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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16B
管理番号 1256792
審判番号 不服2011-971  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-14 
確定日 2012-05-07 
事件の表示 特願2004-318061「炭素及び/またはグラファイト電極柱体のためのねじ接続部」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 2日出願公開、特開2005-140325〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年11月1日(パリ条約による優先権主張2003年10月31日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成22年9月6日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成23年1月14日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。

第2 平成23年1月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年1月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「合成炭素または黒鉛から作られ、ソケットと雌ねじが内部に形成された炭素電極である外部部材と、合成炭素または黒鉛から作られ、2つの電極間を接続するための雄ねじ付きの炭素ニップルである内部部材とを接続するねじ接続部であって、
前記雌ねじおよび雄ねじは、円錐状に形成されており、実質的に一様のリード、ねじ谷及びねじ山を備え、それぞれ実質的にV字状の輪郭を備えるねじ巻きを有し、
前記雌ねじと雄ねじの少なくとも一方は、前記ねじ谷にウェッジランプが形成されており、前記内側部材と外側部材が互いの中にねじ締めされた状態において、前記部材の前記ねじ山が他方の部材の前記ねじ谷にある前記ウェッジランプに当接するねじ接続部。」(なお、下線部は補正箇所を示す。)
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「内部部材」及び「外部部材」について、「互いの中にねじ込まれるときに」とあったのを「互いの中にねじ締めされた状態において」と補正しその構成を限定したものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。なお、「ねじ接合部」を「ねじ接続部」とした補正は、誤記の訂正を目的とするものである。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用例の記載事項
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第4167643号明細書(以下、「引用例1」という。)には、「Electrode joints(電極継手)」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「 SUMMARY OF THE INVENTION
The present invention provides a novel joint wherein tension is applied between the electrode segments and the nipple during assembly and which is not subjected to loosening or other effects of thermal expansion by the inactivation of certain threads adjacent the abutting end faces of the electrode segments.
GENERAL DESCRIPTION OF DRAWINGS
Since the relationship of expansion to temperature is linear, the differential expansion of the elements of the joint about a neutral point may be considered to apply to the carbon electrode segments with zero expansion applied to the nipple. As the electrodes and the nipple are symmetrical about the plane of the joint, i.e., the interface between the abutting electrode segments, and have a common longitudinal axis, the neutral point may be considered as the centre of the nipple at the interfacial plane. Expansion of the electrode segments relative to the nipple tends to be directly away from this point in all directions.
Additionally, the stress in the nipple is not evenly distributed over the complete length of thread engagement but rather is concentrated over the first few threads.
The difference in thermal expansion of the materials causes the angle of the direction of expansion of the electrode segments with respect to the planar interface to increase with increasing axial distance from the planar interface, and does not exceed the pitch angle of the screw threads until some threads distance from the interface. The tendency, therefore, is for the joint to loosen in the zone where the the greatest stress occurs while the joint is tightened in the zone of low stress.」(1欄45行?2欄11行、当審訳:「発明の要約
本発明は、組立の間に電極セグメントとニップルとの間に張力が適用される新規な継手を提供するものであって、この継手は、電極セグメントの当接する端面に近接した特定のねじ山を非機能化することにより、緩まないようになっている、又は熱膨張の他の影響を受けないようになっている。
図面の一般的な説明
温度と膨張の関係は線形であるので、中立点の回りの継手の部材の膨張差は、ニップルの膨張をゼロとして、炭素の電極セグメントに適用されると見なすことができる。電極とニップルは、継手の平面、言い換えると、当接する電極セグメント間の境界面の回りで対称的であり、しかも共通の縦軸線を有しているので、中立点は、境界の平面においてニップルの中心にあると見なすことができる。ニップルに対する電極セグメントの膨張は、前記中立点からあらゆる方向に直線的に離れるような傾向を示す。
そのうえ、ニップルの応力は、ねじ山の係合部の長さ全体にわたって均一に分配されているのではなく、むしろ最初の数個のねじ山に集中している。
各材料の熱膨張差によって、平坦な境界面に対する電極セグメントの膨張方向の角度は、平坦な境界面からの軸方向距離の増加と共に増加するが、この場合、境界面から数個分のねじ山の距離までは、ねじ山の傾斜角度を超えることはない。それゆえ、このような継手は、低い応力の区域では締め付けられているものの、最適な応力が生じている区域では緩む傾向にある。」
イ 「Referring first to FIG. 1, an electrode joint 10 constructed in accordance with this invention comprises a lower generally cylindrical carbon electrode segment 12 and an upper generally cylindrical carbon electrode segment 14. The electrode segments 12 and 14 each has an axially-directed threaded bore 16 with the threads 17 in each bore 16 having the same pitch. The electrode segments 12 and 14 have planar end faces 18 and 20 respectively which abut to define a plane of join 21 of the electrode segments.
