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記金属微粒子が、少なくともAu、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osのいずれかであることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の有機発光素子。」と補正された。

2 新規事項追加の違反についての検討
(1)本件補正による補正後の【請求項8】は、「前記金属微粒子層の厚みが、前記金属微粒子のサイズと略同一であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の有機発光素子。」であるから、当該【請求項8】には、例えば、補正後の【請求項1】に記載されたものであって、かつ、「前記金属微粒子層の厚みが、前記金属微粒子のサイズと略同一である」ものが含まれる。すなわち、「金属微粒子層は、複数の領域に分離され、前記領域の各々毎に略同一のサイズの前記金属微粒子が前記誘電材料に分散され」、しかも「前記金属微粒子層の厚みが、前記金属微粒子のサイズと略同一である」ものが含まれる。
そして、「複数の領域に分離され、前記領域の各々毎に略同一のサイズの前記金属微粒子が前記誘電材料に分散され」ている金属微粒子層について、発明の詳細な説明及び図面には、次の事項が記載されている。

「【0022】
・・・・・前略・・・・・。
(実施の形態4)
図4は本発明の実施の形態4に係る有機発光素子の構造断面図を示す。実施の形態3と同一の層には同一符号を与えて説明を省略する。実施の形態3との違いは、金属微粒子層404が面内において所定の領域に分離しており、それぞれの領域内のAg微粒子111の微粒子サイズが異なっている点である。即ち、図4に示すように、金属微粒子層404は面内に区分された複数の領域を持ち、しかもそれぞれの領域内の前記金属微粒子はサイズが略同一であるように形成された構造となっている。
このような構造を持つ金属微粒子層404は、一般的なフォトリソグラフィーによるパターニングでレジストパターンを作製し、蒸着あるいはスパッタなどの製膜方法によって容易に作製可能である。プラズモンメカニズムによる光の増強は、Ag微粒子111のサイズと光の波長に強く依存する。カラー表示を行う場合に発光層105内にカラーフィルタ(図示略)を設け、波長の異なる光を個別に出射するが、それぞれの波長に対応して最適なサイズのAg微粒子111を配置することで、すべての色の光を同レベルに増強することが可能となる。
・・・・・後略・・・・・。」

「【図4】



上記の発明の詳細な説明及び図面の記載から、上記「複数の領域に分離され、前記領域の各々毎に略同一のサイズの前記金属微粒子が前記誘電材料に分散され」ている「金属微粒子層」には、異なる領域においてはサイズの異なる金属微粒子が分散されているものを含むものであることは明らかである。
そうすると、そのような金属微粒子層は、異なる領域においてはサイズの異なる金属微粒子が分散され、しかも、金属微粒子層の厚みは金属微粒子のサイズと略同一であるのだから、異なる領域においては厚みが異なるものである。
すなわち、本件補正による補正後の【請求項8】は、異なる領域においては厚みが異なる金属微粒子層を有するものも含むことになるが、そのような金属微粒子層は、本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)には記載も示唆もされていない。
よって、本件補正による補正後の【請求項8】は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項(新規事項)を導入しないものを含むものであるといえる。

以上のとおりであるから、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてした補正であるということはできない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下する。

3 本件補正の目的についての検討
審判請求書には、本件補正の補正の根拠について、
「本願補正後の請求項1は、本願補正前の請求項1に請求項5の内容を含めたものです。
本願補正後の請求項2は、本願補正前の請求項2に請求項5の内容を含めたものです。
本願補正後の請求項3は、本願補正前の請求項3に請求項5の内容を含めたものです。
本願補正後の請求項4は、本願補正前の請求項1に請求項7の内容を含めたものです。
本願補正後の請求項5は、本願補正前の請求項2に請求項7の内容を含めたものです。
本願補正後の請求項6は、本願補正前の請求項3に請求項7の内容を含めたものです。」
と記載されている。上記から、例えば、本件補正後の請求項1及び請求項4が、本件補正前の請求項1に対応するものであると解すると、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項、すなわち、いわゆる限定的減縮を目的とするためには、補正前の請求項と補正後の請求項の間には一対一の関係が必要である(平成17年(行ケ)10192号、平成15年(行ケ)230号の判決の判示事項参照)から、本件補正は同法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものとはいえない。そうすると、本件補正が、同法第17条の2第4項第1ないし4号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではないから、本件補正は、同法第17条の2第4項の規定に違反するものとなる。

