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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1256704
審判番号 不服2011-12436  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-10 
確定日 2012-05-10 
事件の表示 特願2008- 67882「ナビゲーション装置およびナビゲート方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月 1日出願公開、特開2009-222579〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年3月17日の出願であって、平成22年3月30日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年6月4日付けで意見書及び手続補正書が提出され、これに対し、同年9月13日付けで拒絶理由通知が通知され、これに対し、同年11月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものの、これに対し、平成23年3月2日付けで補正却下の決定がされるとともに、拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月10日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.平成23年6月10日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「現在位置を取得する位置取得手段と、
前記現在位置を表示する表示手段と、
目的地点を設定する目的地点設定手段と、
出発地点を設定する出発地点設定手段と、
地図情報に含まれる施設情報のうちから前記出発地点から前記目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段と、
前記抽出手段により少なくとも1つの施設情報が抽出される場合、所定のタイミングで報知する報知手段と、を備え、
前記報知手段は、光を発する発光手段と、
前記表示手段の駆動が停止されている場合であっても、前記取得された現在位置と、前記施設抽出手段により抽出された前記施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて定まる間隔で前記発光手段を点滅させる発光制御手段と、を含み、視覚的に報知する、ナビゲーション装置。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である発光制御手段の動作を「表示手段の駆動が停止されている場合であっても」発光手段を点滅させると限定すると共に、それに伴い「現在位置を表示する表示手段」との限定をしたものであって、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-162275号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【請求項1】
立ち寄り希望施設種別の入力を受け付ける受付手段と、
前記受付手段が受け付けた立ち寄り希望施設種別に属し、かつ目的地までの案内経路上または案内経路周辺にある立ち寄り施設のうち、現在位置から最寄りの立ち寄り施設および当該最寄りの立ち寄り施設の次に近い立ち寄り施設のそれぞれについての、現在位置または前記案内経路からの離れ度合いを示す乖離指標値を、報知装置に報知させる報知制御手段と、を備えたナビゲーション装置。」

