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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1256766 |
審判番号 | 不服2010-10247 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-05-13 |
確定日 | 2012-05-07 |
事件の表示 | 特願2002-592168「半導体テストのための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月28日国際公開、WO02/95802、平成17年 3月17日国内公表、特表2005-507557〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2002年5月24日(外国庁受理、パリ条約による優先権主張2001年5月24日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成15年11月25日付けで特許法第184条の5第1項に規定する書面が提出されるとともに同法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、図面、及び要約の翻訳文が提出され、平成17年11月16日付けで手続補正書が提出され、平成20年9月9日付けで拒絶理由が通知され、平成21年3月12日付けで意見書が提出され、平成22年1月7日付けで拒絶査定がなされ、同年5月13日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後、当審において平成23年6月17日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし20に係る発明は、平成17年11月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1ないし20に係る発明は次のとおりである(なお、請求項1、2、8、9、及び16以外の請求項の記載は省略する。)。 「【請求項1】 コンポーネントをテストし、テストデータを生成するように構成されたテスト部と 該テスト部に接続されたコンピュータであって、該テストデータを受け取り、該テストデータ内のアウトライヤーを識別し、該識別されたアウトライヤーを含む出力報告を生成するように構成されたコンピュータと を備えたテストシステム。 【請求項2】 前記コンピュータは、レシピファイルの構成データのセットと関連して動作するように構成されている、請求項1に記載のテストシステム。 ・・・(略)・・・ 【請求項8】 コンピュータシステムを備えた半導体テストデータのためのデータ解析システムであって、 該コンピュータシステムは、 該半導体テストデータ内のアウトライヤーを識別するように構成された補助データ解析エレメントと、 該識別されたアウトライヤーを含む出力報告を生成するように構成された出力エレメントと を動作させるように構成されている、データ解析システム。 【請求項9】 前記補助データ解析エレメントは、レシピファイル内の構成データのセットに関連して動作するように構成されている、請求項8に記載のデータ解析システム。 ・・・(略)・・・ 【請求項16】 前記コンピュータシステムを用いて、レシピファイルから構成データを読み出すことをさらに包含し、 前記アウトライヤーを識別することは、該レシピファイル内の該構成データに従って該アウトライヤーを識別することを包含する、請求項15に記載の方法。 ・・・(略)・・・ 」 第3 特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、及び第6項第2号について 1 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由は、以下のとおりである。 「この出願は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 a.請求項1、8、及び15の記載では、請求項1ないし20に係る発明における「アウトライヤー」の意味が明確でない。 即ち、「アウトライヤー」の定義は、意見書で「一般に、「アウトライヤー」(outlier)とは、一定の制限によって定義され、予想される結果から逸脱したテスト結果です。」と、審判請求書で「アウトライヤーは、「事象がおこるサンプルの他の要素から顕著に逸脱していると思われる」観測値です。」、「「統計学においては、アウトライヤーは、データの残りの部分と数値的に異なる観測値」です。」、及び「本願明細書の段落0026において、「アウトライヤー」は「第1のセットから逸脱するが、コントロール限界を超えないか、他の場合には、検出されないテスト結果」として説明されています。」と述べられているように、複数あり、本願明細書に記載されたようなものに限られないにもかかわらず、請求項1、8、及び15において、どのようなものかが明確にされていない。 したがって、請求項1ないし20に係る発明は明確でない。 b.・・・(略)・・・ c.・・・(略)・・・ d.「レシピファイル」に関して、発明の詳細な説明の【0023】に「レシピファイルに記憶される。」及び【0089】に「補足的データ解析は、レシピコンフィギュレーションファイル(recipe configuration file)内の感度パラメータによって定義されたように、臨界の、限界の、および優良な部分の分類をさらに提供し得る。」と記載されているが、それらの記載と、請求項2記載の「レシピファイルの構成データのセット」、請求項9記載の「レシピファイル内の構成データのセット」、並びに請求項16記載の「レシピファイル」及び「レシピファイル内の該構成データ」との関係が明確でない。 したがって、請求項2、9、及び16に係る発明は明確でなく、また、請求項2、9、及び16に係る発明は発明の詳細な説明に記載されているともいえないし、さらに、発明の詳細な説明に、請求項2、9、及び16に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているともいえない。 e.発明の詳細な説明の【0026】の「第1のセットから逸脱するが、コントロール限界を超えないか、他の場合には検出されない上記のテスト結果は、「アウトライヤー」と呼ばれる。」とはどのような意味か明確でない(検出されないのであれば、「アウトライヤー」にもなりえないのではないか。)。 したがって、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 f.・・・(略)・・・ g.図9に関して、発明の詳細な説明の【0025】に「図9を参照すると、複数のコンポーネントに関する単一のテストについてのテスト結果の例示的なセットは・・・(中略)・・・分類され得る。」と記載されているが、図9における「△=1アウトライヤーの放棄」と「●=リミット故障/アウトライヤ-のテスト」が何を意味するのか記載されていない。 したがって、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 h.発明の詳細な説明の【0020】ないし【0090】の記載及び図2ないし10は、種々の事項を選択的に且つ抽象的に記載するに留まり、個々の機能的ブロック又はステップで具体的にどのようなことが行われているのか(個々の機能的ブロック又はステップの1つ1つによって、データがどう処理されているのか)を説明しておらず、結局のところ、「アウトライヤー」が具体的にどのように識別されるのかが明確でない。 即ち、 h-1.発明の詳細な説明の【0042】ないし【0059】、図4AないしC、及び図8において、「スムージング」が具体的にどのように行われるのか、 h-2.発明の詳細な説明の【0060】ないし【0061】、並びに図6A及びBにおいて、「シグネチャー解析」が具体的にどのように行われるのか、 h-3.発明の詳細な説明の【0066】において、「アウトライヤーに対する感度を自動的に較正する」が具体的にどのように行われるのか、 h-4.発明の詳細な説明の【0069】ないし【0076】において、「スケーリング」が具体的にどのように行われるのか(【数1】ないし【数5】をどのように使用するのか)、 h-5.発明の詳細な説明の【0077】ないし【0085】において、「アウトライヤー分類」が具体的にどのように行われるのか(【数6】ないし【数10】をどのように使用するのか)、 h-6.発明の詳細な説明の【0086】ないし【0090】において、具体的に何がなされているのか、等が明確でない。 したがって、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 i.図12A及びBに関して、発明の詳細な説明の【0093】に「図12A?図12Bを参照して、コンポーネントごとの生テストデータがプロットされ得る。」と記載されているが、図12A及びBが何を意味するのか記載されていない。即ち、図12Aと図12Bの関係や「△」が何を意味するのか説明されていない。 