そこで、審判請求書の上記の本件補正の補正の根拠において、
「本願補正後の請求項1は、本願補正前の請求項1に請求項5の内容を含めたものです。
本願補正後の請求項2は、本願補正前の請求項2に請求項5の内容を含めたものです。
本願補正後の請求項3は、本願補正前の請求項3に請求項5の内容を含めたものです。」
については、本件補正後の請求項1ないし請求項3が、本件補正前の請求項5を展開したものであると解する。
この場合において、本件補正後の請求項4ないし請求項6については、上記と同様に本件補正前の請求項7を展開したものであると解する、とすることはできない。何故なら、本件補正前の請求項7は、本件補正前の請求項6を引用し、本件補正前の請求項6が本件補正前の請求項1ないし3(及び4,5)を引用するものであるから、本件補正前の請求項7には、必須の事項として、本件補正前の請求項6に記載されていた「金属微粒子層が、複数の種類の金属微粒子を含む」という特定事項が含まれる。これに対して、本件補正後の請求項4ないし6には上記の「金属微粒子層が、複数の種類の金属微粒子を含む」という事項は特定されていないから、上記のように本件補正後の請求項4ないし請求項6については本件補正前の請求項7を展開したものであると解する場合には、本件補正前の請求項7から、上記の「金属微粒子層が、複数の種類の金属微粒子を含む」という特定事項を削除した上で(すなわち拡張した上で)展開することになる。請求項に係る発明を拡張する補正が、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1ないし4号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではないことからして、本件補正後の請求項4ないし請求項6について本件補正前の請求項7を展開したものであると解することができないことは明らかである。
そうすると、本件補正後の請求項4ないし請求項6については、それぞれ、本件補正前の請求項1ないし3に対応する(それぞれ、本件補正前の請求項1ないし3を減縮した)ものと解さざるを得ない。そして、同様に、本件補正後の請求項7についても、上記の「金属微粒子層が、複数の種類の金属微粒子を含む」という特定事項を含むものではないから、本件補正前の請求項1ないし3を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項7を展開したものと解することはできず、本件補正前の請求項1ないし3に対応した(本件補正前の請求項1ないし3を減縮した)請求項をまとめたものであると解さざるをえない。同様に、本件補正後の請求項8のうち、請求項1ないし3を引用する部分については、本件補正前の請求項1ないし3に対応した(本件補正前の請求項1ないし3を減縮した)請求項をまとめたものであると解さざるをえない。
そうであれば、本件補正後の特許請求の範囲には、本件補正前の請求項1ないし3のそれぞれに対応した(例えば、本件補正前の請求項1に対応した)本件補正後の請求項が複数あることは明らかであり、補正前の請求項と補正後の請求項の間には一対一の関係にないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項、すなわち、いわゆる限定的減縮を目的とするものであるということはできない。

以上のとおりであるから、本件補正前の各請求項と本件補正後の各請求項の関係について、上記のいずれのように解した場合においても、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1ないし4号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではないことになる。
よって、本件補正は、同法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下する。

4 独立特許要件違反についての検討
(1)最後に、仮に、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてした補正であると解することができるとし、本件補正は、特許請求の範囲について、いわゆる限定的に減縮することを目的とする補正、すなわち、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とする補正であるといえるとした場合に、本件補正後の本願の請求項4に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反しないか)について検討する。

(2)本願補正発明
本願補正発明は、平成23年3月31日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項4に記載されている事項により特定されるものである。(上記「第2 平成23年3月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)

(3)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-235140号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付した。)