A cylindrical threaded graphite nipple 22 is threadedly received in the bores 16, the length thereof being received approximately half in each bore 16. The threads 24 of the nipple 22 are engaged in interfacial contact with the threads 17 in the bores 16, the interfacial contact occurring on the adjacent faces closer to the plane of join 21. Interfacial engagement on those faces results from maintaining tension between the electrode segment 12 or 14 and the nipple 22 during assembly of the nipple 22 with the appropriate electrode segment 12 or 14.
The nipple 22 includes an axial, smooth-surfaced zone 26 from which the threads 24 have been removed or are omitted initially, rendering the corresponding bore threads 17 inactive. The axial length of the zone 26 is dependent on a number of factors, as is apparent from the following discussion.」(2欄40行?66行、当審訳:「まず、図1を参酌すると、本発明により構成された電極継手10は、下側の略円筒状の炭素電極セグメント12と上側の略円筒状の炭素電極セグメント14を有する。電極セグメント12,14はそれぞれ軸方向に延びるねじ穴16を有しており、そのねじ穴16は各穴16内に同じピッチを有するねじ山17を備えている。電極セグメント12,14は、それぞれ平端面18,20を有しており、電極セグメントの接合平面21を画定すべく当接している。
ねじ山が切られた円柱状のグラファイトニップル22は穴16内に螺合され、それ自体の長さは約半分が各穴16内に収容されている。ニップル22のねじ山24は、穴16内のねじ山17と界面接触で係合しており、その界面接触は境界の接合平面21に近い隣接する面上で起こる。それらの面上の界面係合は、ニップル22と適切な電極のセグメント12又は14との組み立て時に、電極セグメント12又は14とニップル22との間の応力を維持する結果として生じる。
ニップル22は軸方向に滑らかな表面区域26を含んでいる。その区域からねじ山24が取り除かれるか又は最初に省略されており、穴の対応するねじ山17を機能しないようにしている。以下の議論から明らかなように、区域26の軸方向長さは、多くの要因に依存する。」)
ウ 「The neutral point 30 of the joint 10 with respect to thermal expansion is the point of the intersection of the axis 32 of the cylindrical nipple 22 and the cylindrical electrode segments 12 and 14 and the interfacial plane 21. As the axial distance from the plane 21 in either direction increases, the net direction of thermal expansion of the higher coefficient of thermal expansion electrode segments 12 and 14 with respect to the lower coefficient of thermal expansion nipple 22 increases in angle from the neutral point with respect to the interfacial plane 21, until the net direction of thermal expansion as indicated by line 34 subtends an angle .theta. to the plane 21 which is the same as and then exceeds the thread pitch of the engaging threads 17 and 24.」(2欄67行?3欄12行、当審訳:「熱膨張に関する継手10の中立点30は、円筒状のニップル22及び円筒状の電極セグメント12,14の軸線32と境界の平面21との交点である。平面21からの軸方向距離が両方向において増加するにつれて、比較的小さい熱膨張係数のニップル22に対する比較的大きい熱膨張係数の電極セグメント12,14の正味の熱膨張の方向は、境界の平面21に対する中立点からの角度の増加をもたらし、ついには、直線34によって示された平面21に対する熱膨張の正味の方向は、係合するねじ山17,24のねじ山の傾斜角度と同じ角度θを成し、次いでその傾斜角度を超えることになる。」)
エ 「In accordance with this invention, no threads are provided on the surface of the nipple 22 between the plane 21 and at least the location at which the direction of net expansion of the joint is the same as the thread pitch. Usually, the unthreaded region extends just to that location, since no additional benefit is to be derived by extending the same further, although it is possible to provide the inactive region extending into the area where the net direction of thermal expansion exceeds the pitch angle.
