• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04B
管理番号 1256796
審判番号 不服2011-3624  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-17 
確定日 2012-05-07 
事件の表示 特願2005-1131「柱接合具及び柱接合構造」拒絶査定不服審判事件〔平成18年7月20日出願公開,特開2006-188874〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成17年1月6日を出願日とする特許出願であって,平成22年11月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成23年2月17日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同日受付の手続補正書により特許請求の範囲の補正がなされたものである。
その後,当審にて平成23年11月17日付けで拒絶理由通知を行ったところ,平成24年1月19日に意見書が提出されるとともに,同日受付の手続補正書により明細書及び図面の補正がなされたものである(特許請求の範囲は補正されていない)。

第2.本願発明
本願の請求項1?10に係る発明は,平成23年2月17日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
柱を横架材に接合するための柱接合具であって、引張抵抗体と、該引張抵抗体の一端に設けられた柱側取付板と、該柱側取付板と平行になるように前記引張抵抗体の他端に設けられた横架材側取付板とで構成するとともに、前記柱側取付板を、前記柱の柱頭及び柱脚のうち、前記横架材に接合される側の端部にて前記横架材の天端又は下端に当接される当接面を挟んで互いに背面側となるようにかつ前記柱及び前記横架材で形成される壁断面内を向くように配置形成された一対の切り欠きの内面のうち、前記横架材の天端又は下端に平行に対向する当接内面に取付け自在に構成するとともに柱側ボルト孔を穿孔して構成し、前記横架材側取付板を、前記柱側取付板と対向するように前記横架材に取付け自在に構成するとともに横架材側ボルト孔を穿孔してなり、前記一対の切り欠き内に互いに非連結な状態でそれぞれ配置されるようになっていることを特徴とする柱接合具。」

第3.当審拒絶理由通知の概要
1.特許法第36条第6項第2号違反
請求項1が「柱接合具」の発明を特許請求の範囲としようとしているのか,あるいは,「柱接合構造」の発明を特許請求の範囲としようとしているのかを特定できない(平成23年11月17日付け拒絶理由通知書[理由3](2)欄)。

2.特許法第29条第2項違反
本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物
・特許第2869046号公報(以下,「引用例1」という。)
・特開2004-308348号公報 (以下,「引用例2」という。)
に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(同[理由4]欄)。

第4.当審の判断
1.特許法第36条第6項第2号の要件
平成24年1月19日受付の手続補正書では,特許請求の範囲は補正されておらず,依然として,上記第3.1.欄に記載の拒絶理由が解消されていない。
すなわち,本願発明はその末尾の「柱接合具」との記載からして,「柱接合具」の発明であると思われるが,同発明の特定事項として記載された「前記柱の柱頭及び柱脚のうち、前記横架材に接合される側の端部にて前記横架材の天端又は下端に当接される当接面を挟んで互いに背面側となるようにかつ前記柱及び前記横架材で形成される壁断面内を向くように配置形成された一対の切り欠きの内面に取付け自在に構成する」ことは,「柱接合具」の構造を特定するものではなく,「柱接合具」が取り付けられる「柱の柱頭及び柱脚」の構造を特定したうえで,当該「柱の柱頭及び柱脚」に対する「柱接合具」の取り付け態様を特定しており,結局のところ,請求項1が「柱接合具」の発明を特許請求の範囲としようとしているのか,あるいは,「柱接合構造」の発明を特許請求の範囲としようとしているのかを特定できない。

