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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G21C |
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管理番号 | 1256793 |
審判番号 | 不服2011-1113 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-01-18 |
確定日 | 2012-05-07 |
事件の表示 | 特願2005-191062「原子炉格納容器および沸騰水型原子力プラント」拒絶査定不服審判事件〔平成19年1月18日出願公開、特開2007-10457〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成17年6月30日に出願された特願2005-191062号であって、平成22年4月27日付けで拒絶理由が通知され、同年7月7日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたものの、同年10月8日付けで拒絶査定がなされた。 本件は、前記拒絶査定を不服として平成23年1月18日に請求された拒絶査定不服審判事件である。 2 本願発明 本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成22年7月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「炉心を有する原子炉圧力容器を格納する原子炉格納容器であって、 前記原子炉格納容器の壁面の一部を構成し前記原子炉圧力容器を格納するドライウェルと、前記原子炉格納容器の壁面の一部を構成すると共に圧力抑制プールを有してその圧力抑制プールの上方に気相部を有するウェットウェルと、を形成する原子炉一次格納容器と、 前記ドライウェルと前記圧力抑制プールとを連結するベント管と、 前記原子炉格納容器の壁面の一部を構成し前記原子炉一次格納容器の上方に設置されて前記原子炉一次格納容器と一体構造をなす上部二次格納容器と、 前記ウェットウェルの気相部と前記上部二次格納容器との間を連結する気相ベント管と、 を有することを特徴とする原子炉格納容器。」 3 引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-333357号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載ないし図示されている。 (1)「【請求項1】 原子炉圧力容器を収容するドライウェルと、圧力抑制プールを収容するウェットウェルと、前記ドライウェルと前記圧力抑制プールとを連絡するベント管と、を有する一次原子炉格納容器と、 前記一次原子炉格納容器を収容し耐圧性を有する二次原子炉格納容器と、 前記ウェットウェルの気相部と前記二次原子炉格納容器の気相部とを連絡する通路部と、 この通路部に設けられた隔離連通切替手段と、 を備えたことを特徴とする原子炉格納容器。」 (2)「【0004】 図14(当審注:「図11」の誤記と認める。)において、炉心1は原子炉圧力容器(RPV)2の内部に収納されている。RPV2の下端にはインターナルポンプ66が10基程度設置され、冷却水を炉心に供給している。RPV2は上部ドライウェル(上部DW)14と下部ドライウェル(下部DW)15とからなるDW11内部に設置され、下部DWを円周状(環状)に取り囲むように圧力抑制室(ウェットウェル:WW)18が設置され、その内部に圧力抑制プール(SP)19を貯えている。DW11とSP19はベント管20により連結されている。 【0005】 DW11とWW19は円筒上の一体構造をなしており、一次原子炉格納容器(PCV)36を構成している。PCV36の設計圧力は例えば3.16kg/cm^(2)であり、頑健な厚さ2mの鉄筋コンクリート壁とその内面に放射性物質の漏洩抑制の目的でステンレス鋼ライナー(図示せず。)を張り巡らした構造となっている。」 (3)「【0034】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態を図1?