・「【0015】
図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成を示す。
【0016】
この車両用ナビゲーション装置1は、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13、スピーカ14、RAM16、ROM17、外部記憶媒体18、およびCPU19を有している。
【0017】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない地磁気センサ、ジャイロスコープ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置や向きを特定するための情報をCPU19に出力する。
【0018】
操作スイッチ群12は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置13の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、ユーザによるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号をCPU19に出力する。
【0019】
画像表示装置13は、CPU19から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
【0020】
外部記憶媒体18は、HDD等の不揮発性の記憶媒体であり、CPU19が読み出して実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0021】
地図データは、道路片(リンク)および交差点(ノード)の位置、種別、交差点と道路片との接続関係情報等を含む道路データ、および施設データを有している。施設データは、施設毎のエントリを複数有しており、各エントリは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、施設種類情報等を示すデータを有している。
【0022】
CPU(コンピュータに相当する)19は、ROM17および外部記憶媒体18から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM16、ROM17、および外部記憶媒体18から情報を読み出し、RAM16および外部記憶媒体18に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13およびスピーカ14と信号の授受を行う。
【0023】
CPU19がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、案内経路探索処理、経路案内処理等がある。
【0024】
現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを特定する処理である。
【0025】
案内経路探索処理は、操作スイッチ群12からユーザによる目的地の入力を受け付け、現在位置から当該目的地までの最適な案内経路を算出する処理である。
【0026】
経路案内処理は、外部記憶媒体18から地図データを読み出し、算出された案内経路、目的施設、経由施設および現在位置等をこの地図データの示す地図上に重ねた画像を、画像表示装置13に出力し、案内交差点の手前に自車両が到達した等の必要時に、右折、左折等を指示する案内音声信号をスピーカ14に出力する処理である。
【0027】
また、本実施形態のCPU19は、案内経路途中の立ち寄り施設についての報知を画像表示装置13、スピーカ14に行わせるための処理を実行する。この処理のために、CPU19は、上述の案内経路探索処理が案内経路を算出して以降、その案内経路についての経路案内処理が終了するまで、図2に示す立ち寄り施設案内用プログラム100を、他のプログラムと並行して実行し続けるようになっている。
【0028】
この立ち寄り施設案内用プログラム100の実行において、CPU19は、まずステップ110で、操作スイッチ群12からの信号に基づいて、ユーザによる立ち寄り希望施設種別の入力および検索対象範囲を案内経路上に限るか否かの入力があるまで待ち、入力があると、その入力内容を受け付け、続いてステップ120を実行する。
【0029】
ステップ120では、ステップ110で受け付けた入力内容に基づいて、検索対象範囲を案内経路上に限るか否かを判定し、限る場合は続いてステップ130を実行し、限らない場合は続いてステップ140を実行する。
【0030】
ステップ130では、現在位置から先の案内経路上の立ち寄り施設検索を行う。具体的には、ステップ110で受け付けた立ち寄り希望施設種別に属し、かつ現在位置から目的地までの案内経路上にある(すなわち当該案内経路に面している)すべての施設を、立ち寄り施設として特定する。
【0031】
ステップ140では、施設検索範囲の入力を受け付ける。具体的には、ユーザによる操作スイッチ群12に対する距離の入力を待ち、入力があると、現在位置から目的地までの案内経路から、この受けた距離以内の領域を、施設検索範囲とする。したがって、この受けた距離は、施設検索範囲の広がりを示す量である。
【0032】
続いてステップ150では、ステップ110で受け付けた立ち寄り希望施設種別に属し、かつ施設検索範囲内にあるすべての施設を、立ち寄り施設として特定する。
【0033】
ステップ130または150で立ち寄り施設の検索が行われると、続いてステップ155で、ユーザによる操作スイッチ群12に対する案内時期の入力を受け付ける。なお、案内時期とは、特定された立ち寄り施設のうち、現在位置からの最寄りの施設についての案内を行うタイミングを示す情報である。案内を行うタイミング条件としては、具体的には、現在の最寄りの立ち寄り施設から直線距離で500メートル以内に入ったタイミング、現在の最寄りの施設から直線距離で1キロメートル手前に入ったタイミング、現在時刻を起点として一定時間(例えば2時間)おきのタイミング、等がある。
【0034】
なお、最寄りとは、最も近いことを意味し、また、最も近いか否かは、現在位置から立ち寄り施設までの直線距離、経路探索によって算出した走行距離、経路探索によって算出した経路の予想走行時間等、現在位置と立ち寄り施設との地理的または経路的近さ度合いを示す量によって決まるものである。また、現在の走行方向の逆方向領域(例えば走行方向から左右に100°以上180°以下ずれた方向)にある施設は、既に立ち寄らずに行き過ぎた立ち寄り施設として、最寄りの施設や後述する最寄りの施設の次に近い施設としては採用しないようにする。
【0035】
続いてステップ160で、案内時期の監視のための、タイミング条件が満たされるか否かの比較計算を行う。具体的には、現在位置、最寄りの立ち寄り施設の位置、現在時刻等を用いて、現在位置と最寄りの立ち寄り施設との距離とタイミング条件の規定する距離との比較を行ったり、現在時刻とタイミング条件の規定する時刻との比較を行ったりする。
【0036】
そしてステップ165で、ステップ160の監視結果に基づいて、現在が案内時期であるか、すなわちステップ155で受け付けた案内時期のタイミング条件が満たされるか否かを判定し、案内時期である場合は続いてステップ170を実行し、案内時期でない場合は、再度ステップ160で案内時期監視を行う。
【0037】
ステップ170では、立ち寄り施設のうち現在位置から最寄りの施設の、現在位置および案内経路からの離れ度合い、および、その施設が案内経路上にあるか否かを、画像表示装置13に文字表示させ、またスピーカ14に音声出力させる。」

・「【0044】
実際には、ステップ170および180においては、これら列挙した報知項目のうちどのような1つまたはどのような2つ以上の組み合わせを画像表示装置13およびスピーカ14に報知させてもよい。また、画像表示装置13にだけ文字表示させてもよいし、スピーカ14にだけ音声出力させてもよい。
【0045】
例えば、ステップ170においては、最寄りの立ち寄り施設が案内経路内にあれば、「最寄りの立ち寄り施設が案内経路上1キロメートル先、右側にあります」という文字列または音声を報知させる。また、最寄りの立ち寄り施設が案内経路外にある場合、「立ち寄り施設が案内経路上3キロメートル先から右方向1キロメートルの位置にあります。この施設への立ち寄りによる走行距離の増加は3キロメートル、所要時間の増加は15分です」という文字列または音声を報知させる。」

