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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H
管理番号 1256774
審判番号 不服2010-18886  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-20 
確定日 2012-05-07 
事件の表示 特願2000-299745「音叉型水晶片及び水晶振動子」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月12日出願公開、特開2002-111437〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年9月29日の出願であって、平成22年1月8日付けで拒絶理由通知がなされ、同年3月15日付けで手続補正がなされたが、同年5月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成22年3月15日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「外面に励振電極が形成された音叉型水晶片において、
振動の節点もしくは振動の節点の近傍位置における上記励振電極上に金属材料で成る金属膜が一体形成されていることを特徴とする音叉型水晶片。」

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭55-162612号公報(以下、「引用例1」という。)、特開平8-78997号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例1)
A.「本発明は腕時計の時間標準として主に使用されている音叉型水晶振動子の中で特に化学的エッチング加工により形成された音叉型水晶片より構成される小型音叉型水晶振動子に関するものである。従来化学的エッチング加工により形成した音叉型水晶片は第1図及び第2図イ,ロに示す如く水晶結晶の自然面1bが共振枝1a間の溝底付近に形成され衝撃振動等の外乱に対し応力集中を生じ、第2図の1c,1d部分にて破壊することとなり、強度低下の原因となっていた。
本発明は上記の欠点を除去し音叉の溝底付近の応力集中を緩和し破壊し難い音叉型水晶片の構造を提供せんとするものである。
以下本発明の実施例を図面第3図以降により説明する。第3図及び第4図は本発明の音叉型水晶片の構造を示す正面図及び部分拡大説明図で音叉型水晶振動片2の溝底付近の水晶結晶自然面延長線上応力集中部分近傍に突起2a,2bを設けたものである。
又、第5図は本発明の他の実施例を示す音叉型水晶片の正面図で音叉型水晶片3の基部と共振枝との間に段部を設けたもので該段部近傍に突起3c,3dを共振枝内側には第3図の実施例と同様に突起3a,3bを備えたものである。
本実施例の場合外側面に段部を有しているため水晶結晶の自然面が音叉型水晶片の内側のみならず外側にも応力集中部分が生ずるため前記突起3c,3dを形成してある。
以上の構成であるので音叉型水晶片の溝底付近の水晶結晶の自然面と共振枝の内側面とがなす角度は従来の場合の第6図に於いてはθ_(1),θ_(2)であり約120度となるが、本発明の実施例では第7図に示す如くθ_(3),θ_(4)は約180度となる。即ち水晶結晶の自然面と共振枝の内側面の接点に於ける応力集中は第6図に比較し数倍少くない突起と内側面は第7図の曲面部4で結合するようにすれば更に少くなることとなるこの様に音叉型水晶片の溝底付近に生ずる応力集中を大巾に緩和し衝撃、振動等の外乱に強い音叉型水晶片を得ることができ、又音叉型水晶片の破壊強度は理論値迄近ずけることができたので腕時計等3000G?4000Gの衝撃外乱に対応し得る製品にも適用ができる。」(第1頁左下欄第11行?第2頁左上欄第12行)

ここで、一般的に、音叉型水晶片において、その基部と2つの共振枝との間には、振動の節点があるところ、上記Aの「突起2a,2b」や「突起3a,3b」及び「突起3c,3d」は、第3図や第5図を参照すると、音叉型水晶片の基部と2つの共振枝との間にあるから、振動の節点もしくは振動の節点の近傍位置に設けられているものと認められる。

よって、上記Aの記載及び関連する図面を参照すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「音叉型水晶片において、
振動の節点もしくは振動の節点の近傍位置に突起を設けた音叉型水晶片。」

(引用例2)
B.「【0002】
【従来の技術と課題】従来の圧電共振子として、図11に示すものが知られている。この圧電共振子71は振動部72と保持部73,74と連結部75,76にて構成されている。振動部72と保持部73,74と連結部75,76は一体構造である。振動部72の表裏面にはそれぞれ振動電極77,78が設けられ、保持部73,74には引出し電極79,80が設けられている。振動電極77と引出し電極79は連結部75に配設された中継電極81を介して電気的に接続され、振動電極78と引出し電極80は連結部76に配設された中継電極82を介して電気的に接続されている。
【0003】ところが、この圧電共振子71は連結部75,76が細く、機械的強度が低いため外部からの機械的衝撃や振動部72の振動によって連結部75,76が破損し易いという問題があった。そこで、本発明の課題は、連結部の機械的強度が高い圧電共振子及びその製造方法を提供することにある。」

