• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1256737
審判番号 不服2008-32453  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-24 
確定日 2012-05-07 
事件の表示 特願2000-558799「酸基を持つ非ステロイド系リューマチ治療薬を有する局所用プラスター」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月20日国際公開、WO00/02539、平成14年 7月 9日国内公表、特表2002-520270〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1999年7月6日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 1998年7月9日,ドイツ)を国際出願日とする出願であって、拒絶理由通知に応答して平成20年8月8日付けで手続補正書と意見書が提出されたが、平成20年9月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年12月24日に拒絶査定不服審判が請求され、平成21年1月19日付けで請求理由の補正書(方式)が提出されたものである。

2.本願発明
本願請求項1?12に係る発明は、平成20年8月8日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定された次のとおりのものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」ともいう。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 遊離カルボキシル基を有する非ステロイド系リューマチ治療薬を作用物質として有する局所用パッチであり、
作用物質に対して不活性であり、少なくとも一方向に弾性である材料でできた裏打層と、
多価金属イオンと架橋し遊離カルボキシル基を含むポリアクリル酸エステル接着剤を基質とし、基質中に脂肪酸を含有している、自己接着性の作用物質含有基質層と、
使用前に除去される保護フィルムとを含み、
前記作用物質含有基質が1層で構成され、水酸基を含まず、
前記裏打層が、二方向に弾性であるポリエステル織布、または
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルもしくは、エチレンと酢酸ビニルのコポリマーで構成される独立弾性気泡フォームでできている
局所用パッチ。」

3.引用例
原査定の拒絶理由に引用された本願優先日前の刊行物である特開平3-220120号公報(以下、「引用例1」という。)と、特開平6-145047号公報(以下、「引用例2」という。)、特開平4-230212号公報(以下、「引用例3」という。)には、次の技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