また、図12A及びBに示されたデータが、発明の詳細な説明の【0020】ないし【0090】及び図2ないし10に記載された個々の機能的ブロック又はステップによって、どのような途中過程を経て、最終的に「アウトライヤー」が識別されるのかも記載されていない。 したがって、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 j.発明の詳細な説明の【0003】ないし【0006】に「発明の背景」として従来技術の問題点が記載されており、【0007】以降に「発明の要旨」が記載されていることから、請求項1ないし20に係る発明は、発明の詳細な説明の【0003】ないし【0006】に記載された従来技術の問題点を解決するものと解されるが、請求項1ないし20に係る発明の如何なる作用により、発明の詳細な説明の【0003】ないし【0006】に記載された従来技術の問題点が解決されるのか、発明の詳細な説明の他の記載をみても明確でない。 したがって、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。」 2 平成23年9月20日付け意見書及び手続補正書の概要 (1)平成23年9月20日付け意見書の概要 平成23年9月20日付け意見書(以下、単に「意見書」という。)の概要は以下のとおりである。 「1.本願の特許請求の範囲は、平成17年11月16日付けで提出した手続補正書に示されるとおりです。 2.特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、及び第6項第2号の規定に基づく拒絶理由について a.拒絶理由通知書では、請求項1、8、及び15の記載では、請求項1ないし20に係る発明における「アウトライヤー」の意味が明確でないという見解が示されています。 出願人は、意見書および審判請求書で述べた「アウトライヤー」の定義は、全く同一ではないものの非常に類似したものであると思料しています。「アウトライヤー」という用語は周知であり、それ故、明確であると理解されます。さらに、平成22年5月13日付けで提出した<参考資料1>?<参考資料3>に示されるように、「アウトライヤー」の定義は明確であり、本願明細書における用語の使用と整合しています。<参考資料1>?<参考資料3>に開示されているように、アウトライヤーは、「事象がおこるサンプルの他の要素から顕著に逸脱していると思われる」観測値です。別の態様では、「統計学においては、アウトライヤーは、データの残り部分と数値的に異なる観測値」です。さらに、本願明細書の段落0026において、「アウトライヤー」は「第1のセットから逸脱するが、コントロール限界を超えないか、他の場合には、検出されないテスト結果」として説明されています。 出願人は、本願明細書に記載されている「アウトライヤー」という用語は、よく定義されており、本発明の分野で理解されると思料しています。このように、「アウトライヤー」という用語は既知の用語であることから、出願人は、理由a.が解消されるものと思料しています。 b.・・・(略)・・・ c.・・・(略)・・・ d.出願人は、請求項2、9、16に規定されている「レシピファイルの構成データのセット」は、発明の詳細な説明に十分に記載されていると思料しています。例えば、発明の詳細な説明の段落0023には、「構成エレメント202は、次に、マスター構成ファイルおよび/またはツール構成ファイルに含まれるデータに従って、テストシステム100を構成し得る・・・」と記載されています。また、発明の詳細な説明の段落0023には、「・・・構成エレメント202は、構成データを用いて、データベース114からテスタ102の識別子のようなさらなる関連性のある情報を取り出す・・・」と記載されています。また、発明の詳細な説明の段落0023には、「・・・構成アルゴリズム、パラメータおよび任意の他の判定条件は、容易なアクセス、特定の製品および/またはテストへの相関およびトレーサビリティのために、レシピファイルに記憶され得る。」と記載されています。 出願人は、請求項2、9、16に係る発明は、明確であり、かつ、発明の詳細な説明に記載されているというべきであり、かつ、発明の詳細な説明に、請求項2、9、16に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていると思料しています。従って、出願人は、理由d.が解消されるものと思料しています。 e.発明の詳細な説明の段落0026には、「第1のセットから逸脱するが、コントロール限界を超えないか、他の場合には、検出されない上記のテスト結果は、「アウトライヤー」と呼ばれる。」と記載されています。この記載は、テスト結果がコントロール限界から逸脱し、かつ、依然としてアウトライヤーである場合を記載しています。それらはコントロール限界と比較される場合には検出されないものの、それらは依然としてアウトライヤーです。 出願人は、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていると思料しています。従って、出願人は、理由e.が解消されるものと思料しています。 f.・・・(略)・・・ g.図9において、三角形(△)は、アウトライヤーである、コンポーネントに対するテスト結果を示します。図9において、黒丸(●)は、テスト上限およびテスト下限を超えたテスト結果(すなわち、テスト限界故障)を示します。これらの事項を明確にするために、図9を補正しました。この補正は、少なくとも、発明の詳細な説明の段落0025の記載に基づいています。出願人は、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていると思料しています。従って、出願人は、理由g.が解消されるものと思料しています。 h.以下、「アウトライヤー」が具体的にどのように識別されるのかを説明いたします。 h-1.一般に、スムージングでは、すぐ近くに隣接している点よりも高い個々の点が減少され、隣接している点よりも低い点が増加されるように、信号のデータ点が修正されます。このことは、よりスムーズな信号に自然に導きます。真の信号が実際にスムーズである限り、真の信号がスムージングによって大幅に歪むことはありませんが、ノイズは減少されます。例えば、http://terpconnect.umd.edu/?toh/spectrum/Smoothing.html 発明の詳細な説明の段落0042に記載されているように、「スムージング」は、データを滑らかにし、かつ、アウトライヤーの識別を補助するために、テストデータを処理することです(ステップ429)。スムージングシステムは、データ、トレンドなどにおける重要な変化を識別することが可能です。この「スムージングシステム」の詳細は、発明の詳細な説明の段落0042?0059、図4のステップ429、図8のステップ802?820に記載されています。出願人は、当業者であれば、発明の詳細な説明の上述した部分およびそれに関連する図面を読むことによって「スムージング」を理解することができると思料しています。従って、出願人は、理由h-1.が解消されるものと思料しています。 h-2.一般に、発明の詳細な説明の段落0060に記載されているように、「シグネチャー解析」は、例えば、セクションにしたがって、そのセクションに対するテスト結果の組み合わせおよび/または他のデータ(履歴データ等)に基づいて、データ中の傾向および異常を動的かつ自動的に識別するように実行されます。シグナチャー解析は、テストデータ等の任意の適切なデータまたは欠陥の識別に基づいて、シグネチャーを識別したり、オペレータによって適切に構成された重み付けシステムを適用することが可能です。シグネチャー解析は、問題エリアまたはウエハの他の特徴または製造プロセスに対応し得る傾向および異常を累積的に識別することが可能です。シグネチャー解析は、ノイズピーク、波面変動、モードシフト、ノイズ等の任意の所望のシグネチャーに対して行われることが可能です。本発明の実施形態では、コンピュータ108が、各所望のセクションにおける各所望のテストごとに出力テストデータに関するシグネチャー解析を適切に行います。 シグネチャー解析の概要は、発明の詳細な説明の段落0060、0061に記載されています。シグネチャー解析のプロセスの詳細は、発明の詳細な説明の段落0062、図6A、図6Bに記載されています。出願人は、当業者であれば、発明の詳細な説明の上述した部分およびそれに関連する図面を読むことによって「シグネチャー解析」を理解することができると思料しています。従って、出願人は、理由h-2.が解消されるものと思料しています。 h-3.発明の詳細な説明の段落0066には、「・・・本発明の種々の局面によるアウトライヤー分類エレメントは、最初に、各関連基準ごとの選択された統計的関係に基づいてアウトライヤーに対する感度を自動的に較正する(ステップ434)・・・」と記載されています。この記載は、アウトライヤー分類エレメントが、任意の数の方法に従って、アウトライヤーに対する感度を調整することが可能であることを意味しています。方法のいくつかは、相対的なアウトライヤー閾値制限を規定するために、データモード、平均値、または中央値またはこれらの組み合わせ等を含んでいます(これらに限定されるわけではありませんが)。