・「【0056】
また、上記の実施形態においては、車両用ナビゲーション装置1が、本発明のナビゲーション装置の一例として挙げられているが、本発明のナビゲーションシステムは、車両用ナビゲーション装置に限らず、例えば、人が携帯できるような携帯型ナビゲーション装置としても実現可能である。」

・【0027】の「本実施形態のCPU19は、案内経路途中の立ち寄り施設についての報知を画像表示装置13、スピーカ14に行わせるための処理を実行する。」なる記載及び【0037】の「立ち寄り施設のうち現在位置から最寄りの施設の、現在位置および案内経路からの離れ度合い、および、その施設が案内経路上にあるか否かを、画像表示装置13に文字表示させ」なる記載を参酌すると、図1には、画像表示装置13と、立ち寄り施設のうち現在位置から最寄りの施設の、現在位置からの離れ度合いを、画像表示装置13に文字表示させるCPU19と、を含む報知部が示されているといえる。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「車両の現在位置や向きを特定するための情報をCPU19に出力する位置検出器11と、
現在位置等を地図データの示す地図上に重ねた画像が出力される画像表示装置13と、
操作スイッチ群12からユーザによる目的地の入力を受け付け、現在位置から当該目的地までの最適な案内経路を算出する処理である案内経路探索処理を行うCPU19と、
地図データが有する施設データと、ユーザによる操作スイッチ群12に対する距離の入力を待ち、入力があると、現在位置から目的地までの案内経路から、この受けた距離以内の領域である施設検索範囲内にあるすべての施設を、立ち寄り施設として特定するCPU19と、
案内時期のタイミング条件に基づき報知する報知部と、を備え、
前記報知部は、画像表示装置13と、
立ち寄り施設のうち現在位置から最寄りの施設の、現在位置からの離れ度合いを、画像表示装置13に文字表示させるCPU19と、を含む、ナビゲーション装置。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その作用・機能からみて、後者の「車両の現在位置や向きを特定するための情報をCPU19に出力する位置検出器11」が前者の「現在位置を取得する位置取得手段」に相当する。

また、後者の「現在位置等を地図データの示す地図上に重ねた画像が出力される画像表示装置13」が前者の「現在位置を表示する表示手段」に相当する。

さらに、後者の「目的地」が前者の「目的地点」に相当するので、後者の「操作スイッチ群12からユーザによる目的地の入力を受け付け」る態様が、前者の「目的地点を設定する」態様に相当する。そして、後者の「現在位置から目的地までの最適な案内経路を算出する処理」における「現在位置」は、操作スイッチ群12からユーザによる目的地の入力を受け付けたとき、つまり、出発時の「現在位置」となることから、前者の「出発地点」に相当するので、後者における「現在位置から目的地までの最適な案内経路を算出する処理」においても「出発地点を設定する」ものと認められるので、結局、後者の「操作スイッチ群12からユーザによる目的地の入力を受け付け、現在位置から当該目的地までの最適な案内経路を算出する処理である案内経路探索処理を行うCPU19」が前者の「目的地点を設定する目的地点設定手段と、出発地点を設定する出発地点設定手段」に相当する。

そして、後者の「地図データ」が前者の「地図情報」に相当し、以下同様に、「施設データ」が「施設情報」に相当するので、後者の「地図データが有する施設データ」が前者の「地図情報に含まれる施設情報」に相当する。
また、後者では、「ユーザによる操作スイッチ群12に対する距離の入力を待ち、入力があると、」「現在位置から目的地までの案内経路から、この受けた距離以内の領域である施設検索範囲内にあるすべての施設を、立ち寄り施設として特定する」ので、「現在位置から目的地までの案内経路」における「現在位置」は、ユーザによる操作スイッチ群12に対する距離の入力を待ち、入力があったときの「現在位置」になるので、この入力があった時点により「出発地点」(出発時に入力した場合)あるいは「出発地点以外の地点」(出発後に入力した場合)となるので、この「現在位置」と前者の「出発地点」とは「所定の地点」との概念で共通し(したがって、出発時に入力した場合は、後者の「現在位置から目的地までの案内経路」における「現在位置」は前者の「出発地点」に相当する。)、後者の「案内経路」が前者の「経路」に相当し、以下同様に、「施設」及び「立ち寄り施設」が「施設」に、「立ち寄り施設として特定するCPU19」が「施設情報を抽出する施設抽出手段」にそれぞれ相当するので、後者の「ユーザによる操作スイッチ群12に対する距離の入力を待ち、入力があると、現在位置から目的地までの案内経路から、この受けた距離以内の領域である施設検索範囲内にあるすべての施設を、立ち寄り施設として特定するCPU19」と前者の「出発地点から目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段」とは、「所定の地点から目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段」との概念で共通し、後者の「立ち寄り施設として特定するCPU19」は「地図データが有する施設データ」のうちから「立ち寄り施設」を特定しているものと認められるから、結局、後者の「地図データが有する施設データと、ユーザによる操作スイッチ群12に対する距離の入力を待ち、入力があると、現在位置から目的地までの案内経路から、この受けた距離以内の領域である施設検索範囲内にあるすべての施設を、立ち寄り施設として特定するCPU19」と前者の「地図情報に含まれる施設情報のうちから出発地点から目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段」とは、「地図情報に含まれる施設情報のうちから所定の地点から目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段」との概念で共通する。