[引用例1]
(1-i)「(1)アクリル酸エステル系ポリマーおよび該ポリマーと相溶する液体成分とを含む架橋ゲル層が支持体の少なくとも片面に形成されてなるアクリル系ゲル材。
(2)アクリル酸エステル系ポリマーと液体成分との含有重量比が、1.0:0.25?1.0:2.0である請求項(1)記載のアクリル系ゲル材。
(3)架橋がチタンまたはアルミニウムからなる金属アルコラートおよび金属キレート、ならびに三官能イソシアネートから選ばれた一種の架橋剤によってなされている請求項(1)記載のアクリル系ゲル材。
(4)請求項(1)?(3)の何れかに記載のアクリル系ゲル材中に、薬物が含有されてなるアクリル系ゲル製剤。」(特許請求の範囲の請求項1?4参照)
(1-ii)「〈発明が解決しようとする課題〉
しかし、貼付型の経皮吸収製剤は、薬物の皮膚移行を良好にするために確実に皮膚面に固定する必要がある反面、皮膚接着力があまり大きすぎると、使用後に皮膚面から製剤を剥離除去するときに物理的刺激による痛みや角質剥離を生じ、時には著しい皮膚刺激を生じる場合もある。
従って、皮膚接着性は貼付型の経皮吸収製剤を開発するに当たって実用上、重要な検討項目ではあるが、皮膚刺激性についての検討も重要であり、皮膚刺激性が小さくかつ製剤の皮膚固定も良好な製剤の開発が望まれているのが実情である。
〈課題を解決するための手段〉
そこで、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アクリル酸エステル系ポリマーに該ポリマーと相溶する液体成分を通常の使用量よりも過剰に含有させた場合、皮膚への接着においてはソフト感が付与できる反面、凝集力が極度に低下するので、著しい凝集破壊が生じて皮膚面から剥離する際に剥離不可能となったり、皮膚刺激を起こすことを見い出し、実用に耐えないことが判明した。そこで、液体成分を過剰量含有させたポリマー層を架橋処理してゲル化させ、所謂油性ゲル状態にしたところ、凝集力の低下が防げると共に製剤の剥離時に皮膚面にかかる応力を緩和・分散でき、皮膚接着性と皮膚刺激性のバランスが良好となることを見い出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明はアクリル酸エステル系ポリマーおよび該ポリマーと相溶する液体成分とを含む架橋ゲル層が支持体の少なくとも片面に形成されてなるアクリル系ゲル材、および該ゲル材に薬物を含有させてなるアクリル系ゲル製剤を提供するものである。」(第1頁右下欄16行?第2頁右上欄9行参照)
(1-iii)「本発明のアクリル系ゲル材およびゲル製剤に用いる支持体は、特に限定されないが、架橋ゲル層に含有される液体成分や薬物が支持体中を通って背面から失われて含量低下を起こさないもの、即ちこれらの成分が不透過性の材質からなるものが好ましい。具体的にはポリエステル、ナイロン、サラン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、サーリン、金属箔などの単独フィルムまたはこれらのラミネートフィルムなどを用いることができる。」(第2頁右上欄10行?同頁左下欄1行参照)
(1-iv)「本発明において上記支持体の片面に形成される架橋ゲル層は、アクリル酸エステル系ポリマーおよび該ポリマーと相溶する液体成分および製剤としてはさらに薬物を含有した架橋構造を有する層であり、適度な皮膚接着力と凝集力とを備えている。接着力としてはベークライト板への接着力(測定方法は後述する)で70?250g/12mm幅、プローブタック試験で20?80g程度の値を示すものである。
アクリル酸エステル系ポリマーは後述の液体成分と共に架橋ゲル層を構成する主基材となるものであって、液体成分と相溶状態を維持して皮膚面への良好な接着性と保型性を発揮するものである。なお、・・・(後略)。また、このようなポリマーはアクリル酸エステル系ポリマーと比べて架橋反応に関与する官能基量などの調整が難しく、再現性のある架橋処理を行ない難いという問題があり、本発明に適したものとは云えない。
本発明に用いるアクリル酸エステル系ポリマーとしては、アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体が好ましく、特に架橋処理のし易さの点からは該(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として共重合した共重合体を用いることが望ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的にはアルキル基がブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシルなどの直鎖アルキル基や分岐アルキル基などを有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらは一種もしくは二種以上用いることができる。また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合するモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、・・・中略・・・、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニル-2-ピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリンなどのビニル系モノマーなどが挙げられ、これらは一種もしくは二種以上併用して共重合することができる。これらの共重合するモノマーはゲル層の凝集力の調整や、薬物の溶解性向上のために用いることができ、共重合量は目的に応じて任意に設定することができる。
上記アクリル酸エステル系ポリマーのうち、・・・(後略)。」(第2頁左下欄末行?第3頁右下欄13行参照)
(1-v)「本発明に用いる液体成分は上記アクリル酸エステル系ポリマーと相溶する性質を有するものであり、架橋ゲル層を可塑化させてソフト感を付与することによって、架橋ゲル層を皮膚面から剥離するときに皮膚接着力に起因する痛みや皮膚刺激性を低減する役割を有するものである。
従って、この液体成分は可塑化作用を有するものであればよいが、併存させる薬物の経皮吸収性を向上させるために吸収促進作用も有するものを用いることが好ましい。