発明の詳細な説明の段落0066は、このことを当業者によって理解されるように記載しています。従って、出願人は、理由h-3.が解消されるものと思料しています。 h-4.発明の詳細な説明の段落0068、0069は、「スケーリング」を十分に記載しています。発明の詳細な説明の段落0068に記載されているように、スケーリングエレメント210は、出力テストデータに応じて、選択された係数および他の値を動的にスケーリングするように構成されています。さらに、発明の詳細な説明の段落0069には、「スケーリングエレメントは、アウトライヤー感度(sensitivity)を動的にスケーリングするため、およびノイズフィルタリング感度に対する係数をスムージングするために統計学的な関係を使用する。」と記載されています。 出願人は、当業者であれば、発明の詳細な説明の上述した部分およびそれに関連する図面を読むことによって「スケーリング」を理解することができると思料しています。「スケーリング」は、当該分野では周知の用語です。従って、出願人は、理由h-4.が解消されるものと思料しています。 h-5.一般に、アウトライヤー分類エレメントは、アルゴリズムを利用して、コンポーネント、出力テストデータ、解析データを識別および/または分類します。発明の詳細な説明の段落0068、0077?0085は、「アウトライヤー分類」という用語を記載しています。具体的には、発明の詳細な説明の段落0077に記載されているように、アウトライヤー分類エレメントは、コンポーネント106、出力テストデータ、解析結果を識別および/または分類するように適切に構成されています。アウトライヤー分類エレメントは、出力テスト結果および補足の解析エレメント206によって生成される情報に応じて、コンポーネント106および選択されたアウトライヤーを識別および分類することが可能です。例えば、アウトライヤー分類エレメントは、臨界の/最低限の/良い部分のカテゴリにコンポーネント106を分類するために適切に構成されています。そのカテゴリは、例えば、ユーザ定義された判定基準;ユーザ定義された良い/悪い空間的なパターン認識;テスタデータ圧縮に対する適正なデータの分類;その場の感度能力 (qualifications)および解析;テスタ収率(yield)標準化(leveling)解析;動的ウエハマップおよび/または部分性質に対するテストストリップマッピングおよび動的再テスト;または、テストプログラム最適化解析です。アウトライヤー分類エレメントは、データを特徴付けるために、ウエスタンエレクトリックルール(WesternElectric rule)、または、ネルソンルール(Nelson rule)などの従来のSPC制御ルールにしたがってデータを分類することが可能です。このように、アウトライヤー分類エレメントは、アルゴリズムを利用して、コンポーネント、出力テストデータ、解析データを識別および/または分類します。 出願人は、当業者であれば、発明の詳細な説明の上述した部分およびそれに関連する図面を読むことによって「アウトライヤー分類」を理解することができると思料しています。従って、出願人は、理由h-5.が解消されるものと思料しています。 h-6.発明の詳細な説明の段落0085?0090は、ソフトウエアにおける後処理モジュールを記載しています。ここで、後処理モジュールでは、補足的データ解析エレメントによって、追加の解析が行われることが可能です。追加の解析のタイプのいくつかは、「例えば、障害、アウトライヤー、または、特定の分類におけるアウトライヤーの全てまたは平均値と一つ以上の閾値とを比較することによって、障害またはアウトライヤーの高い発生率を有するテスト」を識別することを含むことが可能です。補足データ解析エレメントはまた、例えば、累積カウント、アウトライヤー、および/またはウエハまたは他のデータセットの間の相関アウトライヤーを比較することによって、同様のまたは同様でないトレンドを分類するために異なるテストからデータを相関することが可能です。言い換えると、発明の詳細な説明の段落0085?0090は、基本的には、補足的データ解析エレメントがテスト結果およびデータをさらに解析することが可能な追加の態様を記載しています。 出願人は、当業者であれば、発明の詳細な説明の上述した部分およびそれに関連する図面を読むことによって具体的に何がなされているのかを理解することができると思料しています。従って、出願人は、理由h-6.が解消されるものと思料しています。 i.発明の詳細な説明の段落0011には、「テスタ102は、コンポーネント106をテストし、かつ、テストに関連する出力データを生成する任意のテスト装置を適切に含む。」と記載されています。図12Aおよび図12Bは、各コンポーネントに対するテスタからの出力データをプロットして示したものです。具体的には、図12Aは、生のテストデータを示し、図12Bは、滑らかにされた(すなわち、スムージング処理を施された)テストデータを示しています。このことは、少なくとも、図12Aおよび図12Bについての図面の簡単な説明の記載に基づいています。三角形(△)の記号は、アウトライヤーを示しています。 図12Aは、コンポーネントに対するテストからの生のデータをプロットしたものです。ここで、「生のデータ」とは、コンポーネントをテストした結果として受け取られるデータをいいます。発明の詳細な説明の段落0011には、「テスタ102は、コンポーネント106をテストし、かつ、テストに関連する出力データを生成する任意のテスト装置を適切に含む。」と記載されています。また、発明の詳細な説明の段落0024には、「テスタ102は、コンポーネント106上の接続部に信号を付与し、かつ出力テストデータを、コンポーネント106から読み出すためのテストプログラムを適切に実行する。」と記載されています。 図12Bは、滑らかにされた(すなわち、スムージング処理を施された)後のテストデータをプロットしたものです。「スムージング」についての詳細な説明は、上記h-1.をご参照下さい。 出願人は、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていると思料しています。従って、出願人は、理由i.が解消されるものと思料しています。 j.発明の詳細な説明の段落0003?0006に記載されている課題は、すべてのデータを格納しておく必要がないことによって対処することができます。アウトライヤーの検出を通して有用なデータを得ることができるからです。アウトライヤーを検出することおよびそれに続く解析は、テストプロセスをより効率的にするために必要とされないテストをなくすことを可能にします。すべてのデータが、フロントエンド上で識別されるアウトライヤーとして処理される必要はありません。有用でないデータは捨てることが可能です。しかしながら、すべてのデータに基づいてアウトライヤーを識別することによって、アウトライヤー判定がサンプリングに基づいていません。加えて、補足的データ分析は、テストプロセスがより効率的になるように、所望されない不必要なテストをなくすことを可能にします。 出願人は、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていると思料しています。従って、出願人は、理由j.が解消されるものと思料しています。 以上の理由から、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、及び第6項第2号の規定に基づく拒絶理由は解消されるべきです。・・・(略)・・・」 (2)平成23年9月20日付け手続補正書の概要 平成23年9月20日付け手続補正書による補正は、図9を以下の図面に変更するものであって、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、及び図面の簡単な説明については補正していない。 3 判断 上記「1」において、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、及び第6項第2号に規定する要件を満たしていないとして指摘したa及びdないしj(以下、「指摘事項a」及び「指摘事項d」ないし「指摘事項j」という。また、hの内訳であるh-1ないしh-6については、「指摘事項h-1」ないし「指摘事項h-6」という。)について、以下に検討する。 (1)指摘事項aについて 当審拒絶理由は、請求項1、8、及び15に記載された「アウトライヤー」が明確でない旨指摘した。 ア 「アウトライヤー」について、請求項1、8、及び15の記載からは、明確でなく、発明の詳細な説明をみても、その定義が明らかでない。このことは、平成21年3月12日付けの意見書及び審判請求書によっても説明する定義が同等でないから、「アウトライヤー」が明確であるとする理由がない。 即ち、請求項1、8、及び15に記載された「アウトライヤー」について、発明の詳細な説明の【0026】、平成21年3月12日付けの意見書、及び審判請求書に次の記載がある。 ・発明の詳細な説明の【0026】:「第1のセットから逸脱する第2のセットにおけるテスト結果は、コントロール限界を超え得るものもあるが、超え得ないものもある。しかし、本目的のために、第1のセットから逸脱するが、コントロール限界を超えないか、他の場合には、検出されない上記のテスト結果は、「アウトライヤー」と呼ばれる。