C.「【0012】[第2実施例、図3及び図4]図3及び図4に示すように、圧電共振子25は振動部26と保持部27,28と連結部29,30と補強材39a,39b,40a,40bにて構成されている。連結部29,30の幅は振動部26や保持部27,28の幅と比較して細い。
【0013】振動部26の表裏面にはそれぞれ振動電極31,32が設けられている。この振動部26は長さ振動モードにて振動する。保持部27,28にはそれぞれ引出し電極35,36が設けられている。振動電極31と引出し電極35、並びに振動電極32と引出し電極36はそれぞれ連結部29,30の表裏面に配設された中継電極33,34を介して電気的に接続されている。
【0014】補強材39a?40bは、振動部26の表裏面縁部から連結部29,30の表裏面に伸び、さらに保持部27,28の表裏面縁部まで設けられている。これらの補強材39a?40bは連結部29,30の機械的強度を補強する。補強材39a?40bの材料としては、高強度のセラミックス、金属、ガラス、あるいは機械的衝撃を吸収することができるゴム、樹脂等が使用される。なお、補強材は連結部29,30の表裏面に必らずしも設ける必要はなく、いずれか一方の面にのみ設けるものであってもよい。
【0015】次に、圧電共振子25の製造方法について説明する。まず、第1実施例と同様に、圧電体ブロックの上面及び下面にそれぞれ二つの溝を形成する。次に、圧電体ブロックから所定の厚さの圧電体基板を切り出す。切り出された圧電体基板は、圧電共振子25の振動部26と保持部27,28と連結部29,30に相当する部分を有している。この圧電体基板の表裏面の所定の部分に振動電極31,32と中継電極33,34と引出し電極35,36をAg,Ag-Pd,Pd等のスパッタリング、蒸着、あるいは印刷乾燥等の手段にて形成する。次に、補強材39a?40bを圧電体基板の表裏面の所定の位置にそれぞれ形成する。補強材39a?40bの材料が樹脂やゴムであれば、塗布、貼付け等の手段にて形成される。また、補強材39a?40bの材料がセラミックス、金属、ガラスであれば、めっき、蒸着、貼付け、溶射等の手段にて形成される。
【0016】こうして、圧電共振子25が得られる。この圧電共振子25は、圧電体基板の表裏面上に補強材を形成することができるので、比較的広面積に補強材を設けることができ、連結部29,30の機械的強度をアップさせることができる。」

ここで、
(ア)上記Bの段落【0003】の「この圧電共振子71は連結部75,76が細く、機械的強度が低いため外部からの機械的衝撃や振動部72の振動によって連結部75,76が破損し易いという問題があった。」という記載より、連結部75,76は機械的に脆弱な領域であり、かつ歪みが集中する領域であると解される。
(イ)上記C及び図3,図4の「振動電極31,32と中継電極33,34と引出し電極35,36」は、全体的に励振電極であると捉えることができる。
(ウ)上記Cの段落【0015】の「補強材39a?40bの材料がセラミックス、金属、ガラスであれば、めっき、蒸着、貼付け、溶射等の手段にて形成される。」という記載より、補強材39a?40bは、金属材料で成る金属膜を含むものと認められる。

よって、上記B,Cの記載及び関連する図面を参照すると、引用例2には、次の技術が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の技術」という。)
「圧電共振子において、機械的に脆弱な領域であり、かつ歪みが集中する領域における励振電極上に金属材料で成る金属膜が一体形成されている構成とすること。」

4.対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例1記載の発明における「振動の節点もしくは振動の節点の近傍位置に突起を設けた」ことと、本願発明における「振動の節点もしくは振動の節点の近傍位置における上記励振電極上に金属材料で成る金属膜が一体形成されていること」とは、「振動の節点もしくは振動の節点の近傍位置に補強を施した」点において共通するということができる。

上記(あ)の事項を踏まえると、本願発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、
「音叉型水晶片において、
振動の節点もしくは振動の節点の近傍位置に補強を施した音叉型水晶片。」
である点。

(相違点)
相違点1:本願発明においては、「外面に励振電極が形成された」ものであるのに対し、引用例1記載の発明においては、外面に励振電極が形成されたものであるか否かが明確ではない点。

相違点2:「振動の節点もしくは振動の節点の近傍位置に補強を施した」ことが、本願発明においては、「振動の節点もしくは振動の節点の近傍位置における上記励振電極上に金属材料で成る金属膜が一体形成されていること」であるのに対し、引用例1記載の発明においては、「振動の節点もしくは振動の節点の近傍位置に突起を設けた」ことである点。

5.判断
そこで、上記相違点1,2について検討する。

(相違点1について)
外面に励振電極が形成された音叉型水晶片は、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭54-69984号公報の第1図及びその説明や、原査定の備考欄において引用された特開昭54-82993号公報の第3図及びその説明、特開平9-326668号公報の図10及びその説明等に記載されているように、ごく一般的なものであるから、水晶振動子として用いられる引用例1記載の発明における音叉型水晶片が外面に励振電極が形成されていることは自明である。
よって、相違点1は、実質的な相違点ではない。

(相違点2について)
一般的に、音叉型水晶片の基部と2つの共振枝との間にある振動の節点もしくは振動の節点の近傍位置は、機械的に脆弱な領域であり、かつ歪みが集中する領域である。そして、引用例1記載の発明と引用例2記載の技術とは、機械的に脆弱な領域であり、かつ歪みが集中する領域に補強を施すという点で共通するから、引用例1記載の発明に引用例2記載の技術を適用して、振動の節点もしくは振動の節点の近傍位置の、機械的に脆弱な領域、かつ歪みが集中する領域に、突起を設ける代わりに、当該領域における励振電極上に金属材料で成る金属膜が一体形成されている構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-29 
結審通知日 2012-03-06 
審決日 2012-03-19 
出願番号 特願2000-299745(P2000-299745)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑中 博幸  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 岩崎 伸二
甲斐 哲雄
発明の名称 音叉型水晶片及び水晶振動子  
代理人 特許業務法人あーく特許事務所  

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