「【0001】
本発明は有機電界発光装置に関するものであり、特に有機電界発光部品中の表面プラズモン共鳴により低下する外部量子の効率性を解決する有機電界発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光装置は有機発光ダイオード(OLED)としても知られ、その発光原理は有機分子材料(分子の量により小分子材料ともいえる)もしくは重合体分子材料の電圧および電場で発生する発光現象によるものである。有機電界発光装置は自発光装置なので、ドットマトリックスディスプレイが可能で、サイズのコンパクト化、高対比、低い消耗率、高解析度、早い反応、バックライトや高視角を必要としないなどの特性が期待でき、またサイズ面では、4mmのマイクロディスプレイから100インチの屋外広告版まで対応でき、次世代のフラットパネルディスプレイ(FPD)として注目を浴びている。ディスプレイに応用できる他、有機電界発光装置は更にサイズの軽少化が可能、撓む事ができる材質である事から応用範囲はなお広がり、特に照明に適している。有機発光デバイスの発光効率性がもし、100Lm/W以上にまで高められれば、有機電界発光ディスプレイは従来の照明光源に取って代わることができ、よって効率の向上は有機電界発光装置の進歩にとって無視することのできない重要課題となっている。
【0003】
有機電界発光の原理は、陽極層からホールを陰極層から電子を注入することで、電界で生じる電位の差異によって、電子とホールの薄膜層での移動と集中を促し、再結合現象を生みだす。この再結合現象が放出するエネルギーは発光層分子を励起し、高エネルギー、不安定状態にさせ、そのエネルギーが放出された時、もとの低エネルギー且つ安定した状態に戻る。有機電界発光装置の発光効率は、その内部量子効率及び外部量子効率により決定される。内部量子効率は物理現象においての電気を光に転換させるプロセスの内部効率からなり、有機分子は励起された後、非対称回転配置を形成する4分の1の励起電子の一重項状態形式を有し、蛍光方式でエネルギーを放出する。しかし4分の3の励起電子は、対称回転配置の三重項状態をもち、りん光方式でエネルギーを放出する。よって、有機電界発光装置の内部量子効率は祖発光、励起のメカニズムにより決定され、また蛍光の発光材料、またはりん光の発光材料どちらを使用するかにより決定されるとも言える。
【0004】
有機電界発光装置の外部量子効率は素子からの発光出力と有機層の発光量の比率である。つまり、有機電界発光装置が外部に向けて生産するエネルギーもしくは光子数であるともいえる。典型的な有機電界発光装置を例に挙げると、有機層が発する光は全てが装置の外面まで突き抜けることができるというわけではなく、有機電界発光装置の約40%は装置内部で表面プラズモン共鳴により破壊される。他にも、有機材料及びガラス基板の反射率は空気より高いので、部分的な光は全反射により装置の両側で分散し、およそ80%の光が装置の中だけで分散してしまう。よって、一般的な有機発光電界装置の外部電子効率は20%にも満たない。もし装置内で分散されてしまう光を装置外に放出できれば、有機電界発光素子の発光効率を大幅にアップできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明の目的は、誘電材料及びナノスケールの金属顆粒により構成されるナノ構造の有機電界発光光回復層を備える有機電界発光装置の提供である。このナノ構造フィルムは有機電界発光装置と表面プラズモン共鳴でカップリングし、装置内で分散する光を外部に抽出できる他、有機電界発光装置の表面プラズモン共鳴による降下してしまう有機電界発光装置の外部量子効率の問題も解決でき、有機電界発光装置の発光効率を増加できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記の目的を達成するため、本発明は1層またはそれ以上の誘電材料及びナノスケールの金属顆粒、または有機材料及びナノスケールの金属顆粒で構成されるナノ構造の有機電界発光光回復層を備える有機電界発光装置を提供する。」