テスト結果のアウトライヤーは、任意の適切な目的のために、不確かなコンポーネントを潜在的に分類するように、分類され得、解析され得る。アウトライヤーはまた、テストおよび製造プロセスの様々な潜在的な問題および/または改良を分類するように用いられ得る。」 ・平成21年3月12日付けの意見書:「一般に、「アウトライヤー」(outlier)とは、一定の制限によって、定義され、予想される結果から逸脱したテスト結果です。」 ・審判請求書:「<参考資料1>?<参考資料3>に示されるように、アウトライヤーは、「事象がおこるサンプルの他の要素から顕著に逸脱していると思われる」観測値です。別の態様では、「統計学においては、アウトライヤーは、データの残りの部分と数値的に異なる観測値」です。さらに、本願明細書の段落0026において、「アウトライヤー」は「第1のセットから逸脱するが、コントロール限界を超えないか、他の場合には、検出されないテスト結果」として説明されています。」 しかし、上記の発明の詳細な説明、上記の意見書、及び審判請求書のそれぞれで、「アウトライヤー」の定義は同等のものでない。よって、請求項1、8、及び15において、「アウトライヤー」がどのようなものか明確であるとはいえない。 イ この点に関して、請求人は、意見書において、次のとおり主張する。 「意見書および審判請求書で述べた「アウトライヤー」の定義は、全く同一ではないものの非常に類似したものであると思料しています。「アウトライヤー」という用語は周知であり、それ故、明確であると理解されます。さらに、平成22年5月13日付けで提出した<参考資料1>?<参考資料3>に示されるように、「アウトライヤー」の定義は明確であり、本願明細書における用語の使用と整合しています。<参考資料1>?<参考資料3>に開示されているように、アウトライヤーは、「事象がおこるサンプルの他の要素から顕著に逸脱していると思われる」観測値です。別の態様では、「統計学においては、アウトライヤーは、データの残り部分と数値的に異なる観測値」です。さらに、本願明細書の段落0026において、「アウトライヤー」は「第1のセットから逸脱するが、コントロール限界を超えないか、他の場合には、検出されないテスト結果」として説明されています。」 しかし、「一般に、「アウトライヤー」(outlier)とは、一定の制限によって定義され、予想される結果から逸脱したテスト結果です。」という定義、「アウトライヤーは、「事象がおこるサンプルの他の要素から顕著に逸脱していると思われる」観測値です。」という定義、「「統計学においては、アウトライヤーは、データの残りの部分と数値的に異なる観測値」です。」という定義、及び「本願明細書の段落0026において、「アウトライヤー」は「第1のセットから逸脱するが、コントロール限界を超えないか、他の場合には、検出されないテスト結果」として説明されています。」という定義は、非常に類似したものであるとはいえない。 たとえば、「一定の制限によって定義され、予想される結果から逸脱したテスト結果」は、「顕著に」逸脱しているとは限らないことから、必ずしも「「事象がおこるサンプルの他の要素から顕著に逸脱していると思われる」観測値」であることにはならないし、逆に「「事象がおこるサンプルの他の要素から顕著に逸脱していると思われる」観測値」は、「顕著に」逸脱しているとしても、「一定の制限」によって定義された結果や「予想される」結果から逸脱しているとは限らないことから、必ずしも「一定の制限によって定義され、予想される結果から逸脱したテスト結果」であることにはならない。 また、「データの残りの部分と数値的に異なる観測値」は、必ずしも「一定の制限」によって定義された結果や「予想される」結果から逸脱しているとは限らないし、「顕著に」逸脱しているとも限らないことから、「一定の制限によって定義され、予想される結果から逸脱したテスト結果」や「「事象がおこるサンプルの他の要素から顕著に逸脱していると思われる」観測値」であることにはならない。 さらに、「第1のセットから逸脱するが、コントロール限界を超えないか、他の場合には、検出されないテスト結果」は、後述の指摘事項eについてで検討するように、その記載自体の意味が不明確なため、他の定義と類似したものであるかどうかの判断もできない。 したがって、「アウトライヤー」という用語が、参考資料1ないし3に記載され、その用語自体は周知であるとしても、前述したように、それぞれの定義は、同等のものではないことから、請求項1、8、及び15において、どのような意味で使用されているかが明確であるとはいえない。 よって、請求人の主張は採用できず、請求項1ないし20に係る発明は明確であるとはいえない。 (2)指摘事項dについて 当審拒絶理由は、請求項2及び9に記載された「レシピファイルの構成データのセット」並びに請求項16に記載された「レシピファイル内の該構成データ」が明確でない旨指摘した。 ア 請求項2記載の「レシピファイルの構成データのセット」、請求項9記載の「レシピファイル内の構成データのセット」、並びに請求項16記載の「レシピファイル内の該構成データ」について、発明の詳細な説明の【0023】に次の記載がある。 「構成エレメント202は、次に、マスター構成ファイルおよび/またはツール構成ファイルに含まれるデータに従って、テストシステム100を構成し得る(ステップ306)。さらに、テスタデータ用のロジスティックインスタンス(logistics instances)のようなデータをテスタ102と関連付けるために、構成エレメント202は、構成データを用いて、データベース114からテスタ102の識別子のようなさらなる関連性のある情報を取り出す(ステップ308)。テストシステム100の情報はまた、オペレータによって承認、却下または調整され得る1つ以上のデフォルトパラメータを適切に含む。例えば、テストシステム100の情報は、インストール、構成またはパワーアップ時、または認可および/または修正するのための他の適する時において、オペレータに提出される世界統計処理制御(global statistical process control)(SPC)規則および目標を含み得る。テストシステム100の情報はまた、デフォルトウエハマップ、または各々の製品、ウエハおよびコンポーネント106に対して適切に構成される他のファイル、またはテストシステム100に影響を及ぼし得るか、またはそれによって影響が及ぼされ得る他のアイテムを含み得る。構成アルゴリズム、パラメータおよび任意の他の判定条件は、容易なアクセス、特定の製品および/またはテストへの相関およびトレーサビリティのために、レシピファイルに記憶され得る。」 上記の記載には、「構成アルゴリズム、パラメータおよび任意の他の判定条件は、容易なアクセス、特定の製品および/またはテストへの相関およびトレーサビリティのために、レシピファイルに記憶され得る。」との記載はある。しかし、「構成アルゴリズム」、「パラメータ」、および「任意の他の判定条件」が「構成データ」に該当することは記載されておらず、上記の【0023】の記載中のどれが、「レシピファイルの構成データのセット」や「レシピファイル内の該構成データ」に相当するのかは記載されていない。 イ この点に関する請求人の意見書における主張は、発明の詳細な説明の【0023】の記載をそのまま述べるのみで、発明の詳細な説明の【0023】中のどれが、「レシピファイルの構成データのセット」や「レシピファイル内の該構成データ」に相当するのかを説明していない。 したがって、請求項2記載の「レシピファイルの構成データのセット」、請求項9記載の「レシピファイル内の構成データのセット」、及び請求項16記載の「レシピファイル内の該構成データ」と発明の詳細な説明の【0023】の記載との関係は明確であるとはいえない。 よって、請求人の主張は採用できず、請求項2、9、及び16に係る発明は明確であるとはいえないし、また、請求項2、9、及び16に係る発明は発明の詳細な説明に記載されているともいえないし、さらに、発明の詳細な説明に、請求項2、9、及び16に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているともいえない。 (3)指摘事項eについて 当審拒絶理由は、発明の詳細な説明の【0026】の記載が明確でない旨指摘した。 ア 即ち、発明の詳細な説明の【0026】に次の記載がある。 「第1のセットから逸脱するが、コントロール限界を超えないか、他の場合には検出されない上記のテスト結果は、「アウトライヤー」と呼ばれる。」 しかし、上記の「他の場合には検出されない」が如何なる事項を意味するのか記載されていないため、「第1のセットから逸脱するが、コントロール限界を超えないか、他の場合には検出されない上記のテスト結果は、「アウトライヤー」と呼ばれる。」の意味が明確であるとはいえない。 イ この点に関して、請求人は、意見書において、次のとおり主張する。 「この記載は、テスト結果がコントロール限界から逸脱し、かつ、依然としてアウトライヤーである場合を記載しています。それらはコントロール限界と比較される場合には検出されないものの、それらは依然としてアウトライヤーです。」 