このような液体成分としては、具体的にはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのようなグリコール類、オリーブ油、ヒマシ油、スクワレン、ラノリンのような油脂類、・・・中略・・・、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル、ラウリル酸エチル、N-メチルピロリドン、オレイン酸エチル、オレイン酸、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、バルミチン酸オクチル、l,3-ブタンジオールなどが挙げられ、これらのうち一種以上を配合して使用する。前記アクリル酸エステル系ポリマーと該液体成分との配合割合(含有割合)は、重量比で1.0:0.25?1.0:2.0、皮膚刺激性低減の観点から好ましくは1.0:0.4?1.0:1.8、さらに好ましくは1.0:0.6?10:1.8、即ち液体成分量をかなり多量に含有させることが好ましい。なお、従来の製剤に配合されている液体成分量は通常、1.0:0.25よりも液体成分量が少なく、このような含有量では実用的な皮膚刺激性低減のレベルに達しないことがある。」(第3頁右下欄14行?第4頁右上欄14行参照)
(1-vi)「本発明では以上のように配合したのち、適当な架橋手段にて架橋処理を施こしてゲル状態とし、含有する液体成分の流出の防止と凝集力を付与する。架橋処理は紫外線照射や電子線照射などの放射線照射による物理的架橋や、ポリイソシアネート化合物、有機過酸化物、有機金属塩、金属アルコラート、金属キレート化合物、多官能性化合物などの架橋剤を用いた化学的架橋処理などが用いられる。これらの架橋手段のうち放射線照射や有機過酸化物を用いた場合、薬物種によっては分解反応を生じることがあり、また高反応性のイソシアネート類や、通常の架橋反応に用いる金属塩や有機金属塩では配合後に溶液の増粘現象が生じて作業性に劣ることがある。また予めジアクリレートなどの多官能性のモノマーをアクリル酸エステル系ポリマーに共重合させておく方法も考えられるが、この場合も溶液粘度が上昇する可能性がある。従って、本発明においてはこれらの架橋剤のうち反応性や取扱い性の点から、三官能性イソシアネート、チタンまたはアルミニウムからなる金属アルコラート或いは金属キレート化合物が好適である。これらの架橋剤は塗工、乾燥までは溶液の増粘現象を起こさず、極めて作業性に優れる。この場合の架橋剤の配合量はアクリル酸エステル系ポリマー100重量部に対して0.01?2.0重量部程度である。また、アクリル酸エステル系ポリマーが上記架橋剤と反応する官能基を有さない場合でも、被架橋物質にアルカリ処理などを施こすことによって、架橋処理が可能な構造に変性することができる。」(第4頁右上欄15行?同頁右下欄4行参照)
(1-vii)「本発明においては上記のようにして得られた架橋ゲル層に薬物を含有させることによって、ゲル製剤とすることができる。含有させる薬物はその治療目的に応じて任意に選択することができるが、例えばコルチコステロイド類、鎮痛消炎剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、ビタミン剤、冠血管拡張剤(イソソルビトジニトレートを除く)、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、性ホルモン(エストラジオールを除く)、・・・中略・・・、制吐剤、抗腫瘍剤、生体医薬などの種類の薬物であって、経皮吸収可能な薬物が使用でき、これらの薬物は必要に応じて2種類以上併用することもできる。」(第4頁右下欄5?18行参照)
(1-viii)「〈発明の効果〉
本発明のアクリル系ゲル材およびゲル製剤は以上のような構成からなるものであって、架橋ゲル層がアクリル酸エステル系ポリマーに相溶する多量の液体成分を含有しており、ゲル層にソフト感を付与し凝集力を維持しながら皮膚刺激性を低減できるものである。従って、本発明の製剤を適用皮膚面から剥離除去する際に、接着力に起因する痛みや皮膚刺激が少なく、適度な皮膚接着性と皮膚無刺激性のバランスがとれたものとなる。また、薬物を含有させたアクリル系ゲル製剤は、薬物を適度に皮膚面に放出することができ、薬物を経皮吸収によって皮膚面から生体内へ投与して各種疾患の治療や予防に効果を発揮するものである。」(第5頁右上欄1?14行参照)
(1-ix)「〈実施例〉
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明する。なお、以下において、部および%は重量部および重量%を意味する。
実施例1
不活性ガス雰囲気下でアクリル酸2-エチルヘキシル95部と、アクリル酸5部を酢酸エチル中で共重合させてアクリル酸エステル系ポリマー溶液を調製した。
この溶液の固形分50部にミリスチン酸イソプロピル50部を混合し、上記アクリル系ポリマー99.8部に対して0.2部のアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)を10%アセチルアセトン溶液として添加し、酢酸エチルをさらに加えて粘度調整を行なった。
得られた粘稠溶液を75μm厚のポリエステル製セパレータ上に乾燥後の厚み80μmとなるように塗布し、乾燥して架橋ゲルを形成した。
このようにして得られた架橋ゲル層に支持体としてポリエステル製不織布(12g/m^(2))に2μm厚のポリエステルを押出成形したラミネートフィルムの不織布面を貼り合わせて本発明のアクリル系ゲル材を得た。
実施例2
実施例1において調製したアクリル酸エステル系ポリマーの固形分45部にミリスチン酸イソプロピル45部、ケトプロフェン10部を混合した以外は、実施例1と同様にして架橋ゲル層を形成し、これを実施例1にて用いた支持体上に同様にして貼り合わせ、本発明のアクリル系ゲル製剤を得た。」(第5頁左下欄1行?同頁右下欄11行参照)
(1-x)「実験例
上記各実施例および比較例にて得た各ゲル材およびゲル製剤のサンプルを、40℃、75%の加湿条件下で2週間保存したのち、下記の試験を行なった。なお、不織布に染色液が吸収されて正確な測定が困難であるので、角質剥離量の測定に用いるサンプルについては、支持体として不織布を積層しない単層フィルム(9μm厚)を使用した。また、クロニジンを含有する製剤についてはボランティアを用いたヒト貼付試験を行わなかった。結果を第1表および第2表に示す。
〔ウサギ貼付試験〕
各実施例および比較例にて得たサンプルを、予め除毛したウサギの背部に貼付し、1.0、2.0、4.0、6.0、8.0の各時間経過毎に各々2ml採血し、これをガスクロマトグラフィーにて血中の薬物濃度を測定した。なお、サンプルの大きさはクロニジン含有製剤のみ3cm^(2)(1.73cm角)とし、その他は50cm^(2)(7.1cm角)とした。」(第7頁左下欄末行?同頁右下欄18行参照)