請求人は,当審による拒絶理由通知に応答して,上記意見書において以下のように主張している。

「請求項1に係る本件発明は、特許請求の範囲の記載の通り、
(a)柱を横架材に接合するための柱接合具であって、
(b)引張抵抗体と、該引張抵抗体の一端に設けられた柱側取付板と、該柱側取付板と平行になるように引張抵抗体の他端に設けられた横架材側取付板とで構成し、
(c)柱側取付板には柱側ボルト孔を穿孔し、
(d)横架材側取付板を柱側取付板と対向するように構成するとともに該横架材側取付板に横架材側ボルト孔を穿孔してなる
ものであって、特許を受けようとする発明が『柱接合具』であってその構成要素も明確であり、よって特許を受けようとする発明が『柱接合構造』であるとの誤解が生じる余地はありません。
加えて、『柱接合具』が取り付けられる柱や横架材の取付け部位、取付け構造あるいは取付け態様は、『柱接合具』自体の構造を特定するための構成要件ではないとしても、それらを特定しなければ発明が不明瞭になるおそれがあり、あるいはそれらを特定することで発明がいっそう明瞭になるのであれば、構成要件として記載すべきであって、少なくとも『柱接合具』それ自体の構造を特定するものではない構成要件が含まれていることのみをもって記載不備であると判断されることは妥当ではないと思料致します。」(意見書[4](4)欄)

請求人の主張は,本願発明の「柱接合具」の構成要素は上記(a)?(d)であるというものであるから,その「柱接合具」としては,以下のものが含まれることになる。
(A)本願図面の【図2】や引用例1の【図6】に記載されるような,柱の柱頭及び柱脚を横架材に接合する態様で使用される「柱接合具」
(B)引用例1の【図1】?【図4】に記載されるような,横架材の端部を柱に接合する態様で使用される「柱接合具」

また,上記主張によれば,本願発明の発明特定事項として記載された以下の事項は,「『柱接合具』自体の構造を特定するための構成要件ではなく」,発明を「いっそう明瞭」にするためのものであるということとなる。
(i)柱側取付板について、「柱の柱頭及び柱脚のうち、横架材に接合される側の端部にて前記横架材の天端又は下端に当接される当接面を挟んで互いに背面側となるようにかつ前記柱及び前記横架材で形成される壁断面内を向くように配置形成された一対の切り欠きの内面のうち、前記横架材の天端又は下端に平行に対向する当接内面に取付け自在に構成する」と特定している点
(ii)横架材側取付板について、「横架材に取付け自在に構成する」と特定している点
(iii)柱接合具について,「一対の切り欠き内に互いに非連結な状態でそれぞれ配置されるようになっている」と特定している点

しかしながら,本願発明を明瞭化するための事項とされる上記(i)?(iii)は,上記(A)の「柱接合具」のみと整合しており,上記(B)の「柱接合具」とは矛盾している。
その結果,本願発明を「柱接合具」の発明と認定しようとしても,それが,上記(A)の「柱接合具」に限定されたものであるのか,あるいは,上記(B)の「柱接合具」も含まれるものであるのかが不明瞭になっている。

以上のように,請求項1の記載では,「柱接合具」の発明と認定しようとしても,それが
(α)上記(a)?(d)のみによって特定される「柱接合具」の発明を特許請求の範囲としようとしているのか,
(β)上記(A)の「柱接合具」の発明を特許請求の範囲としようとしているのか,
が不明であり,また,「柱接合具」の発明として不明なことから,
(γ)上記(i)?(iii)も含めた「柱接合構造」の発明を特許請求の範囲としようとしている
とも考えることができ,請求項1に係る発明が「柱接合具」の発明であるのか,あるいは,「柱接合構造」の発明であるのかを,依然として特定できない。

2.特許法第29条第2項の要件
(1)引用例
(イ)引用例1
当審による拒絶の理由に引用した本願出願前に頒布された刊行物である引用例1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,特に参照すべき記載について当審にて付与)。

(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、木質構造の建造物において、接合すべき2つの部材が柱と梁、梁と梁等の木質構造における接合構造と接合方法に関する。」

(1b)「【0005】
【発明の目的】この発明はかかる現況に鑑みてなされたもので、現場での接合作業が容易であり、工期の短縮を図ることができるとともに、高剛性が得られる木質構造における接合構造と接合方法を提供するものである。」