しかし、請求人が主張するように「コントロール限界から逸脱」すれば、「コントロール限界を超え」ることになり、それでいて依然として「アウトライヤー」であるというのは、発明の詳細な説明の【0026】の「第1のセットから逸脱するが、コントロール限界を超えないか、他の場合には検出されない上記のテスト結果は、「アウトライヤー」と呼ばれる。」という記載と矛盾することになるので、上記主張自体の意味が明確でない。 したがって、請求人の主張は採用できず、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (4)指摘事項gについて 当審拒絶理由は、図9における「△=1アウトライヤーの放棄」と「●=リミット故障/アウトライヤ-のテスト」の意味が明確でない旨指摘した。 ア 図9に関して、発明の詳細な説明の【0025】に次の記載がある。 「それぞれのテストは、コンポーネントの少なくとも一つについての少なくとも一つの結果を生成する。図9を参照すると、複数のコンポーネントに関する単一のテストについてのテスト結果の例示的なセットは、類似の値を統計的に有するテスト結果の第1のセットと、第1のセットから逸脱する値によって特徴付けられるテスト結果の第2のセットとを含む。それぞれのテスト結果は、テスト上限およびテスト下限と比較され得る。コンポーネントについての特定の結果がいずれかの限界を超える場合、コンポーネントが「悪い部分(bad part)」として分類され得る。」 しかし、上記の【0025】には、図9における「△=bin 1 アウトライヤー」と「●=テスト限界故障/アウトライヤー」が何を意味するのか、特に「bin 1」や「/アウトライヤー」が何を意味するのかが記載されていないため、発明の詳細な説明の記載では、図9の意味が明確であるとはいえない。 イ この点に関して、請求人は、意見書において、次のとおり主張する。 「図9において、三角形(△)は、アウトライヤーである、コンポーネントに対するテスト結果を示します。図9において、黒丸(●)は、テスト上限およびテスト下限を超えたテスト結果(すなわち、テスト限界故障)を示します。これらの事項を明確にするために、図9を補正しました。この補正は、少なくとも、発明の詳細な説明の段落0025の記載に基づいています。」 しかし、図9における「△=bin 1 アウトライヤー」と「●=テスト限界故障/アウトライヤー」が何を意味するのか、特に「bin 1」や「/アウトライヤー」が何を意味するのかを説明していない。 したがって、請求人の主張は採用できず、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (5)指摘事項hについて 当審拒絶理由は、発明の詳細な説明の記載では、「アウトライヤー」が具体的にどのように識別されるのかが明確でないとして、指摘事項h-1ないしh-6のとおり指摘した。即ち、発明の詳細な説明に、「アウトライヤー」を識別するための個々の機能的ブロック又はステップで具体的にどのようなことが行われているのかが明確に記載されているとはいえないことから、発明の詳細な説明の記載では、「アウトライヤー」が具体的にどのように識別されるのか明確であるとはいえない。 したがって、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者に実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 ア 指摘事項h-1について 当審拒絶理由は、発明の詳細な説明の記載では、「スムージング」が具体的にどのように行われるのか明確でない旨指摘した。 (ア)「スムージング」について、発明の詳細な説明の【0042】に次の記載がある。 「捕捉のデータ解析エレメント206は、データを滑らかにし、かつ、アウトライヤ-の分類を補助するためにテストデータを最初に処理するスムージングシステムを含み得る(ステップ429)。スムージングシステムはまた、出力エレメント208によってオペレータに提供され得るデータ、トレンドなどにおける重要な変化を分類し得る。」 また、【0043】には、スムージングシステムはコンピュータシステム108におけるプログラムオペレーティングとして適切にインプリメントされるものである旨記載され、【0044】には、スムージングシステムが第1ないし3のスムージング技術に応じて作動する旨記載され、【0045】ないし【0059】には、図8に示されたスムージングシステムの操作のためのフローチャートの説明及びスムージングした後に捕捉データ解析エレメント206による解析が行われることが記載されている。 しかし、上記の【0042】には、データ解析エレメント206がスムージングシステムを含み得ること、スムージングシステムが重要な変化を分類し得ることが記載されているにすぎず、上記の【0043】には、スムージングシステムがプログラムオペレーティングとしてインプリメントされるものであることが記載されているにすぎず、上記の【0044】には、スムージングシステムが第1ないし3のスムージング技術に応じて作動するものであることが記載されているにすぎず、上記の【0045】ないし【0059】には、図8に示されたフローチャートの各ステップの内容及びスムージングした後の捕捉データ解析エレメント206による解析の内容が抽象的に列記されているに留まり、「スムージング」が具体的にどのように行われるのかは明確に記載されていない。 (イ)この点に関する請求人の意見書における主張は、発明の詳細な説明の【0042】の記載をそのまま述べるとともに「スムージングシステム」について説明している段落を列記し、当業者であれば理解できると述べるに留まるものであって、「スムージング」が具体的にどのように行われるのかを説明するものではない。 イ 指摘事項h-2について 当審拒絶理由は、発明の詳細な説明の記載では、「シグネチャー解析」が具体的にどのように行われるのか明確でない旨指摘した。 (ア)「シグネチャー解析」について、発明の詳細な説明の【0060】ないし【0062】に次の記載がある。 ・発明の詳細な説明の【0060】:「補足データ解析エレメント206はまた、例えば、セクションにしたがって、そのセクションに対するテスト結果の組み合わせおよび/または他のデータ(履歴データ等)に基づいて、データ中の傾向および異常を動的かつ自動的に分類するためのシグネチャー解析(signature analysis)を適切に行う(ステップ442)。シグナチャー解析は、テストデータ等の任意の適切なデータまたは欠陥の分類に基づいて、シグネチャーを分類し、オペレータによって適切に構成された重み付けシステムを適用する。シグネチャー解析は、問題エリアまたはウエハの他の特徴または製造プロセスに対応し得る傾向および異常を累積的に分類し得る。シグネチャー解析は、ノイズピーク、波面変動、モードシフト、およびノイズ等の任意の所望のシグネチャーのために行われ得る。本発明の実施形態では、コンピュータ108は、各所望のセクションにおける各所望のテストごとに出力テストデータに関するシグネチャー解析を適切に行う。」 ・発明の詳細な説明の【0061】:「本発明の実施形態では、シグネチャー解析プロセスは、スムージングプロセスと共に行われる。」 ・発明の詳細な説明の【0062】:「例えば、図6A?6Bを参照すると、シグネチャー解析プロセス600は、最初に、テストデータの特定のセットおよび特定のセクションおよびテストに対応する制御制限のためにカウントを計算し得る(ステップ602)。次いで、シグネチャー解析プロセス600は、適切なシグネチャー解析アルゴリズムをデータポイントに適用する(ステップ604)。シグネチャー解析が各所望のシグネチャーアルゴリズムに対して行われ、次いで、各テストおよび各セクションが解析される。シグネチャー解析、トレンド結果、およびにシグネチャー結果よって分類されたエラーも、格納される(ステップ606)。各シグネチャーアルゴリズム(ステップ608)、テスト(ステップ610)、およびセクション(ステップ612)に対するプロセスが繰り返される。完了時、補足データ解析エレメント206は、エラー(ステップ614)、傾向結果(ステップ616)、シグネチャー結果(ステップ618)、および格納システムにおける任意の他の所望のデータを記録する。」 しかし、発明の詳細な説明の【0060】ないし【0062】の上記記載には、「シグネチャー」という用語自体の意味の説明はなく、また、「シグネチャー」をどのように分類し、「重み付け」をどのように行うのかの具体的な説明もないことから、「シグネチャー解析」のアルゴリズムが具体的にどのようなものか記載されているとはいえない。 (イ)この点に関する請求人の意見書における主張は、発明の詳細な説明の【0060】の記載をそのまま述べるとともに、「シグネチャー解析」について説明している段落を列記し、当業者であれば理解できると述べるに留まるものであって、「シグネチャー解析」が具体的にどのように行われるのかを説明するものではない。 ウ 指摘事項h-3について 当審拒絶理由は、発明の詳細な説明の記載では、「アウトライヤーに対する感度を自動的に較正する」が具体的にどのように行われるのか明確でない旨指摘した。 (ア)「アウトライヤーに対する感度を自動的に較正する」について、発明の詳細な説明の【0066】に次の記載がある。 