The non-threaded area required for any particular joint can readily be determined, since the thread pitch will be known and the dimensions of the electrode segments and the nipple also will be known. One simple manner of determining the inactive zone 26 is to consider imaginary cones on each side of the plane 21, each having its vertex at the neutral point 30, its axis coaxial with the axis 32 and a surface slope of the same angle as the thread pitch, then the threads 17 or 24 to be rendered inactive are those lying outside the cones.
The inactivation of threads adjacent the plane 21 may be achieved by any other convenient manner, such as, by removing the threads 17 in the appropriate region.
By constructing the joint 10 in this way, the threads 17 and 24 which are in engagement tend to tighten upon an increase in temperature, since the direction of net thermal expansion exceeds the pitch of the engaging thread surfaces. Thus, the greatest mechanical stress, as shown by FIG. 2, is experienced by self-tightening threads, so that any tendency for the joints to loosen with increasing temperature, as in the case when thread inactivation is not practiced, is eliminated.
Since the tendency for the joint 10 to loosen with thermal expansion is eliminated, the problems of over-heating of the joints and possible electrode breakage, and post-torquing to retighten the joints with the attendant labor costs and lost production time are eliminated.」(3欄13行?50行、当審訳:「本発明によれば、平面21と、少なくとも継手の正味の膨張の方向がねじ山の傾斜方向と同じとなる位置との間では、ニップル22の表面にはねじ山は形成されていない。通常、ねじ山を設けない区域は、まさに前記位置まで延びている。なぜなら、熱膨張の正味の方向が前記傾斜角度を超えている範囲にまで非機能区域を拡大することは可能ではあるけれども、更に拡大させることによって追加的な利益は全く得られないからである。
ねじ山の傾斜は既知であり、電極セグメントとニップルの寸法も既知であるから、個々の継手に要求されるねじ山のない区域は簡単に決定することができる。非機能化区域26を決定する1つの簡単な方法は、平面21の両側に仮想の円錐体を想定することであり、この円錐体は、中立点30を頂点とし、軸線32と同軸の軸線を有し、ねじ山の傾斜と同じ角度の斜面を有するものであり、この場合に、非機能化すべきねじ山17又は24は、円錐体の外側に位置することになる。
平面21に隣接するねじ山の非機能化は、適切な区域におけるねじ山17の除去など、任意の適当な方法によって達成することができる。
このように継手10を構成することによって、係合しているねじ山17,24は、温度の上昇に基づいて締め付けられることになる。なぜなら、正味の熱膨張の方向は、係合するねじ山の表面の傾斜を超えているからである。したがって、図2に示すような最適な機械的応力を、自己締付作用を奏するねじ山が受けることになり、その結果、ねじ山の非機能化が施されていない場合のように、温度の上昇に伴って継手が緩むという傾向は、排除されている。
継手10が熱膨張で緩む傾向が排除されるので、継手の過熱の問題や起こりうる電極損傷の問題、そして、付加的な労働コストを伴う継手の再締め付けのための後トルク付与が排除される。」)
オ 上記イの「そのねじ穴16は各穴16内に同じピッチを有するねじ山17を備えている。」との記載から、雄ねじ及び雌ねじは実質的に一様のリードを有しているといえる。また、図1から、実質的に一様のねじ谷及びねじ山17,24を備え、それぞれ実質的にV字状の輪郭を備えるねじ巻きが看取できる。

これら記載事項を総合し、本願補正発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ねじ穴16に雌ねじが形成された炭素電極セグメント14と、黒鉛から作られ、2つの炭素電極セグメント14間を接続するための雄ねじ付きのニップル22とを接続する継手であって、