(1c)「【0010】さらに、前記梁3、5及び7の略L字型切欠部9には、ジョイントボックス10が取り付けられている。前記ジョイントボックス10は前記切欠部9に嵌着する大きさであって、対向する側壁には前記全ネジボルト14及び全ネジボルト25を挿通する透孔27、29が穿設されており、底部には端部にオスネジを刻設した固定桿としての全ネジボルト30を挿通する透孔31が穿設されている。前記ジョイントボックス10は、透孔29にネジ部分を内部に突出させて全ネジボルト25を挿通させながら切欠部9に嵌着し、次いで、切欠部9の水平面に設けた固定桿埋込穴33に前記全ネジボルト30のオスネジを突出させて挿入し、接着剤16により固着する。前記全ネジボルト30の接着剤16による固着は、全ネジボルト25の場合と同様な方法により行えばよい。
【0011】前記ジョイントボックス10は、内部に突出した全ネジボルト25のオスネジにナット35を螺合し、同じく内部に突出した全ネジボルト30のオスネジにナット37を螺合して緊締することによって一体に取り付けられている。<以下略>」

(1d)「【0013】上記構成において、梁側から鉛直荷重及び水平荷重がかかった場合には、梁端部にはモーメント力と軸力及び剪断力がかかり、モーメント力は上下に取り付けた全ネジボルト25へ軸力として伝達され、軸力は梁部より接着剤から全ネジボルト25及びジョイントボックス10、そして柱側全ネジボルト12、14、柱側接着剤、柱部へと伝達される。また、剪断力も上下のジョイントボックス10で受け、ジョイントボックスの垂直方向に設けた全ネジボルト30で支えることになる。」

(1e)「【0016】この発明に係る木質構造における接合構造は上記実施形態に限定されるものではなく、連結桿やジョイントボックス固定桿は全ネジボルトに限定されるものではなく、その数は適宜増減することは可能である。また、山形ラーメンのように柱に傾斜した合掌材を接合する場合には、略L字型切欠部の一方の面を傾斜させ、嵌着するジョイントボックスの前記傾斜面に当接する側壁面を同様に傾斜させればよい。また、上記実施形態では、ジョイントボックスを梁の上下面に取り付ける構成としたが、梁の左右面に取り付けることも可能である。また、梁の上下に柱を接合する構成とすることも可能である。この場合には上下の柱の端部に上記構成によるジョイントボックスを取り付ければよい。即ち、図6に示すように、上下の柱45、47に梁49を挾持させ、柱45、47の端部にジョイントボックス10を取り付けるもので、図2の構成を90度回転させることにより応用可能である。<以下略>」

これらの記載事項並びに図面【図3】及び【図6】による図示内容を総合すると,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「柱45,47を梁49に接合するためのジョイントボックス10であって,
これを一面が開口した略直方体とし,その他の面を,
開口に対向し,固定悍としての全ネジボルト30を挿通する透孔31が穿設された底部と,
全ネジボルト25を挿通する透孔29が穿設された側壁と,
該側壁と対向するとともに全ネジボルト14を挿通する透孔27が穿設された側壁と,
透孔27,29,31が設けられていない対向する面と
で構成したジョイントボックス10。」

(ロ)引用例2
当審による拒絶の理由に引用した本願出願前に頒布された刊行物である引用例2には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,特に参照すべき記載について当審にて付与)。

(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、木造建築物における柱と梁とを接合する構造に係り、特に柱と梁との接合部で相対的な変形が拘束され、双方間で曲げモーメントの伝達が生じる柱梁接合構造に関する。」

(2b)「【0042】
一方、以上に説明した柱梁接合構造は、図11に示すように、柱51と梁52の上面との間、つまり柱の切り欠き部内における連結部材の周囲に、柱51の軸線方向の圧縮力に抵抗する圧縮ブロック53を介挿することができる。
この圧縮ブロック53は鋼材からなり、柱51の切り欠き部内における水平面と梁52の上面とに当接される二つの水平板部53aと、対向する水平板部53aのそれぞれの縁辺の一部を連結する側板部53bとを有する。また、水平板部53aには、連結部材56を挿通するための切り欠き部53cが設けられており、柱51と梁52とを接合した後、切り欠き部内で柱51と梁52の上面との間に圧縮ブロック53を介挿することができるものとなっている。
【0043】
この接合構造では、柱51と梁52との接合部に曲げモーメントが作用し、柱断面の一方の縁辺付近で軸線方向の圧縮応力が作用し、他方の縁辺付近では引張応力が作用する。このとき、柱の圧縮応力が圧縮ブロック53に伝達され、梁の上面との間で、この圧縮力に抵抗することができる。これにより、連結部材すなわち第1のボルト及び第2のボルトが負担する力を小さく抑えることができ、ボルトが座屈するのを確実に防止することができる。
なお、この接合構造は請求項5に係る発明の一実施形態であり、柱とその上に支持される梁との接合部に用いることもできる。」