[引用例2]
(2-i)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は粘着剤層中に、水、粘着付与性樹脂及びその溶解剤、吸油性無機性粉末を必須の構成成分として含有し、医薬等に用いることのできる皮膚に直接貼付して用いる含水性皮膚外用貼付剤に関する。」(段落【0001】参照)
(2-ii)「【0015】水溶性高分子の配合量としては通常、本粘着剤組成物の5?20重量%であり、少な過ぎると得られる組成物の強度が弱く、貼付した時にダレ易くなり、多過ぎると得られる組成物の強度が強過ぎ製造に困難をきたす。・・・中略・・・。金属架橋剤の配合量としては通常、本粘着剤組成物の0.01?10重量%であり、少な過ぎると架橋が弱過ぎて貼付剤としての形態を保つことができないし、多過ぎると架橋が強過ぎて製造に困難をきたす。」(段落【0015】参照)
(2-iii)「【0016】更に、本発明の粘着剤組成物中には、有機酸、有機塩基、無機酸、無機塩基等のpH調整剤、エデト酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸水素ナトリウム等の安定化剤、パラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、チモール等の防腐剤、クロタミトン、ベンジルアルコール、脂肪酸エステル類等の薬物溶解剤、ポリソルベート類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類等の界面活性剤等を適宜配合することもできる。」(段落【0016】参照)
(2-iv)「【0017】また本発明品を医薬としての使用に供するためにサリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、カンフル、メントール、トウガラシエキス、ノニル酸ワニリルアミド等の局所刺激剤、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール等の抹梢血流改善剤、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペンジル等の抗ヒスタミン剤、トウキ、オウバク、サンシシ、アルニカ、西洋トチノミ等の消炎性生薬のエキスや粉末、グリチルレチン酸、インドメタシン、ピロキシカム、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フェルビナク等の非ステロイド性消炎鎮痛剤、プレドニゾロン、ハイドロコルチゾン、デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド等の外用ステロイド剤、クロタミトン等の鎮痒剤、リドカイン、ジブカイン等の局所麻酔剤、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム等の殺菌消毒剤等を配合することができる。」(段落【0017】参照)
(2-v)「【0018】本発明の含水性皮膚外用貼付剤は、水、溶解剤に溶解した粘着付与性樹脂及び吸油性無機性粉末を必須の構成成分として含有する、均一に混合して製した粘着剤組成物を平滑な担持体上に展延塗布し、厚さ100?1000μmの均一な粘着剤層を形成し、剥離ライナーフィルムで被覆するか、平滑なライナーフィルム上に先の粘着剤層を厚さ100?1000μmに形成して担持体で被覆するかして得られる。」(段落【0018】参照)
(2-vi)「【0019】使用される担持体としては、本発明品の如き含水性粘着剤層の場合にはその投錨性の観点から、織布、不織布が良好であるが、粘着剤層と反対側にポリエチレン、塩化ビニル等のプラスチック膜を形成させた複合フィルムも良好に使用される。
【0020】これら担持体は透湿性とすることも非透湿性とすることも可能であるが、本発明の趣旨、皮膚安全性の観点からすれば透湿性とすることが望ましい。またこれら担持体は伸縮性とすることも非伸縮性とすることもできるが、肘、膝等の屈曲部位への使用を考慮すれば伸縮性とすることが望ましい。」(段落【0019】?【0020】参照)
(2-vii)「【0025】 【実施例】
実施例1?8
【0026】 【表1】