前記雌ねじおよび雄ねじは、円筒状に形成されており、実質的に一様のリード、ねじ谷及びねじ山17,24を備え、それぞれ実質的にV字状の輪郭を備えるねじ巻きを有する継手。」

(2)引用例2
同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第4076064号明細書(以下、「引用例2」という。)には、「Locking thread construction (緩み止めねじ構造)」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
カ 「A bolt or male threaded element 11 has a shank portion at one end thereof which is formed with a thread 12, with an enlarged head 13 being provided at the opposite end from the thread 12. The bolt, as illustrated in FIG. 1, extends through a pair of elements 14 which are to be clamped together by a nut or female threaded element 15 having an internal thread 10 which is normally freely running on the thread 12 of the bolt. The bolt 11 is preferably, although not necessarily, constructed from a hardenable steel, such as 1335, 1441 or 1340, while the nut 15 is constructed from a relatively softer or more deformable steel than the bolt 11, such as 1008 or 1010. It is to be understood that the bolt could also be constructed from a soft steel but is preferably constructed of a hardenable steel. In the present arrangement, the threads 10 and 12 are of the buttress type having one flank of substantial angle while the other flank has a very small angle relative to the axis of the bolt or nut. As illustrated in FIGS. 2-5 inclusive, the thread of both the bolt 11 and nut 15 has the root flattened in a manner to provide a flat surface or ramp which slopes relative to the thread axis; the flat 16 at the root of the nut 15 is disposed at an angle of approximately 22-1/2 DEG relative to the thread axis, while the flat 17 at the root of the bolt thread 12 is disposed at an angle of approximately 30 DEG from the exis of the thread.
It is to be noted that the aforesaid angles will vary with the degree of hardness of the material from which the bolt 11 and nut 15 are fabricated, and that when these elements are fabricated so as to be of similar or identical hardness, the angles of the flats or ramps 16 and 17 are preferably equal or approximately equal.」(2欄34行?65行、当審訳:「ボルト即ち雄ねじ要素11は、ねじ山12が形成された軸部を一端に有しており、ねじ山12とは反対の端に拡大ヘッド13を有している。そのボルトは、図1に示すように、一対の部材14を貫通し、これらの部材は、ボルトのねじ山12上で普通は自由に回転するねじ山10をもつナット即ち雌ねじ要素15によって一緒に締め付けられる。ボルト11は、是非にというわけではないけれども好ましくは、1335,1441,又は1340などの硬化可能な鋼から構成されており、一方、ナットはボルトよりも比較的柔らかい又は変形しやすい鋼、例えば1008又は1010のような鋼で構成されている。理解されるべきは、ボルトは柔らかい鋼で構成してもよいが、硬い鋼で構成するのが好ましいということである。本装置では、ねじ山10,12はのこ刃型であり、それぞれの一方のフランクはボルト又はナットの軸線に対して十分な角度を有するけれども、それぞれの反対フランクは非常に小さい角度を有している。図2ないし図5に示すように、ボルト11及びナット15双方のねじ山は、ねじの軸線に対して傾斜した平坦面即ち勾配面となるように平らにされた谷底を有して、ナット15の谷底における平坦面16がねじの軸線に対して22.5°の角度に配置され、またボルトのねじ山12の谷底における平坦面17がねじの軸線から約30°の角度に配置されている。