(2c)【図11】には,「柱51」の軸線方向の圧縮力に抵抗する「圧縮ブロック53」の「側板部53b」に孔を設けず,「柱51」の端部に設けられた切欠き部の柱長手方向に平行な面にこれを固定しない構成が開示されている。

これらの記載事項を総合すると,引用例2には以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「柱51の軸線方向の圧縮力に抵抗する圧縮ブロック53において,
その側板部53bに孔を設けず,柱51の端部に設けられた切欠き部の柱長手方向に平行な面にこれを固定しない圧縮ブロック53。」

(2)対比
本願発明は,上記1.欄に記載したように不明確であるが,ここでは,請求人の主張する上記構成要素(a)?(d)を備えた「柱接合具」の発明として認定することとする。
このように認定される発明(以下,「請求人主張本願発明」という)と,引用発明1とを対比すると,
(α)引用発明1の「柱45,47」が,請求人主張本願発明の「柱」に相当し,以下同様に,
(β)「梁49」が,「横架材」に,
(γ)「ジョイントボックス10」が,「柱接合具」に,
(δ)ジョイントボックス10の全ネジボルト25を挿通する「側壁」が,「柱側取付板」に,
(ε)ジョイントボックス10の全ネジボルト14を挿通する「側壁」が,「横架材側取付板」に,
(ζ)「透孔29」が,「柱側ボルト孔」に,
(η)「透孔27」が,「横架材側ボルト孔」に,
(θ)「穿設」することが,「穿孔」すること
それぞれ相当する。
また,引用発明1の「ジョイントボックス10」は,「一面が開口した略直方体」であるから,引用発明1の対向する「側壁」が,請求人主張本願発明のように「平行」な関係にあることは明らかである。
さらに,
(ι)引用発明1のジョイントボックス10の「底部」及び「透孔27,29,31が設けられていない対向する面」と,請求人主張本願発明の「引張抵抗体」とは,柱接合具の「柱の長手方向に平行な面」である点において共通する。

してみると,両発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「柱を横架材に接合するための柱接合具であって、
柱の長手方向に平行な面と、該面の一端に設けられた柱側取付板と、該柱側取付板と平行になるように該面の他端に設けられた横架材側取付板とで構成し、
柱側取付板には柱側ボルト孔を穿孔し、
横架材側取付板を柱側取付板と対向するように構成するとともに該横架材側取付板に横架材側ボルト孔を穿孔してなる柱接合具。」

[相違点]
「柱の長手方向に平行な面」が,請求人主張本願発明では「引張抵抗体」であって,当該引張抵抗体に「ボルト孔」が設けられていないのに対して,引用発明1では,「底部」及び「透孔27,29,31が設けられていない対向する面」であって,このうち「底部」には「透孔31」が穿設され,当該「透孔31」に固定悍としての全ネジボルト30を挿通されている点。

(3)判断
上記相違点について検討する。

(イ)引用発明1の「柱の長手方向に平行な面」の機能
引用発明1の「底部」及び「透孔27,29,31が設けられていない対向する面」が,圧縮荷重及び引っ張り荷重の双方に対する耐力を有することは,上記摘記事項(1d)中の「軸力は梁部より接着剤から全ネジボルト25及びジョイントボックス10、そして柱側全ネジボルト12、14、柱側接着剤、柱部へと伝達される。」との記載,及び,当審による拒絶理由通知書の「先行技術文献調査結果の記録」欄で挙げた
特開平11-229494号公報
の記載からも,当業者にとって自明である。
したがって,引用発明1の「底部」及び「透孔27,29,31が設けられていない対向する面」は,全体として,請求人主張本願発明の「引張抵抗体」と同じ機能を有しているといえる。