【0027】表1に示す組成で、ポリアクリル酸ナトリウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、乳酸、濃グリセリン、D-ソルビトール酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カオリン、精製ゼラチン、精製水を混和し、これに流動パラフィンに溶解したエステルガムを添加、撹拌機にて全質均等となるまで撹拌して得た組成物を厚さ500μmとなるようにポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナーフィルム上に展延塗布し、ポリエステル製の伸縮性織布で被覆して本発明の皮膚外用貼付剤を得る。」(段落【0025】?【0027】参照)
(2-viii)「【0041】試験例4
〈屈曲伸展部位貼付試験〉実施例2,6,8,10,11,12,13,15,17,18,比較例1?6、市販のテープ剤(テープ剤(A)、(B)及び(C))及び市販のパップ剤(パップ剤(A)及び(B))を用いて健常成人の屈曲伸展部位での貼付試験を実施した。
試験方法:7cm×10cmに裁断した検体を健常成人の膝に伸展時に貼付して直ちに強く膝を屈曲した時の状態を観察した。
判定:剥れる ×
一部剥れる △
剥れない ○
その結果を表7に示す。」(段落【0041】参照)

[引用例3]
(3-i)「【請求項1】(a)ポリアクリル酸エステル接着剤100重量部と、
(b)ポリアクリル酸エステルと調和するフィルム形成剤5乃至150重量部、好ましくは10乃至100重量部、特に好ましくは15乃至50重量部と、
(c)0乃至250重量部の非塑性活性-および/または補助剤と、更に、
(d)10乃至250重量部の塑性(weichmachend)活性-および/または補助剤と、を自己接着層が有する事を特徴とする、バック層と少なくとも一つの自己接着層と剥離可能な保護層とを有する、特に皮膚を経由して活性物質の局部的乃至組織的な供給を行うデバイス。
【請求項2】,【請求項3】 ・・・略・・・
【請求項4】自己接着性層に含有される少なくとも1種の補助剤は浸透促進剤である事を特徴とする請求項1ないし3記載のデバイス。
【請求項5】,【請求項6】 ・・・略・・・
【請求項7】活性物質は消炎剤および/または抗リューマチ剤である事を特徴とする請求項1ないし4記載のデバイス。
【請求項8】?【請求項10】 ・・・略・・・
【請求項11】活性物質はインドメタシン(Indomethacin)である事を特徴とする請求項7記載のデバイス。
【請求項12】活性物質はイブプロフェン(Ibuprofen)である事を特徴とする請求項7記載のデバイス。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】、【請求項4】、【請求項7】、【請求項11】、【請求項12】参照)
(3-ii)「【0002】 【従来技術】皮膚乃至皮膚経由治療システムは現在までに医薬投与形式として強固な地位を確立している。これは簡単な場合バック層と、自己接着性活性物質保有マトリックス層と、更に剥離可能な保護層とを有する。このいわゆるマトリックスシステムに関してはマトリックス層を有しその中に活性物質乃至補助物質が自己接着性ポリマー、即ち自己接着性ポリマー混合物と共に存在する。この種のシステムは例えば米国特許3,734,097明細書中に記載されている。」(段落【0002】参照)
(3-iii)「【0016】医薬的な使用に適する多数のポリアクリル酸エステル接着剤は生理的に無害な金属キレート(例えばチタンアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネート)を添加可能ではあるが、これは溶媒の除去後の接着剤の確実な架橋化には心配がある。この補助的な重合は従って高い固形材部分に対して低い粘度の接着剤溶液を使用する場合に使用される。
【0017】この様にして可能な架橋化の程度は付加的な塑性剤なしの接着剤に限定され、この種の金属キレートの含有量の増加によって任意に増加させることは出来ない。活性物質および/または補助物質の作用は非常な制限の下に補償されるのみである。」(段落【0016】?【0017】参照)
(3-iv)「【0024】塑性補助剤としては、例えば浸透促進剤と可溶化剤(Solu- bilisator)が挙げられる。この物質の選択は活性物質の性質によって広範囲に亘るが、浸透促進剤としては例えば脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、プロピレングリコール、オレイン酸、グリセリン誘導体、ジオクチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、またはカプロラクタム誘導体が確認されている。可溶化剤としては、例えばプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、エタノール、酢酸エチル、またはアセト酢酸エステル (Acetessigester)が挙げられる。」(段落【0024】参照)
(3-v)「【0030】バック層のための材料の実例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテトラフタレート、ポリビニルクロライド、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル-コポリマー、またはポリアミドから成るフレキシブルなまたはフレキシブルでないフォイルである。しばしば、上述の材料の積層配置によって漸く所望の特性を得る。
【0031】その他の材料としては例えばアルミニウムフォイルのような金属フォイルまたは紙を、単独またはポリマー材料と成層して使用することができる。繊維製平面状構造物も、リザーバの構成材料がその物理的なデータを基礎にしてガス相が逃出の可能性がない場合は、使用することができる。
【0032】剥離可能の保護フォイルに対しては、原則として繊維製平面状構造部を除いて同様な材料が使用可能ではあるが、付着力付与されなければならない。この付着力付与は特殊なシリコン化によって達成される。」(段落【0030】?【0032】参照)
(3-vi)「【0033】本発明のデバイスによって利用可能の活性物質は、例えばモルシドミン(Mol-sidomin)、ニトログリセリン、イソソルビットモノナイトレートおよびイソソルビットジナイトレートの様な冠状動脈対症薬、プラゾシン(Pra- zosin),およびテラゾシン(Terazosin)の様なα-リセプタブロッカ、例えばベータクソロール(Betaxolol)、ピンドロール(Pindolol)、テイモロール(Timolol)、カルテオロール(Carteolol)およびカラゾロール(Carazolol)のようなβ-ブロッカ、例えばニフェジピン(Nifedipin)およびフェラパミル(Verapamil)の様なカルシウム拮抗剤、エトフェナマート(Eto-fenamat)、インドメタシン(Indometacin)、ピロキシカム(Piroxicam)、アセメタシン(Acemetacin)、ジクロフェナック(Diclofenac)、イブプロフェン(Ibuprofen)、フルルビプロフェン(Flurbiprofen)、ケトプロフェン(Keto-profen)、カルプロフェン(Carprofen)並びに例えばエチレングリコールモノサリシレート、サリチル酸メチルエステル、サリチル酸アミドまたはフェニルサリシレートの様なサリチル酸誘導体のような消炎剤、および非ステロイド坑リュウマチ剤モルフィン、ジヒドロコデイン、ヒドロモルフォン(Hydromorphon)、オキシコドン(Oxycodon)またはレボメタドン(Levomethadon)の様な鎮痛剤、エストラジオール(Estradiol)、レボノルゲストレル(Levonorgestrel)、ノルエテイステロンアセタート(Nor-ethisteronacetat)、テストステロン(Teststeron)および19-ノルテステロン(19-Nortesteron)の様なホルモンである。更に本発明によりまた治療に適した活性物質の組み合わせを使用することもできる。」(段落【0033】参照)
(3-vii)「【0041】5.高含有量の流動性浸透促進剤乃至塑性付加物を有するプラスター形成法
以下の一般的形成法は、プラスター形成が必要なときに使用可能であるが、これによれば高い濃度の塑性活性物質および/または塑性浸透促進剤が必要とされる。
100gのポリアクリル酸エステル接着剤溶液(デユロタック2280-2287、ナショナルスターチ社、酢酸エチル中に50%)
Xgのフィルム形成ポリアクリル酸エステル溶液(例、プラストイドBレームファルマ社、酢酸エチル中50%)
10gのアルミニウムアセチルアセトネート溶液(酢酸エチル中4%)Ygの塑性浸透促進剤、乃至補助剤
を混合の上ホモゲナイズする。この液状の物質をシリコナイズしたフォイル上に250μmの厚みに塗布し、50℃で20分乾燥し、適当なフォイルでカバーする。
【0042】5.a-5.eを例として示すがこれらは5.の下で記載した処方によって作ったものである。活性物質は記載してないが、対応する方法で全ての形状化が可能である。
可塑剤 浸透促進剤 溶媒除去後のマトリックス内容量
5a n-ドデカノール 20%
X=29.7,Y=16
5b オレイン酸 20%
X=32,Y=16
5c プロピレングリコール 20%
X=32,Y=16
・・・(後略)。」(段落【0041】?【0042】参照)