また、後者において、「案内時期のタイミング条件に基づき報知する」のは、少なくとも1つの立ち寄り施設が特定される場合であることは明らかであり、また、この「案内時期のタイミング条件に基づき報知する」態様が、前者の「所定のタイミングで報知する」態様に相当し、以下同様に「報知部」が「報知手段」に相当するので、結局、後者の「案内時期のタイミング条件に基づき報知する報知部」が前者の「抽出手段により少なくとも1つの施設情報が抽出される場合、所定のタイミングで報知する報知手段」に相当する。

さらに、後者の「画像表示装置13」と前者の「光を発する発光手段」とは「視覚的に報知する報知装置」との概念で共通し、後者の「立ち寄り施設のうち現在位置から最寄りの施設の、現在位置からの離れ度合いを、画像表示装置13に文字表示させる」態様と、前者の「取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて定まる間隔で発光手段を点滅させる」態様とは、「取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて報知させる」との概念で共通し、後者の「(画像表示装置13に文字表示させる)CPU19」と前者の「発光制御手段」とは、「報知装置の制御手段」との概念で共通するので、後者の「報知部は、画像表示装置13と、立ち寄り施設のうち現在位置から最寄りの施設の、現在位置からの離れ度合いを、画像表示装置13に文字表示させるCPU19」と前者の「報知手段は、光を発する発光手段と、表示手段の駆動が停止されている場合であっても、取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて定まる間隔で発光手段を点滅させる発光制御手段と」とは、「報知手段は、視覚的に報知する報知装置と、取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて報知させる報知装置の制御手段」との概念で共通する。

最後に、後者の「ナビゲーション装置」が前者の「視覚的に報知する、ナビゲーション装置」に相当する。

したがって、両者は、
「現在位置を取得する位置取得手段と、
前記現在位置を表示する表示手段と、
目的地点を設定する目的地点設定手段と、
出発地点を設定する出発地点設定手段と、
地図情報に含まれる施設情報のうちから所定の地点から前記目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段と、
前記抽出手段により少なくとも1つの施設情報が抽出される場合、所定のタイミングで報知する報知手段と、を備え、
前記報知手段は、視覚的に報知する報知装置と、
前記取得された現在位置と、前記施設抽出手段により抽出された前記施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて報知させる報知装置の制御手段と、を含み、視覚的に報知する、ナビゲーション装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「所定の地点から目的地点までの経路の周辺に位置する施設」における「所定の地点」が、本願補正発明では、「出発地点」であるのに対し、引用発明では、ユーザによる操作スイッチ群12に対する距離の入力を待ち、入力があったときの「現在位置」であり、入力があった時点により「出発地点」(出発時に入力した場合)あるいは「出発地点以外の地点」(出発後に入力した場合)となるので、「所定の地点」が「出発地点」でなく「出発地点以外の地点」となる場合がある点。

[相違点2]
報知手段を構成する、視覚的に報知する報知装置、及び、取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて報知させる報知装置の制御手段に関し、本願補正発明では、視覚的に報知する報知装置が「光を発する発光手段」であり、取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて報知させる報知装置の制御手段が「表示手段の駆動が停止されている場合であっても、取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて定まる間隔で発光手段を点滅させる発光制御手段」であるのに対し、引用発明では、視覚的に報知する報知装置が「画像表示手段13」であり、取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて報知させる報知装置の制御手段が「立ち寄り施設のうち現在位置から最寄りの施設の、現在位置からの離れ度合いを、画像表示装置13に文字表示させるCPU19」である点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。
・相違点1について
運転途中における入力を回避する等のために必要な全ての入力操作を出発時に行うことはナビゲーション装置の分野における常套手段であるから、引用発明において、ユーザによる操作スイッチ群12に対する距離の入力を出発時に行うことにより、上記相違点1における「現在位置」を「出発地点」とし、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものというべきである。