「【0017】
本発明の有機電界発光装置は、少なくとも基板、第1電極、有機発光層、第2電極及びナノ構造の有機電界発光光回復層を含み、またナノ構造の有機電界発光光回復層は基板と第1電極間に形成でき(実施例1にて表示)、また第1電極と有機発光層間(実施例2にて表示)、第2電極と有機発光層間(実施例3にて表示)、第2電極上(実施例4にて表示)にも形成される。
【実施例1】
【0018】
まず、図1では、基板110を提供する。基板110は透明もしくは不透明基板からなり、ガラスもしくはプラスティック(可撓性基板)からなる。この基板110上には誘電材料または有機材料121及びナノスケールの金属顆粒122により構成されるナノ構造の有機電界発光光回復層120が形成され、またその誘電材料または有機材料121及びナノスケールの金属顆粒122は同様または相違する方法で同時に形成される。なお、ナノスケールの金属顆粒122はドーパント方式を以って誘電材料または有機材料121にドープする。ナノ構造の有機電界発光光回復層の誘電材料には、酸化シリコン(SiOx)、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化シリコン(SiNx)、窒化アルミニウム(AlNx)、またはフッ化マグネシウム(MgFx)等からなり、スパッタリングまたはプラズマ化学気相堆積(PECVD)からなる製作方式で形成される。ナノ構造の有機電界発光光回復層の有機材料は分子または重合体からなり、またスピンコーティング、インクジェット、スクリーンプリント法などからなる製作方式で形成される。ナノ構造の有機電界発光光回復層が含むナノスケールの金属顆粒は金、銀、ゲルマニウム、セレン、錫、アンチモン、テルル、ガリウム及びその複合体、または前記元素による2種類以上の組成からなる。この金属顆粒の形成方法は、スパッタリング、電子ビーム蒸着法、熱蒸着法、化学蒸着法、スピンコーティング、インクジェット、スクリーンプリント法などの方式で形成される。ナノスケールの金属顆粒が誘電材料または有機材料にドープする割合はこの層におけるコンビネーションの0.001?70%になる。またこの比率は異なる沈着速度(効率)を利用して誘電材料及びナノスケールの金属顆粒を調合、または異なる混合比例を利用して有機材料及びナノスケールの金属顆粒を形成するものである。
【0019】
次に、ナノ構造の有機電界発光光回復層120上には第1電極130が形成され、よってナノ構造有機電界発光光回復層120は第1電極130と基板110間に位置する事になる。
【0020】
第1電極130上には、有機発光層140が形成され、この有機発光層140は分子または重合体の有機発光材料からなる。もし分子の有機発光材料からなる場合、形成方式に真空蒸着法を利用できる。もし重合体有機発光材料からなる場合、スピンコーティング、インクジェット、スクリーンプリントなどを利用できる。最後に、有機発光層140上には第2電極150が形成される。第2電極150は透明電極、金属電極または複合電極からなる。前記の第1電極130及び第2電極150の形成法としてはスパッタリング、電子ビーム蒸着法、熱蒸着法、化学蒸着法、スプレー熱分解法等を利用できる。実施例に基づき形成される有機電界発光装置10は、上部発光(すなわち第2電極側)、または両面発光の、基板側が発光する有機電界発光装置である。
【実施例2】
【0021】
実施例2において、実施例1と異なる点はナノ構造の有機電界発光光回復層220においての部分のみである。第1実施例ではナノ構造の有機電界発光光回復層120が基板110と第1電極130間に形成されているのに対し、図2で示される実施例2ではナノ構造の有機電界発光光回復層220は第1電極230と有機発光層240間に形成されている。実施例1と異なるのはその点のみなので、その他の説明は記述を省略する。
【実施例3】
【0022】
実施例3において、前記実施例と異なる点はナノ構造の有機電界発光光回復層320においての部分のみである。図3で示される実施例3では、ナノ構造の有機電界発光光回復層320が有機発光層340と第2電極350間に形成されている点のみが前記実施例と異なるので、その他の説明は記述を省略する。」

「【0025】
以上、本発明の公的な実施例を例示したが、これは本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び範囲を逸脱しない限りにおいては、当業者であれば行い得る少々の変更や修飾を付加することは可能である。従って、本発明が保護を請求する範囲は、特許請求の範囲を基準とする。」