4.対比、判断
引用例1には、上記「3.」の[引用例1]の摘示からみて、特に、(1-i)の請求項1の記載、並びに、
(イ)製剤が、貼付剤として用いられること(摘示(1-ii),(1-viii),(1-ix),(1-x)参照)、
(ロ)架橋処理に用いる剤として、チタンまたはアルミニウムからなる有機金属塩や金属アルコラートや金属キレート化合物が好適であることが記載され、実施例でアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)が用いられていること(摘示(1-vi),(1-ix)参照)、
(ハ)架橋ゲル層が、適度な皮膚接着力と凝集力を備え、さらに薬物を含有し、該薬物として実施例2においてケトプロフェンを用いていること(摘示(1-i),(1-iv),(1-vii),(1-ix)参照)、
(ニ)実施例において、ポリエステル製セパレータ上に架橋ゲル層を塗布し、乾燥、形成していること(摘示(1-ix)参照)に鑑み、
次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。
「アクリル酸エステル系ポリマーおよび該ポリマーと相溶する液体成分とを含み、該ポリマーがアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等で架橋した架橋ゲル層が、支持体の少なくとも片面に形成されてなり、該架橋ゲル層がポリエステル製セパレータ上に形成されてなり、該架橋ゲル層は適度な皮膚接着力と凝集力を備え、該架橋ゲル層にケトプロフェンなどの薬物を含有する貼付剤。」(引用例1発明)

そこで、本願発明と引用例1発明とを対比する。
(a)引用例1発明の「ケトプロフェンなどの薬物を含有する貼付剤」は、
(a-1)該ケトプロフェンが、本願発明でいう「遊離カルボキシル基を有する非ステロイド系リューマチ治療薬」として例示されると共に実施例で使用されているケトプロフェンそのものであって、本願発明でいうところの作用物質であることは明らかであり、また、(a-2)「貼付剤」と「局所パッチ」とは表現が異なるだけで同一の剤を指すものと認められることから、
本願発明の「遊離カルボキシル基を有する非ステロイド系リューマチ治療薬を作用物質として有する局所用パッチ」に相当する。
(b)引用例1発明の「アクリル酸エステル系ポリマーおよび該ポリマーと相溶する液体成分とを含み、該ポリマーがアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等で架橋した架橋ゲル層」は、
(b-1)該「アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)」が本願発明で架橋剤として用いられる多価金属イオンとして例示され、実施例で用いられているアルミニウムアセチルアセトネートそのものであり、また、
(b-2)該「アクリル酸エステル系ポリマー」としては、架橋処理のしやすさの点からカルボキシ基含有モノマーを共重合成分とし、その具体例として実施例でアクリル酸モノマーが使用されていること(摘示(1-iv),(1-ix)参照)に鑑みると、
本願発明の「多価金属イオンと架橋し遊離カルボキシル基を含むポリアクリル酸エステル」に相当する。
(c)引用例1発明の「該架橋ゲル層は適度な皮膚接着力と凝集力を備え」は、該「適度な皮膚接着力と凝集力を備え」ることが自己接着性の接着剤を意味するものといえるから、本願発明の「接着剤」、「自己接着性の」に相当する。
(d)上記(a)?(c)の対比、並びに、「架橋ゲル層にケトプロフェンなどの薬物を含有する」ことが、架橋ゲル層を形成するアクリル酸エステル系ポリマーからなる接着剤に薬物を含有することに外ならないことに鑑みると、引用例1発明の「アクリル酸エステル系ポリマー」「接着剤」は、本願発明でいう「基質」、「基質層」ということができる。
(e)引用例1発明の「架橋ゲル層が、支持体の少なくとも片面に形成されてなり、該架橋ゲル層がポリエステル製セパレータ上に形成されてなり」は、
(e-1)該「支持体」が、本願発明の「裏打層」に相当することも明らかであり、
(e-2)該「ポリエステル製セパレータ」が、使用時などにおいて剥離層として形成されたものであって、使用前に除去される保護層としての目的であること、フィルム状であることは明らかであるから、
本願発明の「裏打層と」、「使用前に除去される保護フィルムとを含み」に相当する。