注目すべきは、ボルト11及びナット15が製造される材料の硬度の程度に応じて前記角度は変えることになるということ、及びこれらの要素が同様な又は同一の硬度を有するように製造された時に、平坦面即ち勾配面16,17の角度が好ましくは等しいか又は近似的に等しいことである。」)
キ 「When the nut 15 is in the position illustrated in FIG. 3 with the crown 19 of its thread 10 disposed adjacent to the corner 21 of the bolt 11 between the flat surface 17 and the sloping face 22, the nut 15 is free running on the thread 12 and is freely rotatable toward the left until the nut 15 strikes the adjacent element 14, whereupon the continued rotation of the nut 15 will cause the crowns 19 and flat 16 to move to the right engaging the flat sloping surface 17 and crown 23, respectively, and causing the softer metal of the crown 19 to deform. In FIG. 4, the crown 23 is illustrated as contacting the sloping flat 16 of the nut 15, as would occur when an approximately 50 foot-pound force is exerted on a one-half inch bolt, thereby providing a substantial degree of contact between the threads which locks the nut 15 in position along the bolt shank. When an increased torsional force is applied to the nut 15, an even greater degree of contact will occur between the ramps 16, 17 and the crowns 19, 23 until the faces of the nut thread engages the faces of the bolt thread, as shown in FIG. 5, which would occur, for example, when a one-half inch bolt is subjected to a 90 foot-pound load. This provides an even greater degree of contact between the crowns 19 and 23 and the flat sloping surfaces 17 and 16, and under these conditions, any relative lateral movement between the nut 15 and bolt 11 is positively prevented so as to assure against loosening thereof, which locked condition will exist until such time as a positive force is applied to unscrew the nut thread 10 from the thread 12 of the bolt 11 and thereby cause the respective threads to reach the position illustrated in FIG. 3, whereupon the nut 15 is again free running toward the end of the bolt thread 12.」(2欄66行?3欄30行、当審訳:「図3に示される位置、即ちナット15のねじ山10の山の頂19が平坦面17と傾斜面22との間のボルト11との角部21に隣接して配置されている位置においては、ナット15は、ねじ山12上を自由に移動でき、隣接部材14に衝突するまでは左方向へ自由に回転することができる。ナット15を更に回転し続けると、山の頂19と平坦面16は、右方向へ移動してそれぞれ傾斜した平坦面17と山の頂23に係合し、比較的柔らかい金属からなる山の頂19が変形することになる。図4には、山の頂23がナット15の傾斜した平坦面16と接触している様子が図示されており、これは2分の1インチのボルトに約50フィートポンドの力が加えられた時に生じるものであり、これにより、ボルト軸部に沿ってナット15を位置固定するのに十分な大きさの接触が両ねじ山間にもたらされる。さらに大きなトルクがナット15に加えられた時には、傾斜した平坦面17,16と山の頂19、23との間において接触の度合いが一層高くなり、第5図に示されている如く、ナットのねじ山の面がボルトのねじ山の面と係合するようになる。このような係合は、例えば2分の1インチのボルトが90フィートポンドの荷重を受けた時に生じるものである。これは、山の頂19,23と傾斜した平坦面17,16との間に一層高い度合いの接触をもたらし、このような状態の下では、ナット15及びボルト11間の相対的な横方向の運動は確実に阻止されて、それらの緩みは確実に防止されることになる。こうしたロック状態は、ボルト11のねじ山12からナットのねじ山10をねじ戻すように積極的な力が加えられ、各々のねじ山が図3に示された位置に達するようになるまで存続する。その後、ナット15はボルトのねじ山12の端部に向かって再び自由に移動する。」)