(ロ)引用発明1の「透孔31」等の意義
上記摘記事項(1d)には,「剪断力も上下のジョイントボックス10で受け、ジョイントボックスの垂直方向に設けた全ネジボルト30で支えることになる。」と記載されており,「全ネジボルト30」及びこれを挿通するために「ジョイントボックス10」に穿設された「透孔31」は,剪断力を受けるための構成として説明されている。
ここで,摘記事項(1d)の上記記載は,第4.1.欄に記載した(B)の「柱接合具」,すなわち,引用例1の【図1】?【図4】に記載されるような,横架材の端部を柱に接合する態様で使用される場合について説明したものである。

(ハ)引用発明1の「透孔31」省略の容易想到性
一方,第4.1.欄に記載した(A)の「柱接合具」,すなわち,引用例1の【図6】に記載されるような,柱の柱頭及び柱脚を横架材に接合する態様で使用される場合には,その接合構造からして,柱に作用する曲げモーメントによって圧縮・引張応力は生じるものの,柱の断面方向に生じる剪断応力は,上記(B)のものに比べて小さいと考えられる。
また,引用発明2の「圧縮ブロック53」は,上記摘記事項(2b)に記載されるように,柱の下端(柱脚)と梁(横架材)の上面との間に介挿されるもの,すなわち,上記(A)の「柱接合具」に対応するものであって,柱に作用する曲げモーメントによって生じる圧縮応力に抵抗するものである。しかし,その「側板部53b」(請求人主張本願発明の「柱接合具」において,「引張抵抗体」が形成される部位に相当)には,ボルト等の固定具及びこれを挿通するための孔は設けられていない。
そして,引用発明1の「ジョイントボックス10」と引用発明2の「圧縮ブロック53」とは,柱と梁との接合部において柱の長手方向の荷重を受ける接合具である点で共通しており,さらに,引用例1の上記摘記事項(1e)には,「ジョイントボックス固定桿…の数は適宜増減することは可能である」と記載されている。
してみると,引用発明1の「ジョイントボックス10」の「柱の長手方向に平行な面」を,引用発明2の「圧縮ブロック53」の「側板部53b」ように,「孔を設けず,柱51の端部に設けられた切欠き部の柱長手方向に平行な面にこれを固定しない」ものとする,すなわち,「ジョイントボックス10」の「底部」に設けられた「透孔31」を省略することによって,上記相違点に係る請求人主張本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(4)請求人の主張について
(イ)引用発明1の必須構成要素及び阻害要因
請求人は,意見書[5]欄において「『ジョイントボックスを介して接合するので接合面が密着し、緩みが生じない。従って、ほぼ剛性に近い半剛性の接合構造が得られ』るという作用効果を奏する固定桿である全ネジボルト30は、連結桿とともに引用例1記載の発明の必須構成要素をなすものです。」(第5頁第35?38行目)と主張し,また,「固定桿である全ネジボルト30」が必須構成要素であることを前提に,引用発明2の孔が設けられていない「側板部53b」を適用することには阻害要因があり(第5頁第39?42行目,第7頁第22?24行目),さらに,孔を無くすことについて,「個数を増減することと全部を省略することとは全く異なるのであって、上述(当審注:引用例1の段落【0016】)の記載をもって固定桿を省略してもよいと解することは、恣意的な拡大解釈がなされる結果になるものと思料致します。」(第8頁第4?6行目)と主張している。
しかしながら,上記(3)(ハ)欄に記載したとおり,柱の断面方向に生じる剪断応力が小さいときや,剪断応力に対する補強が不要な場合などに,引用発明1の「固定桿である全ネジボルト30」を無くすようにすることは,当業者が容易に想到し得たというべきであり,これが必須構成要素であることを前提とする阻害要因の存在の主張については,その前提が誤っているから採用できない。

(ロ)引用例1の開示及び示唆
請求人は,意見書[5]欄において「引用例1には、上記引張抵抗体やその機能について何ら開示されておりませんし、示唆すらありません。」(第6頁第29?30行目)と主張している。
しかしながら,上記(3)(イ)欄に記載したとおり,引用発明1の「ジョイントボックス10」の「底部」及び「透孔27,29,31が設けられていない対向する面」は,請求人主張本願発明の「引張抵抗体」と同じ機能を有しているものであるから,請求人の主張は採用できない。