・相違点2について
まず、引用例1の段落【0056】に「また、上記の実施形態においては、車両用ナビゲーション装置1が、本発明のナビゲーション装置の一例として挙げられているが、本発明のナビゲーションシステムは、車両用ナビゲーション装置に限らず、例えば、人が携帯できるような携帯型ナビゲーション装置としても実現可能である。」と記載されていることから引用発明を携帯型ナビゲーション装置の一形態であるナビゲーション機能を有する携帯電話機とすることが示唆されているといえる。

次に、例えば、特開2006-3269号公報に開示されているように、報知手段は、光を発する発光手段(「着信LED283」が相当)と、表示手段の駆動が停止されている場合(「折り畳み式の携帯端末で、表示画面や操作パネル等を内側にして折り畳んだ状態であり、携帯端末の表示画面が利用可能な状態」でない場合が相当。(【0021】の「また、上記ナビスイッチは、上記携帯端末が携帯される状態で操作可能に構成されていることが好ましい(請求項6)。ここで、上記携帯端末が携帯される状態とは、携帯端末の非使用状態であり、例えば、折り畳み式の携帯端末であれば、表示画面や操作パネル等を内側にして折り畳んだ状態をいう。そして、上記携帯状態で操作可能なように上記ナビスイッチを構成した場合には、例えば、上記携帯端末の表示画面や、操作パネル等を利用可能な状態にしなくても、上記ナビスイッチを操作することで、上記携帯端末の誘導機能を随時、利用することができる。」なる記載を参照。))であっても、取得された現在位置(「現在地点」が相当)と、利用者の関心がある施設(「目標到達地点」、「最終目的地」が相当)との間の距離に基づいて定まる間隔で前記発光手段を点滅させる(「目標到達地点までの距離である進路距離を計算し、進路距離の長短に応じて光を断続的に出力する際の時間間隔を変更するように構成されている」が相当。(【請求項7】の「請求項1?6のいずれか1項において、上記提示手段は、上記物理量として音、光及び振動のうちの少なくもいずれかを出力するように構成されていることを特徴とする携帯端末。」、及び、【請求項9】の「請求項1?8のいずれか1項において、上記誘導情報計算手段は、上記誘導情報として、上記目標到達地点までの距離である進路距離を計算し、上記提示手段は、上記進路距離の長短に応じて上記物理量を断続的に出力する際の時間間隔を変更するように構成されていることを特徴とする携帯端末。」なる記載を参照。))発光制御手段(「CPU25」が相当)とすることは、(携帯電話機の)ナビゲーション装置における周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。

そして、引用発明は、取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて報知するものであること、さらに、携帯電話機では、表示手段の駆動が停止されている場合であっても、通常、情報を報知することが必要であることは、着信時におけるLED等の発光手段に例示されるように明らかであることから、引用発明のナビゲーション装置を、ナビゲーション機能を有する携帯電話機とした場合、表示手段の駆動が停止される場合であっても、現在位置と利用者の関心がある施設といえる立ち寄り施設の距離をLED等の発光手段により報知することが求められているといえる。

そうすると、引用発明をナビゲーション機能を有する携帯電話機とする際に、当該距離の報知をLED等の発光手段で行うようにすることは当業者が容易になし得たものであり、その態様を上記周知技術1のようにすることは設計事項に過ぎない。