ク 「The chart or graph of FIG. 8 shows the result of the same test made on four different nut and bolt combinations on a Junkers testing machine which vibrates the tightened nut and bolt supported thereon. The first graph line 27 represents a test performed on a standard type of bolt and nut having a 7/16 inch diameter after it was drawn up to approximately 7,000 pounds axial force. The shaking of this bolt and nut rapidly loosened the nut and the holding force quickly decreased to below 100 pounds. Each square represents approximately two seconds of time so that this test occurred in practically ten seconds. The graph line 28 represents a test run on a 7/16 inch nut and bolt of the present invention in which it will be noted that under a clamping force of 6,500 pounds the vibration caused an initial slight loosening of the nut, but which thereafter maintained a clamping force of between approximately three and four thousand pounds. The third graph line 29 was the result of a test on a 7/16 inch prior art type lock nut and associated bolt, the lock nut being oval, triangular or other shape, and in this test a rapid drop from the 6,500 pounds applied force continued on to the bottom of the chart. Graph line 30 discloses a subsequent or second test of the identical nut and bolt tested in connection with the graph line 28 and illustrates the fact that the superior locking characteristics of the present invention are not lessened even during reuse of the nut and bolt. 」(3欄62行?4欄21行、当審訳「図8のグラフは、締め込まれたナットとボルトを支持してそれらを加振するユンカース試験機を用いて、4つの異なるナットとボルトの組合せについて実施した同一テストの結果を示す。第1の曲線27は、7/16インチの直径を有する標準タイプのボルトとナットについて約7000ポンドの軸方向力まで引き締めた後で実施されたテストを示している。このボルトとナットの加振により、ナットは急速に緩み、保持力は100ポンド以下まで急激に減少した。各マス目は約2秒を表しており、このテストは実質的に10秒間行われた。曲線28は、本発明の7/16インチのナットとボルトについて行ったテストを示している。このテストでは、6500ポンドの締付け力において、振動によってナットの初期のわずかな緩みが生じている。しかしその後は、約3000?4000ポンドの締付け力が維持されている。第3の曲線29は、7/16インチの従来タイプのロックナットと関係するボルトについてのテスト結果であり、ロックナットは楕円形、三角形又は他の形状である。このテストでは、6500ポンドの適用された力からの急激な低下がチャートの底部まで続いている。曲線30は、曲線28に関連してテストされた同一のナットとボルトを用いたその後の又は第2のテストを示すものであって、本発明の優れたロック特性が、ナットとボルトを再使用中にすら低下していないという事実を示している。」)

3 対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能又は作用などからみて、後者の「継手」は前者の「ねじ接続部」に相当し、以下同様に、「ねじ穴16に雌ねじが形成された炭素電極セグメント14」は「合成炭素または黒鉛から作られ、ソケットと雌ねじが内部に形成された炭素電極である外部部材」に、「炭素電極セグメント14」は「電極」に、「ニップル22」は「炭素ニップルである内部部材」に、「ねじ山17,24」は「ねじ山」に、それぞれ相当するから、両者は、本願補正発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「合成炭素または黒鉛から作られ、ソケットと雌ねじが内部に形成された炭素電極である外部部材と、合成炭素または黒鉛から作られ、2つの電極間を接続するための雄ねじ付きの炭素ニップルである内部部材とを接続するねじ接続部であって、