(ハ)引用発明1の前提
請求人は,意見書[5]欄において「引用例1記載の発明が、柱の端部を梁に接合する場合に適用可能としながらも、構造上は、梁の端部を柱の側面に接合することが前提になっているから…大地震における柱の引抜き力を支持するなど到底不可能であろうと容易に推測できます。」(第6頁第31?36行目)と主張している。すなわち,引用発明1の「ジョイントボックス10」は,上記第4.1.欄に記載した(B)のものを前提としており,同欄に記載した(A)のものを前提としていないと主張している。
しかしながら,上記主張は,本願発明を,取付け部位、取付け構造あるいは取付け態様とは関係なく,構成要素(a)?(d)を備えた柱接合具として認定すべきとの請求人の主張と矛盾しており,採用できるものではない。
また,上記のとおり,引用例1の【図6】には,柱の柱頭及び柱脚を横架材に接合する態様で使用される「柱接合具」(上記(A)のもの)が明記されており,一方,本願発明には「大地震における柱の引抜き力を支持する」ための構成は何ら特定されておらず,単に「引張抵抗体」と記載されるのみである。そして,仮に,本願発明と引用発明1との間で引張応力に対する抵抗力に差があったとしても,その差は程度問題というべきである。
よって,請求人の主張は採用できない。

(ニ)引用発明2の本来的な技術上の相違
請求人は,意見書[5]欄において「引用例2記載の圧縮ブロックは文字通り、『柱の軸線方向の圧縮力に抵抗する』(特許請求の範囲)部材であって、柱の引抜き力を伝達するものではありませんし、図11からも明らかな通り、その構造上、引抜き力を伝達し得るものでもありません。したがいまして、引用例2は、本来的に本件発明の進歩性を否定する根拠文献にはなり得ないものです。」(第5頁第25?30行目)と主張している。
当審も,引用発明2の「圧縮ブロック53」が構造的に専ら圧縮力を受けるものであることは,認めるところである。そのうえで当審は,上記(3)(ハ)欄に記載のとおり,引用発明1の「ジョイントボックス10」の「柱の長手方向に平行な面」を,引用発明2の「圧縮ブロック53」の「側板部53b」ように,「孔を設けず,柱51の端部に設けられた切欠き部の柱長手方向に平行な面にこれを固定しない」ものとする,すなわち,「ジョイントボックス10」の「底部」に設けられた「透孔31」を省略することは容易と判断している。
このように,引用発明1に適用する引用発明2は,柱接合具の「柱の長手方向に平行な面」に孔を設けず,切欠き部に固定しないという技術思想であるにも係わらず,請求人の主張は,引用発明1の「ジョイントボックス10」を,丸ごと引用発明2「圧縮ブロック53」に置き換えることを前提とするものであるから,採用できない。

(5)効果の予測性について
上記(3)及び(4)欄に記載した事項も考慮すれば,請求人主張本願発明により奏される作用・効果は,引用発明1及び2から当業者が予測できた範囲内のものである。

(6)まとめ
よって,請求人主張本願発明は,引用発明1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお,本願発明を,上記第4.1.欄に挙げた(i)?(iii)も含めて「柱接合構造」の発明と認定したとしても,引用例1の図面(特に,【図6】)には,上記(i)?(iii)に挙げた技術的事項に相当する事項が開示されているから,このような「柱接合構造」の発明も,引用発明1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであることを付記する。

第5.むすび
以上のとおり,本願は,特許請求の範囲の記載が明確ではないから,特許法第36条第6項2号の規定により特許を受けることができず,また,本願発明は,引用発明1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-05 
結審通知日 2012-03-07 
審決日 2012-03-22 
出願番号 特願2005-1131(P2005-1131)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04B)
P 1 8・ 537- WZ (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 聡志  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 仁科 雅弘
中川 真一
発明の名称 柱接合具及び柱接合構造  
代理人 久寶 聡博  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