そして、上記相違点を併せ備えた本願補正発明の作用効果について検討してみても、引用発明、上記常套手段及び上記周知技術1から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとは言えない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、上記常套手段及び上記周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、平成24年1月20日付けFaxによる回答書において、概略以下の主張をしている。
ア.請求人の主張1
引用例1(特開2006-162275号公報)は、視覚による画像表示装置13を停止させていたとしても、聴覚によるスピーカ14による報知を行うことが可能にしているにすぎない。本願に係る発明は、共に視覚を刺激する「表示手段」および「発光手段」を有する点、さらに、その一方である「表示手段」の駆動が停止されている場合であっても、他方の「発光手段」を点滅させる点で、引用例1と全く異なる。
イ.請求人の主張2
周知技術1(特開2006-3269号公報)は、「予め位置が判明している特定の目標点を設定し、その位置に使用者を誘導するもの」、「周知技術1の段落【0058】の記載における交差点や道路変曲点は、最終目的地に到達するための最適な経路を誘導するために利用されるものであって、経路を特定する経路上の位置にすぎません。したがって、周知技術1における交差点や道路変曲点は、本願請求項1に記載の「施設情報」とは異なる。」ものであるから、「周知技術1は、本願に係る発明や引用例1のように、『地図情報に含まれる施設情報のうちから前記出発地点から前記目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出するもの』とは全く異なる。」。
そこで、上記出願人の主張1、2について、以下検討する。
ア.請求人の主張1について
まず、引用例1の「スピーカ14」による報知については、引用発明の認定、本願発明の容易想到性の判断等には用いていないので、請求人の主張する「視覚による画像表示装置13を停止させていたとしても、聴覚によるスピーカ14による報知を行うことが可能にしているにすぎない。」なる点は、引用発明の認定、本願発明の容易想到性の判断等には、なんら関係のないことである。
また、「発光手段」を有する点、さらに、その一方である「表示手段」の駆動が停止されている場合であっても、他方の「発光手段」を点滅させる点については、上記「・相違点2について」で判断したとおりである。
イ.請求人の主張2について
請求人が主張するように、周知技術1は、「地図情報に含まれる施設情報のうちから前記出発地点から前記目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出するもの」ではない(この点は周知技術1として認定はしていない)。
しかしながら、引用発明の「経路周辺に位置する施設」も、上記特開2006-3269号公報に記載の「目標到達地点」や「最終目的地」も、「利用者が関心のある施設」という点で共通するものであり、引用発明をナビゲーション機能を有する携帯電話機とする際に、当該距離の報知をLED等の発光手段で行うようにすることは当業者が容易になし得たものであり、その態様を上記周知技術1のようにすることは設計事項に過ぎないことは、上記「・相違点2について」で判断したとおりである。
なお、周知技術1の認定に際し、上記特開2006-3269号公報からは、「交差点」や「道路変曲点」は認定していない。

したがって、請求人の上記主張は採用することはできない。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成22年6月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「現在位置を取得する位置取得手段と、
目的地点を設定する目的地点設定手段と、
出発地点を設定する出発地点設定手段と、
地図情報に含まれる施設情報のうちから前記出発地点から前記目的地点までの経路の周辺に位置する施設の施設情報を抽出する施設抽出手段と、
前記抽出手段により少なくとも1つの施設情報が抽出される場合、所定のタイミングで報知する報知手段と、を備え、
前記報知手段は、光を発する発光手段と、
前記取得された現在位置と、前記施設抽出手段により抽出された前記施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて定まる間隔で前記発光手段を点滅させる発光制御手段と、を含み、視覚的に報知する、ナビゲーション装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、及び、その記載内容は、上記「2.(2)引用例」に記載したとおりである。
また、原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-274482号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0039】
GPSアンテナ4およびGPS受信部5は、位置情報取得手段として働き、GPS衛星14からの電波を受信する。通信モジュール6は、通信手段として働き、通信網12を介して管理センタ13と双方向通信を行う。メモリ7は、記憶手段として働き、後述するように取得される、位置情報、時刻情報、車両走行状態情報および走行可能距離情報を記憶する。また、メモリ7は、車載用管理機器1の識別コードも記憶している。表示部8は、給油施設情報出力手段および表示手段として働き、LED(液晶ディスプレイ)等からなる。操作部9は、各種操作キーを含む。」
(当審注:LEDは液晶ディスプレイであるから、LCD(Liquid Crystal Display)の誤記と認められる。)

・「【0047】
車両側の処理は、主にCPU2の制御により行われ、まず、位置情報が取得される(ステップS1)。すなわち、予め定められた所定インターバルにしたがう観測時刻またはサンプリング時刻になると、GPS衛星14からGPSアンテナ4およびGPS受信部5にて受信したGPS信号を利用して、車載用管理機器1を搭載している車両の現在地の緯度・経度および走行方向を含む位置情報が取得され、メモリ7に記憶される。」