してみると、両発明は、本願発明の表現を借りて表すと、
「遊離カルボキシル基を有する非ステロイド系リューマチ治療薬であるケトプロフェンを作用物質として有する局所用パッチであり、
裏打層と、
多価金属イオン(例えば、アルミニウムアセチルアセトネート)と架橋し遊離カルボキシル基を含むポリアクリル酸エステル接着剤を基質とし、自己接着性の作用物質含有基質層と、
使用前に除去される保護フィルムとを含む、
局所用パッチ。」
で一致し、次の点で一応相違している。
<相違点>
A.裏打層について、本願発明では、「作用物質に対して不活性であり、少なくとも一方向に弾性である材料でできた」とされ,選択肢の一つとして「二方向に弾性であるポリエステル織布」と特定されているのに対し、引用例1発明ではそのように特定されていない点
B.作用物質含有基質層について、本願発明では、「基質中に脂肪酸を含有している」と特定されているのに対し、引用例1発明ではそのように特定されていない点
C.作用物質含有基質について、本願発明では、「1層で構成され、水酸基を含まず」と特定されているのに対し、引用例1発明ではそのように特定されていない点

そこで、これらの相違点について検討する。
(1)相違点Aについて
裏打層、即ち支持体については、例えば、ケトプロフェンなどの非ステロイド性消炎鎮痛剤を有する皮膚外用貼付剤を開示する引用例2に、「担持体は伸縮性とすることも非伸縮性とすることもできるが、肘、膝等の屈曲部位への使用を考慮すれば伸縮性とすることが望ましい」(摘示(2-vi)参照)とされ、その実施例で「ポリエステル製の伸縮性織布」を用い(摘示(2-vii)参照)、健常成人の屈曲伸展部位(膝)での剥がれの状態を観察した貼付試験が行われている(摘示(2-viii)参照)ように、肘、膝等の屈曲部位への使用を考慮して伸縮性とすることが行われているのであるから、そのような用途に用いる場合には、ポリエステル製の伸縮性織布のようなものを用いる程度の事は当業者が容易に想い到る程度のことという他ない。
引用例2には伸縮性について「二方向に弾性である」ことは明示されていないが、膝などの屈曲部位に用いるのであれば、貼付剤が、膝を折る方向だけではなく、さらに例えば直交する方向にも伸縮が生じることは日頃の経験から明らかであるから、伸縮性として二方向に弾性であるものを用いることは自明といえ、少なくとも当業者が容易に思い到る程度のことというべきである。そもそも伸縮性の織布であれば二方向に弾性のものと認められるし、そのように認められることは、本願発明でも「二方向性に弾性である」ものとして格別の構造などを特定することなく単に織布としていることからも明らかといえる。
ところで、裏打層、即ち支持体として作用物質に対し不活性のものを用いることは当然のことであるし、支持体としてポリエステル織布を用いることも知られている。
したがって、引用例1発明では、「支持体は、特に限定されない」とされているのであり、自明な使用箇所といえる肘、膝などの伸縮性を考慮すべき箇所に適用する場合を念頭におけば、引用例1発明において、引用例2の上記記載を勘案し、相違点Aにかかる本願発明の発明特定事項である、裏打層として、「作用物質に対して不活性であり、少なくとも一方向に弾性である材料でできた」、「二方向に弾性であるポリエステル織布」を採用することに格別の創意工夫が必要であったとは認められない。

(2)相違点Bについて
引用例1発明で用いられている「液体成分」としては、「可塑化作用を有するものであればよいが、併存させる薬物の経皮吸収性を向上させるために吸収促進作用も有するものを用いることが好ましい。」(摘示(1-v)参照)とされているところ、実施例で用いられているミリスチン酸イソプロピルの他に「オレイン酸」などが列挙されている(摘示(1-v)参照)。そもそも、オレイン酸は、可塑剤、透過促進剤として知られているものにすぎない(例えば、アルミニウムアセチルアセトネートなどにより架橋されたポリアクリル酸エステル系接着剤を用い、ケトプロフェンなどを有する貼付剤を開示する引用例3の摘示(3-iv)、(3-vii)にも明らかにされている。)。
他方、本願発明で用いられる「脂肪酸」は、「可塑剤および透過促進剤として」、「脂肪酸が存在することにより・・・皮膚により一層透過し易くなる」(本願明細書段落【0027】、【0030】)とされているのであり、実施例でオレイン酸が用いられている(同段落【0039】)から、引用例1発明で用いられている「液体成分」とはその使用目的が一致している。
ところで、請求人は、「脂肪酸をさらに含むことにより(・・・)、カルボキシル基含有作用物質を有する架橋ポリアクリル酸エステル基質において、特に利点があることを見出しました。・・・脂肪酸は、酸性作用物質とも相互作用しうるポリマーにおけるこれらのサイト(すなわち、作用物質のカルボキシル基)をブロックする効果を有するであろうことを予測していました。」と主張するが、それを裏付けるデータは何も示されていないから、主張の根拠を欠き、勘案すべきものではない。
よって、引用例1発明において、液体成分として、オレイン酸、即ち脂肪酸を採用することに格別の困難性があるということができず、相違点Bに係る本願発明の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得たものである。