図10に基づいて説明する。なお、図1から図8は本発明による二重原子炉格納容器(DCV)を静的安全炉のBWRに供する場合の実施の形態を、また、図9および図10は同じく動的安全炉のBWRに供する場合の実施の形態を示すものである。なお、従来技術と同一もしくは類似の部分、または、相互に同一もしくは類似の部分には同一符号を付して、重複説明は省略する。 【0035】 [第1の実施の形態] 図1により、本発明による原子炉格納容器(CV)の第1の実施の形態を説明する。 本発明の第1の実施の形態が図13に示した従来例と異なる点は、一次原子炉格納容器(PCV)36の外部にさらに耐圧性の二次原子炉格納容器(SCV)42を設け、WW18の気相部とSCV42の気相部を隔離連通切替手段(ICSS)45により連結したことにある。内蔵する原子炉は静的安全BWRの場合の例を示している。ICSS45は、通常時は隔離状態にあり、設定した差圧に達するとWW18の気相部からSCV42の気相部へ気体を流す機能を有しており、ICSS45としては、ラプチャーディスク、真空破壊弁、自動隔離弁等が利用可能である。 …(中略)… 【0039】 隔離連通切替手段(ICSS)45は、それぞれの弁の特性を考慮して適宜選択することができる。これらのICSS45に共通した機能は通常時は隔離状態にあり、設定した差圧に達すると順方向に雰囲気を流すことである。したがって、これらのICSS45は、原子炉が通常の運転中は隔離状態にあり、PCV36とSCV42は分離している。WW18気相部の圧力上昇を伴わない過渡事象や小規模な冷却材喪失事故(LOCA)の場合も、これらのICSS45は隔離状態に維持される。 【0040】 一方、万一、大破断LOCAや過酷事故が発生した場合は、WW18の気相部の圧力が上昇し、ICSS45の作動設定差圧に達するとICSS45が作動し、WW18の気相部とSCV42の気相部が連通される。これによりWW18気相部に蓄積する水素および窒素等の非凝縮性ガスによるPCV36の過大な圧力上昇をSCV42の内部に放出し、PCV36の圧力上昇を大幅に緩和できる。 【0041】 また、SCV42は耐圧性のコンクリート構造として放射性物質の漏洩を抑制するためステンレス製のライナーもしくは樹脂コーティングによるライナーを設置する。下部DW15の床部分には耐熱性の部材からなるコアキャチャー46を設置し、溶融炉心がCVの下部を溶融貫通したり、あるいは、放射性物質が漏洩することがないように二重の防護機能を設ける。 【0042】 さらに、過酷事故時には大量の水素がSCV42の内部に放出されるので、空気雰囲気のままでは水素爆轟するおそれがある。このリスクを排除するためにSCV42内部の雰囲気も窒素で置換し通常の空気雰囲気よりも酸素濃度を低く維持する。 【0043】 この実施の形態では、過酷事故時の圧力上昇に対する圧力障壁の機能をPCV36だけで受け持つのではなく、SCV42と分担することにより原子炉格納容器(CV)41の圧力を低く維持することが可能となる。従来の原子炉格納容器は設計基準を大幅に超えるような過酷事故を想定すると、圧力は設計圧力を超えてしまうが、この実施の形態によれば過酷事故時の圧力を設計圧力の範囲に抑えることが可能となる。 【0044】 例えば、SCV42の空間自由体積はWW18の空間自由体積のおよそ5倍から6倍となる。したがって、過酷事故時のCV圧力を従来の1/5から1/6とすることが可能となり、容易に設計圧力以下に抑制することが可能となる。 【0045】 また、この実施の形態によれば、小口径配管破断や過渡事象のようにPCV36内部の大幅な圧力上昇を伴わない事象の場合には、ICSS45は作動しないので、PCV36の内部のみに事象を閉じ込めることが可能となる。 【0046】 一方、大口径配管破断事故や過酷事故のようにPCV36の圧力が大幅に上昇する虞のある事象の場合には、ICSS45が作動して、非凝縮性ガスをSCV42内部に放出することによりPCV36の圧力上昇を防止することが可能となる。 …(中略)… 【0049】 一方、過渡事象は比較的発生頻度の高い事象であるから、その度に主蒸気逃がし弁(SR弁)が作動して炉蒸気がSP19に移行して凝縮し、その際、放射性物質もわずかにWW18の気相部に移行することが想定される。