前記雌ねじおよび雄ねじは、実質的に一様のリード、ねじ谷及びねじ山を備え、それぞれ実質的にV字状の輪郭を備えるねじ巻きを有するねじ接続部。」

そして、両者は、次の点で相違する。
[相違点1]
本願補正発明の雌ねじおよび雄ねじは、「円錐状に形成されて」いるのに対して、引用発明の雌ねじおよび雄ねじは、円筒状に形成されている点。
[相違点2]
本願補正発明は、「前記雌ねじと雄ねじの少なくとも一方は、前記ねじ谷にウェッジランプが形成されており、前記内側部材と外側部材が互いの中にねじ締めされた状態において、前記部材の前記ねじ山が他方の部材の前記ねじ谷にある前記ウェッジランプに当接」するのに対して、引用発明は、そのうような構成を備えていない点。

4 判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
本願補正発明において、「雌ねじおよび雄ねじ」が「円錐状に形成されて」いるとは、ソケットとニップルの形状が円錐状であることを意味するものである。
ところで、炭素電極同士を接合するために用いられる円錐状のニップルは、従来周知であり(例えば、特開2000-133436号公報の図1?図3、実願昭62-12778号(実開昭63-121393号)のマイクロフィルムの第1図及び第3図を参照)、ニップルには円柱状と円錐状の2種類のタイプがあって、いずれのタイプを選択するかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項である。
炭素電極セグメント同士を接続する場合、円柱状のニップルであると、切ってあるねじ山の数だけ炭素電極を回転させる必要があり、接合に時間がかかるが、円錐状のニップルであるとねじ込む回転数が少なくてすみ、接合時間が大幅に削減できるという利点がある。接合するときの作業環境が数千度に熱せられた釜の上で行われることを考慮すると、円錐状のニップルを選択することは、むしろ当業者にとって自然な選択であるといえる。
したがって、引用発明において、円柱状のニップルに代えて円錐状のニップルを採用し、相違点1に係る本願補正発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到できたことである。

(2)相違点2について
引用例1には、「この継手は、電極セグメントの当接する端面に近接した特定のねじ山を非機能化することにより、緩まないようになっている、又は熱膨張の他の影響を受けないようになっている。」(上記ア参照)、「このように継手10を構成することによって、係合しているねじ山17,24は、温度の上昇に基づいて締め付けられることになる。なぜなら、正味の熱膨張の方向は、係合するねじ山の表面の傾斜を超えているからである。したがって、図2に示すような最適な機械的応力を、自己締付作用を奏するねじ山が受けることになり、その結果、ねじ山の非機能化が施されていない場合のように、温度の上昇に伴って継手が緩むという傾向は、排除されている。」(上記エ参照)と記載されている。これらの記載からも明らかなように、引用発明は、雄ねじと雌ねじがねじ締めされた状態において、ねじが緩むのを防止することを課題とするものである。
一方、引用例2には、ねじのゆるみを防止するために、ボルト11には、ねじ谷にねじの軸線に対して傾斜した平坦面17が形成されており、ボルト11とナット15が互いの中にねじ締めされた状態において、ナット15のねじ山の山の頂19がボルト11のねじ谷にある傾斜した前記平坦面17に当接する構成が記載されている。そして、引用例2に記載されれた「平坦面17」は本願補正発明の「ウェッジランプ」に相当し、「ナット11」は「外側部材」に、「ボルト15」は「内側部材」にそれぞれ相当するから、本願補正発明の用語を用いて表現すると、引用例2には、「雌ねじと雄ねじの少なくとも一方は、ねじ谷にウェッジランプが形成されており、内側部材と外側部材が互いの中にねじ締めされた状態において、前記部材の前記ねじ山が他方の部材の前記ねじ谷にある前記ウェッジランプに当接」する構成、即ち相違点2に相当する構成が記載されているといえる。
そして、引用発明と引用例2に記載された発明は、どちらもねじ接続部に関する発明である点で属する技術分野が共通し、いずれも雄ねじと雌ねじがねじ締めされた状態において、ねじが緩むのを防止することを課題としている点で、課題が共通するものである。
そうすると、引用発明において、ねじのゆるみ防止のために、引用例2に記載された発明を適用し、相違点2に係る本願補正発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び引用例2に記載された発明並びに上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお、審判請求人は、審判請求書において、「引用発明2(注:本審決における「引用例2に記載された発明」に相当する。以下同様。)においては、ねじ締めされた状態において、ボルト11及びナット15はねじ山の斜面が互いに接触することにより締結されます。つまり、引用発明2においては、本願発明(注:本審決における「本願補正発明」に相当する。)とは異なり、ねじ締めされた状態において、ナット15のねじ山10の先端部19が、ボルト11の平坦部17に当接しているものではありません。」(「(3)本願発明と引用発明1,2との対比」の(II)の項参照)と主張する。