「補足データ解析エレメント206は、選択された値に対する比較による、および/または、データスムージングプロセスにおけるデータの処置にしたがって等、アウトライヤーを指定するために任意の適切な態様で動作し得る。例えば、本発明の種々の局面によるアウトライヤー分類エレメントは、最初に、各関連基準ごとの選択された統計的関係に基づいてアウトライヤーに対する感度を自動的に較正する(ステップ434)。次いで、これら統計的関係のいくつかは、相対的なアウトライヤー閾値制限を規定するために、閾値または、データモード、平均値、または中央値またはこれらの組み合わせ等の他の基準ポイントと比較される。本発明の実施形態では、統計的関係は、異なるアウトライヤー振幅を規定するために、例えば、データの標準偏差の1、2、3、および6倍で倍率をかけられる(ステップ436)。次いで、出力テストデータは、アウトライヤーとして出力テストデータを分類および分類するためにアウトライヤー閾値制限と比較され得る(ステップ438)。」 即ち、上記の【0066】には、「例えば、本発明の種々の局面によるアウトライヤー分類エレメントは、最初に、各関連基準ごとの選択された統計的関係に基づいてアウトライヤーに対する感度を自動的に較正する(ステップ434)。」と記載されている。しかし、具体的にどのようにして「アウトライヤーに対する感度を自動的に較正する」のかを説明した記載はない。 (イ)この点に関する請求人の意見書における主張は、発明の詳細な説明の【0066】の記載をそのまま述べ、当業者によって理解されるように記載されていると述べるに留まるものであって、「アウトライヤーに対する感度を自動的に較正する」が具体的にどのように行われるのかを説明するものではない。 エ 指摘事項h-4について 当審拒絶理由は、発明の詳細な説明の記載では、「スケーリング」が具体的にどのように行われるのか、特に【数1】ないし【数5】をどのように使用するのか明確でない旨指摘した。 (ア)「スケーリング」について、発明の詳細な説明の【0068】及び【0069】に次の記載がある。 ・発明の詳細な説明の【0068】:「本実施形態において、補足のデータ解析エレメント206は、スケーリングエレメント210およびアウトライヤー分類エレメント212を含む。スケーリングエレメント210は、選択された係数および出力テストデータに応じて他の値を動的にスケーリングするように構成される。アウトライヤー分類エレメント212は、選択されたアルゴリズムに応じてデータ内で種々のアウトライヤーを分類および/または分類するように構成される」 ・発明の詳細な説明の【0069】:「より具体的には、本実施形態のスケーリングエレメントは、アウトライヤー感度(sensitivity)を動的にスケーリングするため、およびノイズフィルタリング感度に対する係数をスムージングするために統計学的な関係を使用する。係数をスケーリングすることは、スケーリングエレメントによって適切に計算され、選択されたアウトライヤー感度値および補整係数を修正するために使用される。適当な統計学的な関係などの任意の適切な判定基準は、スケーリングのために使用される。例えば、アウトライヤー感度スケーリングのための、標本(sample)統計学的関係は、以下の式で定義される。」 また、発明の詳細な説明の【0070】ないし【0076】には、アウトライヤー感度スケーリングのための、標本(sample)統計学的関係を定義する数式が記載されている。 しかし、発明の詳細な説明の【0070】ないし【0076】に記載された上記の数式を具体的にどのように使用して「スケーリング」を行うのかを説明した記載はない。 (イ)この点に関する請求人の意見書における主張は、発明の詳細な説明の【0068】及び【0069】の記載をそのまま述べるとともに「スケーリング」は周知の用語であり、当業者であれば理解することができると述べるに留まるものであって、「スケーリング」が具体的にどのように行われるのかを説明するものではない。 オ 指摘事項h-5について 当審拒絶理由は、発明の詳細な説明の記載では、「アウトライヤー分類」が具体的にどのように行われるのか明確でない旨指摘した。 (ア)「アウトライヤー分類」について、発明の詳細な説明の【0068】及び【0077】ないし【0079】に次の記載がある。 ・発明の詳細な説明の【0068】:「本実施形態において、補足のデータ解析エレメント206は、スケーリングエレメント210およびアウトライヤー分類エレメント212を含む。スケーリングエレメント210は、選択された係数および出力テストデータに応じて他の値を動的にスケーリングするように構成される。アウトライヤー分類エレメント212は、選択されたアルゴリズムに応じてデータ内で種々のアウトライヤーを分類および/または分類するように構成される」 ・発明の詳細な説明の【0077】:「アウトライヤー分類エレメントは、コンポーネント106、出力テストデータ、および、任意の適切なアルゴリズムによる出力テストデータにおけるアウトライヤーである解析結果を分類および/または分類するように適切に構成される。アウトライヤー分類エレメントはまた、出力テスト結果および補足の解析エレメント206によって生成される情報に応じたコンポーネント106と選択されたアウトライヤーとを分類および分類し得る。例えば、アウトライヤー分類エレメントは、臨界の/最低限の/良い部分のカテゴリにコンポーネント106を分類するために適切に構成される。そのカテゴリは、例えば、ユーザ定義された判定基準;ユーザ定義された良い/悪い空間的なパターン認識;テスタデータ圧縮に対する適正なデータの分類;その場の感度能力(qualifications)および解析;テスタ収率(yield)標準化(leveling)解析;動的ウエハマップおよび/または部分性質に対するテストストリップマッピングおよび動的再テスト;または、テストプログラム最適化解析である。アウトライヤー分類エレメントは、データを特徴付けるために、ウエスタンエレクトリックルール(Western Electric rule)または、ネルソンルール(Nelson rule)などの従来のSPC制御ルールにしたがってデータを分類する。」 ・発明の詳細な説明の【0078】:「アウトライヤー分類エレメントは、選択された分類リミット計算方法の選択された設定を使用してデータを適切に分類する。任意の適切な分類方法は、オペレータの必要性に応じてデータを特徴付けるために使用され得る。例えば、本明細書アウトライヤー分類エレメントは、データ平均値、モードおよび/または中央値などの1、2、3、および6つの統計的にスケーリングされた閾値からの標準偏差に対応する値などの選択された閾値と出力テストデータとを比較することによってアウトライヤーを分類する。この態様におけるアウトライヤーの分類は、データ振幅および対応するノイズに関係なく、任意のテストに対して任意の分類されたアウトライヤーを正規化する(nomalize)傾向がある。」 ・発明の詳細な説明の【0079】:「アウトライヤー分類エレメントは、正規化されたアウトライヤーおよび/またはユーザ定義ルールに基づくロウデータ点を解析かつ相関する。分類されたアウトライヤーに基づく部分およびパターン分類の目的のための標本ユーザ選択可能方法は以下に示される。」 また、発明の詳細な説明の【0080】ないし【0085】には、分類されたアウトライヤーに基づく部分およびパターン分類の目的のための標本ユーザ選択可能方法で使用される数式が記載されている。 しかし、発明の詳細な説明の【0068】及び【0077】ないし【0079】には、発明の詳細な説明の【0080】ないし【0085】に記載された上記の数式を具体的にどのように使用して「アウトライヤ-分類」を行うのかを説明した記載はない。 (イ)この点に関する請求人の意見書における主張は、発明の詳細な説明の【0077】の記載をそのまま述べるとともに「アウトライヤー分類」について説明している段落を列記し、当業者であれば理解することができると述べるに留まるものであって、発明の詳細な説明の【0080】ないし【0085】に記載された数式を具体的にどのように使用して「アウトライヤー分類」が行われるのかを説明するものではない。 カ 指摘事項h-6について 当審拒絶理由は、発明の詳細な説明の【0086】ないし【0090】において、具体的に何がなされているのか明確でない旨指摘した。 (ア)「出力テストデータおよび補足データ解析エレメント206によって生成される情報の追加解析」について、発明の詳細な説明の【0085】に次の記載がある。 「補足データ解析エレメント206は、出力テストデータおよび補足データ解析エレメント206によって生成される情報の追加解析を実行するように構成され得る。例えば、補足のデータ解析エレメント206は、例えば、障害、アウトライヤー、または、特定の分類におけるアウトライヤーの全てまたは平均値と一つ以上の閾値とを比較することによって、障害またはアウトライヤーの高い発生率を有するテストを分類し得る。」 また、発明の詳細な説明に【0086】ないし【0090】には、「補足データ解析エレメント206」の構成及び「捕捉的データ解析」が何を提供するのかについて記載されている。 しかし、「出力テストデータおよび補足データ解析エレメント206によって生成される情報の追加解析」が具体的にどのように行われるのかを説明した記載はない。 (イ)この点に関する請求人の意見書における主張は、発明の詳細な説明の【0085】の記載をそのまま述べるとともに「出力テストデータおよび補足データ解析エレメント206によって生成される情報の追加解析」について説明している段落を列記し、当業者であれば理解することができると述べるに留まるものであって、「出力テストデータおよび補足データ解析エレメント206によって生成される情報の追加解析」が具体的にどのように行われるのかを説明するものではない。 (6)指摘事項iについて 当審拒絶理由は、図12A及びBに示されたデータが、どのような途中過程を経て、最終的に「アウトライヤー」が識別されるのか明確でない旨指摘した。 ア 発明の詳細な説明の【0093】及び図面の簡単な説明には、図12Aがコンポーネント毎の生テストデータをプロットしたものであり、図12Bが滑らかにされたテストデータの詳細なプロットであることが記載されている。しかし、図12A及びBに示されたデータが、どのような途中過程を経て、最終的に「アウトライヤー」が識別されるのか具体的に記載されていない。 イ この点に関する請求人の主張は、図12Aと図12Bの説明に留まり、図12A及びBに示されたデータが、具体的に、どのような途中過程を経て、最終的に「アウトライヤー」が識別されるのかを説明するものではない。 したがって、請求人の主張は採用できず、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者に実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (7)指摘事項jについて 当審拒絶理由は、請求項1ないし20に係る発明の如何なる作用により、発明の詳細な説明の【0003】ないし【0006】に記載された従来技術の問題点が解決されるのか、発明の詳細な説明の他の記載をみても明確でない旨指摘した。 ア 発明の詳細な説明には、識別した「アウトライヤー」をどのように使用するのか記載されておらず、請求項1ないし20に係る発明のどの特定事項の如何なる作用により発明の詳細な説明の【0003】ないし【0006】に記載された従来技術の問題点が解決されるのか、明確であるとはいえない。 イ この点に関する請求人の意見書における主張は、アウトライヤーによって、格納するデータと格納しないデータに分けることを述べるに留まり、アウトライヤーを具体的にどのように使用するのかを説明するものではない。 したがって、請求人の主張は採用できず、発明の詳細な説明に、請求項1ないし20に係る発明が当業者に実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 4 むすび 上記「3」のとおり、本願は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載に不備があり、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 第4 特許法第29条第2項について 1 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2」の【請求項1】に記載されたとおりのものである。 2 引用文献の記載 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である特開平6-347300号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は、当審で付したものである。以下、順に、「引用文献記載事項(1)」ないし「引用文献記載事項(6)」という。)。 (1)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、装置の異状発生や製品の歩留り低下が発生することを予測し警告を示す製造管理システムに関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、工場がFA、CIM化されるようになり、管理項目の測定データがコンピュータで管理されるようになっている。 【0003】以下図を参照しながら、従来の監視システムの一例について説明する。図8は従来の装置管理を示すシステムブロック図である。w1は各管理データの入力部であり、w2は入力データを測定し、管理基準から外れた値を測定した場合は警戒信号を出力する制御部であり、w3は警戒信号を受信すると警告を表示する監視盤である。図8では、装置の各管理項目である交流電圧、交流電流、温度に対し各々の管理データが管理基準から外れていないかどうかを各管理項目別に調べている。たとえば、「オートメーション」第36巻 第9号の27ページ参照。 【0004】また、半導体チップの品質管理では、管理項目の測定データからその管理項目の管理を行うだけでなく、管理項目の測定データに対して多変量解析を行い相関関係の解っている管理項目に関してのみ、1種類の管理データからもう一方の管理状況を推測している。たとえば、装置のダストデータが管理基準外に近づくと半導体の歩留まりが低下していくことから、歩留まりの管理データからでなく装置ダストの管理データから歩留まりの管理データの動きを推測して歩留まりを管理する方法である。」(【0001】ないし【0004】) (2)「【0009】 【実施例】以下本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例のデータ自動監視システムの機能ブロック図である。図1において、制御部Aにはデータ検出手段10と管理基準比較手段20とデータ変換手段30と警戒判断手段40が設けられている。制御部Aと接続されている二次記憶装置Bには、データ記録ファイルaと管理基準データファイルbと警戒データ履歴ファイルeが格納されている。Eは制御部Aからの信号を受け取り表示するモニターである。1つの測定器から1つの管理する項目のデータが測定される。」(【0009】) (3)「【0010】データ検出手段10は、測定器Cと測定器Dから管理する項目の数値データを取り込み、そのデータをデータ記録ファイルaに記録する。データ記録ファイルaの構成はたとえば図2に示されている。図2において、a1は日付フィールド、a2は測定器Cのデータフィールド、a3は測定器Dのデータフィールドである。日付フィールドa1には測定した年月日と時間が記入されている。」(【0010】) (4)「【0011】管理基準比較手段20は、管理基準データファイルbから管理基準のデータを読み取り、測定器Cと測定器Dからの数値データが管理基準の値から外れていないかを検査する。たとえば、測定器Cの数値データが管理基準値から外れている場合は、測定器Cの数値データが管理基準から外れていることを示す信号を警戒判断手段40に送る。管理基準データファイルbの構成はたとえば図3に示されている。図3において、管理項目フィールドb1には管理する項目を示す名前が格納され、管理基準最小値フィールドb2には管理基準の最小値が格納され、管理基準最大値フィールドb3には管理基準の最大値が格納される。たとえば、管理基準最小値は管理項目の規格値より10%増の値であり、管理基準最大値は管理項目の規格値より10%減の値である。こうすることにより、管理する項目の数値データが規格外の値になる前に検出できる。」(【0011】) (5)「【0012】データ変換手段30は、データ記録ファイルaに記録されている1週間のデータを読み取り、2進数のデータを用いて構成されたグラフィックデータに変換する。測定器Dの数値データをグラフィックデータに変換する手段を図4に示す。図4において、グラフ表示レイヤーd1には測定器Dの数値データを用いて横軸を時間軸としたトレンドグラフが表示されており、グラフ表示レイヤーd1と同じ大きさの2進数表示レイヤーd0は細かいマス目hを持っていて、各マス目ごとに0または1の値を持っている。データ値0はグラフ表示レイヤーd1上でグラフの線が描かれていない部分、データ値1はグラフ表示レイヤーd1上でグラフの線が描かれている部分を示している。この2進数表示レイヤーd0のデータ値はデータ変換手段30から出力されたものである。 【0013】また、測定器Cと測定器Dの管理データをグラフィックデータに変換する場合、図5に示されるように、測定器Cのグラフ表示レイヤーc1と測定器Dのグラフ表示レイヤーd1に対して、両方のグラフ表示レイヤーの大きさは同じであり、かつ横軸である測定器Cの時間軸f1と測定器Dの時間軸f2の範囲も両方とも同じであるが、縦軸である測定器Cの測定値の軸f3と測定器Dの測定値の軸f4の範囲は両方とも同じである必要はない。しかし、各管理項目ごとの縦軸の範囲は常に一定である。」(【0012】及び【0013】) (6)「【0014】警戒判断手段40では、図6に示される判断レイヤーg0を用いて、データ変換手段30で変換されたグラフィックデータが警戒するデータであるかどうかを判断する。・・・(略)・・・ 【0016】警戒するかどうかの判断は、管理基準比較手段20から管理基準外の数値データをもつ管理項目が存在することを示す信号が送信されていれば、警戒すると判断し、検査レイヤーのデータを警戒データファイルeに記録する。