「【図1】

【図2】

【図3】



イ 引用例1に記載された発明の認定
【0018】の「ナノ構造の有機電界発光光回復層が含むナノスケールの金属顆粒は金、銀、ゲルマニウム、セレン、錫、アンチモン、テルル、ガリウム及びその複合体、または前記元素による2種類以上の組成からなる。」の記載から、「ナノ構造の有機電界発光光回復層」には同一種類の元素の金属顆粒のみを有するものも含まれることは明らかである。よって、上記記載(図面を含む)を総合することにより、引用例1には、
「第1電極上には、有機発光層が形成され、有機発光層上には第2電極が形成される両面発光の有機電界発光装置であって、
第1電極と有機発光層の間又は有機発光層と第2電極の間には、ナノスケールの金属顆粒がドーパント方式を以って誘電材料にドープされたナノ構造の有機電界発光光回復層が形成されており、
ナノ構造の有機電界発光光回復層は同一種類の元素の金属顆粒のみを有し、
誘電材料及びナノスケールの金属顆粒により構成されるナノ構造の有機電界発光光回復層を備えるナノ構造フィルムは有機電界発光装置と表面プラズモン共鳴でカップリングし、装置内で分散する光を外部に抽出できる有機電界発光装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(4)本願補正発明と引用発明の対比
ア 対比
ここで、本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「有機発光層」、「第1電極」、「第2電極」及び「有機電界発光装置」が、それぞれ、本願補正発明の「有機EL材料からなる発光層を少なくとも一層含む有機材料層」、「第1の電極層」、「第2の電極層」及び「発光素子」に相当するから、引用発明の「第1電極上には、有機発光層が形成され、有機発光層上には第2電極が形成される両面発光の有機電界発光装置」が、本願補正発明の「有機EL材料からなる発光層を少なくとも一層含む有機材料層が第1の電極層と第2の電極層との間に配置され、前記有機材料層が発光する光を前記第1の電極層と前記第2の電極層の少なくともいずれかの前記電極層側に取り出すように構成された発光素子」に相当する。

引用発明の「有機発光層」が、本願補正発明の「発光層」に相当し、引用発明の「ナノスケールの金属顆粒」、「誘電材料」及び「ナノ構造の有機電界発光光回復層」が、それぞれ、本願補正発明の「金属微粒子」、「誘電材料」及び「金属微粒子層」に相当し、また、引用発明の「ドーパント方式を以って誘電材料にドープされた」ことが、本願補正発明の「誘電材料に分散された」ことに相当するから、引用発明の「第1電極と有機発光層の間又は有機発光層と第2電極の間には、ナノスケールの金属顆粒がドーパント方式を以って誘電材料にドープされたナノ構造の有機電界発光光回復層が形成されて」いることと、本願補正発明の「前記有機材料層は、前記発光層の両面に、金属微粒子が誘電材料に分散された金属微粒子層を備え」ることとは、「前記有機材料層は、前記発光層の少なくとも一方の面に、金属微粒子が誘電材料に分散された金属微粒子層を備え」る点で一致する。

引用発明の「ナノ構造の有機電界発光光回復層は同一種類の元素の金属顆粒のみを有」することと、本願補正発明の「前記金属微粒子層は、複数の領域に分離され、前記領域の各々毎に同一の種類の元素の前記金属微粒子が前記誘電材料に分散され」ることは、「前記金属微粒子層は、少なくとも特定の領域では同一の種類の元素の前記金属微粒子が前記誘電材料に分散され」る点で一致する。

引用発明の「誘電材料及びナノスケールの金属顆粒により構成されるナノ構造の有機電界発光光回復層を備えるナノ構造フィルムは有機電界発光装置と表面プラズモン共鳴でカップリングし、装置内で分散する光を外部に抽出できる」ことが、本願補正発明の「前記光が前記金属微粒子層内を伝搬することにより、前記金属微粒子のプラズモンが励起され、前記光を散乱光として出射する」ことに相当する。

引用発明の「有機電界発光装置」が、本願補正発明の「有機発光素子」に相当する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と引用発明は、
「有機EL材料からなる発光層を少なくとも一層含む有機材料層が第1の電極層と第2の電極層との間に配置され、前記有機材料層が発光する光を前記第1の電極層と前記第2の電極層の少なくともいずれかの前記電極層側に取り出すように構成された発光素子において、
前記有機材料層は、前記発光層の少なくとも一方の面に、金属微粒子が誘電材料に分散された金属微粒子層を備え、
前記金属微粒子層は、少なくとも特定の領域では同一の種類の元素の前記金属微粒子が前記誘電材料に分散され、
前記光が前記金属微粒子層内を伝搬することにより、前記金属微粒子のプラズモンが励起され、前記光を散乱光として出射する有機発光素子。」の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