しかしながら、「ボルト11及びナット15はねじ山の斜面が互いに接触することにより締結されます。」との主張に対応する構成は、本願の特許請求の範囲の請求項1には何も記載されておらず、審判請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。また、引用例2には、「ナット15を更に回転し続けると、山の頂19と平坦面16は、右方向へ移動してそれぞれ傾斜した平坦面17と山の頂23に係合し、比較的柔らかい金属からなる山の頂19が変形することになる。図4には、山の頂23がナット15の傾斜した平坦面16と接触している様子が図示されており、これは2分の1インチのボルトに約50フィートポンドの力が加えられた時に生じるものであり、これにより、ボルト軸部に沿ってナット15を位置固定するのに十分な大きさの接触が両ねじ山間にもたらされる。」(上記キ参照)と記載され、ねじ締めされた状態において、ナット15のねじ山10の先端部19が、ボルト11の平坦部17に当接していること、及び、ねじ山の斜面(フランク面)が互いに接触していなくてもボルト11及びナット15がねじ締めされた状態になっていることが記載されている。さらに、ねじ締めされた状態において、ねじ山とウェッジランプとが当接し、かつねじのフランク面同士が接触しないようなねじ接続部は、例えば実願昭60-133606号(実開昭62-40322号)のマイクロフィルム(「締付けトルクが加えられることにより他方のねじ部材のねじ山の頂(32)が一方のねじ部材の楔作用面(50)に楔作用によりしっかりと食い付くため、両ねじ部材の軸線に対して直角な方向への相対移動が阻止されて緩み方向への相対回転が抑制される。また、それらねじ山と楔作用面とは、楔作用面の傾斜に基づく自芯作用や変形によりねじの嵌め合いに係るねじ山の全長に亘って接触させられるため、締付応力がねじ山の各部に分散される。」(5ページ12行?6ページ1行。下線は当審において付したものである。)」との記載及び第6図参照)に示されるように従来から既に知られているものであり、仮に、前置審尋に対する平成23年9月22日付け回答書に記載された補正案のように補正したとしても、補正後の発明は、当業者が容易に想到できたものである。
また、審判請求人は、「金属材料、及び炭素又は黒鉛材料のそれぞれの特性は、金属は塑性変形可能な材料であり、炭素又は黒鉛材料は脆性で、塑性変形可能な材料ではないということであります。上述のように、塑性変形に依存する引用発明2において脆性材料を考慮することを当業者が示唆されることはありません。」(「(3)本願発明と引用発明1,2との対比」の(IV)の項参照)と主張する。
しかしながら、本願明細書の段落【0038】には、黒鉛が「塑性変形性」を有することが記載されている。そして、この「塑性変形性」という用語は、段落【0036】において、金属に対して使われている「塑性変形性」という用語と同じ用語であるから、「炭素又は黒鉛材料は脆性で、塑性変形可能な材料ではない」との主張は、失当と言わざるを得ない。
よって、審判請求人の主張は採用できない。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成22年6月24日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「合成炭素または黒鉛から作られ、ソケットと雌ねじが内部に形成された炭素電極である外部部材と、合成炭素または黒鉛から作られ、2つの電極間を接続するための雄ねじ付きの炭素ニップルである内部部材とを接続するねじ接続部であって、
前記雌ねじおよび雄ねじは、円錐状に形成されており、実質的に一様のリード、ねじ谷及びねじ山を備え、それぞれ実質的にV字状の輪郭を備えるねじ巻きを有し、
前記雌ねじと雄ねじの少なくとも一方は、前記ねじ谷にウェッジランプが形成されており、前記内側部材と外側部材が互いの中にねじ込まれるときに、前記部材の前記ねじ山が他方の部材の前記ねじ谷にある前記ウェッジランプに当接するねじ接合部。」

2 引用例の記載事項
引用例1及び引用例2の記載事項並びに引用発明は、前記「第2」の「2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」の「1」の本願補正発明において、「内部部材」及び「外部部材」についての限定事項である「互いの中にねじ締めされた状態において」を「互いの中にねじ込まれるときに」としその構成を拡張したものに相当する。なお、「ねじ接合部」は「ねじ接続部」の誤記である。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の「3」及び「4」に記載したとおり、引用発明及び引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そうすると、本願発明が特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-29 
結審通知日 2011-12-01 
審決日 2011-12-13 
出願番号 特願2004-318061(P2004-318061)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16B)
P 1 8・ 121- Z (F16B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 立花 啓  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 常盤 務
川上 溢喜
発明の名称 炭素及び/またはグラファイト電極柱体のためのねじ接続部  
代理人 星 公弘  
代理人 久野 琢也  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  

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