・・・(略)・・・そして、警戒すると判断した場合は、図1のモニターEへ警戒信号が出力されて警戒のメッセージがモニターEに表示され、検査レイヤーg1は警戒データとして図7に示される警戒データ履歴ファイルeに記録される。」(【0014】ないし【0016】) 3 引用文献に記載された発明 引用文献記載事項(1)には、測定対象が半導体チップであることが記載されている。 引用文献記載事項(3)には、測定器C及びDから数値データを取り込むこと、即ち測定器C及びDが数値データを生成していることが記載されている。 引用文献記載事項(2)及び(4)には、制御部Aが測定器C及びDが生成した数値データが管理基準の値から外れた数値データかどうかを検査、即ち識別していることが記載されている。 引用文献記載事項(2)、(5)、及び(6)には、制御部Aが管理基準の値から外れた数値データを含むグラフィックデータを警戒データとすることが記載されている。 したがって、引用文献記載事項(1)ないし(6)及び図面からみて、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「半導体チップを測定し、数値データを生成するように構成された測定器C及びDと 該測定器C及びDに接続された制御部Aであって、該数値データを受け取り、該数値データ内の管理基準の値から外れた数値データを識別し、該識別された管理基準の値から外れた数値データを含む警戒データを生成するように構成された制御部Aと を備えたデータ自動監視システム。」 4 対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)一致点 引用発明における「半導体チップ」及び「警戒データ」は、本願発明における「コンポーネント」及び「出力報告」に相当する。 引用発明における「制御部A」は、引用文献記載事項(1)の「管理項目の測定データがコンピュータで管理されるようになっている。」という記載及び引用文献記載事項(2)の「制御部Aにはデータ検出手段10と管理基準比較手段20とデータ変換手段30と警戒判断手段40が設けられている。制御部Aと接続されている二次記憶装置Bには、データ記録ファイルaと管理基準データファイルbと警戒データ履歴ファイルeが格納されている。Eは制御部Aからの信号を受け取り表示するモニターである。1つの測定器から1つの管理する項目のデータが測定される。」という記載、並びに図1に示された機能ブロック図からみて、本願発明における「コンピュータ」と同等の機能を果たしていることから、本願発明における「コンピュータ」に相当する。 本願発明における「テスト」は、それにより「コンポーネント」に関する何らかの値を得るものであるから、引用発明における「測定」に包含される。 引用発明における「数値データ」と本願発明における「テストデータ」は、「データ」である限りで一致する。 引用発明における「測定器C及びD」と本願発明における「テスト部」は、「測定部」である限りで一致する。 引用発明における「データ自動監視システム」と本願発明における「テストシステム」は「システム」である限りで一致する。 引用発明における「管理基準の値から外れた数値データ」は、本願発明における「アウトライヤー」に相当する(「アウトライヤー」という記載は、上記「第2 1」で指摘事項aとして指摘したように、不明確な記載であるが、請求人の主張する定義の内、「「事象がおこるサンプルの他の要素から顕著に逸脱していると思われる」観測値」や「データの残りの部分と数値的に異なる観測値」のことを意味するとすれば、引用発明における「管理基準の値から外れた数値データ」は、「「事象がおこるサンプルの他の要素から顕著に逸脱していると思われる」観測値」や「統計学においては、アウトライヤーは、データの残りの部分と数値的に異なる観測値」に相当するといえる。)。 したがって、両者の発明は、以下の点で一致する。 「コンポーネントを測定し、データを生成するように構成された測定部と 該測定部に接続されたコンピュータであって、該データを受け取り、該データ内のアウトライヤーを識別し、該アウトライヤーを含む出力報告を生成するように構成されたコンピュータと を備えたシステム。」 (2)相違点 そして、以下の点で相違する。 相違点:本願発明では、テスト部でテストをしてテストデータを生成するテストシステムであるのに対し、引用発明では、測定器C及びDで測定して数値データを生成するデータ自動監視システムである点。 5 相違点についての判断 そこで、上記相違点について、以下に検討する。 引用文献記載事項(1)の「【従来の技術】近年、工場がFA、CIM化されるようになり、管理項目の測定データがコンピュータで管理されるようになっている。・・・(略)・・・図8では、装置の各管理項目である交流電圧、交流電流、温度に対し各々の管理データが管理基準から外れていないかどうかを各管理項目別に調べている。・・・(略)・・・また、半導体チップの品質管理では、管理項目の測定データからその管理項目の管理を行うだけでなく、管理項目の測定データに対して多変量解析を行い相関関係の解っている管理項目に関してのみ、1種類の管理データからもう一方の管理状況を推測している。」という記載、及び引用文献記載事項(4)の「管理基準比較手段20は、管理基準データファイルbから管理基準のデータを読み取り、測定器Cと測定器Dからの数値データが管理基準の値から外れていないかを検査する。」という記載によると、引用発明は、半導体チップの品質管理のために、装置の各管理項目に対し各々の測定データが管理基準から外れていないかどうかを検査するものである。このように、半導体チップを検査するものであることは、引用発明における「測定」が半導体チップを「テスト」してデータを測定するものを含むことを示唆している。 また、下記の刊行物に記載されるように、半導体チップのデータを測定する際に、テストを行ってその結果を測定値として測定することは普通に行われている手段である(なお、下線は当審で付したものである。)。 ・特開平3-79055号公報 「本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、ウエハテストで正確な測定値が得られるとともに、組立後に、ワイヤあるいはフィルムリードと電極パッドとの間の剥がれが生じることのないものを提供することを目的とする。 [課題を解決するための手段] 本発明の半導体素子は、・・・(略)・・・設けたものである。」(第2ページ左上欄第13行ないし右上欄第3行) ・特開平11-3918号公報 「【0002】 【従来の技術】従来のウエハでの半導体チップの選別工程では、LSIテスタと連動して設置されている自動ウエハ搬送装置であるプローバーにウエハをセットし、プローブカードを使用して個別の半導体チップの入出力用パッドに信号伝達用の針を立て、DC、AC、ファンクションの各種テストを実施し、測定規格値内に収まらないものが1項目でもあれば、LSIテスタからの不良判定信号を受けて、プローバーに設置されているインカーから半導体チップに対して不良認識マークとして対象チップの中央部付近にインクの塗布を行ってきた。逆に、テスト結果が測定規格内に収まっていれば、その測定結果のばらつきに関係なく全て良品として選別され、その後工程では一律に同じ特性の半導体チップ製品として扱われる。」(【0002】) したがって、引用発明において、半導体チップのデータを測定する際に、テストを行ってその結果を測定値として測定するようにして、相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得た事項である。 6 効果について 本願発明を全体としてみても、本願発明の効果は引用発明からみて格別なものとはいえない。 7 むすび よって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 上記「第3」のとおり、本願は、当審拒絶理由で指摘した点で依然として不備があり、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、及び第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、本願は拒絶すべきものである。 また、上記「第4」のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-12-01 |
結審通知日 | 2011-12-02 |
審決日 | 2011-12-13 |
出願番号 | 特願2002-592168(P2002-592168) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L) P 1 8・ 537- WZ (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 板谷 一弘、田代 吉成 |
特許庁審判長 |
北村 明弘 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 川村 健一 |
発明の名称 | 半導体テストのための方法および装置 |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 安村 高明 |
代理人 | 森下 夏樹 |