(3)相違点Cについて
引用例1発明の実施例である実施例2では、接着剤成分(即ち、作用物質含有基質)としてアクリル酸エステル系ポリマー、ミリスチン酸イソプロピル、アルミニウム(トリス)アセチルアセトネート、及び、溶媒として酢酸エチル、アセチルアセトンが用いられているところ、アクリル酸エステル系ポリマー(接着剤)として実施例1において調製したアクリル酸エステル系ポリマーを用いているが、アクリル酸2-エチルヘキシルとアクリル酸を共重合させているだけであるから、ケトプロフェン含有接着剤、即ち作用物質含有基質に水酸基は含有されていないし、また、他の成分をみても水酸基を含有していないことは明らかである。
また、同実施例2では、実施例1と同様に、単に「セパレータ上に乾燥後の厚みが80μmとなるように塗布し、乾燥して架橋ゲルを形成した。このようにして得られた架橋ゲル層に支持体として・・・を貼り合わせて・・」とされているのであるから、ケトプロフェン含有接着剤、即ち作用物質含有基質は、一層で形成されていることも明らかである。
ところで、本願明細書を検討しても、「作用物質含有基質が1層で構成され、水酸基を含まず」との発明特定事項については、発明の詳細な説明並びに図面において何ら具体的な説明がなされておらず、その技術的意義は不明である。
なお、請求人は、引用例1については、液体成分として、水酸基含有化合物であるグリコールから選択しても良いことが教示されていることを主張するが、上記実施例2では、ミリスチン酸イソプロピルが用いられており、水酸基を含有しないと認められる態様で実施されていることから、水酸基を含有しない点は実質的な差異ではない。
よって、相違点Cは、実質的な相違点であるとはいえない。

以上のとおりであり、上記相違点A?Cに係る本願発明の発明特定事項を併せ採用することも当業者が容易に為し得たことであり、それによって格別予想外の作用効果を奏しているとも認められない。

ところで、請求人は、本願発明は優れた作用効果を奏する旨を主張する。しかし、データとして示された図1,2について言えば、図1では単に透過量が示されているだけで、どのような貼付剤を用いたものか全く不明であり、比較データも示されていないことから、評価をすることはできないし、また、図2では、織物で裏打ちしたパッチに比べて、フォームに裏打ちしたパッチが優れていることを示しているだけであって、上記選択した本願発明の発明特定事項である「二方向に弾性であるポリエステル織布」について優れていることを示すものではない。他に縷々主張する作用効果も何等の裏付けもなく、その程度は不明であり、予想を超えるものであると解すべき理由もない。
例えば、請求人は、「遊離カルボキシル基を有する作用物質(例えば、「プロフェン」群からの作用物質)と架橋されたポリアクリル酸エステル接着剤との組合せが、・・・物理的性質(特に「低温流れ」の問題を防ぐ;・・・)の基質を生じることは、驚くべきことです。」と主張するが、上記検討のとおり、引用例1発明の実施例である実施例2において、ケトプロフェンと架橋されたポリアクリル酸エステル接着剤との組合せがなされており、得られる作用効果に差異が生じるはずもないし、主張する作用効果を明らかにする対比データもなく、仮にそのような作用があっとてしも、単に確認したにすぎないものと言う外ないから、該請求人の主張も、根拠を欠き失当であって、採用できるものではない。
また、請求人は、引用例1発明は、液体成分を多量に含むゲル製剤であるのに対し、本願発明はゲル組成物を意味しませんと主張するが、ゲル組成物が除外されることは本願発明において特定されていないし、本願明細書に記載された実施例ですらゲル組成物でないことは明らかにされていない(本願実施例のオレイン酸の量は、引用例1発明で好ましいとされている量にわずかに届かないかも知れないが、本願発明も引用例1発明もオレイン酸または液体成分の量を限定するものではない)ことから、該請求人の主張は、根拠を欠き失当であって、採用できるものではない。

したがって、本願発明は、周知技術や引用例2,3の記載を勘案し引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-14 
結審通知日 2011-11-15 
審決日 2011-12-20 
出願番号 特願2000-558799(P2000-558799)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 清子  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 田名部 拓也
渕野 留香
発明の名称 酸基を持つ非ステロイド系リューマチ治療薬を有する局所用プラスター  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