ウ 相違点
(ア)相違点1
本願補正発明は、金属微粒子層を発光層の「両面」に備えるのに対して、引用発明においては、有機電界発光光回復層を「第1電極と有機発光層の間又は有機発光層と第2電極の間」に配置するもの、すなわち、有機電界発光光回復層(本願補正発明の「金属微粒子層」に相当)を有機発光層(本願補正発明の「発光層」に相当)のいずれか一方の面に配置するものである点。

(イ)相違点2
本願補正発明においては、金属微粒子層が「複数の領域に分離され」、「同一の種類の元素の前記金属微粒子が前記誘電材料に分散されいる」特定の領域が、上記の「分離された領域の各々」であるのに対して、引用発明においてはその点の限定がない点。

(5)当審の判断
ア 上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
引用発明が、両面発光のものであること、また、引用例1には、「有機電界発光光回復層」が、有機発光層の第1電極側に配置されるものも、有機発光層の第2電極側に配置するものも記載されている(【0022】【0023】【図2】【図3】参照)ことに鑑みれば、引用発明において、発光の取り出しを「両面側」とも効率よくするために、「有機電界発光光回復層」を「有機発光層」の「両面」に備えるとして、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点2について
引用例1には、有機電界発光装置を「ディスプレイに応用できる」ことが記載されており(【0002】)、ディスプレイに応用した際に、発光層や発光層に隣接する層を発光色に対応した画素に区画して積層しフルカラー化することは周知の技術である(必要とあらば、特開2003-288985号公報、特開2004-207142号公報参照)。
引用発明においても、上記の周知技術を適用し、発光色に対応した画素ごとに発光層やそれに隣接する有機電界発光光回復層などの各層を分離し、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。
なお、引用発明は「ナノ構造の有機電界発光光回復層は同一種類の元素の金属顆粒のみを有」するものであるから、有機電界発光光回復層などの各層を分離した場合には、当然に、当該分離された領域の各々毎に同一の種類の元素の金属顆粒(金属微粒子)が分散されることになる。(本願補正発明においては、「金属微粒子層が、複数の種類の金属微粒子を含むこと」(本件補正前の【請求項6】の特定事項)は何等特定されていないことに留意のこと。)

イ 本願補正発明の奏する作用効果
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(6)むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

5 まとめ
本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてした補正であるということはできない。よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1ないし4号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。よって、本件補正は、同法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
さらに、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができない。よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成23年3月31日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年11月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成23年3月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成23年3月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「4 独立特許要件違反についての検討」の「(3)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 平成23年3月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「4 独立特許要件違反についての検討」の「(4)本願補正発明と引用発明の対比」の「ア 対比」において記載したのと同様の対比の手法及び結果により、本願発明と引用発明は、
「有機EL材料からなる発光層を少なくとも一層含む有機材料層が第1の電極層と第2の電極層との間に配置され、前記有機材料層が発光する光を前記第1の電極層と前記第2の電極層の少なくともいずれかの前記電極層側に取り出すように構成された発光素子において、
前記有機材料層は、前記発光層の少なくとも一方の面に、金属微粒子が誘電材料に分散された金属微粒子層を備え、
前記光が前記金属微粒子層内を伝搬することにより、前記金属微粒子のプラズモンが励起され、前記光を散乱光として出射する有機発光素子。」
の発明である点で一致し、また、「ウ 相違点」における「(ア)相違点1」に相当する相違点(すなわち、上記「(ア)相違点1」において「本願補正発明」を「本願発明」と置き換えたもの)のみで相違する。
そして、上記の「(ア)相違点1」に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、上記「第2 平成23年3月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「4 独立特許要件違反についての検討」の「(5)当審の判断」の「ア」における「(ア)相違点1について」に記載した理由と同じ理由により、当業者が容易になし得たことである。
また、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が予測し得る程度のものである。
よって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-07 
結審通知日 2012-03-13 
審決日 2012-03-26 
出願番号 特願2005-216624(P2005-216624)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B)
P 1 8・ 575- Z (H05B)
P 1 8・ 561- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中山 佳美  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 橋本 直明
森林 克郎
発明の名称 有機発光素子  
代理人 木村 信行  
代理人 内野 則彰  
代理人 久原 健太郎  

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