この実施の形態では、この過渡事象時の放射性物質の移行をWW18気相部までにとどめることが可能となる。その結果、過渡事象時に放射性物質がSCV42内に移行しSCV42が汚染することを防止可能となる。過渡事象の場合であっても、定期検査や燃料交換時にSCV42内に入って作業を行なう運転員の放射線被曝の可能性を排除できる。」 (4)図1 図11 これら(1)?(4)の記載及び図示内容からして、引用例には、 「炉心が内部に収納されている原子炉圧力容器を収容する原子炉格納容器であって、 円筒状の一体構造をなす、ドライウェル及び圧力抑制プールを収容するウェットウェル、ならびに、前記ドライウェルと前記圧力抑制プールを連絡するベント管、を有する一次原子炉格納容器と、 前記一次原子炉格納容器を収容し、耐圧性を有する二次原子炉格納容器と、 前記ウェットウェルの気相部と前記二次原子炉格納容器の気相部を連絡する通路部と、 この通路部に設けられた隔離連通切替手段と、 を備えた原子炉格納容器。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 4 対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)当業者の技術常識に照らすと、引用発明の「炉心が内部に収納されている原子炉圧力容器を収容する原子炉格納容器」、「円筒状の一体構造をなす、ドライウェル及び圧力抑制プールを収容するウェットウェル」、及び、「前記ドライウェルと前記圧力抑制プールを連絡するベント管」は、それぞれ、本願発明の「炉心を有する原子炉圧力容器を格納する原子炉格納容器」、「前記原子炉格納容器の壁面の一部を構成し前記原子炉圧力容器を格納するドライウェルと、前記原子炉格納容器の壁面の一部を構成すると共に圧力抑制プールを有してその圧力抑制プールの上方に気相部を有するウェットウェル」、及び、「前記ドライウェルと前記圧力抑制プールとを連結するベント管」に相当するといえる。 (2)また、引用発明の「耐圧性を有する二次原子炉格納容器」と、本願発明の「前記原子炉格納容器の壁面の一部を構成し前記原子炉一次格納容器の上方に設置されて前記原子炉一次格納容器と一体構造をなす上部二次格納容器」は、「二次格納容器」である点で一致する。 (3)さらに、引用発明の「前記ウェットウェルの気相部と前記二次原子炉格納容器の気相部を連絡する通路部と、この通路部に設けられた隔離連通切替手段」と、本願発明の「前記ウェットウェルの気相部と前記上部二次格納容器との間を連結する気相ベント管」は、「前記ウェットウェルの気相部と前記二次格納容器との間を連結する気相ベント」である点で共通する。 (4)そうすると、本願発明と引用発明は、 「炉心を有する原子炉圧力容器を格納する原子炉格納容器であって、 前記原子炉格納容器の壁面の一部を構成し前記原子炉圧力容器を格納するドライウェルと、前記原子炉格納容器の壁面の一部を構成すると共に圧力抑制プールを有してその圧力抑制プールの上方に気相部を有するウェットウェルと、を形成する原子炉一次格納容器と、 前記ドライウェルと前記圧力抑制プールとを連結するベント管と、 二次格納容器と、 前記ウェットウェルの気相部と前記二次格納容器との間を連結する気相ベントと、 を有する原子炉格納容器。」の点で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点1〉 本願発明の二次格納容器は、「前記原子炉格納容器の壁面の一部を構成し前記原子炉一次格納容器の上方に設置されて前記原子炉一次格納容器と一体構造をなす上部二次格納容器」であるのに対し、引用発明は、一次原子炉格納容器を収容するものである点。 〈相違点2〉 本願発明の気相ベントは、「気相ベント管」として構成されているのに対し、引用発明は、通路部である点。 5 検討・判断 上記相違点について検討する。 (1)引用発明の「耐圧性を有する二次原子炉格納容器」及び「通路部」の技術的意義 引用発明の「耐圧性を有する二次原子炉格納容器」は、大破断LOCAや過酷事故が発生した場合に、その内部に一次原子炉格納容器内の水素や窒素等の非凝縮性ガスを放出させ、過大な圧力上昇を緩和するとともに、水素爆轟を防止せしめるためのものであり、また、引用発明の「通路部」は、前記した非凝縮性ガス放出のための流路として機能せしめるためのものであることは、引用例について摘記した上記「3」の「(3)」の記載からして、明らかである。 (2)本願発明の技術的意義 一方、本願明細書の「【0007】次世代の安全性を標榜する新型BWRの原子炉格納容器の設計は、炉心損傷事故時の圧力が低く、水素爆轟もなく、必要な場所には運転員の立ち入りが自由に行なえるものであることが望ましい。本発明は、上記課題を解決するものであって、想定される過酷事故に対しても、より安全な原子炉格納容器およびこれを利用した沸騰水型原子力プラントを提供することにある。」、「【0010】本発明によれば、過酷事故時に炉心から発生する大量の水素による原子炉一次格納容器の圧力上昇を、気相ベント管を介して上部二次格納容器内に放出し、圧力上昇を低く抑えることが可能になり、過酷事故時の原子炉格納容器圧力を設計圧力内に制限可能となる。すなわち、過酷事故を原子炉格納容器の設計基準以内にコントロールできる炉概念を提供可能となる。」等の記載に照らすと、本願発明において「二次格納容器」及び「気相ベント管」を設ける技術的意義は、炉心損傷事故等の過酷事故時に生じる一次格納容器内の圧力上昇や水素を、「気相ベント管」を通じて「二次格納容器」に放出せしめて圧力抑制や水素爆轟の防止を図り、格納容器や原子炉操作の健全性を保つことであると認められる。 (3)技術的意義についての検討 そうすると、上記相違点1、2に係る構成が担う技術的意義は、引用発明と本願発明において、差異はない。 (4)相違点の容易想到性に関する検討、判断 ところで、引用発明のごとく、二次原子炉格納容器を一次原子炉格納容器を収容するよう設ける場合には、引用例1の図1に図示されているように、二次原子炉格納容器を一次原子炉格納容器の基礎から立ち上げるものとなる。しかしながら、上記(2)で検討したとおり、引用発明が二次原子炉格納容器を具備する技術的意義は、一次原子炉格納容器内の圧力や水素の放出先を設け、一次原子炉格納容器の圧力や水素濃度の上昇を抑制するためのバッファとする、というものであることからして、引用例1に接した当業者であれば、引用発明の二次原子炉格納容器は、格納容器として機能し得る強度と封止性を保ちつつ、圧力や水素濃度の上昇を抑制するための体積が確保できる限りにおいて、基礎から立ち上げる必然性がないものである、と理解することは明らかである。 そうすると、工期や建設コスト等を勘案し、引用発明の、二次原子炉格納容器を一次原子炉格納容器を収容する態様に代えて、二次原子炉格納容器と一次原子炉格納容器の立ち上がり壁部を共通化すること、すなわち、二次格納容器を一次格納容器に上方にのみ設置して壁面を一体化し、「原子炉格納容器の壁面の一部を構成し原子炉一次格納容器の上方に設置されて原子炉一次格納容器と一体構造をなす上部二次格納容器」とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項と言わざるをえない。 また、そのように一体化した場合、ウェットウェルの気相部と前記二次格納容器との間を連結する、引用発明の「通路部」の機能を果たす部材を設けなければ、引用発明の一次原子炉格納容器の圧力や水素濃度の上昇を抑制を果たすことができないことは明らかであるから、気相ベントを、引用発明の「通路部」に代えて、「気相ベント管」を設けて行うことも、当業者が当然になし得る事項である。 したがって、上記相違点1、2に係る事項を得ることは、当業者が容易になし得る設計的事項の範疇に属する事項である。 6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-01 |
結審通知日 | 2012-03-06 |
審決日 | 2012-03-19 |
出願番号 | 特願2005-191062(P2005-191062) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G21C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青木 洋平 |
特許庁審判長 |
村田 尚英 |
特許庁審判官 |
伊藤 幸仙 神 悦彦 |
発明の名称 | 原子炉格納容器および沸騰水型原子力プラント |
代理人 | 菊池 治 |