・「【0055】
次に、このように作成された特定の給油施設情報は、更新されて給油施設情報DB133bとして記憶装置133に集積される。次に、記憶装置133から最新の特定の給油施設情報が読み出され(ステップS14)、次いで、読み出された特定の給油施設情報が、地図情報DB133cより読み出されたその給油施設の設置場所を含む地図情報と共に、通信装置131から通信網12を介して、車載用管機器1に送信され(ステップS15)、次いで処理が終了する。
【0056】
したがって、車両の運転者は、表示装置8の画面上に表示された地図上の給油施設の設置場所を確認して、車両をその設置場所へ移動させ、給油することができる。」

・「【0059】
また、上述の実施の形態では、表示装置8の画面に地図上の給油施設を表示させているが、車両に既存のナビゲーションシステムが搭載されている場合は、これに限らず、ナビゲーションシステムの表示部に表示させても良い。
【0060】
また、給油施設情報の出力は、表示装置8への表示に限らず、音声出力手段としての音声出力装置を備えて該音声出力装置による音声出力としても良い。この場合は、たとえば、「周辺○○kmに△△スタンドがあります。」のような音声メッセージで最も近い給油施設を報知することができる。
【0061】
また、車載用管理機器1は、特定の給油施設情報で示される目標の給油施設に所定距離まで近づくと警告信号を出力する警告信号発生手段をさらに有しても良い。この警告信号発生手段は、警告音を発生する警告音発生手段、またはLED等の表示素子の点灯による警告表示を行う警告表示手段である。この警告音または警告表示により、乗務員の注意を促すことができる。
【0062】
また、車両が特定の給油施設情報で示される目標の給油施設に所定距離よりさらに近づくにつれて、警告音発生手段の警告音または警告表示手段の表示素子の点滅の周期が短くなるように構成することもできる。この場合は、目標の給油施設に近づきつつあることが乗務員に報知することができる。」

(2)対比・判断
本願発明は、上記「2.(1)補正後の本願の発明」で検討した本願補正発明の「表示手段の駆動が停止されている場合であっても」及び「現在位置を表示する表示手段」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明を対比すると上記「2.(3)」において記載した一致点において一致し、上記「2.(4)」ですでに検討した相違点1と以下の相違点3において相違する。

[相違点3]
報知手段を構成する、視覚的に報知する報知装置、及び、取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて報知させる報知装置の制御手段に関し、本願発明では、視覚的に報知する報知装置が「光を発する発光手段」であり、取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて報知させる報知装置の制御手段が「取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて定まる間隔で発光手段を点滅させる発光制御手段」であるのに対し、引用発明では、視覚的に報知する報知装置が「画像表示手段13」であり、取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離に基づいて報知させる報知装置の制御手段が「立ち寄り施設のうち現在位置から最寄りの施設の、現在位置からの離れ度合いを、画像表示装置13に文字表示させるCPU19」である点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。
・相違点1について
上記「2.(4)」の「・相違点1について」を参照。

・相違点3について
例えば、引用例2に開示されているように、「表示手段(「ナビゲーションシステムの表示部」が相当)と、光を発する発光手段(「LED等の表示素子」が相当)と、取得された現在位置(「現在地」が相当)と、利用者の関心がある施設との間の距離に基づいて定まる間隔で前記発光手段を点滅させる(「目標の給油施設に所定距離まで近づくとLED等の素子の点灯を行い、所定距離よりさらに近づくにつれて、表示素子の点滅の周期が短くなるように構成する」が相当)発光制御手段(「警告表示手段」が相当)を含むナビゲーション装置(「ナビゲーションシステム」が相当)は、従来からの周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。

そして、引用発明において、取得された現在位置と、施設抽出手段により抽出された施設情報で定まる施設との間の距離を視覚的に報知する際に、画像表示装置13に文字表示させるか、上記周知技術2として示した発光手段で行うかは、当業者が適宜選択する設計事項に属するものであるから、現在位置と利用者の関心がある施設といえる立ち寄り施設の距離の報知を、画像表示装置13及び(画像表示装置13に文字表示させる)CPU19に代えて、上記周知技術2の発光手段及び発光制御手段を採用して、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものと認められる。

そして、上記相違点を併せ備えた本願発明の作用効果について検討してみても、引用発明、上記常套手段及び上記周知技術2から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとは言えない。

したがって、本願発明は、引用発明、上記常套手段及び上記周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-09 
結審通知日 2012-03-13 
審決日 2012-03-26 
出願番号 特願2008-67882(P2008-67882)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上野 力  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 神山 茂樹
田村 嘉章
発明の名称 ナビゲーション装置およびナビゲート方法  
代理人 中川 雅博  

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